地球惑星科学基礎 III 冬休みの宿題
2010 年 12 月 17 日配布
提出期限: 2011 年 1 月 14 日 (授業時に提出)
1
はじめに
本講義では, 定数係数の線形常微分方程式の解法, Fourier 級数 (Fourier 変換) に
ついて解説をしてきた. 地球惑星科学の諸現象は偏微分方程式の形で書かれるも
のが多く, 偏微分方程式の代表的なものとして講義では拡散方程式を取り上げた.
拡散方程式の解法では, 方程式の線形性, 2 階定数係数の線形常微分方程式の解法,
解の重ね合わせ, Fourier 級数の知識を必要とした. 即ち, 本講義で扱った知識のほ
とんどが必要となる. 偏微分方程式の代表例は, 拡散方程式の他に波動方程式があ
る. この波動方程式の解法も, 拡散方程式と同様の方法で解ける. ここでは, 拡散
方程式の解法の復習の意味もかねて, 波動方程式の解法を示すことにする.
拡散方程式や波動方程式の解法に必要な知識は, 物理学の問題を考える際の基本
中の基本ですので今一度以下の解答例を見て復習してください.もちろん質問が
あればいつでもどうぞ!
(研究室に訪ねてきてもいいし,メールでも構わない)
2
d’Alembert 解
波動方程式,
2
∂ 2u
2∂ u
=
c
,
∂t2
∂x2
(c > 0)
(1)
を解く前に先ず, 波動方程式を満たす解の一般的性質について議論する. (1) は, 2
つの独立変数 x, t を含むが, 次のような新しい 2 つの独立変数を導入してみよう:
ξ ≡ x + ct,
(2)
η ≡ x − ct.
(3)
このとき, t 及び x の偏微分は
(
)
∂ξ ∂
∂η ∂
∂
∂
∂
=
+
=c
−
,
∂t
∂t ∂ξ
∂t ∂η
∂ξ ∂η
∂ξ ∂
∂η ∂
∂
∂
∂
=
+
=
+
∂x
∂x ∂ξ ∂x ∂η
∂ξ ∂η
1
(4)
(5)
となる. これらを波動方程式に代入すると, (1) は
4c2
∂ ∂
u=0
∂ξ ∂η
(6)
となる. この方程式を ξ について積分すると,
∂
u = G(η)
∂η
となり, さらに η について積分すると,
∫ η
u = f (ξ) +
G(η 0 ) dη 0 = f (ξ) + g(η).
(7)
(8)
∫η
ここで, f, G はそれぞれ ξ, η の任意関数である. また g(η) ≡
G(η 0 ) dη 0 も η の
任意関数である. (8) の最後の表現が波動方程式 (1) の一般解で, d’Alembert 解
と呼ばれている. 常微分方程式では一般解は任意定数を含んだが, 偏微分方程式の
場合には一般解は任意関数の形で与えられる. 初期条件と境界条件を考慮するこ
とにより, 任意関数の形が決まる.
f (ξ) の意味は, 次のとおりである. ξ が時刻 t0 にある値 (φ0 ) をとる場所が時間
と共にどのように移動するかを眺めてみる. ∆t(> 0) ののちに ξ = φ0 となる場所
を x1 とすると, それは φ0 = x1 + c(t0 + ∆t) = x0 + ct0 . したがって,
x1 − x0 = −c ∆t(< 0)
(9)
つまり, x1 は x0 よりも x の小さな方向に移動していることになる. つまり, x の
正の方向を右にとると, φ0 となる点は時間が経つにつれて左に移動することにな
る. その速さは, ∆t の間に |x1 − x0 | だけ移動するので, |x1 − x0 |/∆t = c. つまり,
速さは c である. 従って, f (ξ) は x の負の方向に進行していく解を表現している.
同様な考察により η = φ0 の点は時間と共に x の正の方向に速さ c で進行してい
く. そこで, g(η) は x の正の方向に進行していく解を表現している. このように
(1) は右に速さ c で進行していく解と左に速さ c で進行していく解の重ねあわせ
になっている. なお, ξ, η は位相と呼ばれ, c は位相が進行していく速さなので位
相速度と呼ばれる.
