協力解を遵守することと裏切ることの利潤の差を無限期間にわたって考えるべきである
産業組織論 第8章
寡占企業の理論(3)
ーーー協力の可能性と
フォーク定理ーーー
逸脱する
逸脱する
1
2つの企業が協力する可能性
・ 2つの企業が協力したらどれだけの利潤
が得られるだろうか。
・ 協力することは個別の企業にとって最善
の戦略だろうか。
・ 企業の長期戦略は協力をもたらすだろう
か。
・ 無限解繰り返しゲームとフォーク定理
2
非協力における均衡
クールノー均衡(C)、シュタッケルベルク
均衡(S1)、および(S2)は、ともに相手企
業と結託をしない、あるいは協力しない
条件(すなわち、非協力)での均衡であ
る。
3
協力すると最大利潤は
どれだけ得られるか
2つの企業が協力する
共同利潤を最大にする
最大利潤はいくらになるか
4
複占モデルの前提
5
共同利潤を求める
6
共同利潤の最大化
7
共同利潤最大均衡
8
数値例の場合
9
協力の可能性を探る
10
要求水準を高く
11
数値例で協力の可能性を確認
πJM=π(12) =144
両企業は生産量6で利潤72を獲得できる
均衡に結託(協力)できる誘因を持つ。
12
協力することが有利だろうか
13
企業1は考える
企業2が生産量6を遵守するとき、
企業1は、生産量6を生産するよりも、
別の生産量(たとえば、9)を選ぶと利潤
を大きくできる。
14
数値例で確認する
15
逸脱は有利!
企業1は共同利潤最大均衡を遵守しない
で(逸脱することにより)生産量9で、利潤
81を得ることができる。
このとき、企業2の利潤は
π2(9,6)={24-(9+6)}x6=54
16
企業2も逸脱すると得する!
企業2も共同利潤最大均衡を遵守しない
で(逸脱することにより)生産量9で、利
潤π2(6,9)=81を手にすることができ
る。
このとき、企業1は利潤π1(6,9)= 54
を得る。
17
自分だけ逸脱できれば利潤を増
加できるが両者が逸脱するとクー
ルノー均衡のみが確信できる
企業1も企業2もともに、単独で逸脱するこ
とができれば、自分の企業の利潤を大きく
できる。
両社とも逸脱して競争すると、クールノー
均衡のみが確信でき、利潤の組(64,64)
が得られるだけである。
18
ゲーム理論を用いる分析
ゲーム論で考えてみる
フォーク定理
19
ゲーム論で考えてみる
表8.1は一回限りのゲーム(one shot
game)、あるいは基本ゲームを示す。
利得を一般的に表現したものが表8.2で
ある。
20
戦略型ゲームで表現する
逸脱する
逸脱する
21
一般的な表現
逸脱する
逸脱する
22
一回限りのゲームならば2つの
企業はどうするか
相手企業のどのような戦略( 「協力する」
または、「逸脱する」 )に対しても、「協力
する」ことを 選ばず、「逸脱する」方が自
分の企業の利潤が多くなる。
23
予想できる結果!
結局、両企業とも逸脱する。
結果として、協力すれば実現できる共
同利潤最大均衡ではなく、クールノー
均衡に甘んじなければならない。
24
無限回繰り返しゲーム
基本ゲームを無限回繰り返す場合を考
える。
これを無限回繰り返しゲーム(infinitely
repeated game)という。
25
クールノー均衡以外に
別の均衡がある!
毎回毎回、クールノー均衡を繰り返す
解は、この無限回繰り返し複占ゲー
ムの均衡点である。
そのほかにも均衡が存在しているこ
とが知られている。
26
表8.1の数値を例にする
第t回目のゲームは、第t期の期初に実
行され、利得(ここでは利潤額)も第t期
の期初に得られるものと仮定する。
27
表8.1
逸脱する
逸脱する
28
引き金戦略 その1
次のような戦略を両企業がとる:
第1回目は協力解を遵守する。
自分及び相手企業が(t-1)回目まで
協力解を遵守すれば、自分は第t回目
に協力解を遵守する。
29
引き金戦略 その2
それ以外のとき、すなわち、もし自分
または相手企業が第(t-1)回目まで
に1回でも逸脱すれば、自分は第t回
目に逸脱し、第(t+1)回目以降も逸脱
を続ける。
30
お互いに引き金戦略を用いることを
お互いに知っている
このような戦略を「引き金戦略(trigger
strategy)」という。
両企業とも、相手企業が「引き金戦略」
を用いることを知っているものとする。
31
協力解を遵守することと逸脱す
ることの利潤の差を無限期間に
わたって考えるべきである
第 t 回目に
企業1が始めて協力解から逸脱すること
による利潤と、
協力解を遵守することによる利潤の差は
9(=81-72)である。
32
割引要素と割引率
• 現在から1期間後の1万円と同等と思う現
在の金額δ万円を考えてください。このとき、
δを1期間当たりの割引要素(discount
factor) または割引因子という。
• また、(1+r)δ=1、すなわち、
r=1/δ-1=(1-δ)/δ
で求められる r を割引率(discount rate)とい
う。
33
%表示の
割引要素
割引率(r)
割引率
(X)
1
0.000
0.0
1
0.000
0.0
0.95
0.053
5.3
0.9
0.111
11.1
0.9
0.111
11.1
0.8
0.250
25.0
0.7
0.429
42.9
0.5
1.000
100.0
34
割引率の分布(アンケート結果)
割引率(r)
割引率
1.000
0.900
0.800
0.700
0.600
0.500
0.400
0.300
0.200
0.100
0.000
割引率(r)
1
2
3
4
5
回答者
6
7
8
2006年のデータ
35
割引率の分布(アンケート結果)
割引率(r)
割引率
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
-0.1
-0.2
-0.3
-0.4
-0.5
-0.6
割引率(r)
1
3
5
7
9
11 13 15 17 19 21
回答者
2008年のデータ
36
%表示の
