熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
第1章 数学的準備
Author(s)
黒田, 規敬
Citation
現代技術の物理学: 1-15
Issue date
2007-04-01
Type
Book
URL
http://hdl.handle.net/2298/10974
Right
数学的準備
1
1.1
ベクトル演算
1.1.1
ベクトルとスカラー
時間や質量は大きさのみを指定すればよく,このような量をスカラー量という.し
かし力や速度は大きさのみでなく方向まで指定しないと定まらない.これらの物理量を
ベクトル量と呼ぶ.
1 つのベクトルは図 1.1.1 のように一本
y
の矢で表す.矢の長さがその量の大きさを
P
y1+y2
表し,矢印が向きを表す.ベクトル i,j
で測ったベクトル A の x, y 成分が x1, y1 の
C
y2
B
ときベクトル A を
y1
j
A (x1, y1)
と書く.i,j のように, 1 つの座標軸の単位
θ
0
i
となるベクトルを単位ベクトルという.
図 1.1.1 で座標が (x1+x2, y1+y2) の点
x2
A
x1
x
x1+x2
図 1.1.1. ベクトルの図示
を P とすると
→
OP = C = A + B = B + A
A
(1.1.1)
である.このように,ベクトルでも和に
ついての交換則が成り立つ.
-A
1 つのベクトルの負のベクトルは
-A (-x1, -y1) である.これは図 1.1.2 のよ
うに,ベクトル A の長さを等しく保って
図 1.1.2. 負のベクトル
向きを反対にしたものである.
ベクトルの大きさをベクトルの絶対
値といい, A と書く.ベクトル A を強調する意味で A の x, y 成分を Ax, Ay と書くと
1
A=
Ax2 + Ay2
(1.1.2)
である.物理学ではこの絶対値を単に A と表記することが多い.Ax=Acosθ,
Ay=Asinθ
で
あるから,A に沿った方向の単位ベクトルは
A
= cos θ i + sin θ j
A
(1.1.3)
である.
ベクトルとスカラーの積 A′ = aA は 符号を保つか,または逆にして A を縮小また
は拡大したものである.物理学ではこの関係は例えば距離と速度の関係に相当する.速
度を v とし,時間を t とすると, 移動地点 r は r = tv で与えられる.
図 1.1.3 のように y 軸と A とのなす角度
y
をϕ とすれば Axと同じく Ay も Ay=Acosϕ と余
弦で表される.これらの余弦 cosθ , cosϕ をベ
A
クトル A の方向余弦という.
cosθ = l, cosϕ = m (1.1.4)
ϕ
とおけば
θ
x
l2 + m2 = 1
(1.1.5)
図 1.1.3 ベクトルと座
標軸との角度
の関係が常に成り立つ.図 1.1.4 のように 3
次元空間に拡張し, z 方向の方向余弦を n と
すれば,
l2 + m2 + n2 = 1
(1.1.6)
z
である.
cosγ = n
cosα = l
α
1.1.2 位置ベクトル
γ
β cosβ= m
空間に固定した一点を原点 O とし,O から
空間の任意の一点を結ぶベクトルを位置ベク
トルという.
2 つの点 A, B を結ぶ直線を図 1.1.5 のよう
2
x
図 1.1.4. ベクトルと 3 次元
座標軸との角度
y
に, m : n に分割する点 R の位置ベクトル R
を求めてみよう.点 A から点 B へのベクトル
B
n
が B-A であることを考慮すると,
R
B
m
nA + mB
R = A+
( B − A) =
m+n
m+n
m
R
A
A
O
(1.1.7)
で与えられる.この結果を用いれば,3 点 A, B,
C を結ぶ 3 角形の重心 G の位置ベクトル G が
図 1.1.5 空間の 2 点間の分割点
の位置ベクトル
図 1.1.6 より
G=
1
(A + B + C)
3
(1.1.8)
C
と表せることが分かる.
