森林土木木製構造物設計等指針の制定について
平成16年5月14日付け16林整計第41号
林野庁森林整備部長より各森林管理局森林整備部長
及び都道府県治山・林道事業担当部長あて
〔最終改正〕平成21年4月27日付け20林整計第258号
木材の有効かつ積極的な利用の推進に資するため、「森林土木木製構造物設計等指針」
を定めたので、今後の設計等の参考とされたい。
なお、「森林土木木製構造物暫定設計指針及び暫定施工歩掛の制定について」(平成11年
4月5日付け11-8林野庁森林整備部計画課長通知)のうち森林土木木製構造物暫定設計
指針は廃止する。
森林土木木製構造物設計等指針の解説等の制定について
平成16年5月14日付け16林整計第41号
林野庁森林整備部計画課長より各森林管理局森林整備部長
及び都道府県治山・林道事業担当部長あて
〔最終改正〕平成21年4月27日付け20林整計第259号
「森林土木木製構造物設計等指針の制定について」
(平成16年5月14日付け16林整計第41
号林野庁森林整備部長通知)の解説等について別紙のとおり定めたので、今後の設計等の
参考とされたい。
森林土木木製構造物設計等指針及び
森林土木木製構造物設計等指針の解説等
林
野
庁
第1章
1-1
1-2
1-3
第2章
総則...............................................1
目的.............................................................1
適用.............................................................2
木製構造物の範囲...............................................3
木材の特性と利用......................................4
2-1
2-2
2-3
第3章
3-1
3-2
第4章
4-1
4-2
4-3
4-4
4-5
4-6
4-7
第5章
5-1
5-2
5-3
5-4
5-5
5-6
5-7
5-8
総説............................................................4
木材の特性.....................................................4
木材の耐朽性..................................................8
調査...........................................................11
総説...........................................................11
調査の種類....................................................11
計画...........................................................13
総説...........................................................13
小型木製構造物...............................................13
大型木製構造物...............................................14
構造物の規模及び設置箇所...................................15
木製構造物の取扱い..........................................16
地域材・間伐材の利用........................................16
防腐処理等の計画.............................................17
設計...........................................................19
総説...........................................................19
構造...........................................................20
樹種の選定....................................................20
寸法表示等の統一.............................................20
安定性・強度等の検討........................................22
木材の強度等.................................................23
小型木製構造物の設計........................................24
大型木製構造物の設計........................................25
5-8-1 大型木製構造物の設計....................................25
5-8-2 木製治山ダム............................................25
5-8-2-1
木製治山ダムの目的..................................25
5-8-2-2
木製治山ダムの設置条件..............................25
5-8-2-3
木製治山ダムの方向..................................27
5-8-2-4
木製治山ダムの計画勾配..............................27
5-8-2-5
木製治山ダムの高さ..................................28
5-8-2-6
木製治山ダムの放水路................................28
5-8-2-7
木製治山ダムの袖....................................29
5-8-2-8
木製治山ダムの型式..................................29
5-8-2-9
木製治山ダムの安定計算..............................30
5-8-2-10
木製治山ダムの安定計算に用いる荷重................32
5-8-2-11
木製治山ダムの基礎の根入れ........................33
5-8-2-12
木製治山ダムの洗掘防止............................33
5-8-3
大型木製護岸工..........................................34
5-8-3-1
大型木製護岸工の目的................................34
5-8-3-2
大型木製護岸工の形式................................34
5-8-3-3
大型木製護岸工の断面................................35
5-8-3-4
大型木製護岸工の取付................................35
5-8-3-5
大型木製護岸工の安定計算............................36
5-8-3-6
大型木製護岸工の基礎の根入れ及び洗掘防止............40
5-8-4
木製流路工..............................................40
5-8-4-1
木製流路工の目的....................................40
5-8-4-2
木製流路工の渓床....................................41
5-8-4-3
木製流路工の断面及び護岸工の高さ....................41
5-8-4-4
木製流路工の勾配の変化点及び縦断形..................42
5-8-5
大型木製土留工(擁壁工を含む)......................42
5-8-5-1
大型木製土留工の目的................................42
5-8-5-2
大型木製土留工の設置位置............................42
5-8-5-3
大型木製土留工の形式................................43
5-8-5-4
大型木製土留工の断面................................45
5-8-5-5
大型木製土留工の方向...............................45
5-8-5-6
大型木製土留工の安定計算...........................45
5-8-5-7
大型木製土留工の基礎の根入れ及び洗掘防止...........46
第6章
6-1
6-2
6-3
6-4
施工..........................................................47
総説..........................................................47
木材の品質確保..............................................47
防腐処理等の品質確認.......................................48
出来形管理基準..............................................48
第7章
管理..........................................................50
総説..................................................................50
第1章
1-1
総則
目的
この指針は、間伐材等を利用した木製構造物の調査、計画、設計、施工
