解析学
2007/07/10, 西岡1
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/∼nishioka/
他の学問と数学とは,
対象が抽象的, 論理のみで構成する
という大きな違いがある. それ故, 数学は広い応用範囲を持つが, 一方で厳密な論理を欠くと
結論を誤る. しかもその誤りを発見しにくい.
解析学が根底としているものは, “ 実数 ”である. 実数論の厳密は議論なしでは, 自己矛盾
のない解析学を構築できない.
実数–復習
1
I. 整数 Z は既知とする. 有理数 Q とは
m
,
n
m.n ∈ Z, n ̸= 0
の全体をいう. Q は次の性質を備えている2 :
(1.1)
a, b ∈ Q ⇒ a + b, a − b, a × b ∈ Q,
b ̸= 0 なら a/b ∈ Q,
(1.2)
a, b ∈ Q ⇒ a < b , a = b , a > b のどれかが成立,
(1.3)
a, b ∈ Q, a < b ⇒ a < c < b となる c ∈ Q が存在する.
ただし, 有理数列 {an } ⊂ Q が
(1.4)
任意の ε > 0 にたいし, ある N があり, m, n ≥ N ⇒ |am − an | ≤ ε
であっても3 , limn→∞ an が Q のなかで見つかるとは限らない. そこで,“ (1.4) をみたす全て
の有理数列の極限 limn→∞ an ”を Q に付け加えたものを 実数 R とする.
II. こうやって得られた実数 R は, 有理数 Q を拡大したものだが, 次の性質を持っている;
(1.5)
Q を R に置き換えた (1.1) – (1.3) が成立,
(1.6)
実数列 {an } ⊂ R が (1.4) を満たせば, 必ず limn an ∈ R.
この最後の性質 (1.6) は“ 実数の完備性 ”と呼ばれる.
1
2
3
[email protected]
2 号館 11 階 38 号室
(1.1) の性質を 可換体. (1.2) を 線形順序性, (1.3) を 稠密性 と呼ぶ.
(1.4) をみたす数列を基本列 と呼ぶ.
1
関数–復習
2
実数のある部分集合 D ⊂ R に属する数 x にたいし, ある数 f (x) ただ一つ対応するとき,
その対応を 関数 と呼ぶ.
I. D 内部の点 x0 にたいし, limx→x0 ,x∈D f (x) = a であるとき, “ 関数 f は x0 で極限 a を
もつ ”という4 .
—— 上級向けの注意 ——
極限という言葉は, 数列 {an } に対してよく使われるが, 実は関数に対する物と同じである:
命題 2.1. 関数 f が x0 で極限 a をもつ.
⇔ {xn } を D に含まれる数列とする. すべての n で xn ̸= x0 かつ limn xn = x0 ∈ D なら,
limn f (xn ) = a.
⋄
これにより, 関数の極限は (基礎数学で勉強した) 数列の極限に帰着することが判った.
————
II. 関数 f が x0 で極限値 a をもち, しかも f (x0 ) = a のとき, “ f は x = x0 で連続 ”とい
い, D の全ての点 x で連続な関数を“ D で連続な関数 ”という.
—— 上級向けの注意 ——
注意 2.2. 極限値と連続の定義を ε-δ 論法を使って厳密に述べてみよう.
(i) “ 関数 f は x0 で極限 a をもつ ”とは, 任意の ε > 0 にたいし, ある δ > 0 があり,
|x − x0 | ≤ δ ⇒ |f (x) − a| ≤ ε
となる事である.
(ii) “ 関数 f は x = x0 で連続”とは, 任意の ε > 0 にたいし, ある δ > 0 があり,
|x − x0 | ≤ δ ⇒ |f (x) − f (x0 )| ≤ ε
となる事である.