3
波動方程式の解法の例
0 ≤ x ≤ L の領域内で, 1 次元波動方程式
2
∂ 2u
2∂ u
=c
,
∂t2
∂x2
(c > 0)
(10)
を,境界条件
u(0, t) = u(L, t) = 0
2
(11)
と初期条件
u(x, 0) = f (x),
∂u(x, 0)
= g(x)
∂t
(12)
のもとで解くことを考える.ここでは非自明な解(u が恒等的にゼロでない解)で
なおかつ t → ∞ で u が発散しない解にのみ注目する. (10) が 0 < x < L の間に
張られた弦の振動の方程式を記述する場合, u は弦の振幅であり, (11) は弦の両端
が固定されている場合に相当する. また (12) の初期条件は, 拡散方程式の場合と異
なり, 2 つあることを注意しておく.(拡散方程式では初期条件は 1 つであった.) 波
動方程式は時間に関して 2 階の微分を含むので, この方程式を解いて完全に解を決
定するためには, ある時間における u の値に関する条件を 2 つ必要とするからで
ある.
3.1
波動方程式の線形性
方程式 (10) は線形の微分方程式である. (10) の独立な解を u1 , u2 , 任意定数を
c1 , c2 とする.このとき, u = c1 u1 + c2 u2 が (10) の解であることが確かめられる
ので,(10) は線形の微分方程式である.
3.2
波動方程式の解法
(10) を変数分離法を用いて解く.(10) の解を
u(x, t) = X(x)T (t)
(13)
と表現し, T (t), X(x) がそれぞれ満たす微分方程式を求める. (13) を (10) に代入
し,両辺を c2 XT (6= 0) で割ると
1 d2 T
1 d2 X
=
c2 T dt2
X dx2
(14)
を得る.上式の左辺は t のみの関数,右辺は x のみの関数なので等式が成立する
には,両辺が x, t に依存しない定数である必要がある.そこで,その定数(変数
分離定数と呼ばれる)を λ と置く.したがって,T, X の満たす微分方程式はそれ
ぞれ
d2 T
= c2 λT,
dt2
d2 X
= λX.
dx2
(15)
(16)
上で導かれた T に関する微分方程式 (15) の一般解を推定法で求める. T = eαt
と解を推定し,これを (15) に代入し,整理すると特性方程式 α2 = c2 λ が得られ
3
る.T の従う微分方程式は線形の微分方程式なので,
T̂1 , T̂2 を任意定数として, 一
√
√
c λt
−c λt
般解は T = T̂1 e
+ T̂2 e
である.ここで,λ > 0 ならば, t → ∞ のとき T
は発散し,したがって u も発散する.設問にあるようにこのような発散解には興
味がなく, 有限に留まる解を調べる.そこで t → ∞ で T が有限値に留まるため
に,変数分離定数を λ = −k 2 (≤ 0) とする.変数分離定数をこのようにおくと,一
般解は
T (t) = T̂1 eickt + T̂2 e−ickt
(17)
と表現できる.なお, あとの便利のために (17) を Euler の関係式を用いて
T (t) = T1 cos ckt + T2 sin ckt
(18)
と書き直しておく. ここで, T1 , T2 も任意定数で, T1 = T̂1 + T̂2 , T2 = i(T̂1 − T̂2 ) で
ある.
上で導かれた X に関する微分方程式の一般解を求める. X に関する微分方程式
(16) の解として,X = eβx と推定する.この解を (16) に代入し整理すると,特性
方程式 β 2 = λ = −k 2 を得る.この解は β = ±ik である.X の従う微分方程式は
線形なので,重ね合わせの原理より一般解は
X(x) = C1 eikx + C2 e−ikx
(19)
と表現できる.ここで,C1 , C2 は任意定数である.
次に境界条件を考慮する. 先ず, 境界条件 (11) は u(x, t) に関する条件になっ
ている.これを X(x) に関する条件に書き換える. x = 0 における境界条件を
u(x, t) = X(x)T (t) に代入すると,X(0)T (t) = 0 となる.もし,T (t) = 0 であれ
ば,u(x, t) = 0 となり自明な解になってしまうので,T (t) 6= 0 であり,したがっ
て,X(0) = 0 が得られる.x = L についても同様の議論を行い,X(L) = 0 を得
る.まとめると,
X(0) = X(L) = 0
(20)
(20) で導かれた条件を満足する X(x) を求める.x = 0 を一般解 (19) に代入し,
境界条件を考慮すると,C1 + C2 = 0 を得る.これより, C2 = −C1 である.さ
らに x = L を一般解 (19) に代入し, 境界条件を考慮すると,C1 eikL − C1 e−ikL =
2iC1 sin kL = 0 を得る.C1 = 0 は自明な解なので,C1 6= 0 とすると,上の式が成
り立つためには kL = nπ, ここで n は 0 をのぞく整数でなければいけない.(n = 0
の時には, X(x) = 0, つまり u = 0 となり自明な解になってしまう.) 2iC1 を改め
て C とおくと,境界条件を満足する X は
X(x) = C sin
nπx
,
L
(n は自然数)
となる.