2
G
点だけでなく直線や面も位置ベクトルで表
すことができる.例えばベクトル A の先端を通っ
A
1
てベクトル B に平行な直線は a を任意の実数とし
B
て
O
r=A+aB
(1.1.9)
の先端が a の変化とともに描く直線である.また,
図 1.1.6. 三角形の重心の
位置
点 C を通り A, B が作る面に平行な平面は,a, b
を任意の実数として
r=C+aA+bB
(1.1.10)
の先端が a, b の変化とともに塗りつぶす平面である.このようにベクトルを使って表し
た方程式をベクトル方程式という.
1.1.3 ベクトルの積
1.1.3.1 内積
2 つのベクトル A と B のなす角度をθ としたとき ABcosθ をベクトル A と B の内積
といい,A⋅B または B⋅A と表記する.つまり
3
A⋅B = B⋅A = AB cosθ
(1.1.11)
である.内積にも交換則が成り立つ.単位ベクトルを i, j, k とする直交座標系の成分で
A⋅B を書き下すと
A⋅B = (Axi + Ayj + Azk) ⋅ (Bxi + Byj + Bzk)
(1.1.12)
であるから,
A⋅B = AxBx + AyBy + AzCz
(1.1.13)
という関係が成り立つ.
いま原点 O から離れて図 1.1.7 のような 1
P
つの平面があるとき,O からこの面に向けて降
ろした垂線の長さを p,垂線の単位ベクトルを n
p
とすると,平面上の任意の点 P の位置ベクトル
r⋅n = p
r
n
を r として,この平面は
(1.1.14)
というベクトル方程式で表される.
O
また,図
1.1.8 のように点 C を中心として半径 a の球が
図 1.1.7. 1 つの平面と原点
との位置関係
あるとき,a = r – C より,この球の表面を表す
ベクトル方程式として
a
C
r
r2 - 2 C⋅ r + C2 - a2 = 0
C
(1.1.15)
O
が得られる.
図 1.1.8. 1 つの球面と原点と
の位置関係
1.1.3.2 外積
2 つのベクトル A と B が作る平行 4 辺形の
AxB
面積に等しい大きさを持ち,かつ図 1.1.9 のよ
うに面に垂直な右ネジ方向のベクトルを
A×B または
B
n
θ
[AB]
A
と表す. つまり A と B の間の角度をθ とし,面
に垂直な右ネジ方向の単位ベクトルを n とする
4
図 1.1.9. ベクトルの外積
と
A×B = ABsinθ n
(1.1.16)
である.このベクトルをベクトル A と B の外積または面積ベクトルという.この定義よ
り
A×B = - B×A
(1.1.17)
であり,外積では交換則が破れている.外積の定義より,直交座標系の単位ベクトルに
ついて次の関係がある.
i×j = k, j×k = i, k×i = j
(1.1.18.a)
i×i = j×j = k×k = 0
(1.1.18.b)
したがって A×B を直交座標系で表すと
A×B = (AyBz – AzBy) i + (AzBx – AxBz) j + (AxBy – AyBx) k
(1.1.19.a)
i
j
k
= Ax A y Az
Bx B y Bz
(1.1.19.b)
となる.
C
V
B
1.1.3.3 スカラー3 重積
A
3 つのベクトルで作った積
図 1.1.10. 3 つのベクトルが
作る平行 6 面体
A・(B×C)
はスカラーである.[ABC]とも表記
し,この形の積をベクトルのスカラ
ー3 重積という. この積は図 1.1.10 より明らかなように,
3 つのベクトル A, B, C
が作る平行 6 面体の体積 V に等しい.したがって
A・B×C = B・C×A = C・A×B = V
(1.1.20)
である.
5
1.1.3.4 ベクトル 3 重積
ベクトルの積 A×(B×C) はベクトルである.この形の積をベクトル 3 重積という.
ぞれぞれのベクトルを成分で表して整理すれば
A×(B×C) = B(C・A) - C(A・B)
であることが分かる.
(1.1.21)
そうすると
(A×B)×C = B(C・A) - A(B・C)
(1.1.22)
となる.明らかに,ベクトル 3 重積では括弧の順序を変えると値が変わる. つまりスカ
ラー量の積で成り立っていた結合則がベクトル 3 重積では成り立たない. 3 重積では
A×(B×C) + B×(C×A) + C×(A×B) = 0
(1.1.23)
が恒等的に成り立つ.
