2006年4月20日 HDSセミナー
太陽型の恒星について
●太陽型星の恒星活動と太陽活動の比較
●太陽類似星の中における太陽の位置づけ
●太陽との双子(solar twin)の検出に向けて
竹田洋一(国立天文台)
本テーマの現状を知る上で参考に
なるレビュー論文
• M. Giampapa, 2005, Stellar Analogs of Solar
Activity: The Sun in a Stellar Context, in “The Sun,
Solar Analogs, and the Climate”, Saas-Fee
Advances Course 34/2004, Springer, p.307-415
• G. Cayrel de Strobel, 1996, Stars resembling the
Sun, Astron. Astrophys. Review, 7, 243-288
• B. Gustafsson, 1998, Is the Sun a Sun-Like Star?,
Space Science Reviews, 85, 419-428
黒点数が示す太陽活動
Wolf黒点数: R = k (F + 10×G)
F:個々の黒点数、G:グループ数、k:補正因子
マウンダー
極小
ダルトン
極小
z11年周期での増減
z約80年の周期でのモジュレーション
zピークの高さは最近secularに増大する傾向
一般の恒星の活動指標としてはCaII K線
(+H線)のコア輝線は最もよく使われる
K2 K2
K1
K3 K1
太陽のフラックス
スペクトルの場合
のK線のコア
太陽表面のプラージュ領
域や輝点領域における
CaII K線の輝線強度と磁
場強度の相関
Skumanich et al. (1975)
磁場強度
活動の元々の定義は黒
点数~黒点は磁場領域
~磁場エネルギーの散逸
熱化~温度上昇~(温度
と相関が強い)K線源関数
の上昇)~K線コアの輝線
よってK線コア輝線強度
は活動の程度を判断する
指標となる
K線輝線強度指数
太陽活動の指標
Sunspot
Number
He 10830
emission line
Total magnetic
flux strength
Ca II K emission
strength
活動が活発な時期は短いタイム
スケールでの変動が目立つが、
静穏な時期はこれが明確でない
最近は黒点数やHK輝線だけでなく、
色んな手法が使える(
互いに良い相関)
Total Solar
Irradiance
Mt. Wilson Program
• O. C. Wilsonによってウィルソン山天文台の
1960年代から開始され、今日まで半世紀近く
綿々と継続されているCa輝線強度測定による
太陽型恒星の活動モニタリングプロジェクト
• Wilsonの衣鉢は弟子のS. Baliunas女史に引き
継がれ、師資相承の伝統を守り続けている
• 観測の方法は写真乾板による分光観測から
近代的なフォトメータなどに取って代わったと
はいえ、その精神は揺るぎなく変わらぬ
• 真に天文学的なプロジェクト(継続は力)
Mt. Wilson Programの成果の一部
Sun
1965
1993 1965
1993
1965
1993 1965
1993
恒星活動指標(HK輝線強度)
恒星活動のbimodality
B-Vカラー
B-Vカラー
Vaughan-Preston ギャップ
同じ有効温度の星でも活動の活発なもの(High-state)とそうでもない
もの(Low-state)と二つの相を示す:ダイナモの「鹿威し」的相転移か
自転によるモジュレーション
HK輝線強度指標
HK輝線強度指標
これを利用すると恒星の
自転周期、引いては自転
速度を決定できる(普通
なされる線輪郭から決め
るv sin(i)とは異なり軸傾
斜角の不確定性はない)
年
年のスケールの本質的な活動変動
に加えて自転起因の月-日スケール
の見かけ上の変動もある
日
(拡大図)
自転の速さと活動の大きさには
関係がある
活動指標(
HK輝線強度)
自転周期
単独星の場合、横軸(自転周期)は星の年齢と等価でもある(晩期
型星は恒星風で角運動量を失い徐々に自転が遅くなるので)
太陽では活動が活発なときほど
放射エネルギーは大きくなる
一般の太陽型星の多くもこれと
同様の傾向を示す
Ca輝線強度
明るさ
Ca輝線強度の変動
Ca輝線強度
明るさの変動
明るさ
放射エネルギー量と活動の間の正の相関
ところが活動の特に大きい星では逆相関に変わる
(つまり活動の活発なときほど暗くなる)
HK輝線強度指数
●:逆相関の星(活発なものが多い)
○:正相関の星(静穏なものが多い)
活動が高まるにつれて白斑支配から
黒点支配へ移るのだろうか
太陽の観測結果もこれを示唆する
白斑面積
黒点面積
太陽における白斑(facula)面積と黒点面積との相関
活動の活発な星ほど変動も大きい
短周期変動の分散の大きさ
長周期活動変動の振幅
HK輝線強度
HK輝線強度
この点太陽の明るさ
変動は他と同様の活
動程度の星と比べて
やや小さくおとなしく
なってる傾向がある
太陽観測は黄道面から
equator-onに限られてい
ることによる見かけの
効果か?