⋄
連続関数はいろいろ都合の良い性質を備えている:
定理 2.3 (中間値の定理). 閉区間 [a, b] で定義された連続関数 f が f (a) < f (b) を満たしてい
る. このとき a < c < b である任意の c にたいし, f (x) = c となる x ∈ (a, b) が存在する.
————
4
ここで f (x0 ) の値と a にはなんの関係も無いことを注意せよ.
2
⋄
微分–復習
3
I. 微分は, “ Newton が質点の運動を研究するために考案した ”とされている.
f を D で定義された関数とする. D の内部の点 x0 にたいし,
f (x0 + h) − f (x0 )
h→0
h
(3.1)
lim
が存在するとき,“ f は x0 で微分可能 ”と言い,
(3.1) = f ′ (x0 ) =
df
(x0 )
dx
と記述する. f ′ (x0 ) を xo ∈ D の関数と見たとき, “ f の導関数 ”と呼ぶ.
注意 3.1. 微分可能な関数と連続関数とのギャップは大きく, 至る所で微分が出来ないが連続
な関数が存在する.
⋄
定理 3.2. f を 区間 [a, b] で連続, (a, b) で微分可能な関数とする.
(i) (Rolle の定理) f (a) = 0 = f (b) なら, f ′ (c) = 0 となる点 c ∈ (a, b) がある.
(ii) (平均値の定理) 次を満たす点 z ∈ (a, b) がある:
f (b) − f (a)
= f ′ (z).
b−a
⋄
平均値の定理を使うと数学では許されない 0/0 の計算が出来ることがある.
定理 3.3 (ロピタル). 関数 f, g を 定理 3.2 の条件をみたすものとする. f (a) = 0 = g(a),
g ′ (a) ̸= 0 とすると,
f (b)
f ′ (b)
= lim ′ . ⋄
b→a g(b)
b→a g (b)
lim
II. 関数 f の導関数 f ′ (x) にたいし, その微分と導関数 f ′′ (x) を考えることができる. f ′′ (x)
を2階微分/2階導関数と呼ぶ.さらに 3 階微分 f ′′′ , さらには n 階微分 f (n) も考えること
が出来る. この高階微分の重要な応用として, Taylor 展開がある.
定理 3.4 (Taylor 展開–重要). 関数 f は 区間 (a, b) で n + 1 階まで微分可能をする. 点
c, x ∈ (a, b) にたいし, 次が成立: ある点 y があり
f ′ (c)
f ′′ (c)
f (n) (c)
(x − c) +
(x − c)2 + · · · +
(x − c)n + Rn+1 ,
1!
2!
n!
f (n+1) (y)
ここで, |y − c| < |x − c| であり Rn+1 ≡
(x − c)n+1 . ⋄
(n + 1)!
f (x) = f (c) +
(3.2)
4
いろいろな関数–復習
I. f, g を D で定義された関数とする.
¡
¢
(i) g のとる値が D に属しているとき, 新しい関数 f g(x) が得られる. これを f と g と
の合成関数 と呼ぶ. 合成関数の微分は, つぎの通り:
³ ¡
¢´′
¡
¢
f g(x)
= f g(x) g ′ (x).
3
(ii) ある E ⊂ R1 があり, x ∈ E にたいしては常に
f (y) = x
となる y ∈ D が唯一つ存在するとき, この y を f −1 (x) と書き,
f −1 (x),
x∈E
を f の逆関数と呼ぶ.
x
f(x)
f -1(x)
x
逆関数の微分は, つぎの通り:
³
´′
f −1 (x) =
1
¡
¢.
f ′ f (x)
II. 代表的な初等関数を列挙する:
(
(i) 代数関数: a(a ̸= 0) を実定数として f (x) ≡ x , x ∈ R .
a
(ii) 指数関数: f (x) ≡ ex , x ∈ R1 .
1
ここで, e ≡ lim (1 +
n→∞
′
f (x) =
axa−1
1
a ̸= 1
a = 1.
