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てんさい生産における規模の経済性と技術の役割
駒木, 泰
北海道大学農經論叢, 42: 75-99
1986-02
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http://hdl.handle.net/2115/11002
Right
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bulletin
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42_p75-99.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
「てんさい生産における規模の
経済性と技術の役割」
駒木
泰
目 次
1.課題....・ ・
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分析方法-…・・ ・・
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…
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・ 77
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.計測式ならびにデーター'"・
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… 7
8
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1.分析対象と費目,価格の集計-…...・ ・
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… ・・
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・ ・
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・ 7
8
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2
. 規模の経済性とその源泉…'"・ ・
…
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1
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3
. 計測l
式と計測方法・・ ・・
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3
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4
. 計測結果....・ ・
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…
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7
N. 分析…...・ ・
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・ ・
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9
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H
V
.結
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H
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H
H
H
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H
H
論
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・ ・
…
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・ ・
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…
・
・ 9
6
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H
H
H
H
1.課題
北海道の畑作農業において昭和 30年以後,経営規模拡大と大型機械化を中
心とする技術進歩とにより,基幹作物のうちてん菜,馬鈴薯,小麦の生産量
が増大してきた。なかでもてん菜は機械化技術体系の導入過程において耕起
)の普及に
から収穫までの大型機械化一貫体系が確立し,かつ移植栽培方式 1
より一層の増収が可能となった作物である。
これら二つの技術がてん菜の生産に採用されている現在,てん菜の生産に
規模の経済が存在していると考えられる。不可分性を有する大型機械による
生産が中心で‘あり,移植栽培等の増収的技術にも大型機械が深くかかわって
1)昭和 3
7
年頃より普及した栽培方法である。ペーパーポットの使用により栽培期聞を延
長させ収量増加を意図したもので,直播方式の発芽,初期生育の不安定性を回避する
0a当り収量が直播方式に比べて 10-15%培大した。昭和 5
5年に普及率が
ことにより 1
90%を超えた ((6,
) (4)参照のこと)。このような飛躍的な増収が得られる技術は,
他の畑作物にはみられない。
7う
いるからである。また大規模な機械への投資の回収のためにも安定した収量
を得る必要があり,増収的技術の役割も見逃せないと思われる o
本論では畑作農業の中心的な基幹作物のうち,先の二つの機械化技術,増
収的技術が密接に結びついて生産されるという特徴をもっ,てん菜をとりあ
げ2)規模の経済の存在とその源泉を明らかにし,それぞれのてん菜の生産技
術が知何なる関係をもち,規模の経済を存在させているのかを明らかにする。
以下,本論において具体的に明らかにする点を列挙しよう。第 1に,てん
菜生産における規模の経済の存在を確かめ,その源泉となる要因を明らかに
し,第 2に,機械化技術,増収的技術がてん菜生産における規模の経済の存
在の源泉となる要因にいかなる役割を果たしているのかを分析することによ
り,てん菜生産技術と規模の経済との関係を明らかにする。
また規模の経済は農業の技術の発展段階をある時間においてみたものであ
る。従って技術進歩の誘因が資源の稀少性に求められるならば,規模の経済
にはいかなる誘因があるのだろうか。それが本論での中心課題である。
技術を要素の結合としてとらえ,具体的な結合関係を代替関係,投入比率
でとらえることができょう
o
本論では生産要素聞の代替関係を代替の偏弾力
性,投入比率を要素聞の偏向性 3)でとらえ,代替の偏弾力性,偏向性に事前
的な制約を課さずに計測可能なトランスログ費用関数を用いて課題に接近す
る
。
なおトランスログ費用関数を用いた分析は茅野 (
1
8
), 加 古 [7),長谷部
[5)等により行なわれている。それらはすべて稲作を対象としたものであ
る。畑作物としててん菜に対する適用は筆者の知る限りでは未だなされてい
ない。
2)生産調整以後の稲作に関する機械化技術の経済分析には多くの困難がある。機械化へ
の投資誘因に対する生産調整の影響が 1つ考えられる。例えば稲作の機械化一貫体系
が定着したのは昭和 5
0
年代であり,減反の緩和された時期である点,また投資の回収
を稲作のみからではなく転作物にたよることができる点等がある。従って生産調整を
如何にとり扱うかが分析の鍵となるであろう。
3)要素聞の偏向性を評価する視点は,時間の変化によるものと,規模(s
c
a
l
e)の変化
i
a
s)
によるものとがある。技術進歩の偏向性は時間の変化による投入要素の偏り(b
を評価する。本論ではクロスセクション分析であるので規模問での偏りを評価する。
従って以後本論ではこの偏向性をスケールバイアスと呼ぶ。(田・ 3節参照のこと)
7
6
I. 分 析 方 法
トランスログ費用関数とは,生産関数と均衡条件から双対定理を用いて導
出される最小費用関数をテイラー展開したものである。展開形と制約条件は
次の通りである。今 n個の生産要素により 1つの生産物を生産していると
し
,
C:最小費用
α
p,:i要素価格
Q:産生量
l
n
:自然対数とすると
(
] :J'¥ラメーター
'
1
,
トランスログ費用関数は
η
九C=ao+aQlnQ十r::a,
l
n
P,
1
n n
n
+士r::r
:
:'
1uI
n
P
i1
ηP
j+r
:
:OQiI
n
QI
n
P
i
C
. i
+~
(2-1)
i
'Q
Q
(川
制約条件については,
(
i
) 対称性条件
i
'u =i
'
j'
HHH
1次同次条件
r
:
:ai=l
n
n
n
r
:
:i
"j=r
:
:i
'n=r
:
:i
'Q
'=O
,
i
( j=
,
l…
・
・
・
,η
)
(2-2)
となる。
計測にあたり (2- 1)式のトランスログ費用関数は,生産要素の数を n
個とすると,パラメーター数は n2 十 2n +3個となり,計測式の自由度が
小さくなりやすい。そこで生産者の均衡条件から導かれるシェファードの補
題から得られるコストシェア一式とトランスログ費用関数との連立推定を行
うこととする。
Pu Xi
,S
iをそれぞれ i生産要素の価格,投入量, コストシェアーとする
と
,
シェファードの補題
dlnC
n
θC
一
一p
一, ι,より
δ
=x
P,
X
一
一
一=一一ー
,=a,+r
:
:i
'u1
ηP
j+i
'Q
,
lnQ
d
l
,
?