それとも本当に大人し
いのか?
太陽型星の平均活動強度のヒストグラム
平均HK輝線強度
同類のアンサンブルと比べることで
我々の太陽が活動的にどのような
位置づけにあるのかの推測が出来る
約三分の一は異
太陽周期活動
常に低い活動
が示す変動幅
(フラット)の星
だった
(
マウンダー極小状態)
個数
彼らはこの2つ山(バイモーダル)
の
結果に基づき、意味深い仮説を提唱
Mt. Wilson survey by Baliunas & Jastrow (1990)
マウンダー極小状態は非常に特殊なケースではなく太陽型星が一生のか
なりの割合で普通におちいる状態だろう:太陽も過去にまたこれからも普通
に経験するのでは(今の定常周期的変動があたりまえなわけではない)
太陽類似星をサンプルとしたその後の追試
太陽
太陽とほぼ同年齢
の散開星団
M67の太陽
類似星
太陽
フィールドの
太陽類似星
zBaliunas&Jastrowの結果は必ずしもそのまま再現されて
はおらず、(二ツ山ではなく)一つ山の分布になっている
zしかし、現在の太陽活動変動の幅に比べて大きな広が
りを示すことは確かに再確認された
この結果をいかに解釈するか?
• Baliunas&Jastrow流にサンプルを時間的なアンサンブルと見て「太
陽が本来示す活動の変動の大きさは最近の太陽が示す程度より
もずっと大きい」と解釈するか
– たまたま現在の太陽は振幅の小さい時期にあるだけと考える
– もしサンプルの星が本当に太陽と同等なら確かにそうだろう
• あるいは調べたサンプル個々の星の性質自体に散らばりがあって
本質的に活動が平均的に大きい星や小さい星がまざりあっている
せいではないのか?
– たとえばBaliunas&Jastrowのサンプルは進化の進んで年齢の高い準巨星
(活動が静かになった)を含んでいるのではないかという指摘もある
いずれにせよこの種の研究で重要なことは太陽と十分に類似している星のみで
確実なサンプルを構成し、それについて調べることである
この意味で、太陽と似通った星を選り出すテクニックの開発、あるいは太陽そっ
くりの星(いわゆるSolar Twin)を見いだすサーベイ、という天文学のジャンルへ
の興味が最近高まってきている
太陽類似恒星の研究
• この分野の言葉遣いも人によって色々違っていて混乱
しているが一般的に言って次のような大ざっぱな感じ
をもっておけばよかろう
–
–
–
–
solar-type star: 一般のF,G,K型の星
solar-analog star:早期G型主系列星
solar-twin:G2V型の太陽に色んな点で十分類似した星
real solar-twin:クローン的に太陽に酷似した星(未発見)
• 因みにCayrel de Strobel (1996)のレビューでは以下の
ように定義している
– solar analog Æ 測光的に太陽に類似した星
– solar twin Æ 恒星パラメータ(質量、有効温度、金属量、
etc.)が本質的に太陽と同一と認められる星
太陽類似の星を検出する方法の色々
• 測光的手法(伝統的なもの)
– カラーと絶対等級の似通ったものという基準
• 分光学的手法(最近の主流)
– 単純にスペクトルが太陽にそっくりなものという基準
– ちゃんとスペクトルを解析して得られた恒星パラメー
タが太陽と似ているものという基準
• 星震学的手法(今後の発展が期待される)
– 高精度視線速度観測に基づきパワースペクトルの
成分を解析して恒星パラメータを決定しそれが太陽
と似ているものという基準
測光にもとづく伝統的やりかた
太陽のカラーもこれまでさん
ざん議論がなされてきたが、
大体B-V ~ 0.64 - 0.65 という
ところになっている
カラーが太陽と非常に近い星を選び
出す、というシンプルで正統的な手法
(solar analogを選りだすには有効だが
solar twinを見いだすには精度不足)
しかしB-Vが一致しても必ずしも全波長域
のSEDの形が合うとは限らないことに注意
特にUVのフラックスはパラメータへの感受性が
大きい上に恒星の彩層活動に大きく影響される
高分散スペクトルにもとづく分光学的アプローチ
(スペクトルの極力似ているものを探す)
moon
moon
moon
この方法は見た目だけの主観的判断にとどまらず、χ2フィットなどを用
いる客観的な数値的テクニックとともに今日でもよく適用されている
星震学的手法に基づくやりかた
で表される
恒星の非動径振動は
nは中心から表面までの節の数で、太陽型星では~20
lは周囲の節の数で、表面分解不能の星の場合観測できるのはせいぜい0,1,2
高精度視線速度観測をしてそのパワースペクトルをで出てくる振動数ピークの
分岐を調べれば、モデルと比べることにより恒星パラメータや内部の情報が得ら
れる。 [特に重要な量はΔν0 (large separation)とδνn,l (small separation) ]
