第3章
1
破堤メカニズムの推定
五十嵐川(諏訪地区)
(1) 破堤の状況
破堤は、下流側堤防から始まり、一部は、下流に拡大したものの、大半は上流側に拡大
したものと考えられる。
破堤時の氾濫流の方向は、堤内地の稲の倒伏状況等から、堤防法線に対して直角方向の
流れと河川の上流から下流に堤内地側に向けて流れる流れの 2 種類があったものと推測さ
れる。このことは、下流側の欠け口は、堤防法線に対してほぼ直角であるのに対して、上
流側は、上流側から下流側に斜めに欠けており、落堀の形状と対応していることからも判
断できる。
斜めに深くえぐられた落堀は、破堤終盤からの高水敷と堤内地の比高差により洗掘が進
み形成されたものと推定される。最終的に、破堤幅は、約 120mに達し、堤体部から堤内地
にかけて大きな盆状の落堀が形成され、最大のもので深さ約4mとなっていた。
破堤後の堤防の欠け口を見ると旧堤体と考えられる部分と新堤体と考えれれる部分に分
かれており、その境界面には人為的に並べられたと思われる玉石が確認された。
堤内地側の水田部には、地表面に多量の砂礫の散乱が見られるとともに、一部でボイリ
ングの形跡が確認された。
図 3-1
破堤後の状況(下流側より)
図 3-2
破堤後の状況(上流側より)
20
21
図 3-3
洗堀状況
22
図 3-4(a)
堤内地の状況
電柱C
電柱A
電柱B
※交点部は、コーン貫入試験、交点以外は、試掘により確認
図 3-4(b)
図 3-4(c)
堤内地の状況(航空写真)
堤内地の状況(砂礫の分布、コーン貫入試験による調査結果)
図 3-4(a)∼(c)に見られるように、堤内地に土砂が堆積したが、粒径の大きな砂礫も広い範囲で確認
された(例えば、図 3-4(a)の写真②、図 3-4(b)の大熊教授提供の写真)
。この砂礫の拡散現象について
は、越流による堤体の侵食の進行に伴い、流れに対する耐力が低下したことにより、一気に堤体が崩壊
したものと考えられ、このときに発生する激しい流れにより、堤体下部の薄い粘土層が破壊され、その
後、粘土層下の砂礫が洗掘され氾濫流により輸送されたものと推定できる。
23
(2) 破堤箇所周辺の地形分類
地形分類図によると、破堤箇所周辺は、自然堤防帯と氾濫平野に分類される。
[自然堤防]
[氾濫平野]
明治 44 年測量
(大日本帝国陸地測量部
土地条件図
(国土地理院
図 3-5
大正 3 年 10 月発行)
平成2年4月発行)
地形分類図
(3) 堤防の形状・土質の状況
堤体部の盛土層は、旧堤(明治 10 年頃施工)と新堤(昭和 8 年∼12 年頃施工)からなり、両者と
もシルト質細砂∼砂質シルトにより構成され、旧堤と新堤に挟まれる形で玉石層が確認できること
から、旧堤の表面には、玉石が並べられていたものと推定される。
基礎地盤は、堤内地では、1m∼5mの層厚で粘性土層が分布し、川から離れるにつれて層厚
が厚くなる傾向を示している。その下には、堤外地から堤内地にかけて砂礫層が広く分布している
が、破堤区間中央部から上流部の堤内地においては、砂礫層が薄くなる箇所が見られた。
高水敷
図 3-6
堤体地質状況
24
凡 例
BV-8(五十嵐川)
地盤高T.P+15.67m
掘進長L=24.45m
③断面
③断面
BV-7(五十嵐川)
地盤高T.P+15.19m
掘進長L=23.45m
S-20
:
調査ボーリング ( 今回調査 )
:
スウェーデン式サウンディング( 今回調査 )
:
調査ボーリング ( 既往調査 )
:
検討断面位置
川裏側
川表側
標高
(m )
標高
(m )
20
20
N 値
Ws w
0
25
5 07 5
N s w
0
50
1 00
2 00 30 0
60 0
Ws w
0
1
10
Ns w
25 50
7 50
5
1 52 0
Ac1
3
4
10 0
20 0
30 0
60 0
10
換算 N 値
7
5
1 01 5
BV-3(五十嵐川)
地盤高T.P+12.97m
掘進長L=15.45m
②断面
②断面
S-15
S-13
2 00
3 00
6 00
8
9
As2
9
10
11
11
0
12
Ag2
13
13
14
14
15
17
Ac3
18
19
-1 0
-1 0
④断面
S-1
S-2
S-6
地質層序凡例
S-4
-2 0
⑤断面
S-9
0
10
⑤断面
S-14
地質時代
- 2 0 地層区分
現
堤体(新)
S-17
世
①断面
第
0
50
主な土質
Bn
シルト質細砂、 砂質シルト
Bo
沖積層第1粘性土層
Ac1
砂質シルト、 シルト質粘土
沖積層第1砂質土層
As1
シルト質細砂
完
沖積層第1礫質土層
Ag1
砂礫
紀
新
沖積層第2粘性土層
Ac2
シルト質粘土
世
沖積層第2砂質土層
As2
シルト質細砂、細砂
沖積層第2礫質土層
Ag2
砂礫
沖積層第3粘性土層
Ac3
シルト、粘土
100 (m)
図- 調査地点位置図 ( 五十嵐川諏訪地区 )
図-
堤体(旧)
シルト質細砂、 砂質シルト
四
縮尺 1:2,000
図 3-7
地層記号
20 (m)
縮尺 1:400
BV-5(五十嵐川 )
地盤高T.P+10.89m
掘進長L=19.45m
S-19
BV-4(五十嵐川 )
地盤高T.P+11.63m
掘進長L=20.45m
1 00
④断面
S-5 S-3
S-7
S-8
S-16
Ac2
12
BV-6(五十嵐川)
地盤高T.P+15.27m
掘進長L=21.45m
S-11
S-18
5 0
1 0 15 20
換算 N 値
16
S-12
①断面
5
15
S-10
BV-1(五十嵐川 )
地盤高T.P+15.06m
掘進長L=16.45m
Ns w
0
10
0
6
10
0
50 75
2
5
7
20
換算 N 値
2 5
1
4
8
0
Ws w
0
As1
3
5
8
0 1 0 2 03 0 4 0 5 0
1
2
Ag1
4
6
S-12 75m
TP=10. 15m
Dep=2.
N 値
0
3
0
6
BV-2(五十嵐川)
地盤高T.P+11.61m
掘進長L=15.45m
Bn
Bo
2
3
7
9
0 1 02 0 3 04 0 5 0
1
2
4
5
50
0
1
2
十嵐川)
BV.2(五
61m
TP =11. 45m
Dep=15.
十嵐川)
BV.5(五
.89m
TP=10 .45m
Dep=19
S-13
8m
TP=10.904m
Dep=4.
S-14 12m
TP=11. 00m
Dep=9.
