博士論文
試料作製・評価による希土類化合物
の研究
- 少 数 キ ャ リ ヤ ー 系 希 土 類 プ ニ ク タ イ ド Yb 4 As 3 及 び 希
土 類 水 素 化 物 SmH 2+δ を 例 と し て -
2009 年
12 月
中村
修
目
1
次
序論
1p
1-1 少 数 キ ャ リ ヤ ー 系 希 土 類 プ ニ ク タ イ ド
8p
1-2 Yb 4 As 3 及 び 関 連 物 質 の こ れ ま で の 研 究
9p
1-3 Yb 4 As 3 の 研 究 の 目 的 と 方 法
19p
1-4 希 土 類 二 水 素 化 物 概 説
20p
1-5 希 土 類 二 水 素 化 物 の 磁 性 概 説
26p
1-6 希 土 類 二 水 素 化 物 薄 膜 (RH 2+x )概 説 :
28p
薄膜の分光学的研究と応用について
2
3
4
1-7 SmH 2+δ の こ れ ま で の 研 究
34p
1-8 SmH 2+δ の 研 究 の 目 的 と 方 法
40p
実験方法
41p
2-1 試 料 の 同 定
41p
2-2 試 料 の 分 析
43p
2-3 電 気 抵 抗 、 磁 気 抵 抗 、 ホ - ル 効 果 の 測 定
46p
2-4 帯 磁 率 の 測 定
51p
2-5 比 熱 、 磁 場 中 比 熱 の 測 定
54p
2-6 反 射 及 び 透 過 率 の 測 定
59p
Yb 4 As 3 及 び そ の 関 連 物 質 の 作 製
63p
3-1 希 土 類 の 取 り 扱 い
65p
3-2 Yb 4 As 3 作 製 の 予 備 反 応
68p
3-3 坩 堝 の 加 工 と 電 子 ビ - ム 溶 接
72p
3-4 真 空 炉 (タ ン グ ス テ ン ヒ - タ )
74p
3-5 タ ン グ ス テ ン (W)及 び モ リ ブ デ ン (Mo)坩 堝 の 選 択
75p
3-6 W 、 Mo 坩 堝 法 に よ る Yb 4 As 3 及 び そ の 関 連 化 合 物 試 料 の 作 製
78p
Yb 4 As 3 及 び そ の 関 連 物 質 の 実 験 結 果 と 考 察
4-1 Yb 4 As 3 各 種 物 性 の 試 料 依 存 性
84p
84p
4-2 Yb 4 As 3 の 核 四 重 極 共 鳴 (NQR)の 測 定
111p
4-3 Yb 4 As 3 の 磁 場 中 比 熱
114p
4-4 Yb 4 As 3-x Sb x 及 び Yb 4 As 3-x P x の 比 熱
117p
4-5 Yb 4 Sb 3 及 び Yb 4 Bi 3 の 比 熱
125p
4-6 Yb 4 As 3 の 比 熱 : 10 K 以 下 の 振 る 舞 い の 考 察 (Yb 4 As 3 は 重 い 電
128p
子系か?)
4-7 Yb 4 As 3 の 帯 磁 率 の 説 明
141p
4-8 Yb 4 As 3 系 10 K 以 上 の 比 熱 に 関 す る 考 察 : フ ォ ノ ン パ ー ト に 関 す
142p
る問題と磁性部分に関する推定
5
SmH 2+δ 試 料 作 製 (薄 膜 試 料 を 中 心 と し て )
152p
5-1 SmH 2+δ 薄 膜 作 製 の 問 題 点
152p
5-2 試 料 作 製 手 順 と 製 造 装 置
155p
5-3 SmH 2+δ 測 定 に 使 用 し た 入 手 バ ル ク 試 料 の 分 析 結 果 及 び
168p
作製した薄膜試料とその分析結果
6
7
SmH 2+δ の 実 験 結 果 と 考 察
175p
6-1 SmH 2.16 ( バ ル ク ) の 磁 性 と 比 熱
175p
6-2 SmH 2+δ ( 薄 膜 ) の 分 光 学 的 測 定 と 伝 導 特 性
188p
本研究のまとめ
198p
APPENDIX
202p
引用文献
210p
公表論文リスト
序論
1
物質はその電気の流れやすさによって、金属、半導体、絶縁体等に分類できる。
これらの物性は、バンドモデルにより説明される。例えば、結晶固体中の電子が、
他の電子の影響を受けることなく、周期ポテンシャルをほとんど自由に運動する場
合、電子の波動関数はブロッホ関数となる。そしてこの電子の質量と結晶固体の
周期ポテンシャルを運動量依存性のある有効質量で置き換え、固体中の電子が
この有効質量の自由粒子として振る舞うとする有効質量近似は極めて有用であり、
バ ン ド モ デ ル の 成 功 例 で も あ る 。 又 、 有 効 質 量 の 概 念 は 、 単 純 な 金 属 ( Na, K, Cu,
Ag, Au, Zn, Cd, Al な ど ) の 比 熱 の 説 明 な ど に も 使 用 さ れ 、 そ の ゾ ン マ ー フ ェ ル ト
係 数 に つ い て 自 由 電 子 の 質 量 を 熱 的 有 効 質 量 で 置 き 換 え て 説 明 さ れ る [1]。 こ れ
らの金属中で電子間の相互作用を考える必要がないのは、高い電子密度のため
に ト ー マ ス ・ フ ェ ル ミ 遮 蔽 が 0.1nm 以 下 に 見 積 も ら れ る た め で あ る 。 一 方 、 バ ン ド
理論の立場から、固体中の電子が、原子に局在化していることを出発点とし、その
電子が結晶固体に広がり全体のエネルギーを下げ、系が安定化すると考えるタイ
トバインディングモデルも提唱されている。この場合も有効質量近似は成立する。
こ の よ う な バ ン ド 理 論 の 場 合 、 金 属 と 絶 縁 体 の 区 別 は 、 フ ェ ル ミ エ ネ ル ギ ー (E F )が
伝導帯と価電子帯のいずれかのバンド内にあるか、バンドギャップ内にあるかで
決 ま り 、 EF が バ ン ド ギ ャ ッ プ 内 に あ り 、 絶 対 温 度 零 度 で キ ャ リ ヤ ー 数 が 零 の 絶 縁
体 と な る も の を バ ン ド 絶 縁 体 と 呼 ぶ 。 金 属 か ら バ ン ド 絶 縁 体 へ の 転 移 は 、 0.K に お
けるキャリヤ-濃度が零になる、あるいはフェルミレベルが禁制帯に向かう転移で
ある。このようなバンド(バンド絶縁体や半導体)の概念及び前述の有効質量近似
は、半導体デバイス分野でも大変重要な概念となっている。金属、絶縁体以外に、
金属に比べてキャリヤー数の少ない半金属がある。これは、バンド絶縁体におけ
る価電子帯と伝導帯が僅かに重なっており、フェルミエネルギーが、価電子帯の
最上部と、伝導帯の最下部を横切って、価電子帯最上部にホールができ、伝導帯
最下部は電子が占有している場合に実現する。通常、金属より電気伝導度は低
い。
周期的なポテンシャルの中を動き回る電子が、不純物元素などのためにランダ
ムポテンシャルが増大した結果、電子は局在化して絶縁体となる。このような電子
の 局 在 化 を ア ン ダ ー ソ ン 局 在 と 言 い 、 Si 半 導 体 中 に P
(ド ー パ ン ト )を 入 れ た 系 な
ど で 研 究 さ れ た [2]。 ア ン ダ ー ソ ン 局 在 に よ る 絶 縁 体 は 、 フ ェ ル ミ レ ベ ル の 状 態 密
度 は 零 に な ら な い で、 キャ リ ヤ ー の 緩 和 時 間 が 零 に 向 か う タ イ プ の 転 移 で あ る。
[2]。
以上の考え方は、電子間の相互作用を無視している。ところが、電子間の斥力
- 1 -
が大きく、互いに局在して動かな い場合に 系のエネルギーを得する場合があり、
そのような場合に出現する絶縁体をモット絶縁体と呼ぶ。金属からモット絶縁体へ
の転移の場合、モット絶縁体近傍の金属相において、その金属相が絶縁相に近
づくにつれ、キャリヤー数が零に近づく場合と有効質量が増大する場合とがある
[3]。 モ ッ ト 絶 縁 体 は 、 電 子 間 の 相 互 作 用 が 強 く 、 一 種 の 強 相 関 電 子 系 物 質 で あ る 。
モット絶縁体の例で見られるように強相関電子系の物質群では、電子の運動はそ
の周辺の電子からおよぼされる斥力によって強く影響を受ける。そのため、半導
体 で あ る Si や 金 属 で あ る Al の よ う に 、 電 子 の 運 動 を 互 い に 独 立 で あ る か の よ う に
近 似 す る こ と が 出 来 な い 。 し た が っ て 、 Al や Au な ど の 通 常 の 金 属 に 見 ら れ な い
特異な物性を示すことが多い。
原 子 番 号 が 57(La)か ら 71 番 (Lu)の ま で の 15 種 類 の 元 素 は 、 ラ ン タ ノ イ ド 元 素
と 呼 ば れ る 。 こ れ に 電 子 構 造 に 類 似 性 の あ る 原 子 番 号 21(Sc)と 39(Y)を 加 え て 希
土 類 と し て 扱 わ れ て い る [4]。 Ce 以 降 の 元 素 は 、 内 殻 の 4f 電 子 を 持 つ 。 こ の 4f 電
子の動径分布関数は、水素原子の基底状態であるボーア半径より内側にあり、強
い 局 在 性 を 示 す 。 こ れ ら の 元 素 を 含 む 化 合 物 は 、 こ の 4f 電 子 同 士 お よ び 4f 電 子
と 伝 導 電 子 の 相 互 作 用 に よ り , 各 種 磁 性 、 高 濃 度 Kondo 効 果 、 重 い 電 子 、 価 数
揺動、超伝導などの多彩且つ興味深い物性が報告され強相関電子系分野の一
群をなしている。
こ れ ら の 多 彩 な 物 性 の 内 、 局 在 4f 電 子 と 伝 導 電 子 の 状 態 が 絡 み 合 い 、 有 効 質
量の極めて”重い電子”として遍歴電子が発現する状態は、現在の固体物理の大
きな研究テーマとなっており、本研究においても重要な概念となっている。以下に
この重い電子系の特徴的な振る舞いについてまとめる。
<重い電子系の特徴的な振る舞い>
通常の金属の場合、自由電子フェルミ気体近似において、低温側でその比熱
は
C p = γT + βT 3
(1-1)
β=(12π /5)Nk B /θ D
4
θ D :デ バ イ 温 度
kB : ボ ル ツ マ ン 定 数
N:原 子 数
γ: ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数
あるいは
C p /T = γ + βT 2
(1-2)
- 2 -
と表すことができる。ただし、 β は格子振動からの比熱の寄与を示す部分である。
ゾンマーフェルト係数 γ は、キャリヤー濃度 n と有効質量 m に対して
γ = (1/3)π 2 k B 2 D(E F ) = (1/3)π 2 k B 2 (3n/2E F )
=(1/3)π 2 k B 2 (2m/ħ 2 π 1/3 )n 1/3 ∝ n 1/3m
(1-3)
EF : フ ェ ル ミ エ ネ ル ギ ー
D(E F ) : フ ェ ル ミ 面 に お け る 状 態 密 度
と な り 、 n 1/3 、 m に そ れ ぞ れ 比 例 す る 。 こ の 有 効 質 量 は 熱 的 有 効 質 量 [1,5]と 呼 ば
れている。
1975 年 、 Andres ら [6]は CeAl 3 の 比 熱 に お い て 、 ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ が 異
常 に 大 き く 、 γ=.1620.mJ/(K .mole)に も な る こ と を 見 い だ し た 。 通 常 の 金 属 、 例 え
2
ば Cu,
Ag, Al の γ が そ れ ぞ れ 、 0.505.mJ/(K
2
mole),
2
0.645.mJ/(K .mole),
0.912.mJ/(K 2 .mole)で あ る こ と [5]と 比 較 し た 場 合 、 両 者 の 比 は お よ そ 1000 倍 と い う
驚 く べ き 値 と な る 。 さ ら に 、 F.Steglich ら [7,8]は CeCu 2 Si 2 に お い て 、 ゾ ン マ ー フ ェ
ル ト 係 数 が γ=.1100.mJ/(K 2 .mole)に な り 、 し か も 、 0.5.K 以 下 で 超 伝 導 に な る こ と を
見 い だ し た 。 又 、 G.R.Stewart ら [9] は UPt 3 が 、 0.54.K 以 下 で 超 伝 導 に な り 、 且 つ
ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 が γ=.450.mJ/(K 2 .mole)と 大 き く な る こ と を 見 い だ し た 。 大 き
な γ を持つ物質はこれまでに数多く発見され、キャリヤ-数を通常の金属と同程
度 と 考 え る と そ の 熱 的 有 効 質 量 が 大 き く な る こ と か ら 、 重 い 電 子 系 (ヘ ビ ー フ ェ ル ミ
オ ン )物 質 と 呼 ば れ て い る 。
このような重い電子系の大きなゾンマーフェルト係数は、自由電子フェルミ気体
近似に対してフェルミ流体近似によって理解され、すなわちフェルミ流体の一例と
な っ て お り 、 そ の 場 合 、 1-1 及 び 1-2 式 が そ の ま ま 成 立 す る 。
フェルミ気体とフェルミ流体との帶磁率の関係は、比熱の場合と少し異なってい
る。通常の金属の場合の自由電子フェルミ気体近似において帶磁率 χ は以下の
式で表される。
χ = 2μ B2 D(E F )
= 2μ B2 (2m/ħ 2 π 1/3 )n 1/3
(1-4)
μB : ボ ー ア 磁 子
このような温度に依存しない自由電子フェルミ気体の帶磁率はパウリ常磁性と呼
ば れ る 。 一 方 、 フ ェ ル ミ 流 体 の 場 合 [10]は 以 下 の 式 で 表 さ れ る 。
- 3 -
χ = 2μ eff 2 (2m/ħ 2 π 1/3 )n 1/3 (1+F 0 a ) -1
(1-5)
μ eff は フ ェ ル ミ 流 体 を 構 成 す る 準 粒 子 の 有 効 ボ ー ア 磁 子 数 で あ り 、 (1+F 0 a )は フ ェ ル
ミ 流 体 パ ラ メ ー タ と 呼 ば れ て い る 。 1-5 式 か ら も 明 ら か な よ う に 、 フ ェ ル ミ 流 体 的 描
像が成立し、且つフェルミ縮退をしている温度領域では、その帶磁率は温度依存
性 を 持 た な い 。 磁 気 秩 序 を 示 さ な い 重 い 電 子 系 物 質 の χ(0)と ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係
数 γ の 関 係 は 、 下 記 の 1-6 式 の 関 係 [11]を 満 た す と さ れ る 。
gJ2lB2(2J+1)(J+1)
w(0)
=
c
2p2kB2
(1-6)
こ の χ(0)/γ の 比 は 、 Wilson 比 と 呼 ば れ て い る 。 図 1-1 に い く つ か の Yb 化 合 物 に
つ い て 、 χ(0)と γ の 値 を プ ロ ッ ト し た 。
3+
1-6 式 の Wilson 比 は Yb の 場 合 、 g J =6/7,
J=7/2 と な り 、 図 中 の 青 線 と な る 。
60
-3
χ(T=0)(10
emu/mole)
s
50
40
Yb0.9Sc0.1Al
30
YbCuAl
20
YbCu2Si2
10
0
0
YbAl2
100 200
300
400
500
600
2
γ( mJ/K mole )
図 1-1
い く つ か の Yb 化 合 物 の χ(0)と γ の 関 係 。
フェルミ気体における抵抗の温度依存性の内、電子-電子散乱による項は温度 T
の 2 乗に比例する。フェルミ流体でも同様の温度変化が得られ、重い電子系の低
温 度 領 域 の 抵 抗 率 は 、 温 度 T 2 に 比 例 す る [12]。
- 4 -
ρ =
ρ 0 +AT 2
(1-7)
1-7 式 の 係 数 A と ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ の 比 は 以 下 の 値 と な る [13]。
A/γ = 1.0×10 μΩcm(mole K/mJ)
-5
2
(1-8)
こ れ ら の A と γ の 関 係 を 示 し た し た も の は Kadowaki プ ロ ッ ト と し て 知 ら れ て い る 。
こ れ ら の 物 質 の 抵 抗 は 、 さ ら に 高 温 側 で は 温 度 増 加 に つ れ て -logT に 比 例 し て 減
少し、不純物近藤効果と類似の温度変化をする領域を持ちその起源となる希土
類 元 素 が 高 濃 度 に 存 在 す る こ と か ら 、 高 濃 度 近 藤 効 果 と も 呼 ば れ る [14]。
10
2
UBe13
CeAl3
CeCu2Si2
2
A ( μΩcm/K )
10 1
CeCu6
UPt3
10
0
CeB6
USn3
UAl2
-1
UPt2
10
CePd3
UPt
UIn3
UGa3
-2
10
-3
10
図 1-2
1
10
2
3
10
10
2
γ( mJ/K mole )
4
10
幾つかの重い電子系物質における A と γ の関係。
- 5 -
<希土類化合物研究における試料作製の重要性>
強相関電子系分野に限らず、固体物理では、研究で扱う試料の信頼性は極め
て 重 要 で あ る 。 従 来 、 希 土 類 化 合 物 は 、他 の 遷 移 元 素 を 含 む 化 合 物 や 、半 導 体 に
比 べ て 、そ の 品 質 が 著 し く 劣 る 化 合 物 し か 作 製 で き な か っ た 。と こ ろ が 近 年 、高 純 度
の 材 料 の 入 手 が 可 能 に な っ た こ と や そ の 管 理 方 法 、 作 製 法 の 進 歩 に よ っ て 、良 質
な 試 料 が 作 製 さ れ る よ う に な っ た 。こ の よ う に 固 体 物 理 の 研 究 に お い て 、試 料 作 製
は 極 め て 重 要 な 位 置 を 占 め て い る が 、 様 々 な 理 由 の た め に 、し ば し ば 良 質 の 試 料
作製が困難な場合があり、いくつかの物質においては、研究に立ちはだかる壁と
な っ て い る 。 本 研 究 で は 、 < 希 土 類 プ ニ ク タ イ ド の Yb 4 As 3 > < 希 土 類 水 素 化 物
SmH 2+δ > の 二 系 統 の 物 質 に つ い て 、 前 者 は 坩 堝 封 入 法 に よ る 単 結 晶 作 製 や 後
者は分光学的測定用の薄膜試料の作製をして、その研究を行った。
< 希 土 類 プ ニ ク タ イ ド Yb 4 As 3 > の 作 製
希 土 類 プ ニ ク タ イ ト (N, P, As, Sb, Bi)や 、希 土 類 カ ル ゴ ゲ ン (O, S, Se, Te)の 試
料を作る場合、アーク溶解などの開放系システムでは、しばしば、希土類、プニク
タイトやカルゴゲンの蒸発が問題となる。
坩 堝 封 入 法 は 東 北 大 学 磁 気 研 究 室 な ど の 長 年 の 努 力 に よ っ て 、確 立 さ れ た 方
法 で 、希 土 類 プ ニ ク タ イ ト (N, P, As, Sb, Bi)や 希 土 類 カ ル ゴ ゲ ン (O, S, Se, Te)な
ど作製時の温度領域において、蒸気圧が高くなる物質の作製に適している。但し、
高 融 点 の 金 属 坩 堝 (Mo, W)を 電 子 ビ ー ム で 溶 接 す る た め に 極 端 に 蒸 気 圧 の 高 い
As や 、 S な ど の 元 素 は 希 土 類 金 属 と 予 備 反 応 さ せ た 後 に 封 入 す る 。
本 研 究 で は 、 希 土 類 プ ニ ク タ イ ト Yb 4 As 3 の 単 結 晶 、 及 び 多 結 晶 試 料 を 封 入 坩
堝法によって作製した。
< 希 土 類 水 素 化 物 SmH 2+δ > の 作 製
希土類金属を水素化することによって、希土類水素化物を作製する場合、希土類
金属に水素が侵入することにより、しばしば亀裂が発生し、物性測定に適した良
質 な 結 晶 を 得 る こ と が 困 難 と な る 。 た だ し 、 CeH 2 で は 、 Ce よ り CeH 2 の 方 が 融 点
が高いことを利用して単結晶が得られており、その作製方法は、以下通りである。
1. 先 ず 、 Ce を 真 空 炉 中 で 融 点 直 上 の 温 度 に て 加 熱 融 解 さ せ る 。
2. 真 空 炉 に 水 素 を 導 入 す る 。
水素化された部分は融点が高くなるために、水素化をした部分から結晶成長が始
ま り 、 単 結 晶 が 成 長 す る 。 し な し な が ら 、 Sm の 場 合 は 、 蒸 気 圧 が 高 く こ の 方 法 が
使 用 で き な い ( Eu,Yb な ど 蒸 気 圧 の 高 い 希 土 類 元 素 に は 不 向 き だ と 考 え ら れ
る。)。一方基板上の希土類薄膜は、水素化による亀裂の心配もない。本研究で
- 6 -
は、基板上の希土類薄膜金属を水素化することによって、分光学的測定が可能な
良 質 の SmH 2+δ 膜 の 作 製 を 行 っ た 。
- 7 -
1-1 少 数 キ ャ リ ヤ ー 系 希 土 類 プ ニ ク タ
イド
ラ ン タ ノ イ ド 系 列 の 希 土 類 化 合 物 、 あ る い は 、 ウ ラ ン (U)化 合 物 に 見 い だ さ れ る
高濃度近藤効果や重い電子系の状態に多くの関心があつまり、研究がされてきた。
これらの物質の多くは金属である。
希 土 類 プ ニ ク タ イ ド 化 合 物 は NaCl 構 造 の RX(R:希 土 類 、 X:プ ニ ク ト ゲ ン )や
Anti-Th 3 P 4 構 造 の R 4 X 3 を 作 る 。 そ の 内 、 多 く の 化 合 物 は 半 金 属 の 少 数 キ ャ リ ヤ ー
系 と な り 、 更 に R 4X 3 の 場 合 、 混 合 原 子 価 と な り 、 構 造 転 移 温 度 以 下 で 電 荷 秩 序
が出現する物質が報告されている。
不純物近藤状態の概念をそのまま高濃度近藤効果に延長するかぎり、伝導電
子と磁性イオンのモーメントが結合して、近藤シングレットを作るためには、磁性イ
オ ン と 同 程 度 の 数 の 伝 導 電 子 が 必 要 で あ る 。 と こ ろ が 、 CeBi 、 CeSb に お い て 、
キ ャ リ ヤ ー 数 が Ce 3+ あ た り 数 パ - セ ン ト で あ る に も 拘 わ ら ず 、 電 気 抵 抗 の -logT 依
存 性 や 、 大 き な ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 が 観 測 さ れ た [14,15]。
更 に 、 Yb 4 As 3 に お い て 、 キ ャ リ ヤ ー 数 が Yb 3+ あ た り 0.1%で あ る に も 拘 わ ら ず 、
大 き な ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ= . 200.mJ/(K .mole)が 見 い だ さ れ た [16]。 次 節 に
2
Yb 4 As 3 と そ の 関 連 物 質 つ い て 行 わ れ た こ れ ま で の 研 究 、 及 び 本 研 究 の 目 的 に つ
いて述べる。
- 8 -
1-2 Yb 4As 3 及 び 関 連 物 質 の こ れ ま で
の研究
< 少 数 キ ャ リ ヤ ー の 重 い 電 子 系 : Yb 4 As 3 >
Yb 4 As 3 は Anti-Th 3 P 4 型 の 結 晶 構 造 を 持 ち 、 Anti-Th 3 P 4 型 の P の 位 置 に は Yb
が 、 Th の 位 置 に は As が 占 有 す る 結 晶 構 造 を 持 つ 。そ の 空 間 群 は 、 室 温 近 傍 よ り
高 温 側 *1 で 立 方 晶 系 の I43d で あ る 。一 方 、 低 温 側 で は 、 菱 面 体 晶 系 の R3c で あ る 。
図 1-3 に 示 す よ う に Yb は 6 個 の As に よ っ て 、囲 ま れ て て お り 、 As 自 身 は 、歪 ん だ
八面体を形成する。
図 1-3
Anti-Th 3 P 4 型 の 結 晶 構 造
Yb は 大 き な 球 で 、 As は 小 さ な 球 で 表 現
されている。
*1
後 で 詳 し く 述 べ る よ う に Yb 4 As 3 は 、 室 温 近 傍 で 相 転 移 す る 物 質 で あ る 。
- 9 -
Yb 4 As 3 の 結 晶 系 が 室 温 よ り 高 温 側 の 立 方 晶 系 の 場 合 、 Yb の 8 個 の 等 価 な 原 子
位置は、以下のようになる。
(u,u,u) , (u,u,1/2-u), (1/2-u,u,u), (u,1/2-u,u), (u+1/4, u+1/4, u+1/4)
(1/4-u,u+1/4,u+1/4), (u+1/4,3/4-u,1/4-u), (3/4-u,1/4-u,u+1/4)
こ の 結 晶 中 の Yb に は 、 Yb (J=7/2)と Yb (J=0)の 2 種 類 が 存 在 し 、 室 温 よ り 低
3+
2+
温 側 で は 、 電 荷 秩 序 状 態 を と る 菱 面 体 晶 系 と な り Yb 3+ と Yb 2+ は 規 則 正 し く 並 ぶ 。
電 荷 秩 序 状 態 に あ る Yb 4 As 3 が 菱 面 体 晶 系 と な る 理 由 は 、 Yb と Yb の 両 者 の イ
3+
2+
オ ン の 内 、 イ オ ン 半 径 の 小 さ い Yb が (u,u,u) (u+1/4, u+1/4, u+1/4)の 位 置 に あ り 、
3+
結 晶 構 造 が [1,1,1]方 向 に 縮 み 菱 面 体 晶 系 の R3c と な る と 推 定 さ れ て い る [16]。
一 方 、 高 温 側 で Yb と Yb の 電 荷 秩 序 が 壊 れ 、 熱 的 価 数 揺 動 状 態 に あ る と 推
3+
2+
定 さ れ て お り 、 そ の 結 晶 系 は 立 方 晶 系 と な る [16,17]。
*2
抵 抗 率 の 温 度 変 化 を 図 1-4 に 示 す 。そ の 残 留 抵 抗 は 1mΩcm と 通 常 の 金 属 に
比べると大きく、キャリヤー濃度の少ないことを示唆している。室温近辺の不連続
な変化は、結晶の構造相転移に対応しており、上述したように高温側では立方晶
系、低温側では、菱面体晶系の構造を持つ。高温側において、抵抗は温度に比
例 し て 変 化 し て い る 。 お よ そ 100K 以 下 の 温 度 領 域 で 、 抵 抗 は T 2 の 温 度 依 存 性 を
示 す [16]。
図 1-4
Yb 4 As 3 の 抵 抗 率 の 温 度 変 化 。 抵 抗 率 残 留 抵 抗 は 1mΩcm と 通 常 の
金 属 に 比 べ る と 大 き い [16]。
2+
*2 文 献 16 で は 、 低 温 側 の 電 荷 秩 序 領 域 で 、 フ ェ ル ミ レ ベ ル (E F )を 挟 ん で Yb の 4f は E F よ り 低 い レ
3+
ベ ル に あ り 、 Yb の 4f は E F よ り 高 い レ ベ ル に あ る 。 一 方 、 高 温 側 で は 、 4f は フ ェ ル ミ レ ベ ル 近 傍 に
あり、熱的価数揺動状態にあると考えられている。
- 10 -
図 1-5 に 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 を 示 す 。 帯 磁 率 は 10-20.K の 温 度 範 囲 で ほ ぼ 一
定 に な り 、 そ れ よ り 低 温 側 で 再 び 上 昇 す る 。 こ の 低 温 側 の 上 昇 は Yb 4 As 3 の 不 純
物 に 起 因 す る と 推 定 さ れ て い る [16]。 帯 磁 率 の 逆 数 か ら 、 図 中 の 直 線 、 す な ま ち キ
ュ リ ー ワ イ ス の 法 則 か ら 求 め た Yb 2+ と Yb 3+ の 割 合 は 3:1 で あ り 、常 磁 性 キ ュ リ ー 温
度 は θ p =.-60.K と 比 較 的 大 き い [16]。
図 1-5
Yb 4 As 3 の 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 。 10-20.K で ほ ぼ 一 定 に な り 、 そ れ よ
り 低 温 側 で 上 昇 す る 。 こ の 低 温 側 の 上 昇 は Yb 4 As 3 の 不 純 物 に 起 因
す る と 考 え ら れ て い る [16]。
図 1 -6 に ホ ー ル 係 数 の 温 度 依 存 性 を 示 す 。 ホ ー ル 係 数 は 、全 温 度 領 域 で 正 の 値
を 示 す 。 キ ャ リ ヤ ー が 一 種 類 の 場 合 、 ホ ー ル 係 数 は 1-9 式 で 与 え ら れ る 。
R H =1/nq
n:キ ャ リ ヤ ー 濃 度
(1-9)
q:電 荷
キ ャ リ ヤ ー が 単 極 性 で あ り 、 ホ ー ル 優 勢 で あ る こ と を 仮 定 し て 、 1-9 式 か ら 求 め た
キ ャ リ ヤ ー 濃 度 は 4.2.K に 於 い て 0.1%/Yb 3+ ion と 非 常 に 少 な い [16]。
- 11 -
図 1-6
Yb 4 As 3 の ホ ー ル 係 数 の 温 度 依 存 性 。 キ ャ リ ヤ ー が ホ ー ル 優 勢 で あ る
3+
こ と を 仮 定 し て 、 4.2K で キ ャ リ ヤ ー 濃 度 を 求 め る と 0.1%/Yb と な る [16]。
キ ャ リ ヤ ー 数 の 少 な い こ と は 、図 1-7 に 示 す 権 [18]ら の 分 光 学 的 測 定 に お け る 反
射 率 の 極 小 値 ( プ ラ ズ マ 端 ) か ら 求 め た キ ャ リ ヤ ー 濃 度 か ら も 支 持 さ れ て い る *3 。キ
ャリヤー濃度の計算は次のようにして行った。
プ ラ ズ マ 振 動 数 ω p と キ ャ リ ヤ ー 濃 度 の 関 係 は 1-9 式 で 与 え ら れ る 。
yp =
Ne2
(1-9)
m
図 1-7 に お け る 10 K に お け る 反 射 率 の 極 小 値 は お よ そ 0.1eV に あ り 、 こ の 値 を プ
ラ ズ マ 端 と し た 場 合 、 1-9 式 よ り 見 積 も っ た キ ャ リ ヤ ー 濃 度 は 、 お よ そ 0.1%/Yb ion
3+
と な る 。 こ の 値 は 図 1-6 の ホ ー ル 係 数 よ り 見 積 も っ た 値 と ほ ぼ 一 致 す る [18]。
*3 10.K で の プ ラ ズ マ 端 が 0.1.eV に あ り 光 学 的 有 効 質 量 を 自 由 電 子 の 質 量 と 等 し い と 仮 定 し 計 算 し
た 。 近 藤 ピ ー ク と 伝 導 に 関 わ る バ ン ド が 別 々 に 存 在 す る と 考 え れ ば [16]ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 が γ=.
2
200.mJ/(K mole)と 大 き い こ と と 小 さ な 光 学 的 有 効 質 量 の 仮 定 は 矛 盾 し な い 。
- 12 -
ωp= (Ne2/m*)1/2
m*/m= 1と仮定
N = 0.1% (3価のYあたり)
図 1-7
Yb 4 As 3 の 反 射 率 : 0.1eV 近 傍 の プ ラ ズ マ 端 か ら キ ャ リ ヤ ー 濃 度 を 計 算 す
3+
る と 、 0.1%/Yb と な る [18]。
図 1-8 に 比 熱 の 温 度 依 存 性 を 1-2 式 に し た が い C/TvsT 2 プ ロ ッ ト し た も の を 示
す 。 前 節 で も 触 れ た よ う に Yb 4 As 3 の ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 は γ=.200.mJ/(K
2
mole)
と大きい。
図 1-9 に 他 の Yb 化 合 物 の 重 い 電 子 系 物 質 と 共 に 、 Yb 4 As 3 の 帯 磁 率 (χ(0))と ゾ
ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ の 関 係 を プ ロ ッ ト し た 結 果 を 示 す 。 図 中 の 直 線 (Wilson 比 )の
近 く に 位 置 し て お り 、 こ の Yb 4 As 3 が 重 い 電 子 系 物 質 で あ る こ と を 示 す 結 果 と な っ
て い る [16]。
上 述 し た よ う に 、 重 い 電 子 系 物 質 で は 一 般 的 に 抵 抗 の T2 の 係 数 A と γ の 比 は
ほ ぼ 一 定 値 を 示 す こ と が 知 ら れ て い る (Kadowaki プ ロ ッ ト )。他 の 重 い 電 子 系 物 質
と 共 に プ ロ ッ ト し て み る と (図 1-9)図 中 の 直 線 の 近 く に 位 置 す る 。
Yb 4 As 3 の γ が 大 き く 、 A と γ の 比 が Kadowaki プ ロ ッ ト の 直 線 の 近 く に 位 置 し 、
χ(0)と γ の 比 が Willson
ratio に 近 い 値 を 持 つ こ の 物 質 は ま さ に 重 い 電 子 系 物 質
の特徴を有している。しかしながらキャリヤー数が極端に少ない特異な系と理解さ
れている。
又 、 Yb 4 As 3 に お け る Yb の 4f レ ベ ル は 二 種 類 あ り 、 Yb の 4f レ ベ ル は フ ェ ル ミ
2+
準 位 よ り 低 い エ ネ ル ギ ー レ ベ ル に あ る 。 一 方 Yb 3+ の 4f ( ホ ー ル レ ベ ル ) は フ ェ ル ミ
準 位 よ り 上 に あ る 。 Yb 4 As 3 に お け る 重 い 電 子 は 、 こ の 4f レ ベ ル と 他 の バ ン ド と の
- 13 -
c-f 混 成 効 果 に よ り も た ら さ れ る と 考 え ら れ て い る [16]。
*4
図 1-8
*4
2
Yb 4 As 3 の 比 熱 の C/T の T 依 存 性 [16]。
希 土 類 に お け る 4f 電 子 の 波 動 関 数 の す そ 野 は 、 周 囲 の イ オ ン ま で 伸 び て お り 、 周 囲 の イ オ ン
が 構 成 す る 伝 導 電 子 (conduction electron)の 状 態 と 混 成 す る 。 こ れ を c-f 混 成 と 言 う 。
- 14 -
60
-3
χ(T=0)(10
emu/mole)
s
50
40
Yb0.9Sc0.1Al
30
Yb4As3
YbCuAl
20
YbCu2Si2
10
0
0
YbAl2
100 200
300
400
500
600
2
γ( mJ/K mole )
図 1-9
Yb 4 As 3 の Wilson 比 を 他 の Yb 化 合 物 と 共 に プ ロ ッ ト し た 。 Yb 4 As 3 の
χ (0)の 値 は 10K-20K の 範 囲 の 値 を 使 用 し 、 γ の 値 は 2K-7K の 範 囲 か ら
外 挿 し て 求 め て い る [16]。
- 15 -
10
2
UBe13
CeAl3
CeCu2Si2
2
A ( μΩcm/K )
10 1
10
CeCu6
UPt3
Yb4As3
0
CeB6
USn3
UAl2
-1
UPt2
10
CePd3
UPt
UIn3
UGa3
-2
10
-3
10
図 1- 10
10
1
2
3
10
10
2
γ( mJ/K mole )
4
10
Yb 4 As 3 を 他 の 重 い 電 子 系 (ヘ ビ ー フ ェ ル ミ オ ン )物 質 と 共 に
Kadowaki プ ロ ッ ト に 記 入 し た [16]。
- 16 -
< 価 数 揺 動 系 Yb 4 Sb 3 及 び パ ウ リ 常 磁 性 物 質 Yb 4 Bi 3 >
こ れ ま で に 測 定 さ れ て い る Yb 4 Sb 3
及 び Yb 4 Bi 3
の抵抗率の温度依存性を図
1-11 に 示 す [16]。 低 温 側 に 温 度 依 存 性 の 少 な い 領 域 が あ る の み で 、 数 十 K か ら
室温近傍まで、抵抗率は温度にほぼ比例して変化している。抵抗率の絶対値は
大きいが、両物質とも、典型的な金属的温度依存性を示す。
図 1-11
Yb 4 Sb 3 及 び Yb 4 Bi 3 の 抵 抗 率 温 度 依 存 性 [16]。
Yb 4 Sb 3 及 び Yb 4 Bi 3 の 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 を 図 1-12 に 示 す [16]。 Yb 4 As 3 (図
1-5 ) に 比 較 し て 、 両 物 質 と も に 帯 磁 率 は 小 さ い 。 又 、 低 温 側 の 温 度 低 下 に 伴 う 、
帯 磁 率 の 上 昇 は 両 物 質 と も Yb 4 As 3 と 同 程 度 で あ り 、 不 純 物 に よ る も の と 考 え ら れ
て い る [16]。 こ の 不 純 物 に よ る と 考 え ら れ て い る 上 昇 を 除 く と Yb 4 Bi 3 は 温 度 変 化 を
示 さ ず 、 ほ と ん ど 一 定 で あ り 、 パ ウ リ 常 磁 性 的 で あ る 。 4f レ ベ ル は フ ェ ル ミ 面 よ り 低
い エ ネ ル ギ ー レ ベ ル に あ り 、 4f は 14 個 の 電 子 で 埋 ま り Yb 2+ と な る と 考 え ら れ て い
る る [16]。 一 方 の Yb 4 Sb 3 の 帯 磁 性 率 は 220.K 近 傍 に 極 大 値 を 持 ち 、 低 温 側 で 、
一 定 値 に 近 づ く 。 300.K で の 帯 磁 率 χ か ら 見 積 も っ た Yb 3+ の 割 合 は Yb 4 Sb 3 の 1
- 17 -
分 子 あ た り 0.4 個 で あ る 。 低 温 度 領 域 で は 帯 磁 率 が 小 さ く な り た め 、 価 数 揺 動 系 と
考 え ら れ て い る 。 4f は フ ェ ル ミ 面 近 傍 に あ る と 考 え ら れ る 。 [16]。
図 1-12
Yb 4 Sb 3 及 び Yb 4 Bi 3 の 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 [16]。
プ ニ ク タ イ ド を 重 い 元 素 か ら 軽 い 元 素 に 変 え る に つ れ て 4f レ ベ ル は 以 下 の よ う に
変 化 す る [16, 19, 20]と 考 え ら れ て い る 。
Yb 4 Bi 3 :
パ ウ リ 常 磁 性 的 で あ り 、 通 常 の 金 属 に 近 く Yb は Yb 2+ 。 4f レ ベ ル は フ ェ
ル ミ 準 位 よ り 低 い エ ネ ル ギ ー レ ベ ル に あ る 。 4f レ ベ ル は 14 個 の 電 子 で 埋 ま り Yb
2+
となる。
Yb 4 Sb 3 :
価 数 揺 動 系 で あ り 、 帯 磁 率 か ら 求 め た Yb 3+ は Yb 4 Sb 3 の 1 分 子 あ た り
0.4 個 。 4f レ ベ ル は フ ェ ル ミ 準 位 近 傍 に あ る 。
Yb 4 As 3 :
室温近傍の構造転移温度以上では、熱的価数揺動状態にあり、以下で
は 、 電 荷 秩 序 状 態 に あ る 。 帯 磁 率 か ら 求 め た Yb は Yb 4 As 3 の 1 分 子 あ た り 1 個
3+
で あ る 。 重 い 電 子 系 で あ り な が ら 、 キ ャ リ ヤ ー 数 は 少 な い 。 Yb の 4f レ ベ ル は 二 種
類 あ り 、 Yb 2+ の 4f レ ベ ル は フ ェ ル ミ 準 位 よ り 低 い エ ネ ル ギ ー レ ベ ル に あ る 。 一 方
Yb の 4f ( ホ ー ル レ ベ ル ) は フ ェ ル ミ 準 位 よ り 上 に あ る 。 こ の 4f レ ベ ル と 他 の 伝 導
3+
バ ン ド と の c-f 混 成 効 果 に よ り 重 い 電 子 状 態 を も た ら す 。
- 18 -
1-3
Yb 4As 3 の 研 究 の 目 的 と 方 法
こ れ ま で の 研 究 に よ り Yb 4 A s 3 は 極 端 に キ ャ リ ヤ ー の 少 な い 重 い 電 子 系 (ヘ ビ ー フ
ェ ル ミ オ ン )と 考 え ら れ て い る 。 上 述 し た よ う に 不 純 物 近 藤 状 態 の 概 念 を そ の ま ま 延
長するかぎり、伝導電子と磁性イオンのモーメントが結合して、近藤シングレットを
作るためには、磁性イオンと同程度の数の伝導電子が必要である。このキャリヤー
数の少ない系における重い電子系の描像の解明は、重要な研究課題となってい
る 。 本 研 究 で は Yb 4 As 3 に お け る 重 い 電 子 系 の 理 解 の 進 展 の た め に 以 下 の 研 究 を
行う。
1. Yb 4 As 3 の 抵 抗 、 ホ ー ル 係 数 、 帯 磁 率 、 比 熱 の 試 料 依 存 性
キ ャ リ ヤ ー 数 が 0.1 %/Yb 3+ ion と 極 端 に 少 な い た め に 、物 理 量 の 試 料 依 存 性 が 大
