ユーザインタフェース 第13回
シンプリシティの法則
基本的なシンプリシティ
ジョンマエダ 著,鬼澤忍 訳
シンプリシティの法則,
東洋経済新報社,2008
• 著者 ジョン・マエダ
– MIT の教授として教鞭を執る傍ら、コンピュータ・
グラフィックスを用いたアーティストとして有名な
ジョン・マエダ
– 新しい機器のデザインにあたり、シンプルさを実
現するために必要な要素を10個の法則に整理
– デザインはメッセージであり、デザインが人の行
動を決める。だからこそデザインはシンプルでな
ければならない。
シンプリシティとは?
• 技術のために私たちの生活はますます満たされるも
のになった。しかし、不快なものに満たされるようにも
なった。
• 「シンプリシティは売れる」
– アップルのiPodは他社の音楽プレーヤーよりも機能は少
ないのに売れる。
– Googleの検索エンジンはシンプルなインタフェースである
が、「ググる」は検索することの代名詞になっている。
• これまでの講義では、できたもののデザインを評価す
る指標を明確にしてきた。しかし、デザインするうえで
の 哲学 は論じていない。マエダの提唱する10の法
則をもとにこれを勉強する。
• シンプリシティは 明白な ものを取り除き、有意義
なものを加えることにかかわること
なぜ、哲学?
• Simplicity(単純さ)と
Complexity(複雑さ)のバランス
をどこでとればよいか
• リモコンの例
– 家の中はリモコンだらけ
• 1台で3台を操作可能なもの
– ブルーレイ・レコーダ
• 機能の多さのあまり使えない
• パワーユーザ用とライトユーザ用にリモコンを分ける
• みんな苦労していて、ベストな解はない
• 場合に応じて判断するうえでの拠り所
シンプリシティのための10の法則
• デザインを検討する機会を通じて、できあ
がった行動指針をまとめたもの
– 3つの基本の法則
– 4つの中級の法則
– 3つの深遠な法則
法則1 削減
• シンプリシティを実現する最もシンプルな方法
は、考え抜かれた 削減 を通じて手に入る。
• とにかく不必要なものを削る。削るものがなく
なったら SHE を使う
-縮小:SHRINK
-隠蔽:HIDE
-具体化:EMBODY
• 不要なものは隠蔽し小機能だけど品質は高い
ことを実現する
• できることを減らし、ほかのすべてを隠しつつ、
本来の高い価値感 が失われないようにする。
Shrink(縮少)
• 小さくて地味なモノが期待以上の働きをすると、驚
かれるだけなく、喜ばれる
• 小さければ小さいほど、おかしな
動きをしても大目に見てもらえる
• IC化などの テクノロジ で小さくする
• デリケートで、もろく見せることはデザインの常套
– 軽さと薄さ(iPodの背面の鏡面仕上げ)
• (誤魔化しでも)軽さと薄さを持つデザインは、小さ
く劣っており、粗末だという 哀れな印象 を与える。
• 当初の期待よりもはるかに大きな価値 が生み出さ
れると、哀れみは尊敬に変わる
Hide (隠蔽)
• 使わない機能は見えなくする
• コンプレクシティを隠す
– 携帯電話:
• クラムシェル型
• スライド型
– MacOS X のdock
• ユーザに多くの満足感
– 自分の意志でシンプリシティから
コンプレクシティを引き出すように
感じられる
• 縮小すれば期待は低くなり、隠
せば自分自身で 期待を制御
できる
Embody(具体化)
• 品質を具体的に示す
•
縮小や隠蔽のあと、失われた高価値観 をモノにまとわせる
• 高い価値観をユーザに認識させる方法
– 宣伝
• マイケル・ジョーダンは Nike を履いている
– すっきりしたデザインでありながら、高品質のイメージ
– 卓越した職人技と高価な素材
• フェラーリの美しい曲線を出す職人芸(ボディの形に無駄がない)
• フェラーリの部品は世界一
法則2 組織化
• ぐちゃぐちゃな部屋に取れる対策は3つ。
– 大きな家を買う
– 必要でないものはしまっておく
– 今あるものを組織化する
空いたスペースに
別のガラクタが増
えるだけ
• 組織化は構成する 多くの要素を少なく 見せる
– 役割ごとにまとめる
– 組織化が守られる限り、混乱に構造をもたらす
組織化のための手法 SLIP
• SLIPはマエダの方法、一般的には KJ法
– 川喜田二郎氏が提案
– 多くの項目をグループ化し、論理的に整理して問題解決の道
筋を明らかにしていくための手法
– 立命HPに上手なまとめ
( http://www.ritsumei.ac.jp/~yamai/kj.htm )