推定地質断面図 ( ②断面:五十嵐川左岸 )
図 3-8(b) 推定地質断面図(②断面)
地質調査地点図
標高
(m )
標高
(m )
25
25
川表側
標高
(m )
十嵐川)
BV.1(五
6m
TP=15.0 .45m
Dep=16
20
十嵐川)
BV.4(五
.63m
TP=11 .45m
Dep =20
S-19 .35m
TP=11 30m
Dep=3.
0
N s w
2 5
5 0 7 5
0
5
1 0 1 5
2 0
1
5 0
1 0 0
2 0 0
3 0 0
6 0 0
0 1 0 2 03 0 4 05 0
Bn
2
Ag1
10
6
7
8
0
Ac2
As2
Bo
Ws w
0
As1
5 0 7 5
0
5
1 0 1 5
2 0
5 0
1 0 0
2 0 0
3 0 0
6 0 0
Ac1
10
0
Ag1
11
3
25
Wsw
50 75 0
50
Nsw
100
200
300
600
10
0 5 10 15 20
換算N値
9
9
10
10
5
5
11
0
16
11
Ac2
12
12
13
Ag2
13
As2
18
19
2
8
8
17
20
1
7
7
14
15
0
6
6
換算 N 値
15
13
5
5
10
N s w
2 5
1
2
13
12
15
S-20 64m
TP= 10. 6m
Dep =3.0
3
4
14
11
50
1
2
12
10
16
0
0
50
4
9
9
20
3
8
5
川裏側
1
B
7
4
換算 N 値
0
川 )
2
6
3
0
3
5
2
3
0
20
0 1 0 2 03 0 4 0 5 0
4
1
Ac1
2
15
十 嵐
(五
B V .8
.6 7 m
m
=15
T P = 2 4 .4 5
D ep
N 値
N 値
S-18
3m
TP=11.6
15m
Dep=2.
N 値
0
1
N 値
Ws w
0
10
標高
(m )
)
川
十 嵐
(五
B V .7
19m
m
=15.
T P = 2 3 .4 5
p
De
20
川表側
川裏側
地質層序凡例
Ac3
-10
14
14
15
15
0
0
16
-1 0
16
地質時代
地層区分
地層記号
17
17
主な土質
18
18
Ag2
-20
-2 0
0
10
現
堤体(新)
Bn
シルト質細砂、 砂質シルト
世
堤体(旧)
Bo
シルト質細砂、 砂質シルト
沖積層第1粘性土層
Ac1
砂質シルト、 シルト質粘土
沖積層第1砂質土層
As1
シルト質細砂
沖積層第1礫質土層
Ag1
砂礫
20 (m)
地質層序凡例
19
19
20
-5
-5
20
21
21
地質時代
四
紀
完
現
世
24
世
図-
0
5
10 (m)
第
縮尺 1:200
新
沖積層第2粘性土層
沖積層第2砂質土層
Ac2
As2
地層記号
主な土質
堤体
B
砂質シルト
沖積層第1粘性土層
Ac1
-10
砂質シルト、 シルト質粘土
沖積層第1礫質土層
Ag1
砂礫
沖積層第2粘性土層
Ac2
シルト質粘土
沖積層第2砂質土層
As2
シルト質細砂、細砂
Ag2
砂礫
Ac3
シルト、粘土
23
23
-10
第
縮尺 1:400
地層区分
22
22
Ac3
シルト質粘土
完
四
-15
新
紀
シルト質細砂、細砂
-15
世
沖積層第2礫質土層
Ag2
砂礫
沖積層第2礫質土層
沖積層第3粘性土層
Ac3
シルト、粘土
沖積層第3粘性土層
図-
推定地質断面図 ( ①断面:五十嵐川左岸 )
図 3-8(a) 推定地質断面図(①断面)
図 3-8(c)
25
推定地質断面図 ( ③断面:五十嵐川右岸 )
推定地質断面図(③断面)
(4) 破堤メカニズムの検討
① ヒアリング結果
午後 0 時 40 分
頃には越水が
起こっていた
7月13日
9:00
越
水
深
越
水
幅
一
時
的
に
水
位
低
下
12:00
10 約
cm 5
程
度 8
m
13:00
越
水
深
4
5
cm
程
度
越水により、午後
0 時 50 分頃から
堤防の裏法が欠
けはじめる
午後 0 時 55 分頃越
流幅は 100m程度
となる
堤
防
裏
法
肩
か
ら
崩
れ
始
め
る
堤
防
状
況
∼
15
cm
他(上下流)の堤防に比べ少し低かった。
堤防裏法部分は植生が乏しかった。
諏訪新田では高水敷を越える水位になると田や敷地内で漏水が発生していた。
図 3-9
14:00
堤
防
天
端
よ
り
約
10
cm
の
水
位
土
嚢
積
み
を
開
始
時刻不明
土
嚢
越 40
3
水
50
段
cm
積
程の 避
度上 難
か
ら
越
流
午後 1 時 15 分
頃堤防の破堤
を確認
崩
壊
し
曲
渕
方
面
へ
濁
流
が
流
れ
る
決
壊
水
位
低
下
︶
一
時
的
越 部分的に堤防裏法が崩れた に
水
水
位
深
低
下
10
越
水
︵ ∼
10:00過ぎ∼11:00過
コメント
堤
防
が
50
m
位
欠
け
る
濁
流
が
押
し
寄
せ
て
き
た
堤
内
地
状
況
右
岸
状
況
13:30
越
水
堤
防
天
端
よ
り
30
cm
前
後
低
い
水
位
∼
26
五
十
嵐
川
諏
訪
地
区
左
岸
状
況
9:30∼10:00頃 確認
越
水
11:00
∼
河
川
状
況
水
位
は
そ
れ
程
高
く
は
な
い
10:00
破堤地点上流の堤内地への取り付け道路付近から下流で越水が始まった。
堤防の裏法肩付近から欠けるように堤防が壊れ始めた。
目撃情報による堤防等の状況の推移
15:00
② 解析結果
五十嵐川(諏訪地区)の破堤箇所の堤防を対象にⅠ)洪水による流水の侵食作用、Ⅱ)越流に対する
のり面の侵食作用、Ⅲ)河川水及び降雨の浸透作用(堤防のり面のすべり破壊、基礎地盤の浸透破壊)
に対しての安全性について標準的な解析手法を用いて検討を行なった。
Ⅰ) 侵食に対する安全性の検討(五十嵐川:諏訪)
五十嵐川破堤箇所(表のり面は植生)に対して、堤防表のり面およびのり尻表面の直接侵食
に対する安全性について照査する。照査基準は以下のとおりである。
表面侵食耐力(植生の耐侵食性)>代表流速V0 から評価される侵食外力
1) 表面侵食耐力(植生の耐侵食性)
植生の耐侵食性は、流水によるせん断応力が作用する継続時間 t を指標とし、平均根毛量σ0
をパラメータとして次式により求められる 1)。
u*r =
Z brk
α
⋅
1
log t
