連載 授業力をみがく【数学編】
授業づくりの基礎・基本
「授業の前の留意点」
(その1)
岐阜聖徳学園大学 名誉教授
小関 熙純 / こせき きよし
1936 年東京都に生まれる。
東京都の公立中学校・国立大附属中に計 24 年間勤務後,和歌山大学教育学部・群馬
大学教育学部・岐阜聖徳学園大学教育学部で計27年勤務。
1998 年学習指導要領(中学校数学)作成協力者委員。
1999 年から 3 年間,
国際協力事業団(JICA)のインドネシア理数科教育向上プロジェ
クトに参加。専攻分野は数学教育で,これまで一貫して次のことを研究している。
1 生徒は,数学における抽象概念をいかにして獲得するのか(認知発達研究)
2 すぐれた算数,数学の授業とは何か(授業論)
授業の準備 ― 教材研究
おいては算数的活動,中学校数学においては数学的活
動が重視されています。そこで,ここでは,数学的活
授業の準備は教材研究と呼ばれていますが,それが
できているかどうかで,生徒にわかりやすい授業がで
きるかどうかが決まってしまいます。
よい授業をするにあたって,授業者はどのように授
業の準備を進めていけばよいのでしょうか。「授業の
前」
,
「授業中」
,
「授業の後」の3つに分けて,授業者
動の題材を取り上げ,どんな教材研究をするかについ
て考えてみましょう。
数学的活動として,学習指導要領では中2,中3で
次の3つが例示されています。
ア 既習の数学を基にして,数や図形の性質などを
見いだし,発展させる活動
がしなければならないことについて考えてみましょ
イ 日常生活や社会で数学を利用する活動
う。
ウ 数学的な表現を用いて,根拠を明らかにし筋道
立てて説明し伝え合う活動
◇授業の前に行うべきこと
授業を行うにあたって,授業者がまずしなければな
らないことは,当然のことですが,
上のアやウの活動として,例えば,中2の
「n 角形の内角の和」を求める活動
を考えてみましょう。
① 「教材」をよく知ること
② 「子どもの実態」をよく知ること
③ 「どんな方法で指導するのか」を検討すること
まず,学習指導要領の解説書を読んでみましょう
中2では,「三角形の内角の和が 180° である」こ
です。今回は①について考えてみます。②,③は次号
とを平行線の性質を使って演繹的に導き,この性質を
以降でふれます。
使ってn 角形の内角の和,外角の和を帰納的,演繹的
に導いています。これらを中2に指導するにあたって,
◇「教材」をよく知ることについて
平成 20 年告示の学習指導要領では,小学校算数に
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中学校の教師に要求されることは,上記の内容につい
ての小学校での扱い(既習内容)を知ることです。
ことを認めさせているのです。
三角形の3つの角の和が 180° になることを帰納
それに対し中2の教科書では次のように書かれていま
的に考え,説明する活動
す。
四角形の4つの角の和が 360° になることを演繹
的に考え,説明する活動
と述べられています。驚くべきことに演繹的に考える
ことの指導は中学校の専売特許というわけではないの
です。
また,小5では,三角形の3つの角の和が 180° に
なることを実測・実験を通して帰納的に考え説明する
活動をしています。これに対し中2では,三角形の3
つの角の和が 180° になることを演繹的に考え説明す
る活動を行うのです。
こういうことが小5で,そして中2で指導されるの
です。中2の指導をするにあたって,教師は算数・数
学の「縦のつながり」を十分知って,生徒に小5で習っ
た内容を「ふりかえさせて」指導にあたる必要があり
(数学2年 p 88,
3行目~22行目)
直前に学んだ「平行線になる条件」,
「平行線の性質」
を使って演繹的に①を導いています。
ます。
小5の教科書に,
次に,教科書を読んでみましょう
小5の教科書には,次のように書かれています。
どんな形や大きさの三角形でも,内角の和は 180°・・・ ②
と述べられていますが,中学校で①を証明するにあ
たって,②は「本当にいえるのだろうか」と疑問をも
たせることが大切です。疑問をもった生徒が,中学校
の教科書に書かれている証明を知り感激し,そして,
証明の大切さを知るのです。
しかし,ここの学習がすんだあと,小学校で習った
「実験・実測による方法」と「証明による方法」を同
等のものと捉えている生徒がかなりいます。教師はそ
ういうことを知って,ここを指導してほしいです。こ
れから後,小学校で既習の二等辺三角形の性質,平行
四辺形の性質等の中学校での証明を通して「論証の意
義」が徐々に分かってきます。
もう1つ大切なことは,証明にあたって,補助線「点
Cを通り辺BAに平行な直線CE」をひくと書かれて
いますが,これを教師の方から天下り的に与えるので
(わくわく算数5年上 p74)
アでは実測で,イでは実験で
「三角形の3つの角の和が 180° になる・・・①
はなく,小学校での実験を「ふりかえり」,直線CP
と辺ABが平行になっていることに気づかせることが
大切です。(続く)
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授業力をみがく
小5の算数的活動には,
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