様式C-19
科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書
Equation Chapter 1 Section 1平成25年 5月24日現在
機関番号:17201
研究種目:基盤研究(C)
研究期間:2010~2012
課題番号:22560797
研究課題名(和文)
渦法による波浪と浮体の干渉計算法に関する研究
研究課題名(英文)
Simulation of Floating Body in Nonlinear Wave by Vortex Methods
研究代表者
今井 康貴(imai yasutaka)
佐賀大学・海洋エネルギー研究センター・准教授
研究者番号:90284231
研究成果の概要(和文)
:
本研究では,高い精度を有する,渦法による浮体構造物の非線形波浪中挙動解析法の開
発を目的に,自由表面下で振動する 2 次元没水平板の問題に,Random-Walk 法および
Core-Spreading 法に基づく渦法計算を適用し,平板に作用する流体力について検討を行っ
た.その結果,Core-Spreading 法および物体近傍での渦層モデルを用いることで,これま
での波浪問題に適用されてきた Random-Walk 法に基づく手法より実験結果と近い結果が
得られた.
研究成果の概要(英文)
:
To utilize floating structure under heavy environmental condition in sea safely,
motions of the floating body and the mooring forces acting on the body have to be
reduced. To decrease these motions and mooring forces, fins attached structure has
been proposed.
In this study, two vortex methods, the Random-Walk method and the Core-Spreading
method, are applied to uniform flow past a circular cylinder and heaving fin plate
under free surface. In the simulation of uniform flow, we conduct parametric study
which helped us determine the numerical parameters to be used in subsequent
simulations. Then, the simulated wake velocities are compared with experimental
results to verify the calculation accuracy. In the simulation of heaving plate,
hydrodynamic forces on the plate are simulated and compared with experimental
results.
交付決定額
(金額単位:円)
2010 年度
2011 年度
2012 年度
総 計
直接経費
2,600,000
500,000
500,000
3,600,000
間接経費
780,000
150,000
150,000
1,080,000
合
計
3,380,000
650,000
650,000
4,680,000
研究分野:工学
科研費の分科・細目:総合工学・船舶海洋工学
キーワード:推進・運動性能、海洋構造物、渦法、漂流力
1.研究開始当初の背景
浮体構造物を,我が国周辺の厳しい気象・
海象条件下で安全かつ経済的に供用するた
めには,大波浪下での浮体の動揺の低減化と,
定点係留の観点から波漂流力低減化が課題
として挙げられる.これらの課題を解決する
方法として,浮体の没水部にフィンを設置し
て,
①浮体の動揺エネルギーをフィン周りの渦
エネルギーに変換して浮体の動揺を低減化
する
②フィンに発生する揚力を利用して,浮体を
波の入射方向へ推進させる振動翼推進効果
により波漂流力を低減化する
ことが考えられる.この方法の実用化のため
には,フィンの最適形状と最適配置を求める
ことができる計算手法の開発が必要である.
計算手法には,自由表面を持った流体中にあ
る任意の浮体およびフィンの形状を考慮で
き,フィンから生じる渦の生成,拡散といっ
た粘性影響も正確に表現すること,計算負荷
が小さく実用的であることが要求される.
この目的に適した計算手法の候補として,
VOF 法等の差分法,MPS 法や SPH 法等の
粒子法,渦法等が挙げられる.本研究で対象
とする波浪中の構造物の周りの流れは高レ
イノルズ数であり,計算では,物体表面の薄
い境界層内部での渦の発生,発生した渦の流
体中への拡散,物体からの渦の剥離等を正確
に評価する必要があるという点から,渦法が
適していると思われる.渦法の自由表面を持
つ波浪問題への適用例としては,わずかに,
Yeung らの,半没水鉛直板の強制 2 次元 Roll
運動,小規模固定フィン付き浮体の 2 次元動
揺問題を扱った研究等がある.Yeung らは,
渦の粘性拡散に Random-Walk 法を用い,複
素変数境界要素法で計算されるポテンシャ
ル波浪場に,渦による流れを重畳し,フィン
付き浮体に作用する流体力計算を行って実
験値と比較している.しかしながら,物体に
働く流体力に関する計算値と実験値は一致
しない部分もある.浮体の動揺低減化や波漂
流力低減化を実現するフィンの最適形状や
配置を検討するためには,フィンに作用する
流体力や周囲の流場を高い精度で再現する
必要がある.