き い こ と が 予 想 さ れ る 。そ こ で 、基 礎 的 な 物 理 量 の 試 料 依 存 性 を 明 ら か に す る 。 更
に、ストイキオメトリーに近い試料の判断、あるいはそれがゾンマーフェルト係数 γ
に与える影響を研究する。
2. Yb 4 As 3 の 磁 場 中 比 熱
常 磁 性 キ ュ リ ー 温 度 θ p は -60.K と 比 較 的 大 き く 、 同 程 度 と 考 え ら れ る Kondo 温
度も、比較的大きい。そのために、低温での比熱の磁場依存性は小さいことが予
想 さ れ る 。 こ の こ と を 確 認 す る た め に 、 磁 場 中 比 熱 の 測 定 を 行 う 。 同 時 に NQR の
測 定 ( 共 同 研 究 ) に よ り 、 フ ェ ル ミ 流 体 で 成 立 す る Korringa の 関 係 [21]を 確 認 す る 。
3. Yb 4 As 3 の 混 晶 系 Yb 4 As 1-x Sb x Yb 4 As 1-x P x 及 び Yb 4 Bi 3 Yb 4 Sb 3 の 比 熱
伝 導 帯 と 4f ホ ー ル レ ベ ル と の c-f 混 成 効 果 の 変 化 を 見 る た め に Yb 4 As 3 の 混 晶
系 Yb 4 As 1-x Sb x 、 Yb 4 As 1-x P x を 作 製 し 比 熱 を 中 心 と し た 測 定 を す る 。 同 時 に ほ と ん
ど Yb で あ る Yb 4 Bi 3
2+
価 数 揺 動 系 で あ る Yb 4 Sb 3 の 試 料 を 作 製 し 、 比 熱 を 調 査 し 、
比較検討する。
- 19 -
1-4
希土類二水素化物概説
水素は、金属に固溶することにより母金属の電子状態に影響を与える。その中
でも希土類水素化物は学術的な観点からも、産業への応用の観点からも注目が
注がれている。例えば、希土類金属元素に水素が固溶すると、水素濃度の変化
に よ っ て 、 金 属 (RH 2 R:Eu,Yb 以 外 の 希 土 類 ) か ら 半 導 体 、 絶 縁 体 (RH 3 )に 転 移 す
る 。 又 、 一 部 の 希 土 類 水 素 化 物 で は RH 2 か ら 更 に 水 素 化 を 進 め た 絶 縁 相 直 前 の
RH 2+δ (δ>0)に お い て 半 導 体 的 な 抵 抗 率 の 温 度 変 化 を 示 す 温 度 領 域 が 存 在 し 、 温
度 に よ り 金 属 的 伝 導 か ら 半 導 体 的 伝 導 へ 変 化 す る [22]。 さ ら に は 水 素 量 は 磁 性 の
面でも影響を与え、且つ多彩な変化が報告されており、様々な面で興味深い。こ
こでは以下に希土類第二水素化物を中心として、最初にその結晶構造、電気的
性 質 、 電 子 構 造 、 磁 性 に つ い て ま と め 、 そ の 後 、 本 研 究 の 対 象 で あ る SmH 2+δ の こ
れまでの研究と本研究の目的についてまとめる。
<希土類二水素化物の結晶構造、電気的性質>
希 土 類 二 水 素 化 物 の 結 晶 構 造 と 格 子 定 数 を 表 1-1 に ま と め た [22,23]。
Eu と
Yb を 除 く 希 土 類 二 水 素 化 物 の 結 晶 構 造 は 空 間 群 Fm3m の 蛍 石 (CaF 2 )構 造 で あ
る 。 図 1-13 に そ の 構 造 を 図 示 し た 。 図 1-13 に あ る よ う に 、 希 土 類 の 原 子 は 、 面 心
立 方 格 子 (fcc)に 位 置 し 、 水 素 は 面 心 立 方 副 格 子 (1/8)の 中 心 、 す な わ ち 、
(1/4,1/4,1/4), (3/4,1/4,1/4), (1/4,3/4,1/4), (3/4,3/4,1/4)
(1/4,1/4,3/4),
(3/4,1/4,3/4), (1/4,3/4,3/4), (3/4,3/4,3/4)
に位置する。この位置は、水素から希土類元素を見た場合に四配位となり
T(tetrahedral)サ イ ト と 呼 ば れ て い る 。 こ の T サ イ ト が 水 素 で 満 た さ れ る と そ の 組 成
は RH 2 (R:希 土 類 元 素 )と な る 。 と こ ろ が 、 水 素 は T サ イ ト が 満 た さ れ る 前
(RH 1.9 -RH 1.98 )に 六 配 位 の O(octahedral)サ イ ト に 侵 入 し 、 且 つ 、 幅 広 い 範 囲 で 化
学量論比からのズレが観測される。
このように、 T サイトが満たされる前に水素が O サイトに侵入をすることは、例え
ば YH 2+δ に お い て 、 中 性 子 回 折 に よ り 直 接 確 認 さ れ て い る [24]。 別 の 証 拠 と し て
は、生成エントロピーに関する研究がある。希土類元素と水素及びその水素化合
物 の 平 衡 水 素 圧 の 測 定 か ら 水 素 化 物 の 生 成 エ ン ト ロ ピ ー は 、 1-10 式 で 求 め ら れ
る。
R + H2
→ RH 2
Δ G 0 = Δ H 0 - Δ S 0 = -RT ln K
ただし、
- 20 -
Δ G 0 :標 準 ギ ブ ス 自 由 エ ネ ル ギ ー
Δ H 0 :エ ン タ ル ピ ー
Δ S 0 :エ ン ト ロ ピ ー
K : 平衡定数
Δ Gf = Δ Hf - Δ Sf =
RT ln P H2
( K=1/P H2 )
(1-10)
ただし、
P H2 :水 素 化 物 -気 体 水 素 の 平 衡 解 離 圧
ΔG
f
:生 成 ギ ブ ス 自 由 エ ネ ル ギ ー
ΔH
f
:エ ン タ ル ピ ー
ΔS
f
:エ ン ト ロ ピ ー
生 成 エ ン ト ロ ピ ー は 水 素 /希 土 類 元 素 の 比 に よ り 異 な る 。 例 え ば H/Ce で は 、 化 学
量 論 比 で あ る 2 よ り 僅 か に 小 さ く 、 1.97 付 近 に 極 小 値 を 持 つ [25]。 生 成 エ ン ト ロ ピ
ーに関するこの現象は、配列エントロピーの変化、すなわち、この濃度前後にて、
水素原子の占有サイトが異なるためと考えられている。
同 様 の 現 象 は 、 電 気 抵 抗 に も 現 れ る 。 Yb と Eu を 除 い た 希 土 類 第 二 水 素 化 物
は 金 属 的 伝 導 を 示 す 。 特 に 、 RH x (R:希 土 類 )1.5<X<2.0 の 組 成 範 囲 で は 、 そ の 母
体金属より優れた電気伝導体となる。そして、化学量論比である 2 より僅かに小さ
いところで室温の抵抗率は極小値を持つ。
図 1-14 に 筆 者 ら [26]の
YH 2+δ (-0.3<δ<0.1)膜 に つ い て の 室 温 で の 抵 抗 率 と δ の 関 係 を 示 す 。 δ=-0.1 近 傍
にて抵抗率は極小となっている。
希 土 類 三 水 素 化 物 は 、 Yb と Eu を 除 い て 報 告 さ れ て お り 、 二 水 素 化 物 と 同 じ く
希 土 類 の 原 子 が 面 心 立 方 格 子 (FCC)と な る 希 土 類 三 水 素 化 物 、 結 晶 系 が 六 方 晶
と な る 希 土 類 三 水 素 化 物 が あ る 。 面 心 立 方 格 子 (FCC)と な る も の す な わ ち Ce や
La,Y な ど の 三 水 素 化 物 RH 3 は バ ン ド ギ ャ ッ プ を 持 ち 半 導 体 (絶 縁 体 )と な る 。 六 方
晶系となる希土類三水素化物については、その電気抵抗の報告は少ないが、こ
れ ら も 半 導 体 的 性 質 を 持 つ と 考 え ら れ て い る [27,28,29]。
- 21 -
表 1-1
希土類二水素化物の結晶構造と格子定数。
ScH2
Lattice constant ( Å )
a=4.783
Structure
FCC
Conductivity
Metallic
YH2
a=5.205
FCC
Metallic
LaH2
a=5.663
FCC
Metallic
CeH2
a=5.580
FCC
Metallic
PrH2
a=5.515
FCC
Metallic
NdH2
a=5.469
FCC
Metallic
SmH2
a=5.363
FCC
Metallic
EuH2
a=6.254 b=3.806
c=7.212
Orthorhombic
Insulator,
Semiconductor
GdH2
a=5.303
FCC
Metallic
TbH2
a=5.246
FCC
Metallic
DyH2
a=5.201
FCC
Metallic
HoH2
a=5.165
FCC
Metallic
ErH2
a=5.123
FCC
Metallic
TmH2
a=5.090
FCC
Metallic
YbH2
a=5.904 b=3.580
c=6.794
Orthorhombic
Insulator,
Semiconductor
LuH2
a=5.033
FCC
Metallic
- 22 -
希土類 元素
水素
t-site
図 1-13
o-site
蛍 石 構 造 を 持 つ 希 土 類 二 水 素 化 物 (RH 2+x )。
YH2+δ
図 1-14
YH 2+δ 膜 に お け る 室 温 の 抵 抗 率 と δ の 関 係 [26]。
- 23 -
<電子構造>
こ こ で は 例 と し て CeH 2 に つ い て 説 明 す る 。 Eu と Yb 以 外 の 他 の ラ ン タ ノ イ ド 系
列 の 希 土 類 二 水 素 化 物 も 類 似 な 電 子 構 造 を 持 つ と 考 え ら れ て い る 。 図 1-15 に
CeH 2 の 状 態 密 度 の 計 算 結 果 を 示 す [30]。 価 電 子 帯 は 主 と し て T サ イ ト の 水 素 Ht
(1s)か ら 成 り 、 そ れ に 僅 か に セ リ ウ ム Ce(5d)と O サ イ ト の 水 素 Ho(1s)が 混 成 し て る 。
O サ イ ト の 水 素 Ho(1s)は 価 電 子 帯 の 裾 の 広 が り を も た ら し て い る 。 伝 導 帯 は 主 と し
て Ce(5d)と Ce(6p)か ら 成 り (Ce5d6p)、 そ れ に 加 え て 、 Ce(6s),Ht(1s),Ho(1s)が 混 成
し て い る 。 CeH 2 の 単 位 化 学 式 あ た り 、 主 と し て 水 素 の 1s か ら 成 る 価 電 子 帯 に は 4
個 の 電 子 が 収 容 さ れ (Ce の 2 個 の 電 子 と H 2 の 2 個 の 電 子 ) 、 Ce5d6s か ら 成 る 伝
導 帯 に は 1 個 の 電 子 が 収 容 さ れ 、 Ce5d6s か ら 成 る 伝 導 帯 の 中 に E F (フ ェ ル ミ レ ベ
ル ) が 形 成 さ れ る 。 そ の 結 果 、 CeH 2 は 典 型 的 な 金 属 と な る 。 こ の よ う な 電 子 構 造
は、金属的伝導を示す希土類二水素化物同士では、類似していると考えられてい
る 。 又 、 希 土 類 の 4f
の価電子帯への影響は小さく、ほとんど混成はないと考えら
れ て い る 。 上 述 し た よ う な RH x (R:希 土 類 )1.5<X<2.0 の 領 域 に お い て そ の 母 体 金
属 よ り 優 れ た 電 気 伝 導 体 と な る 現 象 も 、 一 応 、 図 1-3 に 示 す よ う な 電 子 構 造 か ら 説
明 さ れ る 。 す な わ ち 、 Ce 元 素 単 体 の 5d6s か ら 成 る バ ン ド の に は 3 個 の 電 子 が 入
り 、 E F (フ ェ ル ミ レ ベ ル ) 状 態 密 度 は 大 き く 、 有 効 質 量 も 大 き く 、 電 子 の 移 動 度 も 低
い 。 し か し な が ら 、 CeH 2
の 場 合 、 E F (フ ェ ル ミ レ ベ ル ) は Ce5d6s か ら 成 る 伝 導 帯
の有効質量の小さい領域にあるために、電子の移動度も高くなる。
よ り 水 素 の 割 合 が 高 く な り 、 CeH 3 の 組 成 に 近 づ く と 、 O サ イ ト 水 素 Ho(1s)は
Ce(5d)と 混 成 し 価 電 子 帯 を 広 げ 、 CeH 3 の 単 位 化 学 式 あ た り 価 電 子 帯 に は 6 個 の
電 子 が 収 容 さ れ る (Ce の 3 個 の 電 子 と H 2 の 2 個 の 電 子 ) [30]。 一 方 、 伝 導 帯 は 空
と な り 、 E F が バ ン ド ギ ャ ッ プ に 位 置 す る た め に CeH 3 は 半 導 体 と な る 。
- 24 -
図 1-15
CeH 2 に お け る 局 所 及 び 全 状 態 密 度 [30]。
- 25 -
1-5 希 土 類 二 水 素 化 物 の 磁 性 概 説
希 土 類 二 水 素 化 物 ( RH 2+δ :δ ≧ 0
ここでは化学量論比より過剰な水素を δ で
表す。)の幾つかのものは、その磁性も調べられており、興味深い挙動を示す。表
1-2 に ま と め た [22]。 以 下 に そ の 内 容 の 一 部 を 記 載 す る 。
CeH 2 は ネ ー ル 温 度 が T N =.4.2.K と T N =.6.9.K の 2 つ の 磁 気 転 移 温 度 を も ち 、
過 剰 な 水 素 δ(CeH 2+δ )の 付 加 に よ り 、 そ の 磁 性 及 び 磁 気 転 移 温 度 を 複 雑 に 変 化
さ せ る 。 又 、 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 、 TN 以 上 の 温 度 領 域 に お い て 、 磁 性 の 何 ら か
の 変 化 に 起 因 す る と 思 わ れ る ブ ロ ー ド な 極 大 (T M )、 や ブ ロ ー ド な 極 小 (T m )が 現 れ
る
化 学 量 論 組 成 の NdH 2 は 、 T C =.4.2.K の 強 磁 性 で あ る が 過 剰 な 水 素 δ は 強 磁
性 を 抑 制 し 、 NdH 2.5 (δ=.0.5)で は 反 強 磁 性 に な る 。
EuH 2 お い て Eu の 価 数 は 2 価 と な り (Eu )、 強 磁 性 と な る 。
2+
化 学 量 論 組 成 の GdH 2 は T N =18.3K 反 強 磁 性 体 と な る が δ の 増 加 は 不 整 合 性
(incommensurancy)を 増 加 さ せ る 。 δ が 増 加 す る と T N は 低 下 し 、 GdH 2.14 (δ=.0.14)
に て T N =11.5K と な る 。
化 学 量 論 組 成 の TbH 2 は 、 ネ ー ル 温 度 が T N =.16.K で あ る が 、 TbH 2.18 (δ=.0.18)
に て T N =32.5.K と な る が 、 T N 以 上 、 42.K 以 下 の 温 度 域 に て incommensurate 相
を持つ。
YbH 2+δ は 興 味 深 い δ 依 存 性 を 示 す 。 化 学 量 論 組 成 の YbH 2 に お い て 、 結 晶 系
は 、 斜 方 晶 、 Yb の 価 数 は 2 価 (Yb )で あ り 、 磁 性 を 持 た な い 。 δ>.0.25 で 、 そ の 結
2+
晶 系 は 、 立 方 晶 の FCC と な り 、 Yb 3+ イ オ ン が 出 現 し 、 価 数 混 合 状 態 と な る 。 比 熱
は 、 δ=0.25 の 場 合 4K 近 傍 で 、 磁 気 転 移 や 結 晶 場 に 起 因 し な い 極 大 値 を 持 ち 、
YbH 2.37 (δ=0.37)で ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 は γ=589
金 属 的 伝 導 を 示 す 多 く の RH 2+δ
mJ/(K 2 mole)に 達 す る [31]。
(δ ≧ 0)に お い て 、 T N 前 後 の 温 度 領 域 で は 、 磁
性に関係すると思われる抵抗変化が観測され、 δ の変化を敏感に反映する。この
ように化学量論組成の希土類二水素化物に過剰な水素付加すると、磁性にも変
化 を も た ら す 。 本 研 究 の 対 象 物 で あ る SmH 2+δ に つ い て は 後 ほ ど 細 述 す る 。
YbH 2+δ 以 外 、 重 い 電 子 系 の 観 点 か ら の 報 告 は 少 な い が 、 CH 2 -CH 3 系 に お け る
金 属 -絶 縁 体 転 移 に 近 い 組 成 の CeH 2.65 (δ=0.65)は そ の ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 が
γ=110mJ/(K ・mole)と 比 較 的 大 き い [32]。
2
- 26 -
表 1-2
希 土 類 水 素 化 物 の 磁 気 転 移 温 度 [21]と 電 子 比 熱 係 数 γ[22,31,32,33,34]。
AF は 反 強 磁 性 、 FM は 強 磁 性 、 N.O は 磁 気 秩 序 が な い こ と を 意 味 す る 。
δ は 化 学 量 論 組 成 H/R=2か ら の ズ レ 量 を 意 味 す る 。
T c or T N (K ) γ (mJ/K2 mole)
ScH2
--
2.0
YH2
--
2.0
LaH2
--
8.5
110 ( CeH2.65)
+δによる変化の例
δ=0.1 FMなど
CeH2
AF
4.2,6.9
PrH2
AF
3.35
NdH2
FM
6.6
δ>0 FMは抑制
SmH2
AF
9.6
δ>0 T Nは減少
EuH2
FM
16-18
GdH2
AF
18.3
TbH2
AF
18,21
DyH2
AF
3.7,5.0
HoH2
AF
3.5,4.7
ErH2
AF
2.3
δ=0.14,T N=11.5K
TmH2
N.O>1.5
YbH2
N.O>4
589 ( YbH2.37)
LuH2
-
2.2
- 27 -
1-6 希 土 類 二 水 素 化 物 薄 膜 (RH 2+x )
概説:薄膜の分光学的研究と応用に
ついて
<分光学的な研究>
こ れ ま で に も 簡 単 に 述 べ て き た が 、 Eu と Yb を 除 く 希 土 類 二 水 素 化 物 (RH 2 )は
金 属 で あ る が H/R 比 が 2 よ り 大 き な 絶 縁 相 に 近 い 組 成 、 例 え ば YH 2.1 で は 、 抵 抗
率 の 温 度 依 存 性 が 半 導 体 的 で あ る 温 度 領 域 も 存 在 す る こ と が 報 告 さ れ て い る [35]。
更に、希土類三水素化物は半導体相になる。しかしながら、これらの物質につい
て、電子状態の解明に重要な情報をもたらす分光測定の報告は少ない。ここでは、
比 較 的 報 告 の 多 い YH 2 に つ い て 、 筆 者 ら の 報 告 [26]を 中 心 に ま と め る 。 Y や La
な ど で は 、 薄 膜 化 し た 希 土 類 水 素 化 物 の H/R 比 が 2 か ら 3 に 変 化 す る こ と に よ っ
て 、 金 属 相 か ら 絶 縁 相 に 転 移 す る こ と [36,37,38]( 図 1-16 参 照 )な ど が 見 出 さ れ て
お り 、 こ の 金 属 - 絶 縁 体 転 移 現 象 は 調 光 窓 材 料 ( ス イ ッ チ ャ ブ ル ミ ラ ー )な ど の 光
学素子のへの応用の観点から興味深ものの、これらの膜は Y 膜の保護や触媒反
応 を 目 的 に そ の 上 に Pd 層 を 設 け て お り 、 詳 細 な 分 光 学 的 な 解 析 に は 不 向 き な 構
成 と な っ て い る 。 そ の た め に 、 筆 者 ら は 石 英 基 板 上 に YH 2+δ (-0.3<δ<0.05)膜 を 作
図 1-16
YH 2 -YH 3 お け る 透 過 率 と 水 素 濃 度 の 関 係 。
- 28 -
製 し 、 電 子 輸 送 及 び 分 光 学 的 特 性 を 調 べ た [26]。 図 1-17 に そ の 結 果 を 示 す 。
図 1-17
YH 2+δ (δ=-0.05)膜 の 反 射 率 と 透 過 率 の 測 定 結 果 [26]。
図 1-18
YH 2 の バ ン ド 計 算 の 結 果 [39] 。
水 素 化 前 の Y 膜 の 抵 抗 率 は 、 96-160.μΩcm で あ る が 、 YH 2+δ (-0.3<δ<0.05)膜 で
は 、 45-80.μΩcm と 小 さ く な り 、 温 度 依 存 性 は 金 属 的 で あ る 。 そ れ に も 関 わ ら ず 、
プ ラ ズ マ 端 と 考 え ら れ る 反 射 端 は 赤 外 領 域 の 1.56eV に あ る 。 1.5eV<ħω<2.0eV に
- 29 -
光 を 透 過 す る 領 域 が あ る が 、 こ れ は 、 以 下 の 2 つ の 理 由 に よ る 。 約 1.5.eV 以 下 で
光 が 透 過 し な い の は 、 Drude-type の 自 由 電 子 プ ラ ズ マ に よ っ て 光 が 反 射 さ れ る た
め で あ る 。 2.0eV 以 上 で 光 を 透 過 し な い の は 、 図 1-18[39]に 示 す よ う に H(1s:Γ’ 2 )
バ ン ド と Y(4d:Γ’ 25 )バ ン ド の ギ ャ ッ プ は 約 2.5eV で あ り 、 そ の 遷 移 に 相 当 す る エ ネ
ル ギ ー に て 吸 収 が お こ り 、 光 を 透 過 し な い た め と 考 え ら れ る [26]。 図 1-19 に 透 過
率のピ-ク位置と δ の関係を示す。透過率のピーク位置が上述したバンド間遷移
に 依 存 し て 変 化 す る と す る な ら ば 、 H(1s)の バ ン ド と Y(4d)バ ン ド の ギ ャ ッ プ は
δ=-0.1 で 最 大 と な る [26]。
図 1-20 に 反 射 率 を ク ラ マ ー ス ・ ク ロ ー ニ ッ ヒ 変 換 し 、 そ の 光 学 伝 導 度 か ら 求 め た
緩 和 時 間 と δ の 関 係 を 示 す 。 抵 抗 率 の 極 小 値 を 示 す δ=-0.1(図 1-14 参 照 )近 傍 に
て緩和時間も最大となっている。ホール係数は、正であり、通常の金属より一桁以
上 小 さ く な っ て い る 。 単 一 キ ャ リ ヤ ー を 仮 定 す る と イ ッ ト リ ウ ム (Y)あ た り の キ ャ リ ヤ
ー 数 は 10 個 と 現 実 的 で な い 値 に な る 。 こ れ は こ の 系 が 両 極 性 の キ ャ リ ヤ ー を 持 つ
こ と を 意 味 し て い る [26]。
図 1-19 YH 2+δ (-0.3<δ<0.05)膜 の 透 過 率 の
ピ ー ク エ ネ ル ギ ー と δ の 関 係 [26]。
- 30 -
図 1-20
YH 2+δ (- 0.3<δ<0.05)膜 の 緩 和 時 間 と ホ ー ル 係 数 [26]。
以上、簡単にイットリウム二水素化物膜の特徴的な結果をまとめた。このように
希土類水素化物を薄膜化し、分光学的測定、解析とホール効果の測定をすること
によって、ホール係数が小さく、且つプラズマ端が赤外領域にあるなどの、電子物
性の異常性が浮き彫りになっている。残念ながら Y 以外の希土類水素化物でこの
ような分光学的な測定例は、ほとんど報告されていないのが現状である。
- 31 -
<応用>
半導体に代表されるように様々な物質が薄膜化されデバイスに使用されている。
上述したように、希土類水素化物薄膜はスイッチャブルミラー(調光窓材料)など
の光学素子応用への期待に拘わらず、そしてこれに限らず実用レベルに達したも
のは少ない。ここでは実用レベルにある希土類水素化物薄膜のデバイス応用の
例 と し て 水 素 雰 囲 気 中 で の YH 2 -YH 3 に お け る 金 属 (M)-非 金 属 (I)転 移 を 利 用 し た
水 素 セ ン サ - [40]と 筆 者 ら が 開 発 し た 冷 陰 極 管 へ の 応 用 [41]を 紹 介 す る 。
1. 水 素 セ ン サ - へ の 応 用 [40]
Y 膜 上 の 水 素 透 過 膜 と し て 、 こ れ ま で の Pd に 変 わ り AlN あ る い は SiN x な ど に
Pd を 分 散 さ せ た コ ン ポ ジ ッ ト 膜 を 使 用 し た 。 水 素 雰 囲 気 中 で コ ン ポ ジ ッ ト 膜 を 透 過
す る 水 素 に よ っ て Y 膜 が YH 2 -YH 3 膜 に 変 わ り 、 そ の 膜 の 抵 抗 変 化 を モ ニ タ ー す
ることによって水素を検知する。コンポジット膜を使用することにより、センサーとし
ての安定性(耐環境)が増したとしている。(株)ミクニと岩手大学とで共同開発さ
れ 2009 年 度 内 に 商 品 化 予 定 。
2. 冷 陰 極 管 の 電 極 材 料 へ の 応 用 [41]
携帯情報機器液晶パネルのバックライトに使用される冷陰極管の低消費電力
化は重要な課題であった。冷陰極管のグロ-放電の電圧には陰極降下電圧と呼
ばれる非発光部分が存在する。この無駄な部分の電圧を小さくするために、当初、
筆 者 ら は 仕 事 関 数 が 小 さ く 、 且 つ 安 定 性 ( 耐 ス パ ッ タ 性 等 ) の 良 い Y2O3 に 注 目 し
た 。 そ し て 、 電 極 と し て Y 2 O 3 /Y/金 属 基 板 か ら 成 る 電 極 を 作 製 し 、 従 来 の 冷 陰 極 管
に 使 用 し た と こ ろ 、 放 電 電 圧 は 、 従 来 品 (Ni)の 220V か ら 170-175.V ま で 低 下 し 、
冷 陰 極 管 の 光 束 効 率 は 約 30%改 善 し た 。 こ の 冷 陰 極 管 は 実 用 化 さ れ 量 産 化 さ れ
た 。 し か し な が ら 、 Y2O3 を 電 極 に 使 用 し た 場 合 、 放 電 電 圧 は 初 期 状 態 か ら 時 間 経
過 に し た が い 上 昇 し 、 初 期 の 良 好 な 特 性 を 維 持 で き な い 。 そ の た め に 、 Y 2 O 3 /Y/
金属電極を上回る特性と安定性を示す電極の開発が必要となった。放電電圧の
上昇は、 通常の 冷陰極 管電極材 料に は導電体 が使用 されているに も関わらず、
Y2O3 が 絶 縁 体 で あ り 、 そ の た め 、 放 電 集 中 が 起 こ り 電 極 が 劣 化 す る こ と に 原 因 が
あ る と 考 え 、 こ れ ら の 性 質 を 満 た す 電 極 材 料 と し て 、 筆 者 ら は YHx(x ~ 2 程 度 )/
金 属 電 極 を 見 い だ し た [41]。 こ の 電 極 は 金 属 基 板 上 の Y 膜 を 水 素 化 す る こ と に よ
っ て 得 ら れ る 。 YHx ( x ~ 2)/金 属 電 極 の 場 合 、 以 下 の よ う な 特 徴 が 見 ら れ た 。
1. 放 電 電 圧 は 、 従 来 品 (Ni)の 220.V か ら 166-170.V ま で 低 下 。
2. 管 電 流 5.mA に て 7500 時 間 以 上 、 管 電 流 3.mA に て 10000 時 間 以 上 を 達 成 。
- 32 -
特に長時間の放電の安定性に関して著しい改善が見られ、十分な実用性を有す
る 冷 陰 極 管 を 作 製 で き た 。 図 1-21 に そ の 放 電 電 圧 の 経 過 時 間 依 存 性 を 示 す 。
350
Lamp Voltage ( V )
300
YH217
YH215B
250
従来品Ni
200
150
100
50
1
10
100
1000
10000
Elapsed Time ( h )
350
YH201
YH203
YH207
Lamp voltage (V)
300
250
従来品 Ni
200
150
100
50
1
10
100
1000
10000
Elapsed time(H)
図 1-21
YH x (x ~ 2)の 電 極 を 使 用 し た 冷 陰 極 管 の 放 電 電 圧
上 が 5mA,下 が 3mA で 放 電 さ せ た 場 合 [41]。
- 33 -
1-7 SmH 2+δ の こ れ ま で の 研 究
これまで述べたように、希土類二水素化物は、化学量論組成からの過剰な水素
により、その磁性は複雑に変化する。又、薄膜を使用した分光学的研究も興味深
いものがあるが、 Y 膜を除き、ほとんどなされていない。
そこで、本研究は、希土類水素化物としては、比較的安定で、薄膜においても
取 り 扱 い が 容 易 な SmH 2+δ に 注 目 し て 、 バ ル ク 及 び 薄 膜 に つ い て そ れ ぞ れ 異 な る
観点からの研究を行った。
<SmH 2+δ : 構 造 と δ の 範 囲 >
SmH 2+δ の 構 造 は 立 方 晶 (FCC)の CaF 2 型 で あ り 、 幅 広 い 水 素 量 の 範 囲 で 存 在
す る 。 図 1-22 に SmH 2+δ の 格 子 定 数 と 組 成 比 (H/Sm)の 関 係 を 示 す [42,43,44]。 δ
の 許 容 さ れ る 範 囲 は 報 告 に よ り 異 な る 。 例 え ば Greis ら [42]の 報 告 で は 、 -0.05 ≦
δ ≦ +0.35 で あ る が 、 Pebler ら [44]は -0.08 ≦ δ ≦ +0.55 と よ り 広 い 範 囲 で の 存 在 を
報告している。
いづれの報告でも δ ≧ 0 の範囲では、 δ が増加するとともにその格子定数は減
少 す る 。 こ れ は SmH 2+δ 特 有 の 性 質 で は な く 、 CaF 2 構 造 を 持 つ 他 の RH 2+δ で も 観
測 さ れ て い る [44]。 YH 2+δ お け る 中 性 子 回 折 及 び 非 弾 性 散 乱 の 結 果 か ら 、 δ ≧ 0
領域における δ の増加に伴う格子定数の減少は O サイト水素の引力相互作用に
よ る も の で あ る と 結 論 づ け ら れ て い る [24]。
Sm 3 H 7 の 存 在 が Greis ら [42]に よ り 報 告 さ れ た が 、 こ れ ま で 他 の 研 究 者 か ら の 報
告はない。
<バルク:磁性>
1. SmH 2+δ : δ=0 の 磁 性
化 学 量 論 組 成 の SmH 2 は 、 ネ ー ル 温 度 が T N =.9.6.K の 反 強 磁 性 体 で あ り 、 そ の
磁 気 構 造 は propagation vector τ =1/2[111]を 持 つ MnO 型 と な る [45]。 Żogal[46]
は 帶 磁 率 の 温 度 依 存 性 の 測 定 か ら ネ ー ル 温 度 が T N =.9.7.K で あ る こ と 、 結 晶 場 の
影 響 が 小 さ い こ と 、 サ マ リ ウ ム が 3 価 (Sm 3+ )で あ る こ と を 報 告 し た 。 図 1-23 に 彼 の
帶 磁 率 の 測 定 結 果 を 示 す 。 Vajda ら [47]は 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 の 測 定 か ら 、 ネ
ー ル 温 度 が T N =.9.6.K で あ り 、 結 晶 場 の 影 響 も 小 さ い こ と を 報 告 し た 。
- 34 -
0.5390
1.92≦H/Sm≦2.55
Lattice constant ( nm )
0.5385
1.95≦H/Sm≦2.35
0.5380
0.5375
A.Pebler, et al[44]
0.5370
J.N. Daou, et al[43]
0.5365
0.5360
O.Greis, et al[42]
0.5355
0.5350
0.5345
1.8
2.0
2.2
2.4
2.6
2.8
3.0
H/Sm
図 1-22
SmH 2+δ の 組 成 比 (H/Sm)と 格 子 定 数 の 関 係 。
図 1-23
SmH 2 の 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 [46]。
- 35 -
2. SmH 2+δ : δ=0 、 δ>0
の抵抗
化 学 量 論 組 成 の SmH 2 に 過 剰 な 水 素 が 付 加 さ れ た 場 合 の 抵 抗 率 の 温 度 依 存
性 の 変 化 が 調 査 さ れ た [47]。
図 1-24
図 1-25
図 1-24,1-25 そ の 結 果 を 示 す 。
SmH 2+δ の 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 [47]。
SmH 2+δ の 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 [47]。
Q の添え字があるデータは
測定時に急冷した場合の結果。
SmH 2 (δ=.0)の 場 合 に ネ ー ル 温 度 は T N =.9.6.K で シ ャ - プ な 抵 抗 の 温 度 変 化 と し
て 表 れ た が 、 δ の 増 大 に つ れ て 低 下 し 、 SmH 2.16 (δ=.0.16)で は 8.K ま で 低 下 す る 。
し か も SmH 2.26 (δ=.0.26)に お い て 抵 抗 の 温 度 変 化 は ブ ロ ー ド に な り 、 転 移 は は っ き
りしなくなる。特に、測定時に低温まで急冷して測定した試料にて顕著となるこの
現 象 は 、 δ=.0 の 場 合 の 結 晶 場 の 基 底 状 態 が Γ 8 ( 図 1-13 に あ る よ う に 完 全 結 晶 の
場 合 SmH 2 の Sm は T サ イ ト 水 素 原 子 に よ り 8 配 位 に あ り 、 結 晶 場 の 対 称 性 は
Cubic と な る 。 ) で あ り 、 そ の 4 重 縮 退 が 、 δ=.0.26 に お い て 、 O サ イ ト に 侵 入 し た
- 36 -
水 素 に よ る 摂 動 の 結 果 、 2 重 +2 重 に 分 裂 し た た め で あ る と 考 え ら れ て い る [47]。
δ>.0 に お い て 、 T N 以 上 の 温 度 領 域 で 、 抵 抗 率 の 温 度 依 存 に 極 大 、 極 小 が 現 れ る 。
SmH 2.16 (δ=.0.16)の 場 合 、 10.8.K に 極 大 が 、 12.6.K に 極 小 が 現 れ る 。 こ の こ と は 、
incommensurate 相 や short-range ordering に 関 係 す る と 考 え ら れ て い る [22]。
3. SmH 2+δ : δ=0?
比熱
化 学 量 論 組 成 に あ る SmH 2 の 比 熱 に つ い て の 報 告 [48]に は 、 幾 つ か の 点 で 奇
妙 な 点 が 存 在 す る 。 図 1-26 に そ の 比 熱 の 温 度 変 化 を 示 す 。 比 熱 の 結 晶 場 の 解 析
か ら 基 底 状 態 が Γ 7 で あ り 、 Sm が 価 数 混 合 状 態 に あ る ( (2/3)Sm 3+ と (1/3)Sm 2+ )可
能 性 も 示 唆 さ れ た [48]。 比 熱 の 測 定 か ら 求 め ら れ た 磁 気 転 移 温 度 は T N =.6.75.K と
な り 、 帯 磁 率 や 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 か ら 求 め ら れ た 磁 気 転 移 温 度 よ り 3K 近 く 低
い 。 又 、 図 中 の 転 移 温 度 近 傍 の 比 熱 に は 小 さ な カ プ ス が 現 れ て い る 。 Vajda[22]
は 、 抵 抗 率 の 測 定 結 果 [47]と の 対 応 か ら 、 図 1-26 の SmH 2 と さ れ て い る 試 料 は 、
無 視 で き な い 量 の δ が 存 在 し 、 SmH 2+δ で あ る 可 能 性 を 指 摘 し た 。
- 37 -
カプス
1.6
J.Opyrcal and Z.Bieganski:
Solid State Commun 26(1978)965
Cmag ( cal/mol.K )
1.4
1.2
Γ7
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
Γ8
20
40
60
80
100
120
140
160
Temperature ( K )
図 1-26
SmH 2 の 比 熱 の 温 度 依 存 性 と そ の 比 熱 へ の 結 晶 場 の 寄 与 。
結 晶 場 は Γ8 を 基 底 状 態 と し た 場 合 、 そ の 値 は 小 さ す ぎ る 。 一 方 、
Γ 7 を 基 底 状 態 し た 場 合 は 大 き す ぎ る [48]。
- 38 -
<薄膜:光学的>
SmH 2+δ の 分 光 学 的 研 究 例 も 極 め て す く な く 、 薄 膜 を 使 用 し た 研 究 が わ ず か に
報 告 さ れ て い る 。 YH 2+δ や LaH 2+δ 系 の 薄 膜 に お い て な さ れ る の と 同 様 に 、 酸 素
に 対 す る 保 護 層 と 触 媒 層 を 兼 用 し た Pd で 表 面 コ ー ト し た 系 、 す な わ ち 、
Pd(7.nm)/Sm(50.nm)/基 板 の 系 に て 実 験 が 行 わ れ た [49]。 図 1-27 に SmH 2+δ の 透
過 率 と 反 射 率 の 測 定 結 果 を 示 す 。 な お 、 δ の 値 は 不 明 で あ る 。 350-850.nm の 範
囲 で の 測 定 で あ る 。 透 過 率 は 750.nm 近 傍 で 極 大 を 持 ち 、 反 射 率 は 550.nm 付 近
で 極 大 、 850.nm に 極 小 を 持 つ 。 又 、 透 過 率 か ら 、 2.4.eV の ギ ャ ッ プ が 求 め ら れ 、
O サ イ ト に あ る 水 素 H の 1s 的 な バ ン ド か ら 伝 導 帯 の 遷 移 に 対 応 す る ギ ャ ッ プ で あ
ると考えられている。
図 1-27
SmH 2+δ の 透 過 率 と 反 射 率 の 結 果 [49]。
- 39 -
1-8
SmH 2+δ の 研 究 の 目 的 と 方 法
1. 磁 性 の 研 究 に 関 し て
Vajda ら [22]が 指 摘 し た よ う に 、 SmH 2 の 比 熱 測 定 [48]は 、 化 学 量 論 組 成 よ り 過
剰 に 水 素 を 含 む 系 で 行 わ れ た 可 能 性 が あ る 。 SmH 2+δ 系 の 磁 性 の 理 解 を 深 め る
た め に 特 に O サ イ ト に 侵 入 し た 水 素 に よ る Γ8 の 結 晶 場 に 対 す る 摂 動 の 効 果 が 比
較 的 少 な い [47]と 考 え ら れ て い る δ~0.16 近 傍 の 試 料 の 帯 磁 率 、 比 熱 の 測 定 及 び
解 析 を 行 い 、 SmH 2+δ の 結 晶 場 等 に つ い て 研 究 す る 。 そ し て こ の 系 の 混 合 原 子 価
の可能性も探る。又、重い電子系の可能性も探る。
2. 分 光 学 的 研 究 に 関 し て
SmH 2+δ に 関 し て 、 基 礎 的 な デ ー タ そ の も の が 不 足 し て い る 状 況 で あ る 。 分 光 学
的な理解を深めるために、薄膜試料作製の困難さも予想されるが、筆者らが
YH 2+δ [26]に つ い て 行 っ た の と 同 等 の 品 質 の 薄 膜 を 作 製 す る 。 200-30000.nm の 範
囲の反射率と透過率の測定、及び緩和時間の δ 依存性などを研究する。
- 40 -
実験方法
2
2-1
試料の同定
Yb 4 As 3 系 の 多 結 晶 試 料 は 標 準 的 な 封 入 管 型 の X 線 源 を 有 す る 回 折 装 置 の
θ-2θ 法 に よ っ て 、 又 、 単 結 晶 試 料 は ガ ン ド ル フ ィ カ メ ラ を 使 用 し た デ バ イ 写 真 に よ
って試料の同定及び格子定数の決定をした。これらの測定では、空気中の酸素
及び水分に対する保護膜として、多結晶の粉末試料の場合には真空グリ-ス、単
結晶の場合には透明なマニキュアを使用した。試料が単結晶であることの確認は、
3000 番 の カ - ボ ラ ン ダ ム で 表 面 を 研 磨 し て ル - ペ ま た は 低 倍 率 の 反 射 顕 微 鏡 で
表面を観察したのちラウエ写真をとりパターンを確認することによって行った。
SmH 2+δ 薄 膜 試 料 に つ い て は 、 回 転 ロ ー タ 型 の X 線 源 を 有 す る 回 折 装 置
(Rigaku RU200B Cu K α
50kV 200mA)を 使 用 し 、 以 下 に 記 述 す る 薄 膜 法 に よ っ
て、試料の同定及び格子定数の測定を行った。薄膜法の原理は以下に述べる通
りである。
回折X線
入射X線
β
α
2θ
α
試料
α=4゜
0.1
mm
Sy
r
et
α=10°
K
ic
α=20゜
α=45゜
0.01
0
図 2-1
50
100
2θ(deg.)
