都市基盤工学科における導入教育と
エンジニアリング・デザイン教育の試み
平成18年度教育実践研究会
工学部都市基盤工学科
皆川 勝
平成18年度教育実践研究会
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PART1:
1年次「都市基盤工学概論
(1)」
における実践例
平成18年度教育実践研究会
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科目概要
• 必修
• 目標
– 本学科で学習することの意義
– 学習・教育目標
– 技術者の使命と倫理
– プレゼンテーション能力
– レポート作成能力
平成18年度教育実践研究会
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土木学会
教育企画・人材育成委員会
マネジメント教育小委員会
平成18年度教育実践研究会
4
あらすじ
• この本は、矢野周平という若者が主人公です。
彼がどのような経験を通して建設工学に興味
を持ち、建設技術者になる道を選ぶように
なったのかを物語っています。
• 中学で阪神大震災、高校で琵琶湖疏水の研究、
カンボジアでJICAの仕事を見学、大学では建
設工学を選び、大学院在学中に新潟中越地震
で実地調査参加、そして・・・
平成18年度教育実践研究会
5
阪神高速道路網の分断された状況・・・・そして
平成18年度教育実践研究会
6
大震災を乗り越えて、阪神高速道路網は復旧された。
平成18年度教育実践研究会
7
田邊朔郎:卒業研究で琵琶湖
疎水事業を扱い、後に事業を
主導した。
平成18年度教育実践研究会
疏水公園にたたずむ、田辺朔郎の銅像。
8
東京への遷都による衰退、水
不足解消のため、琵琶湖から
平成18年度教育実践研究会
京都への疏水事業が行われた
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田邊朔郎の卒業研究草稿:左
手で書かれた。
平成18年度教育実践研究会
10
田邊朔郎:卒業研究で琵琶湖
疎水事業を扱い、後に事業を
主導した。
ポイント:偉人による稀有の偉
業として捉えるのでなく、若い
エンジニアの創造力が成し遂
げさせたプロジェクトと位置づ
ける。
平成18年度教育実践研究会
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日本技術者が現地の元兵士ら
を指導して建設された“きずな
橋”
平成18年度教育実践研究会
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世界的遺産である
アンコールワットと
並んで紙幣の図柄
となった“きずな橋”
平成18年度教育実践研究会
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グループプレゼンテーションのタイ
トル
•
•
•
•
•
•
•
•
都市を流れる多摩川の生態系
地震と交通網
二酸化炭素と環境
豊島問題を考える(廃棄物の不法投棄)
シビルエンジニアと倫理
脱ダム宣言を考える
建設会社の格付け
阪神大震災からの教訓
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技術者の倫理を考える
(ロールプレイング)
• 主な出演者
–
–
–
–
建設コンサルタントエンジニア
建設会社社長
建設会社課長
発注側公共団体担当者
• 設定:建設プロジェクトが重大な環境破壊
をもたらす危険性を察知したコンサルタン
トエンジニアが、その問題を公
に・・・・・
平成18年度教育実践研究会
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状況.:
(1)A氏は、建設会社と守秘義務を遵守するこ
とを含むコンサルタント契約を結んでいる。
(2)A氏は、契約している業務の国家プロジェ
クトが環境破壊をもたらす可能性が極めて高
いことに気づいたので、開発の見直しを建設
会社の担当B課長に進言。
(3)B課長はこの進言を上司に報告しても受け
入れられる可能性は低いと判断してこれを無
視。
平成18年度教育実践研究会
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(4)結果、この進言は受け入れられず、プロ
ジェクトは実施
(5)しかし、A氏は、関係公共団体C技師に自
分の技術者としての懸念を申し出たが相手に
されず。
(6)さらに住民団体にこのことを報告したため
事態は明るみに出て、マスコミは大騒ぎ
平成18年度教育実践研究会
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(7)建設会社のD社長は、A氏がコン
サルタント契約における守秘義務に違
反したとして告訴
(8)担当B課長が報告の義務を怠り勝
手に握りつぶしたことが問題を深刻に
してしまったとして、B課長を解雇
(9)公共団体はプロジェクトの中止
を決定。建設会社のD社長からは損害賠
償請求
平成18年度教育実践研究会
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出席者全員を
技術者A氏
建設会社B課長
公共団体C課長
建設会社D社長
の4つの立場のグループに分けます.
