所有と経営の分離と
国有企業のコーポレート・ガバナン
ス
理論編
1 所有・経営・支配関係の変化
2 J式・A式・C式のコーポレートガバナンス
の注目点の差異
3 財産権理論(張視点)
4 段階的改革の見方
5 所有制と経営者
6 所有構造の変化は業績への影響の経路
2、国有企業の改革の現段階
• 国有企業改革の目標:80年代と違って、企
業の業績をどのように改善するかという問
題ではなく、中国にとって最適な企業制度
とはどのようなものかを模索するプロセス
である。
(1) 90年代の国有企業改革。
(2) 中小国有企業の民営化。
(3) 大企業のコーポレート・ガバナンス
(1)90年代の国有企業改革
―民営化とガバナンス制度整備―
• 80年代の改革は、資本の国家所有制度を変更し
ないことを基本的前提として、進められてきた。
• 93年の14期三中全会の決議は、こうした改革限
界を認め、資本の国家所有制度のあり方そのも
のを市場経済に適合したものに改めていく方針
を打ち出したのである。
具体的には:「大をつかみ、小を放つ」(大企業を
重点的に支援し、中小企業を自由化する)、
「近代的企業制度の整備」という政策を打出され
た。
これらの方針と政策は、実質的に以下の二つの方
向に従って、改革を進めることを意味する。
a. 中小企業の民営化:
中小国有企業を所轄する地方政府が民営化を
含む多様な改革をすすめることを容認する。
b. 大企業の混合所有化とコーポレート・ガバナンス
制度の整備:
大企業は株式会社への転換などを通じて混合
所有化を進め、同時に出資者が経営を監督する
コーポレート・ガバナンス制度を整備する。
(2) 中小国有企業の民営化:
• 改革の背景:90年代に入って、郷鎮企業な
ど非国有企業との競争激化と共に、国有
企業の経営状況は悪化していた。
• 改革の方法:
a. 民営化:従業員や外部の企業・個人など
への売却、株式合作制等に転換する。
b. リースや委託経営など、資本の所有を変
更しない、改革もある。
最近注目すべき傾向
a. リースや委託経営などの比重が低下し民
営化の占める比率が上昇している。
98年国家統計局のサンプル調査資料:
企業改革を行っている企業のうち、7割が
企業所有の変更を伴う改組を実施する。
b. 民営化の形態の変化
株式合作制→オーナ企業への転換
株式合作制:従業員所有の有限会社の一種。
資本は従業員が比較的分散所有する。
メリット:政府と企業の依存関係を切り離し、従業員に生産
性改善のインセンティブを与える。
デメリット:
・経営者の意思決定が従業員によって強く拘束される。
・従業員は現金による配当が高くなりやすい、将来に向け
投資に利潤を回すことが難しくなる。
・経営者の報酬を引上げられない。
その結果、既存の民営化企業で、資本の
集中化を促進したり、新規に民営化を実施
する場合は経営者の持ち株比率をできる
だけ高くしたいとする→「オーナー企業」へ
転換。
・敏捷かつ柔軟な意思決定が中小企業の生
命である。中小企業では「オーナー企業」
が一般的に最適な企業形態である。
今後「オーナー企業」への転換が主流とな
る可能性が高い。
(3)大企業のコーポレートガバナンス
―経営者企業の出現―
• 1993年14期三中全会では、大企業の改革
について、国家の資本支配を前提に、「近
代的企業制度の整備」=株式企業への転
換を進めることとした。
しかし、国が出資者として、企業経営をど
のように監督するか、つまり、コーポレー
ト・ガバナンス制度を整備することである。
90年代の改革の中で、
二つの枠組みが浮上してきたあ
• 第一、「持株会社方式」
• 第二、「企業集団方式」
(図1参照)
図1 国有資本ガバナンスの二つの枠組み
(概念図)
(1)持株会社方式
(2)企業集団方式
政府
政府
純粋持株式会社
(旧 業種管理部門)
中核企業
企業
企業
企業
企業
企業
企業
上場企業
持株方式について
• 1990年半ば上海等の地方政府で最初に
導入され、その後各地方に普及した。
• 従来国有企業を管轄していた、地方政府
の業種別管理部門(主管局)を一種の特
殊会社形態の純粋持株会社に改める
• この持株会社に対して、当該業種の国有
資本の運営を委託する
