第3章
3-1
保護者、地域との連携
小規模校の特徴や地域の実態を生かした学校運営
那珂川町立小川南小学校
■取組のポイント
○小規模校の特徴を踏まえ、柔軟な組織運営を行っています。
○円滑なコミュニケーションを基盤として、同僚性を育成しています。
○学校の外部環境に目を向け、地域に密着した特色ある学校づくりに努めています。
■学校の概要
小川南小学校は那須烏山市と接する那珂川町南部の農村部に位置している。学校のすぐ東には、
清流那珂川が流れ、豊かな自然に恵まれている。学区は半径1キロメートルと大変狭く、保護者の
多くは、同校の卒業生である。
現在、教職員数14名、児童数70名である。平成19・20年度には、文部科学省から「豊かな体験活
動推進事業」の指定を受けて研究に取り組み、高い評価を得た。
1
組織として機能する学校を目指す
現校長の学校運営に対する基本的な考えは、「学校が元気、先生が元気」ということである。
校長は平成21年4月に赴任したが、過去にも教諭、教頭として勤務した経験があり、実に保護者
の8割が教え子である。地域に精通している校長が、学校を取り巻く外部環境をよく分析し、特色
のある学校づくりのため、リーダーシップを発揮している。
(1)得意を生かす
教職員数14名という小規模校では、一人が担当する校務分掌は多い。児童の数が少なくても教
科および領域の指導計画の作成や実施では、かなりの時間が必要とされる。そのため、自分の所
属している学年だけでなく、他の学年の指導においても、それぞれの教員がその持ち味を発揮で
きるよう配慮している。
例えば、「総合的な学習の時間」の指導では、飼育・栽培に関する内容、情報に関する内容な
ど、内容により専門性の高い教職員がその指導に関われるようにしている。
(2)全体を見て動く
小規模校では、内部資源に制限が大きいため、必然的に一人一人の守備範囲は広くなる。
学校が現有する力をフルに発揮するためには、一人一人が全体を見て動くことが重要である。
校長はこの点について、特別な「指示」はせず、教職員に任せている。日常的にそうした雰囲気
の中に身を置いていると、全体を見て動くことが自然と身に付いてくるという。
例えば、会議の資料や配布物等の準備も、特定の人への負担が大きくなり過ぎないよう協力し
合って行っている。管理職であっても印刷や綴じ込みなどを率先して行っている。そうした姿を
見ることで、自分の仕事だけでなく同僚の仕事に対しても自然に目が向き、現在の学校としての
動きが分かるようになるという。
配慮を要する児童への対応も、担任ばかりでなく全員で行っている。教職員数が少ないため、
基本的に6名の教員が授業をしていると、臨機応変に対応できる教員は限られる。そのため、担
任や学年以外であっても積極的にかかわり、指導に当たることが求められる。小川南小学校では、
校長、教頭、教務主任も、不登校気味の児童宅への家庭訪問をしている。「一人一人の子どもを
教職員全員で育てる」という意識をもち、日々の指導に当たっているのである。
学校に対する保護者の要望はもちろんのこと、学年や学級への要望等への対応も、主に教頭、
教務主任が担当している。普段の学校生活で生じる一つ一つの課題に、多くの教職員で取り組む
仕組みが自然と作られ、学校規模に応じた柔軟な組織運営がなされている。
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2 コミュニケーションを基盤とした同僚性の育成
(1)なんでも言える人間関係づくり
コミュニケーションを活性化するための具体的な手立てとして、校長は「まめな言葉かけ」を
実践している。時には、放課後等に校長が作った料理を食べながら談話することもあるという。
また、職員室の一部に談話できるスペースを設け、話がしやすい雰囲気作りも行っている。こう
したちょっとした工夫も和やかな雰囲気と会話を誘発する。
目指すのは「子どもの話題を共有し合う職場」「常に笑いのある職場」だということである。
一つ一つの問題を職員全員で共有化するためには、頻繁なコミュニケーションが必要になるが、
その素地を日々の学校生活の中で作っている。また、そのことは常に支え合い、助け合うという
学校の組織文化の形成にも大きく役立っている。
もちろん、言いにくいことをはっきり言わなければならない場合もある。「その都度、その場
で」を基本として、後に引きずらないような細かい配慮も行っている。こうしたことも同僚性を
高める上で大きく役立っている。
(2)人材の育成を通して
小川南小学校には、今年度、新規採用教員が赴任した。当人は学級担任の他、体育主任も務め
ている。この若い教員に対して、研究授業ではなく普段の授業の際に、先輩教員が「授業を見に