上 は X 線 の 入 射 角 度 と 回 折 X線 の 角 度 の 関 係 。
下は入射 X 線と K の関係。
- 41 -
薄膜試料の回折X線強度は、試料が薄いことから非常に微弱となる。そのため、
相対的にバックグランドが高くなり鮮明な回折線像を得ることがむすかしい。また
通 常 の デ ィ フ ラ ク ト メ ー タ は 2θ-θ ス キ ャ ン の た め に 、 入 射 X 線 の 角 度 が 高 角 度 に
なるにつれて X 線の通過する経路は短くなり、その結果、回折 X 線強度は益々
小 さ く な る 。 薄 膜 法 は 、 図 2-1 上 に 示 し た よ う に 、 測 定 対 象 試 料 に 対 す る 入 射 X
線 角 度 θ を 試 料 す れ す れ の 1-2 度 に 固 定 し 、 X 線 の 通 過 す る 経 路 を 長 く し て 、 回
折 X 線強度を得る方法である。薄膜法の場合、厚さ t の薄膜試料からの回折 X
線 強 度 Ir は 2-1 式 で 表 わ さ れ る 。
Ir = (I 0 S/μ)K
(2-1)
K={ sinβ/(sinα+sinβ)[ 1-exp{ -μt(cosecα+ cosecβ)} ]
Ir : 得 ら れ る 回 折 X 線 の 強 度
I0 : 吸 収 の な い と き の 試 料 の 単 位 体 積 あ た り の 回 折 X 線 強 度
S :入射 X 線束の断面積
μ :試料の線吸収係数
α :試料表面と入射X線のなす角
β :試料表面と回折 X 線とのなす角
2θ : 回 折 角 =α + β
2-1 式 求 め ら れ た 回 折 X 線 強 度 を 図 2-1 下 に 示 す 。 横 軸 に 回 折 角 、 縦 軸 に K の
値 , 及 び μt と α を バ ラ メ ー タ と し て 示 し た 。 し た が っ て 、 図 の K は 薄 膜 試 料 、 特 性
X 線、入射 X 線束の断面積がー定であるときの回折 X 線強度の相対的な値を示
し て い る 。 薄 膜 試 料 の 厚 さ t が 同 じ (一 定 )と き に は , 入 射 角 α を 小 さ く と る こ と に よ
っ て 、 回 折 X 線 強 度 を 増 す こ と が 図 2-1 よ り 理 解 で き る 。 た と え ば 、 μt=100 × 10
-4
の と き 、 α=4 度 に と る こ と に よ っ て 、 α=45 度 の 約 10 倍 に 回 折 X 線 強 度 を 得 る こ と
ができる。
- 42 -
試料の分析
2-2
SmH 2+δ 薄 膜 の 組 成 分 析 に は ラ ザ フ ォ ー ド 後 方 散 乱 /水 素 前 方 散 乱 法 を 使 用 し
た 。 又 、 SmH 2+δ 膜 中 の 不 純 物 、 特 に 酸 素 の 有 無 の 確 認 を 光 電 子 分 光 法
( Electron Spectroscopy for Chemical Analysis ) に よ り 行 っ た 。 以 下 に そ の 原 理
を簡単に述べる。
<ラ ザ フ ォ ー ド 後 方 散 乱 法 /水 素 前 方 散 乱 法 >
ラ ザ フ ォ ー ド 後 方 散 乱 法 ( Ratherford Backscattering Spectrometry 以 下 RBS )
と は 、 He イ オ ン な ど の 軽 い イ オ ン を あ る 運 動 エ ネ ル ギ ー に て 物 質 に 打 ち 込 み 、 物
+
質中の原子核により散乱された後のイオンの運動エネルギーを測定することによ
っ て 、 そ の 物 質 の 組 成 等 を 調 べ る 分 析 法 で あ る [50]。 図 2-2 に そ の 原 理 を 示 す 。
RBS で 使 用 す る イ オ ン の エ ネ ル ギ ー は 数 MeV で あ る 。 こ の よ う な エ ネ ル ギ ー の イ
オ ン が 物 質 に 入 射 し 、 図 2-2 左 に 示 す よ う に 元 素 と 衝 突 す る 場 合 、 重 い 元 素 で は
弾性散乱されるイオンが失う運動エネルギーは少なく、軽い元素では大きくなる。
又、同一元素により散乱される場合、より深い位置にある元素が失う運動エネルギ
ー は よ り 大 き く な る 。 図 2-2 右 に 、 石 英 基 板 に 作 製 し た SmH 2+δ 膜 の RBS の 実 測
デ ー タ を 示 す 。 黒 の ド ッ ト が 測 定 デ ー タ で あ る 。 こ の 実 測 値 は 、 Sm と Si と O 、 及
び Ar の 散 乱 と し て 説 明 さ れ る 。
水 素 前 方 散 乱 法 ( Hydrogen Forwardscattering Spectrometry 以 下 HFS)は 、 水
素より重い元素を測定対象試料に入射させ、試料内部の反跳水素のエネルギ-
と量を調べる分析法である。
<光 電 子 分 光 法 >
光 電 子 分 光 法 ( Electron Spectroscopy for Chemical Analysis 以 下 ESCA ) と
は 、 図 2-3 に 示 す よ う に プ ロ ー ブ と な る 紫 外 光 や X 線 を 測 定 対 象 試 料 に 入 射 さ せ 、
試料の構成原子の内殻から飛び出す電子の運動エネルギーからその内殻準位を
測定し元素を特定し分析する方法である。紫外光や X 線と内殻準位と電子の運
動 エ ネ ル ギ ー の 関 係 は 2-2 式 で 表 さ れ る [51]。
E kin = hν - E B
(2-2)
た だ し 、 E kin : 電 子 の 運 動 エ ネ ル ギ ー
hν :
プローブとなる紫外光や X 線のエネルギー
EB :
束縛エネルギー
- 43 -
したがって、プローブとなる紫外光や X 線のエネルギーが明らかであれば、電子
の 運 動 エ ネ ル ギ ー E kin
る 。 こ の EB
を 測 定 す る こ と に よ り 束 縛 エ ネ ル ギ ー EB を 知 る こ と が で き
が大きい場合、すなわち、対象とする物質のフェルミ面から十分に深
いレベルにある場合には、その電子は原子に局在しており、その束縛エネルギー
EB か ら 元 素 種 を 決 定 す る こ と が で き る 。 又 、 束 縛 エ ネ ル ギ ー EB
はその元素の化
学結合の影響を受けるために、対象試料の化学結合状態に関する情報も得られ
る 。 尚 、 固 体 中 か ら 真 空 中 へ 脱 出 で き る 電 子 は 、 試 料 対 象 表 面 の 数 nm 未 満 に 限
定されるため、この分析方法は、主に表面分析に使用される。又、対象試料内部
を 分 析 す る 場 合 は 、 Ar ガ ス で 試 料 を ス パ ッ タ エ ッ チ ン グ し て 測 定 を 行 う 。 し た が っ
て 、 対 象 試 料 の Ar ガ ス ス パ ッ タ に よ る 組 成 変 化 に は 十 分 に 注 意 を 払 う 必 要 が あ る 。
本研究では、スパッタエッチングしての分析は対象試料の酸素不純物の有無の確
認に使用された。
プ ロ ー ブ が X 線 の 場 合 を XPS ( X-ray photoelectron spectroscopy ) 紫 外 線 の
場 合 を UPS( Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy )と 呼 ぶ 。
20000
18000
Sm
16000
Yield ( count )
14000
12000
10000
8000
Si
6000
O
4000
Ar
2000
0
500
1000
1500
2000
2500
Energy ( keV )
図 2-2
試 料 か ら の 散 乱 の 模 式 図 と 石 英 ガ ラ ス 基 板 上 SmH 2+δ 試 料 の 測 定 例 。
- 44 -
真空準位
E
hν
EB
図 2-3
試料からの光電子放出の模式図。
- 45 -
kiv
2-3 電 気 抵 抗 、 磁 気 抵 抗 、 ホ - ル
効果の測定
電 気 抵 抗 率 測 定 の 時 の 模 式 図 を 図 2-4 に 示 す 。 通 常 、 単 結 晶 や 多 結 晶 試 料 の 抵
抗 率 を 求 め る に は 、 図 2-4 に 示 す よ う に 断 面 積 A の 直 方 体 試 料 に 、 x 方 向 に 流 す
電流を I 、端子間の距離を L 、その電圧降下を V とすると、電気抵抗率 ρ は以下
の 2-3 式 で 与 え ら れ る 。
ρ
=
V A
I L
(2-3)
又 、 磁 場 B を z 方 向 に 与 え た 場 合 ホ ー ル 係 数 は 2-4 式 で 与 え ら れ る 。
RH =
V Ht
(2-4)
IB
電流端子を電流を流す試料断面に一様に流すように形成し、電流端子間に
電流端子とは別に、その内側に電圧端子を設け電気抵抗率を測定する方法を四
端 子 法 と 呼 ぶ 。 Yb 4 As 3 系 の 単 結 晶 、 及 び 多 結 晶 試 料 の 電 気 抵 抗 率 測 定 は 四 端
子法で行った。単結晶の場合、ラウエ写真によって方位を決め、測定電流方向に
合わせて湿式研磨(流動パラフィン+研磨材)で試料を直方体に成形した。その
場合電流の流す方向に 比べて、厚みと幅 を十分小さく するよう に注意を払っ た。
測 定 に 使 用 し た 試 料 の 大 き さ は 、 長 さ 3.mm
幅 1.mm
厚 さ 0.3.mm 程 度 で あ る 。
図 2-5 に 電 気 抵 抗 測 定 シ ス テ ム と 抵 抗 測 定 用 端 子 の 例 で あ る 。 図 2-5 の 右 上 に
示すように、銅線の被服をソルコ-トで剥しエポキシ板の四隅に付ける。銅線をば
ね の様にして試料に押しつけ、銀ペ-ストをたらして、端子付けを完了する。その
際、接触抵抗を極力小さくすることが必要である。ペレット状の多結晶焼結試料の
場合、インジウムを直接試料に圧着することによって端子を取り付けた。電気抵抗
の測定以外にも、ホール効果測定などの目的に応じて、端子を付けた試料を各測
定用のホルダ-につけ測定を行った。電気抵抗のホルダ-は 2 重管になっており、
断熱層を真空に引くことによって、低温側の昇温をしている。定電流源と測定対
象試料の間に標準抵抗を入れ、この抵抗間の電位差から電流を求めた。
磁 気 抵 抗 の 測 定 に は 超 伝 導 マ グ ネ ッ ト を 使 用 し て 、 10.T ま で の 磁 場 中 で 行 っ た 。
ま た ホ - ル 効 果 の 測 定 は 常 伝 導 マ グ ネ ッ ト を 利 用 し て 1.T の 磁 場 中 で 行 っ た 。
- 46 -
図 2-4
電気抵抗率の測定とホール係数の測定原理図。
- 47 -
リード線の固定
Cuのリード線
定電流電源
標準抵抗(1ohm)
スキャナー
デジタルボルトメーター
PC
図 2-5
電気抵抗率温度依存性測定用システムと試料への電極付け。
SmH 2+δ 系 薄 膜 の 室 温 で の 電 気 抵 抗 測 定 は 四 端 子 法 で は な く 、 四 深 針 法 で 行 っ
た。この方法は、絶縁基板上の導電性薄膜に電流端子用の針、その内側に電圧
端子用の針をあて抵抗を測定する方法であり、基板を加工や切断あるいは汚染を
することなく簡単に測定が可能であるという利点を有する。電圧ー電流端子用の
- 48 -
針の間隔が等間隔であり、針の間隔に比べて膜厚が十分に小さい場合、シート抵
抗 は 2-5 式 で 与 え ら れ る [52]。
R
R
□
□
= (V/I)(π/ln2)
(2-5)
:シ ー ト 抵 抗
膜 厚 を d と す る と 電 気 抵 抗 率 は 2-6 式 と な る [52]。
ρ = (V/I)(π/ln2)d
(2-6)
薄 膜 の 電 気 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 の 測 定 シ ス テ ム と 測 定 用 試 料 の 形 状 を 図 2-6 に
示 す 。 電 気 抵 抗 率 測 定 に は Van
der
Pauw を 使 用 し た 。 薄 膜 付 き 基 板 を 6-8mm
程 度 の ほ ぼ 正 方 形 に 近 い 四 角 形 に 切 断 し 、 電 極 は 、 正 方 形 の 4 角 の 1mm 2 程 度
に 簡 易 型 ス パ ッ タ 装 置 (サ ン ユ ー 電 子 SC-701 ) に て Au を お よ そ 100nm 成 膜 し た
後に、金属板片を接触させ形成した。ほぼ正方形の四隅に電極を形成した。膜質
が 一 定 で あ る な ら 、 Van der Pauw に よ る 電 気 抵 抗 率 は 2-7 式 で 与 え ら れ る [52]。
ρ = (π/ln2)(R 1 /2+R 2 /2)d
ただし、
R1 =
V cd /I ab
R2 =
(2-7)
V ab /I cd
電気抵抗率の温度依存性測定システムは、定電流源と電圧計から成り、温度はク
ラ イ オ 冷 凍 機 と そ の 温 度 制 御 装 置 で コ ン ト ロ ー ル す る 。 測 定 可 能 な 温 度 領 域 は 10
K から室温までである。
- 49 -
a
c
b
d
RS-232C
クライオスタット
温度制御装置
PC
温度計
GP-IB
定電流電源
真空排気
装置
図 2-6
電圧計
圧縮機
ユニット
電気抵抗率測定用システムと薄膜試料の電極形状。
- 50 -
2-4
帯磁率の測定
振子型の磁気天秤、あるいは化学天秤型磁気天秤を使用して帯磁率の測定を
行った。両者の装置とも磁性体が不均一磁場中で受ける力を検出することによっ
て そ の 帯 磁 率 を 測 定 す る こ と を 原 理 と し 、 Faraday 法 の 一 種 で あ る 。
< Faraday 法 の 原 理 >
Faraday 法 原 理 の 模 式 図 を 図 2-7 に 示 す 。 磁 気 モ ー メ ン ト M を 不 均 一 磁 界 H
の中に置くと、次式で表される力を受ける
F = (M · ▽)H
ただし、
▽=
(
(2-8)
∂
∂ ∂
,
,
)
∂ x ∂ y ∂z
電磁石で磁界を作ると、下図のような不均一磁界ができる。
Z
Y
F
図 2-7
不均一磁場の様子。
不均一磁界中では、試料に異方性がなければ、磁気モ-メントMは必ず磁界 H
の方向に向くので
Mx
∂ Hx = 0
,
∂x
My
∂Hy = 0
∂y
と な る 。 し た が っ て 、 2-8 式 は 2-9 式 の 様 に な る 。
- 51 -
F = Mz
∂H
∂z
(2-9)
図 2-7 に お い て 試 料 に は 、 矢 印 の 方 向 に 力 が 働 く 。 こ の 力 は 試 料 の 位 置 を 変 化 さ
せる方向に働く。その極僅かな変化をなんらかの方法、例えば差動トランス等で
検出し、試料の位置が変化しない様に逆方向に力を加えるようにフィ-ドバックコ
イ ル に 電 流 を 流 す 。 こ の 電 流 は 試 料 に 加 わ る 力 に 比 例 す る 。 MnF 2 の 様 な 標 準 試
料を試料ホルダーにセットして、磁場を印加し、フィードバックコイルの電流を計る
ことで、フィードバックコイルの電流値と帯磁率の関係を求めることができる。
振 り 子 型 の 磁 気 天 秤 の 例 を 図 2-8 に 示 す 。 こ の 磁 気 天 秤 は 振 子 の 支 点 に お け
る横方向の力を相殺するために二つのフィ-ドバックコイルを使用していることに
特 徴 を 持 つ [53]。 コ イ ル が 一 つ の 場 合 に 比 べ て 、 振 子 の 支 点 で の 水 平 方 向 に か
かる力が減少し、支点の形状を感度のみを考えて設計できるため高感度な装置
になる。この天秤では位置検出に差動トランスを使用している。本研究では温度
の微調節が可能な様に、試料の周りを二重管に改造して使用した。
化学天秤型磁気天秤は位置検出に光を利用している。すなわち、天秤の上部
に 鏡 を 置 き 光 を あ て 、 そ の 反 射 光 を 直 列 に つ な が れ た 二 個 の CdS で 受 け る 。
こ
の CdS は 、 こ の ブ リ ッ ジ 回 路 の 一 部 を 構 成 し て お り 、 二 個 の CdS に あ た る 光 が 等
しいときに天秤はバランスする。極僅かな変位が生ずるとフィ-ドバックコイルに電
流 が 流 れ る 様 に 設 計 さ れ て い る 。 こ の 天 秤 は 4.2K か ら 室 温 ま で の 測 定 の ほ か に
高 温 側 ( 室 温 か ら 800K ) の 測 定 に 使 用 し た 。 高 温 で 測 定 す る と き の 様 子 を 図 2-9
に示す。高温帯磁率測定のためのヒ-タ-にニクロム線を使用した炉を使用した。
電磁石のホ-ルピ-スの昇温を避けるために、炉とホ-ルピ-スの間に放熱用の
Cu 板 を 置 い た 。 高 温 測 定 に お い て 、 小 さ な ブ ラ ン ク ( 試 料 の ホ ル ダ - で あ る バ ス
ケットや、バスケットを吊る石英ガラスの反磁性及び熱電対の常磁性による測定へ
の寄与)の温度変化が測定に大きく影響するために、ブランクの温度変化の精密
な 測 定 が 必 要 で あ る 。 温 度 測 定 用 の 熱 電 対 は 帯 磁 率 の 小 さ い Pt-PtRh を 使 用 し
た。
- 52 -
図 2-8
図 2-9
振 り 子 型 磁 気 天 秤 の 構 造 [53]。
電気炉を取り付けた化学天秤型の磁気天秤の試料ホルダー近傍。
- 53 -
2-4
比熱、磁場中比熱の測定
<比熱測定:断熱法>
比熱の測定方法には幾つかの方法があるが、比熱を温度の関数として求め比
熱の値、転移温度などを精密に求める方法として断熱法がある。本研究では、低
温領域の比熱、及び磁場中比熱の測定に断熱法を用いた。
断 熱 さ れ た 試 料 に 与 え る 熱 量 を Δ Q 、 そ の 時 の 試 料 の 温 度 上 昇 を ΔT と す る 。
Δ Q は ヒ ー タ に 流 す 電 力 W と 時 間 t の 積 で 与 え ら れ 、 試 料 の 比 熱 は 2-10 式 と 書
ける。
C = Δ Q/ Δ T =( W Δ t )/ Δ T
(2-10)
測 定 に 使 用 し た シ ス テ ム の ブ ロ ッ ク 図 を 図 2-10 に 、 試 料 を セ ッ ト す る 断 熱 容 器 の
構 造 を 図 2-11 に 示 す 。 初 期 冷 却 は 測 定 セ ル 内 に He ガ ス を 5.Torr 導 入 し 、 そ の
容 器 を 液 体 He に 浸 け て 行 い 。 そ の 後 、 測 定 セ ル 内 を 真 空 ポ ン プ で 排 気 す る こ と
によって、断熱を得る。又、この測定セルを超伝導マグネットに導入することにより、
磁場中比熱の測定が可能である。
図 2-10 に 示 し た 測 定 シ ス テ ム の ブ ロ ッ ク 図 に 見 る よ う に シ ス テ ム は 単 純 で あ る 。
試料に与えられる熱量Δ Q はヒ-タ-に定電流電源から一定時間与えられる電
流によるジュ-ル熱によって得る。ヒ-タ-の電圧はデジタルボルトメータ
( TR6851 ) で 計 測 さ れ て 、 PC に お く ら れ 熱 量 が 計 算 さ れ る 。 温 度 計 へ 流 れ る 電
流 は 温 度 計 に 直 列 に つ な が れ た 1.kΩ の 標 準 抵 抗 の 電 圧 と し て 読 み と ら れ 、 手 動
で PC に 入 力 す る 。 温 度 計 の 電 圧 は デ ジ タ ル ボ ル ト メ ー タ ( 2501A ) に よ っ て 読 み
と ら れ 、 PC に お く ら れ る 。
断 熱 容 器 内 ( 図 2-11 ) の 試 料 台 に は 、 温 度 計 と ヒ ー
タ ( マ ン ガ ニ ン 線 700.Ω ) が セ ッ ト さ れ 、 温 度 計 に は カ ー ボ ン グ ラ ス 温 度 計
( CGR-1000 ) を 用 い た 。
こ の CGR 温 度 計 は 温 度 サ イ ク ル を 繰 り 返 す う ち に 抵 抗 値 が 変 化 す る 欠 点 が あ
る た め に 、 必 要 に 応 じ て Cu な ど の 標 準 試 料 で そ の 精 度 を 確 認 す る 必 要 が あ る 。
Cu の 文 献 値 [54]と 本 シ ス テ ム の 測 定 例 を 図 2-12 に 示 す 。
- 54 -
図 2-10
磁場中比熱のシステム。
- 55 -
リード線
スタイキャスト
真空ライン
ベークライト
真空容器
テグス
シールド
ヒーター
温度計
図 2-11
試料をセットする容器の構造。
- 56 -
80
実測値
文献値
70
Cp ( mJ/mol.K)
60
50
40
30
20
10
0
0
2
4
6
8
Temperature ( K )
図 2-12
Cu の 比 熱 測 定 結 果 、 Cu 比 熱 の 標 準 値 [54]と の 比 較 。
- 57 -
10
<比熱測定:緩和法>
水 素 化 物 の 比 熱 測 定 に は Quantum
design 社 製 PPMS(Physical
Properties
System)を 使 用 し た 。 こ こ で は 、 こ の 装 置 で 用 い ら れ る 緩 和 法 の 原 理
Mesurement
について記す。
試料の乗せるアデンダには、ヒータと温度計がセットされ、熱伝達係数 K 、断面
積 S の ワ イ ヤ - で 熱 浴 と 繋 が れ て い る 。 そ の 状 態 で ヒ ー タ に 電 力 P*t=Q(t)を 供 給
す る と 、 試 料 及 び ア デ ン ダ は 熱 浴 よ り ΔT だ け 高 い 温 度 と な る 。 電 力 の 供 給 を 止 め
ると試料及びプラットホームから熱浴に熱が流れ、両者の温度差は減少する。この
温 度 変 化 は 、 比 熱 を 用 い て 2-11 式 で 近 似 的 に 表 さ れ る 。
C
dT
dt
= - KS(T - Tbath) + Q
C
:
アデンダ+試料の比熱
K
:
熱伝達係数
S
:
(2-11)
ワイヤ-の断面積
T bath : 熱 浴 の 温 度
T
:
試料及びアデンダの温度
Q
:
ヒータに供給される電力
時 間 t=0 で 、 ヒ ー タ に 流 す 電 流 を 止 め る と 、 T = T bath exp(-t/ τ )で 緩 和 し て 熱 浴 の
温 度 に 近 づ く 。 2-11 式 に お い て Q=0 と し た 場 合 τ =
C/KS と な る 。 KS が 装 置 パ
ラメータとして判明していれば、緩和時間からアデンダ+試料の比熱が求まり、試
料の比熱を知ることができる。 実際の測定では、プラットホームと試料間での良
質な熱接触を得るために、アピエゾングリースを使用するためにこの寄与も考慮
する必要がある。
- 58 -
2-6
反射及び透過率の測定
0.41-6eV の 範 囲 の 反 射 率 と 透 過 率 は 、 島 津 製 作 所 UV-3100PC を 使 用 し て 測
定 し た 。 こ れ よ り 長 波 長 の 0.5-0.05.eV の 範 囲 の 反 射 率 と 透 過 率 は 日 本 分 光
FT/IR-300 を 使 用 し て 測 定 し た 。
図 2-13 島 津 UV-3100PC の 光 学 系 。
図 2-13 に 0.41-6eV の 範 囲 の 測 定 に 使 用 し た 光 学 系 を 示 す 。 分 光 器 は グ レ ー テ ィ
- 59 -
ン グ ダ ブ ル モ ノ ク ロ 方 式 と な っ て お り 、 PbS 検 知 器 は フ ォ ト マ ル に 対 し 下 方 に ト ロ イ
ド 鏡 で 集 光 し て る 。 こ れ に よ り 試 料 側 光 束 、 対 照 側 光 束 に 対 し て PbS は 対 称 な 位
置となり、光束のアンバランスをなくしている。第 1 分光器の前にメカニカルチョッ
パを直いて、光源光を断続し、ロックイン増幅している。可視部光源にはタングス
テ ン (W)ラ ン プ を 採 用 し て い る 。 こ の 波 長 範 囲 の 反 射 率 測 定 は 標 準 ミ ラ ー の ア ル ミ
(Al)を 参 照 系 と し て 用 い て 行 わ れ た 。 標 準 ミ ラ ー の ア ル ミ (Al)の 絶 対 反 射 率 の 測
定は、上記分光高度計に積分球を付加して行った。
コリメータ-鏡
光源
ビームスプリッタ
検出器
固定鏡
集光鏡
移動鏡
図 2-14
試料
集光鏡
日 本 分 光 FT/IR-300 の 光 学 系 。
図 2-14 に 0.5-0.05.eV の 範 囲 の 測 定 に 使 用 し た 装 置 の 光 学 系 を 示 す 。 こ の 装 置
は フ ー リ エ 変 換 型 の 赤 外 分 光 光 度 計 ( FT-IR ) で あ る 。 赤 外 光 源 か ら の 光 は ビ ー
ムスプリッタに入射して、二つの光束に分かれる。光束の一つは固定鏡で、もう一
つは移動鏡で反射され、ビームスプリッタに戻され合成される。このときに、光は
同位相の場合に強めあい、逆位相の場合弱めあう干渉効果を引き起こす。この場
合に、移動鏡を動かすと、光路差による干渉パターンが得られる。この光は試料
位置で焦光され、試料を透過した光は検出器に集光される。検出器で得られた光
路差と光の強度の関係をフーリエ変換して赤外スペクトルが得られる。
FT-IR を 用 い た 実 際 の 絶 対 反 射 率 の 決 定 は 以 下 の 手 順 で 行 っ た 。
1.FT-IR に て Au 膜 の 反 射 率 を 測 定 す る 。 (Au:ガ ラ ス 基 板 上 に ス パ ッ タ 成 膜 1μm)
2.積 分 球 付 の 反 射 率 測 定 装 置 (UV-3100PC)に て 、 よ り 短 波 長 側 (0.41-6.eV)の Au
の絶対反射率の測定をする。
2.Au 文 献 値 [55]と 比 較 し 、 短 波 長 側 (0.41-6.eV)の 範 囲 で 一 致 す る こ と を 確 認 。
4.文 献 値 と FT-IR 領 域 で 測 定 し た Au デ ー タ を 比 較 し 、 校 正 関 数 を 見 つ け る 。
5.上 記 校 正 関 数 に て FT-IR の 測 定 で 使 用 し た 標 準 ミ ラ ー で あ る Al の デ ー タ ー を
- 60 -
校正する。
6.短 波 長 側 の 標 準 ミ ラ ー で あ る Al の 反 射 率 の 絶 対 値 と Al の FT-IR の 校 正 デ ー
タと繋がることを確認する。
上 述 し た 方 法 で は 、 3 番 目 の 短 波 長 (0.41-6.eV)側 で の 測 定 値 が 、 文 献 値 [55]と
一 致 す る か が 問 題 と な る 。 図 2-15 に 金 (Au)薄 膜 の 測 定 例 と 文 献 値 (55)を 示 す 。 金
(Au)薄 膜 試 料 は 、 パ イ レ ッ ク ス 基 板 上 に 直 流 ス パ ッ タ リ ン グ 装 置
*1
にて異なる膜厚
の試料を作製した。その中で、文献値と一致する試料を図に示した。 6 番目の作
業 は 、 校 正 関 数 正 し さ の 確 認 作 業 と な る 。 図 2-16 に Al 標 準 ミ ラ ー の 0.4-6eV 領
域 で の 絶 対 反 射 率 の 測 定 結 果 と 0.5-0.05.eV 領 域 で 測 定 し た デ ー タ を 校 正 し た 結
果を示す。両者は波長が 2 μ m の近傍で良く一致する。
110
100
Reflectivity (%)
90
80
70
60
○Au_CASIO
文 献 [55]
-Au_MichelsonLAB
This work
50
40
30 3
4
5
6
7 8 9
2
3
4
5
1
6
7 8 9
2
3
10
Wave length (m)
図 2-15
Au 薄 膜 (1μm)の 絶 対 反 射 率 ( 黒 線 ) と 文 献 値 ( ○ ) [55]。
*1 直 流 ス パ ッ タ リ ン グ 装 置 と は 、 直 流 グ ロ ー 放 電 (Ar 雰 囲 気 下 な ど ) を す る 場 合 に 、 陰 極 部 分 の 固 体
表 面 元 素 が Ar イ オ ン な ど の 高 エ ネ ル ギ ー 粒 子 と 運 動 量 を 交 換 し て 、 外 に は じ き 出 さ れ る 現 象 を 利 用
し、はじきだされた元素を基板に堆積させ成膜を行う成膜装置のことである。
- 61 -
120
Al_StdMirror_IR
Al_StdMirror_UV
Reflectivity (%)
110
100
90
80
70 3
4
5
6 7 8 9
2
3
4
5
1
6 7 8 9
2
10
Wave length (m)
図 2-16
短 波 長 側 の Al の 絶 対 反 射 率 ( 青 線 ) と 上 記 校 正 関 数 で 校 正 し た
FT-IR で 測 定 し た Al の 反 射 率 。
- 62 -
3
Yb 4 As 3 及 び そ の 関 連 物 質 の 作 製
Yb 4 As 3 の よ う な 希 土 類 プ ニ ク タ イ ド 試 料 作 製 の 全 体 の 流 れ を 図 3-1 に 示 し た 。
図 の 流 れ に 従 い 、 試 料 作 製 手 順 に つ い て 簡 単 に 説 明 す る 。先 ず 、希 土 類 金 属 は 酸
化 し や す い た め に 、 グ ロ ー ブ ボ ッ ク ス 中 で チ ッ プ 化 を す る 。そ の 次 に チ ッ プ 化 し た
希 土 類 金 属 と プ ニ ク ト ゲ ン を 石 英 管 に 真 空 封 入 す る 。こ の 石 英 管 を 電 気 炉 に 入 れ 、
昇 温 し 予 備 反 応 を す る 。予 備 反 応 の 終 了 し た 試 料 は 坩 堝 に 真 空 封 入 さ れ 、真 空 炉
で 昇 温 さ れ る 。本 章 の 以 下 の 節 で 、 こ れ ら の 手 順 と 内 容 に つ い て 詳 し く 説 明 す る 。
- 63 -
試料作製フローチャート
グローブボックス中
石英管加工
希土類金属
のチップ化
石英管洗浄
秤量
真空封入
坩堝の加工
予備反応
坩堝の洗浄
及び空焼き
電子ビームでの封入
単結晶育成
(ブリッジマン法)
(フラックス法)
図 3-1
希土類化合物の作製の流れ。
- 64 -
3-1
希土類の取り扱い
希 土 類 金 属 は 、特 に 軽 希 土 類 (La か ら Eu ま で ) は 、 室 温 の 大 気 中 で 、 容 易 に 酸
化 さ れ る 。 重 希 土 類 (Gd か ら Lu ま で )及 び Sc,Y は 、 室 温 大 気 中 で 比 較 的 安 定 で
あ る 。 経 験 則 に よ る 室 温 で の 酸 化 の 進 み 具 合 の 順 序 は 、 Sc,Y を 除 い て 以 下 の 通
り で あ る と 言 わ れ て い る 。 ( あ る い は 、 +3 価 の イ オ ン 半 径 順 、 Eu は +2 価 で イ オ ン
半径が大きいと考える。)
Eu>> La >Ce >Pr> Nd> Sm> Yb> Gd> Tb> Dy> Ho> Er> Tm> Lu
酸化のしやすさの客観的な指標となるデーターとしては、各元素のインゴットを大
気 中 に て 400 ℃ 、 24 時 間 保 持 し た 後 に 重 量 増 加 を 測 定 し た 結 果 [56]が あ る 。 図
3-2 は こ の 重 量 増 加 分 を 対 数 で 原 子 番 号 に 対 し て プ ロ ッ ト し た も の で あ る 。
Log( ΔM (mg/dm3・day))
6
4
2
0
Sc
La
Y
Pr
Ce
Pm Eu
Tb
Ho
Tu
Lu
Nd Sm
Gd
Dy
Er
Yb
図 3-2 希 土 類 金 属 の 空 気 中 に お け る 400 ℃ で 加 熱 し た 場 合 の 酸 化 の 度 合 い
[56]。
図から明らかなように酸化の進行の程度は、上述した経験した順序が概ね成立
している。このように希土類金属の多くは酸化されやすいため、予備反応のため
のチップ化、封入前の秤量、予備反応後の封入石英管からの試料の取り出しに
- 65 -
はグローブボックスが必要である。
*1
SR-1
ゴム手袋
R-1
EB溶接装置
R-2
SR-2
R-4
R-3
図 3-3
本研究で使用したグロ-ブボックスの概略図。
R-1:不 活 性 ガ ス 中 で の 試 料 の セ ッ ト に 使 用 す る 。 又 、 作 業 ス ペ ー ス も 比 較 的 広
い。
R-2:サ ブ ル -ム SR-2 を 通 じ て R-4 、 R-3 と つ な が っ て い る 。こ の ル - ム の 中 に は
電 子 秤 が 取 り つ け て あ り 、封 入 前 の 秤 量 が で き る 。 さ ら に 結 晶 観 察 用 の 顕 微 鏡
が取り付けてあり、 単結晶試料の仕分けのときに便利である。
R-3:一 番 小 型 の ル ー ム で あ り 、不 活 性 ガ ス の 交 換 が 他 の 大 型 ル ー ム に 比 べ 短 時
間で可能である。
R-4:旋 盤 が 取 り 付 け ら れ て い る 。希 土 類 金 属 の チ ッ プ 化 の と き に 使 用 す る 。
SR-1,SR-2: 試 料 交 換 用 の サ ブ ル ー ム 。
*1 本 論 文 の SmH 2+δ で は 、 希 土 類 の 酸 化 問 題 に つ い て 更 に 議 論 す る 。
- 66 -
グローブボックスは、希土類、及びその化合物を、酸素及び水分のない環境下で
取り扱うために利用される。(例えば、希土類金属のチップ化や、作製した試料の
パウダー化の時)
図 3-3 に 本 研 究 で 使 用 し た グ ロ ー ブ ボ ッ ク ス の 模 式 図 を 示 す 。
但し、真空システム、ボンベからのガス供給システムは図中において省略されて
いる。グローブボックス本体は、ステンレス製で、4つのルームから成る。各ルーム
の Ar ガ ス 置 換 は 以 下 の 手 順 で 行 わ れ る 。
1.
ゴム手袋の内側にある扉を閉める。この扉とゴムの間は、予め真空に引か
れ た 後 Ar で 充 填 さ れ て い る 。
2. ル ー ム 本 体 を 真 空 に 引 く 、 真 空 引 き は 、 ロ ー タ リ ー ポ ン プ で 半 日 か け て 行 な う 。
3.
そ の 後 Ar ガ ス で 置 換 さ せ 使 用 す る 。
通 常 、 全 て の 部 屋 は Ar ガ ス で 置 換 さ れ 満 た さ れ て い る 。 試 料 の 出 し 入 れ は サ
*2
ブルームを通じて行う。
複数のグローブボックスが互いに連結されている。
各ルームは目的に応じての使いわけや、不活性ガス中での移動が可能である。
*2 グ ロ - ブ ボ ッ ク ス の 内 の 雰 囲 気 に つ い て 筆 者 の 経 験 を ま と め る 。 通 常 、 希 土 類 元 素 及 び そ の 化 合
物 を 取 り 扱 う グ ロ ー ブ ボ ッ ク ス の 充 填 ガ ス に は 、 Ar も し く は He ガ ス を 使 う 。 活 性 炭 を 取 扱 う グ ロ ー ブ
ボ ッ ク ス で は N2 ガ ス を 使 用 す る 場 合 も あ る 。 グ ロ ー ブ ボ ッ ク ス が 新 品 で ガ ス 循 環 純 化 型 で な い 場 合 、
真 空 - ガ ス 置 換 後 、 露 点 を 測 定 す る と 、 た か だ か -10 ℃ 程 度 で あ り 、 露 点 を -50 ℃ ( 水 分 が 数 ppm レ
ベル)にするには、真空に度々引きガス置換をしたとしても半年程度時間を要する。又、閉鎖系では、
露点も時間経過と共に上昇する。 本文中の酸化に対しても、水分の影響が考えられる。極めて酸化
の激しい材料では、酸素、水分除去装置付きの不活性ガス循環系にする必要がある。
- 67 -
3-2.Yb 4 As 3 作 製 の 予 備 反 応
Yb と As の 化 合 物 よ う に 、 融 点 、 あ る い は 分 解 溶 融 温 度 が 高 く 、 且 つ 、 蒸 気 圧
の高い材料で構成される化合物を作製する場合、高融点金属材料の坩堝に出発
物質
*3
を封入してから加熱し作製をする方法がある。具体的な作業として、例えば、
融 点 の 高 い モ リ ブ デ ン (Mo)や タ ン グ ス テ ン (W)を 坩 堝 と し て 加 工 し て 、 そ の 蓋 を 、
真 空 中 に お い て 、電 子 ビ ー ム で 溶 接 す る な ど の 作 業 を 行 い 出 発 物 質 を 封 入 す る 。
そ の た め 、封 入 の さ い に 坩 堝 は 部 分 的 に 融 点 以 上 に 加 熱 さ れ 、 こ の 高 温 部 分 の 輻
射 に よ り 坩 堝 内 部 の 試 料 の 温 度 は 上 昇 す る 。経 験 的 に Bi や Sb は 他 の 希 土 類 と
未 反 応 の ま ま 封 入 が 可 能 で あ る が 、 こ れ ら の 元 素 に 比 べ て 、 蒸 気 圧 の 高 い As や
P 、あ る い は Se 、 S を 直 接 封 入 す る こ と は 大 変 に 困 難 で あ る 。
こ こ で 述 べ る 予 備 反 応 と は 、蒸 気 圧 の 高 い 元 素 を 希 土 類 と 反 応 さ せ 、蒸 気 圧 を
単 体 よ り 低 く す る た め に 行 う 作 業 で あ る 。も ち ろ ん 、こ の 作 業 の み で 目 的 と す る 多 結
晶の試料が得られる場合もある。
<石英ガラス管の加工と洗浄>
予 備 反 応 に 使 用 す る 石 英 管 の 加 工 、洗 浄 手 順 は 以 下 の 通 り で あ る 。
1. 外 径 18.mm 、内 径 15.mm の 石 英 ガ ラ ス 管 を 用 い て 、 都 市 ガ ス - 酸 素 炎 で 、
一 方 の 端 が 閉 端 に 成 る よ う に 加 工 す る 。 こ の 時 の 長 さ は 約 250mm で あ る 。
2. 有 機 溶 剤 (ア セ ト ン )に よ る 、脱 脂 洗 浄 を 行 う 。
3. HCl 洗 浄 ( 更 に 望 ま し く は 、 石 英 ガ ラ ス の 弱 エ ッ チ 洗 浄 ) を 行 う 。
4. 純 水 洗 浄 を 行 う 。
5. 乾 燥 器 に て 乾 燥
6. 使 用 直 前 に 都 市 ガ ス - 酸 素 炎 で 、空 焼 き し て 、 ガ ラ ス 表 面 の 残 留 不 純 物 を
除去する。
こ れ ら の 所 定 の 作 業 が 終 了 し た 石 英 管 の 閉 端 に 図 3-4 に 示 さ れ て い る よ う に 、 プ
ニ ク ト ゲ ン を 入 れ 、そ の 上 に 希 土 類 金 属 を 入 れ る 。 こ の 順 序 の 試 料 仕 込 み は 石 英
管封入時に輻射熱により、プニクトゲンを暖めないようにするために行う。両物質
の 合 計 が 20g 弱 程 度 と な る よ う に 仕 込 む 。 図 3-4 に 反 応 前 の 試 料 を 入 れ た 石 英 ガ
ラス管の様子を示す。この状態から石英管を真空封入するため、閉端からおよそ
170mm の と こ ろ を 細 化 す る 。 そ の 後 、 こ の 石 英 管 を 真 空 ポ ン プ (ロ ー タ リ ポ ン プ +
油 拡 散 ポ ン プ )に て 、 30-60 分 程 度 真 空 に 引 い た 後 に 、 細 く し た 部 分 に 都 市 ガ ス
*3 原 料 そ の も の で な く 、 本 文 中 で 述 べ る よ う に 予 め 予 備 反 応 し た 材 料 を 仕 込 む こ と が あ り 、 あ え て 出
発物質と表記した。
- 68 -
-酸素炎を当てて封入する。封入対象の希土類金属が極めて酸化されやすいも
のである場合、封入を手際良くできるように石英管をできるだけ細くしておく、さら
に石英管内に酸素が入らないように、グロ-ブボックス中で風船を取り付け、その
状態で石英管の加工をするなどの工夫が必要である。
石 英 管 の 加 工 使 用 さ れ る ガ ス バ ー ナ ー を 図 3-5 に 示 す 。
- 69 -
図 3-4
原料を仕込んだ予備反応用の石英ガラス管の封入前の様子。
図 3-5
石英管の加工や封入に使用する酸素-都市ガスのバ-ナ-。
- 70 -
<予備反応の手順>
予 備 反 応 は 、横 型 電 気 炉 を 使 用 し 、反 応 前 の 試 料 を 入 れ た 封 入 石 英 ガ ラ ス 管 を
150 ℃ 前 後 か ら 徐 々 に 昇 温 さ せ 行 っ た 。希 土 類 金 属 と プ ニ ク ト ゲ ン と の 直 接 反 応 に
は 、温 度 に 閾 値 的 な も の が 存 在 し 、あ る 温 度 以 上 で は 、急 激 に 反 応 が 進 行 す る の で
注 意 が 必 要 で あ る 。 そ の 場 合 、内 容 物 と 石 英 管 が 反 応 し 、著 し い 場 合 に は 、石 英 管
の 破 損 に い た る 。厄 介 な こ と に 、そ の 閾 値 温 度 は 、希 土 類 金 属 の 種 類 、チ ッ プ の 大
き さ に よ っ て 異 な る 。例 え ば Yb の チ ッ プ が 0.1.mm 未 満 の 細 か い チ ッ プ を 含 む 場
合 、 150 ℃ か ら 200 ℃ で 反 応 に 暴 走 が 生 じ た 。そ の た め 、反 応 の 様 子 を 見 な が ら 、
昇 温 の 速 度 を 変 え て い っ た 。チ ッ プ の 大 き さ が 2~3.mm の 場 合 、反 応 に 暴 走 の 生
ず る 温 度 は 高 く 400 ℃ 程 度 と な る 。
こ こ で は 、石 英 管 と の 反 応 が 発 生 し や す い 、 Yb-As 系 に つ い て 、予 備 反 応 の 手
順をまとめる。
1. 150 ℃ ~250 ℃ :
封 入 後 の 石 英 管 を 、 炉 の ほ ぼ 中 央 に 石 英 管 中 の As の 位
置 が く る よ う に 置 く 。 Yb は 炉 の 中 央 よ り 端 に 有 り 、 As よ り 温 度 が 30 か ら 50
℃ ほ ど 低 く な る 様 に し て 、昇 温 す る 。昇 温 速 度 は お よ そ 10 ℃ /1~3 日 で あ る 。こ
の と き に Yb は 徐 々 に 黒 く な り 、 Yb 全 体 が 黒 く な る ま で こ の 状 態 を 保 持 す
る。。
2.
250 ℃ ~450 ℃ :
次 に 石 英 管 を 完 全 に 電 気 炉 の 中 に 入 れ 、昇 温 す る 。石 英 管
は 毎 日 取 り 出 し て 振 る 。 昇 温 速 度 は 、 10 ℃ /2 日 程 度 。
目 視 に て 完 全 に As が 見 え な く な る ま で 反 応 さ せ る 。見 え な く な っ た ら (お よ そ
430 ℃ )、炉 を 20 ℃ ほ ど 昇 温 し 、 450 ℃ に し て 、 2~3 日 保 持 す る 。こ れ で 予 備 反
応 は 完 了 す る 。 こ の 様 に し て 予 備 反 応 し た Yb-As 系 (Yb:As=4:3 、 又 は 5:3)
試 料 は 、 粉 末 生 成 物 と Yb 金 属 に 富 む チ ッ プ 状 生 成 物 か ら な る 混 合 物 で あ っ
た 。 粉 末 生 成 物 を X 線 回 折 で 同 定 し た と こ ろ YbAs で あ っ た 。 Yb 4 As 3 の 場
合 、予 備 反 応 の み で は 、多 結 晶 試 料 は 得 ら れ な か っ た 。
- 71 -
3-3 坩 堝 の 加 工 と 電 子 ビ ー ム 溶 接
予 備 反 応 を 終 了 し た Yb-As 系 の 試 料 ( Y-Sb,Yb-Bi 系 は 予 備 反 応 し な い ) は 、
モ リ ブ デ ン (Mo)又 は タ ン グ ス テ ン (W)の 坩 堝 に 入 れ ら れ 、蓋 を し た 後 に 真 空 中 に て
電子ビームで溶接封入される。
モ リ ブ デ ン (Mo)及 び タ ン グ ス テ ン (W)の 融 点 は 、 そ れ ぞ れ 、 2610 ℃ 、 3387 ℃
で あ る 。 融 点 の よ り 高 い タ ン グ ス テ ン (W)が 坩 堝 と し て は 適 し て い る が 、 価 格 が 高
い こ と 、 加 工 に 時 間 が 掛 か る こ と か ら 後 に 述 べ る よ う に 目 的 に よ り 使 い 分 け た [57]。
図 3-6 に 坩 堝 の 寸 法 図 を 示 す 。 坩 堝 は モ リ ブ デ ン (Mo)及 び タ ン グ ス テ ン (W)の 棒
状 の ロ ッ ド (20.mm φ )を 100mm 強 の 長 さ に 切 断 後 、 蓋 を 作 製 し 、 モ リ ブ デ ン (Mo)
の 場 合 は 通 常 の 刃 を 用 い て 、 タ ン グ ス テ ン (W)の 場 合 は コ ン ク リ ー ト ド リ ル の 刃 を
使 用 し て 、 図 3-6 に 示 し た よ う な 形 状 に 切 削 加 工 さ れ る [57]。
電子ビ-ム溶接とは、加速した電子ビ-ムを対象物にあてて、真空中にて溶接
する方法である。この方法はビ-ム径を絞りこむことにより特定の場所を瞬時に加
熱して溶接することが可能なため高融点金属の溶接に適している。又、高融点金
属 以 外 に も Mg 合 金 な ど の 溶 接 に お い て 、 工 業 の 分 野 か ら も 注 目 さ れ て い る 方 法
である。
図 3-7 に 本 研 究 に 使 用 し た 電 子 ビ ー ム 溶 接 装 置 の 概 略 を 示 す [57]。 真 空 シ ス
テ ム は 、 2 組 の 拡 散 ポ ン プ と ロ ー タ リ ポ ン プ か ら な り 、液 体 窒 素 ト ラ ッ プ が 付 い て い
る 。電 子 ビ ー ム に よ る 封 入 は 、溶 接 対 象 を す る 坩 堝 を 装 置 内 の 所 定 の 位 置 に セ ッ ト
し 、 真 空 に 引 き 、 装 置 の 真 空 度 が 1×10 Torr に 達 し た 後 に 行 っ た 。 電 子 ビ ー ム に
-5.
よ る 坩 堝 の 溶 接 中 も 真 空 度 を 10 -5 Torr 台 を 保 つ 様 に 注 意 し た 。
電子ビ-ム溶接装置は熱陰極と陽極からなる電子銃及び集束レンズと水冷の
坩 堝 ホ ル ダ ー か ら 成 る 。電 子 銃 の 陰 極 と 陽 極 間 に は 、通 常 48.kV の 電 圧 を 印 加 し
て 使 用 す る 。陽 極 に は 、直 径 5.mm の 穴 が あ り 、こ の 電 子 銃 か ら 飛 び だ し た 電 子 は 、
そ の 下 部 に あ る 集 束 レ ン ズ で そ の ビ ー ム 径 を 絞 ら れ て 、坩 堝 の 上 部 に 到 達 す る 。ビ
ー ム の 径 は 溶 接 部 分 に お い て 、 そ の 径 が 1.mm 程 度 に な る よ う に 調 節 し た 。溶 接
の さ い の ビ ー ム 電 流 は モ リ ブ デ ン (Mo)坩 堝 で 30~40.mA 、 タ ン グ ス テ ン (W)坩 堝 で
50.mA 程 度 で あ る 。図 3-8 に 坩 堝 の 溶 接 部 分 の 様 子 を 示 す 。
- 72 -
図 3-6
タングステン坩堝の加工形状。
図 3-8
電子ビ-ム溶接の
様子。
図 3-7
電子ビ-ム溶接装置の概略。
- 73 -
3-4 真 空 炉 ( タ ン グ ス テ ン ヒ ー タ )
発 熱 体 に 高 融 点 金 属 で あ る タ ン グ ス テ ン (W)の メ ッ シ ュ ヒ ー タ を 使 用 し た 真 空 炉
の 断 面 図 を 図 3-9 に 示 す 。 真 空 シ ス テ ム は 、 ロ ー タ リ ポ ン プ と 油 拡 散 ポ ン プ か ら 成
り 、 到 達 真 空 度 は 1 × 10 -5 Torr 程 度 で あ る 。
高温で生ずるヒータ及び坩堝の酸化反応を防ぐために、炉は真空状態で運転
さ れ る 。 温 度 測 定 用 及 び 制 御 用 に W-Re 熱 電 対 を 使 用 し て い る 。モ リ ブ デ ン (Mo)
又 は タ ン グ ス テ ン (W)坩 堝 は 水 冷 さ れ た ロ ッ ド に 固 定 さ れ て い る 。 こ の ロ ッ ド は 上 下
図 3-9
タングステンヒ-タを使用した真空炉の概略。
に可動するため、ブリッジマン法による単結晶作製も可能である。
発 熱 体 の 周 り は 、内 側 か ら 順 に タ ン グ ス テ ン (W)、 複 数 枚 の モ リ ブ デ ン (Mo)か ら
な る 輻 射 シ ー ル ド 板 に 囲 ま れ て お り 、 1800 ℃ 程 度 ま で 昇 温 可 能 で あ る 。 炉 の 温 度
は 1 時 間 程 度 の 短 時 間 に 見 れ ば ±1 ℃ 程 度 で 安 定 す る 。 し か し 、 1 週 間 程 度 の 長
時 間 に 渡 っ て み た 場 合 、 5~10 ℃ 程 度 の ド リ フ ト は さ け ら れ な か っ た 。本 研 究 で は 、
1800 ℃ 未 満 の 温 度 で 試 料 を 作 る こ と が 多 い た め に こ の 真 空 炉 を 使 用 し た 。
- 74 -
3-5 タ ン グ ス テ ン (W)お よ び モ リ ブ デ
ン (Mo)坩 堝 の 選 択
希 土 類 - プ ニ ク タ イ ト 系 で は 、プ ニ ク ト ゲ ン の 蒸 気 圧 は 高 く 、閉 鎖 系 で 試 料 を 作
製 す る 必 要 が あ る 。そ の た め 、坩 堝 材 料 は 封 入 可 能 で 、 且 つ 高 融 点 の 金 属 が 望 ま
し い 。 タ ン グ ス テ ン (W)お よ び モ リ ブ デ ン (Mo)の 融 点 は 、 3387 ℃ 、 2610 ℃ で あ る
[58]。坩 堝 材 料 と そ れ 以 外 の 他 元 素 と の 二 元 状 態 図 [58]を 見 た 場 合 ( タ ン グ ス テ ン
(W)- 他 の 元 素 、モ リ ブ デ ン (Mo)- 他 元 素 の 二 元 状 態 図 な ど ) 、 坩 堝 材 料 で な い
も う 一 方 の 元 素 付 近 の 液 相 線 の 立 ち 上 が り は 、モ リ ブ デ ン (Mo)に 比 べ て タ ン グ ス テ
ン (W)の 方 が し ば し ば 急 で あ る 。す な わ ち 、 坩 堝 と の 反 応 の 危 険 性 は 少 な い 。
図 3-10 W-U 系 の 二 元 状 態 図 [58]。
例 と し て 、 反 応 性 に 富 む ウ ラ ン (U)と タ ン グ ス テ ン (W)系 の 状 態 図 [58]を 図 3-10 示
す 。 こ の 場 合 も ウ ラ ン (U)側 の 液 相 線 の 立 ち 上 が り は 急 峻 で あ り 、 タ ン グ ス テ ン (W)
側の液相線は、なだらかで、その途中に化合物もなく、共晶点もない。したがって、
坩 堝 と の 反 応 性 の 点 か ら 坩 堝 と し て タ ン グ ス テ ン は 比 較 的 望 ま し い 。本 研 究 で は
- 75 -
Yb-As 系 に お い て 、そ の 結 晶 成 長 の 過 程 で 液 相 を 含 む 場 合 に 結 晶 と 坩 堝 の 溶 着
の著しいモリブデン坩堝を避けてタングステン坩堝を使用した。
表 3-1 に 筆 者 の
経験した材料とその材料を坩堝に仕込むことの可否の関係ついてまとめた。
表 3-1
坩堝材料の使用の可否。
系
坩堝の種類
使用の可否
5:3
W
◎
4:3
Mo
○
Yb-Sb 系
4:3
Mo
◎
Yb-Bi 系
4:3
Mo
◎
Ce-As 系
3:2
Mo
×溶着
W
◎
4:3
Mo
○
Sm-Te 系
3:4
Mo
○
Sm-S 系
3:4
Mo
○
2:2:1
Mo
3:4
W
U-O-Sb 系
2:2:1
Mo
?脆くなる
U-Ni-Sn 系
1:1:1
Mo
×坩堝に穴
1:2
Mo+PBN
× PBN と 濡 れ
Yb-As 系
Ce-O-Sb 系
U-Te 系
U-Al 系
組成
?脆くなる
○
る 、 Mo と 反 応
表 3-1 に お い て 、 Yb-As 系 及 Ce-As 系 で は 、 試 料 作 製 中 に 液 相 を 含 む 場 合 ( 出
発 物 質 の 組 成 が Yb:As=5:3 や Ce:As=3:2)、 モ リ ブ デ ン 坩 堝 と 溶 着 す る た め に 、 タ
ン グ ス テ ン 坩 堝 が 望 ま し い 。 Ce-O-Sb 系 及 び U-O-Sb 系 の 場 合 、 酸 素 を 含 む た め
か、反応後、モリブデン坩堝はもろくなっていた。
特 殊 な 例 と し て 、 ZnSe の 結 晶 作 製 で 成 功 し た 方 法 [59]で あ る と こ ろ の モ リ ブ デ
