198
D - 06
第 42 回地盤工学研究発表会
(名古屋) 2007 年7月
粒子構造の座屈に着目した粒状材料の破壊と応力誘導異方性
粒状材料、構造、座屈
名古屋工業大学 学生員 ○松本 崇
名古屋工業大学 国際会員 前田健一
名古屋工業大学 学生員
平林大輝
名古屋工業大学 学生員
福間雅俊
Macro
Fabric
1. はじめに
stability of fabric
N
著者らは、粒状材料のマクロの挙動と配位数(粒子の平
dense
CSL
e
loose
of fabric
均接点数)Nc や異方性の強さであるファブリックテンソル
loose
CSL
σ
(最大と最小の主値 F1 と F2)などの構造との関係について
dense
N F /N F = F /F
調べると、図-1 のようでありマクロな挙動の限界状態が構
σ
anisotropy
造の限界状態に支配されていることを明らかにしている。
F :F =σ :σ
τ /σ
dense
σ /σ
マクロなせん断載荷と伴に配位数 Nc は低下し、粒状体内部
N (F -F )
loose
の粒子構造は安定性を失う。特に最大主応力σ1 方向には構
Critical value
γ
造は維持されるが最小主応力σ2 方向に構造が失われるとい
γ
う異方性が発生する。つまり F1 と F2 との差が増加し応力誘
図-1 マクロ挙動の限界状態と粒子骨格構造の限界
導異方性が発生することで粒状材料は非線形変形を生じ破
壊に至ることが分かった。異方性の発展にはルールが存在す
1.0
-10
ることを明らかにした 1)。一方で、粒状材料の誘導異方性や
破壊のメカニズムは十分に分かっているとはいいがたい。
0.5
-5
そこで本研究では、粒状材料の破壊メカニズムを再考し、
最も影響力をもつといわれる粒子間摩擦係数と粒子回転の効
果について DEM を用いて検討した結果を報告する。
0
0
tanφμ (φμ [deg.])
2. 解析手法
0.0 (0.0)
cl03(non-circular)
0.25 (14.0)
解析は二次元 DEM によって側方応力一定の下で二軸圧縮
Dense, σc0=0.1(MPa)
0.50 (26.6)
1000 (89.9)
試験を行った。円形粒子(cl01)の他に粒子を多角形配置し
-0.5
5
0
2
4
6
8
10
連結させ非円形粒子(三角形、六角形の場合をそれぞれ cl03、
Normal Strain, εyy (%)
cl06 の表す)を用いた。本報告ではそれぞれの試料の最も密
図-3 粒子間摩擦の異なる変形・破壊挙動(非円
詰めの供試体で側方向応力σc0=0.1MPa の結果についてのみ記
形):粒子回転を拘束しない場合
述する。円形粒子は転がり摩擦のような回転抵抗を全くもた
ないが、非円形粒子では凹凸の引っ掛りが生じるため回転抵
1.0
tanφμ (φμ [deg.]) -10
抗が働く。また、数値実験では理想的な状態以外にも極端な
0.0 (0.0)
0.25 (14.0)
状態も再現できるので、粒子の回転を完全に拘束し粒子間の
0.50 (26.6)
1000 (89.9)
相対変位がすべりのみによるケースも計算し比較した。この
0.5
-5
場合、力学挙動は粒子間摩擦特性に大きな影響を受けるので、
粒子間摩擦係数 tanφμを 0~1000(摩擦角φμ=0°~89.9°)とい
0
0
う極端に広範な値について検討も試みた。
cl01(circular particle)
3. 解析結果および考察
Dense, σc0=0.1(MPa)
図-2、3 は粒子回転を特に拘束しない粒状材料の挙動を円
-0.5
5
0
2
4
6
8
10
形、非円形粒子の場合についてそれぞれ示している。粒子形
Normal Strain, εyy (%)
状によってせん断初期の間隙比は同じに設定されている。い
図-2 粒子間摩擦の異なる変形・破壊挙動(円
ずれも粒子間摩擦係数 tanφμが大きいほど、破壊時の膨張度
形):粒子回転を拘束しない場合
合いは高く強度も高い。一方、残留強度には(tanφμ=0 以外
は)tanφμの影響は見られない。また、円形よりも非円形の方
が高い強度を示している。ただし、tanφμ=0 であっても低いながらも強度を有するとともに、tanφμ=1000 の場
合では必ずしも強度は極端に大きいわけではない。破壊後はいずれも応力ひずみが振動しており準動的状態
になっていることがうかがえる。
つぎに、破壊時の内部摩擦φf と粒子間摩擦角φμの関係を整理した結果を図-4 に示す。回転を拘束しない円
c
m
c 1
c 2
m
m
1
2
for all material and test
condition
1
m
2
1
0.5
1
Failure behavior and stress-induced anisotropy with account for
2
Volumetric Strain, εv (%)
1
Volumetric Strain, εv (%)
Stress Ratio,τm /σ m
Stress Ratio,τm /σ m
c
0.5
2
2
T. Matsumoto, K. Maeda, H. Hirabayashi and M. Fukuma
buckling of particle column
(Nagoya Institute of Technology)
395
Internal friction angle at failure, φ f (deg.)
