宇宙線研究所スプリングスクール
ニュートリノ物理
奥村公宏#([email protected]/tokyo.ac.jp)#
平成26年3月4日
1
素粒子とは
H2O
原子
原子核
クォーク
2
素粒子の種類
重力
3
ニュートリノとは
• 物質を構成する基本粒子
(素粒子)のひとつ#
電荷
/ 3種類のフレーバー#
+2/3
/ 質量が非常に小さい#
/1/3
/ 電荷を持たない(中性)#
/ 物質と極めて相互作用しない#
➡ 「弱い力」
0
/1
4
ニュートリノの質量
1eV
1keV
1MeV
1GeV
1TeV
他の素粒子より、106#∼ 1011#倍##質量が小さい!
質量があることは分かっているが、質量の自乗差のみで#
絶対値は測定されていない(上限値のみ)#
5
ニュートリノは物質となかなか反応しない
太陽ニュートリノ#
(エネルギー#数#MeV)
...!...!...!...
!
ニュートリノはこの間やっと1回反応する程度
6
様々なニュートリノ源(1)
超新星ニュートリノ
星の重力収縮によって生成され、
爆発時に一斉に放出
太陽ニュートリノ
太陽中心での核融合により生成#
4p#!
4He#+#2e+#+#2ν ##(net)
e
原子炉ニュートリノ
ウラン・プルトニウムの核
分裂によって生成
ex.#235U#+#n#! X#+#Y#+#~6e/#
+#~6νe#+#~2.5n
7
様々なニュートリノ源(2)
宇宙線のスペクトル
大気ニュートリノ
宇宙線と大気の衝突で生成された中間子
の崩壊から生成されたニュートリノ
π###!
µ !
µ#+#νµ##
e#+#νµ#+#νe
加速器ニュートリノ
加速された陽子を物質に当てて
パイ中間子から崩壊させて生成
π#!
µ#+#νµ#(~99%)
8
ニュートリノの仮説
• ベータ崩壊で、崩壊前後で総エネルギー
が反応前後で保存しない実験結果#
!
n→ p+e
−
!
• しかしエネルギーが保存しないなんて
考えられない#
W.#Pauli#(1900/1958)
• パウリが観測にかからない中性粒子(ニュートリノ)
を提唱する(1930年)
n → p + e +ν e
−
9
ニュートリノの発見
原子炉
検出器
反電子ニュートリノ
陽電子
νe
陽子
Reines#&#Cowen
中性子
逆ベータ反応
•
実際の発見は約20年後#1950年代#
•
原子炉からの反電子ニュートリノ反応による、
陽電子と中性子の同時信号を捕らえる
ν e + p → e+ + n
10
どのようにしてニュートリノの質量は確かめられたか?#
∼#ニュートリノ振動#∼
11
ニュートリノ振動
1/2 νµ
加速器
νµ
1/2 ντ
しばらく走った後...
検出器
ニュートリノに質量が存在し、フレーバーの固有状態(ニュートリノ反応時の状
態)が質量の状態(伝搬時の状態)と異なると、このような振動が起こり得る。
フレーバー
質量
$ν µ % $ cos θ
& '=&
) ν τ * ) − sin θ
sin θ % $ν 2 %
'& '
cos θ * )ν 3 *
θ#:#混合角
12
ミューニュートリノ( )やタウニュー トリ
ノ( )は固有の質量を持ってい#るわけでは
なく、固有の質量を持っ#た状態である 2と
3 の重ね合わせとして表せる。
この場合、 が真空中を飛ぶとは、
フレーバー
$ν µ % $ cos θ
& '=&
)ν τ * ) − sin θ
質量
sin θ % $ν 2 %
'& '
cos θ *)ν 3 *
θ#:#混合角
2
と 3の重ね合わさった状#態が飛ぶとい
うことになる。また、素粒子は粒子で
あると同時に波(物質波)である。
13
!!
!!
!!
!!
!!
!