1 n
) = 2.7182 · · · . はネイピア数.
n
f ′ (x) = ex = f (x),
(4.1)
ex = 1 + x +
(0 を中心とした Taylor 展開)
x2
xn
+ ··· +
+ ··· .
2!
n!
(iii) 対数関数: 指数関数 ex の逆関数. x > 0 にたいして定義され, f (x) = log x と記述する.
³
´′
1
log x = ,
x
x2
xn
(1 を中心とした Taylor 展開) log(1 + x) = x −
(4.2)
+ · · · + (−1)n
+ ··· .
2
n
(iv) 三角関数: sin x, cos x.
³
´′
³
´′
sin x = cos x,
cos x = − sin x,
(4.3) (0 を中心とした Taylor 展開)
(4.4) (0 を中心とした Taylor 展開)
x3
x5
x2n−1
+
· · · + (−1)n−1
+ ··· .
3!
5!
(2n − 1)!
x2
x4
x2n
cos x = 1 −
+
+ · · · + (−1)n−1
+ ··· .
2!
4!
(2n)!
sin x = x −
4
III. Taylor 展開 (4.1), (4.2) を使うと, 複素数にたいして, 指数関数, 対数関数が定義出来る:
a, b を実数, i を虚数単位とする.
³
´
exp{a + ib} = exp{a} cos b + i sin b ,
¡
¢
¡p
¢
log a + ib = log
a2 + b2 + iθ
ここで θ は次の実数 : もし a ̸= 0 なら tan θ =
b
π
; もし a = 0 なら θ = .
a
2
同様に (4.4), (4.3) を使って, 三角関数を複素数にたいして定義できる:
(4.5)
exp{b} + exp{−b}
.
2
cos ib =
ここで (4.5) の右辺は, hyperbolic cosine 関数と呼ばれ, cosh b と表記される.
(4.6)
sin ib = i
exp{b} − exp{−b}
.
2
ここで (4.6) の右辺を i で割った関数は, hyperbolic sine 関数と呼ばれ, sinh b と表記され
る.
2 変数関数
5
5.1
距離と領域
2 次元平面 R2 の 2 点 P = (x, y), Q = (a, b) の 距離 ρ(P, Q) を
p
ρ(P, Q) ≡ (x − a)2 + (y − b)2
で定義する. 点 P = (x, y) ∈ D にたいし, 部分集合
(5.1)
Bε (P ) ≡ {Q ∈ R2 : ρ(P, Q) < ε} ⊂ R2
を“ P を中心とした半径 ε の球 ”と呼ぶ.
注意 5.1. 一般に Rn の点 P = (x1 , x2 , · · · , xn ) と点 Q = (a1 , a2 , · · · , an ) の距離としては,
(5.2)
ρ(P, Q) ≡
p
(x1 − a1 )2 + (x2 − a2 )2 + · · · + (xn − an )2 ,
ρ∗ (P, Q) ≡ max{|x1 − a1 |, |x2 − a2 ||, · · · , |xn − an |},
1
1
ρ† (P, Q) ≡ |x1 − a1 | + |x2 − a2 || + · · · + n |xn − an |
2
2
等があるが, どれも同値である. ただし, ρ∗ と ρ† は無限次元空間に拡張できる.
⋄
D ⊂ R2 を領域という. ある数 K > 0 にたいし, D が原点を中心とした半径 K の球に含
まれる, i.e.
D ⊂ BK (0)
となるとき, “ D を有界な領域 ”という.
5
2 変数関数
5.2
R2 の領域 D において,
f : (x, y) ∈ D → R1
という関係を“ D で定義された実数値関数 f ”という.
2 変数関数 f (x, y) の視覚的な意味は, 3 次元空間 R3 の図形である. 領域 D で定義された
f (x, y) にたいし
G = {(x, y, f (x, y)) : (x, y) ∈ D}
を f のグラフという.
例 5.2. (i) f (x, y) = −x − y + 1, D = {0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1} のグラフは下図の左側の平面
である.
