韓国の日本語学習者と
日本の韓国語学習者間における
協働型学習モデルの構築
宮城学院女子大学
澤邉裕子
2009年9月26日
日本語教育学会 関西地区研究集会
1.研究の目的
• 日本語教育及び韓国語教育の教育目標を達
成する手がかりとなる協働型学習モデルの
提示。
2.高校における日本語教育と韓国語教
育の接点と協働型授業デザイン
韓国における日本語教育 日本における韓国語教育
「2007年改訂教育課程」
「高等学校の中国語と韓国朝鮮語
学習のめやす(試行版)」
文化理解・態度の育成
基礎的コミュニケーション能力の育成
積極的に交流に参加する態度の育成
生きたコミュニケーション活動と文化理解
学習者志向・学習者参加型の活動
日韓高校生間の交流授業の先行研究
・社会科教育や異文化間教育の分野での
先行研究は数多い。
・言語教育の枠組みの中で実施されたものは
大学生を対象に行った阪堂(2004)の他には多
くない。
・特に中等教育段階の日本語学習者が参加し
た協働型授業についての研究は管見の限り
これまであまり行われていない。
3.協働型学習の概要
• 2008年4月から2009年1月まで実施
• 韓国側→ソウル市内のS高等学校
放課後学校の日本語クラス
日本側→仙台市内のM高等学校
高大連携の「コミュニケーションの
ための日本語と韓国語」クラス
• 特徴
「トピックベースの課題シラバス」の使用
「協働型学習」の形態
トピックベースの課題シラバス
• 韓国の日本語教育と日本の韓国語教育カリ
キュラムの共通の指針の上に成り立ち、生徒
の関心の高い話題とそれに関して情報や気
持ちを伝え合うコミュニケーション機能を重視
したシラバス(澤邉2008)
トピック別 作成した資料
実施月
トピック
作成した資料
4月
自己紹介
パワーポイントに写真や音声などを貼り付けて作成
した資料
5月
食べ物
好きな食べ物を写真と説明文で紹介した資料
6月
かばんの中
自分のかばんの中身を写真と説明文で紹介した
資料
9月
夏休みの
生活
夏休みの想い出を写真と説明文で紹介した資料
10月
学校生活
一日の生活や行事などについて写真と説明文で
紹介した資料
11月
将来の夢
自分自身将来の希望について写真と説明文で紹介
した資料
12月
自由研究
交流活動を通して関心を持ったテーマについての
レポート
情報・気持ちを伝える資料
表現
理解
日本の高校生
学習言語:韓国語
母語:日本語
七
つ
の
話
題
分
野
韓国の高校生
学習言語:日本語
母語:韓国語
理解
表現
情報・気持ちを伝える資料
日韓高校生間の協働型学習のイメージ
協働型学習
池田・館岡(2007)
協働学習の主要な概念要素
・対等性
・対話のプロセス
・互恵的な創造
日本の高校生
日本の高校生
学習言語:韓国語
母語:日本語
学習言語:日本語
母語:韓国語
4.研究方法
・日本側の高校生(JS)6名と韓国側の高校生
(KS)14名を対象に、自由記述型アンケート
と半構造型インタビューの実施。
・質的研究法のグラウンデッド・セオリーを
援用して分析。
分析方法
一人一人の文字化資料を読み込み、概念を抽出す
るコード化
抽出されたコードを意味内容の類似性に従って
カテゴリーに分類
核概念の抽出後、核概念に沿う概念に関係する
コード化
5.結果
生成されたカテゴリー
◆核概念
仲間の存在
◆3つのカテゴリー
《学びの実感》 《学びの発展》 《人間関係の形成》
◆13の下位カテゴリー
生成されたカテゴリー1:学びの実感
カテゴリー
下位カテゴリー
学びの実感
楽しい
切磋琢磨しながら学ぶ
コメントの例
交流活動は楽しくて仕方なかった (JS29-1)
切磋琢磨しながら勉強できたから韓国に
興味が持てた(JS-29-5)
言語への気づきを得る 強調するときにカタカナを使うということ
がわかって「そうなんだー」と思った(KS1-1)
言語能力が向上する
最初は読めなかったものが急に読めるよ
うになった(JS-18-2)
違いや共通点を知る
浴衣を着ている様子とかをリアリティを
持って知ることができた(KS-8-1)
生成されたカテゴリー2:学びの発展
カテゴリー
下位カテゴリー
コメントの例
学びの発展 イメージが変化する 今まで持っていたイメージとは違うことを
知った(JS-39-3)
自文化を見つめ
直す
日本人として自分の国のことを知る機会
になった(JS-17-3)
新たな関心分野を 韓国の生徒が使う日本語に興味を持った
(JS-36-5)
持つ
自律学習をする
この夏休みにひらがな、カタカナ、漢字を
勉強した(KS-8-2)
交流活動に関心を 良い日韓関係を築いていきたい
(JS-30-2)
持つ
生成されたカテゴリー3:人間関係の形成
カテゴリー
下位カテゴリー
コメントの例
人間関係の 好感を持つ
形成
勉強も一生懸命して誠実でとても親切そ
う(KS-1-3)
共感を持つ
かばんの中身から同じ高校生だなと思っ
た(JS-19-2)
相手を尊重する
韓国人について知ろうとしているから、そ
れが私にとってはすごい(KS-3-3)
カテゴリー間の関連図
学びの実感
学びの発展
楽しい
イメージが変化する
切磋琢磨しながら学ぶ
言語への気づきを得る
仲間の
存在
言語能力が向上する
自文化を見つめ直す
新たな関心分野を持つ
自律学習をする
交流活動に関心を持つ
違いや共通点を知る
人間関係の形成
好感を持つ
共感を持つ
相手を尊重する
6.考察
日本語教育と韓国語教育に共通する目標
文化理解・態度の育成の観点から
基礎的なコミュニケーション能力育成の
観点から
積極的に交流活動に参加する態度の育成の
観点から
7.おわりに
【本研究が成したこと】
限られた対象から得た研究結果ではあるが、
海外の日本語学習者との協働型学習の一つの
モデルを示した。
【今後の課題】
教師間の協働についても分析を行い、
教師の授業デザインによる学びの違いを明らかに
すること。
引用文献
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池田玲子・舘岡洋子(2007)『ピア・ラーニング入門』ひつじ書房
教育人的資源部(2006)『外国語科教育課程最終告示本』
国際交流基金(2008)『2006年海外日本語教育機関調査』
国際文化フォーラム(2007)『高等学校の中国語と韓国朝鮮語学習
のめやす(試行版)』
西條剛央(2007)『ライブ講義 質的研究とは何か SCQRMベーシッ
ク編』新曜社
澤邉裕子(2008)「高校生を対象とした日韓交流授業のシラバス開
発に向けて-韓国における日本語教育と日本における韓国朝鮮語
教育の接点から-」『宮城学院女子大学研究論文集』106号、
pp.29-43
阪堂千津子(2004)「発信型コミュニケーションと相互理解をめざした
ビデオ交流授業」『言語文化』7(特集号)、pp.167-187、同志社大
学言語文化学会
文部科学省(2007)『平成18年度高等学校等における国際交流等の
状況について』
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