地球の破綻
- 人類は何で苦境に陥るか? -
エネルギーは? 資源は? 食糧は? 気候変動は?
解決方法はあるのか?
安井 至
国際連合大学元副学長・東京大学名誉教授
(独)製品評価技術基盤機構(NITE)
http://www.yasuienv.net/
1997年6月にスタート
現在まで813万アクセス
1
「地球の破綻」を書きました
気候変動などの八人衆の専門領域
の未来像を議論し、執筆は個人的に遂行
 未来の地球が破綻する形はどのようなものか
 「21世紀版成長の限界検討会」の八人衆との共著


江守正多
川島博之
薗田綾子
原田幸明
馬場未希
藤野純一
松田裕之
森口祐一
国立環境研 気候変動リスク評価研究員
東京大学大学院農学生命科学研究科
(株)クレアン代表取締役
物質材料研究機構 元元素戦略グループ長
日経エコロジー副編集長
国立環境研 温暖化対策評価研究室
横浜国立大学 環境情報研究院 教授
東京大学大学院 工学系研究科 教授
2
類書が出ている
「2052」 ヨルゲン・ランダース+仲間達、
(ノルウェー:「成長の限界」の著者の一人)

環境関係の事象を中心に未来を予測している

「2050年の世界」 英『エコノミスト』誌編集部による


未来人口について、全く異なる見解




様々な観点から経済などの未来を予測しているが、環境関
係の記述は極めて少ない。唯一気候変動。
国連の低位予測以下 「2052」
国連の中位予測準拠 「2050年の世界」
国連の中位よりやや下目 「地球の破綻」
解決策について



明確な解答が無く、諦めろ by 「2052」
『公共心』で解決という by 「2050年の世界」
『互恵的利他性』で解決できる by 「地球の破綻」
3
思考停止をしている日本を完全停止させたい?
 エコノミスト誌が報じた温暖化の「停滞」
2000年以降、地球の平均気温が余り上昇していないのは事実

竹内 純子国際環境経済研究所主席研究員

http://www.gepr.org/ja/contents/20130415-02/



「東京大地震研究所が、地中に埋まっていたコンク
リート構造物を地震の際にできた石と誤認していた
として、これを「活断層を確認した」としていた見解を
撤回するという出来事があったが、事程左様に科学
とは万能ではないのである」。
単なる思い込みによるミスと気候変動予測の不確
実性を同じレベルで議論して良いのだろうか。
典型的「環境経済背反型認知バイアス」ではないか
4
降水量=淡水の利用可能量の変化
減少
増加
未来予測は正確なのか
5
地球の気候は「太陽が温める赤道」が決める
太陽の熱で温められる
上昇
気流
6
中緯度の気候はどう決まる 「大気の循環」
通常位置
気温上昇
7
中緯度の気候はどう決まる 「大気の循環」
北へ移動
気温上昇
偏西風が
蛇行する
=
これが
中緯度に
おける
気候変動
の一つ
8
2010年の夏 モスクワの猛暑=6月26日に32.4℃
2012年のNY ハリケーン・サンディ
 偏西風の蛇行
 ブロッキング高気圧という現象
Hurricane Sandy
高気圧
被害総額6兆円
地下鉄1週間後にも2割不通、停電復活に1ヶ月
9
陸地は海よりも暑くなる。回帰線の間が暑くなる。
コンピュータによる計算も、
直感的に理解できることを
減少
増加
定量化しているに過ぎない
10
気象庁の発表による日本の異常気象
http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/longfcst/extreme_japan/






2010年3~4月の日照不足と気温変動
2010年夏の極端な高温
2012年前年暮から2月までの低温と大雪
2012年冬の天候と大気の流れについて
2012年8月下旬~9月中旬の北・東日本の高温に
ついて
個人版(気象庁未発表)


2013年東京の「桜の開花の異常」について
2013年夏の山形や山口での「経験したことのない豪雨」
11
ある国の破綻の物語
サンゴ礁?
12
その国はナウル 人口 9300人 面積 港区ぐらい
13
ナウル島のグアノの例

