川口 剛史
聖マリアンナ医科大学 救急医学 助教
東京ベイ浦安市川医療センター 集中治療科 フェロー
2015年7月21日
各ガイドラインの比較
ガイドライン
米国
ヨーロッパ
(ASPEN) (ESPEN)
カナダ
(CCPG)
2520記載なし
推奨エネルギー 30kcal/kg/ 25kcal/kg/da
day
y
投与経路
経腸栄養>経静脈栄養
経管栄養開始
24-48時
間以内
24時間
以内
24-48時間
以内
経静脈栄養開始
7日以降
2日以内
推奨しない
投与経路
• 血行動態が安定していれば経腸栄養を推奨
• 感染症の発症率低下
– カテーテル感染
– 外傷患者の腹腔内膿瘍
• ICU滞在期間の短縮
• 人工呼吸器期間の短縮
ASPEN guidelines 2009
ESPEN guidelines 2009
N EngJMed 2011 EPaNIC trial
経腸栄養 開始時期
• 初期蘇生が終了し血行動態が安定次第
• ICU入室後 or 発症から24-48時間以内に開始
• その後48-72時間かけて目標投与量へ移行
ASPEN 2009 guidelines
• 感染症の減少,在院日数の低下
死亡率の低下が期待される
Critical care Med 2001;29:2264
Intensive Care Med 2009;35:2018
米国多施設後ろ向きコホート
早期栄養群(48時間以内)で
死亡率が低い
重症群(APACHE≧25)ほど減少
早期栄養群で肺炎は増加
Chest 2006;129:960
Meta-analysis
早期栄養群(24時間以内)で
死亡率が低い
Intensive Care Med 2009 35:2018–2027
経腸栄養の開始を遅らせない
• ICU入室患者の30-70%に消化管機能不全
– 粘膜バリアの破綻
– 繊毛運動の変化,粘膜の萎縮
– GALT(腸管関連リンパ組織)の減少
• 腸蠕動音,排便を確認する必要はない
– 蠕動音はバリア,吸収とは関係しない
– 確認は不要,栄養開始を遅らせない
ASPEN 2009 guidelines
投与量と増量方法
• 25-30/kcal/kg/日
• 投与プロトコールを使用した方が目
標投与量に達しやすい
• 粘膜の萎縮予防には10-30ml/hの
経腸栄養で十分
ASPEN 2009 guidelines
投与エネルギー
• 1週間以内に目標量の50-65%以上を達成す
る ことは臨床的に有益である
• 特に以下の患者で目標量の50-65%が必要
– 熱傷,骨髄移植患者:腸管透過性亢進予防
– 頭部外傷患者:認知機能改善
ASPEN 2009 guidelines
投与量の増量方法:EDEN trial
• 米国での1000例の急性肺障害の患者への
RCT
• 少なめの量で6日間群
最初は控えめ群
– 10ml/h(10-20kcal/h)
• 目標カロリーまで増量群
どんどん増量群
– 25ml/hで開始,増量
JAMA, February 22/29, 2012—Vol 307, No. 8
投与量の増量方法:EDEN trial
JAMA, February 22/29, 2012—Vol 307, No. 8
投与量の増量方法:EDEN trial
• 結果
呼吸器離脱,死亡率, 肺炎の
発生率も有意差なし
どんどん増量か
最初は控えめか
どちらがいいか
わかってない!
JAMA, February 22/29, 2012—Vol 307, No. 8
経静脈栄養の開始時期
ASPEN(米国の学会) vs ESPEN (欧州の学会)
ガイドライン
経静脈栄養
開始時期
ASPEN
ESPEN
経管栄養が不可能な場合
7日以降
2日以内
EPaNIC Trial
ASPEN(米国の学会) vs ESPEN (欧州の学会)
• ベルギーの7つのICUでの オープンラベルRCT
早期経静脈栄養 (ESPEN):48時間以内
vs
晩期経静脈栄養 (ASPEN):8日目から
NEJM 365;6 ne august 11, 2011
EPaNIC Trial
• 死亡率に有意差なし
• 早期群で感染率,ICU滞在日数が増加
• 晩期群で低血糖の頻度が増加
8日目まで経静脈栄養は
しない方が良い
これまでわかっていること
• Early ENは考慮に値する
• 初期投与量はTrophic feedingで良さ
そう
• EPaNIC trialでは、8日目以降は
Supplemental PNを 行っている
• 蛋白質投与量に関しては不明
Permissive Underfeeding or Standard
Enteral Feeding in Critically Ill Adults
N Engl J Med 2015;372:2398-408.