ここに、 u*r ;摩擦速度(m/s)
t ;せん断応力が作用する継続時間(min)(=300min)
(高水敷を上回る水位の継続時間;図 3-10 参照)
Z brk ;許容侵食深(cm)(=2.5cm とする)
(福岡らの報告 2)では、侵食速度が急激に大きくなる侵食深を限界侵食深(許
容侵食深と同じ意味)と呼んでおり、その値を 2.5cm としている。
)
α ;侵食しやすさを表すパラメータ(=‐50・σ0+9)
σ0;平均根毛量(gf/cm3)(=0.06 gf/cm3)
(地表面から深さ 3cm までの単位体積当たりの土中に含まれる根および地下
茎の総重量であり、現地試験結果を基に設定した。
)
20.0
高水敷高さを上回る水位の継続時間
約5hr
18.0
河川水位 ( T.P.+m )
16.0
河川水位(破堤地点3.4km)
14.0
高水敷高さ
12.0
破堤
(2004/7/13 13:00)
10.0
8.0
6.0
0
7月12日
19:00
5
10
15
20
25
30
経過時間 ( hr )
図 3-10 高水敷を上回る水位の継続時間
27
35
40
上記条件より、植生の耐侵食性を表す指標となる摩擦速度は、u*r = 0.168 (m/s)が得られる。
2) 侵食外力
侵食外力は、代表流速V0 (破堤時刻の流速)を用いて次式により摩擦速度 u* を求め、さら
に、この値から平均摩擦速度 u* mean を求める 1)。これが u*r 以下であれば堤防表のり面の直接
侵食に対する安全性は確保される。
u * = V0 / φ
u*mean = 0.82 × u*
ここに、 u* ;摩擦速度(m/s)
u* mean ;平均摩擦速度(m/s)
V0 ;代表流速(m/s)
(一次元不定流計算結果より、V0 = 1.90m / s )
φ ;流速係数 φ = (1 / n) ⋅ ( H d 1 / 6 / g )
n ;粗度係数(=0.04 ←現地河道状況より)
H d ;水深(m)
(No.33,No.34 断面、水深:約 4.0m)
g ;重力加速度(9.8m/s2)
Hd
4.0m
高水敷
上記条件より、堤防天端水位時の侵食外力を表す指標となる平均摩擦速度は
u*mean = 0.155 (m/s)が得られる。
したがって、侵食外力 u* mean = 0.155m / s <表面侵食耐力 u*r = 0.168m / s となり、堤防表
のり面の直接侵食に対する安全性は確保される。
<参考資料>
1) 宇多・望月・藤田・平林・佐々木・服部・藤井・深谷・平舘;洪水流を受けた時の多自然型河岸防御
工・粘性土・植生の挙動、土木研究所資料第 3489 号、1997.
2) 福岡・渡辺・柿沼;堤防芝の流水に対する侵食抵抗、土木学会論文集、No.491,Ⅱ-27,pp.31∼40、1994.
28
Ⅱ) 越流に対する安全性の検討(五十嵐川:諏訪)
越流に対する裏のり面の安定性について照査を行う。照査基準は以下のとおりである。
越流により裏のり面に作用するせん断力(τ0)<裏のり面の芝の耐侵食力(せん断力;τ)
h:越流水深
τ0:裏のり面に作用するせん断力
q:単位幅流量
H:堤防高
h0 : 等流水深
τ:芝の耐侵食力
(せん断力)
裏のり面の勾配 : θ
図 3-11 越流時の堤防裏のり面に作用する外力
1) 単位幅あたりの越水量(q)の算出 1)
単位幅あたりの越流量は次式により算出する。
q=Co・h3/2
ここに、 q;単位幅流量(m3/s/m)
Co;越流係数(m1/2/s)
(一般値C0=1.6 を採用)
h;越流水深(m)
2) 等流水深(h0)の算出 2)
等流水深は次式により算出する。
 n2 ⋅ q2 

h0 = 
 sin θ 


3 / 10
ここに、 h0;等流水深(m)
n;粗度係数(荒地を想定、n=0.020 とする)
θ;裏のり面の勾配(1:1.8→θ=29°)
3)裏のり面に作用するせん断応力(τ0)の算出 2)
越流により裏のり面に作用するせん断応力は次式より算出する。
τo=ρ・g・ho・sinθ
ここに、τo;越流により裏のり面に作用するせん断応力(N/m2)
ρ;水の密度(ρ=1000kg/m3)
g;重力加速度(g=9.8m/s2)
h0;等流水深(m)
θ;裏のり面の勾配(1:1.8→θ=29°)
29
越流水深に対する 1)∼3)の計算結果をまとめ表 3-1 に示す。
表 3-1 裏のり面に作用するせん断力
越流水深
h(cm)
2
単位幅流量
q(m3/s/m)
0.0045
等流水深
h0(m)
0.0046
せん断応力
τo(N/m2)
21.9
5
0.018
0.011
52.3
10
30
0.051
0.263
0.020
0.053
95.0
252
4) 芝の耐侵食力
芝の耐侵食力(せん断応力τ)は、芝の被度毎の摩擦速度u*と時間の関係を示す図 3-123)をも
とに、摩擦速度の定義(u*=(τ/ρ)0.5)に従って求める。芝の耐侵食力を表 3-2 に示す。
表 3-2 芝の許容せん断応力
表 3-2 芝の耐侵食力
芝被度
摩擦速度u*
(m/s)
せん断応力τ
(N/m2)
0
0.160
25.6
1
0.180
32.4
2
0.205
42.0
3
0.235
55.2
4
0.280
78.4
5
0.345
119.0
*)越水の継続時間は1時間とした。
*)越水の継続時間は1時間とした。
図 3-12 芝の被度を用いた摩擦速度と時間の関係
5) 裏のり面の安定性照査
五十嵐川破堤箇所の裏のり面は、芝被度0に近い状況にあったと考えられることから、表 3-2
より許容せん断応力τ=25.6N/m2 となる。一方、越流によるせん断応力は、表 3-1 より越流水
深が 3∼5cm 以上でこの値(τ=25.6N/m2)を上回る結果となる。
以上より、五十嵐川破堤箇所は、越流水深が約 0.50mと推定されることから、裏のり面は越流
水により侵食される可能性があったものと推定される。
<参考資料>
1) 宇多・藤田・布村;高規格堤防上の越流水の挙動、土木研究所資料第 3220 号、1993.
2) 福岡・藤田・加賀谷;アーマレビーの設計、その1−越水対策−、土木技術資料 30-3、1988.
3) 宇多・望月・藤田・平林・佐々木・服部・藤井・深谷・平舘;洪水流を受けた時の多自然型河岸
防御工・粘性土・植生の挙動、土木研究所資料第 3489 号、1997.
