8.消費者余剰と等価変分・補償変分
8.1 支出最小化問題と補償需要関数
8.2 補償需要曲線と無差別曲線との関係
8.3 補償変分と等価変分
8.4 (マーシャルの)需要関数と補償需要関数
8.5 補償変分、等価変分、消費者余剰の増分
1
8.1 支出最小化問題と補償需要関数
p =財 x の価格
財 y の価格=1
E =支出額(expenditure)
E  px  y :支出額
(8-1)
I :無差別曲線
2
<支出最小化問題>
無差別曲線 I 上の消費量の組 ( x, y ) のなかで支出額 E  px  y を
*
*
最小にする消費量の組 ( x , y ) を求める問題である。
x * =財 x の補償需要量
y * =財 y の補償需要量
Compensated Demand Function
x  xdC ( p, I ) :財 x の補償需要関数
y  ydC ( p, I ) :財 y の補償需要関数
E ( p, I ) =支出最小化問題で求められる支出額
E( p, I )  p  xdC ( p, I )  ydC ( p, I ) :補償所得
E  E ( p, I ) :支出関数
(8-2)
(8-3)
Compensating Income
(8-4)
3
(問題 8-1)無差別曲線 I と価格が p j が与えられたもとでの補償需要量 xdC ( p j , I ) 、
y dC ( p j , I ) 、補償所得 E ( p j , I ) を図示しなさい( j  1, 2 )。また、補償需要曲線
x  xdC ( p, I ) を図示しなさい。
E ( p1 , I )
E( p 2 , I )
y
ydC ( p1, I )
ydC ( p 2 , I )
I
p1
p2
x
xdC ( p1, I ) xdC ( p2 , I )
p
p1
p2
・
・
xdC ( p1, I ) xdC ( p2 , I )
x  xdC ( p, I )
x
4
8.2 補償需要曲線と無差別曲線との関係
問題 8-1 で描いた下段の図のなかに、次の図のようにⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳを描き加えることにす
る。そして、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳでそれらが入っている図形の面積を表すことにする。
p
x  xdC ( p, I )
p1
Ⅰ
p2
Ⅲ
Ⅱ
Ⅳ
xdC ( p1 , I ) xdC ( p 2 , I )
x
5
「補償需要曲線 x  xdC ( p, I ) 、直線 x  xdC ( p1 , I ) 、直線 x  xdC ( p 2 , I ) 、横軸 p  0 で囲ま
れる部分の面積」を S1 ( p1 , p 2 , I ) と表すことにしよう。
(問題 8-2) S1 ( p1 , p 2 , I ) をⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳで表しなさい。
p
x  xdC ( p, I )
p1
S1 ( p1 , p 2 , I ) =Ⅱ+Ⅳ
Ⅰ
p2
Ⅲ
Ⅱ
Ⅳ
xdC ( p1 , I ) xdC ( p 2 , I )
x
そのとき、
(8-5)
S1 ( p1 , p 2 , I )  ydC ( p1 , I )  ydC ( p 2 , I )
の関係が成立する。ここに、 y dC ( p j , I ) は財 y の補償需要量である( j  1, 2 )
。なお、この
性質は、この節の後半で説明することにする。
プリントと議論の順番を変えて直ぐに
6
<特殊ケースにおける(8-5)の導出>
無差別曲線が部分的に直線になっている特殊ケースについて、(8-5)の成立することを示そう。
その無差別曲線 I は、下の上段の図のように、 x が xˆ k 1 から x̂k までの範囲の限界代替率が
MRSk で一定であるとする( k  1, 2, 3 かつ xˆ 0  0 )。そして、簡単化のために
MRS1  p1  MRS2  p 2  MRS3
(8-7)
を仮定する。そのとき、支出を最小化する消費点 ( xdC ( p j , I ), ydC ( p j , I )) は無差別曲線の屈
折点 ( xˆ j , I ( xˆ j )) に一致する( j  1, 2 )。すなわち、財 x と財 y の補償需要量は、それぞれ
xdC ( p j , I )  xˆ j 、 ydC ( p j , I )  I ( xˆ j ) と求められることになる。
7
y
I または y  I (x)
C
d
1
y ( p , I)
S1 ( p1 , p 2 , I )  MRS2  ( xˆ2  xˆ1 )  ydC ( p1 , I )  ydC ( p 2 , I )
MRS1
MRS2
ydC ( p2 , I )
MRS3
p
