2013年
5月 10 日
第 254 号
発行所 石 井 記 念 友 愛 園
宮崎県児湯郡木城町椎木 644 番地
ゆうあい通信
〒884-0102 ℡ 0983-32-2025
石井十次没後 100 年に向けて ②
園長 児嶋草次郎
A こんにちは。お久しぶりです。お電話ありがとうございます。
B 「石井十次没後 100 年に向けて」
(友愛通信 251 号)を読んで、色々とお話
をしたくなって電話しました。児嶋虓一郎先生生誕 100 年と石井十次先生没
後 100 年、大きな節目だね。私も虓一郎先生には大変お世話になったし、こ
の節目をチャンスとして、何か事業を興す石井記念友愛社にぜひ協力したいと
思う。読んだのは2月だったけど、その後年度も変り、具体的に動き出したも
のはあるのかい。
A 2月には5本の柱を立てていましたが、平成 25 年度の事業計画では、次の
6つを掲げています。
① 児童養護施設の小規模化と地域分散化。
仮称「小林森の家」の設置準備(土地の確保と県への要望書の提出)
。
② 保育園の新設と改築。
平成 25 年度石井記念川南保育園新設(川南町立野田原保育所民間移譲
平成 26 年度川南町立山本、記念館保育所統合)。
③ 高齢者ホーム(居住施設)の設立。
④ 石井十次資料館の充実(増築)
。
資金確保のため寄付募集。
⑤ 自律教育の実践。
⑥ 100 周年記念イベントへ向けて関係市町、関係団体との協議。
イベントは平成 26 年8月 24 日(日)を予定。
⑥は2月の時点より増やしたものですが、記念イベントです。できれば岡山
や大阪の関係の団体の方々に集まっていただいて、未来へ向けての記念シンポ
ジウムができないものかと願っています。そして、石井記念友愛社本部のある
木城町や生誕地である高鍋町、それから、墓地のある西都市等に共同主催者に
なっていただけないものかと考えています。今から動かなければなりません。
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B イベントはぜひ成功させてほしいね。石井十次を全国に向けてアピールする
チャンスであり、市町だけでなく、県やマスコミもまきこんだ方がいいと思う
よ。今、アベノミクスとか言って、日本経済を再起させるために様々な手が打
たれ始めており、政府も高い支持率を日本再生のチャンスとしているようだね。
今朝の読売新聞でも、「続発するいじめへの対策として政府の教育再生実行会
議が提言した『道徳の教科化』に向け、文部科学省の有識者会議『道徳教育の
充実に関する懇談会』をスタートさせた。」(読売新聞5月 11 日付)と紹介し
た後、下村博文文部科学大臣へのインタビュー記事を載せていた。戦前の「修
身」には石井十次が取り上げられていたよね。道徳は「思いやりの気持ちを持
とう」というような抽象的な言葉ではダメであり、すばらしい先人達の後姿を
子ども達に示してあげることが一番説得力がある。経済だけでなく、ぜひ教育
や福祉理念の再生の機会ともしてほしいよね。
私が今日特に聞きたいのは、石井十次資料館の充実についてなんだけど、具
体的にはどのようなことを構想しているのかい?
A はい、現在の石井十次資料館は、昭和 54 年に父虓一郎がどこからも補助金
をもらわず作ったものです。目的は、石井十次、岡山孤児院関係の資料を永久
に保存するためでしょう。これができて 13 年後に父は亡くなりましたが、そ
の後、石井十次研究は、随分進展しています。この資料館ができてなく古い倉
庫に資料が眠ったままだったら、石井十次はおそらく埋もれたままだったこと
でしょう。父の出版した「石井十次日誌」とこの石井十次資料館の存在意識は
すごく大きなものです。研究者のおかげで、資料の整理もある程度終り、これ
から次の展開を考えねばならない時です。
一つは展示方法の再検討が必要です。やはり、次の世代を担う若者達の心の
教育を考えた展示にしていかねばならないでしょう。現在高鍋町にある県立高
鍋高校の生徒が毎年地域学習で見学に訪れますが、もっと魅力あるものにして、
小学生、中学生、そして他の高校等からも呼びこめるものにしていかねばなり
ません。道徳教育・福祉教育の拠点にしていかねばならないのです。
二つ目が、戦後の石井記念友愛社の歴史をも顕彰するスペースが必要だとい
うことです。石井十次に比べたら、恥ずかしい仕事しかできていませんが、そ
れでも、戦後 67 年間、地道にこの地域で地域貢献して来たのです。明治時代
から過去、現在、未来へとつながる生きた歴史を伝える福祉資料館としなけれ
ばなりません。また、戦後この石井記念友愛社で働いたり生活したりした人達
が訪れることで自分を取り戻せる場にもなればと思います。
三つ目が、現在静養館等に展示してある児島虎次郎の絵画等を永久に保存で
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きる空間の確保です。静養館は古い木造ですので、火災にあえばこれら福祉文
化財はすべて消えてなくなります。私が生きている間に何とかしなければなら
ない課題です。
B ふーむ。ぜひ実現してほしいと思うけど、資金はどうなっているの?
A この資料館に関しては、寄付に頼るしかありません。一応収益事業というこ
とになっていますが、入館者も少ないですし、資料館職員の給料を払うのもや
っとです。お金を借りても返済できません。広く寄付を呼びかけたいと思って
います。御支援よろしくお願いしたいと思います。
B できるだけの協力はしたいと考えているけど、これから5年後 10 年後のこ
の石井十次資料館の道徳教材としての価値を考えると、行政も支援すべきだと
思うし、日本再生という次元から考えるのならば、一般企業にも「教育再生の
ために」という主旨で呼びかけてもよいのではないかと思うよ。予算としては
どの位を考えているのかい?