グアノ (guano) とは、島の珊瑚礁に、海鳥
の死骸・糞・エサの魚・卵の殻などが長期
間(数千年~数万年)堆積して化石化した
ものであり、肥料の資源として利用される。
14
ナウルのグアノ










現時点はカルスト地形
年間200万トンを輸出
1989年に採掘量が減少
総計1億トンを採掘
高い国民所得で無税
電気代無料
医療・教育費は無料
労働は中国人などで、すべて外食
経済は貿易依存度100%だった
21世紀になって、ほぼ枯渇(2000万トン残という説も)
現在、失業率90% もともと労働の意志なし
15
2012年米国の干魃の状況
16
カンザス州東部の農地
17
カンザス州西部の農地
18
オ
ガ
ラ
ラ
帯
水
層
の
化
石
水
+
+
+
+
19
こんな調子では、
地球の破綻は近いのかもしれない
20
どれくらい排出量を減らせばよいか?
今世紀の人類の行動が、未来を決める
陸氷の融解に
よる海面上昇
応答の大きさ
海水熱膨張に
よる海面上昇
気温変化
450ppm維持
CO2濃度変化
CO2排出量
2000年
2050年?
江守正多氏提供
1000年後
(2001年IPCC 第3次評価報告書より)
21
2012年までの国際共同作業
22
21世紀変動予測革新プログラム報告書
21世紀変動予測革新プログラム報告書
23
許容される二酸化炭素の排出量
≒3℃シナリオ2100年
2℃以下シナリオ@2100年
ネガティブエミッション
革新プロジェクト報告書より(2012)
可能な
最善の
目標?
24
≒3℃上昇シナリオ
@2100年
21世紀気候変動予測革新プログラム報告書
可能な
最善の
目標?
25
湿潤熱帯地域と高緯度地域での水利用可能性の増加
中緯度地域と半乾燥低緯度地域での水利用可能性の減少及び干ばつの増加
水
4-17億人
11億~32億人
両生類の絶滅
約20~30%の種で絶滅
地球規模での重大な
の増加
リスクの増加
(40%以上)絶滅
サンゴ白化
ほとんどのサンゴ
広範囲に及ぶサンゴの死滅
の増加
が白化
生態系が影響を受け,陸域生物圏の正味炭素放出源化が進行
種の分布範囲の変化と
~15%
~40%
森林火災リスクの増加
生
態
系
食
糧
10-20億人
水ストレス増加に直面
する追加的人口
穀
物
生
産
低緯度地域 いくつかの穀物の
減少
全ての穀物の減少
いくつかの穀物の
増加
いくつかの地域での
減少
中高緯度地域
洪水と暴風雨による損害の増加
沿
岸
域
毎年に沿岸洪水を
経験する追加的人
口
0~300万人
世界の沿岸湿
地約30%消失
200万~1500万人
栄養失調,下痢,呼吸器疾患,感染症による社会的負荷の増加
健康
熱波,洪水,干ばつによる罹(り)病率と死亡率の増加
いくつかの感染症媒介生物の分布変化
0
1
IPCC(2007) 江守正多氏提供
医療サービスへの重大な負荷
2
3
4
5℃
26
1980-1999年に対する世界年平均気温の変化(℃)
江守正多氏提供
IPCC-AR4での2100年
までの気温上昇予測幅(℃)
大西洋子午面循環
ENSOの強さ
サハラ/サヘル及び西アフリカモンスーン
アマゾン熱帯雨林
西南極氷床
北方林
グリーンランド氷床
北極の夏季海氷
1990年水準からの全球気温上昇(℃)
地球システムの大規模かつ非連続的な
変化の可能性(tipping elements)
Lenton and Schellnhuber (2007)
27
生物多様性の喪失
気候変化 ⇒ 植物分布変化
⇒ 破滅的な種の絶滅