Cと = S
~,~, '
77
(2-3)
がコストシェア一式であり,パラメーターに関する制約条件は,
トランスロ
グ費用関数に対するものと同ーとなる。
)
本論においてとりあげる生産要素は,省力的技術を構成する労働 (L,
機械 (K),憎収的技術を構成する肥料(F ),種苗 (S),さらに両方に
関する土地 (A) の 5種類である o
次に分析手順について述べる。第 1の課題すなわち規模の経済とその源泉
について分析するために,農林水産省「工芸作物生産費調査(てん菜)Jに
記載されている費目から 5つの生産要素に関して費用と価格を作成する。第
2の課題すなわち技術と規模の経済の要因の関係について明らかにするため
に,先に作成した価格をデーターとしてトランスログ費用関数を計測し,代
替の偏弾力性,スケールバイアスを算出して分析を行う。
m
.計測式ならびにデーター
1
. 分析対象と費用,価格の集計
分析対象地域としてわが国の代表的な畑作地帯である十勝,網走 4)をとり
あげる。畑作でのてん菜をとりあげたのは,稲作地帯での転作田におけるて
ん菜生産が,土地条件の差,作付制限の強弱の程度等から費用の形成におい
て畑作地帯とはかなり異なるものと考えられるからである。また十勝,網走
においても土地条件,気象条件等に差があると考えられるが十勝全域と斜網
地域をとりあげることによりその差を最小限にとどめることができると考え
た。さらに経嘗規模の大小,機械の利用形態等に地域差があると考えられる
が,それらがてん菜の生産に影響を与えているか否かは後の統計的な検定に
より明らかにしたい。
分析年度は,機械化一貫作業体系の確立,移植栽培の普及率が 9割を超え
た時点で作況が正常であり,費用の形成に技術以外の要因を考慮する必要が
4,5
5年の二ヵ年とした。
ない昭和 5
J の個別調
データーとしては農林水産省「工芸作物生産費調査(てん菜 )
査表を利用し,個別農家の収入部門の 1- 3位がてん菜,麦,豆,馬鈴薯,
4)対象市町村は以下の通りである。カッコ内はサンプル数である。帯広(6),芽室(1
0
),
更別(8),清水(4),鹿追(2),音更(10),士幌(1),幕別(2),浦幌(5,
)
小清水(9),東藻琴(3),斜里(5),網走(6),美幌(5。
)
7
8
雑穀のいずれかであり,かつてん菜について移植栽培を採用している畑作専
業 農 家 5)を 選 定 し た 。 サ ン プ ル 数 は 二 ヵ 年 合 計 で 76戸 で あ る 。 対 象 農 家 の 規
模 別 概 況 は 第 1表 に 掲 げ た 。 規 模 に 関 し て 農 家 の 分 布 に か た よ り は な い 。 反
50t以 上 の 階 層 か ら 低 下 し て い る 。 し か し 反 収 に つ い て 統
収 水 準 は 総 収 量3
計 的 に 有 意 差 は み ら れ な か っ た 。 6)し か し 明 ら か に 分 散 が 大 き い 点 は 注 目 す
べき点である。
第 1表 分析対象農家のてん菜生産規模別生産概況
規模
農家数
(t)
-150
150-200
200-250
250-300
300-350
350-400
4
0
0
(戸)
9
1
6
7
1
3
1
4
7
1
0
1戸当規作付面積経長耕地てん菜作付反
収反収変動
(
k
g
) 係数(%)
(
h
a
)
(
h
a
) 比率(%)
模 (t)
9
.
1
5
1
0
0
,
9
0
5
1
.7
1
8
.
8
9
.
0
.4
5
,
5
8
7
1
7
6
3
.
2
1
4
.7
21
8
.
1
2
1
9
6,
2
2
5
3
.
5
1
7
.
8
1
9
.
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.
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2
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,
2
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6
.
6
2
6
.
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,
3
6
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1
6
5
.
0
2
4
.
7
2
0
.
8
.4
6
,1
7
7
6
.
0
21
9
.
2
3
6
9
2
7
.
8
,
8
5
3
5
2
3
9
.