割引要素(X)
割引率(r)
割引率
2
-0.500
-50.0
1
0.000
0.0
1
0.000
0.0
0.99
0.010
1.0
0.95
0.053
5.3
0.9
0.111
11.1
0.9
0.111
11.1
0.9
0.111
11.1
0.8
0.250
25.0
0.8
0.250
25.0
0.8
0.250
25.0
0.8
0.250
25.0
0.7
0.429
42.9
0.7
0.429
42.9
0.5
1.000
100.0
0.5
1.000
100.0
0.5
1.000
100.0
0.5
1.000
100.0
0.5
1.000
100.0
0.5
1.000
100.0
0.5
1.000
100.0
2008年のデータ
37
割引率の分布(アンケート結果)
割引率
2009年のデータ
120
100
80
60
割引率
40
20
0
1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25
38
割引要素(アンケート結果)
2011年度
• δの値
0.4 0.5 0.5 0.5 0.6 0.6 0.7 0.7 0.7
0.7 0.75 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.9
0.9 0.95 0.95 0.95 1
39
割引要素のデータ
2011年度
割引要素
1.2
1
0.8
0.6
割引要素
0.4
0.2
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
40
割引率(%表示)のデータ
2011年度
割引率(%表示)
160.0
140.0
120.0
100.0
80.0
割引率(%表示)
60.0
40.0
20.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
41
割引率と割引現在価値
• 1期間当たりの割引率を r とする。
• いま、1期間当たり r の利率で運用できる
資本市場があるとする。すると、現在 X 万
円の資金は1期間後には(1+r)X 万円と
なる。
42
割引現在価値
• したがって、1期間後のA 万円は現在時点
の A/(1+r) 万円に等しい価値を持つ。
• A/(1+r)を(1期間あたりの割引率がrの
とき、1期間後に得られるA万円の)割り引
き現在価値(discounted present value)という。
• δ=1/(1+r)だから、1期間後に得られ
るA万円の割引現在価値はδAとも表示で
きる。
43
割り引き現在価値
• 以下では、現在時点を第1期期初とする。
• 第 t 期期初に得られる(すなわち、(t-1)
期間後の)B万円の(第1期期初における)
割引現在価値は
B/(1+r)t-1または δt-1B
である。
44
割り引き現在価値
• 現在時点が第0期期初の場合は次のよう
になるので注意すること。
• 第 t 期期初に得られる(すなわち、t 期間
後の)C万円の(第0期期初における)割引
現在価値は
C/(1+r)t または δtC
である。
45
割引現在価値を求める
46
企業1の逸脱を知った
企業2の対応
第t回目に企業1が逸脱したことを知った
企業2は、「引き金戦略」により、第(t+1)期
以降逸脱を続ける。
47
企業2の対応を織り込んで
企業1は逸脱を続ける
これに対する企業1の第(t+1)回目以降
の戦略もやはり逸脱戦略が最適になる。
第(t+1)期以降に相手企業の報復による
利潤の損失は、毎回8(=72ー64)であ
る。
48
損失の割引現在価値を求める
49
暗黙の協力条件を求める
式(8.9)と式(8.10)より、
G(r)>L(r)ならば、企業1の立場から
は協力解から逸脱したほうが有利であ
り、
逆に、G(r)<L(r)ならば、暗黙的に協
力解を遵守したほうが有利となる。
50
協力の条件を主観的割引率で表す
51
協力の条件を割引要素で表す
• δ=1/(1+r)を考慮する。
• r<8/9≒0.889
より、1+r< 8/9+1=17/9
• したがって、協力の条件を割り引き要素δ
で表せば、
δ>9/17≒0.529
となる。
52
「明日がある」と考える子々孫々企業
と「今日だけ」を考える江戸屋企業
主観的割引率が小さい(将来をほとんど
割り引かない)企業は、協力解を暗黙的
に遵守する誘因を持つ。
主観的割引率が大きい(将来を大きく割
り引き、現在時点を重要視する)企業
は、協力解から逸脱する誘因を持つ。
53
暗黙的な協力の可能性あり
協定を文書などで陽表的に締結しない
でも、協力解を暗黙的に採用する可能
性がある。
54
フォーク定理
無限回の繰り返しゲームを考えると、
囚人のジレンマとなっているゲームで
の非協力解(たとえば、クールノー均
衡)で得られる以上の利得を、ナッシュ
均衡として実現できる。
55
企業1の利潤の流列
逸脱する
56
フォーク定理の別の説明
rを企業1の主観的割引率とする。
Vで、(t-1)期まで協力解を遵守する
ことから得られる利潤の流れの割引現
在価値を表す。
57
企業1が第t期ではじめて逸脱する
いま、企業1が第t期において、初めて
逸脱することによる利潤の流れの割引
現在価値(V1D)を求めよう。
58
逸脱コースの割引現在価値
59
遵守コースの割引現在価値
60
協力解遵守の条件
61
主観的割引率の条件で示す
62
企業2も同様の条件で協力する
同様にして、企業2の主観的割引率に
対して、企業2が常に協力解を遵守す
る条件を導くことができる。
企業1と企業2の費用関数が同じである
ので、その条件は同一となる。
63
参考文献 その1
64
参考文献 その2
65
参考文献 その3
66
参考文献 その4
67
第9章へ io_(ch09).ppt
参考文献 その5
68
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