波の合成
の物質波
振
幅
の物質波
振
幅
と の波の合成
ニュートリノ振動
νµ
ντ
νµ
ντ
νµ
14
ニュートリノ振動確率
%ν µ & 'cos θ
) *=+
/ ν τ 0 - sin θ
− sin θ ( %ν 2 &
) *
cos θ ,. /ν 3 0
# ν 2 (t ) $ %e − iE2t
'
(=)
- ν 3 (t ) . + 0
0 & # ν 2 (0) $
(
*'
e − iE3t , - ν 3 (0) .
P (⌫µ ! ⌫µ )
L$
#
P(ν µ → ν µ ) = 1 − sin 2 (2θ ) sin 2 (1.27 Δm 2 )
E+
*
Δm2=|m32/m22|####:####質量自乗差##(eV2)#
伝播距離(km) L##:###ニュートリノの飛行距離#(km)#
E#:###ニュートリノエネルギー##(GeV)
15
大気ニュートリノでのニュートリノ振動測定
宇宙からの一次宇宙線(陽子、Heなど)が大気と相互作用して
生成されたパイ中間子(π)などが崩壊して生じたニュートリノ
p (or He) + X → π + + π − + !
π ± → µ ± +ν µ (ν µ )
→ e ± +ν e (ν e ) +ν µ (ν µ )
ニュートリノの到来方向に
よって飛行距離が異なる#
!
天頂から #
∼数10キロメートル#
地球の反対側から #
∼1万キロメートル
大気ニュートリノの到来方向の分布
(スーパーカミオカンデのデータ)
電子ニュートリノ事象## ミューニュートリノ事象##
(1.3GeV以上)
(1.3GeV以上)
理論計算から予想される分布
(振動なし)
振動を考慮した分布
cos(天頂角)
到来方向
飛行距離
cos(天頂角)
スーパーカミオカンデ
∼1万キロ
∼数10キロ
距離によってミューニュートリノの数が減少している###→##ニュートリノ振動?
電子ニュートリノは変化ない###→###νμ#から#ντ#への振動?
17
大気ニュートリノデータの解釈
下向き
上向き
ミューオンニュートリノ振動の発見 および#
ニュートリノが質量を持つことの証拠##(1998年)##
18
加速器によるニュートリノビーム生成
p
π+
µ+
νµ
●
π/
##良くチューニングされた陽子ビーム#
●
##純度の高いミューニュートリノビーム#
●
##前置検出器による振動前のフラックス測定#
●
##ニュートリノ伝播距離が一定#
●
##ニュートリノエネルギーのコントロールが可能
精度良いニュートリノ振動測定が可能
19
加速器ニュートリノ実験
(T2K#:#Tokai/To/Kamioka)
ピークエネルギー#約600MeV#
振動が最大になるようにチューニング
νµ
ντ
Near%Detectors
p
π"
J-PARC 30 GeV
Proton beam
0m
Near detectors
µ"
off-axis
on-axis
Decay%volume% Muon%
monitor%
120m
280m
νµ"
2.5o
Super-Kamiokande
295 km
振動前後でそれぞれニュートリノ測定を行い、
振動による減少を精密測定
20
大気ν ・加速器νによる振動測定
sin (2✓) sin
2
1.27 m L
E
◆
T2K
Δm2#
(ニュートリノ質量の二乗差)
P (⌫µ ! ⌫µ ) = 1
2
✓
MINOS
大気
Δm 2 = (2 ~ 3) ×10−3 eV 2
!
θ ~ 45
sin22θ
(ニュートリノ振動の振幅)
21
太陽ニュートリノ
太陽中心での核融合により生成#
4p#!