ン 坩 堝 の 中 に イ ン サ ー ト 坩 堝 と し て PBN ( Pyrolitic Boron Nitride ) 坩 堝 を 入 れ
*4
る 方 法 も 試 み た 。 そ の 理 由 と 仕 込 み 材 料 は 次 の 通 り で あ る 。 UAl 2 の 作 製 に モ リ ブ
デ ン 坩 堝 を 使 用 し た 場 合 ウ ラ ン (U)と モ リ ブ デ ン (Mo)は 反 応 性 が 高 く 、 坩 堝 が 破 れ
*4 ア ン モ ニ ア ( NH3 ) と 三 塩 化 ほ う 素 ( BCl3 ) と の Chemical Vapor Deposition(CVD)に よ り 作 ら れ
た Boron Nitride の 坩 堝 。 超 高 真 空 蒸 着 装 置 の 坩 堝 と し て 使 わ れ る こ と が 多 い 。
- 76 -
る恐れがあるためにインサート坩堝として使用した。ブリッジマン法による単結晶
育 成 を 試 み た 。 し か し な が ら U と PBN と の ぬ れ 性 が 非 常 に 良 く 、 PBN の 壁 面 に
そ っ て U と Al の 溶 融 体 が 上 昇 し て PBN か ら は み 出 し モ リ ブ デ ン (Mo)と 直 接 反 応
し た 。 希 土 類 が PBN と ぬ れ 性 が 良 い こ と は ガ ド リ ニ ウ ム (Gd)で も 経 験 し た 。 し た が
っ て 、 こ れ ら の 元 素 に PBN 坩 堝 を 使 用 す る こ と は 、 避 け る べ き で あ ろ う 。
- 77 -
3-6 W 、 Mo 坩 堝 法 に よ る Yb 4 As 3
及びその関連化合物試料の作製
< Yb 4 As 3 >
Yb 4 As 3 は 、落 合 [20]に よ れ ば 、融 点 を 持 た な い incongruent
な 物 質 で あ る 。一 方
報 告 さ れ て い る 二 元 状 態 図 で は 、 図 3-11 に 示 さ れ る よ う に congruent と さ れ て い
る [60]。 本 研 究 で は 、 Yb 4 As 3 は incongruent と 見 な し 試 料 作 製 を 進 め た 。
Yb 4 As 3 を 作 る 上 で 想 定 し た 二 元 状 態 図 を 図 3-12 に 示 す 。
incongruent
な 物 質 の 単 結 晶 の 作 製 に は 、自 己 フ ラ ッ ク ス 法 を 使 用 し た 。こ の 方
法 の 特 徴 は 、 フ ラ ッ ク ス と し て Yb:As が 4:3 よ り Yb に 富 む 液 相 を 利 用 す る こ と に あ
る [20]。 以 下 に そ の 説 明 を す る 。
図 3-11[60]及 び 図 3-12 の 二 元 状 態 図 に 示 す よ う に 、 Yb-As 系 の 化 合 物 に は 、
Yb 4 As 3 の ほ か に 、 YbAs 及 び Yb 5 As 3 が あ る 。 図 3-12 の 状 態 図 が 正 し け れ ば
*5
congruent す な わ ち 融 点 を 持 つ の は YbAs の み で あ る 。 坩 堝 に 仕 込 む Yb:As の 割
合 を 4:3 に し て 、 一 旦 、 液 相 線 の 温 度 以 上 に し て か ら 温 度 を 下 降 さ せ た 場 合 、 最
初 に 析 出 す る の は YbAs と な る は ず で あ る 。 実 際 に 実 験 を す る と YbAs が 形 成 さ
れ た 。 そ の た め に 図 3-12 の 二 元 状 態 図 を 想 定 し 、 Yb の 割 合 を Yb:As=4:3 か ら
Yb の 割 合 の 多 い 方 に 偏 ら せ Yb-As 系 に お け る 液 相 と 固 相 が 共 存 す る 温 度 と 組
成 の 領 域 に 保 持 し て 、 す な わ ち 、 固 体 と し て 安 定 な Yb 4 As 3 が あ り 、 同 時 に Yb に
富 む 液 相 が 共 存 す る 状 態 で 、 Yb 4 As 3 の 単 結 晶 を 成 長 さ せ た 。
坩 堝 内 の 上 部 と 下 部 の 温 度 勾 配 は 20 ℃ 程 度 に し 、 1620 ℃ か ら 1650 ℃ に て 4
日から 5 日ほど一定の温度に保ち単結晶試料を作製した。作製した試料の条件
を表 2 にまとめた。
( 320K で 測 定
*6
No.11,12,14 が 単 結 晶 で あ り 、格 子 定 数 は 、 8.791.Å~8.789.Å
) で あ る 。 図 3-13 に 試 料 取 り 出 し 時 点 で の 坩 堝 内 の 様 子 を 模 式
的に示す。単結晶は全て坩堝の下部に析出している。
*5
も し 図 3-11 に 示 す よ う な 状 態 図 が 正 し い な ら ば 、 Yb:As=4:3 を 坩 堝 に 仕 込 み 、 1800℃ ま で 昇 温
後 、 冷 却 し た 場 合 、 析 出 す る の は Yb 4 As 3 で あ る 。
*6
Yb 4 As 3 は 構 造 転 移 温 度 以 下 で ド メ イ ン 構 造 と な る た め 、 単 結 晶 の 確 認 は 転 移 温 度 以 上 で 行 っ て
いる。
- 78 -
図 3-11
Yb-As 系 の 報 告 さ れ て い る 二 元 状 態 図 [60]。
- 79 -
1750℃未満
1620℃
Yb5As3
図 3-12
Yb 4As 3
YbAs
Yb-As 系 : Yb 4 As 3 の 試 料 作 製 時 に 想 定 し た 2 元 状 態 図 と 設 定 温 度 。
図 3-13
Yb 4 As 3 の 単 結 晶 作 製 時 の 坩 堝 内 の 様 子 。
- 80 -
表 3-2
Yb 4 As 3 作 製 試 料 一 覧
サンプル番号
Poly - 4
坩堝
20φ
*7
出発物質の状態
Mo
Yb+YbAs
Yb:As
4:3
反応温度、時間
800±20 ℃ * 10h
1620±10 ℃ * 4 日
Poly - 5
20φ
Mo Yb 4 As 3 + Other
4:3
1620±10 ℃ * 2 日
20φ
Mo
4:3
800±20 ℃ * 10h
Yb+YbAs
1620±10 ℃ * 4 日
No . 11
20φ
Mo Yb 4 As 3 + Other
4:3
1620±10 ℃ * 2 日
20φ
W
5:3
700±20 ℃ * 10h
Yb+YbAs
800±20 ℃ * 10h
1300±10 ℃ * 24h
1650±10 ℃ * 4 日
No . 12
20φ
W
Yb+Yb 4 As 3
5:3
700±20 ℃ * 10h
800±20 ℃ * 10h
1630±10 ℃ * 4 日
No . 14
20φ
W
Yb+Yb 4 As 3
5:3
700±20 ℃ * 10h
800±20 ℃ * 10h
1630±10 ℃ * 5 日
No.11 試 料 に お い て は 、出 発 物 質 と し て 、石 英 管 で 予 備 反 応 を し た 物 質 を そ の ま
ま 使 用 し た 。そ の 試 料 の 単 結 晶 の 上 部 に あ る 多 結 晶 の 部 分 を X 線 回 折 で 同 定 し
た と こ ろ 多 く の Yb 4 As 3 が 含 ま れ て い た 。( X 線 回 折 の 強 度 は 、 Yb 4 As 3 か ら の 回 折
ピ - ク が 一 番 強 い ) No.12,14 試 料 で は 単 結 晶 部 分 の 収 率 を 上 げ る 意 図 で 坩 堝
封 入 時 の 出 発 物 質 と し て 多 結 晶 の Yb 4 As 3 と Yb の メ タ ル を 使 用 し た が 結 果 と し て
は 、有 意 な 変 化 は 認 め ら れ な か っ た 。
しかし、より大きな単結晶試料が得られた。
*7 表 3-2 の 中 で 、 出 発 物 質 の 状 態 と あ る の は 、 予 備 反 応 後 の 生 成 物 の 内 容 で あ る 。 例 え ば
Yb+YbAs と あ る の は 、 Yb と YbAs か ら な る 混 合 物 の 意 味 。 < 予 備 反 応 の 手 順 > の と こ ろ で 述 べ た よ
う に 、 予 備 反 応 だ け で は 、 Yb 4 As 3 は 形 成 さ れ な い 。 そ の た め 、 全 て の 出 発 物 質 に 未 反 応 の Yb が あ
る 。 こ の Yb に よ る 急 激 な 反 応 を 避 け る た め に 、 坩 堝 の 温 度 は Yb の 融 点 温 度 近 傍 で 20 時 間 程 度 保
持した後に最終温度に達せられる。
- 81 -
表 の Poly-4,5
*8
は 多 結 晶 試 料 で あ る 。一 度 の 反 応 で 単 相 の 試 料 が 得 ら れ な か っ
たため二度の反応をしている。
*8
本 論 文 で は 、 表 3-2 以 外 に 落 合 氏 作 製 の Yb 4 As 3 ( poly-3)の 試 料 も 使 用 し て い る 。 こ の 試 料 は 、
坩 堝 に 仕 込 む Yb:As を 3:2 に し て 作 成 し た と こ ろ 、 何 ら か の 原 因 に よ っ て 単 結 晶 作 成 に 失 敗 し 、
Yb 4 As 3 の 多 結 晶 試 料 と な っ た も の 。
- 82 -
<Yb 4 Sb 3 >
二 元 状 態 図 で は 、 congruent
と さ れ て い る [58]。 Yb と Sb の イ ン ゴ ッ ト を 4:3 の
割 合 で Mo 坩 堝 に 封 入 し た 後 、 1700 ℃ ま で 昇 温 し て 、 20 時 間 保 ち 、多 結 晶 を 作 製
し た 。但 し 、 4 回 に 1 度 程 度 し か 成 功 し な い 。 *8 原 因 と し て は 、予 備 反 応 を し て い な
い た め 、昇 温 の 途 中 で 激 し い 反 応 が 起 こ り 、内 容 物 が 壁 面 に 飛 び 散 り 、 一 旦 飛 び
散 っ た 内 容 物 は 、粘 性 が 高 く 、容 易 に 壁 面 か ら 落 下 せ ず 、溶 液 に 組 成 の ず れ が 生
ず る た め と も 考 え ら れ る 。こ の よ う な 事 態 を 避 け る た め に 、 こ の 系 で も 予 備 反 応 が 必
要かもしれない。
<Yb 4 Bi 3 >
Yb と Bi の イ ン ゴ ッ ト を 4:3 の 割 合 で Mo 坩 堝 に 封 入 し て 、 1530 ℃ に 約 1 週 間
保 持 し て 、試 料 を 作 製 し た 。
< 混 晶 系 Yb 4 As 3-x Sb x (x=0.1,0.2)
Yb 4 As 3-x P x (x=0.1)>
Yb 4 As 3-x Sb x
予 め 、 Mo 坩 堝 で 作 製 し た Yb 4 As 3 と Yb 4 Sb 3 を 目 的 と す る 組 成 比 で 混 合 し 、プ レ
ス し た の ち Mo 坩 堝 に 封 入 し 、 1610°C に 4 日 間 保 ち 、多 結 晶 試 料 を 作 製 し た 。
Yb 4 As 2.7 Sb 0.3 の 格 子 定 数 は 8.839Å で あ る 。 Yb 4 As 2.4 Sb 0.6 の 格 子 定 数 は 8.896Å
で あ る 。 た だ し 、 焼 結 密 度 に 問 題 の あ る 試 料 も あ り 、 Yb 4 As 2.7 Sb 0.3 の 場 合 、 残 留 抵
抗 は 大 き く な っ た 。 温 度 条 件 を 変 化 さ せ 数 々 の 試 行 錯 誤 を 繰 り 返 し た が 、 x=0.3
の単相の試料を作製することはできなかった。
Yb 4 As 3-x P x
石 英 管 中 で 反 応 し た Yb と P(4:3)の 混 合 物 と Mo 坩 堝 で 作 製 し た Yb 4 As 3 を 目 的
と す る 組 成 比 で 混 合 し プ レ ス し た の ち Mo 坩 堝 に 封 入 し 、 1610°C に 4 日 間 保 ち 、
多結晶試料を作製した。
*8
格 子 定 数 は 8.784Å で あ る 。
希 土 類 金 属 の イ ン ゴ ッ ト 中 に 、 水 素 又 は 、 フ ッ 素 が 数 千 か ら 数 万 ppm 存 在 す る 場 合 が あ る 。 こ
れ ら の 水 素 が 試 料 作 成 に 予 想 外 の 悪 影 響 を 与 え る 場 合 が あ る こ と も 経 験 し た 。 上 述 し た Yb 4 Sb 3
料作成の再現性のなさに関係あるかもしれない
- 83 -
試
4 Yb 4 As 3 及 び そ の 関 連 物 質 の 実
験結果と考察
Yb 4 As 3 各 種 物 性 の 試 料 依 存 性
4-1
Yb 4 As 3 は キ ャ リ ヤ - 数 が 非 常 に 少 な い 系 で あ る た め に 、 抵 抗 率 な ど の 輸 送 現
象に試料依存性が現れやすい。本研究では、落合氏により測定された 3 個の試
料 つ い て の 抵 抗 率 、 ホ - ル 効 果 測 定 結 果 ( 私 信 ) や 文 献 [16]に 加 え て 新 た に 3 個
の試料について抵抗率、ホ-ル効果、帯磁率、比熱の測定をして試料依存性の
比 較 検 討 を 行 っ た 。 表 4-1 に 試 料 と 測 定 項 目 の 関 係 を 示 す 。
表 4-1
Yb 4 As 3 の 各 試 料 番 号 と 測 定 項 目
*1
○が本論文、及び共同研究における測定。
○ が 文 献 [15]、 あ る い は 落 合 氏 私 信
抵抗
He-RT
ホール効果
He-RT
帯磁率
He-RT
高温帯磁率
RT-800 K
■のデータを図にまとめ比較している。
比熱
1.5-30 K
磁場中比熱
比熱
1.2-20 K
10-320 K
NQR
低温比熱
BIS
(共同研究での測定項目)
○[61]
Poly-5
No.2
No.3
No.4
No.5
No.6
No.11
No.12
No.14
○
○
○
○
○
○
○( 低温のみ)
○( 低温のみ)
○(1.5-10K)
○
○
○( 低温のみ)
○(1.5-10K)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○[62]
○
○
○[64]
○[63]
○
○
<抵抗率、ホ-ル係数の試料依存性>
抵 抗 率 の 測 定 結 果 を 図 4-1 に 示 す 。 全 試 料 に お い て 抵 抗 率 は 、 概 略 、 次 の よ う
な 変 化 を 示 す 。 残 留 抵 抗 率 は 0.91.mΩcm か ら 5.4.mΩcm の 範 囲 に わ た り 大 き く 異
な っ て い る 。 し か し な が ら 、 No.3 の 試 料 を 除 く と 残 留 抵 抗 率 は 0.91.mΩcm か ら
1.6.mΩcm で あ り 、 さ ほ ど 大 き な 変 化 は な い 。 図 4-2 に 示 す よ う に 、 低 温 領 域 の 抵
*1 共 同 研 究 と し て 行 わ れ た 、 表 4-1 の 項 目 に つ い て 、 本 論 文 と 関 係 の 深 い 核 四 重 極 共 鳴 (NQR)の
結 果 [61]に つ い て は 本 章 に て ま と め た 。 No.6 の 試 料 を 使 用 し た 低 温 比 熱 の 結 果 は 本 章 に 述 べ る 磁
場 中 比 熱 の 結 果 を 更 に 決 定 的 な も の と し た [62]。 No.11 の 試 料 を 使 用 し た BIS の 結 果 [61]は 、 本 論
文との関係が薄いので本文中にて議論していない。
- 84 -
抗 率 は T 2 に 比 例 し て 変 化 し て い る 。 温 度 増 加 に つ れ て 100.K-170.K で 緩 や か な
極大を示した後に減少に転じ、室温近傍の温度において構造相転移に起因した
不連続な減少が見られる。
こ の 結 晶 構 造 相 転 移 に 起 因 す る 抵 抗 率 の 不 連 続 な 変 化 を 示 す 温 度 は 277.K
か ら 296.K と 試 料 依 存 性 が あ る 。 こ れ も 、 残 留 抵 抗 率 と 同 様 に 大 部 分 の 試 料 は 、
291-296.K(相 転 移 終 了 時 ) で あ る が 、 試 料 No.3 の み が 277.K と 例 外 的 に 低 い 。
又 、 試 料 No.11 は 構 造 相 転 移 に 相 当 す る 抵 抗 率 の 不 連 続 な 変 化 は ブ ロ ー ド に な
っ て お り 、 試 料 No.11 の 不 均 一 性 を 伺 わ せ る 。
25
Resistivity (mΩ.cm )
20
No.3
No.12
No.4
15
No.11
No.5
10
No14
5
0
0
50
100
150
200
250
300
350
Temperarature ( K )
Resistivity (mΩcm )
10
No.3
No.4
No.5
No.11
No.12
No.14
8
6
4
2
0
250
260
270
280
290
300
310
320
Temperarature ( K )
図 4-1
各 Yb 4 As 3 試 料 の 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 (上 ) と
転 移 温 度 近 傍 の 拡 大 図 (下 )。
- 85 -
10
No.3
No.4
No.5
No.11
No.12
No.14
Resistivity(m Ω・ cm)
8
6
4
2
0
0
500
1000
2
1500
2000
2
T (K )
図 4-2
2
各 Yb 4 As 3 試 料 の 抵 抗 率 の T 依 存 性 。
一般に重い電子系においてフェルミ流体的振る舞いを示す温度領域では、キ
ャリヤー間の散乱が優勢であるために、残留抵抗率を除いた抵抗率は温度の 2
乗 (T )に 比 例 す る 。 1-7 式 の 係 数 A を 各 試 料 間 で 比 較 検 討 す る た め に 低 温 側 の
2
抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 を T 2 で プ ロ ッ ト し た 結 果 を 図 4-2 に 示 す 。 抵 抗 の T 2 の 係 数
にも試料依存性が表れる。大まかには残留抵抗率の小さい試料ほど温度の 2 乗
の 係 数 A も 小 さ く な る 傾 向 が あ る 。 な お No.3 で は 、 直 線 と な る 温 度 範 囲 が 極 端 に
狭いことがわかる。
ホール係数は、キャリヤ-が単極性である場合、あるいは優勢である場合には、
例 え ば 、 キ ャ リ ヤ ー が 電 子 の 場 合 に は R H =-(1/ne)と な り 、 そ の 符 号 や 値 か ら キ ャ リ
- 86 -
ヤーの種類や濃度が判明する。ホ-ル係数の温度依存性の試料依存性
*2
を図
4-3 に 示 す 。 ホ ー ル 係 数 は 、 こ れ ま で の 報 告 [16]と 同 じ く 、 測 定 温 度 範 囲 内 で 正 に
なり、抵抗の測定から予想されるようにホ-ル係数の温度変化も大きい。ホール係
数は低温側から上昇して、ブロ-ドな極大値をとり、減少する。ただし、極大値の
位置は、抵抗率が極大を示す温度に比べて低温側にシフトしている。注目すべき
こ と に 、 低 温 側 で 、 他 の 試 料 に 比 べ て 極 端 に ホ - ル 係 数 の 大 き い No.3 の 試 料 は 、
室温近傍では、他の試料に比べて小さくなっている。
3.5
No.3
2.5
3
Hall Coefficient(cm /C)
3.0
2.0
No.5
1.5
No.4
1.0
No.11
No.12
0.5
0.0
0
50
100
150
200
250
300
350
Temperature ( K )
図 4-3
各 Yb 4 As 3 試 料 の ホ - ル 係 数 の 温 度 依 存 性 。
*2 落 合 [20]に よ れ ば 、 試 料 No.5 の 電 荷 秩 序 領 域 で の ホ ー ル 係 数 の 温 度 変 化 は 、 例 え ば 、 状 態 密
度 の 異 な る 価 電 子 帯 (As の P 由 来 、 4 f 由 来 )と 伝 導 帯 ( 4 f 由 来 ) 、 そ の ギ ャ ッ プ を 1560K と 仮 定 す る
と 説 明 で き る 。 す な わ ち 、 0.K に て 価 電 子 帯 の み に あ っ た キ ャ リ ヤ ー が 、 伝 導 帯 に 励 起 さ れ 、 有 限 温
度でホールと電子の2種類のキャリヤーが存在することによって説明される。
- 87 -
<帯磁率の試料依存性>
磁気秩序を示さない重い電子系物質の帯磁率は、フェルミ流体となる温度領域
において、電子ガスの示すパウリ常磁性と同様に温度によらず一定の値となり、そ
の 帯 磁 率 は 、 χ(0)で 表 さ れ る 。
図 4-4 に 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 を 示 す 。 10.K 以 下 の 低 温 範 囲 で 、 温 度 が 下 が
るにつれて帯磁率は上昇する。従来から、この上昇は不純物の影響であると説明
さ れ て い る [16,20]。 10.K-20.K の 温 度 範 囲 で 、 帯 磁 率 は ほ ぼ 一 定 に な る 。 こ の 温
度 領 域 か ら 0K に 外 挿 し て 得 ら れ た χ(0)は 、 上 述 し た よ う に フ ェ ル ミ 流 体 の 示 す 温
度 に 不 変 な 帯 磁 率 で あ る 。 そ の 大 き さ は 試 料 に 依 存 し 、 約 7%異 な る 。
分 子 場 近 似 に よ れ ば 帯 磁 率 χ は 4-1 式 の よ う に 書 け る
χ -1 =
χ free -1 - λ
(4-1)
た だ し 、 λ=θ P /C(θ P :常 磁 性 キ ュ リ ー 温 度 C:キ ュ リ ー 定 数 )
χ free
:自 由 イ オ ン の 帯 磁 率
したがって、結晶場や J 多重項の影響が無視できる場合、逆帯磁性率の温度依
存 性 か ら キ ュ リ ー 定 数 C 、 す な わ ち Yb の 価 数 や 常 磁 性 キ ュ リ - 温 度 を 見 積 も る こ
と が で き る 。 図 4-5 に 逆 帶 磁 率 の 温 度 依 存 性 を 示 す 。 Yb 4 As 3 の 場 合 、 こ れ ま で の
報 告 [16]と 同 様 に 逆 帯 磁 率 は 上 に 凹 に な り 、 直 線 で 近 似 出 来 る と は 言 い 難 い も の
の 、 20K か ら 室 温 の 温 度 領 域 に お け る 逆 帯 磁 率 は 、 試 料 No.14 に お い て 、 Yb の
平 均 価 数 を +2.25 ( Yb 3+ :Yb 2+ =1:3 で Yb 2.25+ と な る 。 ) 、 常 磁 性 キ ュ リ - 温 度
θ p =.-60.K と し て 説 明 さ れ る 。 常 磁 性 キ ュ リ - 温 度 を θ p =.-60.K と し て 試 料 間 の 依
存 性 が な い と 仮 定 す る と 、 試 料 間 に お け る 帯 磁 率 の 差 は 平 均 価 数 が 5%程 度 の 変
動するとして、概ね 説明される。
- 88 -
Χ (emu/mol.)
3.5x10
-2
3.0x10
-2
2.5x10
-2
2.0x10
-2
1.5x10
-2
1.0x10
-2
5.0x10
-3
No.11
No.12
No.14
0
50
100
150
200
250
300
Temperature ( K )
図 4-4
試 料 に 依 存 し た Yb 4 As 3 試 料 の 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 。
200
No.11
No.12
No.14
1/χ (mol/emu)
150
Yb 3+が5%減として計算
100
Yb 2+:Yb 3+ = 3:1
Yb 平均価数 2.25
50
0
0
50
100
150
200
250
300
Temperature( K )
図 4-5
各 Yb 4 As 3 試 料 の 逆 帯 磁 性 率 の 温 度 依 存 性 。
- 89 -
<比熱の試料依存性>
図 4-6 に 幾 つ か の Yb 4 As 3 試 料 (No.11,12,14)の 比 熱 C p /T の T 依 存 性 を 示 す 。
2
T 2 が 50.K 2
の 近 傍 に 特 徴 的 な 折 れ 曲 が り が あ る 。 T 2 が 50.K 2 -300.K 2 (7.1-17.3.K)
の 範 囲 で は 、 ほ ぼ 直 線 に な り 、 外 挿 し て 得 ら れ た γ HT 及 び β HT の 範 囲 は γ HT =.
240-250.mJ/(K 2. mole)、 β HT = . 2.2-2.3.mJ/(K 4. mole)で あ り 、 試 料 依 存 性 は 少 な い 。
*3
T が 50.K 以 下 の 温 度 領 域 で 傾 き は 変 わ り 、 よ り 急 勾 配 に な る 。 こ の 勾 配 の 変
2
2
わ る 温 度 は 、 帯 磁 率 ( 図 4-4)の 温 度 変 化 の な い 領 域 か ら 、 温 度 低 下 に 伴 い 、 上 昇
に 転 じ る 温 度 と ほ ぼ 一 致 し て い る 。 図 4-7 に 従 来 、 落 合 ら に よ っ て 報 告 [16]さ れ て
い る 結 果 と 設 定 温 度 領 域 を そ ろ え た C p /T の T 依 存 性 を 今 回 測 定 し た 複 数 個 の
2
Yb 4 As 3 試 料 に つ い て 示 す 。 こ の 温 度 領 域 か ら 外 挿 し て 得 ら れ た γ LT
( 175-203.mJ/(K mole)) は 試 料 依 存 性 が あ り 、 構 造 転 移 温 度 の 低 い No.11 の
2..
γ LT 値 が 最 も 小 さ い 。 又 、 β LT ( 3.1-3.8.mJ/(K 2. mole)) も 試 料 依 存 性 を 持 ち No.11
の β LT 値 は 他 に 比 べ て 大 き い 。
1000
600
2
Cp/T ( mJ/K mole)
800
No.11
No.12
No.14
400
200
0
0
50
100
150
2
200
250
300
2
T (K )
図 4-6 各 Yb 4 As 3 試 料 の 比 熱
*3
2
C p /T の T 依 存 性 。
7-8 K を 境 に そ れ よ り 高 温 側 か ら 外 挿 し て 求 め た γ 、 β を γ HT 、 β HT 、 低 温 側 か ら 外 挿 し て 求 め
た γ 、 β を γ LT 、 β LT と 記 す 。
- 90 -
400
2
Cp/T (mJ/K )
300
200
No.11
No.12
No.14
100
0
0
10
20
2
30
2
T(K )
図 4-7
2
各 Yb 4 As 3 試 料 の 比 熱 C p /T の T 依 存 性 (低 温 側 )。
- 91 -
<基本物性の試料依存性>
こ れ ま で に 述 べ た 各 物 性 の 試 料 依 存 性 に つ い て 、 表 4-2 に ま と め た 。
表 4-2 各 物 性 の 試 料 依 存 性 ま と め
格子定数(Å)
構造転移温度(K) 菱面体
構造転移温度(K) 立方晶
抵抗率温度依存より求めた転移温
度の幅 ΔT
残留抵抗(mΩ・cm)
ρ(max)/ρ(0 K)
-2
帯磁性率 χ(0)× 10 emu/mol.
2
比熱
γHT(mJ/mol.K )
(10K以上)
4
βHT(mJ/mol.K )
2
比熱
γLT(mJ/mol.K )
(2K-7K)
βLT(mJ/mol.K )
4
。
*4
No.3
8.791
*)
No.4
8.790
*)
No.5
8.788
*)
No.11
8.791
No.12
8.791
No.14
8.789
227.1
295.4
295.2
287.4
293.0
293.5
227.3
---
296.6
290.9
293.6
294.1
0.2
---
1.4
3.5
0.6
0.6
5.4
4.00
1.5
10.80
0.97
10.89
1.61
8.00
2.7
246
1.05
10.61
2.8
249
0.95
10.86
2.9
242
*)
*)
*)
2.9
---
2.8
---
2.8
---
---
---
---
2.3
2.2
2.2
205
175
203
197
*)
3.8
3.1
3.1
*)
---
*)
---
3
165
3.5
*)
試 料 依 存 性 が 顕 著 に 見 ら れ る の は 抵 抗 率 で あ る 。 図 4-8 に 残 留 抵 抗 率 と 構 造
転移温度の関係を図示した。転移温度は、抵抗率の温度変化における低温相で
ある菱面体晶系の最高温度、及び高温相である立方晶系での最低温度の平均値
で定義した。概ね 残留抵抗率の小さい試料ほど、転移温度の高い傾向を持つ。し
か し な が ら 、 No.4 の 試 料 は 相 転 移 温 度 が 高 い も の の 、 そ の 残 留 抵 抗 は あ ま り 小 さ
く な い 。 抵 抗 率 の 測 定 に は 、 そ の 絶 対 値 に ± 10%程 度 の 誤 差 が あ る 。 こ の よ う な
誤 差 を 考 慮 す る 必 要 の な い 別 の 指 針 と し て 、 図 4-9 に 各 試 料 の 抵 抗 率 の 極 大 値
と 残 留 抵 抗 率 の 比 (ρ(max)/ρ(0))と 相 転 移 温 度 の 関 係 を 示 し た 。 ρ(max)/ρ(0)が 増
大 す る に つ れ て 、 構 造 相 転 移 温 度 も 高 く な る 。 ρ(max)/ρ(0)の 値 は 、 約 11 で 飽 和
している。
残 留 抵 抗 率 (あ る い は ρ(max)/ρ(0)) 及 び 構 造 相 転 移 温 度 に 極 端 な 差 が 見 ら れ
る の は 、 No.3 の 試 料 で あ り 、 そ の 他 の 試 料 の 間 の 差 は 小 さ い 。 又 No.11 の 試 料
では、相転移がシャープでなく、ブロードになっている。
図 4-10 に 0K に 外 挿 し た 帯 磁 率 χ(0)と 構 造 相 転 移 温 度 の 関 係 を 示 す 。 帯 磁 率
χ(0)と 転 移 温 度 と の 目 立 っ た 相 関 は な く 、 No.11 の 試 料 の χ(0)の 値 が 最 も 小 さ い 。
ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ と 構 造 転 移 温 度 の 関 係 を 図 4-11 に 示 す 。 2.K-7.K の
*4
試 料 番 号 の 右 肩 *)が あ る 物 性 値 は 文 献 [16]及 び 落 合 氏 私 信 に よ る 。
- 92 -
温 度 領 域 か ら 外 挿 し て 求 め た ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ LT に つ い て 、 No.3 及 び
No.11 の 試 料 は 他 の 試 料 比 べ て 1 割 以 上 小 さ く な っ て い る 。 表 4-2 に あ る よ う に
β LT は No.3 及 び No.11 で 大 き い 。 10.K 以 上 の 温 度 領 域 か ら 外 挿 し て 求 め た ゾ ン
マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ HT に は 、 そ の よ う な 顕 著 な 傾 向 は 認 め ら れ な い 。
6
Residual resistivity ( m cm )
No.3
5
4
3
2
No.11
1
0
275
No.12
280
285
290
No.4
No.14 No.5
295
300
Temperature ( K )
図 4-8 各 Yb 4 As 3 試 料 の 残 留 抵 抗 率 と 相 転 移 温 度 の 関 係 。
No.4 の み 転 移 温 度 は 低 温 相 で あ る 菱 面 体 晶 相 の 上 限 温 度 。
12
No.14
11
No.12
10
No.5
No.4
(max)/(0)
9
No.11
8
7
6
5
4
No.3
3
2
275
280
285
290
295
300
Temperature ( K )
図 4-9
各 Yb 4 As 3 試 料 の ρ(max)と ρ(0)の 比 ρ(max)/ρ(0) 抵 抗 と
相 転 移 温 度 の 関 係 。 No.4 の み 転 移 温 度 は 低 温 相 で あ る
菱面体晶相の上限温度。
- 93 -
No.14
3.0
No.5
No.3
2.5
( 0 ) ( emu/mole )
No.12
No.11
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
275
280
285
290
295
300
Temperature ( K )
図 4-10
各 Yb 4 As 3 試 料 0.K に 外 挿 し た 帯 磁 率 と 相 転 移 温 度 の 関 係 。
250
No.12 No.14
No.11
150
No.5
No.3
4
 ( mJ/K mole )
200
100
50
0
275
280
285
290
295
300
Temperature ( K )
図 4-11
各 Yb 4 As 3 試 料 の γ と 相 転 移 温 度 の 関 係 。 ● が γ LT 青 ● が γ HT 。
- 94 -
< 試 料 依 存 性 :As 雰 囲 気 熱 処 理 が 及 ぼ す 影 響 >
こ れ ま で の 節 で 述 べ た よ う に Yb 4 As 3 は 半 金 属 で あ り 、 そ の 物 性 に は 試 料 依 存
性が見られる。残留抵抗率が小さく、構造相転移に起因する抵抗率の変化が鋭く、
且 つ 、 構 造 相 転 移 温 度 の 高 い 、 No.5 、 No12 及 び No.14 が 純 良 な 試 料 で あ る よ う
に思える。しかしながら、その原因がはっきりしない。この節では、その問題につい
て議論する。
図 3-12 の よ う な Yb-As 系 の 2 元 状 態 図 に お い て 、 Yb 4 As 3 を 示 す 固 相 線 が 化
学 量 論 比 の 所 に 位 置 し 、 垂 直 な 直 線 で あ る な ら ば 、 Yb 4 As 3 の 化 学 量 論 組 成 か ら
のずれは考慮に入れる必要がない。しかしながら、現実には、この固相線は、化
学量論比からのずれ、あるいは広がりを持つことが多い。希土類とヒ素の一部の化
合 物 で は 、 Anti-Th 3 P 4 型 構 造 の 負 イ オ ン が 約 1/8 の 割 合 で 抜 け 、 B 3 P 2 型 と な る こ
と が 知 ら れ て が い る 。 ( 例 え ば Anti-Th 3 P 4 型 構 造 の Eu 4 As 3 に 対 し て B 3 P 2 型 構 造
の Eu 3 As 2 ) し た が っ て 、 Yb 4 As 3 の 完 全 結 晶 か ら As の サ イ ト が 欠 損 し て い る 可 能
性 が あ り 、 Yb 4 As 3 の 試 料 間 の 差 異 も こ れ に よ る と 考 え ら れ る 。 構 造 相 転 移 温 度
( 電 荷 秩 序 - 無 秩 序 ) の 試 料 依 存 性 に つ い て 、 As の 影 響 を 実 験 に よ り 確 認 す る
ために、転移温度が低い(室温のX線回折で、立方晶系となる。)多結晶試料及
び 、 抵 抗 率 を 測 定 し た 試 料 No.11 を も ち い て As 雰 囲 気 (10 -3 .Torr 程 度 )で の 熱 処
理
*5
を行い、それぞれ X 線回折または抵抗の測定を行った。多結晶試料の X 線
回 折 の 結 果 を 図 4-12 に 示 す 。 処 理 前 は 、 立 方 晶 系 と 指 数 付 け さ れ る パ タ - ン 、
すなわち、高温相で取りうる結晶系である。一方、処理後は、菱面体晶系として指
数付けされるパタ-ン、すなわち、低温相の場合取りうる結晶系である。以上の結
果 か ら 、 As 雰 囲 気 熱 処 理 に よ り Yb 4 As 3 の 構 造 構 造 転 移 温 度 が 上 昇 し て い る こ と
が判る。
抵 抗 率 を 測 定 し た No.11 の 試 料 の 結 果 を 図 4-13 に 示 す 。 残 念 な が ら 、 構 造 転
移 を 示 す 抵 抗 の 変 化 は 、 よ り ブ ロ - ド に な っ て い る 。 こ の 原 因 は 、 As の 濃 度 分 布
にあると考えられ、濃度が均一になるには、処理温度、及び時間が不足していると
思 わ れ る 。 し か し な が ら 、 相 転 移 温 度 は 、 処 理 前 よ り 高 く な る 傾 向 が 読 み 取 れ (処
理前
菱 面 体 晶 系 の 最 高 温 度 287.4.K 、 立 方 晶 系 で の 最 低 温 度 287.3.K か ら 、
処理後
*5
菱 面 体 晶 系 の 最 高 温 度 288.7.K 、 立 方 晶 系 で の 最 低 温 度 296.2.
K程
処 理 条 件 : 中 程 を 細 く し た 石 英 管 の 一 方 の 端 に 対 象 試 料 の Yb 4 As 3 を 入 れ 、 も う 一 方 端 に As を
置 き 石 英 管 を 封 入 す る 。 Yb 4 As 3 が 部 分 を 500 ℃ 、 As の 部 分 が 250 ℃ ( ~ 10 Torr ) に な る よ う に 横
-3
型の電気炉に入れ3週間保持した。 この実験に使用した試料の内、多結晶試料は偶発的にできた
試 料 で 、 例 外 的 に 室 温 で 立 方 晶 系 の 試 料 で あ る 。 こ こ で 使 用 し た 多 結 晶 試 料 は 表 4-1 に 記 載 し て い
な い (poly-3)。
- 95 -
度 に 変 化 し て い る 。 ) 、 図 4-12 の 結 果 を 支 持 し て い る 。 し た が っ て 、 試 料 間 の 差 異
の 主 原 因 は 化 学 量 論 組 成 か ら の ず れ で あ り 、 As の 少 な い 試 料 で は 相 転 移 温 度
は低くなると判断される。
処理前
Cubic pattern
700
Intensity ( arb.)
600
500
Yb4As3
Yb4As3
Yb4As3
400
300
Yb4As3
グリース
200
100
20
25
30
35
2θ(deg.)
40
45
30
35
2θ(deg.)
40
45
処理後
Trigonal pattern
700
Intensity ( arb.)
600
500
400
グリース
300
200
100
0
20
図 4-12
25
Yb 4 As 3 試 料 (Poly-3)の As 雰 囲 気 処 理 前 後 の X線 回 折 図 形 。
- 96 -
Resistance (arb.unit)
Yb4As3 No.11
Yb4As3 No.11 As雰囲気処理後
287.4 K 287.4 K
288.7 K
296.2 K
220 230 240 250 260 270 280 290 300 310 320 330
Temperature( K )
図 4-13
Yb 4 As 3 試 料 (No.11)の As 蒸 気 圧 (10
に及ぼす影響。
- 97 -
-3
Torr)下 で の 熱 処 理 が 構 造 転 移
<試料依存性関連デ-タ-
間から見た試料依存性>
核 四 重 極 共 鳴 (NQR) の 緩 和 時
結晶に局所的な格子欠陥が存在する場合、低温での核スピン-格子緩和時間
T1 に そ の 影 響 が 見 ら れ る 。
通常、緩和時間は以下の式で表される。
M(t) = M 0 (1-exp(-t/T 1 )
(4-1)
T 1 :核 ス ピ ン - 格 子 の 緩 和 時 間
log((M/M 0 )-1) = - (t/T 1 )
(4-2)
し た が っ て 、 T 1 が 一 種 類 の 場 合 、 log(M/M 0 )-1 と 時 間 t を プ ロ ッ ト す れ ば 、 そ の 傾
き か ら 核 ス ピ ン - 格 子 緩 和 時 間 T1 が 求 め ら れ る 。
Yb 4 As 3 の 単 結 晶 試 料 に つ い て 4.2K で T 1 ( As:I=3/2
75
22MHz ) の 測 定 を 行 っ
た 。 測 定 に は 、 試 料 No.11 ( 構 造 転 移 温 度 291.K 、 残 留 抵 抗 率 1.61.mΩcm)と 試
料 No.14 ( 構 造 転 移 温 度 294.K 、 残 留 抵 抗 率 0.95.mΩcm)を 用 い た 。 両 者 と も リ カ
バ リ ー カ ー ブ は 、 単 一 の 直 線 に な っ て お ら ず 、 T1 に は 短 い も の ( 青 色 で 図 示 ) と 長
いもの(赤色で図示)の 2 種類がある。この内、短い方の 2 つの単結晶試料の内、
残 留 抵 抗 も 低 く 、 転 移 温 度 も 高 い 方 の 試 料 で あ る No.14 の 測 定 結 果 を 図 4-14 に
示 す 。 図 示 し て い な い が No.14 で は 、 No.11 に 比 べ て 青 色 で 示 す 短 い T 1 の 範 囲
が狭くなり改善が見られていた。
Yb 4 As 3 多 結 晶 試 料 ( poly-5)の 場 合 の 結 果 を 図 4-15 に 示 す 。 リ カ バ リ ー カ ー ブ
は単一の直線になっており、核スピン-格子の緩和過程は単一である。一般に短
い 緩 和 時 間 T1 の 原 因 は 、 格 子 欠 陥 で あ る と 言 わ れ て い る が 、 格 子 欠 陥 と し て 不
純物を想定した場合、液相の共存する液相-固相状態で作製された単結晶試料
の方に、不純物が多いと考えるのは不自然であり
*6
、むしろ、元素の欠損、すなわ
ちストイキオメトリ-からのずれと考えるべきであろう。
連データー
前述した<試料依存性関
As 雰 囲 気 熱 処 理 が 及 ぼ す 影 響 > の 実 験 結 果 か ら 、 構 造 転 移 温 度
は Yb 4 As 3 か ら As が 抜 け る と 低 く な る こ と が 判 明 し て い る 。 し た が っ て 、 短 い 緩 和
時 間 も As の 欠 損 に 起 因 す る と 考 え る べ き で あ ろ う 。 残 念 な が ら 、 化 学 量 論 組 成 か
ら の ず れ は 多 結 晶 試 料 の 方 が 少 な い 。 又 、 単 結 晶 試 料 No.11 と No.14 を 比 較 し
た 場 合 、 転 移 温 度 が 高 く 、 残 留 抵 抗 の 少 な い No.14 の 方 が 化 学 量 論 組 成 か ら の
ずれは少ない。
*6
そ の 後 、 青 木 ら [65]は 、 3N と 4N の Yb を 使 用 し て 作 成 し た Yb 4 Sb 3 と Yb 4 As 3 の 試 料 の 比 較 に
より、ブリッジマン法に比べて液相ー固相状態で長時間放置し単結晶を育成する自己フラックス法は
不純物の偏析による高純度化がされやすいことを指摘した。
- 98 -
1
(M/M 0-1)
Yb4As3_No.14
0.1
0.01
0
2
4
6
8
10
12
14
16
14
16
t ( msec. )
図 4-14
Yb 4 As 3 No.14 の 試 料 、 NQR の 緩 和 時 間 T 1 。
1
(M/M0-1)
Yb4As3_poly
0.1
0.01
図 4-15
0
2
4
6
8
10
t ( msec. )
12
Yb 4 As 3 多 結 晶 試 料 、 NQR の 緩 和 時 間 T 1 。
- 99 -
< Yb 4 As 3 の 化 学 量 論 組 成 (
Stoichiometry
)からのずれ>
こ れ ま で 述 べ て き た よ う に Yb 4 As 3 の 単 結 晶 は 、 自 己 フ ラ ッ ク ス 法 に よ り 作 製 し た 。
ここでは、自己フラックス法おける化学量論組成からのずれの問題を考察する。<
試 料 依 存 性 :As 雰 囲 気 熱 処 理 が 及 ぼ す 影 響 > に て 構 造 転 移 温 度 の 高 い 試 料 ほ
ど Yb 4 As 3 の 完 全 結 晶 か ら As の サ イ ト が 欠 損 が 少 な い 試 料 す な わ ち 、
Yb 4 As 3-δ (δ>0) の δ が 小 さ い 試 料 試 料 で あ る こ と を 述 べ た 。 < 基 本 物 性 の 試 料 依 存
性>で述べたことと合わせると、残留抵抗が少なく(あるいは、抵抗率の極大値と
残 留 抵 抗 率 の 比 (ρ(max)/ρ(0))が 大 き く ) 構 造 転 移 温 度 の 高 い 試 料 は
Yb 4 As 3-δ (δ>0) の δ の 小 さ い 試 料 試 料 と い う こ と に な る 。 し か し な が ら 、 δ が 負 に な
る こ と 、 す な わ ち 、 化 学 量 論 組 成 に 対 し て As が 過 剰 な 状 態 に な る の 存 在 の 可 能
性が問題となる。ここではこの問題について<試料依存性関連デ-タ-
核四重
極 共 鳴 (NQR) の 緩 和 時 間 か ら 見 た 試 料 依 存 性 > と 想 定 さ れ る 状 態 図 を 元 に 議 論
をする。
図 4-16 と 図 4-17 に 化 学 量 論 組 成 近 傍 の 固 相 線 を 拡 大 し た 仮 想 的 な 二 元 状 態
図 を 示 す 。 両 方 の 状 態 図 に お い て 、 固 相 線 は Yb 4 As 3-δ の δ の 正 負 の 領 域 に 広 が
っ て お り 、 原 理 的 に は 、 化 学 量 論 組 成 に 対 し て As が 欠 損 す る 場 合 も 、 As が 過 剰
に 入 る 場 合 も あ り 得 る 。 両 者 の 状 態 図 の 本 質 的 な 差 は 、 図 4-16 で は 、 固 化 す る 温
度 以 下 で 図 の 左 側 の 固 相 線 が δ の 正 の 領 域 に あ り 、 図 4-17 で は 左 側 の 固 相 線 が
δ の正負の領域にまたがっているところにある。これまでの実験結果を考えると、
自 己 フ ラ ッ ク ス 法 を 用 い て 試 料 を 作 る 場 合 、 図 4-16 を 想 定 す と δ は 正 と な る (As
が 欠 損 す る 。 ) 。 そ の 場 合 、 試 料 作 製 中 の 僅 か な 温 度 差 が 図 の A,B の よ う に δ の
僅 か な 差 を も た ら す 。 一 方 、 図 4-17 を 想 定 し 、 且 つ 、 左 側 の 固 相 線 が 、 化 学 量 論
組 成 よ り As が 過 剰 な 領 域 に あ る 温 度 域 で は 、 自 己 フ ラ ッ ク ス 法 を 用 い て 試 料 を 作
製した場合に負の値となる(もちろん、この場合も温度領域によっては、 δ は正と
なる。)。多結晶試料を作製する場合のように、仕込みを化学量論組成比にして作
製 し た 場 合 、 図 4-16 を 想 定 す る 場 合 に は 、 化 学 量 論 組 成 の 試 料 が 得 ら れ る (図 中
の C)が 、 図 4-17 を 想 定 す る 場 合 に は 、 自 己 フ ラ ッ ク ス 法 と 同 様 に 、 δ は 負 の 値 と
なる。又、自己フラックス法も化学量論組成比にて作製した場合も、僅かな温度差
に よ り 、 δ が 異 な る (図 中 の A,B)こ と に な る こ に に な る が 、 重 要 な 点 は 、 図 4-17 を
想定、図中の点で示した温度領域では、自己フラックス法も化学量論組成比にて
作製した場合も同一温度では同一の δ となる点にある。
<試料依存性関連デ-タ-
核 四 重 極 共 鳴 (NQR) の 緩 和 時 間 か ら 見 た 試 料
依 存 性 > で 議 論 し た よ う に 、 NQR の 緩 和 時 間 か ら は 、 化 学 量 論 組 成 比 に て 作 製
した多結晶試料の方が、格子欠陥が明らかに少ないと考えられる結果となってい
- 100 -
る 。 し た が っ て 、 試 料 作 製 時 の 状 況 は 、 図 4-16 の よ う に な っ て い る か 、 あ る い は 、
試 料 作 製 時 の 温 度 は 、 図 4-17 の 左 側 の 固 相 線 が 化 学 量 論 組 成 よ り As に 欠 損 し
ている領域にあると考えられる。したがって、本研究で使用した単結晶試料は全て
化 学 量 論 組 成 か ら As が 欠 損 し た 試 料 で あ り 、 そ の 欠 損 量 の 差 に よ り 各 種 物 性 の
試料依存性が見られると結論される。
図 4-16
Yb 4 As 3 の 想 定 さ れ る 2 元 状 態 図 の 化 学 量 論 組 成 近 傍 の 仮 定 し た
拡 大 図 そ の 1。 Yb の 自 己 フ ラ ッ ク ス 法 を 用 い て 試 料 を 作 製 し た
場 合 に 組 成 は A,B の と こ ろ と な る 。
- 101 -
図 4-17
Yb 4 As 3 の 想 定 さ れ る 2 元 状 態 図 の 化 学 量 論 組 成 近 傍 の 拡 大 図
そ の 2。 Yb の 自 己 フ ラ ッ ク ス 法 を 用 い て 試 料 を 作 製 し た 場 合 に
組 成 は A,B の と こ ろ と な る 。 こ の 場 合 Asは 化 学 量 論 組 成 よ り 過 剰 と
なる。
- 102 -
<転移温度の試料依存性の起源>
Eu 4 As 3 は 、 電 荷 秩 序 - 電 荷 無 秩 序 転 移 を し 、 抵 抗 率 の 温 度 変 化 が 不 連 続 に な
る 温 度 か ら 求 め た 転 移 温 度 は 約 340.K で あ る 。 低 温 側 は 菱 面 体 晶 系 と な り 、 電 荷
秩序状態にある。高温側は立方晶系であり、電荷無秩序相は熱的価数揺動状態
に あ る と さ れ て い る [66]。 Eu 4 As 3 の 高 温 側 の 空 間 群 は I43d に 属 し 、 そ の 結 晶 構
造 は anti-Th 3 P 4 で あ る 。 同 一 結 晶 構 造 を 持 つ Yb 4 As 3 と Sm 4 Bi 3 も 、 電 荷 秩 序 - 電
荷無秩序転移をする物質であり、高温側で立方晶系、低温側で菱面体晶系となる。
低温側では電荷秩序状態にあり、高温側では直接的な証拠はないものの熱的価
数 揺 動 状 態 に あ る と 考 え ら れ て い る [16]。 こ れ ら の 物 質 は い ず れ も キ ャ リ ヤ - 数
の少ない物質であり、これらの物質で電荷秩序が出現する理由は、キャリヤ-数
が 少 な い た め に 、 ス ク リ - ニ ン グ 効 果 が 弱 く 4f 間 の ク - ロ ン 相 互 作 用 が 大 き く 働 く
ためと考えられている。逆にスクリ-ニング効果が強く、トンネリングにより価数揺
動 す る 物 質 で は 電 荷 秩 序 は 起 こ り に く い と 考 え ら れ て い る [67]。
結 晶 の 構 造 相 転 移 は 熱 力 学 的 に は 、 高 温 相 と 低 温 相 の 自 由 エ ネ ル ギ - (F
F
high、
l o w )が 等 し く な る 温 度 で 決 ま る 。 こ こ で
F
h i g h =F l o w
:
F=U-TS
(4-4)
F :ヘルムホルツの自由エネルギ-
U :内部エネルギ-
T :温度
S :エントロピ-
一方、高温相と低温相の自由エネルギ-の差は
ΔF=ΔU-TΔS
(4-5)
で 与 え ら れ る 。 し た が っ て 転 移 温 度 は ΔF=0 か ら
T=ΔU/ΔS
(4-6)
で与えられる。構造相転移温度の試料依存性において、エントロピ-の差と内部
エネルギ-の差とどちらが支配的な要因であるのかを次に問題として取り上げる。
Eu 4 As 3 の Verwey 転 移 と 同 様 に [66]、 高 温 相 と 低 温 相 の エ ン ト ロ ピ ー 差 が 、
Yb 4 As 3 中 の Yb 3+ イ オ ン と Yb 2+ イ オ ン の 配 列 の 変 化 に よ り エ ン ト ロ ピ - 差 が き ま る と
考えると、それは以下の値となる。
S = kB/T ln
(4N)!
(3N)!N!
