対流の定常解に対する精度保証付き数値計算 渡部 善隆 中尾 充宏 Ý
Þ
九州大学情報基盤センター
£
山本 野人 西田 孝明 九州大学大学院数理学研究院
京都大学大学院理学研究科
電気通信大学情報工学科
概 要
対流として知られる熱対流問題を記述する 次元 方程式の定常解に対する精度保証付き数値計算法について考える.問題を矩形領域に制限し,
法により得られる近似解のまわりで定常解の存在証明と定量的誤差限界を与
える数値的検証手順を述べる.本稿では,これまでに得られた計算機援用証明 とは別の非
自明解からの分岐解と思われる解の存在検証例を紹介する.
問題
対流を記述する次の 次元 座標 ! 方程式 "#$%"&$%"'$(
) ) ) ) ) ) ) ) * ) +
* ) +
* ,
* +
#
の定常問題を考える.ここで % % はそれぞれ流速場,圧力場,自明な温度場からの距離
をあらわす.また と はそれぞれ -
数, 数とよばれる無次元数である.
連続の式 ) * , が満たされるように流れ関数 . を用いて流速場を * . . と表現し,# の第 # 式を で,第 式を で微分することにより圧力項を消去する.さらに
/ (* とおくことで次の定常熱対流問題を導く(
+ . * / . +. ) .+. 0
+/ * . ) . / ./ 0
ここで領域 0 は , , , , は与えられた正定数とする.境界条件と
して, * ,% * において接線応力が , となる自由表面, * ,% * において周期境
界条件を仮定する.さらに,. は に関して奇関数,/ は に関して偶関数であるとする 1 "$.
#
不動点定式化
想定した境界条件から の解 . / の形を次のように仮定して考える(
.*
/*
& の形より, , に対する関数空間を以下で定義する(
(*
.*
(* / *
Ê
Ê
&
) ) % は 0 の閉部分空間である.次に,近似空間 % を
½ ½
(* . *
2 2 Ê
¾ ¾
(* / *
2 2 Ê
で定義する. の右辺の非線形項を
. / (* / . +. ) .+. . / (* . ) . / ./
2 /2 とおき,34
法による近似解 .
を有限次元非線形方程式(
+ .2 ¾ * .2 /2 ¾
+/2 ¾ * .2 /2 ¾
5
2 /2 を数値的に解くことによって決定する.ただし ¾ は 0 上の 内積とする.ここで .
は の元であれば必ずしも 5 を正確に満たす必要はないことに注意する.
.2 /2 を用い,. / を
. * .2 ) / * /2 ) と書き表すことで, と同値な残差形式の方程式(
+ * .2 ) /2 ) + .2 0
+ * .2 ) /2 ) ) +/2 0
を得る.以降は の存在検証について考える.
(* (* .2 ) /2 ) +.2 (* .2 ) /2 ) ) +/2 (* 6
とおく.78 の埋め込み定理と % の形より, は から への連続写像で
あり,有界集合を有界集合に写す.次に,任意の に対し,6 の線形問題(
+.9 *
0
0
+/9 *
'
9 /9 を持つ.ここで, から .9 /9 への対応に埋め込み 0 は一意の解 .
0 0 0 まで含めた写像を とおくと, は から への
: 写像となる.したがって 6 は 上の : 作用素 (* Æ に対する不動
点問題(
* と同値であり,7
に対し
;
の不動点定理が適用できる
すなわち,空でない有界凸閉集合
が成り立つならば,; の不動点が
内に存在する.このような条件を満たすことが期待される
「候補者集合」を計算機内で実現するアルゴリズムの構成方法については ";$ を参照されたい.
数値例
計算は 1:! <: 78 47&, <: #'5 ;&#=>? '5 @AB C6# で行なった.
計算における丸め誤差を考慮するため,3
C65#D& に 3
E, の区間演算ライブラリ
"6$ を実装した.以下の数値例は * #, での検証例である.
自明解
定常熱対流問題 はすべての % に対して自明解 . * / * , をもつ.また,ある臨界
数 より小さい では非自明解が存在しないことが知られている "5$.
/ は自明な温度場からの擾乱を意味する.熱対流問題の温度場 は
* Æ! # /
で表現される "#$.ここに ! は の場合の等温場である.
) !
* での,! ) Æ! は * , での流体の温度である.図 # は / * ,
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
0
2
4
図 #(
6
8
/ * , の時の等温場
以下,等温場の図は ! * ,% Æ! * 6 とした場合の図 # の自明解に擾乱を加えた で表す.
&
自明解からの第 分岐解
は #E#' 年に線形化安定問題を解くことにより,臨界 数が
* F ) * ';6 * # * # * # であることを示した.図 は * #,% * 6,% " * # * #, とした近似解の速度場
2 は,近似解
である.自明解からの分岐解と思われる非自明な解が つ得られた.図中の ½ ½
.2 *
2 の係数の中での絶対値最大なものである.
