日本教育心理学会第 45 回総会発表論文集(2003)
大学生における自己形成に関する研究(Ⅱ)
-諸活動領域を支える文脈の質的区分-
山田
剛史
(神戸大学大学院総合人間科学研究科)
【問題と目的】本研究では,抽象度の高い統計的
2.文脈カテゴリーにおける自己形成の相違
検定では見えにくい,より具象度の高い大学生固
次に,諸活動領域内の文脈における検討を行う
有の意味世界を示すため,大学生における諸活動
ため,文脈カテゴリー(ただし 10 名以上の 8 カテゴ
領域間での比較(活動間比較)(山田,2003)よりも
リーに限定)を独立変数,自己形成の規定要因(た
さらに深い次元での活動内における文脈を考慮し
だし 3 下位尺度の合計得点)を従属変数とした一要因
た比較(活動内比較)を行う。具体的には,諸活動
分散分析を行ったところ,0.1%水準で主効果が得
領域を支える文脈の分類を行うこと,その活動が
られた(F(7,107)=18.79, p<.001)。
自己形成的活動として機能しているかを検討する
(1)学
Tukey 法による多重比較の結果(Table),
ため,自己形成の規定要因尺度の相違について検
業活動を最重要として捉えている中でも,その活
討を行うことを目的とする。
動が回避的な理由(姿勢)によって規定されている
【方法】(1)調査内容:①自由記述による重要活
もの(カテゴリー1)は他群(9 を除く)に比して低い
動の表出(3 個)および最重要活動の選定(1 個)
値を示し,(2)自らが選択した活動として位置づ
②①の選定理由に関する自由記述③自己形成の
けられる「自己研鑽」においても,その活動が外
規定要因尺度(山田,2003)(2)調査対象:大学生
発的な理由によって規定されているとしたもの
141 名(3)調査時期:2002 年7月
(カテゴリー9)
,および(3)クラブ・サークル活動
【結果と考察】1.諸活動領域における文脈のカテ
ゴライズ 各活動内容の選定理由をもとにその
においても,その活動が単に現在の楽しさや満足
意味・内容からカテゴライズを行った。
その結果,
ー5)はカテゴリー4,8,10 よりも低い値を示し
(学
「授業・講義」では,
「1.学業への回避的姿勢」
た。逆に,
「クラブ・サークル」
「自己研鑽」
「遊び・
生は学業が仕事だから)
,
「2.学業への能動的姿勢」
(大
対人関係」の 3 つそれぞれの活動の中でも成長文
学進学を決めた理由が“学びたい学問があるから”という
脈によって支えられていると記述しているもの
「3.将来・就職への見通し」(将来
ことだったから),
(カテゴリー4,8,10)は有意に高い値を示した。
によってのみ規定されているとするもの(カテゴリ
の仕事につながるから)の 3 つ,
「クラブ・サークル」
これらより,たとえ同じ活動であってもそれを
では,「4.成長志向型」(自分の視野を広げ,成長させ
支える文脈やそれに対して付与される意味づけは
てくれるものだと思うから)
,「5.現在重視型」(今が大
異なり,逆に異なる活動であっても,同様の意味・
事だから)の 2 つ,
「アルバイト」では,
「6.成長志
文脈が存在していることが示唆された。
向型」(遊びなどと違って「お金をもらってやっている」
という責任感を感じ,働くことによって成長できるから)
,
(お金がないと何も出来ないから)の
「7.生活保障型」
(自分の経
2 つ,
「自己研鑽」では,
「8.成長志向型」
Table 諸活動を規定する文脈における自己形成得点の相違
活動内容
授業・講義
(N=) 自己形成得点
群間差(HSD)
1(15)
62.4(10.8)
1<<<3/4/5/8/10/11
3(12)
76.4(7.6)
9<<<4/8/10
クラブ・サークル
4(14)
88.2(5.1)
1/5/9<<<4
5(16)
75.9(6.2)
3<<4/10, 5<<8/10
8(17)
86.1(8.2)
1<<9, 3<8
9(15)
10(14)
73.3(8.0)
87.6(8.3)
11(12)
79.0(5.0)
(<, p<.05; <<, p<.01; <<<, p<.001)
験として成長させられるから)
,「9.外発的・必要型」
(将来職についたときこまるから)の 2 つ,
「遊び・対
人関係」では,
「10.成長志向型」(人との関わりの中
自己研鑽
遊び・対人関係
で私は成長していくから)
,
「11.享楽主義」
(楽しい生活
を送りたい)の 2 つ,
「生活習慣」では,「12.生活
(N=115)
(他のこともこれに支えられている)
,
「13.
基盤重視型」
【引用文献】山田剛史 2003 大学生における自
(しなきゃ生きていけないからなど)の 2
価値先行型」
己形成に関する研究(Ⅰ)-全体性から抽出され
つがそれぞれ得られた。概観すると,学業活動と
た活動内容と認知的評価およびその文脈からの検
生活習慣を除く諸活動において,共通するより抽
討- 日本発達心理学会第 14 回大会発表論文集,
象度の高い成長文脈が見受けられた。
46.
-255-
(YAMADA, Tsuyoshi)
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大学生における自己形成に関する研究(Ⅱ)