= 18.7 J/(mole K)
(4-7)
こ の 値 は 、 Yb 2+ /Yb 3+ 比 を 3 と 仮 定 し た 場 合 の 式 で あ る 。 こ の 配 列 エ ン ト ロ ピ ー は 、
- 103 -
転 移 温 度 の 低 い 試 料 す な わ ち Yb 3+ が 少 な い 試 料 で は 、 エ ン ト ロ ピ ー が 若 干 小 さ く
なり、むしろ、相転移温度をわずかに高める方向に寄与する。これは、現実とは逆
の方向への寄与である。したがって、転移温度の試料依存性は高温相と低温相
の内部エネルギ-差の試料依存性によっていると考えられる。
上 述 し た よ う に 、 As の 空 孔 の 増 加 は Yb の 割 合 の 減 少 を も た ら す と 考 え ら れ る 。
3+
Yb 4 As 3 の 各 試 料 の 構 造 相 転 移 温 度 と 相 転 移 温 度 付 近 の ホ - ル 係 数 の 関 係 を 図
4-18 に 示 す 。 又 、 260.K に お け る ホ - ル 係 数 、 転 移 温 度 の 90%温 度 の ホ ー ル 係
数 と 構 造 相 転 移 温 度 の 関 係 を 図 4-19 に 示 す 。 相 転 移 温 度 の 高 い 試 料 ほ ど ホ ー
ル係数が大きい傾向を持つ。したがって、キャリヤ-濃度が高くなり、ク-ロン力
へのスクリ-ニング効果が増加するにつれて、高温相と低温相の内部エネルギ-
差は低下し、相転移温度が低下すると考えられる。
し か し な が ら 、 4-7 式 で 求 め ら れ る 配 列 エ ン ト ロ ピ ー は 正 し く な い 可 能 性 が あ る 。
良 質 で あ り 、 且 つ 抵 抗 で 見 た 相 転 移 の シ ャ - プ な 試 料 で あ る 試 料 No.12 を 用 い て
筆 者 [64]ら は 10-320.K の 範 囲 で Yb 4 As 3 比 熱 の 測 定 を 行 っ た 。 比 熱 の 測 定 に AC
カ ロ リ - メ - タ を 使 用 し 、 断 熱 法 に よ る 低 温 領 域 (2-30.K)の 比 熱 の 値 と 比 較 し 、 絶
対 値 を 求 め た 。 得 ら れ た 測 定 結 果 を 図 4-20 上 方 に 示 す 。 比 熱 は 構 造 相 転 移 温 度
に 対 応 す る 温 度 T co =293.K に 鋭 い ピ - ク を 持 つ 。 又 、 ピ - ク の 幅 は 1K 未 満 で あ
り 、 こ れ は 、 試 料 の 均 一 性 が 良 好 で あ る こ と を 示 し て い る 。 図 4-20 下 方 に エ ン ト ロ
ピ ー 変 化 を 示 す 。 相 転 移 温 度 で の エ ン ト ロ ピ ー 変 化 は 0.3J/(K . mole)で あ り 、 4-7
式で求めたエントロピーに比べると小さい。この結果を正しいとするならば、高温
側 の 立 方 相 (電 荷 無 秩 序 相 ) に 、 short range の 電 荷 秩 序 が 残 っ て い る 可 能 性 が あ
る。その場合、転移温度の試料依存性に関する上記議論は適切でない。
帯 磁 率 に も 、 弱 い 試 料 依 存 性 が 表 れ る 。 例 え ば 、 図 4-5 に 示 し た よ う に 電 荷 秩
序 -無 秩 序 転 移 の 温 度 (T co )が 低 め の 試 料 No.11(T co =.291.K)は 、 試 料
No.12(T co =.293.K)、 や 試 料 No.14(T co =.294.K)に 比 べ て 、 逆 帯 磁 率 の 温 度 変 化
か ら 求 め ら れ た Yb の 割 は 、 数 % 少 な い 。 白 川 ら [67]は 、 Yb 4 As 3 に お け る Yb4f
3+
レ ベ ル と As の P バ ン ド と は 、 補 償 関 係 に あ り 、 As を Sb や Se で 置 換 す る と 帯 磁
率 の 減 少 と キ ャ リ ヤ - 数 の 増 加 を も た ら す こ と を 指 摘 し て い る 。 Yb 4 As 3 の 試 料 依
存 性 も 転 移 近 傍 で は 定 性 的 に は 、 同 様 に 理 解 さ れ る 。 す な わ ち 、 As の 空 孔 増 加
に よ り 本 来 P バ ン ド に 供 給 さ れ る べ き 電 子 の 割 合 が 減 り 、 Yb 3+ の 割 合 の 減 少 を も
たらすと考えられる。
- 104 -
0.3
No.3
No.11
3
Hall Coefficient(cm /C)
0.4
No.12
0.2
No.5
0.1
0.0
200
220
240
260
280
300
320
340
Temperature ( K )
図 4-18
各 種 Yb 4 As 3 の ホ ー ル 係 数 の 温 度 依 存 性 。 電 荷 秩 序 -無 秩 序 相 転 移
温度近傍。
3
Hall Coefficient(cm /C)
0.10
Tcoの90%
260 K
0.08
0.06
0.04
0.02
275
280
285
290
295
Transition Temperature :Tco ( K )
図 4-19
相転移温度以下、その近傍のホール係数。
- 105 -
300
図 4-20
Yb 4 As 3 (No.12)の 転 移 温 度 領 域 を 含 む 比 熱 測 定 結 果 と そ の
エ ン ト ロ ピ ー [62]。
- 106 -
< Yb 4 As 3 各 試 料 の Wilson 比 、 Kadowaki プ ロ ッ ト >
幾 つ か の Yb 系 の 重 い 電 子 系 物 質 と と も に 、 Yb 4 As 3 の χ(0)と ゾ ン マ ー フ ェ ル ト
係 数 γ LT を プ ロ ッ ト し た も の を 図 4-21 に 示 す 。 1-6 式 で 表 さ れ る χ(0)/γ の 比 は 、
Wilson
3+
ratio と 呼 ば れ て い る 。 Yb の 場 合 、 g J =6/7,
J=7/2 と な り 、 図 4-21 中 の
赤線となる。図にはこれまで報告されている金属的重い電子系物質も同時に示さ
れ て い る 。 YbCuAl や YbCu 2 Al 2 な ど の 場 合 、 χ(0)/γ の 値 は 、 ほ ぼ Wilson 比 に
等 し い 。 Yb 4 As 3 の 場 合 も χ(0)/γ の 比 は 、 χ(0)に 大 き い 方 に 僅 か に ず れ る も の の 、
Wilson 比 を 示 す 直 線 近 く に 位 置 す る 。
一 方 重 い 電 子 系 物 質 の 低 温 度 領 域 で の 抵 抗 率 の 温 度 変 化 は 、 1-7 式 に 見 ら
れ る よ う に 温 度 T に 比 例 し そ の 係 数 A と γ の 比 も ほ ぼ 一 定 な る [11]。 こ れ ら の A
2
と γ の 関 係 を プ ロ ッ ト し た も の は Kadowaki プ ロ ッ ト と し て 知 ら れ て い る 。 図 4-22 に
幾 つ か の 重 い 電 子 系 物 質 と 共 に 、 Yb 4 As 3 の 試 料 に つ い て プ ロ ッ ト し た も の を 示 す 。
Yb 4 As 3 は 、 A の 値 が 大 き い 方 に ず れ る も の の 、 残 留 抵 抗 が 小 さ く 、 転 移 温 度 の 高
い 試 料 ( No.5,12,14 ) で は 、 こ の 関 係 を ほ ぼ 満 足 す る 。 残 留 抵 抗 の 高 い 試 料
( No.3,11 ) で は 、 こ の 直 線 か ら ず れ る 傾 向 が 顕 著 と な る 。
- 107 -
60
50
40
Yb 0.9Sc0.1 Al
Yb 4 As 3
30
No.3
No.14
No.5,No12
No.11
YbCuAl
20
YbCu 2 Si 2
10
0
YbAl 2
0
100
200
300
400
500
600
γ( mJ/K 2 mole )
図 4-21
幾 つ か の Yb 系 havy fermion 物 質 と Yb 4 As 3 の χ(0)と γ LT の 関 係 。
図 中 の 赤 線 は Willson比 、 Yb 4 As 3 の γ LT の 値 は 、 2-7K か ら 外 挿 し て
求 め た 値 。 γ HT の 場 合 だ と 、 ほ と ん ど 線 上 に な る 。
- 108 -
2
10
UBe 13
CeAl 3
10 1
CeCu 2 Si2
Yb 4As3 No.3
UPt3
No.11
No.4
10 0
CeCu 6
CeB 6
No.5,No.14
No.12
USn 3
UAl 2
-1
UPt 2
10
CePd 3
-2
UPt
UIn 3
UGa 3
10
-3
10
10 1
10 2
10 3
10 4
2
γ( mJ/K mole )
図 4-22
幾 つ か の havy fermion 物 質 と Yb 4 As 3 を Kadowaki プ ロ ッ ト し た も の 。
- 109 -
<試料依存性のまとめ>
1 . 試 料 依 存 性 の 主 原 因 は 化 学 量 論 組 成 か ら の ず れ で あ り 、 単 結 晶 に お い て As
は 欠 損 し て い る 。 As の 少 な い 試 料 で は 転 移 温 度 は 低 く な る 。 転 移 温 度 の 低 い 試
料ほど、残留抵抗が大きくなる。あるいは抵抗率の極大値と残留抵抗率の比
(ρ(max)/ρ(0))が 小 さ く な る 。
→ 残 留 抵 抗 率 よ り も ρ(max)/ρ(0)の 方 が 試 料 良 否 の 判 断 に な り や す い 。
2. 今 回 、 調 査 し た 単 結 晶 の 内 、 良 質 な の は 、 No.5[16]及 び No.12 、 No.14 で あ る 。
こ の 時 、 残 留 抵 抗 率 は 1.mΩcm 前 後 で あ り 、 γ LT は 約 200.mJ/(K 2 mole)で あ る 。
γ HT は 約 250.mJ/(K mole)で あ り 、 γ LT に 比 べ て 試 料 依 存 性 は 小 さ い 。
2
3.
良 質 で な い 、 す な わ ち As の 欠 損 の 多 い 単 結 晶 の 場 合 に 残 留 抵 抗 率 は 大 き く
な り 、 著 し い 場 合 5.mΩcm 程 度 と な る が 、 む し ろ 、 例 外 的 な 試 料 で あ る 。 又 、 相 転
移 温 度 は 273K 、 γ LT は 約 160.mJ/(K 2 .mole)程 度 ま で 小 さ く な る 。
→ 2 と 3 か ら 、 文 献 [16]の 試 料 は 、 現 状 の 作 製 手 段 に お い て は 良 質 な 試 料 と 判 断
さ れ る 。 化 学 量 論 組 成 か ら の ず れ の 小 さ な 試 料 の 方 が 大 き な γ LT を 持 つ こ と か ら 、
Yb 4 As 3 に お け る 比 較 的 大 き な γ LT =.160-200.mJ/(K 2 mole)は 不 純 物 や 空 孔 な ど の
格子欠陥ではなく、この化合物の本質な性質であると判断される。
4. Yb 4 As 3 に お け る 比 熱 の C/T と T の 関 係 は 、 T が 50.K ~ 300.K (7.1-17.3.K)
2
2
2
2
の 範 囲 で は 、 ほ ぼ 直 線 に な る 。 外 挿 し て 求 め た γ HT =.240-250.mJ/(K 2 mole)で あ り 、
大 き な 試 料 依 存 性 は な い 。 T が 50K
2
2
以下の温度範囲で傾きは変わり、より急勾
配 に な る 。 こ の 温 度 範 囲 か ら 外 挿 し て 求 め た γ LT =.175-203.mJ/(K .mole)は 試 料 依
2
存 性 が 大 き く 、 構 造 転 移 温 度 の 低 い 試 料 No.11 の γ LT 値 が 小 さ い 。
5. 比 較 的 良 質 な Yb 4 As 3 単 結 晶 試 料 (No.14)で も 、 化 学 量 論 組 成 か ら の ず れ が 存
在 す る 。 NQR の 緩 和 時 間 で 見 た 場 合 、 ス ト イ キ オ メ ト リ - の ず れ が 少 な い の は 、
むしろ多結晶試料である。
6.
Yb 4 As 3 単 結 晶 試 料 の χ(0)/γ 比 (Wilson 比 ) は 、 重 い 電 子 系 で 見 ら れ る 関 係 を
ほ ぼ 満 た す 。 Kadowaki プ ロ ッ ト に お け る A/γ は 、 化 学 量 論 組 成 に 近 い 良 質 な 試
料のみ満たし、残留抵抗の大きい試料では大きくずれる。
- 110 -
4-2 Yb 4 As 3 の 核 四 重 極 共 鳴 (NQR)
の測定
帯 磁 率 は 、 10K-20.K の 温 度 範 囲 で ほ ぼ 一 定 に な り 、 そ れ よ り 低 温 側 で 上 昇 す る 。
こ の 低 温 側 の 上 昇 は Yb 4 As 3 の 不 純 物 に 起 因 す る と 考 え ら れ て い た 。
< NQR の 測 定 : 0.4.K ~ 約 200.K >
Yb 4 As 3
の As の NQR 緩 和 時 間 の 測 定 を 行 な っ た 。 測 定 対 象 の Yb 4 As 3 試 料
75
は 、 多 結 晶 試 料 、 試 料 No.11 、 試 料 No14 を 用 い た 。 上 述 し た よ う に 4.2.K で
NQR 信 号 の リ カ バ リ ー カ ー ブ が シ ン グ ル exponential で あ り 、 緩 和 時 間 T 1 が 一 種
類 で あ っ た の は 、 多 結 晶 試 料 の み で あ っ た 。 以 下 の NQR の デ - タ - は 多 結 晶 試
料において測定されたものである。
シ グ ナ ル は 22MHz 近 傍 で 観 察 さ れ た 。 図 4-23 に 得 ら れ た ス ペ ク ト ル を 示 す 。
ス ペ ク ト ル は Lorentzian に 近 く 、 シ ャ - プ で あ り 、 長 い 裾 を 低 周 波 数 側 、 高 周 波 数
側 に 持 ち 、 そ の 半 値 幅 は 0.4MHz で あ り 、 2.K ま で は 特 徴 的 な 変 化 は 見 ら れ な い 。
核 緩 和 時 間 T 1 の 温 度 依 存 性 を 図 4-24 に 示 す 。 30.K 以 上 の 高 温 側 で 、 温 度
上 昇 に 伴 い 1/T 1 は 減 少 す る 。 約 10.K-20.K の 温 度 範 囲 で 、 温 度 低 下 に 伴 い 1/T 1
は 減 少 し 、 4.K 以 下 で 、 温 度 に 依 ら ず ほ ぼ 一 定 の 値 に な る 。 更 に 1.K 以 下 の 低 温
で は 、 1/T 1 は 上 昇 に 転 ず る 。 た だ し 、 こ の 温 度 領 域 で の 緩 和 時 間 は 2 種 類 観 測 さ
れた。
図 4-25 に 1/T 1 T の 温 度 依 存 性 を 示 す 。 通 常 の 重 い 電 子 系 で 見 ら れ る T 1 T=一
定 ( Korringa の 関 係 [21]) の 温 度 範 囲 は 7-20.K と 狭 く 、 1/T 1 T は 7K 以 下 で 上 昇
し て い る 。 図 4-24 や 4-25 で 示 さ れ る こ れ ら の 結 果 は 、 こ れ ま で 報 告 さ れ て き た 帯
磁率の低温側での上昇が、本質的なものであり、不純物などの格子欠陥起源でな
いことを示している。
- 111 -
図 4-23
10
Yb 4 As 3 多 結 晶 試 料
As
75
NQR ス ペ ク ト ル
4.2 K。
4
75
1/T 1 ( 1/sec )
As NQR
21.92 MHz
T 1T = const
10
3
10
2
1
10
Temperature ( K )
図 4-24
Yb 4 As 3 多 結 晶 試 料
1/T 1 の 温 度 変 化 。
- 112 -
100
75
As NQR
21.92 MHz
H=0
1/T 1 T (1/sec K)
80
60
T1T = const
40
7K
20K
20
0
0
50
100
150
Temperature ( K )
図 4-25
Yb 4 As 3 多 結 晶 試 料
1/T 1 T の 温 度 変 化 。
- 113 -
200
4-3
Yb 4 As 3 の 磁 場 中 比 熱
帯 磁 率 の 測 定 結 果 か ら 求 め た 、 Yb 4 As 3 の 常 磁 性 キ ュ リ - 温 度 (θ p )は -60.K で あ
り、近藤温度は比較的高い。外部磁場を印加した場合、その磁場は近藤シングレ
ッ ト を 壊 す 方 向 に 働 く が 、 Yb 4 As 3 の 場 合 θ p が 大 き い た め に 数 .T 程 度 の 磁 場 が ゾ
ンマーフェルト係数 γ に与える影響は極めて少ないと考ていた。
No.6 及 び No.11 の 磁 場 中 比 熱 の 測 定 結 果 を 図 4-26 及 び 図 4-27 に 示 す 。 縦
軸 は C/T 、 横 軸 は T で あ る 。 試 料 No.6 ( 図 4-26 ) で は 、 磁 場 、 0.T 、 3.T 、 6.T 、
2
10.T で 測 定 し た 。 0.T の C/T が ほ ぼ 直 線 的 に 変 化 し γ LT =.160.mJ/(K 2 mole)で あ る
の に 比 べ 、 3.T で C/T は 変 化 し て お り 、 T =5K 近 傍 で 上 に 凸 の 形 が 見 ら れ る 。
2
2
6.T 、 10.T で は 、 こ の 傾 向 は よ り 顕 著 に な り 、 低 温 側 で C/T は 小 さ く な る 。 こ れ ら の
傾 向 を よ り 詳 細 に 見 た も の が 、 No.11 の 測 定 で あ る 。 僅 か 1.T 、 2.T で C/T は 上 向
き に な る 傾 向 が 見 ら れ 、 3.T で 上 に 凸 の 形 が 見 ら れ 、 磁 場 が 増 加 す る に つ れ て そ
の傾向は顕著になる。
よ り 広 い 温 度 範 囲 の 場 合 に つ い て は 、 図 4-28 、 図 4-29 に 示 す 。 10.K(100.K )
2
以上の温度範囲では、比熱の磁場依存は見られずほぼ一定の 値を示している。
- 114 -
400
2
Cp/T ( mJ/mol.K )
Yb4As3
200
0
0T
3T
6T
10T
0
10
20
30
2
40
2
T (K )
図 4-26
Yb 4 As 3 の 磁 場 中 比 熱 の 測 定 結 果 ( 試 料 No.6) 。
400
2
Cp/T ( mJ/mol.K )
Yb4As3
0T
1T
2T
3T
4T
6T
8T
10T
200
0
0
20
40
2
2
T (K )
図 4-27
Yb 4 As 3 の 磁 場 中 比 熱 の 測 定 結 果 ( 試 料 No.11) 。
- 115 -
50
1200
2
Cp/T mJ/mol.K
0T
3T
6T
10T
Yb4As3
1000
800
600
400
200
0
0
100
200
2
300
400
2
T (K )
図 4-28
Yb 4 As 3 の 磁 場 中 比 熱 の 測 定 結 果 ( 広 い 温 度 範 囲 ,試 料 No.6) 。
1200
1000
2
Cp/T (mJ/mol.K )
Yb4As3
800
0T
1T
2T
3T
4T
6T
8T
10T
600
400
200
0
0
100
200
300
400
T (K )
2
図 4-29
2
Yb 4 As 3 の 磁 場 中 比 熱 の 測 定 結 果 ( 広 い 温 度 範 囲 ,試 料 No.11)。
- 116 -
4-4 Yb 4 As 3 - x Sb x 及 び Yb 4 As 3 - x P x の
比熱
< Yb 4 As 3 の 混 晶 系 : Yb 4 As 3-x Sb x :X=0. 3 6 >
図 4-30 に 多 結 晶 試 料 Yb 4 As 3-x Sb x の 格 子 定 数 を 示 す 。 こ の 格 子 定 数 の 変 化 は 、
端 物 質 で あ る Yb 4 As 3 の Yb の 平 均 価 数 が +2.25 で あ り 、 Yb 4 Sb 3 の 平 均 価 数 が
+2.1 で あ る こ と か ら 両 者 の 格 子 定 数 の 値 を 直 線 で 結 ん だ 線 、 す な わ ち Vegard's
law に 従 わ な い こ と も 予 想 し た が 、 予 想 に 反 し て 限 ら れ た 組 成 範 囲 内 で は あ る も の
の ほ ぼ 従 う 変 化 を 示 す 。 始 め に 、 多 結 晶 試 料 Yb 4 As 3-x Sb x を 用 い て 比 熱 等 の 測 定
を 行 っ た 。 図 4-31 に そ の 結 果 を 示 す 。 Yb 2 O 3 の 混 入 が 3%程 度 認 め ら れ た 。 低 温
側 で 赤 丸 で 囲 っ た 大 き な ピ - ク を 持 ち 、 Yb 2 O 3 の 存 在 が ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ
の決定に悪影響を及ぼしている。又、焼結の問題により、残留抵抗が大きくなって
いたために、その後、単結晶試料を作製して再測定を行った。
9.4
9.3
9.2
(Å)
9.1
9.0
8.9
8.8
8.7
2.4
Yb4Sb3
図 4-30
1.8
1.2
Yb4 As3-x Sb x
0.6
Yb4As 3
Yb 4 As 3-x Sb x の 格 子 定 数 。
- 117 -
Yb 2O 3
図 4-31
2
Yb 4 As 2.7 Sb 0.3 の 多 結 晶 試 料 の 比 熱 C/T の sT 依 存 性 。
単 結 晶 試 料 の Yb 4 As 3-x Sb x は Yb 4 As 3 と 同 様 に Yb の 液 相 を 用 い た 自 己 フ ラ ッ
ク ス 法 で 作 ら れ る 。 そ の た め に 、 仕 込 み 量 か ら Sb の 量 を 推 定 す る こ と は 困 難 で あ
る 。 そ こ で 、 得 ら れ た 単 結 晶 試 料 の 格 子 定 数 と Vegard's
law(図 4-30)か ら
Yb 4 As 3-x Sb x の Sb 割 合 を 決 定 し た 。 そ の 時 、 得 ら れ た 単 結 晶 試 料 の 格 子 定 数 は 、
8.851 Å で あ っ た 。
図 4-32 に Yb 4 As 3-x Sb x (X=0.36)の 帯 磁 率 の 測 定 結 果 を 、 Yb 4 As 3 及 び Yb 4 Sb 3
Yb 4 Bi 3 の 結 果 と 共 に 示 す 。 全 体 的 な 傾 向 は 似 て い る も の の 、 Yb 4 As 3 に 比 べ て
Yb 4 As 3-x Sb x
(X=0.36)の 帯 磁 率 は 、 ほ と ん ど 全 温 度 範 囲 で 少 し 小 さ く な る 。 一 方 、
転 移 温 度 は 288K か ら 231K ま で 下 が る 。 図 4-33 に Yb 4 As 3-x Sb x
抗 率 の 温 度 依 存 性 の 測 定 結 果 を 、 Yb 4 As 3
(X=0.36)の 抵
(試 料 No.11)の 結 果 と 共 に 示 す 。 As
を 12%Sb で 置 換 し た 結 果 、 全 体 的 に 抵 抗 率 は 低 下 し 、 温 度 変 化 も 、 極 端 に 少 な く
な っ て い る 。 構 造 転 移 を 示 す 抵 抗 の 急 激 な 変 化 も 、 Yb 4 As 3
-ドになっている。
- 118 -
に比べて、少しブロ
図 4-32
Yb 4 As 2.64 Sb 0.36 の 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 。
( 比 較 の た め Yb 4 As 3 及 び Yb 4 Sb 3 Yb 4 ABi 3 も 図 中 に 示 し た 。 )
図 4-33
Yb 4 As 2.64 Sb 0.36 の 抵 抗 率 。
( 比 較 の た め Yb 4 As 3 Sample No.11、 も 図 中 に 示 し た 。 )
- 119 -
図 4-34 Yb 4 As 2.64 Sb 0.36 の 比 熱 と 磁 場 中 比 熱 。
( 比 較 の た め Yb 4 As 3 試 料 No.11 も 図 中 に 示 し た 。 )
図 4-34 に Yb 4 As 3-x Sb x (X=0.36)の 比 熱 測 定 の 結 果 を 、 Yb 4 As 3 (試 料 No.11)の
結 果 と 共 に 示 す 。 磁 場 の 無 い 場 合 、 C/T の T 2 依 存 性 は 直 線 に な る 。 又 、 10T の
磁 場 下 で は 、 両 者 と も に 上 に 凸 の 温 度 依 存 性 と な る 。 Yb 4 As 3-x Sb x
(X=0.36)の ゾ
ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ LT の 値 ( Yb 4 As 3 の γ LT と ほ ぼ 同 一 の 温 度 範 囲 か ら 外 挿 し た
た め に γ LT と 表 記 し た 。 ) は 、 Yb 4 As 3 に 比 べ て 大 き く 見 え る が 、 Yb 4 As 3 の γ LT が
160-200mJ/(K .mole)の 範 囲 で あ る こ と を 考 慮 し た 場 合 、 同 等 も し く は 、 僅 か に 増 加
2
し て い る 程 度 で あ る 。 表 4-3 に Yb 4 As 3 の 典 型 的 ( 転 移 温 度 が 高 く 、 残 留 抵 抗 も 少
な い ) な 試 料 No.12,No.14 及 び 、 Yb 4 As 3-x Sb x
(X=0.36)の 幾 つ か の 物 性 を 示 す 。
Sb 置 換 に よ る 残 留 抵 抗 及 び γ LT の 変 化 は 小 さ い 。
- 120 -
表 4-3
Yb 4 As 3 の 良 質 ( 転 移 温 度 が 高 く 、 残 留 抵 抗 も 少 な い ) な 試 料 No.12,No.14
及 び 、 Yb 4 As 2.64 Sb 0.36 と の 比 較 。 構 造 転 移 温 度 が 低 下 し 、 抵 抗 の 温 度 変 化 が 小
さくなったが、残留抵抗率に大きな変化はない。
構造転移温度(K)
残留抵抗(mΩcm)
抵抗の測定により決定
2
γLT(mJ/K mole)
Yb4As3(No.14)
294
0.95
197
Yb4As3(No.12)
293
1.05
203
Yb4As2.64Sb0.36
231
0.9
210
- 121 -
< Yb 4 As 3 の 混 晶 系 : Yb 4 As 3-x P x :X=0. 3 >
*7
得 ら れ た 多 結 晶 試 料 の 格 子 定 数 は 8.784 Å で あ る 。 こ の 時 、 格 子 定 数 の 変 化 率
は As を Sb に 置 き 換 え た 場 合 の 変 化 率 に 比 べ て 小 さ い 。
図 4-35 に 帯 磁 率 温 度 依 存 性 の 測 定 結 果 を し め す 。 多 結 晶 試 料 の た め か 、
Yb 4 As 3 で 見 ら れ る 、 4.K-7.K の 間 で 帯 磁 率 が フ ラ ッ ト に な る 傾 向 は 認 め ら れ な い 。
又、広い温度領域で、帯磁率は、ほぼ同じ、もしくは、若干大きくなる傾向を示す。
逆 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 か ら 計 算 し た Yb の 割 合 は 、 Yb 4 As 3 に 比 べ て 4%増 加 し
3+
て い る 。 し か し な が ら Yb 4 As 3 の 試 料 依 存 性 を 考 慮 し た 場 合 、 低 温 側 以 外 は ほ ぼ
同じと考えて良い。又、転移温度は、不明瞭になっているものの、少し高くなって
いる。
図 4-36 に 抵 抗 率 温 度 依 存 性 の 測 定 結 果 を し め す 。 全 体 の 変 化 の 様 子 は 、
Yb 4 As 3
とほぼ同じ傾向を示す。構造転移を示す抵抗率の飛びは、ブロ-ド化し
ている。
図 4-37 に 比 熱 の C/TvsT プ ロ ッ ト を 示 す 。 γ は Yb 4 As 3 に 比 べ て 大 き く 400mJ/
2
(K 2 mole)と な っ て い る 。
*7
そ の 後 、 10%P 置 換 系 で は YbAs の 他 相 が 確 認 さ れ ,そ の 結 果 に 疑 い が 持 た れ た 。 更 に 落 合 氏
を 中 心 と す る グ ル ー プ に よ り 単 結 晶 試 料 が 作 成 さ れ 再 測 定 さ れ た [65][71]。 そ の 結 果 、 今 回 測 定 し た
ゾ ン マ フ ェ ル ト 係 数 γ の P 置 換 依 存 性 は 今 回 の 結 果 ほ ど 大 き く な い こ と が 判 明 し た [65][71]。 こ こ で
は実験結果をまとめるに止める。
- 122 -
4.0x10
-2
3.0x10
-2
180
160
Yb4As2.7P0.3
Yb4As3_No.14
140
120
100
80
2.0x10 -2
60
40
1.0x10 -2
20
0
50
100
150
200
250
300
Reverse magenetic susceptibility (1/emu.)
Magnetic susceptibility ( emu. )
5.0x10 -2
0
350
Temperature ( K )
図 4-35
Yb 4 As 2.7 P 0.3 の 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 ( 比 較 の た め Yb 4 As 3 も 図 中
に示した。)。
図 4-36
Yb 4 As 2.7 P 0.3 の 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 。
- 123 -
図 4-37
2
Yb 4 As 2.7 P 0.3 の C/T の T 依 存 性 。
- 124 -
4-5
Yb 4 Sb 3 及 び Yb 4 Bi 3 の 比 熱
多 結 晶 試 料 の Yb 4 Sb 3 及 び Yb 4 Bi 3 の 試 料 を も ち い て 、 比 熱 の 測 定 を 行 っ た 。
Yb 4 Sb 3
の 測 定 結 果 を 図 4-38 及 び 39 に 示 す 。 Yb 4 Sb 3 の 場 合 、 ゾ ン マ ー フ ェ ル ト
係 数 は 、 γ = 40.mJ/(K 2 mole) と な り 、 Yb 4 As 3 の 1/4 か ら 1/5 と な る 。
120
100
Yb4Sb3
Cp ( J/K mole )
80
60
40
20
0
0
10
20
30
40
50
Temperature ( K )
図 4-38
Yb 4 Sb 3 の 比 熱 。
300
Cp/T mJ/mol.K
2
Yb4Sb3
200
4
=2.5mJ/K mole
100
0
2
 = 40mJ/K mol
0
5
10
15
2
20
25
2
T (K )
図 4-39
2
Yb 4 Sb 3 に お け る C/T の T 依 存 性 。
- 125 -
30
Cp (J/K mole)
80
Yb4Bi3
60
40
20
0
0
10
20
30
Temperature ( K )
図 4-40
Yb 4 Bi 3 の 比 熱 。
300
Yb4Bi3
Cp/T mJ/mol.K
2
200
4
 = 4.5mJ/K mole
100
2
 = 10mJ/K mole
0
0
5
10
15
2
20
25
30
2
T (K )
図 4-41
2
Yb 4 Bi 3 に お け る C/T の T 依 存 性 。
Yb 4 Bi 3 の 測 定 結 果 を 図 4-40 及 び 41 に 示 す 。 Yb 4 Bi 3 の 場 合 、 ゾ ン マ ー フ ェ ル ト
係 数 は 、 γ=.10.mJ/(K .mole) と な り 、 Yb 4 As 3 の 1/16 か ら 1/20 で あ っ た 。
2
- 126 -
図 4-42 に Wilson 比 (直 線 )と 幾 つ か の Yb 系 重 い 電 子 系 物 質 と と も に 、 Yb 4 Sb 3 及
び Yb 4 Bi 3 の χ(0)と ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ を プ ロ ッ ト し た も の を 示 す 。 Willson 比
からγの大きい方向にずれている。
60
-3
χ(T=0)(10
emu/mole)
s
50
40
Yb0.9Sc0.1Al
Yb4As3
30
No.3
Yb4As2.64Sb0.36
No.14
No.11
No.5,No12
YbCuAl
20
YbCu2Si2
10
Yb4Bi3
Yb4Sb3
0
0
100
200
300
400
500
600
2
γ( mJ/K mole )
図 4-42
幾 つ か の Yb 系 havy fermion 物 質 と Yb 4 Sb 3 や Yb 4 Bi 3 の χ(0)と γ の
関 係 。 図 中 の 赤 線 は Willson 比 。
- 127 -
4-6 Yb 4 As 3 の 比 熱 : 10 K 以 下 の 振
る 舞 い の 考 察 (Yb 4 As 3 は 重 い 電 子 系
か?)
<比熱: γ の起源>
本 研 究 に お い て 、 Yb 4 As 3 の ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ の フ ェ ル ミ 流 体 的 描 像 に 対
する問題提起として以下の 2 点が挙げられる。
1 . NQR の 測 定 結 果
NQR の 測 定 結 果 (図 4-24,25)か ら 、 こ の 温 度 領 域 で 、 重 い 電 子 系 に お い て 一 般
的 に 成 立 す る Korringa の 関 係 (T 1 T=const.)[21]が 成 立 す る 温 度 範 囲 は 10-20.K と
狭 く 、 こ れ よ り 低 温 側 の 温 度 領 域 に お い て 、 温 度 が 低 下 と と も に 1/T 1 T は 上 昇 す る
こ と が 明 ら か に な っ た 。 す な わ ち 、 7.K 以 下 の 図 1-5 及 び 図 4-4 に 示 す 帯 磁 率 の
上昇は、不純物によるものではなく、本質なものであることが明らかとなった。要す
る に 8K 以 下 の 温 度 領 域 に お い て 、 帯 磁 率 が 温 度 に よ ら ず 一 定 に な っ て い な い こ
とは、少なくとも、この温度領域においてフェルミ流体の描像が成立しないことを
物語っている。
2. 磁 場 中 比 熱 の 測 定 結 果
帯 磁 率 と 不 純 物 近 藤 効 果 温 度 と の 関 係 は 以 下 は 、 次 式 で 与 え ら れ る 。 [71]
χ(T) =
C
(4-8)
(T+2T k)
χ : 帯磁率
C: キ ュ リ - 定 数
T k: 近 藤 温 度
序 論 で も 述 べ た よ う に 、 帯 磁 率 か ら 求 め た 常 磁 性 キ ュ リ - 温 度 θ pは -60.K で あ る 。
そ の た め に 近 藤 温 度 T k は お お よ そ 30 K と 比 較 的 大 き い 値 と な る 。 比 熱 か ら 近 藤
温 度 を 見 積 も る と 、 基 底 状 態 が 2 重 項 の 場 合 、 γ ~ Rlog2/T k ~ 10 4 /T k [72]で あ り 、
お よ そ T k ~ 50.K と な る 。 フ ェ ル ミ レ ベ ル の 状 態 密 度 の 幅 が k B T k 程 度 で あ る と 考
- 128 -
え る な ら ば 、 磁 場 0.T と 10.T と の 間 に お け る 比 熱 の 変 化 は 小 さ い は ず で あ る 。 し
か し な が ら 、 比 熱 の 実 験 に お い て 、 僅 か 1.T の 磁 場 下 で 大 き な 変 化 が 認 め ら れ た 。
図 4-43 に Reinders ら [62]に よ っ て 試 料 No.6 を 用 い て 測 定 さ れ た ( 図 4-26 よ り 低
温 度 領 域 の ) 磁 場 中 比 熱 の 測 定 結 果 を 示 す 。 図 は 核 比 熱 を 差 し 引 い た C/T の 温
度 変 化 を 示 し て い る 。 磁 場 0.T に お い て 0.2.K 近 傍 に あ る ブ ロ ー ド な 山 は 1.T の
磁場中では完全に消失している。
このような磁場中比熱の極端な変化は、 γ の起源が格子欠陥や不純物である
疑 い も 、 も た ら し た 。 し か し な が ら 、 単 結 晶 試 料 で あ り 、 4-1 で 述 べ た よ う に ス ト イ キ
オ メ ト リ ッ ク に 近 い 、 よ り 良 質 な Yb 4 As 3 の 試 料 の ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ が よ り 大 き
いことなどから本質的な性質であると考えられる。
600
0T
1T
2T
4T
400
2
C/T ( mJ/K mole )
500
300
200
100
0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
Temperature ( K )
図 4-43
Yb 4 As 3 No.6 の 試 料 を 使 用 し て 測 定 さ れ た よ り 低 温 側 の 磁 場 中
比 熱 [62]。 図 中 の 比 熱 は 核 比 熱 を 差 し 引 い た も の 。 1 . T で C/T は
大きく変化している。
3.
その後の進展
元 々 、 落 合 ら [16]は 、 電 荷 秩 序 相 に お い て 格 子 が 菱 面 体 晶 系 (α=90.8)に 歪 ん
で い る こ と を 、 16c サ イ ト に イ オ ン 半 径 の 小 さ い Yb が [111]方 向 に そ ろ っ た た め と
3+
推 定 し て い た 。 Kohgi ら [74]は 偏 極 中 性 子 線 回 折 の 結 果 か ら 、 Yb 3+ が 3 回 対 称 軸
上 に 一 次 元 鎖 を 形 成 し て い る こ と を 確 認 し た 。 さ ら に Yb 4 As 3 の 中 性 子 非 弾 性 散 乱
- 129 -
の 測 定 か ら 、 Yb 3+ (J=7/2)の 結 晶 場 と 磁 気 励 起 の 分 散 が 求 め ら れ て い る [74,75]。
図 4-44 及 び 図 4-45 に そ の 結 果 を 示 す 。 そ れ に よ る と J=7/2 の 状 態 は 結 晶 場 に よ
り 四 つ の 二 重 項 に 分 裂 す る 。 基 底 状 態 に 3meV 程 度 の 分 裂 構 造 が 観 測 さ れ た が 、
こ れ は 図 4-45 に 示 す 分 散 関 係 と し て 表 れ る [75]。 図 中 の 点 線 は 正 弦 波 を 表 し 、 図
4-46 に 示 す Cloisequx
と Pearson の 分 散 関 係 [76]と な っ て い る 。 こ れ は 、 古 典 ス
3+
図 4-44
中 性 子 の 非 弾 性 散 乱 に よ っ て 求 め ら れ た Yb 4 As 3 の Yb の 結 晶 場 [73]。
ピン系と異なり、ネール状態が基底状態でないことを示しているとも言える。この
分 散 関 係 を 仮 定 す る と 、 7-8.K 以 下 の γ は 以 下 の よ う に 考 え ら れ る [77]。
隣 接 ス ピ ン 同 士 が 反 強 磁 性 に 相 互 作 用 し て い る ス ピ ン 1/2 の 一 次 元 ハ イ ゼ ン ベ
ル グ モ デ ル (1D-HAF)は 、 ネ - ル 状 態 が 基 底 状 態 に な ら な い 。 そ れ に も 関 わ ら ず 、
古典的に導いたマグノンの分散関係は、励起状態を良く記述することが判ってお
り、以下の式で与えられる。
E(q) = J | sin q |
(4-9)
一 方 、 量 子 ス ピ ン 系 に お け る デ ク ロ ア ゾ (Cloisequx)- と ピ ア ソ ン (Pearson)の 厳 密
解は以下の式となる。
E(q) = (π/2) J | sin q |
(4-10)
何 れ の 場 合 も 、 係 数 の み が 異 な る sin 波 の 形 と な る 。 Fulde ら [78]に よ る と 、 γ=
200.mJ/(K .mole) か ら 求 め ら れ た 交 換 項 J の 大 き さ は 、 J ~ 25.k B (2.15.meV) で
2
あ る 。 そ の た め 、 4-5 式 か ら 分 散 曲 線 の 極 大 値 は (π /2)J ~ 3.4.meV と な る 。 こ の
結 果 は 中 性 子 非 弾 性 散 乱 の 結 果 と 良 く 一 致 す る 。 Yb 4 As 3 の ス ピ ン 系 の 分 散 曲
線 が Cloisequx と Pearson の 分 散 関 係 に 従 う こ と は 、 こ の 系 が 量 子 ス ピ ン 系 で あ る
ことを示している。
q が 小 さ い 場 合 、 ω = ( π /2)Jq と な る 。 し た が っ て 、 一 次 元 マ グ ノ ン の 状 態 密 度
- 130 -
は 、 4-11 式 と な る 。
D( ω ) = (L/π)
1
(dω/dq)
2
=
π 2J
(4-11)
L :一次元鎖の長さ
L の長さあたりのエネルギ-は
E = (2L/π2J)
ħ ω
dω
exp(ħ ω/kBT)-1
= (2L/π2J)(kB2T2)
となる。
x
exp(x)-1
dx
(4-12)
上式の積分が定数になることから、1次元反強磁性マグノンの比熱は三
次元反強磁性マグノンと異なり温度に比例することになる。すなわち
E = (2L/π2J)(kB2T2/ħ )(π2/6) = (LkB2/3Jħ )T2
CV = (2LkB2/3Jħ )T
(4-13)
と な り 、 定 容 比 熱 は 、 温 度 に 比 例 す る 。 こ れ が Yb 4 As 3 の γ の 起 源 と 考 え ら れ る [77]。
す な わ ち 、 隣 接 ス ピ ン 同 士 が 反 強 磁 性 に 相 互 作 用 し て い る 、 ス ピ ン 1/2 の 一 次 元
ハ イ ゼ ン ベ ル グ モ デ ル (1D-HAF)系 と し て の 振 る 舞 い が Yb 4 As 3 の γ の 起 源 で あ る
と説明される。
こ の よ う に 、 NQR の 測 定 及 び 磁 場 中 比 熱 の 測 定 か ら 、 そ の 存 在 が 疑 わ れ た 、
Yb 4 As 3 に お け る 重 い フ ェ ル ミ 流 体 的 描 像 は 、 Kohgi ら [75]の 実 験 に よ り 、 完 全 に
否定された形となる。
- 131 -
図 4-45
図 4-46
Yb 4 As 3 の 中 性 子 非 弾 性 散 乱 実 験 か ら 求 め ら れ た 分 散 関 係 [75]。
一 次 元 反 強 磁 性 体 ス ピ ン 波 の 分 散 曲 線 [76]。
- 132 -
<磁場中比熱に見られるスピンギャップの起源>
上 述 し た よ う に 温 度 に 比 例 す る 比 熱 (γT)の 起 源 は 、 室 温 以 下 で 一 次 元 的 に 整
列 し た Yb 3+ イ オ ン 鎖 が 示 す S=1/2 の 一 次 元 ハ イ ゼ ン ベ ル グ 系 (量 子 ス ピ ン 系 ) と し
て の 比 熱 で あ る こ と が 明 ら か に な っ て き た 。 し か し な が ら 、 Cloisequx
と Pearson
に よ る 分 散 関 係 (4-10 式 ) に お い て 、 基 底 状 態 と 励 起 状 態 と の 間 に エ ネ ル ギ ー ギ ャ
ップは存在しない。則ちスピンギャップが存在しないことを示している。一方、磁場
印 可 に よ り Yb 4 As 3 の 比 熱 は 、 磁 場 に よ り ギ ャ ッ プ が 誘 起 さ れ た か の 如 く 変 化 す る
(図 4-26,4-27,4-43 参 照 )。 こ れ に 関 し て は 、 Yb 4 As 3 の Yb 3+ イ オ ン 一 次 元 鎖 の 特 殊
な 対 称 性 の 結 果 、 発 現 す る Dzyaloshinski-Moriya 相 互 作 用 の 重 要 性 が 指 摘 さ れ
て い る [80,81,82,83,84]。
こ こ で は 、 Köppen ら [84]に よ っ て Yb 4 As 3 に つ い て 行 わ れ た 解 析 と 同 様 の 方 法
を使用し、磁場中比熱の振る舞いを、一次元ソリトンの励起として解析する
[84,85,86]。 す な わ ち 、 磁 場 印 可 に よ り 引 き 起 こ さ れ た 比 熱 の 変 化 は 、 マ グ ノ ン ( ソ
リ ト ン ) の 励 起 ,す な わ ち ス ピ ン ギ ャ ッ プ の 存 在 に よ り 説 明 が 可 能 で あ る こ と が
Köppen[83]ら や Leung ら [86]に よ っ て 既 に 指 摘 さ れ て お り 、 本 論 文 の よ り 詳 細 な
磁場中比熱データも同様の方法で解析、解釈した。以下に解析手順を示す。
ソリトン励起による比熱は
CS( T ) = nS( T )[(
ES
k BT
)2-(
ES
kBT
)-(1/4)]
(4-14)
こ こ で 、 ソ リ ト ン 密 度 ns は
nS = m(2/π)1/2(
ES
k BT
)1/2exp(-
ES
kBT
)
(4-15 )
及び、ソリトンのエネルギー及び有効質量は
ES = geμBSB
m =
ただし、
geμBB
2|J|S
=
kB : ボ ル ツ マ ン 定 数
ge : 擬 ス ピ ン の g 因 子
- 133 -
(4-16)
ES
|J|S
(4-17)
μB : ボ ー ア 磁 子
である。
し た が っ て 、 前 節 の magnetic
part の 寄 与 部 分 を γT 、 格 子 振 動 の 寄 与 を βT と
3
すると、低温部分の比熱は
C ( T ) = γ T + β T3 + C S
(4-18)
となる。
こ の 式 を 使 用 し 、 βT 3 を 磁 場 に 依 存 し な い で 一 定 と 仮 定 し ( 格 子 振 動 の 寄 与 と
仮 定 し た 部 分 ) 、 Köppen ら [83]と 同 様 に γT ( ス ピ ン 波 ) 、 Es(ソ リ ト ン の 励 起 エ ネ ル
ギ - )及 び m(ソ リ ト ン の 有 効 質 量 )を 磁 場 依 存 す る パ ラ メ - タ - と し て Yb 4 As 3 の 試
料 No.6 と No.11 に つ い て 磁 場 中 比 熱 の 実 測 値 に 一 致 す よ う に 各 パ ラ メ ー タ を ふ
っ て 計 算 を し た 。 そ の 結 果 を 次 ペ - ジ 以 降 の 図 4-47 及 び 図 4-48 に 示 す 。 計 算 結
果 と 実 験 値 は 良 く 一 致 し て い る 。 Leung ら [86]が 報 告 し た Yb 4 As 3 の 磁 場 中 比 熱
の 測 定 で は 、 Dzyaloshinski-Moriya 相 互 作 用 に よ り 、 Yb イ オ ン 一 次 元 鎖 と 垂 直
3+
に外部磁場が印可された場合にギャップが誘起されることを考慮し、シングルドメ
イ ン 化 し た Yb 4 As 3 の [111]方 向 (Yb 一 次 元 反 強 磁 性 鎖 の 方 向 ) に 垂 直 に 磁 場 を
3+
印 可 し て い る 。 す な わ ち 、 異 方 性 の 強 い こ の 系 で 、 図 4-47 及 び 4-48 よ り 4-18 式
と厳密に比較しうる実験となっている。
図 4-49 に 試 料 No.6 、 及 び No.11 の Es ( ソ リ ト ン の 励 起 エ ネ ル ギ - あ る い は ス
ピ ン ギ ャ ッ プ ) の 印 可 磁 場 B 依 存 性 を 示 す 。 低 磁 場 側 で は 、 Es は 磁 場 に 比 例 し
て い る よ う に 見 ら れ る が 、 磁 場 の 高 い 領 域 で は 明 ら か に 直 線 か ら ず れ 、 Es は 印 可
磁 場 B 2/3 に 比 例 し て 変 化 し て い る 。 こ の 振 る 舞 い は 、 こ の 系 が 古 典 的 な 一 次 元 反
強磁性のソリトンではなく、一次元反強磁性の量子ソリトンとして説明されることを
示 し て い る 。 Leung ら [86]の 比 熱 及 び 熱 膨 張 係 数 か ら 求 め た Es の 磁 場 依 存 性 の
結 果 も 同 様 に Es は 印 可 磁 場 B
2/3
に比例して変化している。
- 134 -
0T
1T
400
実測
C=γT
C=βT 3
C=γT+βT 3
2
2
200
100
0
0
5
10
15
実測
C=γT
3
C=βT
C=Cs ( T )
C=γT + βT 3 +Cs ( T )
300
C/T ( mJ/K mole )
300
C/T ( mJ/K mole )
400
20
25
30
35
40
45
200
100
0
50
0
5
10
15
20
T(K )
2
2
2T
3T
300
2
C/T ( mJ/K mole )
2
C/T ( mJ/K mole )
300
200
100
0
5
10
20
25 30
2
2
T (K )
35
40
45
5
10
15
20
2
100
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0
5
10
15
20
2
100
10
15
20
25
30
35
40
45
図 4-47
30
35
40
45
50
10T
実測
C=γT
C=βT 3
C=Cs(T)
C=γT+βT 3 +Cs(T)
200
100
0
50
T(K )
2
50
2
300
C/T ( mJ/K mole )
2
200
25
2
実測
C=γT
C=βT 3
C=Cs(T)
C=γT+βT 3 +Cs(T)
5
45
T(K )
400
300
0
40
100
2
8T
400
35
実測
C=γT
3
C=βT
C=Cs(T)
3
C=γT+βT +Cs(T)
T (K )
2
C/T ( mJ/K mole )
30
2
200
0
5
50
6T
400
200
0
25
2
C/T ( mJ/K mole )
2
C/T ( mJ/K mole )
0
300
0
45
T (K )
300
0
40
100
50
実測
C=γT
C=βT 3
C=Cs(T)
C=γT+βT 3 +Cs(T)
4T
400
15
35
200
0
0
30
2
実測
C=γT
C=βT 3
C=Cs (T)
C=γT+βT 3 +Cs (T)
400
実測
C= γT
C=βT 3
C=Cs ( T )
C=γT + βT 3 + Cs ( T )
400
25
2
T(K )
0
5
10
15
20
25
30
35
40
T(K )
2
2
2
Yb 4 As 3 -試 料 No.11,磁 場 中 比 熱 の 実 測 値 と 4-19式 で 計 算 し た 結 果
:各パラメータごと。
- 135 -
45
50
400
2
C/T ( mJ/K mole)
300
200
100
0
10
20
30
2
40
50
2
T (K )
図 4-48
Yb 4 As 3 -試 料 No.11,磁 場 中 比 熱 の 実 測 値 と 5-10 式 で 計 算 し た 結 果
のまとめ。
- 136 -
18
16
Soliton Energy ( K )
14
12
10
No.6
No.11
Es(B)=3.88B 0.66
8
6
4
2
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
Magnetic field ( T )
図 4-49
Yb 4 As 3 -試 料 No.6 及 び 試 料 No.11 に つ い て 磁 場 中 比 熱 の 測 定 結 果
と Es の 磁 場 依 存 性 。
スピンギャップの存在は、磁場中における中性子非弾性散乱の測定により直接観
測 さ れ た [87]。 そ の 結 果 を 図 4-50 に 示 す 。 エ ネ ル ギ ー ギ ャ ッ プ Eg は 6.T で
0.8meV と な っ て い る 。 こ れ は 、 温 度 換 算 で 9.3.K に 相 当 し 、 磁 場 中 比 熱 の 測 定
( 図 4-49)か ら 求 め た 値 12.5.K に く ら べ る と 26%小 さ い 。 し か し な が ら 、 Eg は 図
4-49 と 同 様 に 印 可 磁 場 B
2/3
に比例して変化している。
- 137 -
図 4-50
中 性 子 の 非 弾 性 散 乱 か ら 求 め ら れ た Energy gap の 磁 場 依 存 性 [87]。
- 138 -
< 混 晶 系 Yb 4 As 3-x Sb x 及 び Yb 4 Sb 3 、 Yb 4 Bi 3 の γ T に つ い て >
Yb 4 As 3 の 混 晶 系 で あ る Yb 4 As 2.64 Sb 0.36 の γ LT 、 β LT と θ D(LT) と Yb 4 Sb 3 、 Yb 4 Bi 3
の γ LT 、 β LT と θ D(LT) の 値 を 表 4-4 に 、 測 定 結 果 を 図 4-51 に ま と め た 。
Yb 4 As 2.64 Sb 0.36 の γ は 210.mJ/(K 2 .mole)と Yb 4 As 3 の よ り 良 質 な も の 、 す な わ ち ス ト
イ キ オ メ ト リ ッ ク か ら の ズ レ が 小 さ い 試 料 (No.12,14)と ほ ぼ 同 等 か 、 あ る い は そ れ よ
り 僅 か に 大 き く 、 β の 値 は 2.9.mJ/(K .mole)と 、 Yb 4 As 3 の よ り 良 質 で あ る 試 料
4
(No.12,14)と ほ ぼ 等 し い 。 又 、 磁 場 中 比 熱 も Yb 4 As 3 と Yb 4 As 2.64 Sb 0.36 の 両 者 は 大
き く 変 化 し 、 hump が 見 ら れ る 。 図 4-33 に 示 し た よ う に As を 12%の Sb で 置 換 し た
場合、抵抗率の温度依存性が小さくなり、構造相転移(電荷秩序-無秩序)温度
T co は 、 大 幅 に 低 下 す る 。 ( し か し 、 残 留 抵 抗 の 変 化 は 小 さ い 。 )
抵抗率の温度
依 存 性 以 外 、 表 4-4 で 示 し た γ LT 、 β LT と θ D(LT) や 比 熱 の 振 る 舞 い に は 大 き な 変 化
は な い 。 又 、 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 (図 4-32)か ら Yb の 割 合 も ほ ぼ 同 じ で あ る 。 し
3+
た が っ て 、 比 熱 の 温 度 変 化 は 、 T co 以 下 の 温 度 に お い て 、 Yb 3+ が 一 次 元 に 整 列
し 、 隣 接 ス ピ ン 同 士 が 反 強 磁 性 に 相 互 作 用 し て い る 、 ス ピ ン 1/2 の 一 次 元 ハ イ ゼ
ン ベ ル グ モ デ ル (1D-HAF)系 と し て の 振 る 舞 い が γT の 起 源 で あ る と し た Yb 4 As 3 の
結 果 と 同 様 に 理 解 さ れ る 。 *8
Yb 4 Sb 3 は 、 測 定 さ れ た 温 度 範 囲 に お い て 、 電 荷 秩 序 を 示 す 兆 候 は な く 、 又 、 帯
磁 率 の 測 定 結 果 な ど か ら 、 従 来 か ら 価 数 揺 動 系 と 考 え ら れ て い た 系 で あ る [16]。
ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ は 40.mJ/(K ・ mole)と 比 較 的 お お き く 、 4f 電 子 が 遍 歴 す る
2
価数揺動状態のため、通常の金属に比べて、大きくなっていると理解される。
表 4-4
低 温 側 か ら 求 め た Yb 4 X 3 (Sb,Bi) の γ 、 β と θ D 。
低温側(2K-7K)から求めた場合
θD(LT) ( K )
γLT( mJ/K mole )
βLT( mJ/K4 mole)
2
Yb4As3
Yb4As2.64Sb0.36
Yb4Sb3
Yb4Bi3
*8
165-205
210
40
10
3.0-3.8
2.9
2.5
4.5
153-165
168
176
145
そ の 後 、 Aoki ら [65][88]は 、 Yb 4 As 2.13 Sb 0.87 の γ は 300.mJ/(K .mole)と 大 き く な る も の の 、 磁 場
4
中 比 熱 も Yb 4 As 3 と 同 様 の 変 化 を す る こ と 示 し た 。 さ ら に 電 気 抵 抗 率 の 温 度 依 存 性 に 電 荷 秩 序 - 無
秩 序 転 移 が 明 瞭 に 見 ら れ な い 場 合 で も short-range
指摘している
- 139 -
order が 存 在 す る 可 能 性 と そ の γ へ の 寄 与 を
図 4-51
Yb 4 As 3 (Sample No.11)と 混 晶 系 で あ る Yb 4 As 2.64 Sb 0.36
2
お よ び Yb 4 Sb 3 , Yb 4 Bi 3 の 比 熱 (C/T の T 依 存 性 ) 。
Aoki ら [88]の 単 結 晶 を 用 い た Yb 4 Sb 3 の 比 熱 測 定 の 結 果 か ら も γ は 、
50.mJ/(K .mole)で あ り Yb 4 Sb 3 の 表 4-4 と 同 様 の 結 果 を 得 て い る 。 白 川 ら [69]に よ
2
り 、 シ ュ プ ニ コ フ ‐ ド ハ ー ス 効 果 (Shubnikov-de Haas effect)の 測 定 が な さ れ た 。 そ
の結果、得られたフェルミ断面積より見積もられたゾンマーフェルト係数 γ は
43.mJ/(K .mole)で あ り 、 比 熱 の 結 果 を 良 く 説 明 す る 。
2
Yb 4 Bi 3 は Yb 3+ も ほ と ん ど な く 、 又 、 帯 磁 率 の 温 度 変 化 も な く 、 パ ウ リ 常 磁 性 的 な
振 る 舞 い を す る 系 と し て 理 解 さ れ て お り [16]、 γ が 10.mJ/(K .mole)と 小 さ い こ と と
2
矛盾しない。
- 140 -
4-7 Yb 4 As 3 の 帯 磁 率 の 説 明
図 4-4 及 び 4-5 に 示 し た よ う に 、 電 荷 秩 序 -無 秩 序 転 移 温 度 以 下 で 、 温 度 低 下
に 伴 い 帯 磁 率 は 上 昇 す る が ( 逆 帯 磁 率 の 温 度 変 化 は 下 に 凸 の 形 、 10.K-20.K の
温度範囲では、ほぼ一定になる。この温度変化の振る舞いは、比熱と同様に隣接
ス ピ ン 同 士 が 反 強 磁 性 に 相 互 作 用 し て い る ス ピ ン 1/2 の 一 次 元 ハ イ ゼ ン ベ ル グ 反
強 磁 性 (1D-HAF)の 帯 磁 率 と し て 説 明 さ れ る 。 1D-HAF に お け る 帯 磁 率 は 、 温 度
低 下 と 共 に 、 上 昇 し 、 そ の 交 換 相 互 作 用 に 対 応 し た 温 度 領 域 で 、 図 4-52 に 示 す
よ う な ブ ロ ー ド な ピ ー ク を 作 る [89]。 本 研 究 の 測 定 に お い て 、 Yb 4 As 3 の 測 定 試 料
は 単 結 晶 で あ る も の の 、 poly-domain の 試 料 で あ り 帯 磁 率 の 温 度 変 化 に お い て 温
度 依 存 の 少 な い 平 坦 な 領 域 と し て 観 測 さ れ て い る 。 Aoki ら [90]は single-domain
試 料 を 用 い て 、 一 次 元 の chain に 垂 直 に 磁 場 を 印 加 し た 帯 磁 率 の 測 定 を 行 い 、 そ
の 温 度 変 化 に お い て 20.K 近 傍 温 で 、 ブ ロ ー ド な ピ ー ク を 観 測 し た 。
図 4-52
S=1/2 の 一 次 元 ハ イ ゼ ン ベ ル グ 反 強 磁 性 体 の 帯 磁 率 ( 上 ) [89] 、
及 び 青 木 ら の 結 果 ( 下 ) [90] 。
- 141 -
4-8 Yb 4 As 3 系 10 K 以 上 の 比 熱 に 関
する考察:フォノンパートに関する問
題と比熱の磁性部分に関する推定
<Yb 4 As 3 の フ ォ ノ ン パ ー ト >
表 4-5 は Yb 4 As 3 の γ 、 β 、 θ D を 各 試 料 ご と に ま と め も の で あ る 。 こ の 表 に あ る よ
う に Yb 4 As 3 の β 値 は 、 低 温 (7.K-8.K)以 下 で 3.1-3.8.mJ/(K .mole)で あ る 。 一 方 、
4
表 4-4 ( 図 4-38 や 図 4-41 参 照 ) に あ る よ う に 、 Yb 4 Sb 3 の β 値 は 2.5.mJ/(K 4. mole)、
.