x̂1
1
p
2
x
x̂3
x̂2
p
補償需要曲線
MRS1
p1
MRS2
S1 ( p1 , p 2 , I )
p2
MRS3
x̂1
x̂2
x
(問題 8-6)上の上段の図と下段の図それぞれに S1 ( p1 , p 2 , I ) を図示しなさい。また、上段
の図に、 ydC ( p1 , I ) と ydC ( p 2 , I ) を図示しなさい。そして、(8-5)が成立することを
示しなさい。
8
「補償需要曲線 x  xdC ( p, I ) 、直線 p  p1 、直線 p  p 2 、縦軸 x  0 で囲まれる部分の面
積」を S 2 ( p1 , p 2 , I ) と表すことにしよう。
(問題 8-3) S 2 ( p1 , p 2 , I ) をⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳで表しなさい。
p
x  xdC ( p, I )
p1
Ⅰ
1
2
S 2 ( p , p , I ) =Ⅰ+Ⅱ
p2
Ⅲ
Ⅱ
Ⅳ
xdC ( p1 , I ) xdC ( p 2 , I )
x
そのとき、
(8-6)
S 2 ( p1 , p 2 , I )  p1 xdC ( p1 , I )  p 2 xdC ( p 2 , I )  S1 ( p1 , p 2 , I )
の関係が成立する。ここに、 xdC ( p j , I ) は財 x の補償需要量である( j  1, 2 )
。
9
(問題 8-4)問題 8-2 と問題 8-3 を用いて、(8-6)が成立することを示しなさい。
S1 ( p1 , p 2 , I )  Ⅱ+Ⅳ
p
x  xdC ( p, I )
S2 ( p1 , p 2 , I ) Ⅰ+Ⅱ
p1
p x ( p , I ) Ⅰ+Ⅲ
p2
Ⅰ
1 C
d
1
Ⅲ
p 2 xdC ( p 2 , I )  Ⅲ+Ⅳ
Ⅱ
Ⅳ
xdC ( p1 , I ) xdC ( p 2 , I )
x
p1xdC ( p1, I )  p2 xdC ( p2 , I )  S1 ( p1, p2 , I ) (Ⅰ+Ⅲ) (Ⅲ+Ⅳ) (Ⅱ+Ⅳ)
ⅠⅡ S2 ( p1 , p 2 , I )
10
(問題 8-5)(8-5)と(8-6)を用いて、 S 2 ( p1 , p 2 , I ) を問題 8-1 の上段の図に図示しなさい。
y
ydC ( p1 , I )  p1 xdC ( p1 , I )
ydC ( p2 , I )  p2 xdC ( p2 , I )
S1 ( p1 , p 2 , I )  ydC ( p1 , I )  ydC ( p 2 , I )
S2 ( p1, p2 , I )  p1xdC ( p1, I )  p2 xdC ( p2 , I )  S1 ( p1, p2 , I )
ydC ( p1, I )
C
d
S2 ( p1, p2 , I )  p1xdC ( p1, I )  p2 xdC ( p2 , I )  ydC ( p1, I )  ydC ( p2 , I )
2
y ( p , I)
I
p1
p2
x
xdC ( p1, I ) xdC ( p2 , I )
p
p1
p2
・
・
xdC ( p1, I ) xdC ( p2 , I )
x  xdC ( p, I )
x
11
8.3 補償変分と等価変分
所得を m とすれば予算制約式は
px  y  m
(8-8)
である。そして、価格 p が p1 (状態1)から p 2 (状態 2)に低下したとする( p1 > p 2 )
。
なお、単純化のため、状態が変化しても所得 m は変化しないとする。そして、状態 j にお
ける個人の最適消費量の組を c  ( x , y ) と表すことにする( j  1, 2 )
。また、最適消費
j
j
j
j
点 c j を通る無差別曲線を I と表すことにする。
12
y
m
p1 x  y  m
y1
y
p2 x  y  m
I1
2
1
p
x1
p
x2
2
I2
x
13
補償変分 CV (compensating valuation)と等価変分 EV (equivalent valuation)とは、
次のように価格低下により生じる効用(満足度)の増加を所得の変化分としてとらえる概
念であり、補償所得 E ( p, I ) を用いて次のように定義される。
CV  E( p 2 , I 2 )  E( p 2 , I 1 )
(8-9)
EV  E( p1 , I 2 )  E( p1 , I 1 )
(8-10)
2
補償変分 CV と等価変分 EV の相違は、 CV は変化後の価格 p を用いて評価しているのに
1
対して、 EV は変化前の価格 p を用いて評価している点である。
14
CV =補償変分(compensating valuation)
EV =等価変分(equivalent valuation)
効用の増加を所得の変化分としてとらえる概念