の関係式よりΔν0 は星の内部の音速が関わるので
のように(平均密度から)質量と半径とい
う基本パラメータが観測的に決定できる
一方δνn,l (small separation)は
であるから内部の音速の勾配、つまり平
均分子量など内部核燃焼コアの状態の
ことがわかり、ひいては恒星の年齢など
の情報も得られる
このように星震学でパラメータを決定
し、日震学的に確立されている太陽の
パラメータと一致するという条件で太
陽類似の星を選り出す
バトラー達によるケンタウルス座α星で
の恒星振動検出
明るい太陽型星では実際に振動も検出
され始めている
現在知られる中では最も太陽に性質が類似する
solar twinの一つはさそり座18番星(HR6060)
恒星活動も~8-9年の周期
で変動しているようだ
HR図上の位置は実際
区別がつかない
18 Scoはスペクトルも一見太陽にそっくりである
本当に区別が
つかない
Sun
18 Sco
ただ一つ非常に惜しいのは
リチウムの強度が全く食
い違ってることである・
・
・
Soubiran & Triaud (2004)
我々が現在進めている太陽類似星の包括的研究
•
•
•
•
ヒッパルコス衛星で距離(真の明るさ)
がすでに良く決められている星から太
陽とよく似た星で岡山で十分観測可
能な(V<8.5クラスでδ>-25o)約170個
のサンプルについて188cm鏡(+
HIDES)で観測する(2005年後期より
開始し現在約60%強のデータを得た)
そのデータに基づき、これらと太陽と
の間で精密相対組成解析を行い太陽
のその中での位置づけを明らかにす
る(普通の星か、あるいは特別な星か)
太陽とうり二つの双子星(solar twin)の
検出にどこまで迫れるか(どの程度ま
で似ているものを見いだせるか)
なかでも特に重点を置いているのは
– 高精度の差分パラメータ決定
– Li組成のふるまいにおける太陽と太
陽類似星の関係
これまでのデータを解析した暫定結果(I)
90個サンプルのTeff vs. log g関係
我々のサンプルは以前にも増して
太陽への類似性が高く等質である
ことに注意されたし
Our results
太陽の周りに大体均等に分布して
いる→太陽はパラメータ的に特に
異常ではない(彼らと同じ仲間)
Cayrel de Strobel (1996)
これまでのデータを解析した暫定結果(II)
90個サンプルのTeff vs. [Fe/H]の関係
この場合も星は太陽の周りにほぼ
均等に分布していて、太陽はパラ
メータ的に特に異常ではないと
言ってよい(彼らと同じ仲間)
これまでのデータを解析した暫定結果(III)
しかしリチウム組成に関しては太陽は異常
Li組成は3桁にも及ぶ
大きな散らばりを見せ
ており、太陽は分布の
下側の縁に仲間はず
れのようにへばりつい
ている
Li組成に関しては太陽
は仲間のsolar analogと
は一線を画して異常
いずれにしてもLi線強度が太陽
と同等程度に弱いsolar twinが見
つからない理由がわかった
サンプル星のLi線周辺のスペクトルの例
他の金属線のスペクトルが互いに良く似通っているのにLi
の線のみは強度に非常に大きな散らばりがあることに注意
これで思い出すのが惑星を持つ恒星のLi組成異常
•有効温度が5800-5900Kあたりの狭い温度領域内では惑星を持つ
星のリチウム量が小さめに出る傾向が見られるというもの
•Israelian et al. (2004)が発見、Takeda & Kawanomo (2005)も確認
しかし、太陽はもちろん
惑星を従えているとは
いえ、最近続々発見さ
れている「惑星を持つ
星」と太陽とは一概に同
等とは考えられないの
ではないか?
この両者はいかなる関
係にあるのだろうか?
太陽
本研究の今後に向けて
• サンプルがまだ完全でないので、なによりもまず空間のあらゆる方
向にまんべんなく分布する太陽類似星のデータを確保する
• それが達成できたら恒星自身の物理パラメータはもとより運動学的
な特性、さらに鉄やリチウム以外の元素の組成も決めて、太陽類似
星の中の太陽の位置づけを統計的な観点から明らかにする
• 我々の基準でsolar twinが選り出された場合、それについては別途
特別にintensiveな研究を行う
• 現在はヒッパルコス視差データがあり岡山で十分観測可能なV<8.5
の星170個が予定サンプルだが、太陽の存在する「Li砂漠」の様子
を明らかにするべく、将来的にはもっと暗い星(V<9.5あたり)にも手
を伸ばしたい(サンプルは倍増するが岡山ではやや苦しい)
• そして更には、太陽とほぼ同じ年齢約五十億年の古い散開星団
M67の太陽類似星(V~14-15等)十分な数についても、大きな望遠
鏡を用いて包括的な研究をしたいと思っている(年齢が同じなので
Li問題を探るのに特に有益)
ダウンロード

太陽型の恒星について