Yb 4 Bi 3 の β 値 は 4.5mJ/(K . mole)で あ る 。 し か し な が ら 、 Yb 4 X 3 (X:As,Sb,Bi)の 試
4
.
料においてプニクトゲン元素が軽くなるにつれて、デバイ温度が高くなり、 β 値は
小 さ く な る と 考 え る と 上 記 の 結 果 は 不 自 然 で あ る 。 例 え ば Yb 4 As 3 と Yb 4 Sb 3 の β 値
の 関 係 に 逆 転 が 見 ら れ る 。 し か も 、 図 4-6 で 見 ら れ た よ う に 、 温 度 範 囲 が 2.K-17K
の C p /T-T 2 の 関 係 に お い て 、 7.K-8K 付 近 に 折 れ 曲 が り が あ る 。 こ の 折 れ 曲 が り
部 分 よ り 低 温 側 の 直 線 部 分 か ら 求 め た β LT 値 は 試 料 依 存 性 が 大 き く 、 10.K-17.K
の 直 線 部 分 か ら 求 め た β HT 値 は 試 料 依 存 性 が 小 さ い 。 し た が っ て 、 ど の β を デ バ
イ 項 と し て 考 え て 良 い か 疑 問 が 持 た れ る と こ ろ で あ る 。 さ ら に 表 4-6 に 三 つ の 温 度
領 域 に つ い て Yb 4 As 3 -No.6 、 の γ 、 β 、 θ D を ま と め た 。 温 度 領 域 に よ っ て 、 著 し く
β 、 θD
は 変 わ る 。 そ こ で 、 比 熱 の い く つ か の θD や γ に つ い て 比 熱 の 計 算 を し 、
その妥当性を検討した。
表 4-5
Yb 4 As 3 : 10 K 以 上
2-7K の そ れ ぞ れ の 温 度 領 域 か ら 求 め た γ、 β、 θ D 。
高温側(10 K以上)から求めた場合
低温側(2K-7K)から求めた場合
2
4
2
4
γHT( mJ/K mole ) βHT( mJ/K mole) θD(HT) ( K ) γLT( mJ/K mole )βLT( mJ/K mole) θD(LT) ( K )
Yb4As3-No6
Yb4As3-No11
Yb4As3-No12
Yb4As3-No14
210
242
249
242
2.28
2.25
2.19
2.15
182
182
184
185
- 142 -
160
175
203
197
3.2
3.8
3.1
3.1
162
153
164
164
表 4-6
Yb 4 As 3 - No.6 の 各 温 度 ご と の γ、 β、 θ D 。
高温側(10 K以上)から求めた場合
θD ( K )
γ( mJ/K2 mole )
β( mJ/K4 mole)
210
2.28
182
低温側(2K-7K)から求めた場合
2
θD ( K )
γ( mJ/K mole )
β( mJ/K4 mole)
Yb4As3-No.6
160
3.2
162
極低温側(0.5K-1.4K)から求めた場合
θD ( K )
γ( mJ/K2 mole )
β( mJ/K4 mole)
150
13.3
- 143 -
101
< Yb 4 As 3 の 比 熱 の 計 算 >
Yb 4 As 3 の 比 熱 を 以 下 の 3 つ の 項 に 分 け て 考 え る 。
C
= C mag
+
C lattice + C CF
(4-19)
C mag は γT の 温 度 変 化 を 与 え る Yb 3+ イ オ ン の 一 次 元 鎖 に よ る 寄 与 で あ り 、 取 り あ え
ず γ の温度変化は無視する。第二項は格子振動であり、デバイモデルで考える。
したがって、この二つは以下の式で与えられる。
C = Cmag + Clattice =
cT
+
63NkB(
T
hD
)
3
X
x4exp(x)
0
(exp(x)-1)2
dx (4-20)
X = θ D /T
ただし、
θD: デ バ イ 温 度
kB : ボ ル ツ マ ン 定 数
第 三 項 は 、 結 晶 場 が 比 熱 に 与 え る 寄 与 で あ る ( Kohgi ら [73]に よ っ て 求 め ら れ た
Yb の 結 晶 場 は す で に 図 4-44 に 示 し て い る 。 ) Yb の 多 重 項 ( F 7/2 )は 4 つ の 二 重
3+
3+
項 に 分 裂 す る 。 こ の level
2
scheme を 用 い た 結 晶 場 の 比 熱 に つ い て 次 の 4-21 式 を
用いて計算を行った。
CCF=
+
{Δ12exp(-Δ1/kBT)+Δ22exp(-Δ2/kBT)+Δ32exp(-Δ3//kBT) }
( kBT )2
{1+exp(-Δ1/kbT)+exp(-Δ2/kBT)+exp(-Δ3/kBT)}2
R
[(Δ1-Δ2)2exp{-(Δ1+Δ2)/kBT}+(Δ3-Δ1)2exp{-(Δ3+Δ1)/kBT}+(Δ2-Δ3)2exp{-(Δ2+Δ2)/kBT}]
( kBT )
{1+exp(-Δ1/kbT)+exp(-Δ2/kBT)+exp(-Δ3/kBT)}2
R
2
(4-21)
ただし、
R:気 体 定 数
k B :ボ ル ツ マ ン 定 数
Δ 1 :14.meV, Δ 2 :21.meV, Δ 3 :29.meV
最 初 に 表 4-5 に あ る β LT (θ D(HT) )値 、 γ LT 値
β HT (θ D(HT) )値 、 γ HT 値 を 使 用 し 、 4-20
式 の み で 計 算 し た 。 図 4-53 に そ の 結 果 を 示 す 。 β HT (θ D(HT) )値 、 γ HT 値 を 使 用 し た
場 合 に 良 く 一 致 す る 。 そ こ で 、 よ り 高 温 側 (10-17K)で 求 め ら れ た β HT 値 、 γ HT 値 を
使 用 し 、 且 つ 、 結 晶 場 を 考 慮 し て Yb 4 As 3 の 比 熱 の 計 算 を し た 。 図 4-54 に そ の 結
果 を 示 す 。 4-19 式 を 用 い て 計 算 し た 比 熱 は 、 実 測 と ほ ぼ 一 致 す る 。 一 元 鎖 の 寄
- 144 -
与 C mag (γT)、 格 子 振 動 の 寄 与 C lattice 、 結 晶 場 の 寄 与 C CF も そ れ ぞ れ 図 示 し た 。 こ
の温度領域においては結晶場の影響は小さい。
以 上 の こ と か ら 、 高 温 領 域 か ら 求 め た β HT (θ D(HT) )値 が デ バ イ 温 度 と し て 妥 当 で
あると思われる。
フ ォ ノ ン パ ー ト は Yb 4 As 3 の 量 子 ス ピ ン 系 の 比 熱 C mag 及 び C mag /T を 見 積 も る 上
で 重 要 で あ る 。 又 、 上 述 し た 議 論 が 低 温 か ら 30.K 近 傍 ま で 成 立 す る な ら ば 、 す な
わ ち デ バ イ 温 度 θ D の 大 き な 温 度 変 化 を 考 え る 必 要 の 無 い 場 合 、 P.Gegenwart ら
[91]及 び G.Kamieniarz ら [92]ら の 一 次 元 量 子 ス ピ ン 系 に お け る C mag /T の 議 論 に
お い て 、 β の 値 を 5.K-10.K 付 近 の 比 熱 に 合 う よ う に 決 め て い る た め 格 子 振 動 の
寄与をより大きめに差し引いている可能性がある。
Yb4As3
70
θD=182K β=2.25mJ/K3 mole
Cp ( mJ/K mole)
60
θD=153K β=3.80mJ/K3 mole
50
40
30
20
10
0
0
10
20
30
40
Temperature ( K )
図 4-53
Yb 4 As 3 -No.11 の 比 熱 の 実 測 値 と 7-8K 以 下 の 温 度 領 域 及
び 10K-20K の 温 度 領 域 か ら 求 め た デ バ イ 温 度 と ス ピ ン 比 熱 の
2
2
係 数 (θ D =182K,γ=246mJ/mole K , θ D =153K,γ=175mJ/mole K )を
使 用 し て 4-20 式 を 用 い て 計 算 し た 比 熱 の 比 較 。
- 145 -
70
Yb4As3-No.11
60
T
Deby
Crystal filed
Summation
Cp ( J/K mole)
50
40
30
20
10
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
Temperature ( K )
図 4-54
Yb 4 As 3 - 試 料 No.11 の 比 熱 の 実 測 値 と 10K-18K の 温 度 領 域 か ら 求
2
め た デ バ イ 温 度 と ス ピ ン 比 熱 の 係 数 (θ D =182K,γ=246mJ/(K .mole))
と結晶場を考慮して計算した比熱の比較。
- 146 -
< Yb 4 Sb 3 ,Yb 4 Bi 3 の 比 熱 の 計 算 >
図 4-55 に 広 い 温 度 範 囲 (2-17K)で の Yb 4 Sb 3 と Yb 4 Bi 3 の C/T-T プ ロ ッ ト を 示 す 。
2
低 温 側 で 下 に 凸 と な り 、 折 れ 曲 が り が 存 在 す る 。 4-20 式 と 比 熱 の 実 測 値 が 一 致 す
る よ う に θ D を 求 め た 。 図 4-56 に Yb 4 Sb 3 の 計 算 及 び 測 定 結 果 を 示 す 。 θ D =149.K 、
γ=.40.mJ/(K 2 .mole)と し た 場 合 、 実 測 値 と よ く 一 致 す る 。 図 4-57 に Yb 4 Bi 3 の 比 熱
の 実 測 値 と 4-20 式 か ら 求 め た 比 熱 を 示 す 。 θ D =.132.K
γ=10.mJ/(K .mole)と し た
2
場合、実測値と一致する。
1500
Yb4Bi3
Cp/T ( mJ/K mole )
Yb4Sb3
1000
1000
2
2
Cp/T ( mJ/K mole )
1500
500
0
0
50
100
150
200
250
500
0
300
2
0
50
100
T (K)
150
2
200
250
300
2
T (K )
2
図 4-55 Yb 4 Sb 3 と Yb 4 Bi 3 の 比 熱 (C/T の T 依 存 性 ) 。
以 上 の 各 試 料 の γ と θ D の 結 果 を 表 4-7 に ま と め た 。 高 温 側 の θ D(HT) あ る い は β HT
を見ると、プニクタイドの元素が軽くなるにつれて、デバイ温度は高くなり、 β 値は
小さくなる傾向となり、フォノンパートに相応しい変化をしている。
表 4-7
Yb 4 As 3 の γ 、 β と θ D
2
高 温 側 の 値 は 、 Yb 4 As 3 の 場 合 C/T の T 依 存 性 か ら
Yb 4 Sb 3 及 び Yb 4 Bi 3 に つ い て は 、 4-20 式 か ら 求 め た 。
高温側(10 K以上)から求めた場合
2
4
γHT( mJ/K mole ) βHT( mJ/K mole) θD(HT) ( K )
Yb4As3
242-249
2.2-2.3
181-184
γ( mJ/K2 mole ) βHT( mJ/K4 mole) θD(HT) ( K )
Yb4Sb3
40
4.13
149
Yb4Bi3
10
5.95
132
- 147 -
120
Yb4Sb3
θD=149K β=4.1mJ/K 3 mole  = 40mJ/K 2 mole
Cp ( J/K mole )
100
80
60
40
20
0
0
10
20
30
40
50
Temperature ( K )
図 4-56
Yb 4 Sb 3 の 比 熱 の 実 測 値 と デ バ イ 温 度 と 電 子 比 熱 の 係 数
2
(θ D =149K,γ=40mJ/(K mole)を 使 用 し て 4-20式 を 用 い て 計 算 し た
比熱の値との比較。
Yb4Bi3
Cp ( J/K mole )
80
θD=132K β=5.95mJ/K3 mole  = 10mJ/K2 mole
60
40
20
0
0
10
20
30
Temperature ( K )
図 4-57
Yb 4 Bi 3 の 比 熱 の 実 測 値 と デ バ イ 温 度 と 電 子 比 熱 の 係 数
2
(θ D =132K,γ=10mJ/(K mole))を 使 用 し て 4-20 式 を 用 い て 計 算 し た
比熱の比較。
- 148 -
Yb 4 X 3 (X:As,Sb,Bi)の 比 熱 デ ー タ に お け る 、 フ ォ ノ ン パ ー ト に つ い て 議 論 し た 。
2-7.K の 範 囲 に お け る C/T-T 2 プ ロ ッ ト か ら 求 め ら れ た β LT の 値 を フ ォ ノ ン パ ー ト と し
て 用 い る べ き で は な く 、 表 4-7 に 見 ら れ る 値 を 使 用 す る べ き で あ る こ と が 明 ら か と
なった。
- 149 -
< Yb 4 As 3 : C spin C spin /T の 温 度 変 化 >
こ れ ま で 述 べ た よ う に デ バ イ 温 度 と し て 妥 当 な の は 、 C/T-T プ ロ ッ ト の 2-7K の
2
直 線 部 分 か ら 求 め た θ D で は な く 、 10K-17K の 直 線 部 分 か ら 求 め た θ D で あ る 。
図 4-58 に 、 Yb 4 As 3 の 試 料 No.11 の 比 熱 の 実 測 値 か ら 、 格 子 の 寄 与
(θ D =181K,153K の 場 合 )及 び 結 晶 場 か ら の 寄 与 (影 響 は 小 さ い ) を 差 し 引 い た 比 熱
C mag の 温 度 依 存 性 を 示 す 。 隣 接 ス ピ ン 同 士 が 反 強 磁 性 に 相 互 作 用 し て い る ス ピ
ン 1/2 の 一 次 元 ハ イ ゼ ン ベ ル グ モ デ ル (1D-HAF)の 比 熱 は 、 ブ ロ ー ド な ピ ー ク を 持
ち 、 ピ ー ク 温 度 と そ の 比 熱 は 以 下 の 式 で 表 さ れ る [65,93]。
比熱の最大値
最大値となる温度
Cmax ≒ 0.7NkB
kBT
J
≒ 0.962
(4-22)
(4-23)
図 4-58 か ら 比 熱 の 最 大 値 を 与 え る 温 度 は 、 お よ そ 23K と な る 。 し た が っ て 、
4-23 式 か ら 見 積 も ら れ る 1D-HAF の 交 換 相 互 作 用 の 大 き さ は J ~ 26.5k B 程 度 と
な る 。 こ れ は 、 中 性 子 の 非 弾 性 散 乱 か ら 求 め ら れ た J ~ 26k B と 比 較 的 良 く 一 致 す
る 。 4-22 式 か ら 求 め た C max も 5.82 J/(K mole)と な り 、 ほ ぼ 図 4-58 と 一 致 す る 。 。
図 4-59 に 、 Yb 4 As 3 の 試 料 No.11,12,14 の そ れ ぞ れ の 比 熱 の 実 測 値 か ら 、 格 子
の 寄 与 及 び 結 晶 場 か ら の 寄 与 (影 響 は 小 さ い ) を 差 し 引 い た 比 熱 C sipn の 温 度 依 存
性を示す。どの試料も全体の傾向としては、あまり変化せず、試料間の差も見られ
な い 。 最 大 を 与 え る 温 度 は 、 お よ そ 22.K-23K で あ り 、 交 換 相 互 作 用 の 大 き さ は J
~ 23.8-26.5k B と 見 積 も ら れ た 。
- 150 -
7
6
C ( J/mole K )
5
24.6 K
4
D=182 K
3
2
1
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Temperature ( K )
図 4-58
左 は 、 Yb 4 As 3 -試 料 No.11 の 比 熱 の 実 測 値 か ら 、 格 子 の 寄 与 (θ D =182K)
及 び 結 晶 場 か ら の 寄 与 を 差 し 引 い た 比 熱 。 右 は Bonner ら [93] の 一 次 元
鎖の計算結果。
7
6
C ( J/K mole )
5
4
No.11
NO.12
No.14
3
2
1
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
Temperature ( K )
図 4-59
左 は Yb 4 As 3 -試 料 No.11,12,14 の 比 熱 の 実 測 値 か ら 、 格 子 の 寄 与
及 び 結 晶 場 か ら の 寄 与 (影 響 は 小 さ い ) を 差 し 引 い た 比 熱 。
- 151 -
5 SmH 2+δ 試 料 作 製 ( 薄 膜 を 中 心 と し
て)
5-1 SmH 2+δ 薄 膜 作 製 の 問 題 点
希土類水素化物は、希土類金属を水素化することによって得られる。しかしな
がら、希土類金属は極めて酸化されやすい元素であり、その取り扱いを間違え
ると致命的な問題となる。ここでは、薄膜水素化試料を中心にその作製上の取り
扱 い の 問 題 点 を 述 べ る 。 図 5-1 の 左 図 は 、 希 土 類 金 属 を 400 ℃ で 一 定 時 間 加 熱
しその単位体積あたりの重量変化を希土類元素ごとに対数でプロットした図(既出
図 3-2 ) を 示 す 。 図 の 右 に 幾 つ か の 金 属 元 素 の 酸 化 反 応 に お け る 平 衡 分 圧 (計 算
値 )を 示 す 。 左 の 図 中 に あ る ● は 筆 者 が 薄 膜 作 製 経 験 の あ る 元 素 を 示 す 。 薄 膜 の
場 合 、 Y と Gd は 酸 化 し に く い た め に 比 較 的 取 り 扱 い 易 く 、 Sm と Yb は 、 そ れ ら よ
り酸化し易く取り扱いに注意が必要である。恐らく、金属水素化物を作る場合、薄
膜試料作製後に、(インラインではなく)大気に取り出した後に水素化をする場合、
これら4つの元素より酸化し易い金属薄膜は取り扱いが非常に困難となる。
図 5-1
-91
Al
Mg
Ca
~10
-100
~10
~10 -103
希土類元素
~10-97
空 気 中 で 400 ℃ に 加 熱 し た 希 土 類 元 素 の 酸 化 性 : ● は 筆 者 が 薄 膜 作 製
を経験した元素(右)と希土類金属と幾つかの金属の酸素平衡分圧。
(単 位 は Pa)
- 152 -
2H2+O2 → 2H2O
4/3R+O2 → 2/3R2O3
図 5-2
エ リ ン ガ ム 図 [91]:縦 軸 は 標 準 生 成 ギ ブ ス 自 由 エ ネ ル ギ ー 、 横 軸 は
温 度 、 左 の 外 枠 に あ る 酸 素 ( O)と 反 応 温 度 を 結 び 、 下 も し く は 左 の 外
枠に外挿するとその交点から平衡酸素分圧が求まる。
- 153 -
図 5-2 に エ リ ン ガ ム 図
*1
を 示 す [94]。 希 土 類 金 属 の 酸 化 反 応 (4/3R+O 2 → 2/3R 2 O 3
R:Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Tm,Yb,Lu)の 線 [95]を 青 色 で 水 素 の 酸 化 反
応 の 線 を 赤 色 で 示 す 。 希 土 類 金 属 酸 化 の 平 衡 分 圧 は 約 10
-100.
atom 弱 で あ り 、 水
素 の 酸 化 反 応 の 平 衡 分 圧 (約 10 -40 atom)よ り 大 幅 に 低 い 。 図 5-3 に Ni と 希 土 類 金
属 、 及 び 水 素 の 酸 化 反 応 の 標 準 ギ ブ ス エ ネ ル ギ ー (G)の 温 度 依 存 性 を 示 す 。
筆 者 は 、 金 属 Sm を 電 気 炉 中 で 加 熱 し て 水 素 化 を 行 い SmH 2+δ を 作 製 し て い る 。
水 素 の 酸 化 反 応 に お け る 平 衡 酸 素 分 圧 (約 10 atom)は 、 希 土 類 金 属 の 酸 化 反
-40.
応 の 酸 素 分 圧 (約 10
-100.
atom 弱 )よ り も 大 幅 に 高 い 。 そ の た め に 水 素 化 処 理 中 に 存
在する残留不純物酸素と水素が反応する前に希土類元素を酸化する可能性を十
分考慮しなければならない。又、残留水分が真空システムの壁面等に存在する場
合、水分は酸素分圧を上げる方向に働く、したがって、電気炉中の残留不純物の
酸素及び壁面に存在する水分にも十分に注意を払う必要がある。
-200
Ni
H
Sc
Y
La
Ce
Pr
Nd
Sm
Gd
Tb
Dy
Tm
Yb
Lu
ΔG0( kJ/mol )
-400
-600
-800
-1000
-1200
0
200
400
600
Temperature ( ℃ )
図 5-3
Ni、 水 素 、 希 土 類 元 素 [95]の 酸 化 の 標 準 生 成 ギ ブ ス
自由エネルギーの温度変化。
*1 基 本 的 に は 、 横 軸 に 温 度 、 縦 軸 に 生 成 ギ ブ ズ エ ネ ル ギ ー を と っ て 、 様 々 な 酸 化 物 に つ い て 各 温
度 に お け る 標 準 生 成 ギ ブ ズ エ ネ ル ギ ー を プ ロ ッ ト し た グ ラ フ [94]。 生 成 ギ ブ ズ エ ネ ル ギ ー の 原 点 と 反
応の温度を結び、延長することで、簡単に平衡分圧が求まるようにグラフが作られている。
- 154 -
5-2
試料作製手順と製造装置
<試 料 作 製 手 順 概 略 >
図 5-4 に サ マ リ ウ ム 二 水 素 化 物 (SmH 2+δ )薄 膜 の 作 製 手 順 を 示 す 。 基 板 に は
4inch(φ 100.mm)の 石 英 基 板 を 使 用 し 、 最 初 に サ マ リ ウ ム (Sm)薄 膜 (膜 厚 は お よ
そ 300.nm)を 作 製 す る 。 そ の 場 合 、 不 純 物 の 取 り 込 み を 防 ぐ た め に は 、 到 達 真 空
度を高く、成膜速度を速くする方法が望ましい。
試料作製手順
Quartz Glass Substrate
Rare-earth Metal Ingot
Cleaning of Substrate
Clearing of Surface Oxide
Vacuate Furnace
Put Ingot in
Tungsten(W) Crucible
With an Ar atmosphere,
rising temperature
炉の空焼きは
毎回丁寧に。
Melt Ingot in EB vacuum
evaporation system
Vacuate Furnace
希土類金属をW
ルツボ入れ真空
中で溶融して残
留不純物水素を
インゴットから追
い出す。
Set a Substrate in Furnace
Vacuate Furnace
Hydrogenated
Vapor Deposition of
Rare-earth Metal
この時点で膜中に酸素
が存在した場合はOUT。
Analysis of
Rare-earth Metal Film
( RBS/HFS and ESCA )
この時点で膜中に酸素
が存在した場合はOUT。
Analysis of
Rare-earth Metal Film
Is the oxygen detected?
( RBS/HFS and ESCA )
Yes
No
Is the oxygen detected?
No
Mesurement
図 5-4
サ マ リ ウ ム (Sm)水 素 化 物 の 作 製 フ ロ チ ャ ー ト .
表 5-1 に 筆 者 の 経 験 し た 希 土 類 金 属 の 成 膜 手 段 と 希 土 類 元 素 種 を 示 す 。 表 の 装
- 155 -
置は大きく分けてスパッタ装置
*2
と蒸着装置
*3
に分類できる。スパッタ装置の場合、
膜質はターゲットの質に大きく依存する。ターゲットの自作は困難であり、外注で
あるために希土類金属のインゴットの処理条件、ハンドリング、ターゲットのバッキ
ングプレートへの接着雰囲気などの点で不明なことも多く、又コントロールすること
も困難であるために、本研究においては主に蒸着装置を選択し薄膜試料作製を
おこなった。
表 5-1
希土類膜の成膜手段。
マグネトロンスパッタ装置
対向ターゲットスパッタ装置
電子ビーム(EB)蒸着装置
分子線エピタキシー(MBE)装置
到達真空度(Pa)
1×10-4 Pa
5×10-5 Pa
1×10-4 Pa
7×10-9 Pa
成膜速度(nm/min.)
30
4
30
0.5
元素種
Y,Sm,Yb
Gd
Y,Sm,Gd
Gd
蒸 着 装 置 と し て は 、 本 研 究 開 始 時 点 で 使 用 可 能 な 通 常 の 電 子 ビ ー ム (EB)蒸 着
装 置 を 採 用 し 、 Sm 金 属 膜 の 成 膜 を 行 っ た 。 尚 、 表 5-1 に 記 載 さ れ た 分 子 線 エ ピ
タ キ シ ー (MBE)装 置 *4 に お け る 成 膜 速 度 が 極 端 に 低 い の は 装 置 の 本 質 的 な 問 題
で は な く 、 蒸 気 圧 の 低 い Gd の 蒸 発 に ク ヌ ー ド セ ン ・ セ ル (K-セ ル )を 使 用 し た た め
で あ り 、 Sm の 場 合 は K-セ ル に お い て も 速 い 成 膜 も 十 分 に 可 能 で あ る と 予 想 さ れ
る ( た だ し 、 ル ツ ボ は 工 夫 す る 必 要 が あ る ) 。 MBE 装 置 の 到 達 真 空 度 は 、
10 -10 Pa 台 で あ り 、 EB 蒸 着 装 置 に 比 べ て 3 か ら 4 桁 程 度 良 い 。 し た が っ て 成 膜
-8
-9
中 に 取 り 込 ま れ る 不 純 物 も 少 な く 、 も し MBE 装 置 を Sm 成 膜 に 使 用 で き る な ら 理
想的な成膜装置であろう。
作 製 し た Sm 薄 膜 は 、 ラ ザ フ ォ ー ド 後 方 散 乱 /水 素 前 方 散 乱 (RBS/HFS)及 び X
線 光 電 子 分 光 (ESCA)に よ り 膜 中 の 酸 素 不 純 物 の 有 無 を 確 認 す る と と も に 、 X 線
回 折 装 置 で 相 の 確 認 (単 相 で あ る か 、 異 相 を 含 む か な ど ) し た 後 、 ア ニ ー ル 炉 を 用
いて水素化した。水素化薄膜の分析に使用した装置とメーカは下記の通りである。
*2 被 ス パ ッ タ 原 料 を 陰 極 と し て 、 グ ロ ー 放 電 に よ り 陰 極 か ら 飛 し た 原 料 を 基 板 上 に 体 積 さ せ 成 膜 さ せ
る装置。陰極部分の原料はターゲットと呼ばれる。
*3 真 空 中 で 原 料 の 入 っ た 坩 堝 な ど 加 熱 し 、 そ の 原 料 を 蒸 発 さ せ 基 板 に 堆 積 さ せ 成 膜 さ せ る 装 置 。
蒸 発 原 料 を 電 子 ビ ー ム で 加 熱 し て 成 膜 す る 装 置 を EB 蒸 着 装 置 と 呼 ぶ 。
*4 分 子 線 エ ピ タ キ シ ー (MBE)法 と は 、 超 高 真 空 中 で 原 料 を 蒸 発 さ せ 単 結 晶 基 板 上 に そ の 基 板 の 結
晶構造を反映した単結晶膜を作成する成膜方法のこと。ここでは、単に超高真空蒸着装置の意味で
使用している。超高真空中で原料を蒸発させた場合、原料の気体元素同士は互いに衝突することな
く基板に達する。これを分子線と呼ぶ。蒸発源となるオリフィス付きの加熱坩堝はクヌードセン・セル
と 呼 ば れ る [96]。
- 156 -
ラ ザ フ ォ ー ド 後 方 散 乱 /水 素 前 方 散 乱 (RBS/HFS:日 新 ハ イ ボ ル テ ー ジ AN-2500)
X 線 光 電 子 分 光 (ESCA:SSI 社 SSX-100)
X 線 回 折 ( 理 学 電 機 : Ultra-X)
- 157 -
< サ マ リ ウ ム (Sm) 膜 の 作 製 と そ の 分 析 >
Sm 金 属 膜 の 成 膜 に は 通 常 の EB 蒸 着 装 置 を 主 に 使 用 し た 。 し か し な が ら 、 成
膜には幾つかの注意が必要である。希土類金属インゴットには、しばしば数千
ppm か ら 数 万 ppm の 水 素 が 含 ま れ 、 イ ン ゴ ッ ト に 含 ま れ る 水 素 は 、 成 膜 中 の 酸 化
を招く(経験則)。そのために、成膜前にプレ融解を行い金属インゴットの脱水素
処理を行った。
図 5-5 に EB 蒸 着 用 の 水 冷 ハ ー ス の 模 式 図 、 及 び 、 水 冷 ハ ー ス に 入 れ る イ ン サ
ー ト タ ン グ ス テ ン (W)坩 堝 の 写 真 を 示 す 。 こ の イ ン サ ー ト 坩 堝 は EB 蒸 着 前 の イ ン
ゴットのプレ融解に便利であるばかりでなく、成膜中に、蒸発源の金属が、直接ハ
ースに触れないため、蒸発速度の安定化にも有用である。
EB 蒸 着 に お け る 、 成 膜 手 順 は 以 下 の 通 り で あ る 。
1
プ レ 溶 融 さ れ た Sm を イ ン サ ー ト W 坩 堝 ご と EB 蒸 着 源 に セ ッ ト す る 。
2
使 用 す る 石 英 ガ ラ ス 基 板 (4inch)を 、 中 性 洗 剤 ( 脱 脂 洗 浄 )、 セ ミ コ ン ク リ ー ン
(フルウチ化学:表面弱エッチング)及び純水にて洗浄し、基板ホルダーに 5
枚セットする。
3
基 板 の 脱 水 分 の た め に 基 板 を 200 ℃ ま で 加 熱 し 、 10 分 間 ホ ー ル ド し た 後 に 、
温度を下げる。
4
真 空 度 が 所 定 の 値 以 下 (1×10 Pa 以 下 )に な っ た と こ ろ で 、 成 膜 を 開 始 す る 。
-4
成 膜 速 度 は 、 約 30.nm/min.の 速 度 で 行 っ た 。
5
一 度 に 成 膜 し た 基 板 の 内 1 枚 を 試 料 評 価 の た め 15.mm 各 程 度 の チ ッ プ に 切
断して分析を行う。
インサートW坩堝
水冷ハース
プレ溶解前のインゴット
図 5-5
EB 蒸 着 用 に 使 用 し た イ ン サ ー ト W 坩 堝 。
- 158 -
ST-02
1.0
ST-02
100
Sm
C 1s
O 1s
Sm 3d5
Si 2p
80
0.8
Atomic ratio ( % )
Atomic Ratio
O
0.6
0.4
C
Si
60
40
20
0.2
H
0.0
0
0
100
200
300
0
図 5-6
1000
2000
3000
Sputter Time ( sec.)
Depth ( nm )
EB 蒸 着 に て 石 英 ガ ラ ス 基 板 上 に 成 膜 し た Sm の 分 析 結 果 。
左 が RBS/HFS、 右 が ESCA の 分 析 結 果 。
成 膜 し た Sm 膜 の RBS/HFS に よ る 分 析 結 果 の 例 を 図 5-6 の 左 に 示 す 。
RBS/HFS の 分 析 結 果 を み る と 最 表 面 に 炭 素 (C)が あ り 、 そ の 表 面 は 20.nm 程 度 の
深 さ ま で 酸 化 さ れ て い る 。 特 徴 的 な こ と は 膜 中 に 最 大 4%程 度 の 水 素 (H)が あ る こ
とである。この水素は、成膜前の(脱水素化処理をした)インゴットより多いと思わ
れ る 。 希 土 類 金 属 膜 に 存 在 す る 水 素 は 、 Sm 以 外 で も 、 水 素 (H)の 検 知 が 可 能 な
分 析 を 行 っ た 他 の 希 土 類 試 料 で も 確 認 さ れ た 。 Sm 膜 中 の 酸 素 の 有 無 を 調 べ る た
め に 、 よ り 感 度 の 高 い ESCA の 深 さ 方 向 分 析 も 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 5-6 右 に 示
す 。 ESCA の 深 さ 方 向 の 分 析 は Ar ガ ス で 、 Sm 膜 を ス パ ッ タ し な が ら 行 う 。 そ の た
めに、表面酸素もたたき込みにより、深い場所まで検出される傾向にある。にも関
わらず、表面酸化物以外、膜中で酸素は全く検出されていない。したがって、例
え ば 、 こ の 試 料 番 号 ST-02 を 良 質 と 判 断 し 、 水 素 化 を 行 っ た 。 他 の 試 料 も こ れ に
準ずる基準で可否を判断し水素化をした。
図 5-7 に Sm 薄 膜 の X 線 回 折 の 結 果 を そ の 面 指 数 と 共 に 示 す 。 Sm 特 有 の C
軸 の 長 い 構 造 が 確 認 さ れ た [95]。 X 線 回 折 は 薄 膜 法 で 行 っ て い る た め に 結 晶 の
配 向 性 に 関 し て 単 純 な 議 論 は 出 来 な い が 、 報 告 さ れ て い る 最 大 強 度 の (009)面 よ
り (101)面 の 強 度 が 強 い こ と か ら 、 格 子 の 六 角 柱 を 横 倒 し に し た 状 態 で 成 膜 さ れ て
いると推定される。筆者たちは同様の配向性を対向ターゲットスパッタ装置を使用
し 作 製 し た Gd 膜 で も 経 験 し た [97]。 格 子 定 数 は a=.0.3631.nm,c=.2.627.nm で あ り 、
報 告 さ れ て い る 値 a=.0.36291.nm,c=.2.6203nm と ほ ぼ 等 し い 。
- 159 -
10000
(1 0 4)
(2 0 14)
(2 1 4)
(1 2 5)
(2 1 7)
(1 0 13)
(1 0 14)
(0 1 11)
(1 0 7)
(0 1 8)
4000
(2 0 5)
(1 1 9)
6000
(0 1 5)
Intensity ( CPS )
8000
Sample No.ST-02
Cu: K50kV 300mA
Hexagonal
a=0.3631nm c=2.627nm
(1 1 0)
(1 0 1)
(0 1 2)
Sm film on quartz glass,
2000
20
40
60
80
100
2 ( deg. )
図 5-7
EB 蒸 着 に て 石 英 ガ ラ ス 基 板 上 に 成 膜 し た Sm の X 線 回 折
(薄 膜 法 :入 射 角 1 度 )の 結 果 。
- 160 -
< サ マ リ ウ ム (Sm) 膜 の 水 素 化 (SmH 2+ δ の 作 製 ) >
Sm 膜 を 成 膜 後 、 基 板 ご と 雰 囲 気 ア ニ ー ル 用 の 炉 に い れ て 水 素 化 を 行 っ た 。
雰 囲 気 ア ニ ー ル 用 の 炉 は 図 5-8 に 示 す よ う に 、 真 空 排 気 系 は ロ ー タ リ ポ ン プ (RP)
と タ ー ボ 分 子 ポ ン プ (TMP)か ら 成 り 、 そ の 到 達 真 空 度 は 10 Pa 台 で あ る 。 石 英 管
-5.