4He#+#2e+#+#2ν ###(p/p#chain)
e
地球での太陽ニュートリノフラックス##(/cm2/sec/MeV)
ニュートリノエネルギー#(MeV)
22
最初の太陽ニュートリノ測定
アメリカのホームステイク鉱山にて615#トンの液体2#塩化
炭素による太陽ニュートリノの吸着反応にて観測
ν e + 37 Cl → e − + 37 Ar
標準太陽理論による計算値の3分の1程度
しか観測されず
23
様々な太陽ニュートリノ観測
GALLEX#/#GNO#/#SAGE
SNO
スーパーカミオカンデ
24
原子炉ニュートリノ測定(KamLAND)
KamLAND検出器
• 約1000トンの液体シンチレータ検出器#
z
• 原子炉ニュートリノフラックスを
約100キロメートル離れた箇所で測定#
• 太陽ニュートリノ振動を精度よく確認
観測データ
反跳陽電子エネルギー(MeV)
振動確率
振動なしの期待値
原子炉から検出器への距離(メートル)
25
太陽ν・KamLANDの振動測定結果
(ニュートリノ質量の二乗差)
Δm 2 = (7 ~ 8) ×10−5 eV 2
θ ~ 34!
KamLAND
太陽ニュートリノ
(ニュートリノ振動の混合角)
26
#
#
νµ#!
KamLAND)
νe#!
ντ
Δm322#
Δm212
νx
2つΔm2#は3種類の
ニュートリノ質量に
よって説明できる
27
Cassiopeia#A#
(Chandra)
ニュートリノ天文学
28
超新星爆発(Supernova)
29
(~99%)
#
:#~10sec.#
T.Totani et. al., Astrophys. J. 496, 216 (1998)
1987Aからのニュートリノ検出
(MeV)
カミオカンデ
11事象
超新星爆発メカニズムの実証#
ニュートリノ天文学の幕開け
ニュートリノ物理の最前線
33
第3の振動モード?
2世代のニュートリノ振動:
$ν µ % $ cos θ
& '=&
)ν τ * ) − sin θ
sin θ % $ν 2 %
'& '
cos θ *)ν 3 *
3世代ニュートリノ
振動モデルの検証
3世代のニュートリノ振動:
$ν e ' $1
0
& ) &
&ν µ ) = &0 cosθ 23
& ) &
%ντ ( %0 −sinθ 23
0 '$ cosθ13
)&
sinθ 23 )&
0
)
cosθ 23 (&% −sinθ13e iδ
大気ニュートリノ#
加速器ニュートリノ
νµ#!
ντ
m232 = (2 ⇠ 3) ⇥ 10
✓23 ⇠ 45
3
eV2
0 sinθ13e iδ '$ cosθ12
)&
1
0 )& −sinθ12
&
0 cosθ13 )(% 0
第3の振動モード
νµ#!
✓13 ,
?
0'$ν1 '
)& )
0)&ν 2 )
)& )
1(%ν 3 (
太陽ニュートリノ#
原子炉ニュートリノ
νe#!
νe
CP
sinθ12
cosθ12
0
νx
m221 = (7 ⇠ 8) ⇥ 10
✓12 ⇠ 34
5
eV2
34
電子ニュートリノ事象の出現#(T2K実験)
νe出現事象
バックグラウンド
νµ
ντ
νe
ニュートリノ再構成エネルギー(MeV)
バックグラウンドを大幅に削減し、第
3の振動モードによるミューニュート
リノビームから電子ニュートリノ出現
を発見
35
原子炉ニュートリノでの精密測定
大気νの#Δm2による振動
ν e →ν e
太陽νのΔm2による振動
disappearance#
by#θ13#
KamLAND
距離/エネルギー(km/MeV)
NearとFarの比較
検出器を複数設置し、反電子
ニュートリノ減少を精度良く
測定。第3の振動をとらえた。
36
電荷パリティ(CP)の対称性
$ν e ' $1
0
& ) &
&ν µ ) = &0 cosθ 23
& ) &
%ντ ( %0 −sinθ 23
0 '$ cosθ13
)&
sinθ 23 )&
0
)
cosθ 23 (&% −sinθ13e iδ
大気ニュートリノ#
加速器ニュートリノ
0 sinθ13e iδ '$ cosθ12
)&
1
0 )& −sinθ12
&
0 cosθ13 )(% 0
第3の振動モード
CP非対称性が存在すると、ニュートリ
ノ・反ニュートリノの振動確率が異なる
sinθ12
cosθ12
0
0'$ν1 '
)& )
0)&ν 2 )
)& )
1(%ν 3 (
太陽ニュートリノ#
原子炉ニュートリノ
ニュートリノ:
ν α = U ⋅ν i
反ニュートリノ:
ν α = U ⋅ν i
宇宙における物質・反物質の非対称性の
を解く重要な手掛かり
37
ニュートリノとCP対称性
• ニュートリノはスピン1/2#粒子#
• 左巻き(Left/handed)と右巻き(Right/handed)
左巻き(L)
ニュートリノ
反ニュートリノ
右巻き(L)
CP
変
換
❌
C(電荷)変換
❌
P(パリティ)変換
弱い相互作用において、CおよびP変換の対称性は最大に破れている#
CPの対称性についてはどうか?