30
Ⅲ) 浸透に対する安全性の検討(五十嵐川:諏訪)
1) 検討方法
浸透に対する安定性検討の具体的な手順は図 3-13 のとおりである。検討方法は「河川堤防の構造検
討の手引き」
(平成 14 年 7 月、
(財)国土技術研究センター)にもとづいて行った。
築堤履歴・工事履歴
土質調査
ボーリング
被災状況調査・測量
原位置試験
土質試験
堤体及び基礎地盤のモデル化
土質構成
堤体形状・堤高
既設対策工
外力の設定
河川水位波形の設定
(越流状態を含む)
降雨波形の設定
非定常浸透流計算
浸透に対する安定検討
すべりに対する安定検討
被覆土層なし
被覆土層あり
裏のりすべり破壊
パイピング破壊
揚圧力による破壊
浸潤面の設定
局所動水勾配
の算出
揚圧力W・重量G
の算出
安定計算
局所動水勾配
の最大値
G/W
最小安全率
図 3-13 浸透に対する安定性検討の具体的な手順
31
a)非定常浸透流計算の方法
浸透流計算は実際に近い現象が再現できる非定常の飽和・不飽和浸透流計算を行った。
非定常の飽和・不飽和浸透流計算の基本式は次の通りである。
∂  ∂ψ
k
∂x  ∂x
ここに、 x
z
k
ψ
C
α
Ss
t
∂ψ
 ∂  ∂ψ

+ k  = (C + α ⋅ Ss )
 + k
∂t
 ∂z  ∂z

:堤防横断面の水平方向の軸
:堤防横断面の鉛直方向の軸
:透水係数(m/hr)
:圧力水頭(m)
:比水分容量(1/m)
:1 の場合飽和領域、0 の場合不飽和領域
:比貯留係数(1/m)
:時間(hr)
b)局所動水勾配の算出法
パイピングに対する安全性照査に必要な局所動水勾配は、浸透流計算の結果から得られた全水頭
ψ をもとに、裏法尻近傍の基礎地盤について次式によって算出した(図 3-14)。
iv =
∆ϕ
dv
(鉛直方向)
ih =
∆ϕ
dh
(水平方向)
ここに、 iv
ih
∆ϕ
dv
dh
γw
:鉛直方向の局所動水勾配
:水平方向の局所動水勾配
:節点間の全水頭差
:節点間の鉛直距離
:節点間の水平距離
:水の密度( γ w =1.0 t/m3)
図 3-14 局所動水勾配算出の考え方
32
裏法近傍の堤内地地盤高の表層が粘性土で被覆されている場合には、
次式により安全性を考慮した。
G W = (ρ ⋅ H ) (ρ w ⋅ P ) > 1.0
W
:被覆層の重量(kN/m2)
:被覆層底面に作用する揚圧力(kN/m2)
ρ
:被覆層の単位体積重量(kN/m3)
H
:被覆層の厚さ(m)
ここに、 G
ρw
P
:水の単位体積重量(kN/m3)
:被覆層底面の圧力水頭(全水頭と位置水頭の差)
(m)
c)円弧すべり法による安定計算法
浸透流計算によって得られた浸潤面の中から所定のものを抽出し、全応力法に基づく次式によっ
てすべり破壊に対する最小安全率を算出した。
Fs =
ここに、 Fs
u
W
c
l
cl + (W − ub) ⋅ cos α ⋅ tan φ
W ⋅ sin α
:安全率
:すべり面の間隙水圧(kN/m2)
:分割片の重量(kN)
:すべり面に沿う土の粘着力(kN/m2)
:円弧の長さ(m)
φ
:すべり面に沿う土の内部摩擦角(°)
b
:分割片の幅(m)
2) 外力条件
a)降雨
破堤箇所に近い三条観測所の降雨量観測値を用いた(図 3-15)
。
堤防には、7.13 洪水前の降雨量の影響があることから、事前降雨として、7 月 13 日から 1 ヶ月
前の 6 月 13 日以降の降雨を設定することとした。この期間の降雨量は全体的に少ないが、7 月 10
日にやや多い 111mm の雨量を記録している(図 3-15)
。
なお、7 月 12 日から 7 月 13 日の間の総雨量は 224mm、最大時間雨量は 43mm/hr であった(図
3-16)
。
250
日雨量 ( mm/日 )
200
150
100
50
0
2004/6/13
2004/6/18
2004/6/23
2004/6/28
2004/7/3
年月日
図 3-15 三条観測所降雨観測記録
33
2004/7/8
2004/7/13
80
時間雨量 ( mm/hr )
60
40
20
0
540
540
(7/12 12:00)
550
550
(7/12 22:00)
560
560
(7/13 8:00)
570
570
(7/13 18:00)
経過時間 ( hr )
図 3-16 破堤時刻付近の降雨モデル
b)河川水位
水理計算結果に基づき、破堤箇所付近で推定される河川水位を設定した。
20
18
河川水位 ( T.P.+m )
16
14
破堤
(2004/7/13 13:00)
12
初期水位T.P+10.5m(堤内地盤高-0.5m)
10
8
6
540
540
(7/12 12:00)
550
550
(7/12 22:00)
560
560
(7/13 8:00)
570
570
(7/13 18:00)
経過時間 ( hr )
※初期水位は、検討断面により異なるため例として②断面の水位モデルを図 3-17 に示した。
図 3-17 河川水位モデル(②断面)
34
3) 地盤および境界条件
堤体及び地盤は、被災後に実施したボーリング調査、サウンディング調査結果をもとにモデル化した。
なお、堤外側は河川中央部、堤内側は堤脚部から 100mを端部境界とした。
標高
(T.P+m)
20
①断面
降雨浸透境界
水位変動境界
15
初期水位 T.P+10.7m
河川水位
①
10
②
⑤
④
5
⑥
⑦
0
⑧
⑨
-5
⑩
-10
0
10
20 (m)
-15
標高
(T.P+m)
降雨浸透境界
20
②断面
水位変動境界
15
初期水位 T.P+10.5m
①
②
10
④
河川水位
⑤
⑥
5
⑦
⑧
0
⑨
-5
⑩
-10
0
10
20 (m)
-15
標高
(T.P+m)
20
③断面
降雨浸透境界
水位変動境界
35
15
河川水位
初期水位 T.P+10.0m
③
10
④
⑥
5
⑦
⑧
0
⑨
-5
⑩
-10
1)
五十嵐川採用土質定数一覧表
被災後に実施したボーリング調査、現位置試験、室内試験結果をもとに表に示す強度定数を設定した。
地層番号
記号
0
※図中の番号は、下表の番号に対応する。
-15
土質分類 平均N値
湿潤密度
透水係数
粘着力
内部摩擦角
ρt
k
c
φ
g/cm3
cm/sec
kN/m2
度
①
Bn
砂質土
2
1.70
1.0E-04
1
27
②
Bo
砂質土
3
1.70
1.0E-04
1
33
③
B
粘性土
2
1.70
1.0E-05
40
0
④
Ac1
粘性土
3
1.65
1.0E-05
30
⑤
As1
砂質土
-
1.80
1.0E-04
0
⑥
Ag1
礫質土
20
1.80
1.0E-01
0
35
⑦
Ac2
粘性土
5
1.70
1.0E-06
30
0
⑧
As2
砂質土
12
1.80
1.0E-04
0
30
⑨
Ag2
礫質土
40
2.00
2.0E-02
0
40
⑩
Ac3
粘性土
7
1.70
1.0E-06
40
0
10
20 (m)
2) 不飽和透水特性
浸透流計算に必要な不飽和浸透特性は、「河川堤防の構造検討の手引き」(平成14年7月)
に基づき設定した。
3) 比貯留係数および有効間隙率
「河川堤防の構造検討の手引き」に基づき次の値を設定した。
土質区分
比貯留係数(1/m)
有効間隙率
0
砂質土(礫質土)
1E-04
0.2
30
粘性土
1E-03
0.1
4) 浸透に対する安定性の検討結果
破堤箇所下流(①断面)