0
2
4
.
7
5
1
3
.7
3
6
.
1
(資料)農林水産省「工芸作物生産費調査(てん菜 )
J
註)十勝,斜網地域の畑作専業農家の昭和 5
4,5
5年
。
次に費用と価格の集計を行う。
荏 開 津 (3) に よ れ ば , 費 用 関 数 は 価 格 と 生 産 量 の 関 数 で あ る の で 原 デ ー
ターの価格に関して分散がなければパラメーターの計測は不可能であり,ク
ロスセクションデーターにおいては価格の分散はない,という指摘がなされ
ている。
8),黒田 (
1
1
) の立場に従う。農家に生産
それに対して本論では加古 (
関数を仮定して計測する場合,それは多種の投入要素,生産物を集計した集
計的生産関数である。双対定理により導出された費用関数も集計関数である。
そのために当然,計測する場合においても集計された価格を用いるべきであ
る。その集計された価格には分散があり,しかも経済理論の要請する農家の
1
1
) に よ れ ば そ の 価 格 は 叩i
tp
r
i
c
eである。
直面する価格である。黒田 (
5)個表には畜産農家が含まれているが,これらは計測サンプルから除いている。これを
除外したのは,畜産農家には自給堆肥が存在するが,畑作専業農家は堆肥の入手が困
難であり,要素市場の制約の差をなるべく除去する目的からである。
6)大規模層で最も反収の低い 4
0
0t以上の規模での反収5
8
5
3
k
gとサンプル全体の平均値,
6
0
81
k
g,標準偏差 5
8
8とにより平均値の差の検定を試みた。
79
価格の集計方法は以下の通りである 7)P
;,X
;をそれぞれ投入要素の価格,
投入量 , S
i をコストシェアーとすると集計された価格 P は
んP=
,
LS
i
l
n
Pi
である。
こで
(3- 1)
P
i
X
S
i
=一一ームー,んは自然対数をあらわす。
,
LP
i
X
ι
(1)肥料
土壌条件,品種,栽培条件等からの限界生産力のちがいにより,施肥水準
は異なる。生産費調査の原単位表より,無機質肥料,有機質肥料の価格と投
入 量 か ら (3-1)式を用いて価格を作成した。肥料の費用は生産費調査に
ある肥料費をそのまま用いた。
(
2
) 労働
生産費調査に記載されている労賃は「農村雇用賃金」により評価されたも
のである。本論では労賃の格差は労働の質の差別を評価しているものとする。
家族労働の男女別,雇用労働(臨雇,常雇,手間替え,ゆい)の男女別の労
賃,労働時聞から(3- 1)式を用いて労賃を集計した o 労働費用は総労働
投入時間に集計された労賃を乗じたものを用いた。
(
3
) 機械
対象農家の個表によれば約半数の農家が賃料料金を支払っている。これは
共同利用,または賃耕により機械を利用していることを表している。従って
機械の使用に対する支払いは自己所有のものによるものと,賃借によるもの
とを合わせて評価しなければならない。よって(減価償却費+賃借料一男子
雇用労賃評価の賃借中の労働費)を機械の費用とし,価格はそれを動力運転
時間で除したものを用いた o
(
4
) 種苗
7)加古 (8) に従う。
8)サンプル平均での賃金率は時間当りで家族男子 1
0
5
5円,同女子 620円,雇用男子 673円
,
8
8円である。荏関津 (4Jは家族労賃の評価に用いられる「農村雇用賃金」
同女子 5
はその性格が不明確であると指摘している。本論では家族男子の賃金率の高さは経営
) によると経蛍主とし
主としての経営者能力を評価しているものと考える。天間(17
ての機能は職能的視点から管理者,組織者,労働者に分けられるとしている。そこで
管理者,組織者としての機能は家族女子,雇用労働へは代替しないと考えられるので,
それらの能力が労賃へ反映されているものとする。
80
移植栽培を前提としているのでこれを投入要素としてとりあげた。
(種苗費十その他諸材料費(ペーパーポット,ビート代が主))を種苗の
費用とし,価格はそれを種苗投入重量で除したものを用いた。
(
5
) 土地
てんさいを作付しなければ他作物からの収益が期待されるので,経営者が
てん菜生産のために選んだ土地には機会費用が考慮されていると思われる。
そこで生産費調査に記載されている小作地代を用いずに,機会費用を考慮し
た土地の純収益を用いて地代とした。すなわち
(てん菜からの作付面積当りの粗収益)一(てん菜以外の作物からの作付
面積当りの粗収益)を地代 9)とし土地の費用は地代にてん菜の作付面積を乗
じたものを用いた。
以上
5つの生産要素の費用と価格を作成したが,建物費は投入要素とし
ての解釈が困難である点,光熱,動力費は機械の使用のための費用のみを分
離することが困難な点,農薬剤費は肥料と代替関係がなく,しかも 1つの投
入要素としてとりあげるほど重要ではないと思われる点から今回の分析では
除外した。
総費用は 5つの費用を合計したものであり,計測に必要なコストシェアー
はそれぞれの費用の総費用に対する比率としている。
2
. 規模の経済とその源泉
第 1図は,規模の経済とその源泉を明らかにするために生産量トン当りに