上の方針を定め、木材の有効的かつ積極的な利用の推進に資することを目
的とする。
〔解説〕
1 木材利用の意義は、木材が再生産可能で加工に要するエネルギーが少な
く、人と環境に優しい素材であること、その有効利用の促進が環境に負荷
の少ない循環型社会の形成につながること、木材利用の確保が森林整備や
保全を通じて二酸化炭素の吸収及び固定による地球温暖化防止等の森林の
多面的機能の発揮に資することである。また、地域材等を積極的に利用す
ることは地域の森林の適切な整備に資するだけでなく、地域の活性化につ
ながるものであり、こうした観点から各方面で木材の適切な利用を積極的
に推進することが重要である。
2 本指針は、森林土木分野における木製構造物に関して現時点での標準的
な基本事項を取りまとめたものであり、今後の技術の発達、関連諸法令の
改廃等に応じて改訂する。この指針は、間伐材等を利用した木製構造物の
調査、計画、設計、施工上の方針を定め、木材の有効的かつ積極的な利用
の推進に資することを目的とする。
1
1-2
適用
森林土木事業における木製構造物の調査、計画、設計、施工について
は、「治山技術基準」(昭和46年3月27日付け46林野治第648号林野庁長官
通知)、「林道技術基準」(平成10年3月9日付け10林野基第812号林野庁
長官通知)及び「林道技術基準の運用」(平成14年3月29日付け13整計第
540号林野庁整備部長通知)(以下、「技術基準等」という。)によるもの
であるが、技術基準等に示されていない事項についてはこの指針によっ
て行うものとする。
〔解説〕
森林土木事業における構造物に木材を使用する場合、木材自体が保有する
強度や耐久性などの性質が樹種、径級、加工方法、欠点の存在などにより変
動する。また、材料は腐朽を起こしやすい環境に置かれることから腐朽の進
行に伴って強度が低下する。
これらのことを考慮した設計等に資するためにこの指針を定めるものであ
り、技術基準等に示されていない事項についてはこの指針によって行うもの
とする。
2
1-3
木製構造物の範囲
この指針による木製構造物は、丸太、製材及びこれらを機械加工した木
製品を主要な材料とした次に掲げる構造物のうち、林道橋などの木橋を除
いたものとする。
1 小型木製構造物
安定計算、部材応力計算等を必要としない小規模な構造物
2 大型木製構造物
安定計算、部材応力計算等を必要とする大規模な構造物
〔解説〕
1 集成材を用いた木製構造物は、材料特性、設計方法が丸太やその加工品
を主要な材料とする木製構造物と異なることから、この指針の対象外とす
る。
2 木材は、腐朽する特性があることを踏まえ、木製構造物の腐朽後は植生
の根系によって構造物の機能が代替され、土砂等の安定の維持が期待でき
る小型木製構造物と、根系のみでは構造物の機能の代替が期待できない大
型木製構造物に分類する。
3 大型木製構造物とは、木製治山ダムのほか、枠構造で高さ1.5m以上の
護岸工及び土留工(擁壁工)、さらにその護岸工により構成される流路工
とする。
4 前記3以外のものを小型木製構造物とする。
3
第2章
2-1
木材の特性と利用
総説
木材を構造物の材料として使用する場合は、木材の特性を生かした適切
な利用を心がける必要がある。
〔解説〕
木材を構造物の材料として使用する場合は、木材が構造物の目的、要求さ
れる機能に合致した材料であることを確認するとともに、木材の特性を生か
した適切な利用を心がける必要がある。
2-2
木材の特性
木材は、軽量で加工が容易であり、地域材を用いた際には加工・運搬及
び建設に要するエネルギー消費量が少なく、外観が周囲の景観になじみや
すいといった利点がある。
しかし、木材は天然の生物材料であるため、構造物の材料としてみた場
合、種々の経年変化と生物劣化、可燃性等特異な性質を示す。
このため、木製構造物の設計に当たっては、これら特性を十分留意する
必要がある。
〔解説〕
木材の利用に当たっては、次に示す木材及び木製構造物の特性を十分理解
しておく必要がある。
(1)物理・科学的な性質
① 計量で取り扱いや運搬が容易である。
② 加工が簡単で工作設備が簡易である。
③ 強度は引張強度で比べると、コンクリ-トより強く、鉄より弱いが、
木材は比重が小さいので、重さの割に強い。
④ 衝撃、振動、音の吸収性が高い。
① 有機物であるために腐朽する。ただし、水中・土中等で空気を遮断
した状態では、長期間腐朽しない。
4
⑥ 生物材料であるため、材質が個体、部位、方向等によって不均質で
あり、腐朽等による劣化も不均質なため、厳密な安定計算、部材応力
計算等は困難である。
⑦ 乾燥により収縮して、寸法変化や乾燥割れを引き起こしやすい。
⑧ 耐酸性など、化学変化等に対して強い。
⑨ 可燃物であるが、十分な断面を持つ場合は、表面の炭化層が内部へ
の燃焼を遅らし、金属のように高温による急激な強度低下を起こしに
くい。
(2)環境への影響
① 木材は、大気中の二酸化炭素を炭素化合物として固定したものであ
り、二酸化炭素の固定効果がある。
② 生産・加工等に伴うエネルギ-消費や二酸化炭素等の排出量が少な
く、環境負荷が小さい。
③ コンクリ-ト・鉄に比べて再利用・廃棄が容易である。
④ 森林・渓流の重要な構成要素であり、生態系や環境にとっては不可
欠な物質である。
⑤ そのまま残置しても腐朽し自然に還元することから、環境への影響
が小さい。
(3)心理・生物的な効果
① 適度な弾性と柔らかな感触、断熱効果により冷たさを感じさせない。
② 心地好さを感じさせる生物材料であることから、景観の改善効果が
ある。
③ 香り成分の発散により心理的な安らぎを与える。
(参考1)木材の物理・化学的特性
木材の主な物理・化学的特性は,次のとおりである。
1 木材の組織
材は、一般的には周辺の色の薄い辺材と中心の色の濃い心材に分けられ
る。辺材は、水分等の通導の役割を担う組織であり、糖・デンプン・窒素
化合物が多く耐朽性は小さい。心材は,辺材に化学物質が沈着して幹を支
える組織となったもので、抽出成分が多く耐朽性は大きい。
幼齢期に造られた細胞は、長さが短くたわみの特性を示すヤング係数が
小さくて強度が劣ることから、未成熟材(針葉樹では,おおむね15年生ま
で)と呼ばれ、曲がりにくい成熟材と区分できる。間伐材・小径木は、強
5
度的な性能が劣る未成熟材である割合が高い。
2 木材の含水率
木材の実質の重さに対して木材に含まれる全ての水の重さの比率を含水
率という。
伐採直後の乾燥していない状態の木材を生材(なまざい)と呼ぶが、針
葉樹の場合は、心材に比べて辺材の含水率が高く、100~200%に達する。
生材を長期間放置しておくと、次第に乾燥して一定の含水率(気乾含水率)
となる。その時の含水率は、地域や季節等によって異なるが、一般的には
12~15%程度であり、その状態の材を気乾材と呼ぶ。
木材は、乾湿の状態によって収縮・膨張を繰り返し、異方性を有するた
め、割れやそりを生じる。
含水率が20%以下では、腐朽菌の活動が抑えられ腐朽しにくい。また、
繊維飽和点(およそ30%)より含水率が下がると、結合水が減少し、含水
率の低下にしたがって強度が増加する。
3 木材の強度
木材の強度は、引張強度で比べると、鉄より弱いが、コンクリ-トより
強い。また、木材の密度は鉄に比べて小さいことから、強度を密度で除し
た比強度は鉄を上回る。
木材は、繊維細胞が軸方向に配列した構造をしており、異方性を有する
ため、荷重のかかる方向によって強度が異なる。圧縮強度、引張強度は、
繊維方向の強さが、繊維に直角方向の強さより5~30倍程度大きい。
木材は生物材料であることから、強度は樹種・部位・生育環境等によっ
て異なり、ばらつきが大きい。
4 木材の劣化
木材は、腐朽・蟻害等による劣化により強度低下を引き起こし、これが
木製構造物の耐久性を左右する。
(1)腐朽
腐朽は、木材腐朽菌が木材を栄養源として繁殖して引き起こされる。
木材に腐朽が生じると、木材は変色し、軟質化し、末期には指等で容易
に崩れるほど弱くなる。木材が腐朽する条件としては、栄養分・水分・
酸素・温度が挙げられる。
① 栄養分:木材の樹皮は栄養分に富むことから、樹皮をはがした方が
耐朽性は高くなる。また、抗菌成分を持っている樹種や心材部分は腐
りにくい。
6
② 水分:含水率が30%以上での環境下で腐朽は進みやすく、含水率が
20%を割ると木材腐朽菌の活動は停止するが、再び水分が与えられれ
ば活動を開始する。
③ 酸素:木材腐朽菌は好気性であり、木材が水中や地中など、酸素が
遮断される環境にあると腐朽しない。
④ 温度:木材腐朽菌は、低温では生育が遅く、20~35℃で旺盛に生育
し、高温では生育が悪くなり、死滅するか胞子を作って休眠状態に入
る。
(2)蟻害
蟻害は、主にイエシロアリ、ヤマトシロアリによる食害である。イエ
シロアリは、関東以南の海岸線沿いの温暖な地域に分布し、発生頻度は
低いものの被害は大きい。ヤマトシロアリは、北海道を除く日本全土に
分布し、木材腐朽菌と同様の湿潤な環境を好むことから、腐朽と同時に
蟻害が進行することが多い。
(参考2)環境への影響
1
二酸化炭素の固定
木材は、樹木が、地球温暖化の原因の一つである空気中の二酸化炭素を
吸収し、太陽エネルギーにより樹幹等に炭素として固定蓄積させたもので、
絶乾重量の約2分の1が炭素である。木材の長期的な利用を図ることによ
り、二酸化炭素の固定期間を延ばすことができる。また間伐材の有効利用
を図り、間伐を進めることにより、健全な森林を育成し、森林の二酸化炭
素の固定量を増やすことができる。
2 環境負荷
木材は、樹木が光エネルギーを利用して継続的に生産しているものであ
る。また、加工・再利用・廃棄が容易であり、二酸化炭素の排出量等、環
境に与える負荷が小さい。木材が、化石燃料を多く使用する材料(コンク
リート・鉄等)の代替となることにより、二酸化炭素の排出量を抑制する
ことができる。
3 生物材料
木材は、自然状態で森林や渓流に存在し、それらの重要な構成要素であ
り、生態系や環境の維持に不可欠な生物材料である。そのまま残置しても
腐朽して自然に還元することから、生態系に与える影響は少ない。
7
(参考3)心理・生理的な効果
1
触覚・嗅覚的効果
木材は、熱の伝わりやすさを表す熱伝導率が小さいことから、触ったと
きに熱が逃げにくく、ぬくもり感がある。さらに、適度な弾性があり、柔
らかな感触が得られる。
また、木材の香り成分は、気分を和らげる効果がある。
2 視覚的効果