渦法は近年著しい発展をみせており,粘性流
体の解析法として渦法全般を記載した成書
も出版されている.特に,渦の粘性拡散の表
現については,確率論的に取り扱う
Random-Walk 法の他,決定論的な手法とし
て , Resampling 法 , Particle Strength
Exchange 法 , Redistribution 法 ,
Core-Spreading 法など,様々な方法が提案
されている.この内,Leonard によって提案
された Core-Spreading 法は,近年,さらに
高度化され,物体近傍での渦の生成と拡散を
詳細に表す手法が提案されている.そこで,
本研究では,近年得られた渦法に関する研究
成果を取り入れながら,Yeung らの手法をベ
ースに,高い精度を有する,渦法による浮体
構造物の非線形波浪中挙動解析法の開発を
目指す.
2.研究の目的
本研究は,自由表面下で振動する没水平板
の 2 次元問題に,従来,波浪問題に適用され
ていなかった Core-Spreading 法と物体近傍
で渦層モデルを適用する.鉛直方向に強制加
振された平板に働く流体力に関する水槽実
験 も 実 施 し て , Random-Walk 法 及 び
Core-Spreading 法に基づいた渦法計算結果
と実験結果を比較することで,計算精度の確
認を行う.
3.研究の方法
2 次元粘性流体の基礎式を渦度と流れ関数
で表すと次のようになる.
Dx ∂x
∂x
∂x
=+ u
+v
=
ν∇ 2x
Dt ∂t
∂x
∂y
(1)
∇ 2ψ =
−ξ
(2)
∂y
∂y
(3)
u=
v= −
∂ψ
∂x
(4)
ここで, u は x 方向流速, v は y 方向流速,
ξ は渦度,ψ は流れ関数,ν は動粘性係数,
t は時間である.式(1)の渦度方程式は,
Fractional step 法を用いて,以下の
Convection step と Diffusion step の 2 つの
式に分離する.
i) Convection step
Dx ∂x
∂x
∂x
= +u
+v
=0
Dt ∂t
∂x
∂y
(5)
ii) Diffusion step
∂ξ
= ν∇ 2ξ
∂t
(6)
渦法の具体的な計算は,一つの時間ステッ
プの前半に Convection step の計算を行い,
後半に Diffusion step の計算を行う.
Convection step では,流れに関して与えら
れた境界条件の下で式(5)と式(2)を,複素速
度ポテンシャルをベースにした境界要素法
を用いて解くが,流れ関数ψ は,次式のよう
に非回転成分に対応する流れ関数ψ k と,回
転成分に対応する流れ関数ψ h に分解して計
算を行う.
(7)
ψ= ψ v + ψ h
∇ 2ψ v =
−ξ
(8)
∇ 2ψ h =
0
(9)
Diffusion step では,Random-Walk 法あるい
は Core-Spreading 法を用いて式(6)のみを解
く.
境界上の節点 ζ で速度ポテンシャルが既
k
知( = P )の場合,次式が得られる.
k
2π Pk ln
=
+
ζ k +1 − ζ k
ψ h , k + (2π − θ k )φh , k
ζ k −1 − ζ k
N
∑ {Re  H
j =1
j ≠ k −1
j≠k
j
ψ h , j +1 + Im  H j  φh , j +1
(10)
− Re  I j ψ h , j − Im  I j  φh , j }
ζ k +1 − ζ k
φh , k + θ kψ h , k
ζ k −1 − ζ k
0 ln
=
N
∑ {Re  H
+
j =1
j ≠ k −1
j≠k
j
 φh , j +1 − Im  H j ψ h , j +1
(11)
− Re  I j  φh , j + Im  I j ψ h , j }
また、境界上の節点 ζ で流れ関数が既知
k
( = S )の場合、次式になる。
k
ζ k +1 − ζ k
ψ h , k − θ k φh , k
ζ k −1 − ζ k
0 ln
=
+
N
∑ {Re  H
j =1
j ≠ k −1
j≠k
j
ψ h , j +1 + Im  H j  φh , j +1
る.