換算した平均費用を規模別に示したものである。総産出量の増大にともない
平均費用は減少しており,規模の経済が存在していることは明らかである。
次にそれぞれの要素の平均費用についてみると規模が大きくなる程,労働の
平均費用は減少し,肥料の平均費用は若干増加しているが,他の生産要素に
関して顕著な傾向はみられない。従って平均費用の減少は労働の平均費用の
減少によるものであると判断される。
9)土地の純収益の算出には生産者の行動に大胆な仮定をおかなければなはない。本論で
は,てんさいの利潤=てんさい以外の利潤,てんさいの土地を除く生産要素の受け取
り分=てんきい以外の土地を除く生産要素の受け取り分と仮定する。つまり粗収益は
利潤,生産要素の受け取り分からなるので粗収益の差は土地の純収益からのみの差と
仮定していることになる。それが機会費用を考慮した土地の純収益であり,これを作
付面積で除して地代とした。
8
1
(
円 /t)
2
2
5
0
0
2
0
0
0
0
1
7
5
0
0
てんさいの平均費用
1
5
0
0
0
労
働
H
E
料
人
1
2
5
0
0
1
0
0
0
0
7
5
0
0
地
土
5
0
0
0
一150
150-200 200-250 250-300 300-350 350-400
てんさい生産規模
400(t)
第 1図 平均費用の規模別分布
(資料)第 1表に同じ。
注)集計方法については本文 i
l
l
2参照のこと。
そこで実際の労働時間を家族,雇用別にみたものが第 2図である。 8- 9
割が家族労働によるもので,しかも規模が大きくなる程減少していくことが
わかる。家族労働力は l戸当り平均で 3- 4人であり,規模が大きくなる程
稀少性を増し,投入量に制約を与えていると考えられる。一方雇用労働の導
8
2
j
'
n
(
賃料中の労働
3
0
労働時間
2
0
家 ! 族
1
0
l 労
i
働
T
-150 150-200 200-250 250-300 300-350 350-400 400-
(t)
第 2図 10a当労働時間の規種別分布
(資料)第 l表に同じ。
入は費用増大につながるため,その投入には制約がある。第 1図でみた労働
費の減少は主に家族労働の稀少性によって生じたものであり,また費用を節
約するため,投入が少ない雇用労働も見逃せない。従って投入量に制約があ
るという点から家族,雇用労働の両方を含めて労働として技術を評価する必
要がある。すなわち規模の経済は,労働費の節約がその源泉であり,それは
家族労働の稀少性を要因とし,さらに全体の労働投入に制約があっても収穫
逓増的な生産を行い得る技術の役割があると考えられる。
3
. 計測式と計測方法
生産要素が 5要素の場合, (2ー 1)式, (2- 3)式を用いて推定する連
立方程式の数は 6本であるが,推定パラメーターについて(2- 2)式の制
約条件を課すことにより, (2- 3) 式のコストシェア一式から 1本を任意
に取り除いて計測することができる。計測にあたり肥料のコストシェア一式
を除去した。
5年に技術,費用の形成の有意差を検定する
また,十勝と網走,昭和 54,5
ために,地域別,年次別ダミーを付加した。
式は以下の通りで,計測方法は Z
e
l
l
n
e
r (
2
0
)の
撹乱項を付加した計浪u
SUR(
s
e
e
m
i
n
g
l
yu
n
r
e
l
a
t
e
dr
e
g
r
r
e
s
i
o
n
s
)を用いた。また,
8
3
トランスログ費
用関数は 1の近傍での展開式なので,計測する際原データーを平均値が 1と
なるように基準化した。
費用関数は,
l
nc
'
,/PF
=目。+叫ん QN+L
:a;
lη P
i
N
/
PF
N
唱
+すL
:
L
:μ
れ
Y
九
i
j
lPi
N
伊
/
P
P
η
刊
す
+川ぷ(んω
凶ω
Q
仏山
N
))
(3-2)
YQQ
Q
コストシエア一式は,
(3-3)
SiN=白 i+O
'Qιl
nQN+L
:Y
i
jl
ηP
J
N
/
PF
i
"
N+e
各撹乱項の分布は次のように仮定した。
E
(ε,,)=0, E
(
ι
ε,,)=0
E(εN
,ε川 =Qc
,
; E
(
e
N,ei
N
'
)=0
E(εi
N,ejN)=Q
,
山
E(e川 )=0
但し , i
,j=L
,K,A,S,N=l,2,・・…・ m(m
はサンプル数)
, Nキ N
なお (3- 2) 式のダミー変数は以下のように設定した。
Dl 地域ダミー
十 勝 =0,網走 =1
D2 年次ダミー
5
4年 =0,5
5年 =1
トランスログ費用関数は双対関係にある生産関数に対し事前的な制約がな
いので,関数形に対し統計的検定を行うことができる。
①
ホモセティシティ (
h
o
m
o
t
h
e
t
i
c
i
t
y, 相 似 拡 大 性 生 産 関 数 の 等 量 線
が相似拡大性をもつか,すなわち拡張経路が原点からの半直線であるか否か
のテストである。([
1
0
), [
15
) を参照のこと。)
i=L,