「変化後の効用」を「変化後の価格」
のもとで補償するために必要な所得
CV  E( p 2 , I 2 )  E( p 2 , I 1 )
(8-9)
「変化前の効用」を「変化後の価格」
のもとで補償するために必要な所得
EV  E( p1 , I 2 )  E( p1 , I 1 )
(8-10)
「変化後の効用」を「変化前の価格」
のもとで補償するために必要な所得
15
(問題 8-7)
E( p 2 , I 1 ) と E( p1, I 2 ) を図示しなさい。
② E( p1 , I 1 )  m  E( p 2 , I 2 ) であることを確認しなさい。
1
2
③ 価格が p から p に低下したときの CV と EV がどの線
①
分の長さとして捉えられるかを図示しなさい。
16
y
E( p1, I 2 )
=
E( p1, I 1 )
E ( p 2 , I 2 ) m
E( p 2 , I 1 )
y1
y
I1
2
1
p
x1
21
pp
p
x2
2
I2
x
17
CV  E( p 2 , I 2 )  E( p 2 , I 1 )  m  E( p 2 , I 1 )
(8-6)
E( p 2 , I 2 )  m
EV  E( p1 , I 2 )  E( p1 , I 1 )  E( p1 , I 2 )  m
(8-7)
E( p1 , I 1 )  m
18
(問題 8-7)
E( p 2 , I 1 ) と E( p1, I 2 ) を図示しなさい。
② E( p1 , I 1 )  m  E( p 2 , I 2 ) であることを確認しなさい。
1
2
③ 価格が p から p に低下したときの CV と EV がどの線
①
分の長さとして捉えられるかを図示しなさい。
19
CV  m  E( p 2 , I 1 )
EV  E( p1 , I 2 )  m
y
EV
E( p1, I 2 )
CV
m
E( p 2 , I 1 )
y1
y
I1
2
1
p
p
x1
x2
2
I2
x
20
そして、問題 8-5 と問題 8-7 より、
CV  S 2 ( p1 , p 2 , I 1 )
(8-11)
EV  S 2 ( p1 , p 2 , I 2 )
(8-12)
が成立する。
21
そして、問題 8-5 と問題 8-7 より、
y
1
2
S2 ( p , p , I )
CV  S 2 ( p1 , p 2 , I 1 )
EV  S 2 ( p1 , p 2 , I 2 )
問題 8-5
(8-11)
(8-12)
が成立する。
ydC ( p1, I )
ydC ( p2 , I )
I
p1
p2
x
xdC ( p1, I ) xdC ( p2 , I )
1
2
2
EV  S2 ( p , p , I )
y
問題 8-7
1
2
1
CV  S2 ( p , p , I )
m
I2
I1
p1
p2
x
22
8.4 (マーシャルの)需要関数と補償需要関数
px  y  m :予算制約式
( x* , y * ) =予算制約のもとでの最適な消費量の組
x * =財 x の(マーシャルの)需要量
x  xd ( p) :(マーシャルの)需要関数
(8-8)
23
y
px  y  m
m
y*
I
p
x *  x d ( p)
x
24
(マーシャルの)需要関数と補償需要関数の関係?
x j  xd ( p j )
( j  1, 2 )
x ij  xdC ( p i , I j ) ( i, j  1, 2 )
⇒
x  x ( j  1, 2 )。
jj
j
(問題 8-8)
1
2
12
21
① x 、 x 、 x 、 x を記入しなさい。
② x  xd ( p) と x  xdC ( p, I j ) を描き加えなさい。
25
y
m
I2
I1
p1
p2
x
p
p1
p2
x
26
y
x j  xd ( p j )
x ij  xdC ( p i , I j )
m
I2
I1
p1
x11  x1 x12 x 21 x 2  x 22
p2
x
代替効果 所得効果
27
p
x  xdC ( p, I 2 )
p1
●
<財xが上級財のケース>
●
x  x d ( p)
p2
●
●
x  xdC ( p, I 1 )
x11  x1 x12
代替効果
x 21
x 2  x 22
x
所得効果
28
8.5 補償変分、等価変分、消費者余剰の増分
財 x が上級財(所得効果がプラス)
⇒
p 2  p  p1 の範囲で
xdC ( p, I 1 ) < xd ( p) < xdC ( p, I 2 )
である。
29
(問題 8-5)(8-5)と(8-6)を用いて、 S 2 ( p1 , p 2 , I ) を問題 8-1 の上段の図に図示しなさい。
y
ydC ( p1 , I )  p1 xdC ( p1 , I )
ydC ( p2 , I )  p2 xdC ( p2 , I )
S1 ( p1 , p 2 , I )  ydC ( p1 , I )  ydC ( p 2 , I )