4
(21)
重ね合わせの原理により u(x, t) を求める. 上で求めた,T, X より解 u は
{
( nπ )
( nπ )}
( nπx )
u(x, t) = X(x)T (t) = T1 C cos c t + T2 C sin c t sin
(22)
L
L
L
となる.ここで,(22) はある自然数 n に対して与えられた境界条件を満足する (10)
の解である.異なる n に対しても (22) は (10) の解であり, それらは互いに独立
である. (10) は線形の微分方程式なので,独立な解が得られたらそれらを重ね合
わせたものも, もとの微分方程式の解である.そこで,重ね合わせの原理から
u(x, t) = X(x)T (t) =
∞
∑
{Dn cos ωn t + En sin ωn t} sin
n=1
( nπx )
L
(23)
が境界条件を満足する (10) の一般解である.ここで,T1 C を D, T2 C を E と表現
し,さらにその値は n の値によって異なってもよいので,そのことを明示するた
めに Dn , En とした.また,
cnπ
ωn =
(24)
L
である.
次に初期条件を満足する u(x, t) を求める. 前設問で得られた解に初期条件を考
慮する.即ち
∞
∑
( nπx )
= f (x).
L
( nπx )
∂u(x, 0)
= g(x).
=
ωn En sin
∂t
L
n=1
u(x, 0) =
Dn sin
n=1
∞
∑
(25)
(26)
(25), (26) の式の真ん中と最後の表現に sin(mπx/L) をかけて x について 0 から
L まで積分する.
(Fourier 係数の公式を導出する際に用いた方法と同じ事を行う.
)
∫L
mπx
nπx
L
このとき 0 sin L sin L dx = 2 δm,n なので,
∫
nπx
2 L
f (x) sin
Dn =
dx
(27)
L 0
L
∫ L
2
nπx
En =
g(x) sin
dx
(28)
Lωn 0
L
を得る.この表現を,(23) に代入して最終的に与えられた初期条件,境界条件を
満足する (10) の解
}
∫
∞ [{
∑
nπx0 0
2 L
0
f (x ) sin
dx cos ωn t
u(x, t) =
L 0
L
n=1
{
}
]
∫ L
2
nπx0 0
nπx
0
+
g(x ) sin
dx sin ωn t sin
(29)
Lωn 0
L
L
を得る.
5
3.3
d’Alembert 解との関係
前節で導出した方程式と d’Alembert 解との関係を見てみる.
}
nπ
cnπ
nπ
1 { nπ
nπ
cos ωn t sin
x = cos
t sin
x=
sin
(x + ct) + sin
(x − ct)
L
L
L
2
L
L
nπ }
1 { nπ
=
sin
ξ + sin
η
(30)
2
L
L
}
nπ
cnπ
nπ
1{
nπ
nπ
sin ωn t sin
x = sin
t sin
x=
cos
(x − ct) − cos
(x + ct)
L
L
L
2
L
L
1{
nπ
nπ }
=
cos
η − cos
ξ
(31)
2
L
L
である. そこで (29) は
u(x, t) =
∫
∞ [{
∑
1
}
nπ }
nπx0 0 { nπ
f (x ) sin
dx
sin
ξ + sin
η
L 0
L
L
L
n=1
{
}
]
∫ L
1
nπ
nπx0 0 {
nπ }
0
cos
+
g(x ) sin
dx
η − cos
ξ
Lωn 0
L
L
L
L
0
(32)
と書き直せる. つまり, d’Alembert 解が示すように, (29) は ξ と η の関数の和に
なっている.
4
課題
0 ≤ x ≤ L の領域内で, 1 次元波動方程式
2
∂ 2u
2∂ u
=
c
,
∂t2
∂x2
(c > 0)
(33)
∂u(0, t)
∂u(L, t)
=
=0
∂x
∂x
(34)
を,境界条件
と初期条件
u(x, 0) = f (x),
∂u(x, 0)
= g(x)
∂t
(35)
のもとで解きなさい.ここでは非自明な解(u が恒等的にゼロでない解)でなおか
つ t → ∞ で u が発散しない解にのみ注目する. 前節の問題との違いは, 境界条件
である. (34) は固定端ではなく, 開放端に相当する.
6
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