1.1.4 ベクトルの微分
P
A(t)
ベクトル A の先端が変数 t の変化と
ともに図 1.1.11 に示した曲線の上を動
くとする.
いま t が ∆t だけ進むと A ベ
O
クトルが図のように
∆A
dA
dt
接線方向
A(t+∆t)
図 1.1.11. ベクトルの微小変化
A(t +∆t) = A(t) + ∆A
(1.1.24)
と変化するとすると,∆t が限りなく 0 に近いときの
∆A
が t に対する A の微係数
∆t
である.つまり
∆A dA
=
∆ t → 0 ∆t
dt
lim
である.図 1.1.11 から分かるように
いる.
(1.1.25)
dA
は点 P における軌道の接線方向を向いて
dt
ベクトルの微分では次の関係式が成り立つ.
6
d ( A + B ) dA dB
=
+
dt
dt
dt
d (mA) dm
dA
=
A+m
dt
dt
dt
d ( A ⋅ B)
dA
dB
= ( )⋅ B + A⋅( )
dt
dt
dt
d ( A × B)
dA
dB
= ( )× B + A× ( )
dt
dt
dt
(1.1.26)
(1.1.27)
(1.1.28)
(1.1.29)
ベクトルの微分量の 1 つに速度がある.速度は位置ベクトルを r,時間を t として
v=
dr
dt
(1.1.30)
で与えられる.r の方向の単位ベクトルを n‖
dr n
dt ‖
とすると,r = rn‖であるから速度は
dn
dr
dr
= ( )n // + r ( // )
dt
dt
dt
に等しい.
r
(1.1.31)
dr
n‖
右辺の第 1 項は n‖方向の r の変
化率すなわち直進距離の増減速度を表してい
る.これに対して,n‖が単位ベクトルなので
dn
長さが変わることはなく,そのため // は
dt
O
dt
r
n⊥
d n‖
dt
図 1.1.12 速度ベクトルの直進と
回転の成分への分解.
n ‖ に垂直な方向を向いている.したがって
(1.1.31)式の右辺第 2 項は図 1.1.12 に示した
ように,r に垂直な方向への速度であり,これ
は方向転換のための回転の速度を表している.このようにして,どのように曲がった道
筋でも速度を位置ベクトルの微分で記述することができる.
1.2
1 階線形微分方程式
1.2.1 特解, 一般解, 完全解
自然科学・技術においてもっともよく出現する微分方程式の 1 つは a, k を定数とし
7
て
dy
dy
= − ky ,あるいは
= a − ky
dx
dx
のような形をした微分方程式である.このような,与えられた 1 つの微分方程式を満た
す関数 y(x)を見出す作業を解くといい,見出された y(x) を解という.これらの方程式の
解はそれぞれ,
y = y 0 e − kx および y =
a
a
+ ( y 0 − )e −kx
k
k
の形をしている.ここで y0 は x = 0 で y が持っていた値である.y0 のように x = 0 で指定
された事項を初期条件または境界条件という.方程式の形が同じであれば数学的扱いは
同じである.まず
dy
= − ky
dx
を解こう.
(1.2.1)
(1.2.1) 式を変数分離形にすると
dy
= − kdx
y
(1.2.2)
であるから両辺を積分して
lny = −kx + C
(1.2.3)
y = y 0 e − kx
(1.2.4)
または
が得られる.
ただし C は積分定数である. (1.2.3)式で ln は自然対数を表している.
e = 2.718277… はその底であり,ナピア(Napier)の数と呼ばれる.また,(1.2.3)式と
(1.2.4)式をそれぞれ対数型および指数型の解という.つぎに
dy
= a − ky
dx
(1.2.5)
を考えよう. (1.2.5) 式の 1 つの解は x に依存しない定数である.この解を y1 とする
と
y1 =
a
k
(1.2.6)
である.また a を 0 とした
8
dy
= − ky
dx
(1.2.7)
の解を y2 とすると,これは(1.2.1)式と同じ形なので c を定数として
y 2 = ce − kx
(1.2.8)
と表すことができる.明らかに, y1 + y2 も(1.2.5)式の解であるから,(1.2.5)式の解は
一般に
y=
a
+ ce −kx
k
(1.2.9)
で与えられる. 初期条件より y (0) =
y=
a
+ c = y 0 だから,結局求める解は先に述べた
k
a
a
+ ( y 0 − )e −kx
k
k
(1.2.10)
である.