来なさい」と言葉をかけているという。また、集会時の並ばせ方についても、ベテランの先生が
機会をとらえて、さりげない助言をしているとのことである。それぞれの教職員が支援的な働き
かけを行い後輩を育成している。
また、教員が相互に学び合おうという雰囲気もある。今年度は、「心で感じ、表現できる子供
の育成~国語科における読み・書きの指導を中心に~」を学校課題のテーマに設定し、研究を推
進している。校内の研究授業も年3回ほど実施し、全員が授業を行っている。授業後は付箋を用
いたワークショップ型授業研究会を行い、活発に授業に関する意見交換を行っている。
3 地域に開かれた特色ある学校づくり
(1)地域のみなさんがボランティア
小川南小学校は、豊かな自然に囲まれている。また、地域の多くの方が同校の卒業生である。
学校関係の行事に対する保護者の出席率は90%を超える。そうした特徴を生かし、家庭・地域と
の連携による教育活動が活発に展開されている。
以下に、具体的な連携について実践事例を示す。
①田植え・稲刈り
学校から約200メートル離れた所に、保護者の所有する水田を借り、田植え・稲刈りを行っ
ている。田植えや稲刈りを実施している小学校は他にもあるが、小川南小学校の場合は、JA
の協力を全面的に得て実施している点に特徴がある。
水田を所有している保護者がJA青年部小川支部の部員であったため、JA側から「米作り
だけでなく、食育の指導の一環として協力させてほしい」との働きかけがあり、この事業が実
現した。
今年度の稲刈りは9月16日(水)に実施し、その様子は日本農業新聞にも取り上げられた。
この行事の実施計画の中から、目的と内容の一部を抜粋し、次に示す。(次頁)
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稲刈り実施計画
1目的
(1)稲刈りの学習を通して、米の生産過程を理解するとともに、
食べ物を大切にする心と農家の人々への感謝の気持ちを持つ。
(2)全校生で協力して作物を育てることを通し、勤労生産的態度
や協調性を養う。
※2場所、3日時、4服装、5準備(省略)
6内容及び日程
内
容
場所
事 1服装や準備物についての説明を聞く。
前 2稲刈りの目的についての説明を聞く。
1集合する。
実 2整列し、稲刈り前の話を聞く。
施 (1)校長先生の話
平成21年9月17日(木)の
日本農業新聞に紹介され
ました。
(2)JAの方のお話
(3)JA青年部の方のお話
(4)おにぎりを頂く。
(5)石井さんのお話
(稲の刈り方の説明)
(6)担当者の話
JAの方の説明を聞く児童
5年生の社会科の授業「日本の食料生産」では、米づくりについて学習する。借りている水
田までの距離が200mと近いこともあり、草取りや稲の成長の様子の観察など、学習との関連
も図っている。このように、田植えや稲刈りの体験だけではなく、教科の学習とも関連させ、
充実した指導に結び付けている。外部のプラスの要因を、教育活動と密接に関連させていると
言えよう。
②絵本の丘体験活動
那珂川町には、絵本作家いわむらかずお氏の「いわむらかずお絵本の丘美術館」がある。小
川南小学校からは車で約20分の距離である。前校長が、ぜひ学校の教育活動にいわむら氏の協
力を仰ぎたいと依頼したところ、いわむら氏の快諾を得られた。
平成20年度は4回、21年度は3回、絵本の丘美術館を訪れ、いわむら氏と共に自然に親しむ
活動や絵本作りの活動を行った。
まず、美術館内のフィールドの自然散策を行い、「自然とのかかわり方」について考える。
具体的には、ただひたすら、自然をじっくりと観察する。この活動を通して、自然の美しさや
不思議さに感動する心が生まれるのだという。そして、絵本作りの活動では、絵でお話を作っ
ていく活動について、いわむら氏から直接指導を受ける。
外部環境に目を向け、地域の優れた教育力を活用した取組の好事例である。次に、この行事
の実施計画の一部と、活動の様子、手作り絵本の作品例を示す。
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平成21年度第3回いわむらかずお絵本の丘美術館見学・散策実施計画
小川南小学校
1ねらい
・雑木林や小動物をテーマに絵本作りをしているいわむらさんの世界
に親しみ、絵本作りへの意欲をもつ。
・絵本の丘美術館フィールド内の自然に触れ、生き物の姿や木・草花を
観察・スケッチすることで、自然の美しさや不思議さ生命の尊さなど
に感動する心をもつ。
・自然保護や公共の場でのマナーを守り、行動することができる。
2 見学場所
いわむらかずお
那珂川町小砂3097
絵本の丘美術館
TEL0287(92)5514
3 期日
平成21年10月23日(金)1校時~4校時
(2)顔の見える関係を大切に