(ii) g(x, y) =
1
, D = {−2 ≤ x ≤ 2, −2 ≤ y ≤ 2} のグラフは下図の右側の曲面で
x2 + y 2 + 1
ある.
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
1
1
0.75
0.5
0.25
0
-2
0.5
0
-0.5
2
1
0
-1
-1
0
-1
0
1
0.2
2 -2
0.4
0.6
0.8
1
5.3
関数の極限
定義域 D の関数 f (P ) にたいし, 点 P = (x, y) が D 内のいかなる路を通って点 Q = (a, b)
に近づいても
lim f (P ) = α
P →Q
が存在するとき, “ f は点 Q で極限値 α を持つ ”という. ここで, P = (x, y) → (a, b) = Q
は, (5.2) で与えられた ρ にたいし ρ(P, Q) → 0 を意味するが, 点 P が 点 Q に近づく方法は
無数にあることを注意する.
例 5.3. (x, y) ̸= (0, 0) で定義された関数
xy
f (x, y) = p
x2 + y 4
は Q = (0, 0) で極限値 0 を持つ.
6
[解答] |x| ≤
p
x2 + y 4 だから
xy
|x|
− 0| = p
· |y| ≤ |y| → 0 as (x, y) → (0, 0). 2
|p
2
4
x +y
x2 + y 4
例 5.4. (x, y) ̸= (0, 0) で定義された関数
x2 + y 2
g(x, y) = p
x2 + y 4
は Q = (0, 0) で極限値を持たない.
[解答] x 軸に沿って 点 P を Q = (0, 0) に近づけると,
x2
y = 0 だから g(x, 0) = √ = |x| → 0
x2
as x → 0.
一方, y 軸に沿って 点 P を Q = (0, 0) に近づけると,
y2
x = 0 だから g(0, y) = p = 1 → 1 as y → 0.
y4
となり, 点 P = (x, y) が Q = (0, 0) に近づく経路によって limP →Q g(P ) の値が異なる. よっ
て極限値は存在しない.
5.4
2
連続関数
領域 D で定義された関数 f (P ) が 点 Q = (a, b) ∈ D で連続とは,
lim f (P ) = f (Q)
P →Q
となることである.
———————
[興味を持つ人のために:1] 多変数関数の連続の定義を ε − δ 論法を使って厳密に述べてみよう.
P = (x, y) を関数 f の定義域 D 内の点とする. f が 点 Q = (a, b) ∈ D で連続とは, 任意
の ε > 0 にたいし, ある δ > 0 があり,
p
ρ(P, Q) ≡ (x − a)2 + (y − b)2 < δ ⇒ |f (P ) − f (Q)| < ε
[興味を持つ人のために:2] 多変数関数も, 1 変数関数の場合と同様に都合の良い性質を備えている:
定理 5.5 (最大値, 最小値). 有界閉領域 D で連続な関数 f (P ) は D で最大値と最小値をとる.
⋄
定理 5.6 (中間値の定理). 関数 f (P ) は領域 D で連続. 任意にとった 2 点 Q, R ∈ D で f (Q) < f (R)
のとき, f (Q) < c < f (R) となる任意の数 c にたいし, f (S) = c となる点 S ∈ D が存在する.
⋄
———————
7
偏微分
5.5
f を領域 D で定義された連続関数とする.
(5.3)
lim
x→x0
f (x, y0 ) − f (x0 , y0 )
x − x0
が存在するとき, “ f は 点 (x0 , y0 ) で x 偏微分可能 ”といい,
(5.3) = fx (x0 , y0 )
(=
∂f
(x0 , y0 ) とも表示する)
∂x
と表す. さらに, この fx (x0 , y0 ) を“ f の x 偏導関数 ”と呼ぶ. 同様に,
lim
x→x0
f (x, y0 ) − f (x0 , y0 )
∂f
≡ fy (x0 , y0 ) (=
(x0 , y0 ) とも表示する)
x − x0
∂y
が存在するとき, “ f は 点 (x0 , y0 ) で y 偏微分可能 ”といい, この極限値 fy (x0 , y0 ) を“ f の
y 偏導関数 ”と呼ぶ
注意 5.7. 大雑把に言えば, 偏微分しようとする変数以外は定数と考えて微分することが偏微
分である. そのため1変数の場合の微分公式が, そのまま偏微分にも適用できる.
