国連の安全保障と
多国間主義の可能性と限界
安全保障論
(第6回)
担当:神保 謙
学習の手引き
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神谷万丈「国連と安全保障」防衛大学校安全保障学研
究会編『安全保障学入門:最新版』(亜紀書房、2005年)

ジョセフ・ナイ『国際政治:理論と歴史(原書第5版)』(有
斐閣、2005年)第4章「集団安全保障の挫折と第二次大
戦」

上杉勇司『変わりゆく国連PKOと紛争解決:平和創造と
平和構築をつなぐ』(明石書店、2004年)

Kofi Annan, “In Larger Freedom: Decision Time for
UN” Foreign Affairs (May/June 2005)
集団安全保障の概念
(第2回講義参照)
E
A
D
F
C
B
集団安全保障が機能する条件

いかなる平和破壊者も圧倒できる軍事力を持つこと

加盟国が自国の国益を国際社会全体の利益に従
属させ、集団的措置の発動に協力する意思を持つ
こと
3. 加盟国がどのような平和を守られるべきか、そして
どのような行為を平和破壊と認定するか共通の認
識を持つこと
―神谷万丈「国連と安全保障」防衛大学編『安全保障学入門』を元に作成
前史としての国際連盟
(League of Nations)

第1次世界大戦(1914-1918)の惨禍と反省
– バランス・オブ・パワー論への懐疑
– 国際主義(International Liberalism)の台頭
• ウイルソン主義
• 集団安全保障構想の浮上

国際連盟の設立(1920)
– 国家間の紛争を仲裁して戦争防止
• 連盟規約を破った加盟国に経済制裁を課す
– 実績
• ギリシア・ブルガリア紛争の解決
• 軍縮協議(ワシントン軍縮会議)の推進
国際連盟と集団安全保障の挫折

国際連盟の陥穽
– 米国の不参加 ⇒ 大国不在の弱体化
– 軍事制裁規定の不備 ⇒ 拘束力の不備
– 全会一致原則 ⇒ 全ての国が拒否権

集団安全保障の挫折
– 満州での失敗 ⇒ 日本の国際連盟脱退 (1933)
– エチオピア論争(1935) ⇒ 国際連盟の機能低下
国際連合(United Nations)の設立

戦後構想と国際連合
–
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–

1941:大西洋憲章
1943:モスクワ宣言
1944:ダンバートン=オークス会議
1945:サンフランシスコ会議
国際連合の構成
–
–
–
–
総会
安全保障理事会
経済社会理事会
信託統治理事会
集団安全保障機構としての国連

他国の領土保全や政治的独立を脅かすような武
力による威嚇・武力の行使を禁止(第2条)

国際紛争の平和的解決を義務化(第2条・第33条)

武力による威嚇又は武力の行使が発生した場合
は、安全保障理事会の統制の下に全加盟国の集
団的な力による段階的制裁を加える(第7章第39
条~第51条)
国連安全保障理事会の役割
「平和に対する脅威」の認定(第39条)
↓
事態の悪化防止への暫定措置の要請(第40条)
↓
非軍事的強制措置の適用を決定(第41条)
↓
軍事的強制措置の適用を決定(第42条)
↓
(国連軍の組織と制裁行動)(第43条)
国連憲章第7章に基づく武力行使
第42条[軍事的措置]
安全保障理事会は、第41条に定める措置では
不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明
したと認めるときは、国際の平和及び安全の維
持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の
行動をとることができる。この行動は、国際連合
加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖
その他の行動を含むことができる。
国連安全保障理事会の
構成と意思決定

安全保障理事会
– 常任理事国(5ヶ国)
米・ソ(ロ)・英・仏・中
– 非常任理事国 (10カ国)
2年ごとに5ヶ国を改選 (地域割当制)

安全保障理事会の決定プロセス
– 常任理事国の全会一致原則(拒否権制度)
– 9理事国の賛成票により決定
⇒非常任理事国によるオーバーライドの可能性を担保
冷戦と国連安全保障理事会の空洞化

米ソ対立と安全保障理事会の機能麻痺
– 拒否権の乱発
– 実質的な討議の停滞
– 非軍事的強制措置も実行できず
⇒唯一の例外としての朝鮮戦争(1950-53)

国連軍の指揮権をめぐる問題
– 憲章第43条は加盟国の指揮権を国連軍司令部に移管
– 米国を中心とした加盟国は、指揮権の譲渡には反
⇒「勢力均衡」「軍運用」をめぐるリアリズムの下での機能不全?
冷戦期のバランス・オブ・パワーを
担保した国連憲章第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力
攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和
及び安全の維持に必要な措置を取るまでの間、個別的ま
たは集団的自衛の固有の権利を害するものではない。
この自衛権の行使に当たって加盟国がとった措置は、直ち
に安全保障理事会に報告しなければならない。また、この
措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持ま
たは回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲
章に基づく権能及び責任に対しては、いかなる影響を及ぼ
すものではない。
平和維持活動(PKO)の台頭