の 内 径 は 130.mm φ 、 均 一 加 熱 有 効 長 の 長 さ は お よ そ 300.mm で あ る 。 ガ ス 導 入
の 系 統 は 2 系 統 あ り 、 そ れ ぞ れ Ar ガ ス 、 Ar+H 2 ガ ス の ラ イ ン に 繋 が っ て い る 。 こ
の 2 系 統 の ガ ス ラ イ ン に は 不 純 物 (水 分 、 及 び 酸 素 ) 除 去 用 の 精 製 器 ( 日 本 酸 素
(株)ピュリフィルター)があり、炉の中に不純物の少ないガスが炉に導入されるよ
うになっている。
図 5-8
水素化処理用の炉
システムブロック。
実際の手順を以下に記す。
1. 全 て の バ ル ブ が 閉 で あ る こ と 確 認 し た 後 に 真 空 バ ル ブ 10 を 開 に し て ア ニ ー ル
炉 を 真 空 に 引 き 始 め る 。 バ ル ブ 11 を 開 き TMP を 起 動 す る 。 真 空 度 が 数 . Pa に
到 達 し た 後 に バ タ フ ラ イ バ ル ブ 9 を 開 に し て 、 同 時 に 真 空 バ ル ブ 10 を 閉 。
Ar+H 2 の 精 製 器 (ピ ュ リ フ ィ ル タ ー )の バ ル ブ 5 及 び 炉 入 り 口 側 の バ ル ブ 7 を 開
き 、 ア ニ ー ル 炉 と 共 に 真 空 に 引 く 。 7 と 5 を 閉 め て 2 を 開 閉 し Ar+H 2 の 精 製 器
ガ ス を 充 填 す る 。 バ ル ブ 1,4 を 開 に し て Ar ガ ス を ラ イ ン に 充 填 す る 。
2. 続 け て ア ニ ー ル 炉 の み 2×10 -4 Pa 程 度 ま で 真 空 に 引 く 。
- 161 -
3. バ タ フ ラ イ バ ル ブ 9 を 閉 め TMP を 止 め る 。 バ ル ブ 7 を 開 け Ar 充 填 し た ( 炉 内
部は一気圧)後に、炉からのガス出口 8 を開にする。
4. Ar ガ ス を 流 し な が ら ア ニ ー ル 炉 を 25/min.程 度 で 昇 温 し 、 500 ℃ で 約 30 分 保
つ。
5. 炉 の 電 源 を 切 り 、 再 び 上 記 手 順 に て ア ニ ー ル 炉 の み 真 空 に 引 き 炉 温 が 室 温
近 傍 に な る の を 待 つ 。 バ タ フ ラ イ バ ル ブ 9 を 閉 め バ ル ブ 7 を 開 け Ar 充 填 す
る 。 Ar ガ ス 充 填 後 バ ル ブ 7 及 び 1,4 閉 。
6. 水 素 化 試 料 を 入 れ 再 び ア ニ ー ル 炉 の み 上 記 手 順 に て 真 空 に 引 く 。 到 達 真 空
度 1×10 -4 Pa 程 度
7. バ タ フ ラ イ バ ル ブ 9 と バ ル ブ 11 を 閉 め TMP を 止 め る 。 バ ル ブ 7,2,5 を 開 け
Ar+H 2 ガ ス を 充 填 し た 後 に 、 炉 か ら の ガ ス 出 口 8 を 開 に す る 。 15 分 程 度 待
つ。
8. 4.L/min.で Ar+H 2 ガ ス を 流 し な が ら ア ニ ー ル 炉 を 25./min.程 度 で 昇 温 し 、 300
℃ で 約 15 分 保 つ 。 降 温 時 に 150 ℃ ま で 待 ち 、 Ar ガ ス に 切 り 替 え る 。 さ ら に 室
温近傍まで待って取り出す。
基本的には到達真空度はその装置の能力で決まっている。試料作製に使用した
ア ニ ー ル 炉 の 到 達 真 空 度 は 10 -5 Pa 台 で あ る 。 上 記 3 か ら 5 の 空 焼 き の 手 順 は 壁
面からの放出ガスの影響を排除するためである。壁面からの放出ガスの影響はビ
ルトアップ試験と呼ばれる、真空引き停止後の真空度の時間変化を測定すること
に よ り 確 認 し た 。 本 装 置 の 場 合 、 1×10 -4 Pa か ら 1×10 - 2 Pa ま で 、 お よ そ 15 分 で あ っ
た。
作 製 し た 膜 は H/Sm 比 と 不 純 物 量 を 求 め る た め に RBS/HFS を 用 い て 分 析 を 行
っ た 。 又 、 膜 中 の 酸 素 の 有 無 を 調 べ る た め に ESCA に よ る 分 析 も 行 っ た 。
図 5-9 に 水 素 化 処 理 を し た Sm 膜 の 分 析 結 果 を 示 す 。 RBS/HFS の 結 果 よ り 水
素 量 は H/Sm=2.58 で あ り 、 表 面 15.nm 程 度 に 酸 素 濃 度 の 高 い 領 域 が あ り 、
15-50.nm に 酸 素 と 水 素 が 共 存 す る 領 域 が あ る こ と が 判 っ た 。 ESCA 分 析 に よ る 酸
素 の 深 さ 方 向 分 析 の 結 果 を 見 る と 、 15-50.nm よ り 深 い 領 域 で は 酸 素 全 く 検 出 さ れ
ていない。
図 5-10 に 薄 膜 法 に よ る X 線 回 折 の 結 果 を 示 す 。 全 て の 回 折 ピ ー ク は 蛍 石 型 の
構 造 を 持 つ SmH 2+δ と ビ ク ス バ イ ト 構 造 を 持 つ Sm 2 O 3 と し て 指 数 付 け さ れ た 。 こ れ
に よ り RBS/HFS 及 び ESCA で 見 ら れ る 膜 表 面 の 酸 素 は Sm 2 O 3 を 形 成 し て い る こ
と が 判 明 し た 。 尚 2θ=22 度 近 傍 に 見 ら れ る ブ ロ ー ド な ピ ー ク は 石 英 ガ ラ ス 基 板 に よ
るものである。
- 162 -
1.0
ST-02B H/Sm = 2.58
0.8
H
Atomic Ratio
O
0.6
0.4
Si
Sm
0.2
0.0
0
100
200
300
Depth ( nm )
Atomic Percent of Oxygen ( % )
100
ST-02B
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
2000
4000
6000
8000
10000
Sputter Time ( seconds )
図 5-9
水 素 化 処 理 後 の RBS/HFS(上 ) 分 析 及 び ESCA( 下 ) よ る 膜 中 酸 素 の
分析結果。
- 163 -
SmH2.57 film on quartz-glass
20
60
80
Sm2O3 (10 2 2)
(5 1 1)
(4 2 2)
Sm2O3 (8 4 4)
Sm2O3 (6 6 2)
(3 3 1)
(4 2 0)
(4 0 0)
Sm2O3(8 0 0)
(3 1 1)
40
(2 2 2)
10
(2 2 0)
Sm2O3(4 4 0)
20
Sm2O3(6 2 2)
(1 1 1)
Sample No. ST-02B
Cu: K
Cubic a=0.5353nm
Sm2O3(4 0 0)
Sm2O3 (2 2 2)
Intensity ( CPS )
30
(2 0 0)
3
40x10
100
2 ( deg. )
図 5-10
Sm 膜 水 素 化 処 理 後 の X 線 回 折 例 ( 薄 膜 法 : 入 射 角 1 度 )と
その指数付けの結果。
参 考 ま で に 、 図 5-11 に ESCA に よ る Sm 膜 及 び SmH 2.57 膜 の Sm-3d ス ペ ク ト ル
を 示 す 。 測 定 は Ar ス パ ッ タ リ ン グ に よ る エ ッ チ ン グ を し た 後 に 、 酸 素 の 検 出 さ れ な
い領域にて行った。スパッタにより、元々の水素量から変化している可能性が高い
が 、 Sm-3d ス ペ ク ト ル は 水 素 化 に よ っ て 高 エ ネ ル ギ ー 側 に ケ ミ カ ル シ フ ト し て い る
ことが判る。
- 164 -
12000
ESCA Sm-3d
Intensity ( arb. )
10000
8000
SmH2.57
Sm
6000
4000
2000
0
1070
1080
1090
1100
Energy ( eV )
図 5-11
Sm 膜 と そ の 水 素 化 処 理 後 の ESCA:Sm-3d ス ペ ク ト ル 。
Ar で ス パ ッ タ 後 、 酸 素 が 全 く 検 出 さ れ な い 領 域 で 測 定 を 行 っ た 。
- 165 -
< SmH 2+ δ 膜 試 料 、 SmH 2+ δ イ ン ゴ ッ ト 試 料 の 保 存 と そ の 問 題 点
>
作製した膜は酸化などによる劣化を防ぐために、分析や評価用に切断された後
に、保存される。
図 5-12
簡 易 型 の ガ ス フ ロ ー タ イ プ の グ ロ ー ブ BOX と そ の 内 部 に あ る 簡 易 真 空 封
止装置。
試 料 保 存 の た め に 、 切 断 さ れ た 試 料 は N 2 フ ロ ー タ イ プ (3-4.L/min.)の 簡 易 グ ロ ー
ブ BOX(図 5-12 写 真 )の 中 で チ ャ ッ ク 付 ポ リ エ チ レ ン (PE)の 袋 に 入 れ ら れ 、 更 に 、
外 側 ナ イ ロ ン /内 側 PE の ヒ ー ト シ ー ル 用 の 袋 に 入 れ ら れ 真 空 封 止 さ れ る 。 試 料 は 、
こ の よ う に し て 封 止 さ れ た 袋 ご と N 2 ガ ス フ ロ ー (4.L/min.)タ イ プ の デ シ ケ ー タ に 入
れ 保 存 さ れ る 。 尚 、 こ れ ら の 試 料 保 存 に 使 用 さ れ る 袋 は 、 予 め N2 ガ ス フ ロ ー タ イ
プのデシケータ内に 4 週間以上置き、その表面が十分に乾燥したものを使用した。
しかしながら、これらの方法による(測定試料として使用可能な)保存期間は
2-3 ヶ 月 程 度 で あ る 。 し た が っ て 、 本 研 究 に お け る デ ー タ は 作 製 後 2 ヶ 月 以 内 に
測 定 し た も の で あ る 。 図 5-13 に SmH 2+δ 膜 作 製 10 日 後 、 及 び 半 年 後 に 測 定 し た
ESCA に よ る 酸 素 の 深 さ 方 向 分 析 の 結 果 を 示 す 。 半 年 後 に は 、 酸 素 が 膜 中 に 深 く
侵入している様子が見える。単純に時間に比例して侵入していると考えても、製
造 後 2 ヶ 月 以 内 に 測 定 す る べ き で あ る と 判 断 さ れ る 。 尚 、 目 視 に お い て は 10 ヶ 月
程 度 で 表 面 の 色 合 い に 変 化 が 見 ら れ 、 12-14 ヶ 月 で 半 透 明 に な る 。
こ の よ う な 、 試 料 保 存 時 の 不 安 定 性 を 改 善 す る た め に 、 本 研 究 の 後 半 で は 、 Ar
循 環 型 の グ ロ ー ブ BOX(図 5-14 の 写 真 )を 導 入 し た 。
バルク試料はパイレックス管へ真空封入し保存した。明瞭な劣化は見らなかっ
た。
- 166 -
ST-02B H/Sm=2.57 ESCAによるOxygen分析
Atomic Percent of Oxygen ( % )
80
試料作成10日後に測定した場合
試料作成6ヶ月後に測定した場合
70
60
50
40
石英ガラス基板
30
20
10
0
0
2000
4000
6000
8000
10000
Sputter Time ( seconds )
図 5-13
図 5-14
SmH 2+δ 膜 の 膜 中 酸 素 分 布 の 変 化 。
Ar 循 環 型 の グ ロ ー ブ BOX 。
- 167 -
12000
5-3 測 定 に 使 用 し た 入 手 バ ル ク 試
料の分析結果及び作製した薄膜試
料とその分析結果
<バルク試料>
SmH 2+δ の バ ル ク 試 料 は ( 株 ) 高 純 度 化 学 研 究 所 よ り 入 手 し た 。 入 手 し た 測 定 対
象試料のインゴットを測定用と分析用に分割し、分析用の試料をさらに 5 分割して
不 活 性 ガ ス 溶 解 法 (LECO 社 製 RH402)に よ り 含 ま れ る 水 素 量 を 繰 り 返 し 測 定 し た 。
そ の 結 果 を 表 5-2 に ま と め た 。
表 5-2
入手したバルク試料の分析結果。
1
2
3
4
5
平均
wt%
1.43
1.42
1.45
1.45
1.43
1.44
H/Sm
2.15
2.14
2.18
2.18
2.15
2.16
表 5-2 に よ り 、 分 割 試 料 間 に て 比 較 的 良 好 な 一 致 が 得 ら れ て お り 、 そ の 平 均 か ら
水 素 量 は H/Sm=2.16 と し た 。
こ の 試 料 の X 線 回 折 の 結 果 を 図 5-15 に 示 す 。 全 て の 回 折 ピ ー ク が 蛍 石 型 と し
て 指 数 づ け さ れ 目 的 と す る SmH 2+δ の 単 相 の 試 料 で あ っ た 。 分 析 に よ り 求 め ら れ
た 水 素 量 と 格 子 定 数 の 関 係 を こ れ で ま で の 報 告 [42,43,44]と 共 に 図 5-16 に 示 す 。
Daou[43]ら Pebler[44]ら の 結 果 と ほ ぼ 一 致 し て い る 。
- 168 -
Intensity ( CPS )
1.0x10
7
8.0x10
6
6.0x10
6
4.0x10
6
Mo K 0.07121nm
(111)
(311)
(200)
(220)
(222)
2.0x10
6
(331)
(420)
(400)
(422)
0.0
10
20
30
40
 ( deg. )
図 5-15
バルク試料の X 線回折パターン。
0.5385
Lattice constant ( nm )
0.5380
0.5375
A.Pebler, et al[44]
0.5370
This work ( Bulk )
0.5365
J.N. Daou, et al[43]
0.5360
0.5355
O.Greis, et al[42]
0.5350
0.5345
1.8
2.0
2.2
2.4
2.6
2.8
H/Sm
図 5-16
H/Sm と 格 子 定 数 の 関 係 : こ れ ま で の 報 告 [42,43,44]と
今回の試料。
- 169 -
<薄膜試料>
表 5-3 に 作 製 し た 試 料 一 覧 を 示 す 。 ス パ ッ タ 装 置 を 使 用 し て Sm 膜 を 作 製 し た
試 料 の 番 号 を SM-**で 、 EB 蒸 着 を 使 用 し た 場 合 を ST-**で 表 し た 。 ス パ ッ タ の タ
ー ゲ ッ ト に は 4 イ ン チ 3N の Sm ( フ ル ウ チ 化 学 ) を 、 EB 蒸 着 の イ ン ゴ ッ ト に は 3N
の Sm(フ ル ウ チ 化 学 ) を 使 用 し た 。 試 料 番 号 の ハ イ フ ン (-)以 下 の 番 号 は ロ ッ ト 番 号
を 表 し て い る 。 ス パ ッ タ 装 置 の 場 合 、 一 度 に 4 イ ン チ の ウ エ バ ー を 2 枚 、 EB 蒸 着
装 置 の 場 合 、 一 度 に 5 枚 成 膜 可 能 で あ っ た た め 、 Sm 成 膜 ご と の ロ ッ ト 番 号 と し た 。
一番最後のアルファベットは、水素化処理ロットの差を表し、一度の水素化処理
ル ー チ ン で 一 枚 の Sm 膜 付 基 板 を 処 理 し て い る 。 水 素 化 処 理 に 使 用 し た ガ ス は
Ar+0.5%H 2 及 び Ar+3%H 2 で あ る 。 表 5-4 に 作 製 し た 試 料 に つ い て 、 酸 素 不 純 物
に 注 目 し た 分 析 結 果 を 示 す 。 表 面 が 目 視 の 段 階 で 不 均 一 な も の 、 RBS/HFS で 評
価 し た 表 面 酸 化 膜 の 厚 み が 、 本 研 究 前 に 筆 者 ら が 研 究 し た YH 2+δ [26]よ り 厚 い 試
料 、 表 面 か ら 100nm 近 傍 の 領 域 に て RBS/HFS や ESCA の 測 定 に て 酸 素 が 検 出
さ れ た 試 料 の い ず れ か に 該 当 す る も の は 本 研 究 の 対 象 外 試 料 と し た 。 SM-09A,B
は 、 表 面 酸 化 物 の 厚 み が 例 え ば 図 5-9 で 示 し た 試 料 の 倍 程 度 あ り 、 測 定 対 象 外 と
し た 。 ST-3B,C は 目 視 で の 表 面 状 態 (形 状 ) が 悪 く 、 測 定 対 象 外 と し た 。 ST-02D
は ESCA に よ り 表 面 以 外 の 膜 内 部 に 酸 素 が 検 出 さ れ た た め に 、 測 定 対 象 外 と し た 。
測 定 の 対 象 と し た 試 料 は 表 5-3 及 び 5-4 に 空 色 に て 表 示 し た 試 料 ST-01C 、 試 料
ST-01E 、 試 料 ST-02B 、 試 料 ST-02C で あ る 。
表 5-5 に 作 製 し た 試 料 の H/Sm 組 成 比 と 格 子 定 数 を 表 す 。 水 素 化 処 理 時 の 水 素
濃 度 が 高 い 方 が よ り H/Sm 比 が 高 い 。
表 5-3
作製した試料とその水素化条件。
試料番号
SM-09
SM-09
ST-01
ST-01
ST-01
ST-02
ST-02
ST-03
ST-03
ST-02
A
B
B
C
E
B
C
B
C
D
ガス種
Ar+0.5%H2
Ar+0.5%H2
Ar+0.5%H2
Ar+0.5%H2
Ar+0.5%H2
Ar+3%H2
Ar+3%H2
Ar+3%H2
Ar+3%H2
Ar+3%H2
- 170 -
温度(℃) 時間(分) 膜厚(nm)
300
15
300
300
15
300
300
15
240
280
15
240
290
15
240
290
15
300
290
15
300
290
15
315
290
15
315
290
15
300
表 5-4
作製した試料とその酸素不純物の測定結果。
試料番号
SM-09
SM-09
ST-01
ST-01
ST-01
ST-02
ST-02
ST-03
ST-03
ST-02
×
×
○
○
○
○
○
△
△
○
A
B
B
C
E
B
C
B
C
D
表 5-5
表面以外未検出
表面以外未検出
表面以外未検出
表面以外未検出
表面以外未検出
表面以外未検出
表面以外未検出
表面以外未検出
表面以外未検出
表面以外未検出
未測定
未検出
未測定
未検出
未検出
未検出
未検出
未検出
未検出
2-3%
作 製 し た 試 料 と そ の H/Sm比 と 格 子 定 数 。
試料番号
SM-09
SM-09
ST-01
ST-01
ST-01
ST-02
ST-02
ST-03
ST-03
ST-02
Oxygen content by
膜の出来(目
Oxygen
content
by
using ESCA
視)や表面酸
化膜の厚さ
using RBS/HFS (Sputer time 4000以
(RBS/HFS)
上)
A
B
B
C
E
B
C
B
C
D
H/Sm by using
RBS/HFS
2.36
2.36
2.30
2.28
2.42
2.57
2.56
2.54
2.54
2.48
- 171 -
Lattice constant
( nm )
未測定
0.5358
0.5357
0.5355
0.5354
0.5353
0.5354
0.5356
0.5355
0.5349
3
Sample No. ST-01C
Cu: K
Cubic a=0.5355nm
SmH2.42 film on quartz-glass
Sample No. ST-01E
Cu: K
Cubic a=0.5354nm
(4 2 2)
(4 2 0)
Sm2O3
(3 3 1)
(4 0 0)
10
(2 2 0)
(1 1 1)
20
(2 2 2)
(3 1 1)
Sm2O3
30
(4 2 2)
(3 3 1)
(4 2 0)
4
(4 0 0)
Sm2O3
(2 0 0)
Sm2O3
6
(2 2 2)
Sm2O3
(1 1 1)
8
(2 2 0)
12
10
3
Sm2O3
(2 0 0)
14
Intensity ( CPS )
40x10
(2 0 0)
SmH2.28film on quartz-glass
16
Intensity ( CPS )
18x10
2
60
80
100
20
40
60
2 ( deg. )
(2 0 0)
SmH2.56 film on quartz-glass
(4 2 2)
(5 1 1)
Sm2O3(8 4 4)
(3 1 1)
Sm2O3(6 6 2)
(3 3 1)
(4 2 0)
(4 0 0)
10
(2 2 0)
Sm2O3(4 4 0)
15
Sm2O3(4 4 4)
(1 1 1)
Sample No. ST-02C
Cu: K
Cubic a=0.5354nm
Sm2O3(4 0 0)
Intensity ( CPS )
20
(5 1 1)
Sm2O3 (10 2 2)
(4 2 2)
Sm2O3 (8 4 4)
Sm2O3 (6 6 2)
(3 3 1)
(4 2 0)
(4 0 0)
Sm2O3(8 0 0)
(2 2 2)
(2 2 0)
Sm2O3(4 4 0)
10
25
Sm2O3 (2 2 2)
(2 0 0)
20
(3 1 1)
Sm2O3 (2 2 2)
Sm2O3(4 0 0)
30
100
3
30
Sample No. ST-02B
Cu: K50kV 300mA
Cubic a=0.5353nm
Sm2O3(6 2 2)
Intensity ( CPS )
(1 1 1)
40x10
35x10
SmH2.57 film on quartz-glass
3
80
2 ( deg. )
(2 2 2)
40
Sm2O3 ( 6 2 2 )
20
5
20
40
60
80
20
100
40
図 5-17
(***)
4
(***)
(***)
(110) (200)
(002)
(011)
4
2x10
ST-02C
ST-02B
4
1x10
ST-01E
ST-01C
0
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
Intensity ( CPS )
(010)
(002)
3.2x10
4
3.0x10
4
2.8x10
4
2.6x10
4
2.4x10
4
2.2x10
4
2.0x10
4
1.8x10
4
1.6x10
4
1.4x10
4
1.2x10
4
1.0x10
3
8.0x10
3
6.0x10
3
4.0x10
3
2.0x10
0.0
37
図 5-18
100
(***)
Sm2O3
Sm3H7
SmH3 HEX
(211)
(103) (311)
(004)
(112) (220)
(112)
(222)
(202)
ST-02C
ST-02B
ST-01E
ST-01C
46
2(deg.)
SmH2+x Cubic
(110)
(200)
4
(111)
4
Intensity ( CPS )
Sm2O3
Sm3H7
(101)
4x10
4
(***)
SmH3 HEX
5x10
3x10
80
測 定 に 使 用 し た SmH 2+δ 薄 膜 試 料 の X 線 回 折 パ タ ー ン 。
SmH2+x FCC:Cubic
(***)
60
2 ( deg. )
2 ( deg. )
47
48
49
50
51
52
53 54 55
2(deg.)
56
57
58
59
60
61
測 定 に 使 用 し た SmH 2+δ 薄 膜 試 料 の X線 回 折 パ タ ー ン の 一 部 拡 大 。
- 172 -
図 5-17 に 本 研 究 の 測 定 に 使 用 し た 試 料 の X 線 回 折 結 果 (2θ=10°-100°)を 示 す 。
全 て の ピ ー ク は 、 SmH 2+δ と Sm 2 O 3 と し て 指 数 付 け さ れ た 。 図 5-18 に SmH 3-δ 及 び
Sm 3 H 7 の 可 能 性 を 調 べ る た め に そ の 一 部 を 拡 大 (2θ=26°-37° 及 び 2θ=46°-61°)し
た 結 果 を 示 す 。 こ の 測 定 で は SmH 3-δ 及 び Sm 3 H 7 は 全 く 見 い だ せ な か っ た 。
Lattice constant ( nm )
0.5380
0.5375
A.Pebler, et al
0.5370
Bulk
0.5365
J.N Daou, et al
0.5360
O.Greis, et al
0.5355
0.5350
1.8
2.0
2.2
2.4
2.6
2.8
3.0
H/Sm
図 5-19
H/Sm と 格 子 定 数 の 関 係 : こ れ ま で の 報 告 [42,43,44]と
表 5-5 の 試 料 。 ○ で 囲 っ て い る も の が 、 測 定 対 象 と な っ て い る 。
図 5-19 に 表 5-5 の 試 料 の 格 子 定 数 と 水 素 量 H/Sm 比 の 関 係 を 示 す 。 水 素 化 処 理
時 の 水 素 濃 度 を 0.5%で 行 っ た 試 料 は Greis ら [42]や Daou ら [43]の 報 告 に 近 い
H/Sm 比 の 試 料 が 得 ら れ た が 、 3%の 場 合 は H/Sm 比 が 大 き く な り A.Pebler ら [44]
の 結 果 に 近 い 試 料 が 得 ら れ た 。 そ の 結 果 、 測 定 対 象 の 試 料 は 、 H/Sm 比 が 異 な る
ものの、水素量に対する格子定数の変化が少ない試料となっている。
序 論 に お い て 、 CaF 2 型 と な る RH 2 (R:希 土 類 元 素 ) は 、 理 想 的 な 場 合 、 T サ イ ト
が 水 素 で 満 た さ れ る と そ の 組 成 は RH 2 と な る が 、 実 際 に は 、 水 素 は T サ イ ト が 満
た さ れ る 前 (RH 1.9 -RH 1.98 )に O(octahedral)サ イ ト に 侵 入 し 、 且 つ 、 幅 広 い 範 囲 で 化
学量論比からのズレが観測されること、更に、 δ ≧ 0 領域における δ の増加に伴う
- 173 -
格子定数の減少は O サイト水素の引力相互作用によるものであると結論づけられ
て い る [24]と 述 べ た 。 T サ イ ト の 水 素 欠 損 は 格 子 定 数 に 与 え る 影 響 は 少 な い た め
に、その解釈を延長すると、今回測定対象とした試料は O サイトの充填率がほぼ
同一(格子定数がほぼ等しい)であり、 T サイトの充填率が異なる試料であること
も考えられるが明確な証拠は無い。
- 174 -
SmH 2+δ 実 験 結 果 と 考 察
6
この章では、
1.
バ ル ク 試 料 を 使 用 し た SmH 2.16 の 帯 磁 性 率 と 比 熱 の 測 定 結 果 と 考 察
2.
薄 膜 試 料 を 使 用 し た SmH 2+δ (δ=0.28,0.47.0.56,0.57)の 分 光 学 的 測 定 の 結 果
と考察
について、述べる。
6-1
SmH 2.16 (バ ル ク )の 磁 性 と 比 熱
<帯磁率>
図 6-1 に SmH 2.16 の 2.K か ら 室 温 ま で の 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 の 測 定 結 果 を
Żogal[46]の SmH 2 の 結 果 と 共 に 示 す 。 お よ そ 8.K 近 傍 か ら 温 度 低 下 に 伴 う 帯 磁
率 の 変 化 率 は 大 き く な り 、 5.K 近 傍 で 緩 や か に な る 。 SmH 2 の こ れ ま で の 報 告 に よ
る と Żogal[46]の 帯 磁 率 か ら 求 め た ネ ー ル 温 度 は T N =.9.7K 、 Vajda[47]が 抵 抗 率
の 温 度 依 存 性 か ら 求 め た ネ ー ル 温 度 は T N =9.6.K で あ る る 。 し か し な が ら 図 6-1 の
SmH 2.16 の 試 料 の 測 定 結 果 に ネ ー ル 温 度 を 示 す 明 瞭 な 変 化 は 見 ら れ な い 。
SmH 2.16 に お け る 20-300.K の 帯 磁 率 は 、 SmH 2 の そ れ に 比 べ て 小 さ い 。
図 6-2 に 0-30.K の 帯 磁 率 及 び 逆 帯 磁 率 を 示 す 。 明 確 な 転 移 は 不 明 な も の の 、
逆 帯 磁 率 は 、 7.0 K に 変 曲 点 、 10.6 K 及 び 15.2 K に 折 れ 曲 が り を 示 す 。
- 175 -
-3
8.0x10
-3
Zogal :SmH2
7.0x10
This work :SmH2.16
-3
 ( emu/mole )
6.0x10
-3
5.0x10
-3
4.0x10
-3
3.0x10
-3
2.0x10
-3
1.0x10
0.0
0
50
100
150
200
250
300
Temperature ( K )
図 6-1 SmH 2.16 の 帯 磁 率 温 度 依 存 性 の 結 果 と Żogal[46] ら に よ る SmH 2 の 結 果 。
。
8.0x10
-3
6.0x10
-3
4.0x10
-3
2.0x10
-3
800
1/ ( mole/emu )
 ( emu/mole )
。
15.2 K
10.6 K
600
7.0 K
400
200
0.0
0
5
10
15
20
25
30
Temperature ( K )
0
0
5
10
15
20
25
Temperature ( K )
図 6-2 SmH 2.16 の 帯 磁 率 と 逆 帯 磁 性 率 温 度 依 存 性 ( 低 温 部 分 拡 大 ) 。
- 176 -
30
Magnetization ( B )
0.04
3K
30 K
0.03
0.02
0.01
0.00
0
1
2
3
4
5
Magnetic field ( Tesla )
図 6-3 3 K 及 び 30 K に お け る SmH 2.16 の 磁 化 測 定 の 結 果 。
図 6-3 に 3.K 及 び 30.K に お け る 5.T ま で の 磁 化 の 測 定 結 果 を 示 す 。 30.K で 、 磁
場 に 対 し て 磁 化 は 、 ほ ぼ 直 線 と な り 、 常 磁 性 領 域 と 判 断 さ れ る 。 磁 化 は 、 3.K で は
上に凸となり、単純な反強磁性ではないことを伺わせる。
分 子 場 近 似 に よ れ ば 帯 磁 率 χ は 式 6-1 の よ う に 表 せ る [46]。
χ exp -1 = χ CF -1 - λ
or
χ free -1 - λ
(6-1)
た だ し 、 λ=θ P /C(θ P :常 磁 性 キ ュ リ ー 温 度 C:キ ュ リ ー 定 数
χ CF
χ free
: 結晶場を含む帯磁性率
:自 由 イ オ ン の 帯 磁 率
図 6-4 に 縦 軸 を χ CF
又 は χ free 、 横 軸 を 1/T と し て SmH 2.16 と 比 較 の た め の Żogal
の SmH 2 の 帯 磁 率 [46]と 共 に プ ロ ッ ト と し た 図 を 示 す 。 図 中 の 原 点 を 通 る 直 線 は 自
- 177 -
由 イ オ ン の Sm 3+ を 示 す 。 他 の 直 線 も こ れ と 平 行 に 引 い た 。 SmH 2.16 の 直 線 部 分 は
-1
( exp +  )
-1
SmH 2 [46]の 帯 磁 率 に 比 べ て 狭 い も の の 高 温 側 は Sm 3+ と し て 説 明 さ れ る 。 こ の 時 、
7.0x10
-3
6.0x10
-3
5.0x10
-3
4.0x10
-3
3.0x10
-3
2.0x10
-3
1.0x10
-3
SmH2 Zogal p = -12.6 K
SmH2.16 This work p = -22 K
0.0
0.00
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
1/T ( 1/ K )
図 6-4
6-1 式 を 使 用 し 、 縦 軸 χ CF 又 は χ free で 横 軸 を 1/T と し て プ ロ ッ ト し た 。
Żogal の SmH 2 [46]の 結 果 及 び 今 回 の SmH 2.16 の 結 果 。
常 磁 性 キ ュ リ ー 温 度 θ P = -22 K と な っ た 。
序 論 で 述 べ た よ う に 、 SmH 2+δ ( た だ し δ が 小 さ い 場 合 ) 中 の Sm イ オ ン は 近 似
3+
的に立方対称の結晶場の影響を受けると考えられる。したがって結晶場の影響を
受 け 、 J 多 重 項 の 基 底 状 態 (J=5/2)は Γ 8 と Γ 7 に 分 裂 す る 。 又 、 g J が 小 さ く 、 キ ュ リ
ー項が小さいと、 J 多重項の基底状態に混入する励起状態の影響が強く表れる。
そ こ で 、 θ P =0.K の 場 合 の Sm イ オ ン の 帯 磁 率 を 6-2 式 で 示 す よ う に 結 晶 場 と Van
3+
Vleck 項 の 和 で 現 し 、 常 磁 性 キ ュ リ ー 温 度 θ P を 6-1 式 の 形 で 考 慮 し て 常 磁 性 領 域
の帯磁率の説明を試みた。
χ=χ CF + χ VanVleck
(6-2)
Sm の 場 合 VanVleck 項 は 以 下 の 式 で 与 え ら れ る 。
3+
χ VanVleck
=N*
2
2
2
120μ B /[7(ΔE J )] +8exp(-ΔE J /k B T){[μ B /(ΔE J2 )](103/72)+[μ B /(ΔE J )](15/7)}
6+8exp(-E 1 /k B T)
(6-3)
- 178 -
ただし、
ΔE J :J=5/2 と J=7/5 間 の 多 重 項 の エ ネ ル ギ ー 差
ΔE J2 :J=5/2 と J=7/5 間 の 多 重 項 の エ ネ ル ギ ー 差
実際の計算では、分子の第二項以下は、第一項に比べてほとんど影響がない。
一 方 、 結 晶 場 を 含 む 帯 磁 率 は 基 底 状 態 が 例 え ば Γ8 の 場 合 、 以 下 の 式 で 与 え ら
れる。
65
( gJ μB )
(
χCEF=
2+exp(-ΔEC7-C8/kBT)
2
18
+
25
36
exp(-ΔEC7-C8/kBT)
kBT
+
40(1-exp(-ΔEC7-C8/kBT))
9ΔEC7-C8
)
(6-4)
ただし
ΔE Γ7-Γ8 :Γ 7 -Γ 8 間 の エ ネ ル ギ ー 差
図 6-5 に 、 計 算 で 得 ら れ た 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 を SmH 2.16 の 実 測 値 と 共 に 示
す 。 θ P = -22 K と し て キ ュ リ ー 項 と VanVlecK 項 の み を 考 慮 し (結 晶 場 ΔE Γ7-Γ8 = 0
K)、 SmH 2 に お け る NMR の ナ イ ト シ フ ト よ り 見 積 も っ た J 多 重 項 間 の エ ネ ル ギ ー
差 ΔE J =.1400.K[46]を 用 い て 計 算 し た 値 を 赤 線 で 、 θ P =.-22.K 、 結 晶 場 を 考 慮 し て
基 底 状 態 を Γ 8 と し て 、 基 底 状 態 と Γ 7 と の エ ネ ル ギ ー 差 ΔE Γ7-Γ8 = 200.K 、 J 多 重
項 間 の エ ネ ル ギ ー 差 を ΔE J =.1900.K と し て 計 算 し た 値 を 青 線 に て 示 す 。 基 底 状 態
を Γ 8 と す る こ と に よ り 常 磁 性 領 域 低 温 側 で 、 ΔE J =.1900.K と す る こ と に よ り 高 温 側
でより良く一致し、常磁性領域での帯磁率の温度依存性をほぼ説明することがで
きる。
- 179 -
-3
8.0x10
-3
SmH2.16
7.0x10
EJ=5/2,7/2=1400 K p=-22K
-3
EJ=5/2,7/2=1900 K p=-22K E - = 200 K 8:grand state
 ( emu/mole )
6.0x10
8
7
-3
5.0x10
-3
4.0x10
-3
3.0x10
-3
2.0x10
-3
1.0x10
0.0
0
50
100
150
200
250
300
Temperature ( K )
図 6-5 ■ は SmH 2.16 の 実 測 値 。 赤 線 は θ P = -22 K、 ΔE J =.1400 K[46]を 使 用 し 青
線 は θ P = -22 K、 基 底 状 態 を Γ 8 と し て ΔE Γ7-Γ8 = 200 K、 ΔE J = 1900 K を
使用して計算した。
- 180 -
<比熱>
図 6-6 に SmH 2.16 の 比 熱 の 測 定 結 果 を し め す 。 帯 磁 率 の 変 極 点 や 折 れ 曲 が り
の 温 度 (7.0.K 、 10.6.K 、 15.2.K)近 傍 7.1.K 、 10.8.K 、 15.9.K に 磁 気 転 移 を 示
すと考えられるピ-クがある。
10.8 K
C p ( J/K mole )
10
15.9 K
7.1 K
5
0
0
5
10
15
20
25
30
Temperature ( K )
図 6-6 SmH 2.16 の 比 熱 の 測 定 結 果 。
図 6-7 に 、 よ り 高 温 領 域 の SmH 2.16 比 熱 の 測 定 結 果 と Opyrchal[48]ら の LaH 2
比 熱 を 示 す 。 従 来 は SmH 2 比 熱 に お け る f 電 子 由 来 の 比 熱 を 見 積 も る 場 合 に
LaH 2 の 比 熱 を 格 子 比 熱 の 項 と し て 差 し 引 い て い た [48]。 今 回 の 試 料 は 170.K.近
傍 に て 、 LaH 2 の 比 熱 が SmH 2.16 比 熱 を 上 回 る こ と 、 元 々 、
150.35
Sm と
138.91
La は 原 子
量 も 異 な る こ と 、 SmH 2.16 は H 化 学 量 論 組 成 か ら ず れ て い る こ と な ど か ら 、 LaH 2
の 比 熱 を SmH 2.16 の 格 子 比 熱 と し て 見 な す こ と に 無 理 が あ る と 考 え た 。 そ こ で 、 水
素 化 物 の 格 子 比 熱 部 分 を 、 Chevalier ら [98]と 同 様 に 2 つ の 音 響 フ ォ ノ ン パ ー ト 、
す な わ ち 原 子 番 号 が 大 き く 異 な る Sm と H に つ い て そ れ ぞ れ 2 つ の デ バ イ 温 度 が
あることを仮定して格子比熱の計算をした。更に、結晶場の影響、 J 多重項の影
響 を 考 え て SmH 2.16 の 常 磁 性 領 域 の 比 熱 を 6-5 式 を 用 い て 計 算 し た 。
- 181 -
40
Cp ( J/K mole )
30
SmH2.16
20
LaH2
10
0
0
50
100
Temperature ( K )
150
図 6-7 SmH 2.16 の 比 熱 の 測 定 結 果 と LaH 2 の 比 熱 [48]と の 比 較 。
C = C γ + C latice-H + C latice-Sm +C CE+LS
Cc =
ただし、
(6-5)
cT
(6-6)
γ :ゾンマーフェルト係数
T :温度
Clattice-H = 2.16*9NkB(
Clattice-Sm = 9NkB(
ただし、
T
hD-Sm
T
hD-H
3
)
3
)
X
0
X
x4exp(x)
0
(exp(x)-1)2
x4exp(x)
dx
(exp(x)-1)2
X = θ D /T
θ D-H : デ バ イ 温 度 水 素
θ D-Sm :デ バ イ 温 度 サ マ リ ウ ム
k B: ボ ル ツ マ ン 定 数
N: ア ボ ガ ド ロ 数
- 182 -
dx
(6-7)
(6-8)
CCF+LS=
{2Δ12exp(-Δ1/kBT)+8Δ 22exp(-Δ2/kBT) }
R
2
( kBT )
{2+exp(-Δ1/kbT)+4exp(-Δ2/kBT)}
2
+
[4(Δ1 -Δ2)2exp{-(Δ 1+Δ2)/kBT}]
R
( kBT ) {2+exp(-Δ1/kbT)+4exp(-Δ2/kBT)}2
2
(6-9)
た だ し 、 Δ1: 基 底 状 態 Γ 8 と Γ7 の エ ネ ル ギ ー 差
Δ 2 : 基 底 状 態 と J=7/2 の エ ネ ル ギ ー 差
R: 気 体 定 数
SmH2.16 -Exp
 EJ=5/2,7/2=1400 K E - = 100 K  8:grand state
8
7
Sm: D= 180 K
H :D= 2100 K
30
T  =5mJ/K mole
SUM
Cp ( J/K mole )
Csum
Cexp
20
Clattice-Sm
10
Clattice-H
CCF+LS
0
0
50
C
100
150
200
Temperature ( K )
図 6-8
SmH 2.16 の 比 熱 の 測 定 結 果 と 6-5 式 に よ る 計 算 結 果 。
γ HT =.5.mJ/(K mole)、 θ D-Sm =180 K、 θ D-H =2100 K、 J=5/2 と J=7/2 の
2
エ ネ ル ギ ー 差 を 1400 K[48]、 結 晶 場 の 基 底 状 態 を Γ 8 結 晶 場 分 裂 を
100 K と し て 計 算 。
- 183 -
表 6-1 LaH 2 と SmH 2.16 の 6-5 式 に よ る 比 熱 の フ ィ テ ィ ン グ の 結 果 。
た だ し J 多 重 項 間 の エ ネ ル ギ ー 差 を 1400 K[48]と し て 固 定 。
θD-R
θD-H
γHT
ΔEΓ7-Γ8
ΔEJ=5/2-7/2
LaH2
200 K
2000 K
4 mJ/K2 mole
---
---
SmH2.16
180 K
2100 K
5 mJ/K2 mole
200 K
1400 K
図 6-8 に 6-5 式 を 用 い 、 本 来 物 質 に 依 存 し な い は ず の J 多 重 項 間 の エ ネ ル ギ ー
を 1400.K[48]と し て 固 定 し 、 ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ 、 2 つ の デ バ イ 温 度 、 結 晶 場
分 裂 及 び そ の 基 底 状 態 を パ ラ メ ー タ と し て 計 算 し た 結 果 を SmH 2.16 の 実 測 値 と 共
に 示 す 。 両 者 は 30-170.K の 範 囲 で 、 結 晶 場 の 基 底 状 態 を Γ 8 と し て 比 較 的 良 く 一
致 す る 。 た だ し 、 結 晶 場 分 裂 の エ ネ ル ギ ー は 100.K 程 度 で あ り 、 帯 磁 率 に よ り 求
め ら れ た 値 (200 K)よ り 小 さ い 。 又
ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 は γ HT =.5.mJ/(K 2 mole)
と な っ た 。 デ バ イ 温 度 は 、 θ D-Sm =180.K 、 θ D-H =2100.K と な っ た 。 LaH 2 の フ ィ ッ テ ィ
ン グ 結 果 と 共 に 表 6-1 に ま と め た 。 θ D-Sm が θ D-La よ り 大 き い の は 原 子 量 の 差 に よ る
と 考 え る と 自 然 な 結 果 と 言 え る 。 し か し な が ら 、 図 6-8 に お け る 175.K 以 上 の 温 度
域における計算値は十分に実験値を再現していない。又、音響フォノンの状態を
2 種 類 デ バ イ 温 度 で 表 す 物 理 的 意 味 も ハ ッ キ リ し な い 。 そ こ で 、 Takahashi ら [99]
の方法を参考に、格子比熱を音響フォノンのみでなく音響フォノンと光学フォノン
と を 考 慮 し て 6-5 式 を 以 下 の 6-10 式 の よ う に 考 え る 。
C = C γ + C latice-Deby +C lattice-Einstein +C CE+LS
(6-10)
そして、
Clattice-Deby = 9NkB(
ただし、
T
hD
)
3
X
x4exp(x)
0
(exp(x)-1)2
dx
(6-11)
X = θ D /T
θD: デ バ イ 温 度
Clattice-Einstein = 2.16*3NkB(
hE
T
)2
exp(hE /T )
(exp(hE /T )-1)2
θE: ア イ ン シ ュ タ イ ン 温 度
- 184 -
(6-12)
これらの式は、比熱の格子振動の寄与の内、音響フォノンの部分をデバイモデル
に て 、 光 学 フ ォ ノ ン を ア イ ン シ ュ タ イ ン モ デ ル に て 近 似 し た モ デ ル で あ り 、 PdCoO 2
の 比 熱 の モ デ ル に 適 用 さ れ て い る [99]。 本 研 究 で は 、 6-10 式 の 格 子 振 動 の 比 熱
を 6-11 式 、 6-12 式 の 形 で 表 し た 。
SmH2.16 -Exp
EJ=5/2,7/2=1400 K E  - = 100 K  8:grand state
8
7
Sm:D= 178 K
30
H :E= 1150 K
T =5mJ/K mole
Cp ( J/K mole )
SUM
20
Csum
Clattice-Deby
10
Clattice-Einstein
CCF+LS
0
0
50
C
100
150
200
Temperature ( K )
図 6-9
SmH 2.16 の 比 熱 の 測 定 結 果 と 6-10 式 に よ る 計 算 結 果 。
γ HT =.5.mJ/(K .mole)、 θ D-Deby =178 K、 θ D-Einstein =1150 K、 J=5/2 と J=7/2
2
の エ ネ ル ギ ー 差 を 1400 K[48]、 結 晶 場 の 基 底 状 態 を Γ 8
結晶場分裂
を 100 K と し て 計 算 。
図 6-9 に 6-10 式 を 用 い 、 J 多 重 項 間 の エ ネ ル ギ ー を 1400.K[48]と し て 固 定 し 、 ゾ
ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ 、 結 晶 場 分 裂 及 び そ の 基 底 状 態 、 デ バ イ 温 度 θD 及 び ア イ
ン シ ュ タ イ ン 温 度 θ E を パ ラ メ ー タ と し て 計 算 し た 結 果 を SmH 2.16 の 実 測 値 と 共 に 示
す 。 30-200K の 幅 広 い 範 囲 で 、 結 晶 場 の 基 底 状 態 を Γ 8 と し て 比 較 的 良 く 一 致 す
る 。 LaH 2 の フ ィ ッ テ ィ ン グ 結 果 と 共 に 表 6-2 に ま と め た 。
- 185 -
表 6-2 LaH 2 と SmH 2.16 の 6-10 式 に よ る 比 熱 の フ ィ テ ィ ン グ の 結 果 。
た だ し J 多 重 項 間 の エ ネ ル ギ ー 差 を 1400 K[48]と し て 固 定 。
θD
θE
γHT
ΔEΓ7-Γ8
ΔEJ=5/2-7/2
LaH2
200 K
1050 K
4 mJ/K2 mole
---
---
SmH2.16
178 K
1150 K
5 mJ/K2 mole
200 K
1400 K
SmH 2.16 に つ い て 、 表 6-1 と 比 べ た 場 合 、 ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ HT と 結 晶 場 の 基
底 状 態 及 び 、 基 底 状 態 Γ8 と Γ7 の エ ネ ル ギ ー 差 ( J 多 重 項 間 の エ ネ ル ギ ー 差 は 固
定 ) は 一 致 し 、 デ バ イ 温 度 は θ D-Sm =180.K と θ D =178.K で ほ ぼ 同 じ 結 果 と な っ た 。
LaH 2 に つ い て 表 6-1 と 比 べ た 場 合 ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ HT
とデバイ温度は
(θ D-Sm =200.K と θ D =200.K)は 一 致 し た 。 要 す る に 、 SmH 2.16 と LaH 2 共 に 表 6-1 の
デ バ イ 温 度 θ D-H を ア イ ン シ ュ タ イ ン 温 度 θ E
に 置 き 換 え る と ほ ぼ 表 6-2 と な る 結 果
と な っ た 。 又 、 表 6-1 と 同 様 に SmH 2.16 の θ D が LaH 2 の θ D よ り 大 き い の は 原 子 量
の差によると考えると自然な結果と言える。
図 6-10 に 磁 気 比 熱 の C mag /T に 対 す る T の 依 存 性 を 、 又 、 磁 気 比 熱 か ら 結 晶
2
場 と J 多 重 項 間 の 励 起 に よ る 比 熱 (C CF+LS )を 差 し 引 い た 比 熱 (C mag -C CF+LS )の
(C mag -C CF+LS )/T に 対 す る T 依 存 性 を 示 す 。 7.1.K 以 下 の 温 度 領 域 で は 、 比 熱 と
2
T の関係は直線的に変化し、この温度領域での反強磁性的な秩序の存在を伺わ
2
せ る 。 こ の 直 線 か ら 外 挿 し て 求 め た ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 は γ LT =150.mJ/(K 2 .mole)
と 比 較 的 大 き く 、 重 い 電 子 状 態 と な っ て い る 。 図 6-11 に 磁 気 比 熱 の エ ン ト ロ ピ ー
の 温 度 依 存 性 を 示 す 。 比 熱 の 温 度 依 存 性 か ら 求 め た 一 番 高 い 転 移 温 度 =.15.9.K
に お い て も 、 エ ン ト ロ ピ ー は Γ 8 を 基 底 状 態 と し た 場 合 の 55 %し か な い 。 低 温 領 域
の ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 が γ LT =.150 mJ/(K 2 mole)で あ る こ と を 考 え る と 、 こ の 小 さ な
エントロピーは低温領域で近藤一重項が形成されたのために引き起こされている
と考えられる。
- 186 -
0.7
7.1 K
0.6
C mag/ T
(C mag-C CF+LS)/T
0.4
2
C/T ( J/K mole )
0.5
0.3
0.2
0.1
0.0
0
100
200
300
400
500
Temperature ( K )
図 6-10
2
SmH 2.16 の 磁 気 比 熱 の C/T の T 依 存 性 。
14
12
2Rln2
Smag ( J/K mole )
10
8
6 0.55(2Rln2)
15.9 K
4
2
0
0
20
40
Temperature ( K )
図 6-11 SmH 2.16 の 磁 気 比 熱 部 分 の エ ン ト ロ ピ ー 変 化 。
- 187 -
6-2 SmH 2+δ ( 薄 膜 ) の 分 光 学 的 測 定
と伝導特性
<反射率、透過率>
図 6-12 に 0.05-6.2.eV の 範 囲 で の SmH 2+δ 膜 の 反 射 率 の 測 定 結 果 ( 室 温 ) を 示
す 。 プ ラ ズ マ 端 を 思 わ せ る 反 射 率 の 極 小 値 は 1.3-2.4.eV 近 傍 の 赤 外 領 域 に あ り 、
δ が 増 加 す る に つ れ て 低 エ ネ ル ギ ー 側 に レ ッ ド シ フ ト す る 。 3-3.5.eV に ブ ロ ー ド な
極大値があり、このピークも δ が増加するにつれて低エネルギー側にレッドシフト
する。
100
Reflectivity ( % )
80
ST02B SmH2.57
ST02C SmH2.56
60
ST01E SmH2.42
40
ST01C SmH2.28
20
0
1
2
3
4
5
6
Photon Energy( eV )
図 6-12 石 英 ガ ラ ス 基 板 SmH 2+δ ( δ=0.28,0.42,0.56,0.57) 膜 の 反 射 率 の
測定結果(室温)。
図 6-13 に 0.05eV-6.2.eV の 範 囲 で の SmH 2+δ 膜 の 透 過 率 の 測 定 結 果 ( 室 温 ) を 示
す 。 0.4-3.eV に 光 を 透 過 さ せ る 領 域 が あ る 。 透 過 率 が 最 大 と な る の は 、 ど の 試 料
も 1.eV 近 傍 に あ り 、 δ 依 存 性 は 少 な い 。 反 射 率 の 極 小 値 が 赤 外 領 域 に あ り 、 狭 い
範囲で僅かに光を透過する。
- 188 -
Transmittance ( % )
2
ST-01C SmH 2.28 t=240nm
ST-01E SmH 2.42 t=240nm
1
ST-02B SmH 2.56 t=300nm
ST-02C SmH 2.57 t=300nm
0
1
2
3
4
5
6
Photon Energy ( eV )
図 6-13 石 英 ガ ラ ス 基 板 SmH 2+δ ( δ=0.28,0.42,0.56,0.57) 膜 (試 料
ST-01C,ST-01E,ST-02B,ST-02C)の 透 過 率 の 測 定 結 果 ( 室 温 ) 。
こ れ ら の 結 果 は 、 YH 2+δ 薄 膜 の 結 果 [21]と 類 似 し て お り 、 以 下 の よ う に 大 ま か に 説
明 さ れ る 。 お よ そ 1.0.eV 以 下 の 領 域 は 、 ド ル ー デ タ イ プ の 自 由 電 子 プ ラ ズ マ に よ
り 反 射 率 が 高 い 。 3.0.eV 以 上 で は 、 も し 、 バ ン ド 構 造 が YH 2+δ と 類 似 で あ る な ら ば 、
主 と し て 水 素 H の 1s か ら 成 る 価 電 子 帯 と 主 と し て Sm の 5d か ら 成 る 伝 導 帯 と の
間の光学的な遷移のために透過率が低い。
透 過 率 T 、 反 射 率 R と す る と 吸 収 係 数 α は 6-13 式 で 表 さ れ る 。
α =
1
1-R
ln(
)
d
T
(6-13)
ただし、 d は膜厚
6-13 式 か ら 見 積 ら れ た 吸 収 係 数 α を 使 用 し 、 フ ォ ト ン エ ネ ル ギ ー 対 (αhν)
2
をプロ
ッ ト し た 図 を 図 6-14 に 示 す 。 参 考 ま で に Ng ら [100]に よ っ て LaH 2 , LaH 3 に 対 し て
成 さ れ た バ ン ド 計 算 の 結 果 を 図 6-15 に 示 す 。 こ れ ら の 結 果 や と YH 2 の バ ン ド 計
- 189 -
算 [39]を 参 考 に 、 Kumar ら [49]の Pd/SmH 3-δ 、 Pd/SmH 2±ε 膜 の 結 果 を 考 慮 し て 図
6-14 を 解 釈 す る と 、 O サ イ ト の 水 素 H の 1s は 局 在 レ ベ ル に あ り 、 Sm の 5d か ら
成 る 伝 導 帯 と の ギ ャ ッ プ は お よ そ 1.5eV(図 6-14 中 A)、 T サ イ ト の 水 素 H の 1s か