⑥ 開境界上の節点の新たな φh の値を求める.
⑦ 物体表面上の節点を物体の運動に合わせ
て移動させる.
⑧ 渦要素位置における流速を求め,渦要素
を流速により移流させる.
⑨ Random-Walk 法あるいは Core-Spreading
法により渦要素を拡散させる.
手順③完了後,計算時間が計算打ち切り時間
に満たない場合は,④以降に進み,次ステッ
プの境界条件の設定を行うが,計算時間が計
算打ち切り時間に達した場合は,ここで計算
を打ち切りとする.手順⑨まで完了したら,
①に戻り同じ計算を繰り返す.
4.研究成果
4. 1 水槽実験
平板を鉛直方向に強制振動させる水槽実
験を実施し,平板に作用する流体力を時系列
で計測した.実験には,佐賀大学海洋エネル
ギー研究センター伊万里サテライトの 2 次元
水槽を使用した.実験装置の配置を Fig. 1
に示す.水槽は長さ 18.0m,幅 0.8m で,水深
は 1.0m とした.
(12)
− Re  I j ψ h , j − Im  I j  φh , j }
=
−2π S k ln
+
ζ k +1 − ζ k
φh , k − (2π − θ k )ψ h , k
ζ k −1 − ζ k
N
∑ {Re  H
j =1
j ≠ k −1
j≠k
j
 φh , j +1 − Im  H j ψ h , j +1
(13)
− Re  I j  φh , j + Im  I j ψ h , j }
Hj =
Ij =
ζ k − ζ j ζ j +1 − ζ k
ln
ζ j +1 − ζ j ζ j − ζ k
Table 1
(14)
ζ k − ζ j +1 ζ j +1 − ζ k
ln
ζ j +1 − ζ j ζ j − ζ k
(15)
未知量は式(10),(11),(12),(13)の右辺の
各節点における φ ,ψ で,2N 元連立方程式
h
Fig.1
h
を解くことで解が得られる.
具体的な計算の流れを以下に示す.
① (10),(11),(12),(13)を用いて, β h に
関する境界積分方程式を解く.t = 0 では,
自由表面上および開境界で φh = 0 ,自由表
面上の節点位置は静水面上とする.
② 物体表面上での滑り速度を求め,新たな
渦要素を導入する.
③ 物体に作用する圧力を求める.
④ 自由表面上の節点を移動させる.
⑤ 自由表面上の節点の新たな φh の値を求め
Experimental arrangement
Experimental conditions
Chord Length (L)
Width
Thickness
Oscillation Period (T)
Motion Amplitude (a)
Submerged Depth (d)
15cm
79cm
1cm
1.0, 1.2, 1.4, 1.6sec
2cm
15cm
実験条件を Table. 1 に示す.平板には弦
長 15cm,厚さ 1cm のアクリル板を用い,鉛直
方向に次式の変位を与えた.
z = a sin
2π
t
T
(16)
ここで, a は平板の鉛直方向変位の振幅, T
は周期, t は時刻である.平板は治具を介し
て空中の検力計に接続されている.検力計で
計測したデータに含まれる高周波のノイズ
成分を取り除くため,sin 関数に当てはめて
最小二乗近似値を求める処理を行った.さら
に,アクリル板およびアクリル板と検力計を
接続する治具の慣性力を求め,計測データか
ら求めた最小二乗近似値と慣性力の差をと
ることで,平板に作用する流体力を求めた.