木材は、心地よさを感じさせる生物材料であり、人に見える場所に構造
物の材料として用いることにより、構造物自体に対する違和感の解消につ
ながる。
2-3
木材の耐朽性
木材は、腐朽等により劣化することは避けがたい材料であり、利用に当
たっては、樹種・材質、使用環境等から木材の耐朽性を検討し、適切な利
用を図るものとする。
〔解説〕
木材は主として腐朽により劣化し、これにより木材及び構造物の耐用年数
が左右される。木材の耐朽性は樹種、材質(心材と辺材の違い等)によって
異なるが、それ以上に木材が使用される環境(水分,日射等)により大きく
影響を受ける。例えば、水中での使用環境で、長期間にわたって機能を有し
ている木製構造物が少なくない。したがって、木材を利用するに当たっては、
使用する木材の樹種・材質、使用環境等から、木材の耐朽性を検討し、適切
な利用を図るものとする。
(参考)長期間にわたって機能を有している木製構造物の事例
1
長野県御嶽山濁沢の木製構造物
長野県の御嶽山の南麓を流下する濁沢に設置されたカラマツ材を用いた
木製治山床固工及び護岸工について、設置後17年経過後に床固工及び護岸
工の部材を採取して曲げ試験により曲げ強度を測定し、穿孔抵抗試験によ
り腐朽厚(直径方向に測定した腐朽部の厚さ)を測定した結果は、次のと
おりである(図-1、2、3参照)。なお、木材の腐朽厚÷全体直径を腐
8
朽厚比と定義した。(石川ら 2003)
① 床固工部材は17年経過後も腐朽厚は0.6cm以下であり、腐朽の進行は
極めて小さく、健全な部材とほぼ同様の強度を有している(図-1、2
参照)。これは、この床固工の部材に常に流水がかかっているためと考
えられる。
② 護岸工部材は渓床からの高さにより腐朽厚は大きく異なる(図-1、
2参照)。すなわち常時水がかかっている最下部の部材の腐朽厚は1㎝
以下であり、上部に行くほど腐朽厚は大きくなり、従って曲げ強度も小
さくなる。
③ 以上のことより、同じ樹種の部材を用いても、その使用環境、特に常
時水がかかっているかどうかでその耐久性は大きく異なることがわか
る。また、護岸工上部で特に腐朽厚が大きいのは、日射が強く、乾湿の
変動が大きいためと考えられる。
④ 木材(全体)の曲げ強度は腐朽厚比によりほぼ評価できる(図-3参
照)。すなわち、直径に占める腐朽厚の比が大きくなるほど全体の強度
は低下する。したがって、同じ腐朽厚でも直径の大きな(太い)木材ほ
ど強度の低下は小さくなり、耐朽性が高くなる。
許容曲げ応力度
護岸工裏1
護岸工裏1
護岸工1
流水の影響なし
護岸工1
護岸工2
護岸工2
護岸工5
護岸工5
流水の影響まれにあり
護岸工裏4
流水の影響時々あり
護岸工7
護岸工9
健全部直径
護岸工10
流水の影響常時あり
腐朽部厚
床固工1
木製構造物の部材
木製構造部の部材
護岸工裏4
護岸工7
護岸工9
護岸工10
床固工1
床固工2
床固工2
床固工3
床固工3
床固工4
流水の影響常時あり
床固工5
控木
床固工4
床固工5
控木
0
5
10
15
20
25
0.0
木材直径(腐朽部厚) (cm)
20.0
40.0
60.0
2
曲げ強度 (N/mm )
図-2 各部材の曲げ強度(全体直径dtで計算)
図-2 各部材の曲げ強度(全体直径 dt で計算)
図-1 図-1 穿孔抵抗値による健全部直径(ds)と腐朽厚(dr)
穿孔抵抗値による健全部直径(ds)と
腐朽厚(dr)
9
60
MOR護岸工
曲げ強度(N/mm2)
50
MOR床固工
40
MOR全体
30
MORs護岸工
MORs床固工
20
2
R = 0.8176
10
MORs平均
許容曲げ応力度
0
0
0.2
0.4
0.6
腐朽厚比(dr/dt)
0.8
図-3 腐朽厚比(dr/dt)と曲げ強度(MOR, MORs)
MORは全体直径(dt)で計算、MORsは健全部直径(ds)で計算
2
青森県岩木川坪毛沢の木製治山床固工
青森県津軽半島の岩木川坪毛沢に設置されたヒバを用いた木製治山床固
工では、設置後40~50経過してもこれらの構造物は十分に機能しているこ
とが報告されている。(唐牛1999)
10
第3章
3-1
調査
総説
木製構造物を設置する場合は、構造物の目的等に応じて、必要な事項を
調査する。
〔解説〕
1 木製構造物の計画、設計等を合理的かつ効率的に実施するために、木製
構造物の目的、機能に応じて、木製構造物の設置箇所の環境を事前に調査
するものとする。
2 大型木製構造物については、原則として、調査の実施を検討するものと
する。
3 構造物の設置に関する一般的な調査は、技術基準等によるものとする。
3-2
調査の種類
調査の種類は次のものとする。
① 概況調査
② 木材使用に関する調査
③ 調査結果の取りまとめ
〔解説〕
1 概況調査
木製構造物の位置、構造、規模等を決定するために次の調査を行う。
(1)自然的特性調査
地形、土質・地質、土壌、気象、林況・植生、水文等調査については、
一般の治山及び林道事業に係る調査に準じて行う。
(2)荒廃現況調査
木製構造物を設置する渓流における土石流発生のおそれの有無を調査
する。調査方法は、山地災害危険地区の崩壊土砂流出危険地区及び国土
交通省所管の土石流危険渓流の指定の有無、土石流発生の履歴の有無等
の判断による。また、周辺の山腹斜面からの落石、なだれの危険性につ
いても調査を行う。
11
(3)社会的特性調査
治山事業関係については、特に保全対象の位置、種類、規模等、林道
事業関係については、開設の目的を確認するとともにその幅員、延長等
を調査する。
2 木材使用に関する調査
(1)木材の使用環境調査
木材は、使用環境により劣化の程度が異なることから現地調査、資料
調査により木製構造物に関する事項を適切に把握する。
ア 木材は、水中にある状態では腐朽しにくいのに対して、乾湿の変化
が激しい場合は腐朽しやすいなど、使用環境により、劣化の程度が異
なることから、現地調査、資料調査により、木製構造物の設置環境に
関する事項について概括的に把握する。
イ 調査項目は次のものとする。
① 水による影響の程度
② 日射の程度
③ シロアリの生息の有無等
ウ 防腐処理等により水環境や人間生活への影響が懸念される場合に
は、上記に加え、必要に応じて現地調査、資料調査により次のものを
調査する。
① 地表水及び地下水の流下の状況
② 渓流等に生息する動植物の状況
③ 水利用の状況
3 調査結果の取りまとめ
調査結果は、計画、設計時に施設の位置、構造、規模及び木製構造物の
耐久性等を検討できるよう取りまとめる。
12
第4章
4-1
計画
総説
木製構造物を設置する場合は、木材の特性に留意しつつ、構造物の目的
等に応じて、その規模、設置箇所、取扱いなどを適切に計画するものとす
る。
〔解説〕
1 木製構造物の計画に当たって、構造物の基本的事項は技術基準等によ
るものとする。
2 木製構造物は、主として木材及び石材等の自然素材から構成されるこ
とから周辺環境になじみやすく、動植物に与える影響が少ない構造物で
ある。したがって、景観保全、環境保全が重要な地域では、積極的に採
用することが望ましい。
3 第1章1-3「木製構造物の範囲」に示した小型木製構造物と大型木
製構造物の定義を踏まえ、第3章3-2「調査の種類」の調査結果を反
映した適切な計画を樹立するものとする。
4 特に大型木製構造物は、安定計算、部材応力計算等を必要とし、所要
の強度を確保することが条件となるため、現地の状況及び木材の特性等
を十分に踏まえて計画するものとする。
4-2
小型木製構造物の計画
小型木製構造物は、規模が比較的小さくほとんど外力を考慮する必要の
ない構造物で、次のように区分して計画するものとする。
① 簡易木製構造物
② 小型木製護岸工
③ 小型木製土留工(擁壁工を含む)
〔解説〕
1 簡易木製構造物
筋工、柵工、水路工、簡易のり枠工、道路の横断排水溝等、外力を考慮
する必要のない簡易な構造物とする。
13
2
小型木製護岸工、小型木製土留工
小型木製護岸工、小型木製土留工は次のものとし、 一般的には安定計
算を行わないものとする。
① 高さ1.5m未満の枠構造の護岸工及び土留工(擁壁工を含む)
② 枠構造でない護岸工及び土留工(擁壁工、仮設防護柵を含む)
4-3
大型木製構造物の計画
大型木製構造物は、比較的規模が大きく外力を考慮する必要のある構造
物で、次のように区分して計画するものとする。
① 木製治山ダム
② 大型木製護岸工
③ 木製流路工
④ 大型木製土留工(擁壁工を含む)
〔解説〕
1 木製治山ダム
主として木材、石材等から構成される治山ダム工とする。
2 大型木製護岸工
高さ1.5m以上の枠構造の木製護岸工とする。
3 木製流路工
大型木製護岸工により構成される流路工とし、床固工が木製構造物でな
い場合(コンクリート・鋼製等)も含めるものとする。
4 大型木製土留工(擁壁工を含む)
高さ1.5m以上の枠構造の木製土留工(擁壁工を含む)とする。
14
4-4
構造物の規模及び設置箇所
木製構造物の規模及び設置箇所は、木材の特性に留意しつつ、適切な性
能や機能が確保できるよう計画するものとする。
〔解説〕
1 木製構造物の規模は、想定を超えた原因により構造物が損壊しても、そ
れによる被害や影響が少ない大きさとし、一定の規模が必要な場合、複数
の構造物に分けて個々の規模を小さくすることも検討するものとする。
2 次のような条件を持つ箇所については、積極的に木製構造物の採用を検
討するものとする。
① 衝撃緩衝効果、吸音効果等、木材の持つ物理・科学的特性を生かす場
合
② 渓流環境の創造・保全等、環境への影響を考慮する場合
③ 木材使用による心理・生理的な効果を期待する場合
④ 土石流等の可能性の少ない小渓流に設置する治山ダム等の場合
⑤ 背面土圧の小さな土留工、擁壁工等の木製構造物で、部材が腐朽する
までの間に植生の繁茂等によりその機能の代替が見込まれる場合
なお、長大斜面、傾斜の急な斜面での山腹工等の計画に当たっては、
コンクリート・鋼製の構造物に組み合わせて、木製構造物の使用を検討
するものとする。
⑥ 木材が腐朽しにくい水中・土中に設置し、長期間機能の発揮が期待さ
れる場合
⑦ 冷涼な気候で常に流水のある箇所に設置する場合
⑧ 周囲が樹木で覆われており日射の少ない箇所に設置する場合
⑨ 道路の横断排水溝等の簡易な工作物で、補修等が容易である場合
⑩ 工事用の仮設防護柵、応急復旧工事の構造物で、一時的な使用に供す
る場合