一般に,y が n 階の非同次線形微分方程式
d ny
dx
n
+ α 1 (x )
d n−1 y
dx
n−1
+ L + α n ( x) y = β (x )
(1.2.11)
に従うとき,y は 1 つの特解(または特異解)と,β(x) = 0 とした同次方程式の一般解の和
で与えられる.これを完全解という. 階は 最大の微分次数のことである. n 階の微分
方程式は n 個の任意定数を含む解を持つ.階数と同じ個数の任意定数を含む解が一般解
であり,特解 は一般解に含まれない解である.なお線形という言葉も数学用語の 1 つで
あり,求めたい量 y について 1 次の項,つまり直線的な項しか方程式が含まないことを
指している.
上で取り扱った(1.2.1)式と(1.2.5)式はいずれも1階の線形微分方程式であるが
(1.2.1)式が同次方程式であるのに対して(1.2.5)式は非同次方程式である. y2 が
(1.2.1)式の一般解であり,y1 が(1.2.5)式の特解に他ならない. したがって y1 + y2 が完
全解を与える.
1.2.2 生成と消滅の速度論
-ランベルト-ベールの法則-
(1.2.5)式で a, k > 0 は,何らかの量 y が一定の割合で生成または供給されながら,
9
同時にその量に比例した速さで消滅するという互いに相反する 2 つのプロセスが共存す
るときの y の量の変化を記述する.
(a) y0 =0, a ≠0 の場合
このときの解は
y=
a
(1 − e −kx )
k
(1.2.12)
であり,何もない状態から一定の割合で増える状況を表している.
(b) y0 ≠0, a = 0 の場合
このときの解
y = y 0 e − kx
(1.2.13)
は実在した状態から,一定の割合で消滅する状況を表している.図 1.2.1 に y0 =1, k = 0.2
に選んだときの(1.2.13)式の y の変化の様子を示す. また同じ関数を対数の縦軸で表示
したものを図 1.2.2 に示す.
1
y=e
-k x
, k=0.2
e = 2.7183
1/e=0.36788
0.1e
y
y=e
-0.2x
1
0.5
0.1
e = 2.7183
1/e=0.36788
1/e
1/k
0.01
0
0
5
x
10
15
0
20
5
10
15
20
x
x
1/2
図 1.2.1. 指数減衰の一例
図 1.2.2. 指数関数の対数表示.
縦軸の目盛りは真数
を表わす.
10
(1.2.13)式は放射性同位元素の崩壊,光や電子線で照射した結晶の蛍光の減衰,
物質または溶液による光の吸収, AB ↔ A + B という化学反応,コンデンサーの充放電,
そして薬物の生体内代謝など,時間的または空間的変化率がそれ自体の数量に比例する
さまざまな現象の記述に用いられる.例えば光を吸収する性質のある物質に強さ I0 の光
が入射したとき,表面からある深さまで進入した光がそこからさらに単位距離進んで減
衰する割合はその深さでの光線の強度に比例する.したがって表面での反射のロスが十
分小さければ,透過してくる光の強さ I は物質の厚さ d とともに
I = I 0 e −α d
(1.2.14)
のように減少する.これをランベルトの法則(Lambert’s law)という. ここで α は吸収
係数である.また,α が吸光体のモル濃度 ρ に比例するというベールの法則(Beer’s law)
と組み合わせると,薬品の溶液や,吸光体が均一に分散した固体を透過した光の強さは
I = I 0 e − βρ d
(1.2.15)
となる.これをランベルト-ベールの法則(Lambert-Beer’s law)といい,β をモル吸光度と
いう.α とβ は常に正の値を持つとは限らない.誘導放出があるときは負の値となり,
このとき光は増幅されて超放射の現象やレーザー作用を誘起する.
