量子力学 II (2012 年度) 演習問題 X 解答例
時間に依存した摂動論 4
問 X.1 スピンの回転
(1) この系のハミルトニアンは
(
H = −γBSz =
)
−~ω0 /2
0
0
+~ω0 /2
(1)
である。ここで、ω0 = γB はこの系の固有周波数である。
(2) 基底状態 | 0 i と励起状態 | 1 i はそれぞれ次式で与えられる。
( )
( )
1
0
|0i =
= | + zi , | 1 i =
= | − zi .
0
1
(2)
それぞれのエネルギー固有値は、E0 = −~ω0 /2, E1 = +~ω0 /2 である。
(3) ハミルトニアン (1) から、c0 (t) および c1 (t) は、次の微分方程式を満たす。
ω0
dc0 (t)
= − c0 (t) ,
dt
2
dc1 (t)
ω0
i
= + c1 (t) .
dt
2
i
(3)
したがって、一般解は、
c0 (t) = c0 (0) e+iω0 t/2 ,
c1 (t) = c1 (0) e−iω0 t/2 ,
(4)
となる。
(4) 問 (3) で得られた解 Ψ(t) は次式で与えられる。
Ψ(t) = c0 (t) | + zi + c1 (t) | − zi
= c0 (0) e+iω0 t/2 | + zi + c1 (0) e−iω0 t/2 | − zi .
(5)
c0 (0) と c1 (0) は規格化条件 |c0 (0)|2 + |c1 (0)|2 = 1 をみたすので、問題文に与えられているように
θ
,
2
θ
c1 (0) = sin eiφ ,
2
c0 (0) = cos
(0 ≤ θ ≤ π, 0 ≤ φ < 2π)
(6)
とパラメトライズできる。
(c0 (0) と c1 (0) の共通の位相因子は物理的ではないので、ここでは、c0 (0)
の位相を 1 とおいて実数になるように定義した。)これを (5) 式に代入して整理すると
[
]
θ
θ
+iω0 t/2
i(φ−ω0 t)
Ψ(t) = e
cos | + zi + e
sin | − zi
2
2
となる。問 IX.1 問 (3) を参照すると、Ψ(t) は
(
)
~n = sin θ cos(φ − ω0 t), sin θ sin(φ − ω0 t), cos θ
(7)
(8)
の方向を向いたスピン状態であることがわかる。
(このとき、全体にかかっている位相因子 e+iω0 t/2
は無視してかまわない。)
1
(5) スピンの大きさ ~/2 をもつベクトルが、z 軸正方向から角度 θ だけ傾けて、z 軸まわりを(z 軸正
の)上からみて周波数 ω0 で時計方向に回転していることがわかる。
(6) 問 (2) から
(
Ψ(t) =
c0 (0) e+iω0 t/2
c1 (0) e−iω0 t/2
)
(
=
cos 2θ e+iω0 t/2
sin 2θ eiφ e−iω0 t/2
)
(9)
なので、
~
sin θ cos(φ − ω0 t) ,
2
~
hSy i = Ψ(t)† Sy Ψ(t) = sin θ sin(φ − ω0 t) ,
2
~
†
hSz i = Ψ(t) Sz Ψ(t) = cos θ ,
2
hSx i = Ψ(t)† Sx Ψ(t) =
(10)
を得る。ここで、三角関数の加法定理をもちいた。これらをもちいると、
)2
~
sin θ
,
2
~2
,
hSx i2 + hSy i2 + hSz i2 =
4
(
hSx i2 + hSy i2 =
(11)
となる。
~ i(t) は、スピンの大きさ ~/2 をもつベクトルが、z 軸正方向から角度
(7) 上の結果から、ベクトル h S
θ だけ傾けて、z 軸まわりを(z 軸正の)上からみて周波数 ω0 で時計方向に回転していることがわ
かる。この結果は問 (5) での解釈を正当化する。
(8) 問 (5)(あるいは問 (6))の幾何学的運動からも予想されるが、初期状態として Ψ(0) = | 0 i と選
んだので、( | 0 i = | + zi, | 1 i = | − zi であることに注意して) c0 (0) = 1, c1 (0) = 0 である。し
たがって、Ψ(t) は常に(位相因子を除いて)基底状態 | 0 i = | + zi に留まることがわかる。した
がって、初期状態 | 0 i から励起状態 | 1 i に移ることはあり得ない。
(
)
(9) 初期状態 Ψ(0) として x 軸正方向に向いたスピン状態 | + xi = √12 | + zi + | − zi を選んだとき、
√
√
c0 (0) = c1 (0) = 1/ 2 である。このとき、|c1 (0)e−iω0 t/2 | = 1/ 2 6= 0 なので、初期状態 | + xi か
ら状態 | + zi に移ることはあり得ない。
√
(10) 初期状態 Ψ(0) として x 軸正方向に向いたスピン状態 | + xi を選んだとき、c0 (0) = c1 (0) = 1/ 2
(
)
である。| − xi = √12 | + zi − | − zi なので、
(
Ψ(t) =
c0 (0) e+iω0 t/2
c1 (0) e−iω0 t/2
)
( √
) ( √ )
1/ 2 e+iω0 t/2
1/ 2
√
√
=
∝
1/ 2 e−iω0 t/2
−1/ 2
を満たす最短の時間 t を求めればよい。これは、ω0 t = π 、すなわち、t = π/ω0 である。
問 X.2 磁場を消す座標系
2
(12)
(1)
i~
{ i
}
]
d 0
d[
Ψ (t) = i~
exp − ω0 t Sz Ψ(t)
dt
dt
~
]
d [(
ω0 t
ω0 t )
= i~
I2 cos
− iσz sin
Ψ(t)
dt
2
2
]
(
ω0 t
ω0 t )[ d
~ω0
= I2 cos
− iσz sin
i~ Ψ(t) +
σz Ψ(t)
2
2
dt
2
{ i
}[ d
]
~ω0
= exp − ω0 t Sz i~ Ψ(t) +
σz Ψ(t) .