,破堤箇所(②断面)および破堤箇所対岸(③断面)の浸透流解析結果を図 3-18 に示す。解析より得られた堤体内の浸潤面を a)に、また
a)図中の経過時間(解析時間)に対応する外力(河川水位,降雨)を b),c)に、河川水位が堤防天端付近となったときの堤体の飽和度をd)に示している。
降雨により裏法尻付近の浸潤面はやや上昇するが、河川水の高水位継続時間が短時間であることや、堤体土の透水性がやや低いため、堤体内部の浸潤面はほとん
ど上昇しないと推定される。
図 d)の飽和度分布に見られるように降雨浸透により、裏のり面堤脚部及び堤防表層の飽和度は高くなっていたと推定される。
①断面 ( 五十嵐川左岸 )
a) 自由水面の経時図
②断面 ( 五十嵐川左岸 )
経過時間
560hr
562hr
564hr
565hr
《 川裏側 》
外水位
T.P+11.59m
T.P+15.11m
T.P+15.23m
T.P+15.80m
a) 自由水面の経時図
《 川表側 》
①
《 川表側 》
565hr
564hr
562hr
①
②
④
外水位
T.P+11.59m
T.P+15.11m
T.P+15.23m
T.P+15.80m
《 川裏側 》
565hr
564hr
562hr
560hr
初期水位 T.P+10.7m
③断面 ( 五十嵐川右岸 )
経過時間
560hr
562hr
564hr
565hr
②
初期水位 T.P+10.5m
⑤
a) 自由水面の経時図
565hr
564hr
《 川表側 》
560hr
560hr
⑤
⑥
初期水位 T.P+10.0m
④
⑥
⑦
⑧
⑧
⑧
⑨
36
⑨
⑨
⑩
⑩
⑩
562hr(7/13 10 :00)
b) 外力条件一覧図
d) 堤体内の飽和度分布 ( ②断面、7月13日 10:00 )
564hr(7/13 12 :00)
100
18
565hr(7/13 13 :00)
縮尺
: 時間雨量
560hr(7/13 8:00)
80
1.0m
16
14
破堤
(2004 /7/13 13:00)
40
12
初期水位( 堤内地盤高-0.5m )
②断面 : T.P+10.5m
20
水位 ( T.P+m )
時間雨量 ( mm/hr )
: 水位
60
10
※)①断面の初期水位:TP+10.7m
③断面の初期水位:TP+10.0m
0
8
540
550
560
570
経過時間 ( hr )
c) 解析条件対応一覧表
経過時間
対応時間
外水位
降雨
備考
560hr
7/13 8:00頃
11.59m
21mm/hr
高水敷高付近
562hr
7/13 10:00頃
15.11m
0mm/hr
堤防天端高付近
564hr
7/13 12:00頃
15.23m
10mm/hr 堤防天端高付近
565hr
7/13 13:00頃
15.80m
4mm/hr
《 川裏側 》
③
⑦
⑦
外水位
T.P+11.59m
T.P+15.11m
T.P+15.23m
T.P+15.80m
562hr
④
⑥
経過時間
560hr
562hr
564hr
565hr
破堤(ピーク水位)
図 3-18 五十嵐川浸透流解析結果一覧図
飽和度 100%
五十嵐川の浸透に対する安定性検討結果一覧図を図 3-19(a)に示す。
すべりに対しては、①断面の安全率が他の断面に比べ若干小さな値となっている。①断面は、破堤部分の下流側境界に近い断面であり、基礎地盤の粘性土の厚
みが薄く、堤外側への貫入長も短くなっているが、①断面から上流に向かって基礎地盤の粘性土の厚みが増し(図 3-19(b)④断面)
、堤外側への貫入長も大きく
なっている(図 3-18)
、
(図 3-19(b)⑤断面)
。これらの特徴に加え各断面の検討結果が、いずれの水位においても安全率 Fs1.0 を越えていることから、降雨や河
川水の浸透に伴う堤体の湿潤化による裏のりのすべりに対しては、安全であったと推定される。
一方、ボイリングに対しては、河川水位が堤防天端付近に達すると、砂礫層の揚圧力Wが被覆土層(粘性土層)の重量Gを上回り(G/W=1 未満)
、堤内地で噴
砂、噴水が生じた可能性がある。G/W の値は②断面が最も低いが、破堤箇所下流(①断面)及び対岸(③断面)においても G/W<1 を示す結果となっている。
五十嵐川 ②断面 (左岸)
五十嵐川 ③断面(右岸)
564hr (7/13 12:00)
564hr (7/13 12:00)
100
18
562hr (7/13 10:00)
: 時間雨量
16
: 水位
20
0
550
560
60
14
40
10
20
8
0
570
初期水位(堤内地盤高-0.5m)
T.P.+10.5m
540
550
経過時間 ( hr )
12
破堤
(7/13 13:00)
560
時 間 雨 量 ( m m /hr )
12
破堤
(7/13 13:00)
565hr (7/13 13:00)
80
16
560hr (7/13 8:00)
水 位 ( T.P+m )
初期水位(堤内地盤高-0.5m)
T.P.+10.7m
時 間 雨 量 ( m m /hr )
14
水 位 ( T.P+m )
時 間 雨 量 ( m m /hr )
60
562hr (7/13 10:00)
: 時間雨量
: 水位
560hr (7/13 8:00)
540
18
565hr (7/13 13:00)
80
: 水位
40
562hr (7/13 10:00)
: 時間雨量
16
100
18
565hr (7/13 13:00)
80
564hr (7/13 12:00)
100
560hr (7/13 8:00)
60
14
40
10
20
8
0
10
8
540
570
12
破堤
(7/13 13:00)
初期水位(堤内地盤高-0.5m)
T.P.+10.0m
550
560
570
経過時間 ( hr )
経過時間 ( hr )
4.0
1.4
3.5
1.3
1.3
3.0
1.2
1.1
1.2
1.1
2.5
2.0
1.0
1.0
1.5
0.9
0.9
1.0
0.8
0.8
540
545
550
555
経過時間(hr)
560
565
570
0.5
540
545
550
555
経過時間(h)
560
565
570
2.0
2.0
1.8
1.8
1.8
1.6
1.6
1.6
1.4
1.4
1.4
1.2
1.2
1.2
1.0
1.0
1.0
G/ W
2.0
G/ W
G/W
すべ り安 全 率Fs
1.5
1.4
すべり安全率Fs
すべり安全率Fs
37
1.5
0.8
0.8
0.8
0.6
0.6
0.6
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
545
550
555
経過時間(hr)
560
565
570
545
550
555
560
経過時間(hr)
565
570
540
545
550
555
経過時間(hr)
565
570
0.2
0.0
540
540
0.0
540
545
550
555
経過時間(hr)
560
565
570
図 3-19(a) 五十嵐川浸透に対する安定性検討結果一覧図
560
水 位 ( T.P+m )
五十嵐川 ①断面 (左岸)
標高
(m )
標高
(m )
25
25
①断面
②断面
破堤区間
川
十 嵐
.1 ( 五
m
BV
.0 6
m
=15
T P = 1 6 .4 5
D ep
20
0
川 )
十 嵐
.3 ( 五
m
BV
.9 7
= 1 2 .4 5 m
TP
5
p=1
De
川 )
十 嵐
5 (五
BV .