ホモセティックであるならば,パラメーターに関して δ0;=0, (
K,A,S) を満たさなければならない。
②
1次同次性:規模に関して収穫一定であるならば,パラメーターに関
して ao=l, 0
'0;=0 (
j=L,K,A. S) を満たされなければならない。
計測されたパラメーターと原データーから規模の経済性,各要素聞のアレ
ンの代替の偏弾力性,スケールバイアスを求めることができる。
i)規模の経済(SCE)
dlnC
.~
SCE=l一石fy=1ー (
α
Q十 戸 山Pi+川
84
Y)
n
(3-4)
LAC
LMC
LMC
LAC
Q
規模に関して収穫逓減
第 3図 平均費用曲線と規模の経済
第 3図に,長期の平均費用曲線を示した。 SCEとの関係を述べると,
LACが右下り,水平,右上りのとき, SCE>0, =0, <0で,規模に
関して収穫逓増,不変,逓減である。
i
i)アレンの代替の偏弾カ性 (σi)
生産量一定のもとで i要素価格の変化に対する j投入量の変化を表す。 10) i
j
<0ならば補完関係があ
要素, J要素の聞に, σij>0ならば代替関係, σi
ることを意味する。本論ではクロスセクション分析なので,要素の代替の可
能性を表すものとして解釈を行う。
すなわち
σ
u
=
j
;
τ (Yij+S/-SJ
σ=一
上j
;-Yu+1
ι
SS
(
3
5
)
i
i
i
) スケールバイアス (N
j)
i,Ni
規模の変化に対する要素のコストシェアー,又はコストシェアーの比率の
変化である。投入要素の偏向性を生産規模聞で評価したものである。類似の
概念に時間で評価した技術進歩の偏向性がある。
1投入要素で評価する場合は,
1
0
) アレンの代替の偏弾力性は生産要素の価格弾力性をコストシェアーで除したものであ
s
h
a
d
o
we
l
a
s
t
i
c
i
t
y
る
。 2財の価格比率に対する 2財の投入量比率の変化率は SES(
13
) を参照のこと。
o
fs
u
b
s
t
i
t
u
t
i
o
n
)でみることができる。詳しくは Mundlak (
8
5
Ni=-δl
n
S
ι =主
且L
alnQ S,
品
しかし,技術を分析する場合は要素の結合関係の偏りを評価しなければな
らないので,コストシェアーの比率の変化で評価する。すなわち,
N'I=~与到S, =δ lnS,
-alnSL=宣
旦L_E
.
昼L
tJ
alnQ
alnQ
(3-6)
S, S
j
また,均衡点ではコストシェアーをそのまま投入量でおきかえて解釈する
ことも可能である。 11) 第 4図に,拡張経路とスケールバイアスの概念を示
す
。
Xj
O
第 4図
スケールバイアスと拡張経路
注) Q
1→ Q
o
: i要素使用ー J要素節約的
Q
2→ Q
o
:i要素一 J要素中立的
Q
3→ Q
o
: 要素節約 J要素使用的
)
-
X,
F
,
S,
=寸 よ よ り
δム& δ I
n
X,
,d
lη p, δI
nC
一 一 一 一 一 一 一
n
Q
δI
δI
n
Q 'dlnQ
dlnQ
今, d
l
n
,
?=O だから,
dlnS
,
一主主主L _ dlnC
dlnQ dlη Q δ I
n
Q
[
l
l
J
様に,
d主主 互
主
主
土 = dlnX,
_dlnXj=主主到L
θI
n
Q -d
l
n
Q
- dlnQ dlnQ
dlnQ
dlnQ
旦主副主
8
6
X
i
Ni文は Ni
/
)
>
'<0, =0, >0のとき, (
j要 素 に 対 し て 要 素 節 約 的 ,
中立的,使用的な偏りをもつことになる。
4
.計 測 結 果
計測結果は第 2表に示す通りである。以下,計測結果の妥当性について検
第 2表 計 測 結 果
ノfラ メ ー タ ー
a
o
αQ
αL
<
<
,
<
<
K
αA
α』
も
?Q
Y
L
L
持F
YKK
YAA
Yss
YLF
YLK
Y
u
YLS
Y
"
YFA
持s
抗日
YKS
YAS
o
'
O
ι
ぬF
o
'
OK
o
'
OA
80S
d,
d,
シェア一式
頁2
推定
i
直
1
5
.
5
0
0
.
8
1
6
0
0
.
1
9
0
8
0
.
2
1
2
3
0
.
1
1
2
0
0
.
4
3
2
1
0
.
0
5
2
7
2
-0
.
0
6
4
3
8
0
.
1
3
0
0
-0
.
0
0
4
3
9
9
0
.
0
6
0
7
0
.
2
0
4
7
0
.
0
3
5
5
2
0
.
0
2
7
1
3
-0
.
0
1
6
5
6
-0
.
1
1
7
5
-0
.
0
2
3
0
0
-0
.
0
0
1
2
1
7
-0
.
0
2
9
0
4
0
.
0
0
7
4
7
7
-0
.
0
4
0
5
3
-0
.
0
0
2
4
1
1
-0
.
0
1
7
5
8
-0
.
0
7
2
6
5
0
.
0
3
8
5
5
-0
.
0
1
8
5
4
0
.
0
3
9
9
6
-0
.
0
0
5
8
6
0
-0
.
0
4
1
0
0
0
.