課題1:各人がその立場で主張を述べる。
課題2:各グループとして,この事件に対する主
張をまとめる.
課題3:各主張をぶつけ合い、この問題に対す
る、“裁判員”としての結論を導き出す。
平成18年度教育実践研究会
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若者が目的意識を持つために
• 現代の若者の多数は、目的意識を持たずに大
学に入学
• 大学は教わるところではなく、自らStudyす
る場->Students
• 研究・学習することが社会的にどのような意
義を持つのかを実感させることが不可欠
• 高校までは、暗記型、知識詰め込み型、そこ
での序列から開放することが重要
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PART2:
3年次「コンストラクションマネジメントシステム」
における実践例
平成18年度教育実践研究会
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科目概要
• 必修選択
• 目標
– 設計・施工プロセスを中心としてマネジメント
技術を学習
– プロジェクトマネジメントソフトウェアの活用演
習
– (シビル)エンジニアリングデザイン能力
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架空プロジェクトを設定し、そのマ
ネジメント計画を製作
• 建設プロジェクトのマネジメント技術を学ぶ
• 自由課題:各自が自分のプロジェクトを想定
し、その実施計画を立案せよ
• プロジェクトの構想:グループ活動
• プロジェクト構成要素の創造:個人活動
• 全体プロジェクトの構成:グループ活動
平成18年度教育実践研究会
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概要
• グループ作業
– プロジェクトの全体像を固める
– 構成メンバーの数により、サブのプロジェクトを
設定
– 概略のWBS(Work Breakdown Structures) を
作成
• 個人作業:サブのプロジェクトの工程計画を作成
• グループ作業:サブのプロジェクトを持ち寄り全体
の工程計画を完成
平成18年度教育実践研究会
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山田さんの海外出張プロジェクト
WBS
(Work Brakedown Structure)
海外旅行の準備
航空券
取得
手
配
発
券
招聘状
取得
納
入
手
配
発
行
社内手続き
パスポート
取得
郵
送
手
配
申
請
発
行
OBS (Oganization
Brakedown Structure)
ビザ
取得
受
取
り
手
配
申
請
発
行
計画書
作成
受
取
・
納
入
上司
パスポート
受取り
各種手配
山田さん
対
応
組
織
説
明
決
済
社長決裁
航空券取得
社外
大使館
稟
議
書
作
成
ビザ取得
旅行代理店
政府
社
内
調
整
計画書
作成
社長
社内
案
作
成
社長
決裁
招聘状取得
パスポート
取得
取引相手
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本年度のプロジェクトの例
• 基本的に、制約は一切設けない。
• シビルの分野に限定しない。
• ただし、実現可能性を高める努力をする。
• 朝から歩いていられない!動く歩道プロジェク
ト!(尾山台ー世田谷キャンパス間)
• サクラセンター前噴水建設プロジェクト
• ファストフード店開業プロジェクト
• 武蔵工大グランド人工芝設置プロジェクト
平成18年度教育実践研究会
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プロジェクト概要
•
尾山台駅から武蔵工業
大学間に動く歩道を設置
する夢のプロジェクト!