小川南小学校の学区の世帯では、同校に通学する児童がいなくても、1名は同校後援会の準会
員となっている。運動会や夏祭りといった行事は、学校行事であると同時に地域のイベントでも
ある。
行事ばかりではなく、日常的にも多くの支援を受けている。例えば、午後2時30分になると、
児童の下校が始まることを知らせる一斉放送が学区内に流れる。すると、時間の許す地域の住民
が通学路に出てきて、児童の下校を見守ってくれる。このように地域の全員が学校の応援団にな
っている。
だからこそ、普段から地域の住民との良好な関係づくりに配慮しなければならない。校長は、
教職員に、地域の人への「あいさつ」を励行するよう常々話すと同時に、自ら積極的に会話をす
るよう努めている。その会話の中には、学校に対する有益な情報や要望等も含まれる。
顔の見える関係を大切にすることで、学校は外部から多くの支援を受けることが可能となり、
結果的に学校と地域との信頼関係の構築に結び付いている。
取材を終えて
小川南小学校では教職員の得意分野や地域の特性等をよく把握し、職場内のコミュニケーショ
ンを重視しながら教育活動を充実させている。特色ある学校づくりには、内部環境や外部環境に
着目することが必要であるが、今回の取材を通して、そのことの重要性を再確認した。同僚性の
構築や地域との連携を考える際に参考になるものと思われる。
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3-2
地域や保護者と学校の双方向の連携を生かして生徒の育成をめざす学校経営
宇都宮市立陽南中学校
■取組のポイント
○地域や保護者に学校や生徒の様子を効果的に伝える工夫をすることで、学校に対する理解と
協力を得ています。
○学校行事と地区行事を1枚のカレンダーにすることで、生徒の地区行事への積極的な参加や
地域や保護者の学校行事への協力を得ることに結びついています。
○地域や保護者の学校に対する協力体制が整えられており、様々な形で支援を受けています。
○学校評価システムを地域と学校を結ぶコミュニケーションツールとして活用するとともに、
学校の自己改善能力を高める手段として役立てています。
■学校の概要
陽南中学校は、宇都宮市の中心部からやや南に位置する生徒数800名を超える大規模校である。
PTA会長経験者が地域協議会の会長を歴任するなど、学校の方針や活動に対する地域の理解と協
力を得やすい体制があり、校区内の小学校4校や地域のコミュニティーセンターと連携した行事を
継続して行っている。保護者や元保護者の有志による協力体制も整っており、学校支援ボランティ
アとして、校内で生徒と共に活動する機会も多い。また、生徒が地域内で校外ボランティアとして
活動できる場も数多く設定されている。
宇都宮市の学校評価のシステム(うつのみや学校マネジメントシステム)を地域と学校を結ぶ双
方向のコミュニケーションツールととらえ、自校化して活用することにより、教育活動を充実させ
ている。
1 地域・保護者と学校との双方向の協力体制の構築
(1)学校の情報を視覚化して発信
陽南中学校では、学校目標や生徒の実践の様子を視覚化したパンフレットを、保護者や地域に
広く配布している。これにより、学校の今年度の取組の重点などに対する、保護者や地域に方々
の理解が深まり、校内や校外で様々な活動を行う際、支援が得やすくなった。このように、この
パンフレットは、学校と家庭、地域との風通しのよい関係づくりにも役立っている。
図1
保護者・地域配布用学校概要(平成21年度版)
また、年に数回実施している公開授業(授業参観)の際には、あらかじめ授業のポイントを示
したプリントを保護者や参観者に配布している。これにより、保護者や参観者からの意見や感想
がより多く寄せられるようになった。
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(2)学校行事と地区行事を1枚のカレンダーに集約して活用
陽南中学校と校区内の4つの小学校、及び地区内の生涯学習センターの年間行事予定をA3版
一枚にカレンダーとしてまとめた。(図2参照)
これを教職員、生徒、保護者、地域の関係者に配
布することで、年間行事予定の様子が視覚的にとら
えられるようになり、関係者の間で広く活用されて
いる。このカレンダーの利点としては次のような点
が挙げられる。
①学校の部活動と校外の行事との調整が図りやす
くなったため、生徒自身も予定が立てやすくな
り、様々な校外の行事に積極的に参加できるよ
うになった。
生徒が地区体育祭の補助員として協力
②保護者や地域の方々が、年間を見通して、それ
ぞれの立場で学校行事との連携を図りやすくな
り、校外活動やボランティア活動の計画を立てやすくなった。