m
.8 9
=1 0
m
T P = 1 9 .4 5
D ep
N 値
15
川
十 嵐
.6 (五
m
BV
.2 7
m
=15
T P = 2 1 .0 0
Dep
)
0 1 0 2 0 3 04 0 5 0
)
20
N 値
0 1 0 2 03 0 4 05 0
15
0
1
1
N 値
Bn、Bo
2
0 1 0 2 03 0 4 0 5 0
0
3
2
3
1
N 値
4
10
As1
7
8
11
12
3
5
7
6
8
7
9
Ac2
15
16
9
11
12
11
13
12
14
13
7
8
9
11
12
13
14
15
0
16
17
15
Ag2
5
10
10
10
As2
14
6
6
Ag1
5
8
13
0
4
10
5
3
2
4
9
10
4
2
Ac1
1
6
5
0 1 02 0 3 04 0 5 0
0
5
18
14
19
15
-5
-5
20
16
21
17
Ac3
18
22
23
19
地質層序凡例
-1 0
0
10
20
30
40
縮尺
地質時代
50 (m)
現
世
縦 1:200
-10
地層記号
地層区分
堤体
Bn、Bo
沖積層第1粘性土層
横 1:1,000
-1 5
沖積層第1砂質土層
Ac1
-15
As1
主な土質
シルト質細砂、 砂質シルト
砂質シルト、 シルト質粘土
礫混り細砂
第
完
沖積層第1礫質土層
Ag1
砂礫
新
沖積層第2粘性土層
Ac2
シルト質粘土
世
沖積層第2砂質土層
As2
シルト質細砂、細砂
沖積層第2礫質土層
Ag2
砂礫
沖積層第3粘性土層
Ac3
シルト、粘土
四
紀
図-
推定地質断面図 ( ④断面:五十嵐川左岸 )
標高
(m )
標高
(m )
25
25
川裏側
川
十 嵐
. 6 (五
m
BV
.2 7
m
=15
T P = 2 1 .4 5
D ep
20
川表側
)
20
N 値
0
15
S-1
.73m
TP=11 1m
2.2
Dep=
Wsw
25 50 75
0
50
100
50
2
Nsw
0
0
15
1
200
300
600
Bn
Bo
3
Ac 1
4
1
10
5
10
2
0
5 10 15 20
換算N値
6
7
8
Ag1
9
5
10
5
11
12
13
Ac2
14
0
15
16
0
Ag2
17
18
19
-5
地 質 層序 凡 例
20
21
地質時代
地層区分
地層記号
主な土質
現
堤体(新)
Bn
シルト質細砂、 -10
砂質シルト
-1 0
堤体(旧)
Bo
シルト質細砂、 砂質シルト
第
沖積層第1粘性土層
Ac1
砂質シルト、 シルト質粘土
四
完
沖積層第1礫質土層
Ag1
砂礫
紀
新
沖積層第2粘性土層
Ac2
シルト質粘土
世
沖積層第2礫質土層
Ag2
砂礫
沖積層第3粘性土層
Ac3
シルト、粘土
世
0
5
10 (m)
縮尺 1:200
-1 5
図-
図 3-19(b)
-5
Ac3
五十嵐川推定地質断面図
38
-15
推定地質断面図 ( ⑤断面:五十嵐川左岸 )
③
調査・解析結果の整理
五十嵐川諏訪地区堤防の破堤メカニズムを推定するため、堤防の形状と土質構造、外力となった降雨と河川水位の状況、破堤箇所の形態、堤内地の状況等について、既往資料、破堤後の踏査結果、住民の目撃情報、破堤後に
実施した土質調査等の結果、解析結果から得られた情報との関係を整理し、表 3-3 に示す。
表 3-3 五十嵐川(諏訪地区)における破堤のメカニズムの推定について
破堤箇所
その他の箇所との相違点
破堤前の現地状況
破堤後の現地状況
目撃情報
土質調査
解析結果
上下流の堤防高よりも少し低かっ
流水による侵食外力は表面侵食耐力を下回る。表のり 堤防高が前後に比べ少し低
堤防高;3.5∼4m
堤防形状
た。
くなっている。
面の侵食の可能性は低い(28 頁参照)。
表法勾配;1:2
・ 法勾配
越流水深が 3∼5cm 以上になると、越流によるせん断力 対岸も同様の堤防形状であ
裏法勾配;1:1.8
・ 天端状況
が芝の耐侵食力を上回る。越流により裏のり面、法肩は
天端幅;約 4m
侵食され、法尻は洗掘された可能性がある(30 頁参照)。 度高い。
堤体の浸透に伴うすべり安定性は、安定計算による最
高水敷幅;65∼73m
小安全率 Fs が 1.0 を上回る(図 3-19(a))。浸透による
(図 3-20)
堤防構造
・ 土質
・ 法覆工
るが、堤防高が 10∼30cm 程
天端;アスファルト舗装
旧堤(明治 10 年頃)と新堤(昭和 8∼
旧堤と新堤の間には部分的に玉石
12 年頃)からなる。
が認められ、旧堤表面の敷石と想定
表法面;植生被覆
される(図 3-23)。
裏法面は植生が乏しかった。
旧堤、新堤ともにシルト質細砂∼砂
裏のりのすべり破壊の可能性は低い。
裏法面の植生が乏しい。
質シルトより構成される(図 3-8)。
裏法面;植生被覆(乏しい)
(図 3-21)
基礎地盤
地形は、自然堤防に挟まれた氾濫平
基礎地盤の表層は、川表側では砂質
河川水位が天端付近になると、砂礫層の揚圧力 W が被覆
対岸もほぼ同様の地質構成
野に分類される(図 3-5)
。
土(礫混じり)
、川裏側では粘性土が
土層(粘性土層)の重量 G を上回り(G/W=1 未満)、堤内
を示すが、堤体直下に分布す
分布する。これらの層の下位には砂
地で噴水、噴砂が生じた可能性がある。ただし、破堤部
る粘性土の層厚が 1m 程度厚
礫層が 4∼8m の層厚で分布する(図
下流及び対岸でも同様の解析結果が得られている(図
い(図 3-8(c))。
3-8)。
3-19(a))。そして、破堤部の下流及び対岸では粘性土層
の破壊現象は見られていない。破堤地点付近の堤内地で
は粘性土層の厚さは 2m から 3m あり、観測された噴砂地
点も離散的であった(図 3-4(a)、写真①、写真③)ので、
パイピング現象は生じなかったものと考えられる。
河川水位
破堤地点(3.4km)下流の一新橋観測所(1.9km)の記録によれば、河川水
9:30∼10:00 頃に約 5∼8m の幅で