0
2
6
5
3
L
K
A
S
t l
i
1
i
.
5
8
3
.
3
1
7
.
9
3
6
.
0
4
4
.
4
7
9
.
7
3
6
.
2
-1.3
7
7
.
1
0
1
0
.
8
2
8
.
7
9
.
9
6
2
.
2
1
-13.1
-4.00
-9.42
-0.84
-5.25
-7.56
-3.75
3
.
8
9
-2.07
-1.8
2
1
.3
2
0
.
6
4
0
.
6
6
0
.
9
1
0
.
6
4
註1)計測式は本文中 (
3-2)および (
3
-3)式である o
2
) t1直5%有意水準1.9
5
87
討しよう。
i
) 自由度修正済み決定係数
土地のシェア一式については, 0
.
9
1であるが,他の要素のシェア一式は
0
.
6
4程度である。地代については機会費用を考慮したため,シァア一式のあ
てはまりが良好となったと考えられる。他の要素については機会費用を考慮
することは生産費調査からは不可能なので今回はそのまま計測している。
i
i)推定パラメータの d
直
5%有意水準で‘ rQQ
rKS およびダミー変数のパラメータについてはゼロ
と有意差が認められない,地域間,年次間では技術又は雇用形成に統計的な
有意差がないと判断できる。また以後の弾力性等の計算応おいて,パラメー
タ rQQ
rKS をゼロとみなした。
i
i
i
) ホモセティシティ
1次同次の制約条件
80i (
i=L,K,A, S) のパラメーターの t値により推定値がゼロと有意
。
差がないことがわかる。 α =0.816であり 1との有意差検定をした結果 1%
の有意水準で、棄却された。さらに,カイ 2乗検定を用いてホモセティシティ,
l次同次の検定を行ったが,それぞれ 1%の有意水準で棄却された O 従って
計測された費用関数と双対関係による生産関数はホモセティックでも 1次同
次でもないことが統計的に確認され,スケールバイアスの発生,規模の経済
の存在を統計的に確認する結果を得た。
i
v
) 生産構造が w
e
l
l
b
ehavedであるか否かについて検討する。
① 単調性の条件(monotonicitycondition)
要素価格について増加関数であること。このことはコストシェアーの推定
値が正の値をとれば満たされる。計測の結果,全サンプルについてこの条件
が満たされている。
②
凸性の条件(concavitycondition)
費用最小化の二階の条件が満たされること。このことは費用関数のヘッセ
行列式が非正値定符号をとれば満たされる。計測の結果
3ヶのサンプjレ
を
除いて満たされていた。このサンフルは後の弾力性等の計算からは除外した。
以上から決定係数について若干改善の余地はあるものの,総合的に判断す
ると計測された費用関数は分析対象の費用構造をよく説明していると判断し
た
。
8
8
V
I
.分
析
第 5図はサンプル平均の価格を用いて (3- 2) 式より描いた平均費用曲
線である。第 1図と同様に規模に関して収穫逓増であることが,
トランスロ
グ費用関数の推計結果からも確認できる。
(円)
5
5
0
0
0
5
0
0
0
0
.
-
4
5
0
0
0
4
0
0
0
0
平均費用
.
.
・
3
5
0
0
0
9
3
0
0
0
0
.
・
、
・孝弘@
2
5
0
0
0
• 0
.[email protected]
"
'
.
'
e.
.
.
,
J
I
・
,
喝
O
a
.
2
0
0
0
0
f
l
"
0
:
・
1
5
日0
0
1
0
0
0
0
0
事
5
0 7
0
0
5
0 5
0
0 5
5
0 6
0
0 6
5
0 2
0
0 2
5
0 3
0
0 3
5
0 4
0
0 4
5
0 1
0
0 1
(t)
規 模
第 5図 平 均 費 用 曲 線
注)価格はサンプルの平均値を用いた。
第 3表,第 4表はサンプル平均のコストシェアを用いて(3- 5)式, (3
- 6) 式よりアレンの代替の偏弾力性,スケールバイアスを求めたものであ
る。また第 6図,第 7図は規模別に要素の結合関係をみるために,規模別平
第
i
一唱
'A
nuω
0.85
川日町田
唱
AAUAaT
-3.09
ハU A U A U
0.27
U
-3.74
骨
田
一
機械
1
.63
種一一一
』巴料
ヴ , 戸 bnJU
耐百一丹d
AMm-qaβ01A ワ“
-0.77
代替の弾力性
土ハ
一一一
一
働料械地特田
労肥機土種
労働
s
衰
註 ) 計 算 は 本 文 中 (3ー 5)式による。コストシェアーはサンプ
ルの平均値を用いた。
89
~4 表スケールハイアス
労働
- 0.266
労肥
肥料
機械
土地
O
.1
8
3 - O
.1
6
5
労機
労上
0.0944
種苗
- 0
.
1
1
5
労種
- 0
.
4
5
0 - O
.1
0
1 - O
.3
6
1 - O
.1
5
1
肥機
0
.
3
4
9
機上
肥上
0.0889
機種
肥種
0.298
- O
.2
6
0 - O
.0504
土穏
0
.