−kt
1 つの物理量が時間 t の関数として y = y 0e のように変化するとき,t = t1/e = 1/k の
t1/e を減衰時間または,寿命という.放射性同位元素の崩壊などでは y が(1/2)y0 となる時
間 t1/2 を半減期と呼ぶ.t1/2 と t1/e の間には
t1/2 = (ln2)t1/e
(1.2.16)
の関係があるので
y = y 0 e −(ln 2)t / t1 / 2
(1.2.17)
と表すことができる.ここで ln2 = 0.69315... である.
対象物の数または密度 N の,時間 t の経過に伴う変化を論じる時,
dN
= G (t ) − k (t ) F ( N )
dt
(1.2.18)
を,レート方程式またはマスター方程式という. G(t) や k(t) が個々のケースにおいて,
どのような仕組みで起きるかを解き明かすことが実際の物理学の仕事である.
11
1.3 虚数 i と複素数 z = x + iy −物理の表現に便利な数−
振動や波動あるいは交流現象を表現する上で複素数は大変有効である.i2 = -1 を与
える i,つまり
i = −1
(1.3.1)
を虚数単位といい,y を任意の実数として iy を虚数と呼ぶ.また,x をもう 1 つの任意
の実数として
z = x + iy
(1.3.2)
を複素数呼び,
z * = x – iy
(1.3.3)
を z の共役複素数と呼ぶ.z* の代りに z と書くこともある.複素数を変数とする関数を
複素関数という.1つの複素関数を f(z)として,f(z)の実数部を表すときは Re[f(z)]と書
き,虚数部を表すとき Im[f(z)] と書く. すなわち
f(z) = Re[f(z)] + iIm[f(z)]
(1.3.4.a)
である.このとき
f(z*) = Re[f(z)] - iIm[f(z)]
(1.3.4.b)
が成り立つ.つまり f(z)も1つの複素数とみなすことができる.
z の絶対値は
z = z * z = ( x − iy )( x + iy ) = x 2 + y 2
(1.3.5)
で与えられる. z = 1 の複素数は
cos θ + i sin θ = e iθ
(1.3.6)
と表される. e はナピアの数であり,θ は図 1.3.1 に示すように,実数軸からの偏角
である.ただしこの偏角は横軸を実数軸,縦軸を虚数軸とする平面内で原点を中心とし,
半径を 1 とする円周上の一つの円弧の長さであり,これを弧度またはラジアン(radian)
という.円周は 2π なので 360o 回転は 2π ラジアンに等しい.なお函数論では実数軸と虚
数軸をそれぞれ単に実軸,虚軸と呼ぶことが多い.
12
図 1.3.1. ラジアンの定義
弧度を用いると一般の複素数は
z = z e iθ ,
tan θ =
y
x
(1.3.7)
と表される. これを複素数 z の極形式という. 2 つの複素数 z1 と z2 の積は
z1 z 2 = z1 z 2 e i (θ1 +θ2 )
(1.3.8)
である.
実数を変数とする複素数の微分はその変数を t とすると
dz
dz
dθ iθ
=(
+iz
)e
dt
dt
dt
(1.3.9)
である.第 2, 4 および 5 章で述べるように振動や交流現象,あるいは波動は,時間を t,
角振動数をω として
eiω t
または
e-iω t
で表現される.そのような運動論や動力学の考察には微積分がしばしば必要になるが,
(1.3.9)式より,e±iω t の時間微分は
d ± iω t
e
= ± i ω e ± iω t
dt
(1.3.10)
13
となる.また,任意の実変数 t についての z の積分が
∫ zdt = ∫ xdt + i ∫ ydt
(1.3.11)
で与えられることも明らかである.したがって
∫e
iω t
dt = −
i
ω
e iω t
(1.3.12)
である.
本書ではこのような,変数が実数の場合のみを取り扱う.変数を複素数に拡張した
複素平面上の微積分は,より一般的な複素函数論で取り扱われる.
14
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