10 時頃から越水が始まり、その後、一時低下し、12 時頃
対岸でも越水していたが、水
位は 13 日 3 時頃から上がり始め、5 時∼11 時に約 6m 上昇し、その後一旦
10cm 程度の越水。
から再び越水する(一新橋観測所の実績水位をもとに推
防活動が行われている(図
低下するが、再び上昇し 13 時頃ピークに達している。
破堤推定時刻(13:00 頃)の約 30 分
定)。
3-22)。
前に 4∼5cm 程度の越水。
破堤箇所最高水位 T.P.+15.80m(天端上約 50 ㎝)
天端-1m 以上の水位継続時間 3.3 時間(図 2-11)
降雨
破堤 1 ヶ月前の降雨量は全体的に少ないが、7/10(15 時∼20 時)に 111mm
を記録している(図 3-15)
。
7/12,20 時∼7/13,24 時の降雨量は 224mm、最大時間雨量 43mm/hr(7/12,
6∼7 時)であった(図 3-16)
。(気象庁三条観測所の雨量記録)
破壊形態
破堤部の幅は約 120m
対岸においても法崩れやボ
堤体部∼堤内地にかけて大きな盆
イリングが生じていたが、破
状の洗掘が見られ、その深さは最大
堤には至らなかった(図
で約 4m に及ぶ(図 3-3)
。
堤内地の状況
水田
3-22)。
ボイリング跡や礫の散乱が認めら
以前から高水敷を越えるような水
地表から 1∼5m の層厚で粘性土が分
れる(図 3-4)。
位になると田や敷地の中で漏水が
布する。河川から遠ざかるに従い層
破堤部の地表面に多量の礫が散乱
発生していた(水は透明)。
厚が厚くなる傾向にある。その下位
していた(図 3-24)
。
越水前には内水浸水は無かった。
には堤外地と同様、砂礫層が分布す
る(図 3-8)
。
39
40
( 川裏側 )
( 川表側 )
( 川裏側 )
( 川表側 )
昭和 55 年測量図より作成
図 3-20
五十嵐川被災前横断図
破堤箇所上流部の川表側法面
破堤箇所上流部の川裏側法面
図 3-21
破堤箇所下流部の川裏側法面
破堤部及び周辺堤防の状況
41
越水の状況(13日10時頃)
法崩れの状況
図 3-22
対岸(右岸)部の状況
水防活動の状況(13日13時頃)
スケッチ平面図
42
写真⑥
写真⑩
玉石を挟んで観察される
玉石の上に設置された蛇カゴ。
写真⑯ 規則的に並べられた玉石。旧堤体の表面
を覆っていたものと考えられる。
新旧の堆積物。
図 3-23
破堤部堤防の地質状況および写真撮影位置図
写真⑧
えぐられた箇所の表面に散乱する玉石
写真⑦
くぼ地に多数見られる湧水の一つ。透明な清水の
部分が湧水で、たまり水(濁水)との違いが明瞭
である。清水をとおして中礫層(基盤の砂礫層)
の分布が確認される。
43
写真⑭
斜面上段に水平に分布する玉石層
写真に見られるように、破堤・流出した堤体のえぐり取られた表面には、多量の礫が散乱している(写真⑧,写真⑭)。
破堤部の表面に散乱する礫は玉石が主体であり、その下のえぐり取られてくぼんだ部分の表層には、密な中礫層からなる基盤
の河床堆積物が広く分布している(写真⑦,写真⑨)
。ボーリング調査によれば、基盤の礫層はφ10∼100mm の円礫を主体とする
結果が得られている。
写真⑨
排水のための釜場掘削により、すくい上げられた
中礫層。
破堤後の地盤の状況から堤体直下の洗掘は、堤体が流出した後、高水敷と堤内地の比高差により生じ、そのとき基礎地盤の一
部が堤内地に流出したものと考えられる。
大半が基盤(自然地盤)を構成する河床堆積物と
考えられる。
このことから、堤内地に散在する砂礫は、堤防の破堤過程において異なった流れが生じたことにより堤体内部及び基礎地盤に
由来する砂礫が輸送されたものと考えられる。
図 3-24
破堤部の地表面に散乱する礫の状況
(5) 破堤メカニズムの推定
一般に、洪水時における河川堤防の変状は侵食・越流・浸透の 3 つの現象によってもたらされると考えられる。
今回の洪水により破堤に至った五十嵐川(諏訪地区)において、ヒアリング調査、水理水文解析、堤体および基礎地盤状況を把握するための土質調査等を実施し、その結果から推定した各現象に対する評価を図 3-25
に整理した。また、破堤箇所の変状メカニズム(変状の経過)を図 3-26 に示す。
各変状現象については、
① 表のり面の侵食に対しては、周辺ののり面に侵食の形跡が認められないこと、また、洪水時の流速によるせん断力が、表のり面を覆う植生の侵食耐力を下回ることから、侵食が破堤を引き起こした可能性は低い
と考えられる。
② 雨水,河川水の浸透に伴う堤体のすべり破壊に対しては、天端がアスファルト舗装により覆われていること、前期降雨が少なかったことに加え、河川水位の上昇が短時間に発生していることから、堤体にすべり
破壊を発生させるような湿潤状態にならなかったものと考えられる。但し、堤防表層は、降雨の浸透により飽和度が増していたと推定される。
また、基盤浸透に対しては、河川水位がある程度高くなると堤内地の一部で湧水(透明な水)が見られるとの住民の証言があることや、現地調査の結果から堤内地の一部に噴水や噴砂跡が確認されること、部分
的に行き止まり型の地盤を形成していると考えられる箇所があるなど、浸透流解析結果でも得られたようなボイリング(噴水、墳砂)は生じていたものと考えられる。
③ 越流による裏のり面、法肩の侵食及び法尻の洗掘に対しては、破堤箇所が目撃証言にあるように、上下流に比べて堤防高が少し低く、裏のりの植生が乏しかったことに加え、2 回にわたり越水が生じていたこと、
解析結果で見られるように越水時のせん断応力がのり面表層の耐侵食力を上回っていたことなどから、破堤部の堤防は、周辺堤防と比較して越流により洗掘されやすい状況にあったものと考えられる。
現 象
堤防・地盤の状況および変状現象
外 力
侵 食
河川水
平均流速 (1.90m/s)
目撃情報
・9:30∼10時頃に約5∼8mの
幅で10cm程度の越水
・破堤推定時刻(13時頃)の
約30分前に4∼5cm程度の
越水
越 流
表法面