3 次のような条件を持つ場所については、木製構造物の利用を避けるもの
とする。
① 木製構造物を設置することにより人命等に好ましくない影響を与える
おそれがある場合
② 大規模な衝撃力が木製構造物に作用するおそれのある場合
③ 長期にわたり強度の発現の必要がある一方で、点検、補修等が困難な
場合
15
4-5
木製構造物の取扱い
木材は腐朽等による劣化を避けることができないことから、木製構造物
の計画に当たっては、施工後の取扱いを検討の上、適切に対処するものと
する。
〔解説〕
具体的な取扱方法は表-1に示す区分とする。
表-1 木製構造物の取扱いの区分と内容
区 分
内
容
残 置 構造物の必要性が失われた後は,設置した場所で腐朽するなど自
然に還元すること。
撤 去 構造物の必要性が失われた時点で取り片付けること。
更 新 腐朽等により構造物の機能が失われた時点で構造物の全部又は一
部を再度設置すること。
4-6
地域材・間伐材の利用
計画に当たっては、地域材・間伐材の利用を図るように努めるものとす
る。また、合法性の証明された木材の利用を図るものとする。
〔解説〕
1 望ましい森林の整備の確保をはじめ循環型社会の形成、持続可能な社会
の実現等の観点から、多面的機能発揮のための森林の整備を通じて供給さ
れる地域材の利用促進に努めることが重要である。
2 森林の持つ多面的機能を高度に発揮させるために、適切に間伐を実施し
て森林を育成していく必要がある。間伐材を利用することにより、健全な
森林の育成に寄与することとなるため、間伐材の積極的利用に努めること
が重要である。
3 「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」
(平成12年法律第100号)及び「環境物品等の調達の推進に関する基本方
針」(平成13年3月9日環境省告示第11号)において、重点的に調達を推
進すべき環境物品等として定められている間伐材、又はその伐採に当たっ
て生産された国における森林に関する法令に照らして合法性・持続性の証
16
明された木材の使用を積極的に推進するものとする。
4-7
防腐処理等の計画
木材保存剤による木材の防腐・防蟻処理は、環境保全に留意した上で、
必要に応じて、適切に行うものとする。
〔解説〕
1 木材の防腐・防蟻処理は、木製構造物の耐久性を向上させるが、木材保
存剤の環境への影響も十分考慮して計画するものとする。
2 特に次の木製構造物については、防腐・防蟻処理の必要性について、慎
重に検討し、防腐・防蟻処理を実施する場合にあっては適切な方法により
行う必要がある。
① 流水・地下水に接触する構造物
② 多くの人が触れる構造物
③ 希少動植物の生息地に設置する構造物
(参考)木材保存剤と処理方法
1
防腐・防蟻処理に使用する木材保存剤は、安全性が確認されているもの
を使用する必要がある。なお、ベンゾ(a)ピレン等の毒性の高い化合物
を多く含むクレオソート油は、使用しないことが望ましい。
日本工業規格(JIS)で規定されている木材保存剤には、次のものがあ
る。
① 第四級アンモニウム化合物系(AAC-1,AAC-2)
② 銅・第四級アンモニウム化合物系(ACQ-1,ACQ-2)
③ 銅・アゾール化合物系(CUAZ-1,CUAZ-2,CUAZ-3)
④ ほう素・第四級アンモニウム化合物系(BAAC)
⑤ 第四級アンモニウム・非エステルピレスロイド化合物系(SAAC)
⑥ アゾール・第四級アンモニウム・非エステルピレスロイド化合物系(A
ZAAC)
⑦ 脂肪酸金属塩系(NCU-E,NZN-E,VZN-E)
⑧ ナフテン酸金属塩系(NCU-O,NZN-O)
⑨ アゾール・ネオニコチノイド化合物系(AZN)
⑩ クレオソート油(A)
17
2
防腐・防蟻処理の処理方法には、加圧式、浸漬、塗布などがあり、効果
や経費を考慮して、適切な方法を選定する。木材保存剤の浸透性は樹種に
よって多少の差はあるが、一般的に辺材は浸透しやすく、心材は浸透しに
くい。
① 加圧式
加圧注入施設を用い、加圧や減圧の操作を行って薬剤を注入する方法
であり、薬剤の浸透効果に優れ、腐効果の信頼性が高い。
② 浸漬
木材を、薬剤槽に漬けて処理する方法である。多量の薬剤を必要とし、
部分的な処理ができない。
③ 塗布
最も簡易で小規模な設備で実施できる表面処理法であり、補修方法と
しても用いられる。薬剤の浸透深さが十分に得られず、長期にわたる効
果の維持は期待できない。
表-2 心材に対する木材保存剤の浸透性(樹種別)
区
分
樹
種
良
好
ヒバ、ハンノキ
やや良好
スギ、マツ類、ツガ、モミ
困
難
ヒノキ、エゾマツ、トドマツ、トウヒ、ケヤキ、ブナ
極めて困難
カラマツ、クリ、クヌギ、クスノキ、ナラ類
(木材工業ハンドブック,一部修正)
18
第5章
5-1
設計
総説
木製構造物を設置する場合は、木材の特性に留意しつつ、構造物の機能、
耐朽性等を検討して、現地に適した設計を行うものとする。
〔解説〕
1 木製構造物の設計に当たって、構造物の基本的事項は技術基準等による
ものとし、木材の特性に十分留意して設計するものとする。
2 木製構造物の設計に当たっては、第3章によって実施した調査の結果、
利用する木材の耐朽性を検討して、これを考慮する必要がある。
3 木材の腐朽の速度、時期等は、樹種、材質、大きさ(直径)、使用環境
等によって異なり、一律には決定することは困難なことから、木製構造物
の設計に当たっては、必要に応じて類似の樹種や使用環境下における事例
を参考に耐朽性を判断するものとする。
(参考)木材の使用環境と劣化
木材の使用環境による劣化の程度は次のとおりである。
① 水中・土中
酸欠状態であり木材は腐朽しにくく、地上に設置した場合に比べて、
長期間必要な機能を有している例が数多く見られる。
② 地上
気象条件の影響を受けやすく、変色・ひび割れ等を引き起こしやすい。
腐朽が進みやすいのは、部材接合部、割れ目、ボルト穴等、雨水が侵
入しやすく乾きにくい箇所である。
③ 地際・水際
乾湿を繰り返す場所であり、栄養分も豊富であるために、腐朽・ひび
割れ等の劣化が進行しやすい。
19
5-2
構造
設計に当たっては、木製構造物の取扱を考慮した構造とする必要がある。
〔解説〕
木製構造物の設計に当たっては、木製構造物の取扱いに応じて、次の点に
留意する必要がある。
① 残置を前提とした木製構造物は、植生の機能等により代替されるまで
の間、腐朽等による木製構造物の損壊等を起こさない大きさを有する小
型木製構造物とする必要がある。
②
更新を前提とした木製構造物のうち、美観への配慮等の必要性から、
部分的に更新が必要なものについては、部材の交換等が容易な構造が望
ましい。
5-3
樹種の選定
使用する木材は、耐朽性や入手の容易さを考慮しつつ、構造物の目的、
現地の状況に適合した樹種を選定するものとする。
〔解説〕
樹種の選定については、第4章4-6「地域材・間伐材の利用」により、
地域材・間伐材の利用推進に留意する。
5-4
寸法表示等の統一
使用する材料は、丸太、製材及び木製品とし、材料・構造物等の寸法表
示等を統一するものとする。
〔解説〕
寸法は、長さと径を表示するものとする。丸太については末口径と長さを、
製材及び木製品については仕上がり寸法を、それぞれ表示するものとする。
20
(参考1)丸太の寸法表示等
1
丸太は、根元側と梢端側で径が異なるため、根元側(大きい)を元口、
梢端側(小さい)を末口という。丸太の規格は,長さと径(末口径)を表
示する。一般に、長さは10cm単位、径は、14cm未満は1cm単位、14cm以上
は2cm単位で表示する。
2 丸太の材積は、素材の日本農林規格(昭和42年12月8日農林省告示第184
1号)の規定に基づいた次の計算方法で求める。
① 長さ6m未満の場合(末口自乗法)
V=d2×L×(1/10000)
ただし,V:丸太の材積(m3)
d:末口径(最小径,cm)
L:丸太の長さ(m)
② 長さ6m以上の場合
V={d+(L’-4)/2}2×L×(1/10000)
ただし,V:丸太の材積(m3)
d:末口径(最小径,cm)
L:丸太の長さ(m)
L’:Lの整数部分の値(m)
(参考2)丸太等の種類
丸太等は、加工の段階によって、次のような種類があり、用途により防腐
処理等を行って利用される。加工の度合いの大きさは、①皮付き丸太<②皮
剥ぎ丸太<③加工材となっており、①と②・③との違いは、樹皮の有無であ
る。
① 皮付き丸太
皮が付いた状態の丸太(加工していない原木)。皮剥ぎをした丸太に
比べて腐朽しやすい。
② 皮剥ぎ丸太
原木の皮を剥いだ状態の丸太。元口・末口の径の差がある。
③ 加工材
皮剥ぎ丸太を加工して、他の形状にしたもの。径や厚さ等をそろえる
ことができる。
a.丸棒加工材:丸太を加工して、円柱に仕上げたもの。元口と末口の
21
径が同じである。
b. 太鼓落とし:丸太の両側を削って断面を太鼓形にしたもの。二面を
平面とし、厚さをそろえることができる。
c. 半割:丸太を二つ割したもの(断面は半円となる)。一面を平面と
する。
d. 三面落とし:3面を削って平坦としたもの。三面を平面とし、厚さ
をそろえることができる。
e. 押角(おしかく):4面を削り、角には丸みが残っているもの。四面
を平面とし、幅・厚さをそろえることができる。
f. 先削り:杭丸太とするもの。
a.丸棒加工材
5-5
b.太鼓落とし
c.半割
d.三面落とし
e.押角
安定性、強度等の検討
経験的に安定性、強度等が確認されている構造物、外力が極めて小さく
規模が小さい構造物以外(大型木製構造物)については、原則として、設
計の段階において適切な方法で安定性、強度等を検討するものとする。
〔解説〕
1 安定性、強度等の検討は、木製構造物の規模や重要性に応じて次の方法
等から適切なものを用いるものとする。
(1)適切な外力等の想定による安定性の確認
① 構造体全体の安定計算により安定性を確認する方法
② 応力計算により部材の強度を確認する方法
③ 上記①と②の両者を行って木製構造物の安定性及び部材の強度を確
認する方法
(2)実験等により安定性を確認する方法
木製構造物の設置を計画する現地の条件に応じた所要の実験又は試験
により、木製構造物の安定性又は部材の強度を確認する方法
22
2
3
構造全体の安定計算は、原則として技術基準等によるものとする。
構造全体の安定計算は、状況に応じて、重力式構造体、セル式構造体等
と仮定して安定計算を実施するものとする。
4 部材の応力計算は、必要に応じて、適切な方法で実施するものとする。