90
for circular
for non-circular
形粒子の場合、φμ<30°
Dense, σc0 = 0.1 (MPa)
P
で は φf>φμ と 常 識 的 な
P
P
P
75
結 果 にな る。 し かし 、
60
φμ>15-20°では φμによ
るφf の増加率は極端に
45
低 下 し 、 φμ>30° で は
30
φf<φμ の 関 係 と な り φf
Grain shape
cl01
は 35°程度に収斂して
cl03
15
cl06
rotation constraint
しまう。また、φμによ
contact force transfer
micro tensile
even if a micro tensile crack
cl01
even through sliding
crack due to
occurs, another contact bears
0
るφf の増加率の低下程
contact
buckling
column and bring ductile behavior
0
15
30
45
60
75
90
Friction angle at contact point,φμ (deg.)
度は、回転抵抗が発
揮され得る非円形粒
図-4 粒子回転効果が異なる場合の破壊内部 図-5 粒子骨格構造の座屈と回転抵抗に関する
子 の 方 が 弱 ま り 、 粒 摩擦角と粒子間摩擦角の関係
概念
子自体の回転が拘束
され場合にはほとんどの φμで φf>φμ となる。以上のことから、粒状
h
変形前
変形後
材料の破壊には粒子間すべりの影響もあるが粒子回転の効果が大
P
k
k
δ
きく、回転の拘束が強度を大きく増加させることが分かった。こ
れは従来の内部摩擦角の考え方が回転を全く考慮していないため
P ばね
l
a。
円形粒子
非円形粒子
であり、実際の回転しうる粒子の挙動を正確に追うことはできな
υ=a +v
いためである。以上のことを説明するには、図-5 のような柱子
D=2r
column 構造の座屈現象 2)を検討することが妥当とおもわれる。
ks
4. 連続体近似した粒状柱の耐力に関する解析および考察
図-5 の粒子 column 構造の変形を曲げ変形とせん断変形の両方を 図-6 Timoshenko column による粒子 column
の連続体近似
考慮する Timoshenko column(座屈荷重 PT)を用いて連続体近似し
3)4)
その変形・破壊特性を調べた (図-6)。初期形状は長さ l の sin
φμ=40deg.
Timoshenko column
関数で近似し、中点の初期たわみ a0 を与えた。比較のために Euler
1.0
column(実用梁)も考えた(座屈荷重 PE)。粒子性を考慮するた
めに、まず、DEM と同様に接点バネ kn, ks を考え、非円形粒子のよ
: collapse due to slip
うに接する二つの粒子間で接点が2つ存在する場合を考えた。バ
l /D = 3
0.5
l /D = 4
ネを2本設置しこの距離を 2h とするとこれが近似した連続柱の厚
l /D = 5
l /D = 6
さとなる。粒子直径 D に対する比率 2h/D が高くなるといわゆる曲
l /D = 7
げ剛性(粒子回転効果)が高くなる。弾性係数はバネ定数で表現
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
される。また粒子間の滑りを考えせん断力と軸力の比が想定する
δ/l
粒子間摩擦 tanφμを超えると柱は崩壊すると考えた(ks → 0)。
図-7 連続体近似 column の変形・破壊挙動
連 続 体 近 似 さ れ た column の 座 屈 荷 重 は 、 PE=2/3knD(πh/l)2 、
104
2h/D =0.01
PT=PE/(1+PE/ksD)となる。粒子 column 構造の大きさ(構成粒子数)
2h/D =0.03
103 Timoshenko column
2h/D =0.1
l/D の違いによる column 構造の変形・破壊挙動の例を図-7 に示す。 102
2h/D =0.3
1
2h/D =1.0
10
構成粒子数 l/D が小さいものほど耐力があり 6 個以上の column で
0
10
はほとんど挙動が変わらず存在しにくいことが伺える。図-8 には、 10-1
10-2
異なる回転抵抗度 2h/D について、設定したφμに対して発揮できる
10-3
column の最大耐力 Pu の関係をまとめている。回転抵抗度が高くな
l/D=5, a0/l=0.01 ks/kn=0.25
10-4
ると柱の耐力が大きくなっている。しかし、 φμ を 15°以上では
10-5
15
30
45
60
75
90
column の耐力の増加度は低く、φμ>30°では一定値で耐力は座屈強
Friction angle at contact point, φμ (deg.)
度で決まる。これらの結果は図-4 の結果と一致する。
5. おわりに
図-8 粒子回転効果が異なる場合の column
n
n
Ultimate bearing stress, Pu/D (MPa)
P/D (MPa)
0
本数値実験から粒状体の変形・破壊挙動は粒子間の滑りだけでなく、粒
最大耐力と粒子間摩擦角の関係
子構造の曲げ(粒子回転抵抗)に起因する座屈的崩壊に支配されることを証明した。この結果が誘導される異方性の限界
を与えるとともに、粒子構造の曲げ剛性つまり接点での引っ張り抵抗を与えることが効率的な土の補強法になるといえる。
参考文献: 1) Maeda, K. and Hirabayashi, H.: Influence of grain Properties on Macro Mechanical Behaviors of Granular Media by
DEM, Journal of Applied Mechanics, JSCE, Vol.9, pp.623~630, 2006., 2)佐竹正雄(1997): 粒子柱の座屈を考えたせん断帯
形成の一理論, 第 32 回地盤工学研究発表会, pp.479-480, 3)C. M. Wang, C. Y. Wang and J.N.Reddy (2005): Exact solutions for
buckling of structural members, CRC PRESS., 4)松本崇(2007 年度): 名古屋工業大学卒業論文.
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粒子構造の座屈に着目した粒状材料の破壊と応力