PICO
Patient, Intervention, Comparison, Outcome
P
I
C
O
Patient
Intervention
Comparison
Outcome
PICO
Patient, Intervention, Comparison, Outcome
P ICU患者に
I
経腸栄養のカロリー量を減量するのと
C 標準カロリーを投与するのとで
O 死亡率が減るかどうか
PermiT trial
The Permissive Underfeeding versus
Target Enteral Feeding
in Adult Critically Ill Patients
Inclusion Criteria
• サウジアラビアとカナダの3次医療機関7施設
• 2009年11月〜2014年9月
• 年齢18〜80歳
• ICUに入室
• 入室後48時間以内に経腸栄養を開始可能
• 72時間以上ICUに滞在しそう
Exclusion Criteria
• 治療の適応が乏しい

高濃度血管作動薬を使用し
• 脳死
ている
• もともと6ヶ月死亡が50%以
上
 ノルアドレナリン>0.4γ
• 心肺停止後
 ドパミン>20γ
• TPNを行った
 フェニレフリン>300μg/min
• 過去に当スタディに参加した
• 妊婦
• 肝移植
• 熱傷
 アドレナリン>0.4γ
 バゾプレシン>0.04U/min
 またはそれぞれの50%以上の量の
併用
6337 Patients assessed for
eligibility
3817 Did not meet inclusion criteria
251 Age <18 years
484 Age >80 years
382 Expected ICU stay <72 hour
1728 Fed orally
972 Not started on enteral feeding
1303 Met exclusion criteria
173
203
418
104
18
31
97
30
169
60
Palliative care or brain death
Expected six-month mortality >50%
Post cardiac arrest
Total parenteral nutrition
Previous enrollment
Pregnancy
Post liver transplantation
Burns
High dose vasopressors
Others
323 Were eligible but not randomized
157
149
7
10
894 Underwent randomization
Declined consent
No family available
Enrolled in other trial
Others
Comparison - Randomization
• 文書による説明と同意
• 封筒で分類
• unblinded
• pragmatic
• randomized
448 Were allocated to permissive underfeeding
444 Received the allocated intervention
4 Did not receive allocated intervention
2 Intervention discontinued prematurely on family
request (1 patient) or physician request (1 patient)
445 Included in primary outcome analysis
3 Were lost to follow-up before 90 days
446 Were allocated to standard feeding
442 Received the full intervention
2 Did not receive allocated intervention
1 Received the alternative intervention
1 Intervention discontinued prematurely on family
request
440 Included in primary outcome analysis
6 Were lost to follow-up before 90 days
14
Intervention
BEE, Resting Metabolic Rate, IJEE
で必要カロリー量を算出
標準量(70-100%)を投与する群
減量(40-60%)して投与する群
タンパク投与量は両群同じ
(1.2〜1.5g/kg/day)
介入は14日目まで(ICU退室、死亡、経口摂取
の開始が可能となれば、中止)
使用した栄養剤は
Abbott社、Nestle社製 (COI無し)
目標カロリーの計算方法
EDEN trialでは、非蛋白カロリーとして25-30kcal/day、
蛋白投与量を1.2〜1.6g/kgとして算出している
→目標カロリーの計算方法が以前の研究とは異なる
Outcome
90日死亡率
ICUでの死亡率
180日死亡率
人工呼吸器離脱期間
入院期間
低血糖
28日死亡率
SOFAスコア
非ICU期間
低K, Mg, P
等
Sample size
先行研究より、標準治療群の90日死亡率を
25%、介入により8%の死亡率の改善が見込
まれると予想
上記で、80% powerで計算し、それぞれの
群で432名の患者が必要と算出した
Analysis
• the investigators designed, managed, and
analyzed the study independently
• chi-square test
• Cox proportional-hazards analysis
• SAS software, version 9.2 (SAS Institute)
Result
患者群に有意差なし
内科疾患が多い
重症敗血症は3割くらい
ほぼ全員が人工呼吸器管理
実際の投与カロリーは、介入群が目標量の46%、
標準群が70%程度という結果
タンパク質の投与量は同等で、70%程度
水分バランスに有意差あり
Table 2.では水分量に有意差があったが、
経時的な変化は両群間に有意差無し
文献の批判的吟味
New Knowledgeか?
• 過去の同様のstudyと比較して
– 介入群の投与カロリーを減らした
(14日目まで)
– 両群で蛋白投与は同等とした
– 生食等で水分量の差を埋めた
– 非タンパクではなく総カロリー量で計算
Selection Bias
• 症例の7割がサウジアラビアの1施
設
• 結局14%しかincludeされなかった
Information Bias
• 各施設が独自のprotocolで
行っている
(異なるprotocolでも同じ結果が出た、とも言える)
• 目標カロリーに到達しなかった
症例がある
• 介入がunblinded
交絡因子
• ICU使用中の他の薬剤
• 原疾患のコントロール
外的妥当性の評価
i. 患者群は適切か
(明日から来る患者に適応できるか)
ii. 診断は同じように出来るか
iii.介入は同じように出来るか
iv.今回のアウトカムは妥当だったか
v. 今後の治療に生かせるか
外的妥当性
明日から来る患者に適応できるか
•できる
–当施設のICUには
内科疾患、外科疾患、外傷
問わず入室している
外的妥当性
診断は同じように出来るか
•できる
外的妥当性
介入は同じように出来るか
•できる
– カロリー量を計算して投与量を調節するだけ
外的妥当性
今回のアウトカムは妥当だったか
• Infectionの基準が曖昧
外的妥当性
今後の治療に生かせるか
• 14日間はtrophic feedingでもい
いかも
本論文でわかったこと
・十分な蛋白を投与していれば、14日
間trophic feedingでも大丈夫(目標カロ
リーの40〜60%)
(EPaNIC trialでは、8日目以降PNを加
えてfull feedingとしていたが・・)
・どの程度の蛋白投与が必要なのかど
うかは、依然として不明
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2015年7月21日(川口剛史)(5.1MB)