• 登校・下校時の耐え難い
歩きの負担を軽減させる
効果がある。
• 屋根をつけることにより
天候に関係なく快適に学
校に通うことが実現する
ことができる。
平成18年度教育実践研究会
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1),事前準備
•
主に資金調達を中心に,材料発注・
作業員の確保・工事に関する近隣住人
説明・機材の調達の手配を行う。
平成18年度教育実践研究会
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2),基礎工事
• 主に工事場所の確保を中心に土台構
築・配電線確保・材料運搬を行時間を
有効的に行うように計画する。
平成18年度教育実践研究会
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3),歩道橋工事・動く歩道の設置
•
歩道橋工事と動く歩道の設置は,同時に行
うことにより時間の短縮をはかる。主に組み
立てや取り付けを行う。歩道橋工事が完了し
しだいエスカレータの施工・設置を行う。
平成18年度教育実践研究会
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受動的知識詰め込みから
能動的研究へ
• 画一的に知識を付与し、それを覚えさせ、そ
の覚えた情報の量や正確さによって測られて
きた学力
• 使命感と智恵によって、社会に貢献できる可
能性を自分の中に発見させることが重要
• 自ら考え、解の不明なあるいは解がひとつで
ない問題に対して、さまざまな知識および能
力を総動員してゆく能力の涵養
平成18年度教育実践研究会
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エンジニアリングデザイン
• 定義「必ずしも解が一つでない課題に対して,
種々の学問,技術を統合して実現可能な解を
見つけ出していくこと」
• OUTCOMES
–
–
–
–
–
–
–
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
現状把握,分析能力
課題設定能力
チームワーク力
論理的思考能力
説明(プレゼンテーション)能力
処理能力・行動力
創造力(チャレンジ精神)
平成18年度教育実践研究会
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エンジニアリング
デザイン教育が対
象とする事例には、
分野的、深さ方向、
横断方向、時間的、
空間的にさまざま
な広がりを持ちう
る。
平成18年度教育実践研究会
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建築都市学群における設計基礎教育
• 建築学科では、他大学の建築系学科にも多く
の例があるように、意匠設計について、創造
性をはぐくむ教育を実践してきた。
• 都市基盤工学科では、力学などの専門の基礎
科目の修得の後、その知識・技術を生かした
設計演習が行われてきた。
• 「力学もわからん学生に、創造性もへったく
れもあるか!設計は3年か4年でやるもの」
か?
平成18年度教育実践研究会
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ご静聴、有難うございました
以下に、参考資料として、PART3が印刷さ
れています。
発表には用いませんが、ご覧いただけれ
ば幸いです。
平成18年度教育実践研究会
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PART3:
学年配当なし「技術作文」にお
ける実践例
平成18年度教育実践研究会
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科目概要
• 選択(H19年度より必修)
• 目標
– 技術文書作成の基礎能力
– プレゼンテーション能力
– コミュニケーション能力
平成18年度教育実践研究会
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作文に関する教育体験
•
•
•
•
•
高校までの作文を考えよう。
文章が書けないことを怒られつづけた。
大学に入ってまた怒られる。
これでよいのか?
どうすれば良いかという方向性は 示さ
れてきたか?
平成18年度教育実践研究会
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二種類の文章
• 文章を大別すると、2種類に分かれる。
事実的な文章と文学的な文章
• 事実的な文章:
正確でわかりやすい文章ー>技術が必
要
論文、評論、解説記事、新聞記事など
• 文学的な文章:
言葉の芸術ー>技術と才能が必要
詩歌、純文学、随筆、大衆小説など
平成18年度教育実践研究会
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技術を学ぶことは可能である
• 技術とは、物事を巧みに行う技
• 才能とは、素質によって得られる能力
• 才能と違い、技術は学習や伝達が可能
なものである。
• 事実的文章は、技術の修得で書くこと
ができる。
平成18年度教育実践研究会
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話すことと書くこと
• 話すように書けばよいか?
「きょうからぎじゅつさくぶんについてこうぎお
しますこうぎのたんとうしゃわわたしですから
ひょうかするけんげんわわたしにあたえられて
いますがみなさんがこうぎおしたいというのわ
かってですしかしたんとうでさすのわやめてく
ださいませんか」
「今日から、技術作文について講義をします。講
義の担当者は私ですから、評価する権限は私に
与えられていますが、皆さんが“抗議をした
い!”と言うのは勝手です。しかし、短刀で刺
すのはやめてくださいませんか?」
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平成18年度教育実践研究会
会話のできる人は書けるか
• アメリカへ行けば、乞食でも英語を話
す。
• 3年もひとつの社会で生活すれば、会話
は達者になる。
• ところが、会話ができる人がすべて語
学が達者で、正確な文章を書けるか?