特に、部材の接合部が破壊すると破壊が全体に及ぶ構造物(フレームタ
イプ等)、部分的に木材を利用している構造物については、必要に応じて
接合部の強度・耐久性について検討するものとする。
5 標準的な構造に対して安定性の検討が行われている場合は、標準的な構
造を用いる限りにおいて、その検討をもって安定性の検討に代えることが
できるものとする。
5-6
木材の強度等
安定性の検討に用いる木材の許容応力度等は、建築基準法施行令等に定
める値を参考として適切な値を用いるものとする。
〔解説〕
木製構造物の木材の許容応力度等は、表-3に示す値を参考とすることが
妥当と考えられる。
表-3
木材の許容応力度
樹
種
アカマツ、クロマツ
針葉樹 ヒノキ、カラマツ、ヒバ
ツガ
スギ、モミ、エゾマツ、トドマツ
広葉樹 カシ類
クリ、ブナ、ケヤキ、ナラ類
許容応力度(単位 N/㎟)
圧縮 引張 曲げ せん断 めり込み
5.7
4.5 7.2
0.6
2.3
5.3
4.2 6.9
0.5
2.0
4.9
3.8 6.5
0.5
1.5
4.5
3.5 5.7
0.5
1.5
6.9
6.2 9.9
1.1
3.1
5.4
4.6 7.6
0.8
2.8
注) 建築基準法施行令第89条及び建設省告示H12第1452号、国土交通省告示H13第1024
号による常時湿潤状態における長期荷重に対する許容応力度(無等級材)である。
注)圧縮・引張・曲げは、木材の繊維方向に応力が働く場合の値である。
注)せん断は木材の繊維方向に直角に応力が働く場合の値である。
注)めり込みは、木材の繊維方向に直角に加圧する場合の値である。
23
(参考)
木材が腐朽しやすい条件におかれた場合、その強度の低下は心材の割合と
相関が高い傾向にある。このことから、心材率が高く耐朽性の高い部材は、
構造上長期間の強度維持が求められる箇所や地際部等の腐朽しやすい箇所等
への適用が望ましい。
一方、立木の先端部など心材率の低い部材は、耐朽性の低い傾向にあるこ
とからこのことに十分留意し用いる必要がある。
表-4
木材の基準ヤング係数
樹
種
ヤング係数
(単位kN/mm2)
ヒノキ、ヒバ
9.0
針葉樹 カラマツ、クロマツ、アカマツ、ツガ
8.0
スギ、モミ、エゾマツ、トドマツ
7.0
広葉樹 カシ類
10.0
クリ、ブナ、ケヤキ、ナラ類
8.0
注)日本建築学会(2006):「木質構造設計規準・同解説-許容応力度・
許容耐力設計法-」p339、普通構造材の基準弾性係数による。
5-7
小型木製構造物の設計
小型木製構造物の設計は、原則として技術基準等に準拠するものとする。
〔解説〕
小型木製構造物の設計に当たっての基本的事項は、技術基準等によるもの
とする。
24
5-8
大型木製構造物の設計
5-8-1
大型木製構造物の設計
木型木製構造物の設計に当たっては、木材の特性を考慮した上でそれぞ
れの構造物の目的に応じて適切に行うものとする。
〔解説〕
大型木製構造物は、比較的大きな構造を持ち、木材が腐朽した後、根系に
よる構造物の機能の代替が困難であることから、設計にあたってはそれぞれ
の構造物の目的に応じて木材の特性を考慮した上、適切な設計を行うものと
する。
5-8-2
木製治山ダム
5-8-2-1
木製治山ダムの目的
木製治山ダムは、主に渓床に緩勾配で堆積する不安定土砂を固定して渓
流の縦横侵食を防止し、渓床の安定を図ることを目的とする。
〔解説〕
治山技術基準第2編第4章第3節3-1に示されている治山ダムの目的の
うち、次のものを木製治山ダムの主な目的とする。
① 渓床勾配を緩和して安定勾配に導き、縦侵食及び横侵食を防止する作
用
② 山脚を固定し,崩壊の発生を防止する作用
③ 渓床に堆積する不安定土砂の移動を防止する作用
5-8-2-2
木製治山ダムの設置条件
木製治山ダムは、その目的及び渓流の状況等に応じて適切な箇所に設置
するものとする。
〔解説〕
1 木製治山ダムは、第4章4-4「構造物の規模及び設置箇所」の内容を
十分に踏まえて設置するものとする。
2 木製治山ダムは、次のような条件の場所に設置するものとする。
① 土石流等の発生する可能性の少ない小渓流
25
②
③
人家等の保全対象から比較的離れている箇所
景観保全,環境保全が重要な渓流
3 木製治山ダムは維持管理することが欠かせないことから、点検及び撤去
・更新等が可能な箇所に設置するものとする。
(参考)
1 平成19年度「治山事業における木材利用促進に関する調査」の調査結果
から、木製治山ダムの設置箇所について集水面積と渓床勾配の関係を表し
たものが図-4である。
この図から、集水面積が大きい場合は渓床勾配が緩い箇所に、渓床勾配
が急な場合は集水面積が小さい箇所に設置されていることが分かる。
図-4
2
木製治山ダムの設置箇所
石礫の移動について「摩擦速度式」・「限界摩擦速度式」を用いて礫径と
渓床勾配、径深の関係を図-5に示す。この図から礫の移動する渓床勾配
と径深の関係を把握し、木製治山ダムの計画に留意することが望ましい。
26
図-5
5-8-2-3
石礫の移動する渓床勾配と径深の関係
木製治山ダムの方向
木製治山ダムの方向は、治山技術基準第2編第4章第3節3-4「治山
ダムの方向」に準ずるものとする。
〔解説〕
木製治山ダムは、コンクリート治山ダム等と比較して外力に対する抵抗性
が劣るため、その方向は上下流の渓岸、堤体の安定に影響を及ばさないよう
に決定するものとする。
特に、木製治山ダムを曲線部に設置する場合は、水衝部において袖抜けが
生じないよう十分注意する必要がある。
5-8-2-4
木製治山ダムの計画勾配
木製治山ダムの計画勾配は、治山技術基準第2編第4章第3節3-5「治
山ダムの計画勾配」に準ずるものとする。
〔解説〕
1 木製治山ダムの計画勾配は、木製治山ダムの主目的が渓床堆積物の移動
防止等であって床固工として適用する場合には、ダム設置時において上流
側の縦断線に大きな変化がないものとする。
2 木製治山ダムの背面は、設置後に満砂状態となるように不安定土砂の整
理や床掘土砂の埋戻し等に併せて埋め戻しておくものとする。
27
5-8-2-5
木製治山ダムの高さ
木製治山ダムの高さは、治山ダム築設の目的、計画勾配及び施工箇所の
状況等に応じて決定するものとする。
〔解説〕
1 木製治山ダムの高さは、木製治山ダムが渓床堆積物の移動防止等を主目
的とすること、コンクリート治山ダム等と比較して外力に対する抵抗性が
劣ることなどを考慮し、3m程度以下を標準とする。
2 高さ3mを超える木製治山ダムを設置する場合には、地盤支持力等の設
置条件を十分検討するとともに、耐久性の高い部材、部材を確実に固定で
きる接合金具を用いるなど安全性の高い構造体を構築するものとする。
(参考)
耐久性の高い部材とは、一般的に辺材は心材に比べて腐朽の進行が速いこ
とから、比較的径の大きな丸太を加工して心材率を高めた木材等のことをい
う。
5-8-2-6
木製治山ダムの放水路
木製治山ダムの放水路は、計画最大高水流量を安全に流下させる断面で
あるものとする。
〔解説〕
1 木製治山ダムの放水路は、計画最大高水流量を安全に流下させることが
できる断面を確保するものとする。
2 木製治山ダムは高さが低く、完工後に放水路天端が上流側の渓床へ直接
続くことが想定されるため、放水路断面の設計においては開水路として設
計することを標準とする。
3 木製治山ダムの放水路の形状は、治山技術基準第2編第4章第3節3-
7-2「治山ダムの放水路の形状」に準ずるが、施工性等を考慮して側の
りを直又は階段状にすることができるものとする。
4 放水路天端は、砂礫等の流送により摩耗や損傷を受けるおそれがある場
合は天端保護部材を設置し、天端の保護を図るとともに中詰材の流失を防
止するものとする。
28
5-8-2-7
木製治山ダムの袖
木製治山ダムの袖は、治山技術基準第2編第4章第3節3-8「治山ダ
ムの袖」に準ずるものとするが、天端の勾配は水平とすることができるも
のとする。
〔解説〕
治山技術基準第2編第4章第3節3-8-2「治山ダムの袖天端」では、
原則として両岸に向かって勾配(インクライン)をつけるものとしているが、
木製治山ダムは第5章5-8-2-2「木製治山ダムの設置条件」で示した
ように、土石流等の発生する可能性の少ない小渓流等に設置するものとして
いるため、天端の勾配を水平とすることができるものとする。
5-8-2-8
木製治山ダムの型式
木製治山ダムの型式は、次の3種類に区分するものとする。
① 台形型
② ラムダ型
③ その他
〔解説〕
1 台形型
台形型は、横木と縦木(控木)を交互に井桁状に組み合わせ、その枠の
中に中詰材を充填した構造である。縦木間隔は横木に対する部材の安定計
算を行った上で決定することとするが、最下段の縦木の間隔は、中詰材の
底抜けが生じない間隔で配置する必要がある。
(参考)
台形型では、上流下流のりが直である矩形型、天端厚2.0m、堤高3.0m程
度の実施例が多い(平成19年度及び平成20年度「治山事業における木材利用
促進に関する調査」より)。
2
ラムダ(λ)型
ラムダ型は、木材を流水方向と平行に敷き並べてその内部に中詰材を充
填した構造である。ラムダ型の本体の下流のりには、落差の小さい幅の階
段を設けるため堤底厚が台形型より広くなる。
29
このことから、渓床勾配が緩やかで地盤支持力が比較的小さい箇所に設
置すると有利である。また、表面からは木材しか見えないため、特に景観
保全に配慮する必要がある場合に多く採用されている。
(参考)
全国で実施されているラムダ型は、天端厚2.0m程度、階段の幅40cm~ 60
cmで施工されている事例が多い(平成19年度及び平成20年度「治山事業にお
ける木材利用促進に関する調査」より)。
3
その他
その他の型式については、安定性の検証を十分に行った上で採用するこ
とが望ましい。
台形型(単断面)
ラムダ型
図-6
5-8-2-9
木製治山ダムの型式
木製治山ダムの安定計算
木製治山ダムは、原則として安定計算を行いその安定性を確認するもの
とする。
〔解説〕
1 構造全体の安定計算
木製治山ダムの安定計算は、放水路部分の2次元断面について行うもの
とし、重力式ダムとして下記(1)の条件を全て満たすものとする。
30
ただし、台形型の木製治山ダムについては、(1)に加えて(2)の条
件も満たすものとする。
(1)重力式構造物としての安定性の検証
① 転倒に対する安定
堤体の自重及び諸外力の合力作用線が堤底内にあること