生物種の寿命は平均100万年?
人類も、まだ最低80万年程度は続く
生物種の絶滅は、歴史的には数回以上




環境の急変が原因で瞬間速度は速い
現時点、徐々に環境が変化している割には、
絶滅速度が異常に速い
不可逆性の最たるもの
復活しない事象を起こすのは賢くない
28
生物多様性の劣化
地上生息種
海洋生息種
淡水生息種
全脊椎動物
29
パームヤシ生産面積
適地ではない湿性熱帯林が開発されている
=食用油の需要が急増しているから
1.4E+07
ROW
Viet Nam
USA
Thailand
Philippines
Malaysia
Japan
Indonesia
India
EU(15)
China
Brazil
Australia
Africa S.Sahara
1.2E+07
area [ha]
1.0E+07
8.0E+06
6.0E+06
4.0E+06
2.0E+06
0.0E+00
1,961
1,966
1,971
1,976
1,981
1,986
1,991
1,996
2,001
year
30
生物絶滅の速度
太古
過去 未来
=1000年で1000種の
うち絶滅する数
31
資源は枯渇するか
2050年ごろまでの危機

鉱物資源



金属資源 原田幸明先生が後ほど
農業用元素資源
エネルギー資源


石油
その他
32
鉱石の品位低下
オーストラリア(%銅)
オーストラリア(%ニッケル)
カナダ(%銅)
カナダ(%ニッケル)
アメリカ(%銅)
ニッケルおよび銅の鉱石品位(1885-2010年)
Cu
Ni
森口祐一氏提供
33
原油価格推移
過度の円安も影響
?
$100
34
石油系の燃料はまだまだ十分にある
35
人口と食糧
人口のピークがいつ来るか


食糧が不足し、餓死によって人口が減少
するような状況は来るのか
人口爆発の状況は?

すでに起きているが、今後、どのような状況に
なるのか
36
World Population Prospects, the 2010 Revision
Figure 1:国連による世界人口の推計
Estimated and projected world population
according to
2100年まで
different variants, 1950-2100 (billions)
「地球の破綻」の予測は赤線
高位予測
「2050年の世界」の予測
中位予測
これ
低位予測 =「2052」の予測
37
World Population Prospects, the 2010 Revision
主要地域別の人口推計
中位予測
Figure 2: Estimated and projected
population by major area, medium
variant , 1950-2100 (billions)
アジア
アフリカ
こ
こ
を
水
平
に
、
が
ポ
イ
ン
ト
北米
38
出生率の推移が最重要な予測
アジア
アフリカ
ラテン
アメリカ
オセアニア
北米
ヨーロッパ
39
20世紀の人口爆発の原因は穀物単収(単位面積当たり
の収穫量)の増加にある
フランスの小麦 出展 Michel & FAO
8
4
単収
(t/ha)
6
2
0
1800
1850
1900
1950
川島博之氏提供
2000
2050
空中窒素固定=窒素肥料生産量
20世紀の人口爆発の原因は穀物単収(単位面積当たり
Nitrogen Fixed Metric Tons
140,000,000
の収穫量)の増加にある
フランスの小麦 出展 Michel & FAO
120,000,000
8
100,000,000
単収
(t/ha)
80,000,000
6
60,000,000
4
40,000,000
2
20,000,000
0
1800
0
1940
1950
1850
1960
1970
1900
1980
1990
1950
2000
川島博之氏提供
2010
2000
2020
2050
大豆の生産量増加が世界の人々の食生活(動物性蛋白
質摂取量の増加)を可能にした。
10
1961年に対する比
8
生産量
面積
6
4
2
0
1960
1970
1980
1990
2000
川島博之氏提供
Catch
A「マグロはそろそろ絶滅危惧種になるぞ!
ウナギはそろそろ難しくなった」
B「魚が消えるって? サンマは余っている!」
A「しかし、中国・韓国が根こそぎ取る!」
B「。。。。。。。。。。」
松田裕之氏提供
43
Source: Fisheries Research Agency, Japan
破綻原因として何が深刻か 今世紀
5:極めて重大、4:重大、3:かなり重大、2:当面OK、
1:なんとかなる