例 5.8. (i) 2 変数関数 z = f (x, y) と 2 変数関数 x = g(u, v), y = h(u, v) の合成関数
f (g(u, v), h(u, v)) の偏微分について, 次の式が成立する.
∂f
= fx (x, y) gu (u, v) + fy (x, y) hu (u, v)
∂u
(5.4)
∂f
= fx (x, y) gv (u, v) + fy (x, y) hv (u, v).
∂v
———————
[興味を持つ人のために] (ii) 2 × 2 行列
(5.5)
∂(x, y)
≡
∂(u, v)
„
gu (u, v)
gv (u, v)
を使うと5 , (5.4) は行列の記法を使って
„
«
„
«
∂(x, y)
fu (u, v)
fx (x, y)
=
fv (u, v)
fy (x, y)
∂(u, v)
hu (u, v)
hv (u, v)
«
ただし x = g(u, v), y = h(u, v)
と表せる.
————
5
(5.5) の行列式を ヤコビ行列式 (ヤコビアン) と言い, 多変数関数の積分で重要な役割を果たしている.
8
高階偏微分
5.6
1 変数の場合と同様, 偏微分でも“ 偏導関数の偏微分 ”を考えることが出来る.
(5.6)
lim
x→x0
fx (x, y0 ) − fx (x0 , y0 )
∂2f
= fxx (x0 , y0 ) (=
(x0 , y0 ) とも表示する).
x − x0
∂x2
これ以外にも
(5.7)
lim
fx (x0 , y) − fx (x0 , y0 )
= fxy (x0 , y0 ),
y − y0
(=
∂2f
(x0 , y0 ) とも表示する).
∂x∂y
lim
fy (x, y0 ) − fy (x0 , y0 )
= fyx (x0 , y0 ),
x − x0
(=
∂2f
(x0 , y0 ) とも表示する).
∂y∂x
lim
fy (x0 , y) − fy (x0 , y0 )
∂2f
= fyy (x0 , y0 ) (=
(x0 , y0 ) とも表示する).
y − y0
∂y 2
y→y0
(5.8)
x→x0
(5.9)
y→y0
などの“ 2 階偏微分 ”および“ 2 階偏導関数 ”がある.
注意 5.9. ここで (5.7) と (5.8) は偏微分の順序が異なるが, 適当な条件の下では同じになる.
命題 5.10. 関数 f の偏導関数 fxy (x, y), (5.7) と fyx (x, y), (5.8) が 領域 D で共に存在し, 連
続である. このとき, 両者は一致する.
⋄
この議論を何度も繰り返すと 自然数 m, n にたいし
∂mf
(x, y),
∂xm
∂nf
(x, y),
∂y n
∂ m+n f
(x, y)
∂xm ∂y n
という“ 高階偏微分と高階偏導関数 ”を考えることができる. さらに 命題 5.10 と類似した結
果が成立する.
偏微分の応用
6
6.1
テイラーの定理
1変数関数の場合と同様, 2 変数関数にも テイラーの定理がある.
定理 6.1 (テイラーの定理). 関数 f (x, y) はある領域 D で定義され, そこで n + 1 階までの
偏導関数が存在している. 点 P = (a, b) ∈ D と 数 h, k は (5.1) にたいし
p
Bε (P ) ⊂ D, ε ≡ h2 + k 2
を満たしている. このとき, ある 0 < θ < 1 にたいし, 次の等式が成立する:
n
X
∂ ´m
1 ³ ∂
h
+k
f (a, b) + Rn+1 ,
m!