2
0
9
註)計算は本文中 (3-6) 式による。コストシェア
ーはサンプルの平均値を用いた。
均のコストシェアーを用いてアレンの代替の偏弾力性,スケールバイアスを
示したものである。
第 4表から労働とその他の要素の結合関係の偏りはすべて労働節約的であ
ることがわかる。さらに第 7図から規模が大きくなると偏りの程度が強まる
ことがわかる。従っててん菜の生産技術はすべて労働を節約することにより,
規模の経済が存在していることが実証された。
ここで機械化技術は機械とその他の要素の結合で,増収的技術は肥料,種
苗とその他の要素の結合でとらえられる。偏りはすべて労働節約的であり,
規模の経済の源泉となっているので,機械化技術については労働と機械,土
地の関係,増収的技術については労働と肥料,種苗の関係を中心にして,考
察を進める。
i
) 労働と機械,土地の関係
第 4表,表 7図から労働節約一機械使用的な偏りをもち,また第 6図から
労働と機械の代替の偏弾力性は規模が大きくなるとより非弾力的になること
がわかる。これらは,規模が大きくなる程労働と機械が代替されていき,そ
のために労働節約的な偏りが発生していることを意味する。
第 8図
9図はこの偏り,非弾力性の要因を明らかにするために規模別に
1
0a当り作業別投下労働時間と 1
0a当り動力運転時間を図示したものであ
る
。
この図により規模が大きくなると動力運転時間よりも総労働投下時間の減
少率の方が大きいこと,また労働時聞が減少しているのは育苗,追肥を除い
90
(a)
1
.7
0
1
.4
5
1
.2
0
0
.
9
5
-肥料機械
0
.
7
0
0
.
4
5
代替の偏強力性
0
.
2
0
-0.05
ミ ミ モι
機械
-0.30
-0.55
-0.80
-1.0
5
一1.3
0
-1.3
5
¥ ¥ 労 働 一 種 苗
-1.0
0
350-
(
200-350
)
t
-200
2nu
)
(
1
.7
0
5
1
.4
e一 一 ー - - - - - 、 労 働 ー 肥 料
肥料一種苗
1
.2
0
0
.
9
5
一・機械一種苗
0
.
7
0
肥料一土地
代替の偏弾力性
0
.
4
5
0
.
2
0
-0.05
-0.30
-0.55
へ ¥ ¥ ¥ ¥ 労 働 廿
-0.80
-1.0
5
-1.3
0
-1.3
5
-1.0
0
200-350
350-
)
t
(
一200
規模
第 6図規模別のアレンの代替の偏弾力性
注)計算は本文中 (3- 5) による,コストシェアは規模別の平均値を用いた。
9
1
0
.
5
0
.
4
0
.
3
. •
-肥械
肥種
0
.
2
土種
一
一
ー
一
一
ー
ト
ー
一
一
一
喝
肥
土
日一一一一一三三万一
ι
-0.3
-0.4
機土
九
・
一
帯
十
:
4
」 ー ー も 一 一 「
-0.5
-200
200-350
規模
3
5
0ー
(t)
第 7図規模別スケールバイアス
注)計算は本文中 (3- 6) 式による。コストシェアは
規模別の平均値を用いて求めた。
た圃場に関係する労働時間であることがわかる。この傾向から Iつには機械
自体,機種のちがいによる作業能率の向上とそれによる作業時間の短縮,ま
た規模が大きくなるほど手作業の割合が少なくなること等が読みとれる。
動力運転時間の短縮は労働時間をも短縮させるので,労働と機械の代替関
係の減少傾向は,むしろ手作業を機械に代替させていくことにより規模が大
きくなると代替の可能な作業の割合が少なくなっていくことを説明している
と考えられる。 12)そのことにより相対的に労働が節約された。
さらに作業能率のすぐれた機械は広い作付面積を処理できる。それが第 4
表,第 7図にある労働約約的一土地使用的な偏りを発生させている要因であ
1
2
) 草刈 (
1
2
) による,労働と機械の代替可能性が個別作業聞で異なるという代替の序列
性の存在を示唆しているものと考えられる。
9
2
(
O
.