S2 ( p1, p2 , I )  p1xdC ( p1, I )  p2 xdC ( p2 , I )  S1 ( p1, p2 , I )
ydC ( p1, I )
C
d
S2 ( p1, p2 , I )  p1xdC ( p1, I )  p2 xdC ( p2 , I )  ydC ( p1, I )  ydC ( p2 , I )
2
y ( p , I)
I
p1
p2
x
xdC ( p1, I ) xdC ( p2 , I )
p
p1
p2
・
・
xdC ( p1, I ) xdC ( p2 , I )
x  xdC ( p, I )
x
30
x  xdC ( p, I 1 )
p
そして、問題 8-5 と問題 8-7 より、
CV  S 2 ( p1 , p 2 , I 1 )
(8-11)
x  x ( p, I )
C
d
EV  S 2 ( p1 , p 2 , I 2 )
2
(8-12)
が成立する。
p1
③
①
p
2
CV= ①
x  x d ( p)
②
EV= ①+②+③
定義
Ⅰ
ΔCS= ①+②
所得効果が大きいケース
x1
x2
所得効果
x
CV<ΔCS<EV31
x  xdC ( p, I 1 )
p
CV=①
x  xdC ( p, I 2 )
p1
ΔCS=①+②
③
Ⅱ
①
p
EV=①+②+③
2
Ⅰ
x  x d ( p)
所得効果が小さいケース
②
Ⅰ
CV≒ΔCS≒EV
x1
x2
所得効果
x
32
無差別曲線を用いた分析
⇒
需要曲線を用いた分析 ⇒
CV あるいは EV を用いた分析
CS を用いて分析
財 x の所得効果が小さい
⇒
xdC ( p, I 1 ) ≒ xd ( p) ≒ xdC ( p, I 2 )
⇒
CV ≒ CS ≒ EV
⇒
「無差別曲線を用いた分析 ≒ 需要曲線を用いた分析」
33
(問題 8-5)効用関数が u  y  v(x) で与えられているとする( v( x)  0, v( x)  0 )。
そのとき、財 x の所得効果がゼロ(財 x は中級財)であることを示しなさい。
34
y
m
y  v( x)  u 2
I2
v(xˆ )  p1
x̂
y  v( x)  u1
I1
p2
x
v(xˆ )
35
x
(問題 8-5)効用関数が u  y  4 x  x 2 で与えられているとする。また、
予算制約式は px  y  m であるとする。そのとき、財 x の所得効
果がゼロ(財 x は中級財)であることを示しなさい。また、価格
p が 3 から 2 に低下するときに生じる消費者余剰の増分 CS を
求めなさい。
y  x 2  4x  u
dy
 2x  4
dx
4  2 xd ( p)  p
1 1 3
CS  1   
2 2 4
p
4
3
1
xd ( p)   p  2
2
財 x は中級財
2
1/ 2
1
2
x
36
8.1 支出最小化問題と補償需要関数
8.2 補償需要曲線と無差別曲線との関係
8.3 補償変分と等価変分
8.4 (マーシャルの)需要関数と補償需要関数
8.5 補償変分、等価変分、消費者余剰の増分
37
<公共経済学(前期)の各章のフローチャート>
<市場メカニズムの機能>
1章
2章
<公共財と政治プロセス>
3章
4章
5章
6章
7章
<費用便益分析>
8章
9章
10章
11章
12章
38
【各章間の関連性】
第 1 章から第 24 章までの議論は次の流れ図のように関連している。なお、第 1 学期は
第 1 章から第 12 章まで、第 2 学期は第 13 章から第 24 章までを講義する。
社会保障
公共財の供給
外部性
6
5
17
16
13
7
4
3
15
14
補償原理
1
2
地方財政
租税
9
24
18
10
8
20
23
11
22
21
19
市場メカニズ
ム
12
費用便益分析
状態変化の個人的評価
7章 無差別曲線
序数的
以前 効用関数
状態変化の社会的評価
パレート基準
全員一致
8章
以降
40
状態変化の個人的評価
7章 無差別曲線
序数的
以前 効用関数
8章
以降
状態変化の社会的評価
パレート基準
全員一致
補償変分
基数的
等価変分
消費者余剰の増分
41
状態変化の個人的評価
7章 無差別曲線
序数的
以前 効用関数
8章
以降
状態変化の社会的評価
パレート基準
全員一致
補償変分
基数的
等価変分
消費者余剰の増分
潜在的パレート改善
(仮説的)補償原理
集計的消費者余剰の増分
42
状態変化の個人的評価
7章 無差別曲線
序数的
以前 効用関数
8章
以降
状態変化の社会的評価
パレート基準
全員一致
補償変分
基数的
等価変分
消費者余剰の増分
生産者余剰の増分
潜在的パレート改善
(仮説的)補償原理
集計的消費者余剰の増分
集計的生産者余剰の増分
43
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