∂x
∂y
m=1
³ ∂
1
∂ ´n+1
≡
h
+k
f (a + θh, b + θk).
(n + 1)!
∂x
∂y
f (a + h, b + k) = f (a, b) +
Rn+1
ただし
m
³ ∂
X
∂ ´m
h
+k
f (a, b) =
∂x
∂y
Ã
ℓ=0
である.
⋄
9
m
ℓ
!
hm−ℓ k ℓ
∂mf
(a, b)
∂y ℓ
∂xm−ℓ
極値
6.2
領域 D ⊂ R2 で定義された関数 f (x, y) が 点 P = (a, b) で極大値をとるとは, ある ε > 0
があり
f (a, b) ≥ f (x, y),
(x, y) ∈ Bε (P ).
一方, 点 P = (a, b) で極小値をとるとは, ある ε > 0 があり
f (a, b) ≤ f (x, y),
(x, y) ∈ (x, y) ∈ Bε (P ).
注意 6.2. イメージとしては立体地図を考えればよい. 関数 f の値は標高だから, 極大値をと
る 点 P は山頂になる.
1
0.75
0.5
0.25
0
1
0
-1
0
-1
1
関数 f は連続な 2 階偏導関数を持つとし, 2 × 2 行列式6 を
¯
¯ f (x, y) f (x, y)
¯ xx
xy
(6.1)
H(x, y) ≡ ¯
¯ fxy (x, y) fyy (x, y)
¯
¯
¯
¯
¯
で定義する.
定理 6.3. 関数 f (x, y) はある領域 D で定義され, そこで 2 階までの連続な偏導関数が存在し
ている.
(i) 関数 f が 点 P = (a, b) ∈ D で極値をとるなら,
(6.2)
fx (a, b) = 0
fy (a, b) = 0.
(ii) 逆に, 関数 f はある 点 P = (a, b) で (6.2) を満たしている.
(a) H(a, b) > 0 , fxx (a, b) > 0 7 なら, f は 点 P で極小値をもつ.
(b) H(a, b) > 0 , fxx (a, b) < 0 なら, f は 点 P で極大値をもつ.
6
7
ヘッセの行列式 と呼ばれる.
(a) と (b) で, fxx (a, b) を fyy (a, b) で代用してもよい.
10
(c) H(a, b) < 0 なら, 点 P は f の極値ではない.
(d) H(a, b) = 0 なら, これだけでは極値かどうか判定できない.
⋄
例 6.4. f (x, y) = xy(1 − x2 − y 2 ) の極値を求める.
Step 1. まず
fx (x, y) = y(1 − y 2 − 3x2 ),
fy (x, y) = x(1 − x2 − 3y 2 )
だから, fx (x, y) = 0, fy (x, y) = 0 を同時に満たす点
(0, 0),
(±1, 0),
(0, ±1),
1 1
( , ± ),
2 2
1 1
(− , ± )
2 2
という 9 個の点が極値の候補である.
Step 2. fxx (x, y) = −6xy = fyy (x, y), fxy (x, y) = 1 − 3x2 − 3y 2 だから,
H(x, y) = 36x2 y 2 − (1 − 3x2 − 3y 2 )2
である. これより 4個の点 (1/2. ± 1/2), (±1/2.1/2) だけで H > 0 となり,
1 1
1
1
3
fxx (( . )) = fxx ((− . − )) = − ,
2 2
2
2
2
1
1
1 1
3
fxx (( . − )) = fxx ((− . )) =
2
2
2 2
2
と計算できる. 結局, f は (1/2, 1/2), (−1/2, −1/2) で極大値, (1/2, −1/2), (−1/2, 1/2) で極小
値をとる.
⋄
11
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講義概要 - C-faculty