l
h
)
1
0
0
9
0
8
0
7
0
6
0
5
0
4
0
¥¥収穫
2
0
労
働
時
問
1
0
9
基肥
防除
耕起,整地
4
2
------ヘ¥¥¥¥、、
200-350
350-
規模
第 8図 1
0a当り作業別投下労働時間
(資料)第 1表に同じ
9
3
)
t
(
-200
(h)
1
0
0
90
80
7
0
6
0
5
0
4
0
3
0
ぺ¥¥¥一時間
2
0
nvnuno
-
労働時間
一-------動力運転時間
-200
200-350
3
5
0ー
(t)
第 9図 10a当り総労働投下時間及び動力運転時間
(資料)第 1表に同じ
9
4
る
。 13)すなわち機械化技術は単に手作業を機械におこかえ労働を節約するだ
けでなく,より大きな規模での生産を可能にする。
従っててん菜の規模の経済をひきおこす技術とは機械化技術である。家族
労働の稀少性からの制約,雇用労働の費用増大に対応しながら手作業労働を
機械に代替させ, しかも作業能率の高い機械を用いることにより大規模な生
産を可能とし,規模の経済を発現させたのである。
i
i
) 労働と肥料の関係
第 4表,第 7図から労働と肥料は労働節約的一肥料使用的な偏りがあるこ
とがわかる。
i)で明らかにされたように労働と機械の関係に合理的解釈が与えられた。
そこで労働は機械により節約されたとするならば,労働と肥料の偏りは労働
節約的一機械使用的な偏りと機械節約的一肥料使用的な偏りとに分解して考
察することができる。 14)
この偏りの解釈は土地と肥料とに偏りがないので簡単にすることができ
る。すなわち労働と機械の代替により稀少な労働でより広い土地を処理する
ことが可能である。しかし,収量をも増加させなければ投資の回収は不可能
であるので,少なくとも反収を維持して総収量を増加させなければならない。
そこに肥料投入の役割があり,広い作付面積に肥料を増投して反収を維持し
たのである。そのために労働節約一肥料使用的な偏りが発生した。
従って肥料投入は労働を節約する目的よりも,機械化技術によるてん菜の
大規模生産の有利性を維持するための技術であると考えられる。
1
3
) 代替の偏弾力性では労働と土地は補完関係を示す。しかしこれは規模を一定とした場
合での関係である。規模が大きくなると相対的に労働は節約されていくので,労働と
土地の偏弾力性を対偶として労働と土地に補完関係がなければ規模は一定ではないと
解釈してよいと思われる。
1
4
) (3- 6)式より
,
. _d
l
n
S
J
}
S
A_ dlnSJ
. dlnS
A
…
一
一
U d
lπ Q δ
んQ 一
dlnQ
川
一/
δI
n
S
L
¥ dlnQ
dlnSK¥,(
δ
l
π SK
dlnQ/'¥dlπQ
dln
副主ι+豆d必
土
δInQ , dlnQ
= NL
K+ N
K
A
9う
dlnS
A¥
dlnQ/
i
i
i
) 労働と種苗の関係
i
i
) と同様に機械を介在させることにより,第 4表,第 7図にある労働節
約一種苗使用的な偏りを,労働節約一機械使用的,機械一種苗中立的な偏り
に分解して考察する。また第 3表,第 6図に示す様に,労働と種苗が補完関
係にあり規模が大きくなる程この関係が強くなっている。さらに同じ増収的
技術としての肥料と土地の関係は中立的な関係にあったが,種苗においては
種苗節約的ー土地使用的な偏りが発生している。
すなわち移植栽培は機械の使用により労働を節約させ,それとともに土地
に対しでも肥料とは異なり,種苗投入を節約できる技術であると考えられる。
以下この点について検討を加えよう。
第 8図によれば規模が大きくなる程移植労働時聞が低下し,また大規模層
0図は 1h
a
で育苗労働時聞が急激に低下していることがよみとれる。また第 1
当りの種苗投入量を示したものであり,規模が大きくなる程 1h
a当りの種苗
投入量は減少していることがわかる。
育苗段階ではペーパーポットに対する播種作業から始まり最終的には規定
量 15)の苗が作成されるので,規模が大きくなる程無駄な種苗が少なく種苗
数を節約し,かつ労働時間も節約しているのである。これには土詰機,播種
プラント等の機械の使用と,無間引育苗,疎植方式等の栽培方式による役割
が大きいと考えられる。
以上から労働を機械におきかえることにより,労働を節約しさらに種苗投
入をも節約することができる事がわかる。すなわち移植栽培による種苗投入
は機械化技術と併用することにより労働を節約し,さらに種苗投入が効率的
な行なわれ種苗自身をも節約したのである。
v
.結
論
本論で明らかにするべき第 1の課題はてん菜生産の規模の経済の存在の実
証と,その源泉となる要因を明らかにすることである。この点についてはト
ランスログ費用関数の計測結果から実証され,また生産費調査データ一,労
働節約的なスケールバイアスから労働費の節約によるものであることが明ら
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(資料)第 1表に同じ
かとなった。それは,労働に制約があっても規模の経済を発現させる技術を
採用していることが要因である。
第 2の課題はてん菜生産技術のうち機械化技術と増収的技術とが規模の経
済の源泉にはたす役割を明らかにすることである。 トランスログ費用関数の
計測結果からアレンの代替の偏弾力性,スケールバイアスを計算した。特に
どの要素の組み合わせも労働を節約する方向に偏りがあることが明らかに
なった。その中で機械化技術は手作業を機械におきかえ,より広い作付面積
を処理でき大規模生産を可能にした。そしてこれが規模の経済を発現させた
技術である。また,増収的技術のうち肥料投入は機械化技術による大規模生
産の有利性を維持する目的があり,一方の種苗投入においては,機械化技術
の採用により,労働のみならず種苗の投入も節約したのであった。
9
7
すなわち家族労働の稀少性は全体の労働投入に制約を与える。しかし,機
械化技術を用いることによりてん菜の大規模生産を可能にし,規模の経済を
発現させたのである。それにより,種苗投入は節約され,肥料投入は増投を
招き,結局これら増収的技術はてん菜の規模の経済の存在を支える役割を果
たすものであった。
〔謝辞〕
本論をまとめるにあたり,天間征教授,主井時久教授はじめ農業開発論シ
ンポジウム,農政学シンポジウムの諸兄より貴重な助言をいただいた。記し
て謝意を表する。計算は北大大型計算機センターで行った。
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てんさい生産における規模の経済性と技術の役割