② 滑動に対する安定
滑動に対する抵抗力の総和が水平力の総和に対して大きいこと
③ 基礎地盤に対する安定
堤体の最大反力に対して基礎地盤の支持力が十分であること
(2)中詰材のせん断抵抗性の検証
中詰材を使用する場合は、水平力に対して形状を維持しうる、すなわ
ち、重力式構造物として一体で機能することが必要である。変形を許す
場合の中詰石のせん断抵抗は、次式で求められる(北島1962)。
Mr=1/6・γS'・(B/H)2・{3-(B/H)cosφS}・sinφS・H3
ただし、Mr:中詰石のせん断抵抗モーメント(kN・m)
γS':中詰石の単位体積重量(kN/㎥)
B :壁体幅(m)
H :高さ(m)
φS:中詰石のせん断抵抗角(度)
2 部材の応力計算
部材・接合部については、全体の安定性に影響を及ぼすと考えられる部
分について個別に取りあげて安定計算を実施し、許容応力度以下であるこ
とを確認するものとする。
(参考)
木製治山ダムの台形型(矩形)とラムダ型について、別添資料にその計算
例を示した。
31
5-8-2-10
木製治山ダムの安定計算に用いる荷重
木製治山ダムの安定計算に用いる荷重は、自重、静水圧及び堆砂圧とす
る。
〔解説〕
1 堤体の単位体積重量は、木製治山ダムを構成する材料の体積比から算定
した値を用いるものとする。
2 堆砂圧(土圧)は、半無限水平地盤が限界平衡状態にあると仮定して求
めるランキン土圧を利用するものとする。ランキンの土圧係数(C)は次
式による。
C=(1-sinφ)/(1+sinφ)
φ:土の内部摩擦角(度)
3 水圧は、静止状態にある水の圧力である静水圧とする。
(参考)
E1
W1
越流水深
D1
堤高
D:自重
W:静水圧
E:堆砂圧
E2
図-7
P1
P2
モーメントの中心
荷重区分図の例(上流及び下流のりが直の場合)
32
5-8-2-11
木製治山ダムの基礎の根入れ
木製治山ダムの基礎の根入れは、設置条件を考慮した上、治山技術基準
第2編第4章第3節3-10-2「治山ダム基礎の根入れ」に示す値より
小さくすることができるものとする。
〔解説〕
木製治山ダムは、コンクリート治山ダム等と比較し土石の移動の少ない箇
所に設置することや高さが低いこと等から、洗掘の影響が小さい。
よって、一般的な治山ダムより基礎の根入れを浅くすることが可能である
が、基本的には現地の状況を踏まえ洗掘に対して安全な根入れの深さを確保
するものとする。
(参考)
全国で実施されている木製治山ダムの根入れは1.0m程度で実施されてい
るものが多く、水叩き等の洗掘防止施設を設けている箇所では0.5mで実施
しているものも見られた(平成19年度及び平成20年度「治山事業における木
材利用促進に関する調査」より)。
5-8-2-12
木製治山ダムの洗掘防止
木製治山ダムの下流のり先が洗掘されるおそれがある場合には、水叩き
等を設け洗掘防止対策を図るものとする。
〔解説〕
1 木製治山ダムは、比較的基礎地盤の支持力が小さい箇所に設置すること
から、このことによって下流のり先が洗掘されるおそれのある場合には、
洗掘防止対策として水叩きを設けることが望ましい。
2 水叩きは、木材・ふとんかご等本体となじみやすい材料を用いるものと
する。
3 木枠を組み立て、その中に玉石等の中詰材を使用する場合は、中詰材が
流失しないよう上蓋を設けることが望ましい。
33
5-8-3
大型木製護岸工
5-8-3-1
大型木製護岸工の目的
大型木製護岸工の目的は、治山技術基準第2編第4章第4節4-1「護
岸工の目的」に準ずるものとするが、流量が多い渓流には設置しないもの
とする。
〔解説〕
護岸工を木製構造物により築設する場合、その目的及び設計に関する考え
方はコンクリート護岸工と基本的に同じであるが、木製護岸工は、コンクリ
ート護岸工と比較して耐久性が劣るため、流量が多い渓流には設置しないも
のとする。
流量の多い渓流は侵食営力が大きく、流水に混じり比較的径の大きい石礫
も移動し、護岸工に衝突したときの衝撃力も大きくなるため木製護岸工の設
置箇所としては適切ではない。
5-8-3-2
大型木製護岸工の型式
大型木製護岸工は、ある程度の土圧に対しても抵抗できるように木材に
よる枠構造の内部に石材等を充填した重力式構造体とし、形式は次のタイ
プから現地の条件により選定するものとする。
① もたれ式
② 自立式
〔解説〕
1 大型木製護岸工の形式にはもたれ式と自立式があり、護岸工の背面の地
形・地質条件によって選定する。
2 設置箇所が渓岸から離れる場合には、自立式を選定するものとする。
3 背面の地質条件が悪く、掘削面の安定が維持できないため掘削勾配を緩
くする場合には、自立式を選定するものとする。
34
5-8-3-3
大型木製護岸工の断面
大型木製護岸工の断面は、構造物の安全を確保した上で経済的な断面と
するものとする。
〔解説〕
1 大型木製護岸工は、使用する木材の種類、部材の長さと径、中詰材の種
類によって安定計算に用いられる許容応力度や荷重が異なることから、形
式別に安定計算をおこない断面を決定するものとする。
2 大型木製護岸工の高さは、木製治山ダムと同様に3m程度以下を標準と
する。
3 大型木製護岸工の中詰材として石材等を使用し、護岸背面の土砂が吸い
出されるおそれがある場合、水裏側に吸い出し防止材を敷設するものとす
る。
4 大型木製護岸工を構成する木材が腐朽した場合、植生の根系による構造
物の機能の代替を見込むことは困難であるが、できるだけ構造物の機能の
低下を抑えるために、背面及び前面に挿し木及び植栽による植生の導入を
図るものとする。
5-8-3-4
大型木製護岸工の取付
護岸工の上下流端の地山への取付部は、流水による侵食を受けないよう
配慮するものとする。
〔解説〕
大型木製護岸工の取付部は流水により洗掘されやすい箇所であり、流水が
護岸背面に流入した場合、護岸工の破損へとつながるおそれがあることから、
渓岸の斜面勾配にあわせて地山になじむように隙間を玉石等で埋める必要が
ある。
35
5-8-3-5
大型木製護岸工の安定計算
大型木製護岸工の安定計算は、治山技術基準第2編第5章第3節3-3
-5-2「土留工の安定性の検討」に準じて行なうものとする。
〔解説〕
大型木製護岸工の壁底が傾斜している場合、安定計算が困難であるため、
便宜的に断面積の等しい仮想の矩形断面で安定計算を行ってよいものとす
る。
安定計算上の断面
土圧
実際の断面>仮想断面
滑動に対する安定性 実際の断面>仮想断面
図-8
仮想断面による安定計算
(1)安定計算に用いる荷重
大型木製護岸工の安定計算に用いる荷重は、次のものとする。
① 木材自重
② 中詰材自重
③ 背面土圧
(2)壁面摩擦角
背面土の内部摩擦角φと同等とする。
(3)安定性の検討
① 転倒に対する安定性の検討
抵抗モーメントが転倒モーメントの1.5倍以上あること。
② 滑動に対する安定性の検討
滑動に対する抵抗力の総和が水平力の総和の1.5倍以上あること。
36
③
護岸工本体の破壊に対する安定性の検討
護岸工本体の断面内に生ずる圧縮応力・引張応力が護岸工材料の許
容応力度を超えないこと。
合力の作用位置がミドルサード内にあれば躯体内に引張応力が働か
ないため、躯体の破壊に対して安定である。
なお、もたれ式の場合、合力の作用位置がミドルサードから山側に
外れ、山側の地盤反力が極端に大きな値となることがある。このよう
な場合では、裏込め土の地盤反力係数が基礎地盤の地盤反力係数に比
べて著しく小さいとみなせば地盤反力はほぼ三角分布となる。
このように簡便化することにより、地盤反力の合力PE,QV,QHは
力のつり合い条件のみで求めるものとする。
QV = Vo − PE・cosθ
QH = H o + PE・sin θ
PE =
3M o − 2 B・Vo
2 L + B・cosθ
地盤反力
q1 = 0
q2 =
2QV
B
(kN/㎡)
内部応力
S1 = 0
S2 =
2QV
1000B
(kN/㎡)
図-9
地盤反力係数法による簡便法
④
基礎地盤の破壊に対する安全性の検討
必要な支持力が許容支持力以下であること。
(4)計算式
大型木製護岸工の安定計算に用いる式は、背面が盛土の場合はクーロ
ン式、位置が地山に接近している場合は試行くさび法を用いるものする。
37
表-5
計算式の内容
考え方
盛土タイプ
護岸工の背面が盛土状
である場合で、護岸工と
地山が離れることから、
その土圧が護岸工に作用
するとする。
背面土中に土くさびを
想定してクーロン式で求
土圧の計算方法 める。背面土が複雑な形
状の場合は、試行くさび
法を用いる。
地山タイプ
護岸工が地山に接近して
いる場合で、地山は切取勾
配で安定しているので、地
山との間に埋め戻された土
砂の土圧のみが作用すると
する。
すべり面を変化させて繰
り返し計算し、最も大きな
土圧を求める試行くさび法
により求める。
(参考)
1 別添資料に、壁底が傾斜している構造について、仮想断面での安定計算
例(木製土留工)を示した。
2 クーロン式は背面盛土中に土くさびを考え、くさびに作用する力のつり
合い条件から極値法によって土圧を求める理論式である。
A
図-10
クーロンの土くさび
38
図-10は、矢板を例にとってクーロンのくさび理論を示したものである。
矢板ABがわずかに左側に変移することによって、盛土内部ではすべり面
ACが発生し、重さWの土くさびABCが矢板ABならびにすべり面ACに
そってすべり落ちようとする。このすべり面に反力Fが、矢板ABに反力(土
圧)Paが生じる。
このW、F、Paの3つの力を大きさと向きを変えずに平行移動すると上図
右図のような三角形ができあがり、この三角形を力の多角形と呼んでいる。
この力の多角形を重力式擁壁に置き換えて計算に必要な各因子を示したの
が図-11である。
ここで、土くさびの重量Wは、すべり面の角度θが既知ならば計算可能で
反力Fと土圧Paは未知数となり、三角関数の余弦定理より土圧Paは次のよ
うに表すことができる。
a.土くさびに作用する力のつりあい
図-11
b.力の三角形
土圧と壁体移動の関係
Pa
W
=
sin(θ − φ ) sin(90 + φ + δ + α − θ )
sin(θ − φ )
・W
∴ Pa =
sin(90 + φ + δ + α − θ )
a
b
c
=
=
正弦定理
sinA sinB sinC
39
5-8-3-6
大型木製護岸工の基礎の根入れ及び洗掘防止
1
大型木製護岸工の基礎となる横木の最下部は、必要な地盤支持力が得