A 5000 万円位は集めたいと願っています。私の能力では精一杯頑張ってもそ
れくらいが限度でしょう。
B 石井十次は世界の偉人!なんて歌の歌詞にもあるけど、この石井十次関係の
資料は、単に石井記念友愛社の財産ではなく、県レベル、いや国レベルの貴重
な文化財であり宝だと思うよ。教育も福祉思想もグローバル化される中で、
我々が日本人としてのアイデンティティを確保していくためには、こういう人
の存在は絶対必要だ。文明開化に活躍する人達だけが歴史を作っているわけで
はない、裏で大地の上で黒子となって、人々の心や生活を支える陰の英雄も日
本の歴史の中には必ずいるのです。
今、NHKテレビの大河ドラマで新島八重をやっている(
「八重の桜」)けど、
「原発事故で低迷する観光復興に寄与するという目的だけでなく、福島また東
北の女性達(男性もかもしれない)のDNAを目覚めさせ、誇りと勇気を呼び
起すという願いもこめられているのではないかと思うよ。
宮崎県は、ちょうど同じ時期に小村寿太郎と石井十次を搬出している。宮崎
県人のDNAというのは、小村と石井なんだと子ども達には教えていかねばな
らない。小村は世界の檜舞台で活躍し、石井は日本の最底辺で活躍した。人間
の歴史が作られていくには、両方が必要なんだ。町や県にも支援をお願いして
みてはどうですか。5000 万円では大したものはできない。
A ありがとうございます。勇気を与えられます。がんばってみます。
B それからもう一つ、お聞きしたいのだけど、「高齢者ホーム(居住施設)の
設立」というのは具体的にはどういうものを考えているのかい?他の事業に比
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べると遠慮がちに書いてあるので、中味がよく分からないのだけど―。
A すみません。そこまでやれるのかなという迷いと、いや社会への警鐘という
意味でやらねばならないという気持ち、半々でして筆が進まない部分もあるの
です。
B ほう、社会への警鐘とはどういう意味なのだろう。
A 人類が始まって 500 万年、日本の縄文時代からに限定したとしても1万年
位以前から、人間はずっとずっと大家族の中で生きてきました。つまり、若い
夫婦は生きるために一所懸命外で働いて、お年寄が子どもの育ちのために、か
なりの部分その役目を果たして来たのです。この大家族制度が崩れ、核家族化
したのは、ほんの 60 年くらいの間です。そして、子育てを「保育所」という
新しく考え出した共同の子育て所に委託するようになったわけです。1万年と
いう歴史からみれば、60 年という時間はほんのわずかでしょう。
今大都会の方では保育所が足りないとかで、国も保育所の充実に力を入れよ
うとしていますが、果たしてそれだけでよいのか疑問を持っています。若い夫
婦と保育所との間を行き来するだけで子ども達の心は育つのかという問題で
す。
一方、高齢者がどんどん増えており今までの高齢者施設では足りなくなって
街の中に次々に高齢者専用の住宅や介護施設が出来て来ています。子どもと高
齢者とはこのまま分断されたままでよいのか。時代を大家族制時代に逆戻りさ
せることはできないわけだから、福祉施設がそういう機能を持つようにすれば
よいということで始めたのが、宮崎の石井記念こひつじ保育園とデイサービス
センターとの複合施設でした。平成6年でした。その後、高鍋町にある石井記
念にっしん保育園でもデイサービスとの複合化を平成 18 年に行なっています。
デイサービスは通いですので次は住いを形にしたいと考えているのです。
B 川南に建設する保育園でも何か計画していたのではないかね。構想を友愛通
信で読んだ気がするけど。
A はい、提案はしたのですが、諸事情により複合化については断念しました。
なぜかこういう発想というのはなかなか理解を得るのが難しいのです。
B 今度考えているものの中味を教えてくれよ。私もすごく興味を持っているの
だ。
A ある人から冗談のように聞いた話です。我々団塊の世代が老人ホームに入ら
なければならなくなった時、あまりに辺ぴで自由が制限されるような施設に入
れられたら、ヘルメットをかぶって旗を振って「自由を!」とか言ってバリケ
ードなどを築くだろうと。戦後世代の人間は民主主義教育を受けて育っていま
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すので、人権意識が高いのです。戦前の人達のように、滅私奉公型ではありま
せん。おそらく老人だけしかいないような生活空間に対しても疑問を持ち、何
らかの抵抗をするようになるのではないかと思っているのです。
B どのような複合なのだろう。行政関係からの理解を得るのは難しいようだけ
ど。
A 補助金等を期待するのは厳しいだろうと思います。ですから銀行等から資金
を融資していただくということになるでしょう。もちろんしっかりとシュミレ
ーションして、事業として成り立つものでなければなりません。
中味ですが、基本は住宅型の高齢者施設です。できればそこに保育園の一部
が複合として入りこみます。小規模児童養護施設あるいはファミリーホーム等
の児童の住いも一緒です。さらに、職員の住宅も一緒の建物の中にあればと思
います。障がい者の方々にホームヘルパーとして働いていただくことも考えて
います。つまり、子ども、若者、お年寄り、障がい者みんなで支え合って暮ら
せる大家族的な住いなのです。
そういうものを作り社会に示すことで、今の社会のたて割り福祉の流れに対
する警鐘となればと思っているのです。
B すばらしいね。ぜひ実現してほしい。私も近い将来、利用させてもらいたい
と思う。石井十次が最後に到達した里親村構想と、なんだか近いところをめざ
しているようにも感じ取れるよ。没後 100 年は、新たなスタートの年でもあ
るね。がんばって下さい。ありがとうございました。
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