このカレンダーについては、地域の行事担当者等から、とても便利であるとの声が寄せられて
おり、好評である。
図2
中学校区地域カレンダー(抜粋)
(以下省略)
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2
学校支援ボランティアによる活発な学校への支援
陽南中学校では、保護者や元保護者の有志が、それぞれのグループを組織して、学校での教育活
動の支援を行っている。
そのほかにも、学校支援ボランティアとしての募集を行い、地域コーディネーターと連携しなが
ら様々な活動を行っている。
主な有志グループの活動
・青葉の会・・・PTAの元役員が中心となって組織されている有志のグループ。
バザーでの模擬店の出店やイベントの運営協力、日本伝統文化継承のための
お茶の指導等の活動を行っている。
・おやじの会・・生徒の父親が主となって組織されたグループ。
学校施設修繕活動、生徒の地域行事参加への支援(送迎、物資運搬等)、部
活動との交流などの活動を実施している。現在50名程度の会員がいる。生徒
指導上の問題が続いた当時のPTA会長が発起人となって組織化され、現在
に至っている。
有志グループの活発な支援
学校支援ボランティア募集のチラシ
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3 学校評価システム(うつのみや学校マネジメントシステム)の自校化
(1)学校評価を活用するためのシステム化
陽南中学校は、学校評価を早期から実践してきており、現在では「うつのみや学校マネジメン
トシステム」を自校化して成果に結びつけるなど、学校評価の先進校となっている。以下に1年
間のマネジメントサイクルにおける実践内容を簡単に示す。
C:評価(前年度)
・教員、生徒、保護者、地域住民(民生委員、地域協議会等、計40名以上)による学校評価
を実施し、データ収集を行う。
A:改善(前年度)
・数値目標に照らし合わせて学校評価を検証し、差の大きいところ(課題)を焦点化する。
・年度末に、会議を重ね、検証結果や反省点等からの課題を焦点化し、改善案を定める。
P:計画(今年度)
・学校評価により焦点化された改善案を、教員評価の個人目標に反映する。
D:実践(今年度)
・全職員で焦点化された課題を共有し、共同歩調で実施する。
このように、学校評価の結果から、学校が次年度に解決を目指す課題を焦点化することで、全
職員が共通理解し、実践及び改善につなげている。学校評価を、自校の自己改善能力を高める一
つの手段としてとらえることが重要なポイントである。
(2)焦点化された改善案を教員評価の個人目標に反映
全職員が課題を共有し、共同歩調で取り組めるよう、教員評価の個人目標に、焦点化された課
題を反映させるようにシステム化し、全校体制で取り組んでいる。その結果、例えば、生徒指導
など緊急の問題発生時に、学年を超えて全校体制での対応ができるなどの成果につながっている。
(3)学校評価のコミュニケーションツールとしての活用
学校評価をスタートさせた当初は、評価者である保護者や地域の方から、「学校や中学生の取
組が見えない、分からない、回答できない」という声が多かった。そこで、改善に向けて、毎月
の学校だよりの配布をはじめとして、学校教育の取組を保護者や地域の方に公開する機会をつく
り、家庭や地域を巻き込んだ取組を行ってきた。また、生徒が校外で活動する場を積極的に設け
ている。
その結果、生徒に対する保護者や地域の方の見方は肯定的なものに変化してきた。保護者や地
域の方の学校教育への理解が深まり、より協力的で建設的な提案などが寄せられるようになり、
地域とのコミュニケーションが活発になった。そして、協力が得やすくなると、日常的に地域の
方が学校に出入りし、教育にかかわることができたり、生徒が校外で活動する範囲が広がったり
するなどの相乗的な成果が得られ、開かれた特色ある学校づくりにつながっている。
まさに、「学校評価」を地域と学校を結ぶコミュニケーションツールとして活用している例と
いえる。
取材を終えて
陽南中は大規模校であり、生徒はもちろんのこと、保護者と元保護者、卒業生も大勢いる。
つまり、保護者や地域には、潜在的に学校に協力しようと思っている方もそれだけたくさんい
るということになる。この事例からは、その地域の力(教育力)を、学校の意図的な工夫によ
り、学校教育に取り込んで生かしていることを感じた。また、学校評価を保護者や地域と学校
をつなぐ「コミュニケーションツール」として活用ていることを学んだ。
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ダウンロード

第3章 保護者、地域との連携 3-1 小規模校の特徴や地域の実態を生かし