PKOの台頭
– 平和のための結集決議(1950)
– スエズ危機と最初のPKO(1956)

「憲章第6章半」の活動領域
– 紛争当事者間の停戦合意の成立後に、当事者の要
請・同意を得て、国連が中立的な第三者として平和維
持軍(PKF)や軍事監視団を派遣し、紛争後の再発
防止・平和維持に努める
冷戦後の国連の平和機能

冷戦の終結と常任理事国の協調
– 拒否権行使回数の著しい低下
– PKO実施の増加

湾岸戦争と「授権型」決議
– 「国際平和と安全を回復するためのあらゆる必要な手
段を行使する権限を与える」
ガリ構想と『平和への課題』

『平和への課題』(1992)
– 予防外交
①信頼醸成措置の推進 ②事実調査
③早期警報 ④予防展開 ⑤非武装地帯の設置
– 平和創造
① 紛争の平和的解決 (憲章第33条型活動)
② 平和強制 (平和強制部隊構想)
– 平和維持
加盟国への一層の財政・人員の提供を慫慂
– 紛争後の平和構築
非武装化・秩序の回復・難民の送還・選挙監視・・・
Source: 上杉勇司『変わりゆく国連PKOと紛争解決』(明石書店、2004年)
『平和への課題:追補』
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『平和への課題』の挫折
– ソマリア(UNOSOMII)
– ユーゴスラビア(UNPROFOR)

『平和への課題:追補』(1995)
①予防外交と平和創造 ②平和維持
③紛争後の平和構築 ④制裁(非軍事) ⑤平和強制
– ⑤の「平和強制」の困難性の強調
– 拡大平和維持路線の否定
– 伝統的平和維持活動への回帰
アナン事務総長と予防外交の展開
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予防の文化
– 低開発国のインフラ・教育・民生支援
– 非軍事的分野における紛争予防の構築

サミット外交と紛争予防
– 沖縄サミット政治宣言(2000)
ブラヒミ・レポート
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国連平和活動検討パネル報告書
(ブラヒミ・レポート)
– 内戦型紛争に対処する上で、平和維持と平和構築を
一体として実施することが不可欠
– 国連部隊の軍事機能の強化を主張

国連平和活動におけるリアリズムの導入
– 国連部隊の自衛力の向上
– 交戦規定(ROE)の明確化
– 当事国での紛争再発防止のための信頼できる抑止
力の提供
アフガニスタン戦争と安保理決議1368
安全保障理事会は、国際連合憲章の原則及び目的を再確認し、テロ活動によっ
て引き起こされた国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用い
て闘うことを決意し、
憲章に従って、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認識し、
2001年9月11日にニューヨーク、ワシントンD.C.、及びペンシルバニアで発生した
恐怖のテロ攻撃を最も強い表現で明確に非難し、そのような行為が、国際テロリ
ズムのあらゆる行為と同様に、国際の平和及び安全に対する脅威であると認める。
すべての国に対して、これらテロ攻撃の実行者、組織者及び支援者を法に照らし
て裁くために緊急に共同して取り組むことを求めるとともに、これらの行為の実行
者、組織者及び支援者を援助し、支持し又はかくまう者は、その責任が問われる
ことを強調する。
また、更なる協力並びに関連する国際テロ対策条約及び特に1999年10月19日に
採択された安全保障理事会決議第1269号をはじめとする安保理決議の完全な実
施によって、テロ行為を防止し抑止するため一層の努力をするよう国際社会に求
める。
イラク戦争と国連
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国連決議1284(1999年12月)
– イラクは国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)と国際原子力
機関(IAEA)による武器査察を受け入れる義務
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国連決議1441(2002年11月)
– イラクの武装解除
– この決議に違反する行動をイラクがとった場合には、安全保障
理事会は、それがイラクに対して重大な帰結をもたらしうるもの
だと再三警告したことを想起すること
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開戦の根拠となる国連決議は存在しない?
「新しい脅威」と国連の安全保障
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国連憲章の改革?
– 創設当初の国家 vs. 国家の戦争の想定
– 自衛権(憲章第51条)の再解釈の必要性?
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国連安全保障理事会の改組?
「国連ハイレベル委員会報告書」
– 拒否権のない6カ国を追加(A案)
– 準常任理事国8カ国を新設(B案)
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国連の安全保障と 多国間主義の可能性と限界