• 日本人だから、日本語の作文を当然で
きると考えやすいが、本当か?
平成18年度教育実践研究会
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「私たちは日本語に慣れきっている。
幼い時から、私たちは日本語を聞き、日本語
を話し、日本語を読み、日本語で考えてきた。
私たちにとって、日本語は空気のようなもの
で、日本語が上手とか下手というのさえ滑稽
なほど、私たちは日本語に慣れ、日本語とい
うものを意識していない。これは当たり前の
ことである。しかし、日本語で文章を書く時
は、この日本語への慣れを捨てなければいけ
ない。・・・(中略)。。。文章を書くとい
うときには、日本語を外国語として取り扱わ
なければいけない。」(清水幾太郎:論文の
書き方、岩波文庫)
平成18年度教育実践研究会
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技術作文の心得
•
•
•
•
•
心得1:内容の精選
心得2:事実の意見の区別
心得3:論理的で自然な記述順序
心得4:明快・簡潔な文書
心得5:感想やわらかさの排除
平成18年度教育実践研究会
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学生さんたちが辿った道
• なんと文章が書けないことかと先生方に怒ら
れつづける。
• 4年生の卒論で数十ページの論文をはじめて執
筆することになって、卒論の指導教授にその
日本語と取っ組み合わせることになる。
• 技術を修得しないので、多大な時間と労力を
使っても、能力はなかなか向上しない。
• 就職試験ではまともに文章も書けないのかと
あきれられて、見事不合格。
• 武蔵工大ではどういう教育をしているのか、
あるいは、今の大学生ときたら、という言葉
を頂戴しつづける。
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平成18年度教育実践研究会
これからの学生さんが辿る道
• 大学初年度に、文章の書き方の技術を修得する。
• まともな文章が少し増えてきたな、と先生方に
褒められる。(豚もおだてりゃ木に登る?)
• 4年生の卒論で、指導教授は内容のみに集中して
指導することができるので、研究実績が向上。
• 技術を修得しているので、経験で飛躍的に書く
能力は向上し、修士課程では学会論文が採択に。
• 就職試験では、ななかな良い文章が書けると感
心され、第一候補に見事合格。
• 武蔵工大の教育は大したものだと評判になり、
今の大学生も捨てたものじゃやないな、という
言葉を頂戴する。
平成18年度教育実践研究会
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教科書
• 木下是雄著「理科系の作文技術」
準備作業(立案)/文書の組立て/パラグラフ/文
の構造と流れ/はっきり言い切る姿勢/事実と意
見/その他
文を組み立てて正確でわかりやすい文書を作る
技術が中心
• 本多勝一著「日本語の作文技術」:修飾する側
とされる側/修飾の順序/句読点の打ち方/漢字
とカナの心理/助詞の使い方/段落/その他
正確でわかりやすい文を作る技術が中心
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課題
• 必修となり、少人数教育ができなくなる。
解決策
• 人的ネットワークの活用:例えば技術士グ
ループ(柏門技術士会)など
• 相互の批評を活発化させる工夫
• 教員の負荷増大(建築学科方式:全教員参加
型)
平成18年度教育実践研究会
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おわりに
• このような基礎的な教育は、個々の教員がや
るのでは限界
• 教養系の先生方と専門の先生方が共同して、
教育プログラムを開発してゆくことが望まし
い。
• 平成19年度カリキュラムのスタートに合わせ
て、工学リテラシー、基礎科目の教育に関す
る合同WGを発足させ、常時機能させることが
望まれる。
平成18年度教育実践研究会
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