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Sort (分類)
Label (命名)
Integrate (統合)
Prioritize (優先順位の決定)
カードソート法 はまさしく、SLIP
Sort (分類)
• まず、ラフなグルーピング をする
– 付箋を使うと便利
– 一匹狼のカードがあってもよい。無理やりグルー
プ化しない
Label(命名)
• 関連した 名前を 付けておく。何でもいいから
各グループに
ラベルを付ける
Integrate (統合)
• グループを統合
• 少ない方がいい
統合したグループに
ラベルを付ける
Prioritize(優先順位をつける)
• 優先順位がもっとも高いものを目立たせる
• パレートの法則 を使うと有効
– 多くの現象で80%の結果は20%の原因から生じる。
(ヴィルフレッド・パレートはイタリアの人口の20%
が資産の80%を所有していることを説明)
– 20%の問題を解決すれば、80%の効果がある
– 本当に重要な20%とそうでもない80%に分けると、
重要な少数(vital few)が明確になる。
• 「 どこから始めるべきか 」を知ることは決定的
な第一歩
ドイツ製品のすっきりしたデザイン
• ゲシュタルト
– ドイツ語における、形、形態、状態
– ゲシュタルト心理学 (Gestalt Psychology)
• ドイツ心理学の一学派。人間の精神は部分や要素の集合ではなく、
全体性や構造こそ 重要視されるべきとした
• バウハウス( Bauhaus)
– 1919年設立
– 建築技術、デザイン、絵画、工芸の学校
• ドイツ企業の製品はすっきりしたデザインに優れている
– ニーズにかなう 最適なゲシュタルト を是が非でも見つける
BMW
Audi
Brown
Ferrariの
ゲシュタルト
Audiのゲシュタルト
blurred grouping(ぼんやりした体系化)
• iPodのゲシュタルト
– なぜ3世代目が支持されるのか。
– 「ぼやけ」は複数の点をやわらかく統合
初代iPod
2008年発売
のiPod Classic
2代目
ー 法則2の神髄 -
目を開くために目を細める
• 見るものを減らすことで,分かることが増える
– 世界でトップクラスのデザイナーはみな、何かを
見る時に目を細める。
• 木を見て森を見る ために
• 正しいバランスを発見する ために
– 目を細めて世界を見ると、見るものを減らすこと
ができる
• 見るものを減らすことによって、わかることが増える
法則3 時間
• 私たちの生活には 待ち時間 が多い。
– 待つことが多いと生活が不必要に複雑に感じられる
• すぐ反応してくれるとき、シンプルだと感じる
– 時間を節約することでシンプリシティを感じられる
• 第1法則のSHEが時間にも適用できる
– Shrink: 時間を縮小する
– Hide: 時間を隠蔽する
– Enbody: 時間を具体化(感じられるように)する
時間を縮小する
• 無駄を徹底的に 無くす
– 2006年にトヨタがGMを抜いた作戦は徹底的業務管理
• 流れ作業開発の義務付け
• 各工程で指標を満たすように進めれば、いいものができる
• 周到に準備する
– 瞬間湯沸かし器
• 選択肢を諦めることによって、時間が短縮できる
–
–
–
–
iPod shuffle
ディスプレイ無し
曲が選べない
選ぶ時間を無くす
時間を隠蔽する
• 時計を隠したり、窓がないことで、錯覚が起きる
– ラスベガスのカジノ
• 客にできるだけ長く滞在させる
時間を具体化する
• 進捗状況を示すとストレスが減る
• 待ち時間を短く見せるトリック
– アップル社でのユーザビリティ・テスト
• プログレスバーを表示すると待ち時間が
短く感じられた
– Disneylandのアトラクションの待ち時間
• レイモンド・ローウィ
– フランス人デザイナ(米国で活躍)
– ストリームライン
• カーブした外形、流線型的要素を強調
• より機敏で軽量に見える
Quantitatively Fast, Qualitatively Fast
• 量的な速さ と 質的な速さ のトレードオフ
どうすれば待ち時間を短くできるか?
←→
どうすれば待ち時間を我慢しやすくできるか?
• 絶対的な時間を減らすか、
• 快く待てるようにするか
– エレベータの待ち時間を
短くするための工夫
– エレベータホールに鏡
• D.ワインバーグ著,木村泉訳
ライト、ついてますか
共立出版, 1987
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