られる深さまで根入れするものとする。
2 大型木製護岸工の基礎の根入れ深は、計画渓床勾配、渓床の状況等を
考慮して洗掘されるおそれのない安全な深さとするものとする。
3 大型木製護岸工の基礎は、流水によって洗掘されやすいので埋戻しを
十分に行い、その防止に努めるものとする。
〔解説〕
1 大型木製護岸工の基礎の根入れは、地盤の不均質性や風化等を考慮して、
護岸工が沈下を起こさない程度の基礎地盤の支持力を持つ深さとなるよう
にするものとする。
2 第5章5-8-3-1「大型木製護岸工の目的」で示したように、木製
護岸工は流量の多い渓流には設置しないことから、基礎地盤が砂礫層等の
場合、根入れは計画勾配線より0.5m以上とし、少なくとも現渓床の最深
部より深く設けることを標準とする。
3 治山ダム上流部に取り付ける大型木製護岸工の基礎は、前項と同様の理
由により基礎地盤が砂礫層等の場合、治山ダム放水路天端から0.5m程度
深く根入れを設けることを標準とする。
4 治山ダム下流部に取り付ける大型木製護岸工の基礎は、一般の治山ダム
と同様に放水路肩の直下から1.0m以上山側に後退して取り付けることを
標準とする。
5-8-4
木製流路工
5-8-4-1
木製流路工の目的
木製流路工の目的は、治山技術基準第2編第4章第6節6-1「流路工
の目的」に準ずるものとする。
〔解説〕
流路工を木製構造物により築設する場合、その目的および設計に関する考
え方はコンクリート流路工と基本的に同じであるが、木製流路工は、景観保
全・環境保全が重要な渓流では積極的に計画することが望ましい。
40
5-8-4-2
木製流路工の渓床
木製流路工は、両岸に大型木製護岸工を設けるとともに渓床を整理して
流路を確保するもので、渓床が侵食されるおそれのある場合には、渓床を
保護するために木材等を張って三面張り構造とするものとする。
〔解説〕
木製流路工の場合の渓床の保護は、治山技術基準第2編第4章第6節6-
4「流路工の渓床」に準じて行なうものとする。
渓床に木材等を張り付ける場合には、流心に対して平行、直角又は垂直に
敷き並べる方法があり、現地の侵食状況等を考慮して決定するものとする。
5-8-4-3
木製流路工の断面及び護岸工の高さ
1
木製流路工の断面は、両岸の護岸工及び渓床で構成した長方形又は台
形とし、計画高水流量を安全に流下させることのできる断面とするもの
とする。
2 木製流路工を構成する護岸工の高さは、計画高水流量により算出した
高さに余裕高を加えたものとする。
〔解説〕
1 木製流路工の断面は、護岸工の流路幅によって決定される。流路幅は
渓床幅等の現地の状況に制約されるので、高さは流量計算より求められ
る安全な断面に応じて決定するものとする。
2 木製流路工の流路断面に対する流量計算を行う場合には、木材の特性
を考慮した上で粗度係数を決定するものとする。
(参考)
表-6
木材の粗度係数
流路の材料と潤辺の状態
nの範囲
nの標準値
木材
素地
0.011~0.015
0.013
小割板張り
0.012~0.018
0.015
木材の粗度係数は、板材、丸太材等の形状によって異なることから、設計
に当たっては留意する必要がある。
41
5-8-4-4
木製流路工の勾配の変化点及び縦断形
木製流路工の計画勾配は、可能な限り変更しないものとするが、計画す
る一定区間において渓床勾配が変化する場合は、原則として変化点に床固
工を計画するものとする。
5-8-5
大型木製土留工(擁壁工を含む)
5-8-5-1
大型木製土留工の目的
大型木製土留工の目的は、治山技術基準第2編第5章第3節3-3-1
「土留工の目的」、又は林道技術基準及び林道技術基準の運用第7章第1
節1.1「一般」に準ずるものとする。
〔解説〕
大型木製土留工の目的は、木材を使用しない土留工及び擁壁工と基本的に
同じであるが、コンクリート構造物と比較すると木製構造物の利点として、
修景効果が高いこと、動物の移動の障害となりにくいこと、小動物の生息箇
所として利用されやすいこと等が挙げられる。
したがって、計画する構造物に対してそのような機能発揮が求められる場
合であって、大型木製構造物により対応が可能な土圧等の条件である場合に
計画することが望ましい。
5-8-5-2
大型木製土留工の設置位置
大型木製土留工の設置位置は、その目的及び地形・地質条件等を踏まえ、
地盤の安全性の確保が図れる箇所を選定するものとする。
〔解説〕
大型木製土留工は、コンクリート土留工等と比較して、耐久性、落石等の
衝撃に対する抵抗性等が劣ることから、原則として背面土圧が小さい次のよ
うな箇所において使用することとする。
① 崩壊面の安定を図る場合においては、勾配が緩やかな箇所
② 崩壊土砂を固定する場合においては、計画勾配が緩やかな箇所
③ 林道等の切土法面
④ 躯体背面に活荷重が載荷されない箇所
42
5-8-5-3
大型木製土留工の型式
大型木製土留工の型式は、第5章5-8-3-2「大型木製護岸工の型
式」に準ずるものとする。
〔解説〕
大型木製土留工は、木材による枠構造の内部に石材等を充填することによ
り重力式構造体を構成して外力に抵抗するものとし、その形式は大型木製護
岸工と同様にもたれ式と自立式とする。
(参考)
木製土留工は、さまざまな形状のものが施工されており、その特質を整理
すると表-7のとおりとなる。
43
表-7
大型木製土留工の形式とその特質
もたれ式
① 床堀断面を小さくすることがで
きるため、道路山側法面等の床堀
断面を抑制したい箇所に適する。
② 単一な長さの部材が使用でき
る。
もたれ式(多段タイプ)
① 床堀断面を小さくすることがで
きる。
② 単一な長さの部材が使用でき
る。
③ 自在性が高く、比較的軟弱な地
盤箇所にも適用が可能である。
④ 自立式の木枠を数段組み合わせ
た構造体であり、各木枠を連結し
て全体を一体化させる必要があ
る。
自立式
① もたれ式と比較すると背面土圧
の大きい箇所で使用が可能であ
る。
② 単一な長さの部材が使用できな
い。
44
5-8-5-4
大型木製土留工の断面
大型木製土留工の断面は、構造物の安全を確保した上で経済的な断面と
するものとする。
〔解説〕
治山技術基準第2編第5章第3節3-3-12「枠土留工」に準じ、大型
木製土留工の高さは3m以下を目安とする。
5-8-5-5
大型木製土留工の方向
大型木製土留工の方向は、治山技術基準第2編第5章第3節3-3-4
「土留工の方向」、又は林道技術基準及び林道技術基準の運用第7章第1
節1.2「線形」に準ずるものとする。
〔解説〕
1 土留工にあっては、のり切土砂を抑止する場合にポケットを最大にでき
ることや土留工に作用する土圧に対する安定度を大きくすることができる
ことから、設置する方向は完成後の斜面に対して直角であるものとする。
2 擁壁工にあっては、使用する横木の長さに応じてスムーズなすりつけと
なる曲線半径以上の箇所で使用し、曲線の接線方向とすることが望ましい。
5-8-5-6
大型木製土留工の安定計算
大型木製土留工の安定計算は、第5章5-8-3-5「大型木製護岸工
の安定計算」に準ずるものとする。
45
5-8-5-7
大型木製土留工の基礎の根入れ及び洗掘防止
1
大型木製土留工の基礎となる横木の最下部は、必要な地盤支持力が得
られる深さまで根入れするものとする。
2 大型木製土留工の基礎の保護は、林道技術基準の運用第7章第3節3.
1.3「基礎の保護工」に準ずるものとする。
〔解説〕
1 大型木製土留工の基礎の根入れは、地盤の不均質性や風化等を考慮して
土留工が沈下を起こさない程度の基礎地盤の支持力を持つ深さとなるよう
にするものとする。
2 水路工等の排水施設の流末に大型木製土留工を設置し、その土留工の基
礎が洗掘を受けるおそれがある場合には、水叩きを設けて基礎部の保護を
図ることが必要である。水叩きを設ける場合は、木材・ふとんかご等の本
体となじみやすい材料を用いるものとする。
46
第6章
6-1
施工
総説
木製構造物を設置する場合は、計画、設計に基づき、現地に適した施工
を行うものとする。
〔解説〕
木製構造物は、その目的を十分理解して、要求される性能や機能が満たさ
れるように施工する必要がある。
6-2
木材等の品質確保
使用する木材は、構造物の目的に適合した品質のものを選定するものと
する。
〔解説〕
1 使用する材料は丸太が多く、乾湿を繰り返す環境下に置かれた場合、繊
維方向に沿った乾燥割れが入りやすい。一般に丸太の割れは,繊維方向の
強度に大きな影響を与えないが、長期的には水分や腐朽菌の内部への浸透
を許して、耐久性に影響を与える可能性がある。したがって割れの適否は、
構造物の目的を考慮して判断するものとする。
2 契約図書において強度、含水率などの品質が指定されている場合は、必
要な調査を行うなど、品質を確認する必要がある。
3 木製品を使用する場合は納品された木製品が、指定した品質・寸法であ
ることを確認するものとする。
4 木材に付属するボルトや木ねじ等は、構造物の目的に合わせた適切な規
格(大きさ)のものを用い、適切な位置に施工する必要がある。
また、中詰材を用いる場合は、その流失等により構造物の機能が損なわ
れないよう施工する必要がある。
47
6-3
防腐処理等の品質確認
防腐・防蟻処理を実施した木材は、必要な品質を満たしていることを確
認するものとする。
〔解説〕
防腐・防蟻処理した木材等を使用する場合は、使用した木材保存剤、処理
方法、木材保存剤の浸透程度等について確認するものとする。
なお、防腐・防蟻性能の明確な木材製品には、日本農林規格(JAS)製
品、(財)日本住宅・木材技術センターによるAQ認証製品、(社)日本木材
保存協会による処理木材認定製品がある。
6-4
出来形管理基準
木製構造物の出来形管理は、別に定める出来形管理基準により行うもの
とする。
〔解説〕
木製品のうち、丸太材は原木からの採材条件によって径が異なる。また、
加工材であってもその寸法精度はかなりのバラツキを示すことがある。さら
に、水分の吸収・放出により断面寸法が変化することもある。
48
(参考)
表-8
構造物の
大型木製構造物出来形管理基準
項目
種類
基準
最小許容 最大許容 測定
(cm) 量(cm) 量(cm) 基準
基準高
±10
図面
木製治山 (△)
ダム
堤 長
の表
L/50
-10
-40
(L)
厚 さ
示箇
所で
- 5
測定
(W)
のり勾 ±0.5分
配
高 さ
±10
(h)
木製土留 長 さ
工