企業集団方式について
• 比較的有力な企業を対象に、広く採用され
ている
• 政府は、企業集団の中核企業に対して、
その集団に属する国有資本の運営を直接
委託する。
こうした資本運営の委託関係は、公司法に「授
権」と呼ばれている。
持株方式と企業集団方式の
区別
• 国有資本運営の授権先が異なる。
• 持株方式の授権先:新規に設立された純
粋持ち株会社(前身は一般に政府の業種
所轄部門=主管局)である
• 企業集団方式授権先:既存の有力企業で
ある。
効果と問題点
持株会社について
・あまり良い成果をあげていない
・従来の政府部門の体質から転換できない
・傘下企業の経営権が制限されて、経営効
果がかえって低下する
企業集団方式について
・2類型があり、新興企業は効果が高い。
企業集団方式の2類型
• ①石油化学や自動車など産業政策上に属
する伝統的な国有大企業である。
• ②産業政策上必ずしも重要な業種ではな
いが、市場経済に適合した経営に成功し
て近年成長を遂げた新興企業である
新興企業の特徴
• 非常に優れた経営者の手腕によって発展を実現
した
• 国有資本運営の委託が行われるのもこうした経
営者の手腕が評価されたことによる
• 経営者は企業経営を強力にコントロールしてい
るが、国有資産運営によって、経営者のコント
ロールは一層強化される
• 経営者は事実上所有者に近いコントロール権を
もつことになる
=経営者集権型企業
中国公司法(会社法)第72条に
は次のような規定がある
• 「経営管理制度が整っており、経営状
態が良好である大型の国家全額出資
公司は、国務院の授権により、資産
所有者としての権利を行使できる。」
経営者主権型企業と
純粋持株会社との比較
• 経営者主権型企業は現実の市場経済の
試練の中から発展してきた。国有資本の
運営主体として効率的である。
• 純粋持株会社は政策によって人為的に作
られたものである。
コーポレート・ガバナンスの観点か
らみる経営者集権型の問題点
• 所有者である国は経営者に対して十分な
監督手段をもたない
• 経営者が定年に近づくと、背任などの手段
によって私利を図るケースがみられる
• 「59歳現象」
経営者を監督するための
二つの方策
• ①党・政府によるモニタリングの強化:重要企業
に対する特派監査員(次官級の官僚)の派遣、
党大型工業企業工作委員会の設立など、行政
系統や党の組織系統によるモニタリングが強化
されている。
• ②資本市場の発展促進:資本市場市場(株式市
場)の発展促進は、企業の資金調達ルート拡大
と同時に資本市場を通じたコーポレート・ガバナ
ンスを強化する。
まとめ
• 90年代の中国国有企業改革の流れ:中小企業
では民営化が進むとともに、オーナー企業化を
志向する動きが現れること、大企業では経営者
支配が台頭していることを確認した。
• 経営者個人に極度に権限が集中したことは限界
がある。企業の規模が拡大し、経営内容の高度
化が進むと、企業の経営に不安定化を招く可能
性が高まる。
• 「個人の企業」から「組織の企業」への転換は中
国の中長期的な発展にとって重要な鍵となる。
表7-3 企業経営者の責任主
体に対する認識
(%)
国有
都市
集団
郷鎮
外資
独資
外資 民営 株式
合弁
企業利益
40.7
43.0
52.2
52.9
42.7
46.7
34.7
国家利益
34.1
24.4
23.2
23.5
21.1
33.3
21.8
出資者
14.2
8.9
8.0
23.6
28.9
0.0
36.6
22.5
15.9
0.0
6.6
13.3
6.3
従業員集団 10.0
表7-4 企業経営者の追求す
る経営目標
(%)
国有
都市
集団
郷鎮
外資
独資
外資 民営 株式
合弁
従業員の収 73.6
入増大
73.1
58.5
47.0
57.3
53.3
58.4
企業の発展 66.3
61.9
66.1
64.7
60.9
40.1
60.5
最大利潤の 59.8
追求
60.1
55.8
70.6
67.1
53.4
71.5
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と経営の分離と国有企業のコーポレートガバナン