ら 成 る 価 電 子 帯 (Γ’ 2 ) と Sm の 5d か ら 成 る 伝 導 帯 (Γ’ 25 )と の 間 の 光 学 的 な ギ ャ ッ プ
は お よ そ 2.6eV(図 6-14 中 A)と な る 。 こ れ ら の ギ ャ ッ プ に δ 依 存 性 は ほ と ん ど 見 ら
れなかった。
間 接 遷 移 の 可 能 性 も 考 え て フ ォ ト ン エ ネ ル ギ ー 対 (αhν)
ル ギ ー 対 (αhν)
0.5
2
に対してフォトンエネ
のプロットも試みたが、ギャップを求めることは困難であった。し
か し な が ら 、 図 6-14 近 傍 の A に つ い て は 、 間 接 遷 移 の 可 能 性 も 大 き い 。 な ぜ な ら
この近傍の状態密度には組成依存性が見られない。したがって、局在レベルにあ
る O サ イ ト の 水 素 H か ら の 遷 移 で は な く 、 YH 2 の バ ン ド 計 算 [39]を 参 考 に す る と 、
例 え ば 、 χ 1 の フ ェ ル ミ レ ベ ル か ら 伝 導 帯 (Γ’ 25 )へ の 間 接 遷 移 で あ る 可 能 性 も 高 い 。
12
2.5x10
ST01C SmH2.28
12
ST01E SmH2.42
2.0x10
ST02C SmH2.56
2
2
( h ) ( (eV/cm) )
ST02B SmH2.57
12
1.5x10
12
1.0x10
11
5.0x10
0.5
B
A
0.0
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
Photon Energy ( eV )
図 6-14 SmH 2+δ ( δ=0.28,0.42,0.56,0.57) 膜 (試 料 ST-01C,ST-01E,ST-02B,
2
ST-02C)の (αhν) と Photon Energy の 関 係 。
- 190 -
図 6-15
Ng ら に よ る LaH 3 (上 )、 LH 2 (下 )バ ン ド 計 算 の 結 果 [99]。
LaH 3 の 光 学 ギ ャ ッ プ は 結 晶 場 効 果 を 含 ま な い 場 合 1.5eV 、
含 む 場 合 は 2.1eV 。
- 191 -
<抵抗率>
Resistivity( m )
図 6-16, 図 6-17 に SmH 2+δ 膜 の 抵 抗 率 の 温 度 変 化 を 示 す 。
4.5x10
-6
4.0x10
-6
3.5x10
-6
3.0x10
-6
2.5x10
-6
2.0x10
-6
1.5x10
-6
ST2B SmH2.57
ST2C SmH2.56
0
50
100 150 200 250 300
Temperature ( K )
図 6-16
SmH 2+δ ( δ=0.56,0.57) 膜 (試 料 ST-02B と ST-02C)の 抵 抗 率 の
Resistivity ( m )
温 度 変 化 (20-300.K)。
4.5x10
-6
4.0x10
-6
3.5x10
-6
3.0x10
-6
2.5x10
-6
2.0x10
-6
1.5x10
-6
ST01E SmH2.42
0
50
100 150 200 250 300
Temperature ( K )
図 6-17
SmH 2+δ ( δ=0.42) 膜 (試 料 ST-01E)の 抵 抗 率 の 温 度 変 化 (20.K-300.K)。
- 192 -
測 定 温 度 範 囲 20.K-300.K で 、 磁 気 転 移 を 示 す 明 瞭 な 変 化 は 観 測 さ れ て い な
い 。 ど の 試 料 も 20-30.K の 間 に 極 小 値 を 持 つ 。 又 、 金 属 的 な 伝 導 を 持 つ が 、 抵 抗
率の値に δ 依存性は現れなかった。この極小値から室温までの抵抗変化の割合
(ρ(300.K)/ρ(min.)は 、 SmH 2+δ (δ=0.56,0.57)で 170%、 SmH 2+δ ( δ=.0.42)で 180%で
あ る 。 残 念 な が ら 、 SmH 2+δ ( δ=.0.28)の 試 料 は 測 定 前 の 保 存 時 に お け る 劣 化 の た
-6
2.6x10
Resistivity ( m )
ST-02B SmH2.57
-6
2.5x10
-6
2.4x10
-6
2.3x10
0
5
10
15
20
25
30
Temperature ( K )
Resistivity ( m )
-6
2.5x10
ST-02B SmH2.57
-6
2.4x10
1
10
Temperature ( K )
図 6-18
SmH 2+δ ( δ=0.57) 膜 ( 試 料 ST-02B ) の 抵 抗 率 の 温 度 変 化 (0.35K-28K)。
- 193 -
めに測定できなかった。
SmH 2+δ (δ=0.57)の 試 料 に つ い て 、 よ り 低 温 側 ( 0.35-28 K )の 抵 抗 率 の 温 度 依 存
性 を 測 定 し た 。 図 6-18 に そ の 結 果 を 示 す 。 降 温 時 に 10.K 、 昇 温 時 に 14.K 近 傍
に極大値を持ち、より低温側で、抵抗率は減少する。このような変化は磁気秩序
に 起 因 し 、 δ の よ り 少 な い 領 域 で Vajda[29]ら が 示 し た 転 移 前 後 の 抵 抗 率 変 化 に
類 似 で あ る 。 抵 抗 率 の 値 は Vajda[29]ら の δ の よ り 少 な い 領 域 の 結 果 よ り 数 倍 以
上大きい。しかしながら、薄膜では、バルクより残留抵抗が大きくなる傾向があり、
この抵抗の大きさが温度変化に拠らない残留抵抗の増大によるものと考えられる。
図 6-18 の 場 合 、 磁 気 転 移 前 後 の 抵 抗 変 化 は 0.1.μΩm 程 度 で あ り 、 Vajda[29]ら
の δ=.0.16 の 場 合 と 同 程 度 と な っ て い る 。 又 、 δ.=0.26 の 場 合 よ り 変 化 は 急 激 で あ
り 、 ヒ ス テ リ シ ス を 伴 っ た 温 度 依 存 性 と な っ て い る 。 Vajda[29]ら に よ る と δ.=.0 の 場
合 の 結 晶 場 の 基 底 状 態 が Γ8 で あ り ( も し く は 、 結 晶 場 の 影 響 が ほ と ん ど な い 。 ) そ
の 4 重 縮 体 が 、 δ=0.26 に お い て 、 O サ イ ト に 侵 入 し た 水 素 に よ る 摂 動 の た め 分 裂
し 、 抵 抗 変 化 が 小 さ く な る と 説 明 さ れ て い る 。 こ の 考 え 方 に よ る と 、 SmH 2+δ (δ=0.57)
の 試 料 の 抵 抗 変 化 は 大 き く は っ き り し て お り 、 SmH 2+δ (δ=.0.57)の 試 料 の 結 晶 場 の
基 底 状 態 は Γ8 で あ る 可 能 性 も あ り 、 そ の 場 合 O サ イ ト の 摂 動 効 果 も 弱 い 。
磁 気 転 移 に 対 応 す る と 思 わ れ る 抵 抗 の 急 激 な 変 化 よ り 低 温 側 で 、 5.K 近 傍 を
極 小 値 と し 、 よ り 低 温 側 で 上 昇 し て い る 。 -logT 比 例 し て い る 温 度 領 域 も あ り 近 藤
効果による可能性も考えられる。
- 194 -
<光学伝導度>
SmH 2+δ 膜 の 反 射 ス ペ ク ト ル か ら 、 光 学 伝 導 度 を 求 め る た め に 、 低 エ ネ ル ギ ー 側
で は 、 Hagen-Rubens の 式
R(ω) = 1- 2 2
ε0ω
σDrude
(6-14)
を用いて、高エネルギー側で
R = R1(
ω1 p
)
ω
(6-15)
を 用 い て 、 外 挿 し た 。 図 6-19 に SmH 2+δ 膜 の 反 射 率 を ク ラ マ ー ス ・ ク ロ ー ニ ッ ヒ
(Kramers-Kronig)変 換 を し て 求 め た 光 学 伝 導 度 の 実 部 σ 1 (ω)を 示 す 。 図 6-20 に
σ 1 (0)か ら 求 め た
DC 抵 抗 率 と 抵 抗 率 の 実 測 値 と 各 試 料
SmH 2+δ
( δ=0.28,0.42,0.56,0.57) の H/Sm と の 関 係 を 示 す 。 全 体 的 に 実 測 し た 抵 抗 率 が
大きくなった。又、明瞭な δ 依存性は見いだせなかった。
以下の式で表される単極性ドルーデモデル
σ1(ω) =
σ0
1+ω2τ2
(6-16)
を 用 い て 、 低 エ ネ ル ギ ー 側 に て 、 σ 1 (ω)が 一 致 す る よ う に 緩 和 時 間 τ を 求 め た 。 図
6-21 に そ の 例 を 示 す 。 0.05.eV 近 傍 よ り 高 エ ネ ル ギ ー 側 で 一 致 さ せ る こ と は 困 難
であり、明らかに単極性ドルーデモデルでは説明できない。したがって、緩和時間
の異なる、 2 種類以上のキャリヤーが存在する可能性がある。
図 6-22 に 緩 和 時 間 と 各 試 料 SmH 2+δ ( δ=0.28,0.42,0.56,0.57) の 水 素 量 H/Sm
の 関 係 を 示 す 。 金 属 -非 金 属 転 移 に 近 い δ の 領 域 で 緩 和 時 間 は 増 大 し て い る 。
- 195 -
6
1.0x10
5
-1
-1
1(w)( m )
8.0x10
5
6.0x10
ST01C SmH2.28
ST01E SmH2.42
ST02C SmH2.56
5
4.0x10
ST02B SmH2.57
5
2.0x10
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Photon Energy (eV)
図 6-19
SmH 2+δ ( δ=0.28,0.42,0.56,0.57) 膜 の 光 学 伝 導 度 。
-6
5.0x10
-6
Resistivity ( m )
4.0x10
-6
3.0x10
-6
2.0x10
-6
1.0x10
0.0
2.20 2.25 2.30 2.35 2.40 2.45 2.50 2.55 2.60
H/Sm
図 6-20
SmH 2+δ ( δ=0.28,0.42,0.56,0.57) 膜 の 光 学 伝 導 度 よ り 求 め ら れ た 室 温
の DC 抵 抗 率 (■ ) と 通 常 の 抵 抗 率 ( ● ) と H/Smの 関 係 。
- 196 -
6
8.0x10
5
6.0x10
5
4.0x10
5
2.0x10
5
ST01C SmH2.28
-1
-1
1( m )
1.0x10
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Photon Energy ( eV )
図 6-21
SmH 2+δ ( δ=0.28) 膜 の 光 学 伝 導 度 ( ● )と single-Drude モ デ ル で 低 エ ネ
Relaxation Time ( sec. )
ル ギ ー 側 で 幅 が 合 う よ う に 合 わ せ た 場 合 ( ● )。
4.0x10
-14
3.5x10
-14
3.0x10
-14
2.5x10
-14
2.0x10
-14
2.20 2.25 2.30 2.35 2.40 2.45 2.50 2.55 2.60
H/Sm
図 6-22
SmH 2+δ ( δ=0.28,0.42,0.56,0.57) 膜 の 緩 和 時 間 と H/Smの 関 係 。
- 197 -
7. 本 研 究 の ま と め
本 研 究 で は 、 < 希 土 類 プ ニ ク タ イ ド Yb 4 As 3 > < 希 土 類 水 素 化 物 SmH 2+δ > の 二
系統の物質について、前者は坩堝封入法による単結晶作製、後者は薄膜による
分光学的測定用の試料作製をし、その研究を行った。
Yb 4 As 3 関 連 物 質 に つ い て は 、 蒸 気 圧 の 高 い プ ニ ク タ イ ト と の 化 合 物 作 製 に 適 し
た 坩 堝 封 入 法 を 使 用 し て 単 結 晶 、 多 結 晶 試 料 を 作 製 し 、 SmH 2+δ に つ い て は 、 石
英ガラス基板上に薄膜試料を作製して研究を行った。
<Yb 4 As 3 及 び そ の 関 連 化 合 物 >
1.Yb 4 As 3 の 抵 抗 、 ホ ー ル 係 数 、 帯 磁 率 、 比 熱 の 試 料 依 存 性
試 料 依 存 性 の 主 原 因 は 化 学 量 論 組 成 か ら の ず れ で あ り 、 単 結 晶 に お い て As
は 欠 損 し て い る 。 As の 欠 損 の 多 い 試 料 で は 電 荷 秩 序 - 無 秩 序 の 転 移 温 度 は 低
くなる。転移温度の低い試料ほど、残留抵抗や大きくなる。あるいは抵抗率の極
大 値 と 残 留 抵 抗 率 の 比 (ρ(max)/ρ(0))が 小 さ く な る 。 転 移 温 度 近 傍 で は 、 転 移 温 度
の高い試料ほどホール係数が大きい傾向を持つ。
Yb 4 As 3 に お け る 比 熱 の C/T-T の 関 係 は 、 T が 50.K -300.K
2
2
2
2
(7.1K-17.3K)の
範 囲 で は 、 ほ ぼ 直 線 に な り 、 外 挿 し て 求 め た ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 γ HT = . 240250.mJ/(K 2 .mole)で あ り 、 試 料 依 存 性 は な い 。 T 2 が 50.K 2 以 下 の 温 度 領 域 で 傾 き
は変わり、より急勾配になる。この温度領域から外挿して求めたゾンマーフェルト
係 数 γ LT = . 175-203mJ/(K 2 .mole)は 弱 い 試 料 依 存 性 が あ り 、 構 造 転 移 温 度 の 低 い
試 料 No.11 の γ LT 値 が 小 さ い 。
文 献 [16]の 試 料 や 試 料 No.12,No14 は 、 現 状 の 作 製 手 段 に お い て は 良 質 な 試
料 と 判 断 さ れ る 。 化 学 量 論 組 成 か ら の ず れ の 小 さ な 試 料 の 方 が 大 き な γ LT を 持 つ
傾 向 か ら 、 Yb 4 As 3 に お け る 比 較 的 大 き な γ LT =.160-200.mJ/(K 2 mole)は 、 格 子 欠
陥起源ではなく、この化合物の本質的な性質であると判断される。
2.Yb 4 As 3 の 重 い 電 子 系 に 関 す る 描 像
帯 磁 率 や 比 熱 か ら 見 積 も っ た 近 藤 温 度 は T k ~ 50K と な る 。 に も 関 わ ら ず 、 磁
場 中 比 熱 の 実 験 に お い て 、 僅 か 1T の 磁 場 下 で 、 比 熱 の 変 化 が 認 め ら れ た 。 こ の
ことは、重い電子系であるとの解釈を見直す切っ掛けとなった。
共 同 研 究 と し て 行 わ れ た NQR の 測 定 結 果 か ら 、 こ の 温 度 領 域 で 、 重 い 電 子 系
に お い て 一 般 的 に 成 立 す る Korringa の 関 係 [21]が 成 立 す る 温 度 範 囲 は
- 198 -
10.K-20.K と 狭 く 、 こ れ よ り 低 温 側 の 温 度 領 域 に お い て 、 温 度 が 低 下 す る に つ れ
て 1/T 1 T は 上 昇 す る こ と が 判 明 し た 。 す な わ ち 、 7.K 以 下 の 帯 磁 率 の 上 昇 は 、 不
純 物 に よ る も の で は な く 、 本 質 な も の で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 Yb 4 As 3 に お い
てフェルミ流体の描像は成立しない。
隣 接 ス ピ ン 同 士 が 反 強 磁 性 に 相 互 作 用 し て い る 、 ス ピ ン 1/2 の 一 次 元 ハ イ ゼ ン
ベ ル グ モ デ ル (1D-HAF)系 と し て の 振 る 舞 い 、 す な わ ち 、 量 子 ス ピ ン 系 の 一 次 元 反
強 磁 性 体 ス ピ ン 波 の 分 散 の た め に Yb 4 As 3 の 温 度 に 比 例 す る 比 熱 の 項 が 表 れ 、
こ れ が 見 か け 上 ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 の 形 を 持 つ γT の 起 源 で あ る と 説 明 さ れ る 。
3.Yb 4 Bi 3 Yb 4 Sb 3 Yb 4 As 3 の 比 熱 (2-30K)と デ バ イ 温 度
Yb 4 As 3 の 比 熱 デ バ イ 温 度 と し て 妥 当 な の は 、 C/T の T 2 依 存 性 の 2.K-7.K の 温
度 範 囲 か ら 外 挿 し て 求 め た θ D(LT) で は な く 、 10.K-17.K の 温 度 範 囲 か ら 外 挿 し て
求 め た θ D(HT) で あ る 。 Yb 4 X 3 (As,Sb,Bi)の プ ニ ク ト ゲ ン 元 素 が 軽 く な る に つ れ て 、 デ
バ イ 温 度 θ D(HT) は 高 く な り 、 β HT 値 は 小 さ く な る 。
Yb 4 As 3 の 量 子 ス ピ ン 系 の 比 熱 を 見 積 も る た め に Gegenwart ら [91]及 び
Kamieniarz ら [92]は β の 値 を 5.K-10.K 付 近 で 決 め て い る 。 そ の た め 格 子 振 動 の
寄与をより大きめに差し引いている。
- 199 -
< SmH 2+ δ ま と め >
1. SmH 2.16 帯 磁 率 、 比 熱 と 結 晶 場
帯磁率の温度依存性について、転移を示す明瞭な変化は無かった。しかしな
が ら 逆 帯 磁 率 に は 、 15.2.K 、 10.6.K に 折 れ 曲 が り が 、 7.0.K に 変 極 点 が 存 在 す
る。
3.0 K で の 磁 化 は 、 上 に 凸 の カ ー ブ と な る 。 30 K で の 磁 化 は 直 線 と な る 。 帯 磁
率 に お け る 常 磁 性 領 域 の 温 度 変 化 は 、 Sm 、 結 晶 場 の 基 底 状 態 は Γ 8 、 結 晶 場
3+
分 裂 の 大 き さ ΔE Γ7-Γ8 ..=200.K 、 J=5/2 と J=7/5 間 の エ ネ ル ギ ー 差 ΔE J =1900.K と
し て 説 明 さ れ る 。 こ の ΔE J の 値 は 、 NMR の ナ イ ト シ フ ト よ り 見 積 も っ た
ΔE J =1400.K[46]よ り 大 き い 。
比 熱 の 温 度 変 化 に は 、 7.1 K 、 10.8 K 、 15.9 K に 磁 気 転 移 を 示 す と 思 わ れ
るピ-クがある。
比 熱 の 温 度 変 化 の 内 30-200.K の 範 囲 は 、 結 晶 場 の 基 底 状 態 を Γ 8 と し て ,結 晶
場 分 裂 の 大 き さ ΔE Γ7-Γ8
=100.K と し て 説 明 さ れ る 。 こ の 時 、 結 晶 場 の 基 底 状 態 は
Γ8 で あ る 。
帯 磁 率 及 び 比 熱 の 解 析 か ら サ マ リ ウ ム は 3 価 で あ り (Sm )結 晶 場 の 基 底 状 態 は
3+
Γ8 で あ る と 考 え ら れ る 。
7.1 K 以 下 で 比 熱 の 温 度 依 存 性 は Antiferromagnetic spin wave 的 で あ り 、 見
積 も っ た ゾ ン マ ー フ ェ ル ト 係 数 は γ LT =150 mJ/(K mole)で あ る 。
2
一 番 高 い 転 移 温 度 に お い て も 、 エ ン ト ロ ピ ー は Γ8 を 基 底 状 態 と し た 場 合 の
55%し か な く 、 γ LT =150 mJ/(K mole)で あ る こ と と 整 合 性 の あ る 結 果 と な っ た 。
2
2. SmH 2+δ ( δ=0.28,0.42,0.56,0.57 ) 膜 の 分 光 学 的 特 徴
プ ラ ズ マ 端 を 思 わ せ る 反 射 率 の 極 小 値 は 1.3-2.4.eV 近 傍 の 赤 外 領 域 に あ り 、 δ
が 増 加 す る に つ れ て 低 エ ネ ル ギ ー 側 に レ ッ ド シ フ ト す る 。 3-3.5.eV に ブ ロ ー ド な
極大値があり、このピークも δ が増加するにつれて低エネルギー側にレッドシフト
する。
0.4.eV-3.eV に 光 を 透 過 さ せ る 領 域 が あ る 。 透 過 率 が 最 大 と な る の は 、 ど の 試 料
- 200 -
も 1eV 近 傍 に あ り 、 δ 依 存 性 は 少 な い 。 T サ イ ト の 水 素 H の 1s か ら 成 る 価 電 子
帯 (Γ’ 2 )と Sm の 5d か ら 成 る 伝 導 帯 と の 間 の 光 学 的 な ギ ャ ッ プ は お よ そ 2.6eV で
あり、直接遷移である。これより低エネルギー側の吸収について、直接遷移を仮
定した場合、 O サイトの水素 H
と Sm の 5d か ら 成 る 伝 導 帯 と の ギ ャ ッ プ は お よ そ
1.5eV 、 し か し な が ら こ の 遷 移 は 、 例 え ば 、 χ 1 の フ ェ ル ミ レ ベ ル か ら 伝 導 帯 (Γ’ 25 )へ
の間接遷移である可能性も高い。
抵 抗 の 温 度 変 化 か ら SmH 2+δ 膜 は 金 属 的 な 伝 導 を 持 つ が 、 抵 抗 率 の 値 に δ
依存性は現れなかった。
SmH 2+δ (δ=0.57)の 試 料 の み 0.35.K-28.K
の抵抗温度変化を測定し、降温時に
10.K 、 昇 温 時 に 14.K 近 傍 に 極 大 値 を 持 ち 、 よ り 低 温 側 で 、 抵 抗 率 は 減 少 す る 磁
気 転 移 に 対 応 す る ハ ッ キ リ と し た 抵 抗 変 化 を 観 測 し た 。 5.K 近 傍 を 極 小 値 と し 、 よ
り低温側で上昇する抵抗変化を観測した。
光 学 伝 導 度 の 実 部 σ 1 (ω)の ス ペ ク ト ル は 、 単 極 性 ド ル ー デ モ デ ル で は 説 明 で き な
い 。 2 種 類 以 上 の キ ャ リ ヤ ー が 存 在 す る 可 能 性 が あ る 。 金 属 -非 金 属 転 移 に 近 い δ
の領域で緩和時間は増大している。
- 201 -
APPENDIX
A-1 等 価 演 算 子 に よ る 立 方 晶 結 晶 場 の 計 算 Ce ,Sm
(J=5/2)
3+
3+
Stevens の 等 価 演 算 子 を 導 入 す れ ば 、 結 晶 場 の ハ ミ ル ト ニ ア ン は 以 下 の 式 と な る
[101]。
BnmOnm
HCEF =
n,m
立方晶の結晶場の場合、結晶場のハミルトニアンは 4 次の項だけになり、
0
0
4
0
0
4
HCEF = B (O + 5O ) + B (O - 21O )
4
4
4
6
6
6
更 に 、 Ce や Sm の 場 合 J = 2/5 で あ り 、 O 6 0 = O 6 4 = 0 と な る 。
3+
3+
ところで、角運動量のオペレータは以下の式である。
Jz|J.M> = M|J.M>
2
J |J,M> = J(J+1)|J,M>
J±|J,M> =√ J(J+1)-M(M±1)|J,M±1>
角運動量のオペレータを使用すると例えば
O40 = 35JZ 4 -30J(J+1)JZ 2+25JZ 2 -6J(J+1)+3J2(J+1)2
などを計算すれば良い。
On
は こ の よ う な 角 運 動 量 の オ ペ レ ー タ を 用 い て 計 算 可 能 で あ る が 、 Hutching
m
な ど に よ り 一 覧 表 が 作 ら れ て い る の で こ れ を 利 用 す れ ば よ い [102]。
Ce や Sm の 場 合 の 結 晶 場 ハ ミ ル ト ニ ア ン は 以 下 式 と な る 。
3+
3+
|5/2> |3/2> |1/2> |-1/2> |-3/2> |-5/2>
H CEF = 60B 4 0
<5/2|
<3/2|
<1/2|
<-1/2|
<-3/2|
<-5/2|
1
0
0
0
0
0
0
-3
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
- 202 -
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
-3
0
0
0
0
0
0
1
|5/2> |3/2> |1/2> |-1/2> |-3/2> |-5/2>
+5*12B 4 0
<5/2|
<3/2|
<1/2|
<-1/2|
<-3/2|
<-5/2|
0
0
0
0
√5
0
0
0
0
0
0
√5
|5/2>
|3/2>
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
√5
0
0
0
0
0
0
√5
0
0
0
0
あるいは
HCEF =
|1/2>
|-1/2>
60B40
<5/2|
|-3/2>
|-5/2>
60√5B40
<3/2|
-180B4
0
60√5B4
<1/2|
120B4
0
0
120B40
<-1/2|
<-3/2|
60√5B4
0
-180B4
60√5B40
<-5/2|
|5/2,-1/2>, |5/2,1/2>
0
60B40
はすでに固有状態になっていることが判る
状態の順序を変えて
|J.M> = |5/2, -5/2>,
|5/2,3/2>, |5/2,-3/2>, |5/2,5/2>, |5/2,-1/2>, |5/2,1/2>と す る と 、
|-5/2> |3/2> |-3/2> |5/2> |-1/2> |1/2>
H CEF = 60B 4
0
<-5/2|
<3/2|
<-3/2|
<5/2|
<-1/2|
<-1/2|
1
0
0
0
0
0
0
-3
0
0
0
0
0
0
-3
0
0
0
- 203 -
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
2
|-5/2> |3/2> |-3/2> |5/2> |-1/2> |1/2>
+5*12B 4
<-5/2|
<3/2|
<-3/2|
<5/2|
<-1/2|
<-1/2|
0
0
√5
0
0
0
0
√5
0
0
0
0
0
0
0
0
√5
0
0
0
0
√5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
J.M> = |5/2,-1/2>, |5/2,1/2>の 場 合
であり
H CE F = 120B 4 0
|5/2,5/2>の 場 合
|J.M> = |5/2, -3/2>,
H CEF
-3
0
60B 4 0
=
0
+ 6 0B 4 0
1
0
√5
√5
0
0
√5
√5
0
√5
1
-3
√5
あ る い は 、 H C EF = 60B 4 0
|5/2,3/2>の 場 合
|J.M> = |5/2, -5/2>,
0
-3
1
0
60B 4 0
H CEF =
固 有 値 は 120B 4 0
+ 6 0 B 40
1
√5
あ る い は 、 H C EF = 60B 4 0
√5
-3
この場合を計算すると
√5
-3-ε
1-ε
√5
ε=2
=(1-ε)(-3-ε)-5 = 0 よ っ て
ε=2,ε=-4 と な る
の場合
1
√5
√5
x
x
= 2
-3
x+√ 5y = 2x
y
y
から
x=√ 5y と な る
固 有 値 は 120B 4 0
規格化すると固有関数は次のように成る。
- 204 -
√5/√6
x
=
y
ε=-4
1/√6
の場合
1
√5
√5
x
x
= -4
-3
y
y
固 有 値 は -240B 4 0
規格化すると固有関数は
x
1/√6
=
y
√5/√6
固有値で整理すると
固 有 値 は 120B 4 0 の 状 態 は 4 重 に 縮 退 し て お り (Γ 8 )
固 有 値 は -240B 4 0 の 状 態 は 2 重 に 縮 退 し て い る (Γ 7 )。
固 有 値 は 120B 4 0 の 状 態 の 波 動 関 数 は
φ 1 (Γ 8 )=|5/2,1/2>
(=|Γ 8 λ >:λ),
φ 2 (Γ 8 )=|5/2,-1/2>
κ
φ 3 (Γ 8 )=√ 5/√ 6|5/2,-5/2>+1/√ 6 |5/2,3/2>
(=|Γ 8 >:κ)
φ 4 (Γ 8 )=√ 5/√ 6|5/2,5/2>+1/√ 6 |5/2,-3/2>
(=|Γ 8 ν >:ν)
固 有 値 は 120B 4 0 の 状 態 の 波 動 関 数 は
φ 1 (Γ 7 )=1/√ 6|5/2,-5/2>-√ 5/√ 6|5/2,3/2>
(=|Γ 7 β >:β)
φ 2 (Γ 7 )=1/√ 6|5/2,5/2>-√ 5/√ 6|5/2,-3/2>
(=|Γ 7 >:α)
- 205 -
α
(=|Γ 8 μ >:μ)
A-2 結 晶 場 に よ る 帯 磁 率 の 計 算 Ce ,Sm
3+
7α
の行列要素を求める。 すなわち、→
Jz
7α
7β
8ν
8κ
8λ
8μ
を計算する。
α
α
α
β
7β
(J=5/2)
3+
8ν
8κ
8λ
8μ
?
<Γ 7 |Jz|Γ 7 > =1/6<5/2|Jz|5/2>+5/6<-3/2|Jz|-3/2>=1/6(5/2)+5/6(-3/2)=(5-15)/12=5/6
<Γ 7 |Jz|Γ 7 > =0
<Γ 7 α |Jz|Γ 8 ν >=√ 5/6<5/2|Jz|5/2>-√ 5/6<-3/2|Jz|-3/2>=√ 5/6(5/2)-√ 5/6(-3/2)
=8 √ 5/12=2 √ 5/3
<Γ 7 β |Jz|Γ 8 μ > =0
β
λ
<Γ 7 |Jz|Γ 8 > =0
以下省略
結局、行列は以下の形となる。
<Γ7|
|Γ7>
|Γ7>
|Γ8>
-5/6
0
2√5/3
<Γ7|
<Γ8|
<Γ8|
5/6
2√5/3
|Γ8>
|Γ8>
|Γ8>
-2√5/3
11/6
-2√5/3
-11/6
<Γ8|
1/2
<Γ8|
-1/2
- 206 -
結晶場を含む帯磁率は以下の式で表される。
|<i|JZ|i>|2 exp(-Ei/kBT)
( gJ μB )
2
χ=
(
i
kBT
exp(-Ei/kBT)
|<j|JZ|i>|2exp(-Ei/kBT)-exp(-Ej/kBT)
+
i
Ej-Ei
j(≠i)
i
Γ 7 -Γ 8 間 の エ ネ ル ギ ー 差 を Δ で 書 く と 帯 磁 率 は 、
Γ7 が 基 底 状 態 の 場 合
Σ
exp(-E i /k B T) = 2+4exp(-Δ/k B T)=2(1+2exp(-Δ/k B T))
Σ |<i|Jz|i>| exp(-E i/k B T)=2*(5/6) +(2*(11/6) +2*(1/2)
2
2
2
2
)exp(-Δ/k B T)
=2*(25/36)+2*(65//18)exp(-Δ/k B T)
ΣΣ |<j|Jz|i>| ( exp(-E i /k B T)-exp(-E j /k B T))/(E j -E i))
2
=( (80/9) (1-exp(-Δ/k B T)) /Δ=2*( (40/9) (1-exp(-Δ/k B T))
25
( gJ μB )
(
χ=
1+2exp(-Δ/kBT)
2
36
+
65
18
exp(-Δ/kBT)
+
kBT
40(1-exp(-Δ/kBT))
9Δ
)
Γ8 が 基 底 状 態 の 場 合
Σ
exp(-E i /k B T) =4+2exp(-Δ/k B T)=2(2+exp(-Δ/k B T))
Σ |<i|Jz|i>| exp(-E i /k B T)=2*(11/6) +2*(1/2)
2
2
2
+2*(5/6) exp(-Δ/k B T)
2
=2*(65/18)+2*(25/36)exp(-Δ/k B T)
帯磁率は、
( gJ μB )
(
2+exp(-Δ/kBT)
2
χ=
65
25
+
exp(-Δ/kBT)
18
36
kBT
+
- 207 -
40(1-exp(-Δ/kBT))
9Δ
)
)
J 多 重 項 に よ る 帯 磁 率 の 計 算 Eu 3+ ,Sm 2+ ,Sm 3+
A-3
配 向 効 果 と 分 極 の 共 存 す る 一 般 的 な 帯 磁 率 χ は [103]
(2J+1)exp(-Ej/kBT){
j
χ=
J(J+1)( gJ μB )2
+ α}
3kBT
(2J+1)exp(-Ej/kBT)
j
となる。ただし、
lB2
a =
6(2J+1)
<Eu 3+ , Sm 2+
F(J+1) F(J)
EJ+1-EJ EJ-1-EJ
F J =
L+S+1 2-J2
J
J2- S-L
2
の場合>
基 底 状 態 L=3, S=6/2, J=0 か ら
2
F(J+1) = F(1)=[(3+3+1) -1][1]=48
励 起 状 態 L=3, S=6/2
α =8μ B /(E 1 -E 0 )
2
J=1 か ら
2
F(J+1) = F(2)={[(3+3+1) -4][4-0]/2}=90
F(J)=F(1)=48
α =μ B [(90/18)/(E 2 -E 1 ) -(48/18)/(E 1 -E 0 )]=5μ B 2 /(E 2 -E 1 )-8μ B 2 /[3(E 1 -E 0 )]
2
又
g J =1
し た が っ て 配 向 効 果 ( 基 底 状 態 の 場 合 、 キ ュ リ ー 項 : こ の 場 合 は 0 ) と VanVleck
項を含む式は以下の形となる。
χ =N*
μ B 2 {8/(E 1 -E 0 )+exp(-E 1 /k B T)[(2/(k B T)+15/(E 2 -E 1 )-8/(E 1 -E 0 )]
1+3exp(-E 1 /k B T)
VanVleck 項 の み を 書 き 出 す と
χ =N*
μ B {8/(E 1 -E 0 )+exp(-E 1 /k B T)[15/(E 2 -E 1 )-8/(E 1 -E 0 )]
2
1+3exp(-E 1 /k B T)
- 208 -
<Sm 3+ の 場 合 >
基 底 状 態 L=5, S=5/2, J=5/2
2
2
2
2
F(J+1) =F(7/2)=[(5+5/2+1) -(7/2) ][(7/2) -(5/2-5) ](2/7)=[60][6](2/7)=720/7
α =μ B 2 /(36)[(720/7)/(E 1 -E 0 )]=20μ B 2 /[7(E 1 -E 0 )]
g J =1+[(5/2)(7/2)+(5/2)(7/2)-30](2/35)=1+(-50/4)(2/35)=1-5/7=2/7
励 起 状 態 L=5, S=5/2, J=7/2
F(J+1)=F(9/2)=
[(5+5/2+1) 2 -(9/2) 2 ][(9/2) 2 -(5/2-5) 2 ]/(9/2)=(103/2)6(2/9)=618/9=206/3
2
2
2
2
F(J)=F(7/2)= [(5+5/2+1) -(7/2) ][(7/2) -(5/2-5) ]/(7/2)=720/7
α
=(μ B 2 /48)[206/(3(E 2 -E 1 ))+720/7(E 1 -E 0 )]=[μ B 2 /(E 2 -E 1 )](103/72)+[μ B 2 /(E 1 -E 0 )](15/7)
g J =1+[(5/2)(7/2)+(5/2)(7/2)-30](2/63)=1-(25/63)=(63-25)/63=38/63
配 向 効 果 ( 基 底 状 態 の 場 合 、 キ ュ リ ー 項 ) と VanVleck 項 を 含 む 式 は
以下の式となる。
χ =N*
2
2
2
2
(12/35)μ B (35/(2k B T))+120μ B /[7(E 1 -E 0 )]+8exp(-E 1 /k B T)(38/63) μ B (4/63)(1/(3k B T))+
6+8exp(-E 1 /k B T)
2
2
+8exp(-E 1 /k B T){[μ B /(E 2 -E 1 )](103/72)+[μ B /(E 1 -E 0 )](15/7)}
6+8exp(-E 1 /k B T)
Sm の 場 合 VanVleck 項 は 以 下 の 式 と な る 。
3+
χ
VanVleck
=N*
120μ B 2 /[7(E 1 -E 0 )] +8exp(-E 1 /k B T){[μ B 2 /(E 2 -E 1 )](103/72)+[μ B 2 /(E 1 -E 0 )](15/7)}
6+8exp(-E 1 /k B T)
- 209 -
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7 9 . "重 い 電 子 系 の 物 理 "
上田和夫、大貫惇睦
裳 華 房 1999.
Dzyaloshinski-Moriya 相 互 作 用
80. "Field-Induced Gap Formation in Yb 4 As 3 "
M.Oshikawa, K.Ueda, H.Aoki, A.Ochiai, M.kohgi
Journal of the Physical Society of Japan
68(1999)3181.
81. "磁 場 中 の Cu benzoate と sine-Gordon 場 の 理 論 "
M.Oshikawa( 押 川 正 毅 )
固体物理
34(1999))630.
82. "Effective Hamiltonian for Charge-Ordered Yb 4 As 3 "
- 219 -
H.Shiba, K.Ueda, O.Sakai
Journal of the Physical Society of Japan 69(2000)1493.
1-D-AF 計 算
83. "Solitary Magnetic Excitations in the Low-Carrier Density, oneDimensional S=1/2 Antiferromagnet Yb 4 As 3 "
M.Köppen,
M.Lang,
R.Helfrich,
F.Steglich,
P.Thalmeier,
B.Schmidt,
B.Wand, D.Panker, H.Benner, H.Aoki, A.Ochiai
Physical Review Letters
82 (1999) 4548.
84. "Specific-heat contribution from magnetic solitons in the linear antiferromagnet TMMC{(CH 3 ) 4 NMnCl 3 }"
F.Borsa
Physical Review B
25 (1982) 3430.
85. "Solitons in the liner-chain antiferromagnet"
K.M.Leung, D.W.Hone, D.L.Mills, P.S.Riseborough, S.E.Trullinger
Physical Review B
21 (1980) 4017.
86. "Evidence for magnons and solitons in the one-dimensional S=1/2
antiferromagnet Yb 4 As 3 "
M.Lang, M.Köppen, P.Gegenwart, T.Cichorek, P.Thalmeier, F.Steglich,
A.Ochiai
Physica B 281&282(2000)458.
87. "Staggered Field Effect on the One-Dimensional S=1/2 Antiferromagnet
Yb 4 As 3 "
M.Kohgi, K.Iwasa, J-M.Mignot, B.Fåk, P.Gegenwart, M.Lang, A.Ochiai,
H.Aoki, T.Suzuki
Physical Review letters
86(2001)2439.
Yb 4 (As 1-x , Sb x ) 3 の 比 熱
88. "Systematic study in mixed valence system Yb 4 (As 1-x , Sb x ) 3 "
H.Aoki, A.Ochiai, T.Suzuki, R.Helfrich, F.Steglich
Physica B 230-232(1997)698.
- 220 -
89. "Susceptibility of the Spin 1/2 Heisenberg Antiferromagnetic Chain"
S.Eggert, I.Affleck, M.Takahashi
Pysical Review letters
73(1994)332.
帯磁率異方性
90. "Magnetic anisotropy in Yb 4 As 3 with one-dimentional Yb
3+
chains"
H.Aoki, A.Ochiai, M.Oshikawa, K.Ueda
Physica B 281-282(2000)465.
91. "Thermodynamic and transport properties of the one-dimensional S=1/2
antiferromagnet Yb 4 As 3 "
P.Gegenwart, H.Aoki, T.Cichorek, J.Custers, N.Harrison, M.Jaime,
M.Lange, A.Ochiai, F.Steiglich
Physica B 312-313(2002)315.
92. "Field-dependence specific heat and magnetization for the S=1/2
antiferromagnetic chain Yb 4 As 3 : simulation and experiments"
G.Kamieniarz, R.Matysiak, P.Gegenwart, H.Aoki, A.Ochiai
Jornal of Magnetism and Magnetic Materials 290-291(2005)353.
93. "Liner Magnetic Chains with Anisotropic Coupling"
J.C.Bonner, M.E.Fisher
Physical Review B
135(1964) A640.
94. "金 属 の 高 温 酸 化 -エ リ ン ガ ム 図 の 見 方 "
丸山俊夫(編集委員会)
材料と環境
45(1996)495.
95. K.A.Gschneidner,Jr.,L.Eyring,(ed):Handbook on the Physics and
Chemistry of Rare Earth, Nor-Holland, Amsterdam 4(1979)299 through
足立吟也
96
編
希土類の科学
化 学 同 人 (1999).
"分 子 線 エ ピ タ キ シ ー 技 術 "
高橋清 編著
工業調査会
1984.
- 221 -
97
"Annealing temperature dependence of Tc of thin-films Gd grown on a
glass substrate."
O.Nakamura, K.Baba, H.Ishii, T.Takeda
Joural of Applied Physics
98
64(1988) 361 4.
"From intermediate valence to magnetic behavior without long-range order
by hydrogenation of the ternary gallide CeNiGa"
B.Chevalier, J.S. Marcos, J.R.Fernandez, M.Pasturel, F.Weill
Physical Review B 71(2005)214437.
99
"Roles of High-Frequency Optical Phonons in the Physical Properties of the
Conductive Delafossite PdCoO 2 "
H.Takahashi, S.Yonezawa, S.Mouri, S.Nakatsuji, K.Tanaka, and Y.Maeno
Jornal of the Physical Society of Japan
76(2007)104701.
100 "Theory for metal hydrides with switchable optical properties"
K.K.Ng, F.C.Zang, V.I.Anisimov, T.M.Rice
Physical Review B 59(1999)5398.
101 "Matrix Elements and Operator Equivalents Connected with the Magnetic
Properties of Rare Earth Ions"
K.W.H.Stevens
Proceedings of the Physical Society A65(1952)209.
102 "Point-Charge Calculation of Energy Levels of Magnetic Ions in Crystalline
Electeric Field"
M.T.Hutchings
Solid State Phys. 16(Academic Press 1965)227.
103 "化 合 物 磁 性
局在スピン系"
安達健五 著
裳 華 房 (1996).
- 222 -
公表論文リスト
関連論文
本博士論文の内容は以下の論文にて公開済みである。
1. "Magnetic and transport properties in Yb 4 As 2.7 P 0.3 "
O.Nakamura, A.Oyamada, A.Ochiai, S.Kunii, T.Takeda, T.Suzuki,
T.Kasuya
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 76-77 (1988) 293.
2. "Magnetic and transport properties in Yb 4 As 3-x Sb x ”
O.Nakamura, Y.S.Kown, A.Ochiai, T.Takeda, T.Suzuki, T.Kasuya
Physica B
163(1990)638.
3. "Specific heat in a magnetic field for the extremely low carrier
system Yb 4 As 3 "
O.Nakamura, N.Tomonaga, A.Ochiai, T.Suzuki, T.Kasuya
Physica B 171(1991)377.
4. "Nuclear magnetic relaxation of low carrier system Yb 4 As 3 "
H.Nakamura, S.Hirooka, Y.Kitaoka, K.Asayama, O.Nakamura,
T.Suzuki, T.Kasuya
Physica B 171(1991)242.
5. "Specific heat of Yb pnictides with anti-Th 3 P 4 structure"
A.Ochiai, E.Hotta, Y.Haga, T.Suzuki, O.Nakamura
Journal of Magnetism and Magnetic Materials
140-144(1995)1249.
6. "Optical and Transport Properties of SmH 2+δ (0.25< δ <0.6)"
O.Nakamura, Y.Tanaka, M.Sakai, T.Nanbo, K.Koyama, Y.Uwatoko,
S.Orimo
Physica B
378-380(2006)1138.
7. "Specific Heat of Superstoichiometric Samarium Dihydride(SmH 2+δ )"
O.Nakamura, Y.Tanaka, K.Nakazawa, T.Nakano, M.Sakai,
S.Orimo, Y.Uwatoko
Journal of Magnetism and Magnetic Materials
8. " D ie l e ct ri c
f unc t i on
ana l ys i s
of
310(2007)e65.
s u per s t oi chi om et ri c
dihydride films"
M. Sakai, T.Nanbo, Y.Tanji, O.Nakamura, M.Endo, H.Tajima
Journal of Applied Physics
105(2009)083512.
s am ari um
その他公表論文
1.
"Annealing temperature dependence of T c of thin-films Gd grown on
a glass substrate."
O.Nakamura, K.Baba, H.Ishii, T.Takeda
Joural of Applied Physics 64(1988) 3614.
2.
"Ce 4 Sb 3 : a ferromagnetic system with Kondo behavior"
T.Suzuki, O.Nakamura, N.Tomonaga, S.Ozeki, Y.S.Kown, A.Ochiai,
T.Takeda, T.Kasuya
Physica B
3.
163(1990)131.
"Kondo behaviour in an extremely low carrier concentration system:
CeP”
Y.S.Kwon, Y.Haga, O.Nakamura, T.Suzuki, T.Kasuya
Physica B 171(1991)324.
4.
"On the common feature of the optical reflectivity in rare-earth
monopnictides due to 5d electron screening"
Y.S.Kwon, M.Takesige, O.Nakamura, T.Suzuki, T.Kasuya
Physica B 171(1991)316.
5.
"Transport and magnetic properties of Sm monopnictides"
S.Ozeki, Y.Ohe, Y.S.Kwon, Y.Haga, O.Nakamura, T.Suzuki,
T.Kasuya
Physica B 171(1991)286.
6.
"Antiferromagnetism and heavy-fermion effects in a semiconductor:
Sm 3 Te 4 "
U. Ahlheima, K. Fraasa, P. H. P. Reindersa, F. Steglicha,
O.Nakamura, T. Suzukib and T. Kasuya
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 108(1992)213.
7.
"Charge-ordering in Sm 4 Bi 3 and Yb 4 As 3 with the anti-Th 3 P 4 strucre"
A.Ochiai, D.X.Li, Y.Haga, O.Nakamura and T.Suzuki
Physica B 186-188 (1993) 437.
8.
"Development of Yttrium-Dihydride Film for Use in Cold Cathode
Lamps"
O.Nakamura, M. Kanbara, S. Suzuki, Y. Mori
Japan Journal of Applied Physics
9.
39 (2000) 4933.
"Electron Transport and Optical Properties of Hydrogen Deficient
YH 2 Films"
M. Sakai,
T.Kontani,
O.Nakamura,
K.Taketyama,
Y.Uwatoko,
Y. Obi and K. Takanashi
Japan Journal of Applied Physics
43 (2004) 681.
10. "Ta-Si-O-N 系 薄 膜 発 熱 抵 抗 体 の 開 発 "
田中幸一
竹山啓之
電気学会論文誌E
寺崎
努
中村
修
128(2005) 355.
11. "Development of multi-layered microreactor with methanol
reformer for small PEMFC"
T.Terazaki, M.Nomura, K.Takeyama, O.Nakamura, and
T.Yamamoto
Journal of Power Souce
145(2005)691.
12. "Small PEMFC System with Multi-layered Microreactor"
N.Ogura, Y.Kawamura, T.Yahata,
K.Yamamoto, T.Terazaki,
M.Nomura, K.Takeyama,O.Nakamura, T.Namai, T.Terada, H.Bitoh,
T.Yamamoto, A.Igarashi
電 気 学 会 論 文 誌 E 126(2006)54.
13. "Galvanomagnetic properties of super- and substoichiometric
yttrium dihydrides"
M.Sakai, T.Nanbo, Y.Tanji, N.Miyazaki, O.Nakamura, Y.Uwatoko,
H.Tajima
Journal of Magnetism and Magnetic Materials
310(2007)e59.
14. "Magneto-Transport Properties in Near -Stoichiometric Hydride
Films of YH 2+δ under Weak Fields"
M.Sakai, T.Nanbo, O.Nakamura, Y.Uwatoko,
Journal of Applied Physics
101(2007)103713.
H.Tajima
謝辞
本研究をまとめるにあたり、数多くの適切なご指導をいただいた、広島大学の小
島健一教授に心より感謝を述べたいと思います。大変ありがとうございました。
本研究をまとめるにあたり、貴重なご助言をいただいた、広島大学の宇田川眞行
教授、浴野稔一教授、荻田典夫博士、東谷誠二博士に心より感謝を申し上げま
す。
本研究の前半は、東北大学理学部に出向中の研究成果まとめたものです。数多
くのご指導をいただいた元東北大学の鈴木孝教授に心より感謝を述べたいと思い
ます。大変ありがとうございます。又、試料作製などの面で貴重なご助言をいただ
いた、東北大学の落合明博士に心より感謝を申し上げます。又、実験上の助言や
議論をしていただいた、小山田明博士に心より感謝を申し上げます。
東北大学理学部への出向の機会を与えて下さった、元上司の竹田恒治博士に心
より感謝を申し上げます。
本研究の後半は、東京大学物性研究所、埼玉大学工学部との共同研究成果の一
部をまとめたものです。共同研究をしていただき、又、貴重なご助言をいただいた
上床美也博士、酒井政道博士に心より感謝を申し上げます。
このほかに、ここには書ききれないほどの方々に、ご指導、助言、援助をいただき
ました。本研究は皆様のご支援の賜であります。心より感謝を申し上げます。
2009 年 12 月
中村
修
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