L/50
-10
-40
(L)
木製護岸 厚 さ
の表
- 5
示箇
工(流路 (W)
工護岸含 高 さ
む)
図面
所で
±10
測定
(h)
のり勾 ±0.5分
配
長 さ
L/50
-10
-40
図面
木製流路 (L)
の表
工(底張)幅(W) -10
示箇
厚 さ
- 5
所で
(t)
もたれ式 長 さ
土留工
測定
L/50
-10
-40
(L)
もたれ式 高 さ
図面
の表
±10
示箇
護岸(流 (h)
所で
路工護岸 幅(W) - 5
測定
含む)
のり勾 ±0.5分
配
49
測定箇所
第7章
管理
総説
木製構造物の管理については、第4章4-5「木製構造物の取扱い」に
基づき適正に行うものとする。
〔解説〕
木材の腐朽等により機能が損なわれたと判断された場合には、計画の段階
で決定した残置、撤去、更新の内容に基づき適正に対処するものとする。
(参考)木製構造物の機能確保の方法の例
木製構造物は、必要に応じて、施工後、木材の劣化等に対して定期的に点
検を実施し、適切な維持管理を行うことが望ましい。
ここでは、木製構造物に関する点検方法の例を示す。
点検の方法は、図-12に示すように大きく概略点検と詳細点検に分けて
調査を行い、補修・補強や更新といった対策等の必要性を判断するものであ
る。
まず、概略点検では、定性的な方法を用いて詳細点検の必要性を判断する。
この結果、詳細点検の必要ありと判断された場合には、定性的な調査に加え
て定量的な調査を行い、対策等の必要性を判断するものである。
以下に、概略点検と詳細点検の内容について詳述する。
50
施工
更新した場合
概略点検
定性的な方法
詳細点検の必要なし
詳細点検の必要あり
定性的な方法と
詳細点検
定量的な方法との組み合わせ
継続利用
健全度判定
対策の必要なし
対策の必要あり
補修・補強
更
新
取り替えた木材
木材の再使用・再資源化等
図-12
機能確保の概念
51
1 概略点検
(1)概略点検の目的及び方法
概略点検は、施工後、継続的かつ定期的に、または災害が発生した
場合等に異状の有無を確認するために行うものであり、木材を利用した
構造物及び部材について、現地における目視、触診、打診等の定性的な
調査方法により、木材劣化等により構造物としての機能が低下していな
いかを確認し、詳細点検の必要性を判断するものである。
なお、木材劣化の定性的な調査方法としては次のものがある。
ア 目視
肉眼の観察により調査する。次のような腐朽等の兆候、損傷を調べ
る。
① 部材の変色、変状
② 部材の損傷
③ 菌類の子実体の発生
④ 蟻道等の形跡
イ 触診
指で触れて感触を調査する。腐朽していれば軟らかい感触がする。
腐朽を確認する場合は、必要に応じて錐、ドライバー等を突き刺し
て刺診により調査する。
ウ 打診
ハンマー等で叩いて調査する。腐朽していれば健全な部位に比べて
鈍い音がし、反発が小さい。
(2)概略点検の調査箇所
木材劣化を概略的に判断するため、全体的な概観や重要な部材、接
合部等の腐朽が進みやすい箇所を重点的に調査するものとする。
(3)チェックリスト等の活用
概略点検に当たっては、チェックリスト等(表-9参照)を用いて
確実に点検を行うとともに、記録を残すものとする。
(4)概略点検の判定
構造物としての機能低下が確認された場合は、速やかに詳細調査を
行い適切に対処するものとする。
なお、概略点検における木材劣化の定性的な判断基準としては、木
材の劣化の度合いを6段階の被害度で判定する方法がある(表-9)。
52
表-9 木材劣化の定性的な判定基準
被害度
観察状況
0
健全
1
部分的に軽度の腐朽等
2
全面的に軽度の腐朽等
3
2の状態に加え部分的に激しい腐朽
4
全面的に激しい腐朽等
5
腐朽等により形が崩れる
(5)概略点検の頻度
概略点検は、定期的に実施するが、周辺で災害が発生した場合は、
必要に応じて臨時的に実施するものとする。
表-10 概略点検チェックリスト
整理番号
点検年月日
点検方法:
平成
年
月
日
点検者
目視、触診を基本とするが、必用に応じて、ドライバ
ーによる刺診、ハンマーによる打診を併用する。
点検項目
箇所(番号)
判定
コメント
構造物全体 変形・ずれ
破損・破壊
木材の部材 変色・変状・異音
腐朽
蟻害
子実体の発生
損傷・摩耗・割れ
欠落・破損・折れ
接合部
さび・腐食
(金具)
ゆるみ・ずれ・変形
欠損・欠落
詰石(詰土)ゆるみ・沈下・流出
基礎部
異常な侵食・洗掘
堆砂敷
異常な土砂堆積
概略点検の総合判定
a・b・c・d・e
詳細点検の必要性
無(a、b)・有(c、d、e)
構造図 構造物全体の構造図(正面図、側面図、平面図)に点検項目の判定がc,d,eである場
合は、その箇所(番号)を記入する。
写真
構造物全体の写真、点検項目の判定がc、d、eである場合は、その部分の拡大写真を貼
付する。
53
表-11 概略点検の判定基準
総合判定
内
容
a
健全・正常・良好
b
ほぼ健全・ほぼ正常・ほぼ良好。機能にほとんど影響がない。
c
軽い損傷・異常がある。機能に問題がある。
d
損傷・異常がある。機能に問題がある。
e
強い損傷・異常がある。機能に重大な問題がある。
2 詳細点検
(1)詳細点検の目的
詳細点検は、概略点検により構造物の機能低下等が確認され、詳細
点検が必要であると判断された場合に行うものであり、再度、全体に
ついて概況を確認し、機能低下の要因と考えられる箇所等について詳
細な調査を行い、構造物としての健全度を判定して補修・補強や更新
といった対策等の必要性を判断するものとする。
(2)詳細点検の方法等
木材劣化を判断するための調査は、目視・触診・打診等による定性
的な調査と計測器具による定量的な調査を組み合わせて行うものとし、
構造物の目的、構造物・部材の重要度、想定される腐朽の状況等に応
じて、次の調査方法から適切なものを選定する。
ア 定性的な方法
① 目視による方法
② 触診、打診等による方法
イ 定量的な方法
① 打込抵抗法
ピン打込試験機を用いた非破壊試験である。所定の直径の鋼製
ピンを一定のエネルギーで木材表面に打ち込み、その打込深さ(m
m単位)を計測するもので、比較的簡易に計測が可能である。
これまでの研究で、打込深さは木材の曲げ強度と負の相関関係
があり、劣化が進むと打込深さが大きくなる。腐朽厚が比較的小
さい場合に有効である。
② 超音波伝播速度法
超音波試験機を用いた非破壊試験である。部材の両面に密着さ
せた端子の一方から超音波の信号を発信し他方で受信して2点間
の超音波の伝播速度を計測するが、部材の設置状況によっては計
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測できないこともある。
木材の曲げ強度と正の相関があり、劣化が進むと伝播速度は遅
くなる。
③ 応力波法
応力波試験機を用いた非破壊試験である。木材に差し込んだセ
ンサーをハンマーで打撃し、この信号を他方に取り付けたセンサ
ーで測定して2点間の応力波伝播速度を計測するが、部材の設置
状態によっては計測できないこともある。
④ 穿孔抵抗法
穿孔抵抗試験機を用いる。ドリルを回転させて木材に貫入させ、
穿孔抵抗を計測する。深さごとの穿孔抵抗の変化を波形で記録す
ることなどにより、その穿孔抵抗から腐朽部分の厚さ等が推定で
きる。
⑤ 簡易穿孔抵抗法
木材に所定の大きさのガイド孔をあけ、トルク(回転モーメン
ト)が測定可能なレンチ等を用いてネジをねじ込み測定する。こ
れにより得られたトルク値により強度を推定する。
ネジの形状としては木ねじや成長錐を用いる方法が行われてい
るが、森林土木木製構造物の現地測定では、ある程度径の大きな
木ねじか成長錐(径 9mm)を用いて行う方法が適している。
⑥ その他の方法
(3)詳細調査の実施箇所
詳細調査は、腐朽しやすい箇所、構造上重要な箇所、前回の点検で
腐朽が進行していると判断された箇所について、重点的に実施する。
(4)詳細点検結果のとりまとめ
詳細点検を実施した結果は、健全度が判定できるように、調査結果
を図表・写真等に取りまとめ、点検台帳等(表-12参照)に記録し
て保存しておくことが望ましい。
また、必要に応じて木製構造物の腐朽状況を取りまとめて、今後の
計画・設計及び維持管理のための基礎資料とする。
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3 健全度判定
(1)判定の区分
健全度判定は、詳細点検の結果を総合的に判断した上で、部材及び
構造物全体の劣化・損傷の度合、予測、問題点を把握して表-12に
示すA~Eの5段階の健全度のレベルを判定し、継続利用、更新、一
部更新(補修・補強)等の必要な対処を決定するものとする。
(2)詳細点検の頻度
健全度判定において、レベルC、D、Eと判定された場合又は施工
後一定期間以上経過した場合は、詳細点検を定期的、継続的に実施す
るものとする。
表-12 健全度の判定基準
レベル
健
全
度
対
応
A
正常で機能上問題がない。
なし。
B
ほぼ正常で機能上ほとんど問 特になし。
題がない。
C
軽度の異常があり、機能にや 状態を監視する(詳細点検を年
や問題がある。
1回以上実施する)。
D
異常があり機能に問題がある。 更新、一部更新(補修・補強)
を検討し、必要に応じて、実施
する。
E
強度の異常があり、機能に重 すみやかに更新、一部更新(補
大な問題がある。
修・補強)を実施する。
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表-13 点検台帳
構造物の工種
構造物の名称
渓流名・地区名
施工箇所
渓床(斜面)勾配
最終的な取扱
残置・撤去・更新
町・村
集水面積
構造物の諸元
高さ
m
長さ
多段式の場合の全体の高さと段数
天端厚
木材の樹種
木材の寸法
防腐処理の有無
接合部の種類
施工年月日
区分
概略点検・詳細点
検
市・郡
m
番地
ha
m
堤底幅
m
丸太の加工状況
(主要部材の末口径・長さを記載)
有・無
木材保存剤の種類
詰石(詰土)の規格
平成 年 月 日
修繕年月日
平成 年 月 日
点検履歴
整理番号
点検年月日
総合判定等
平成 年 月 日
A・B・C・D・E
関係図面
位置図・構造物全体の構造図(正面図、側面図、平面図)を添付
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森林土木木製構造物設計等指針の制定について 森林土木木製