~
dt
2
(13)
一方、H = −γBSz = − ~γB
2 σz なので、ω0 = γB と選んで Ψ(t) に対するシュレディンガー方程式
をもちいると、(13) 式の右辺は 0 になり、
i~
d 0
Ψ (t) = 0
dt
(14)
を得る。
}
{
(2) 演算子 exp − ~i ω0 t Sz は、空間回転を引き起こすユニタリー変換に対応している。この変換で
Ψ0 (t) は周波数 ω0 で回転する回転座標系に移ることになるので、ω0 = γB ととれば、これはちょ
うど問 X.1 でのスピンベクトルの回転周波数と一致している。したがって、この回転座標系では、
スピンベクトルは止まって見えることになり、z 軸方向の磁場がなくなった系に移ったことに対応
する。
問 X.3 円偏光磁場と共鳴周波数
(1)
~ ·S
~ = −γB ~ σz − γb cos(ωt) ~ σx + γb sin(ωt) ~ σy =
H = −γ B
2
2
2
(
+iωt
− ~ω2 0
− ~Ω
2 e
−iωt
− ~Ω
+ ~ω2 0
2 e
)
. (15)
(2)
)
dc0 (t)
1(
= − ω0 c0 (t) + Ωeiωt c1 (t) ,
dt
2
)
dc1 (t)
1(
i
= + ω0 c1 (t) − Ωe−iωt c0 (t) ,
dt
2
i
(16)
となる。
(3)
]
dc00 (t)
1[
= (ω − ω0 )c00 (t) − Ωc01 (t) ,
dt
2
]
dc01 (t)
1[
i
= −(ω − ω0 )c01 (t) − Ωc00 (t) .
dt
2
i
(17)
(4) 共鳴条件 ω = ω0 のときは、c00 , c01 に対する方程式は (17) 式から、
1
dc00 (t)
= − Ωc01 (t) ,
dt
2
dc01 (t)
1
i
= − Ωc00 (t) ,
dt
2
i
3
(18)
となる。この結果は、実質的にハミルトニアンとして H 0 = − ~Ω
2 σx と選んだ系に等しい。このよ
うな系に移ることができた理由は、まず、問 X.2 の結果をもちいると、c0 , c1 から c00 , c01 の系に移
ることは、回転周波数 ω = ω0 の系に移ることに等しく、これは、z 軸方向の磁場を実効的にゼロ
にしたことに等価である。次に、この回転座標系の回転周波数は、横方向の円偏光磁場の回転周
波数に等しい(ω = ω0 )ので、回転座標系からみると横方向の磁場は静止した定磁場とみなすこ
とができるからである。
(5) (18) 式から、
Ω2 0
d2 c00 (t)
=
−
c (t) ,
dt2
4 0
d2 c01 (t)
Ω2 0
=
−
c (t) ,
dt2
4 1
(19)
を得るので、(18) 式と合わせて解くと一般解は
( Ωt )
+ ic01 (0) sin
,
2
2
( Ωt )
( Ωt )
c01 (t) = ic00 (0) sin
+ c01 (0) cos
,
2
2
c00 (t) = c00 (0) cos
( Ωt )
(20)
となる。
(6) 初期条件は、c00 (0) = c0 (0) = 1, c01 (0) = c1 (0) = 0 なので、(20) 式の結果をもちいると、t = π/Ω
では、
c00 (t = π/Ω) = 0 ,
c01 (t = π/Ω) = i ,
となり、スピンは z 軸負方向を向くことがわかる。
4
(21)
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