38
CP対称性と宇宙創成
• 物質優勢な宇宙を説明するために素粒子のCP非対称性が必要
CP非対称なし
CP非対称あり
現在の宇宙を説明する非常に重要なパラメータ#
ニュートリノにCP非対称性は見つかるか?
39
CP非対称性を測定するには
• 第3の振動モードをニュートリノおよび反ニュートリノで#測定して確率を比較#
• 数千のオーダーの#νμ#→#νe#事象が必要#(現在のT2K実験で数10事象程度)#
– さらに強度の高いニュートリノビームと大きな検出器が必要
ニュートリノ P (⌫µ ! ⌫e )
⌫µ ! ⌫¯e )
反ニュートリノ P (¯
40
One#option#for#CP#measurement:#
###J/PARC#upgrade#+##
#####Mega/ton#water#Cherenkov#detector
41
超新星背景ニュートリノ(SNR)
宇宙には1020個の恒星がある。(1010個の銀河、1010星/銀河)#全恒星の約0.3%が
超新星爆発に至る。#したがって、宇宙の開闢から今までに約1017回の超新星爆
発がおき#てきたことになる。それにともなうニュートリノ(超新星背景ニュー
トリ#ノ、Supernova#Relic#Neutrino(SRN))は宇宙に満ちている。
超新星背景ニュートリノが観測されれば、#大質
ν
量星形成の歴史を探ることができ#る。
ν
SRN expected spectrum
実験のリミットは予想
されるフラックスまで
ν
あと少し!
42
GADZOOKS!計画
Gd
10
4σ
実証実験実施中#
(EGADS)
(8MeV)
~20μsec
高エネルギー天体ニュートリノ
PeV#領域(1015eV)
宇宙背景マイクロ波放射#(CMB)との反応
活動銀河核#(AGN)
P+
超高エネルギー宇宙線#
(1020eV以上)
p
!
!P +⇡
⇡ ! µ + ⌫µ
γ
1015eV(PeV)以上で高エネルギー天体からのニュートリノの観測が期待#
•
銀河系外高エネルギー天体での宇宙線加速によって生じるニュートリノ#
•
1020eV以上の超高エネルギー宇宙線が宇宙マイクロ波放射(CMB)との衝突
によって生成するニュートリノ(GZKニュートリノ)
44
高エネルギー天体ニュートリノ実験
地中海や南極の氷に光センサーのついた”ストリング”を沈めて、
超高エネルギーニュートリノ事象を捕らえる#
ANTARES実験
IceCube実験
45
まとめ
素粒子
ニュートリノ振動
Δm322,##θ23
大気
θ13
CP
他にも#
ダブルベータ崩壊実験#
地球(Geo)ニュートリノ#
####‥‥
原子炉
θ13
加速器
太陽
Δm212,##θ12
ニュートリノ超新星爆発
高エネルギー天体
超新星背景
宇宙線の加速、GZK
星のメカニズム
宇宙星生成の歴史
宇宙
46
GADZOOKS!プロジェクト
太陽・超新星ニュートリノ
スーパーカミオカンデ
大気ニュートリノ
宇宙線研究所で
行われている実験
T2K実験(加速器ニュートリノ)
47
ハイパーカミオカンデ#プロジェクト
スーパーカミオカンデ
おわり
48
ダウンロード

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