皆様の直観を
点数化してみてください
気候変動
生物多様性の喪失
金属資源の枯渇
化石燃料の枯渇
人口爆発と食糧
環境汚染
対策費用の不足
44
地球の破綻の姿

気候変動・異常気象はかなり危機的状況




特に、当面は、淡水関係が深刻
その後、海面上昇は深刻だが、かなり先
当面、ゼロメートル地帯の高潮対策は重要
生物多様性喪失も深刻



ただし、その被害がどのような影響をもたらす
か不明 =最悪シナリオはどんなものか
気候変動も状況を悪化させるだろう
慎重に対応しておいた方が良さそう
45

資源枯渇




化石燃料は枯渇より、使いすぎ=温室効果
ガスの放出が問題
人口問題は多面的
食糧問題



金属は回収・リサイクルを徹底的に
穀物が不足するとは思いにくい
人口問題が片付けば、食糧問題も片付く
国際紛争


気候変動による居住不能地は増える
気候変動難民が発生する
46
World Economic Forum ダボス会議
Global Risks 2013 Eighth Edition





経済、地政学、環境、社会、技術の5つの分野に
おける大きなリスクをそれぞれ10個選択し、その
ImpactとLikelihoodの動向を表示
リスクは単独で存在するのではない。リスクとリス
クの相互効果・相乗効果も明らかにする
「認知バイアス(Cognitive Biases)が大きな問題
である」、と指摘されている
世の中すべてが、「リスク」、「レジリエンス」などで
ものごとを判断する方向に、確実になっている
それだけ、「不確実な」社会になっている
47
気候変動への適応の失敗
復活できない
環境汚染
異常気象
の日常化
CO2排出
の増加
土地と水路
の管理失敗
本当は
ここ?
抗生剤耐性
バクテリア
Environmental
World Economy Forum
のリスク50
48
戦略:地球環境リスクを直視し対策を取る


リスクを特定し、理解し、直視し、対策をとる
ことは、日本人には難しい。
理由:




ゼロリスクな社会が存在と信じている
チャレンジし、リスクを取るという考え方が一般的
でない
未来を見据えた対策をしない(例:福島第一原発
の地下水管理、巨額な国家負債の解決)
しかし、世界全体として、リスクを中心に据え
た未来像を描く方向になりつつある
49
解決のキーワード
持続可能性の定義







先駆とされるのはブルントラント委員会
1987年「Our Common Future」
「Sustainable Developmentとは、将来世代のニー
ズに応える能力を損ねることなく現在世代のニーズ
を満たす発展」
“Development”が含まれていることは、途上国の
主張だと言われる=経済的発展。
しかし、先進国の言い訳だという説もある。
地球の資源などに限界があることは事実
しかし、人間の能力の開発には限界はない
Human Development
50
地球の資源的限界と基本戦略

物質資源



化石燃料資源 →再生可能エネルギーへ
金属・鉱物資源 →再生可能エネでリサイクル
再生可能資源



すべて有限 「再生をする」
生物資源
淡水資源
再生速度の範囲内
再生速度の範囲内
環境資源(生態系)

各種環境維持機能 かなり脆弱と認識すべし
51
地球のエネルギーバランス
WWFの世界100%自然エネルギーシナリオ
http://www.wwf.or.jp/activities/lib/pdf_climate/green-energy/WWF_EnergyVisionReport_sm.pdf
疑問点
1.Bioの技術的進化は期待できるか
2.自動車は何で走るのか
3.不安定な電力はどうするか
53
過去のイノベーションを延長すれば
第5番目は究極のイノベ-ション






人類史的な観点からのエネルギー
第1=「火を使い始めたこと」
第2=「化石燃料を使い始めたこと」
第3=「電気を使い始めたこと」
第4=「化石燃料以外のエネルギー」
=原発を使い始めたこと
=太陽電池、風力の本格実用化
50万年前
1800年
1880年
1943年
未完成
第5=「定常状態を実現していること」 2100年
過去を解析し未来を担保する
54
人類の進化の足跡 イノベーション


二足歩行 520万年前
第1 石器の使用 240万年前



肉食によって、栄養を獲得 → 脳の拡大
第2 火の使用 150万年前、40万年前?
第3 言語の獲得 20~15万年前
 音声による意志の伝達(チンパンジーには不可)
 抽象的な概念の伝達が可能に
「過去を語り、未来に備えた計画を立てることであ
る。さらに、子どもの教育を言葉だけで行う能力が
あることもホモ・サピエンスの特徴であろう」。
by ジェーン・グドール
55
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地球の破綻 人類は何で苦境に陥るか?