植生被覆
天端
(目撃情報によれば前後の堤防
高よりも少し低い)
周辺法面に侵食の形
跡は認められない
法勾配 1:1.8
水
雨
堤体浸透
降雨量
224mm
当該降雨
三条観測所
7/12∼7/13
表のり面は侵食に耐える
U*=0.16m/s<U*r=0.17m/s
表法面の侵食の可能性
は低い。
裏法面
植生乏しい
(目撃情報による)
H.W.L
破堤域の幅は
約120m
法尻部∼堤内地に
かけて大きな盆状
の洗掘が見られ、
その深さは最大で
約4m
堤防
5cm以上の越流深で裏法
面は洗掘される
τ/τ0=0.49
すべりに対しては安全率
Fsが1.0を越えている
Fs =1.05∼1.23 >1.0
河川水
基盤浸透
水位が堤防天端付近にな
るとG/Wが1以下となる
基礎地盤
すべりに対しては安全
である。
アスファルト舗装
雨水浸透には有利な条件である
破堤箇所最高水位:T.P.+15.80m
(水理計算による)
堤内地では、1∼5mの層厚で粘性土層が分布し、川から
遠ざかるに従い層厚が厚くなる傾向にある。
その下位には堤外地∼堤内地にかけて砂礫層が広く分
布するが、破堤区間上流∼中央部の堤内地では薄くな
る箇所がある。
G/W=0.84∼0.91<1.0
堤内地でボイリング (噴砂、噴水)が生じ
た可能性はあるが、対
岸でも同様の解析結果
が得られていることか
ら表層の基礎地盤を破
壊するようなパイピン
グは生じなかったもの
と考えられる。
② ①より水圧がさらに大きくなり、大量
の水と共に表土を破って土砂が吹き上が
るボイリングが発生する。
ボイリング
③ 地表に土砂を流出し、空洞が堤防(川
側)に次第に延長していくパイピングが
発生する。
パイピング
④ 水圧によって、地層中の弱点部に水が
高圧で入り込み、土の組織を破壊しなが
ら浸透破壊を起こし、堤防破壊に至る。
凡 例
堤体
堤体
空洞の進行方向
:対象項目
部分的に行き止まり地盤を形成している可能性が
ある。
図 3-25
ガマ
① 洪水により地下水圧が増大し、表土を
半丘形に持ち上げるガマが発生する。
堤 体
天 端
難透水層
透水層
浸透
天端-1m以上の水位継続時間:3.3hr
(水理計算による)
越流により裏法面、法
肩、法尻が洗掘された
と考えられる。
堤体は旧堤(明治10年頃)と新堤(昭和8∼12年頃)からな
るが、両者ともシルト質細砂∼砂質シルトにより構成
されている。
旧堤と新堤の間には部分的に玉石層が認められ、旧堤
の表面に敷き詰められた敷石と想定される。
最大時間
雨 量
43mm/hr
変状現象の評価
堤防本体と基礎地盤の概念図
アスファルト舗装
河川水
解析結果
・10時頃から越水開始
・その後、一時水位が低下
し、12時頃から再び越水
開始
解析結果
:調査結果
(目撃情報含む)
破堤のメカニズムの整理
:解析結果
【参考図
ボイリング及びパイピング概念図】
:推定結果
これらの解析結果等を踏まえ、破堤のメカニズムを推定すると以下のとおりとなる。
堤防は明治期の旧堤防を嵩上げ拡幅し、昭和 12 年頃には概ね現在の形状になっていたものと推定される。堤防土質は、堤体がシルト質細砂∼砂質シルトで構成され、基礎地盤の表層は粘性土で覆われ、その下部に砂礫層が分
布する構造となっている。現在の堤防は、高さが約 4m、天端幅は約4mでアスファルト舗装が施されており、のり勾配は2割で表・裏とも植生で覆われている。破堤箇所は、周辺に比べ堤防高さが若干低く、裏のりは植生が乏しかった模
様である。
堤防に作用した降雨は、1ヶ月前からの降雨量でみると 360 ㎜を越え、河川水は 7 月 13 日 10 時前後に堤防天端を超え始め、その後低下して再び 12 時頃から水が上昇し越水が生じたものと考えられる。
非定常浸透流解析によると、河川水位が天端に迫ると基礎地盤の砂礫層での圧力が高まり、堤内地でボイリング(噴水、噴砂)が生じる可能性があることから、10 時前後にはこのような現象が生じていたものと推
定される。但し、破堤が生じていない対岸においても同様な解析結果が得られている。また、調査結果から推測すると破堤に直接つながる基礎地盤を破壊するような浸透現象(パイピング)は生じなかったものと考
えられる。河川水位はその後低下し 12 頃から再び越水が発生すると、越流によるせん断力がのり面の植生の耐侵食力を上回る状態が続き、越流水の落下するのり尻部の洗掘及び越流水が流下するのり肩からのり面
が侵食し、さらに拡大して破堤に至ったものと推定される。その後堤防は一部は下流側へ、主体は上流側へ破堤が拡大したものと推定される。これは、破堤後の落堀の形状と堤内地の稲の倒伏状況からも読みとれる。
また、堤内地に散乱する砂礫や玉石は、堤体材料のほか、破堤に伴い基礎地盤が深く抉られたために砂礫層の一部が流出したことによると考えられる。
以上のことから、五十嵐川(諏訪)の破堤は、越流による裏のり面等の侵食が主原因であると考えられる。
44
降雨
① 降雨浸透によって裏の
り尻部の飽和度が高くな
る。
アスファルト舗装
新堤
高飽和度
河川水位
旧堤
粘性土
砂礫
降雨
② 河川水位が上昇し、越
流し始める。
堤内地では噴砂、噴
水が生じた可能性が
ある。
③ 越流水深が深くなり、
越流水が強度の低くなっ
た裏のり尻を洗掘する。
④ 裏のり尻の洗掘がさ
らに進む。また越流によ
る侵食過程の中で裏のり
肩も崩落する。
噴砂、噴水
裏のり面は植生が乏
しく、侵食されやす
い状況にあった。
降雨
失
⑤ 堤防天端が崩壊流出し
て堤体侵食が進行し、破
堤する。
前後の堤防高よりも
若干低かったため、
越流水深が深くなり、
裏のり面に作用する
せん断力が大きくな
った。
失
⑥ 堤体流出後も高水敷と
堤内地の比高差により、
堤体直下も洗掘される。
堤体に含まれる敷石や
基礎地盤の砂礫は破堤部
の落堀、堤内地に散乱す
る。
②断面
図 3-26
破堤箇所の変状メカニズム
45
(
五十嵐川
)
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