2 #6&;
2 #6&;
図 ( 自明解からの第 # 分岐解 速度場
図 &%
5 は ! * ,% Æ! * 6 とした時の等温場である.
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*;
0
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4
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* #,
0
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6
8
* ,
0
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4
6
8
* &,
0
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* 5,
0
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* 6,
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図 &( 自明解からの第 # 分岐解 等温場
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* ',
0
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* ;,
0
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* D,
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0
0
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0
2
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図 5( 自明解からの第 # 分岐解 等温場 続き
自明解からの第 分岐解
数
* ) * #&6 * * # * # 付近から自明解からの 番目の分岐解と思われる非自明解が得られた.図 6 は
" * # * #, とした近似解の速度場である.
2 ;,'
* #,% * 6,%
2 ;,'
図 6( 自明解からの第 分岐解 速度場
図 '%
; は ! * ,% Æ! * 6 とした時の等温場である.
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* #5
0
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* ,
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* &,
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図 '( 自明解からの第 分岐解 等温場
6
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* 5,
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* 6,
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* ',
0
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* ;,
0
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* D,
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図 ;( 自明解からの第 分岐解 等温場 続き
自明解からの第 分岐解
数
* ) * #&&#&' * & * # * # 付近から自明解からの & 番目の分岐解と思われる非自明解が得られた.図 D は
" * # * #, とした近似解の速度場である.
2 ,E
2 ,E
図 D( 自明解からの第 & 分岐解 速度場
図Eは!
* ,% Æ! * 6 とした時の等温場である.
'
* #,% * 6,%
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* &;
0
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* 5,
0
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* 6,
0
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* ',
0
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* ;,
0
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* D,
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0
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0
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6
8
図 E( 自明解からの第 & 分岐解 等温場
他の非自明解
数 &6 付近で,自明解からの第 分岐解からの分岐と思われる他の非自明解を 5 つ
得た.図 #, は * #,% * 6,% " * # * #, とした近似解の速度場である.
図 #,( 他の非自明解 速度場
図 ## は !
* ,% Æ! * 6 とした時の等温場である.
;
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0
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0
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0
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0
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2.5
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1
0.5
0
0
2
4
図 ##( 他の非自明解 等温場
6
8
検証例
図 # の各点に対応する 数において解の存在検証に成功した.ただし縦軸は近似解
¾ ¾
/2 *
2 の係数の絶対値最大(
G
2 で与えている.また,横軸の 数は臨界 数
で正規化している.
25
20
15
10
5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
図 #( 検証に成功した非自明解
D
* &&
* &6
* 5,
* 6,
* ',
* ;,
* D,
表 # は * ',% * #,? # (* " * " * # * # とした場合の具体的な存在検証例であ
2 % /2 のまわりで作成した候補者集合 % % % に対し, の解
る.近似解 .
. / が
. .2 )
/ /2 )
)
)
の中に存在することが検証できた.
#$
#
&
5
6
'
;
D
E
#,
56
56
&,
&,
6,
6,
6,
6,
,
,
表 #( * ',% * #, の非自明解の存在範囲
2
. ¾ /2 ¾ ½ ½ ½
#;55
&5DE #5,#, &##, 5'#,
#;55
&5DE #5,#, &##, 5'#,
D#5
&,6; &6#, 6'#, ;;6#,
D#5
&,6; &6#, 6'#, ;;6#,
E'
E5& E;6#, D;;#, 'E'#,
E'
E5& E;6#, D;;#, 'E'#,
E'
E5& E;6#, D;;#, 'E'#,
E'
E5& E;6#, D;;#, 'E'#,
D5
#E5E &5,#, E6'#,
#;6#,
D5
#E5E &5,#, E6'#,
#;6#,
½
#'#,
#'#,
#&6#,
#&6#,
6##,
6##,
6##,
6##,
##,#,
##,#,
現在のところ,与えられた 数に対する解の存在検証に成功したのみであり,包み込み
に成功した非自明解が分岐解であるかどうか,また,分岐点自身の存在検証は今後の課題である.
参考文献
"#$ 1
% 7( % GF @
8 -%
#E'#
"$ 1% H =( F I
::G
!
!
% ½¼% ::;#J;E #E;E
"&$ 4
% < C( % <8
C##% 7 I % #EED
"5$ H:% K K( F ! !
% ¾¼% ::6EJ;# #E'6
"6$ LF% % L
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"'$ % H 7( 8 >
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' % C'%
::5&J55' #E,
E
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渡部 善隆% 中尾 充宏% 山本 野人% 西田 孝明( 対流の定常解に対する精度保
証付き数値計算% 短期共同研究・精度保証付き数値計算法とその周辺% 京都大学数理解析研究
所講究録% C##5; ,,, ::#&J#&'
#,
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