4. 2 実験結果と計算結果の比較
Random-Walk 法および Core-Spreading 法を
用いた渦法計算を行い,実験結果と比較した.
計算条件を Table. 2 に示す.t=0sec で流体
は静止状態とし,平板は没水深度 15cm から
式 (16) に よ り 振 動 さ せ る も の と す る .
Random-Walk 法での δ 層高さは,事前研究の
結 果 か ら , δ / L = 0.5 / Re と し た 。
Core-Spreading 法のパラメーターは円柱周
りの流れの事前研究で実験とよく合致した
設定を採用する.レイノルズ数は次式で求め
るものとする.
=
Re
Vmax ⋅ L 2π aL
=
ν
νT
Fig.2 Vertical displacement and force
(T=1.0sec).
(17)
ここで, Vmax は平板上下揺速度の最大値であ
る.
Table 2
Calculation Conditions
Diffusion model
Random-Walk Core-Spreading
T/100
Time step ; dt (sec)
128
Node number on plate
δ
layer height ( δ / L )
0.5 / Re
―
Linear sublayer height ( δ s / L )
―
0.5c 2ν dt
Virtual boundary layer height ( h1 / L )
―
2.0 / Re
Diffusing layer height ( h2 / L )
―
5.0 / Re
Fig. 3
Vertical displacement and force
(T=1.2sec).
平板に作用する流体力の 2 周期分(t=2T~
4T)について,計算結果と実験結果の比較を
Fig. 2~5 に示す.また,t=2T~4T の 2 周期
分の計算結果から,次式の作用力振幅および
平板の上下揺変位との位相のズレを最小二
乗近似で求めた.
 2π

=
Fv f v sin 
t +α 
 T

(18)
ここで, Fv は鉛直方向作用力である.作用力
振幅 f v の計算結果と実験結果の比および計
算結果と実験結果の位相の差を Table. 3 に
示す.
Table 3
Vertical displacement and force
(T=1.4sec).
Vertical force amplitude and
phase difference.
Inviscid
Force amplitude [ f v ,cal.
Phase difference [a cal.
Force amplitude [ f v ,cal.
T=1.2sec
Phase difference [a cal.
Force amplitude [ f v ,cal.
T=1.4sec
Phase difference [a cal.
Force amplitude [ f v ,cal.
T=1.6sec
Phase difference [a cal.
T=1.0sec
Fig. 4
/ f v ,exp. ]
- a exp. ]
/ f v ,exp. ]
- a exp. ]
/ f v ,exp. ]
- a exp. ]
/ f v ,exp. ]
- a exp. ]
0.851
0.106T
0.858
0.111T
0.885
0.113T
0.890
0.122T
Viscid
Random-Walk Core-Spreading
0.803
0.068T
0.836
0.078T
0.802
0.068T
0.836
0.052T
0.968
0.036T
0.933
0.040T
0.948
0.029T
0.918
0.063T
Fig. 5
Vertical displacement and force
(T=1.6sec).
るが,これについては今後の研究課題である.
Fig. 2~5 と Table. 3 より,全てのケース
において,作用力の振幅は計算結果が実験結
果より小さく,位相は計算結果が実験結果よ
り進む傾向にある.Core-Spreading 法による
計算結果が,他の計算結果と比べて,作用力
の振幅,位相共に実験結果と近い結果になっ
ている.一方,Random-Walk 法を用いた計算
では,非粘性流体の計算結果と比較して,位
相については実験結果に近くなっているが,
作用力の振幅は小さくなっている.
本計算のような物体の振動問題では,物体
近傍での流場や渦度場が周期的に変化する.
Random-Walk 法は,流れ場に多数の渦要素を
導入して,各々の渦要素にランダムウォーク
を与えることで粘性拡散を表現するもので,
流場を精度よく計算するためには多くの渦
要素の導入が必要となる.前節で行った一様
流中の計算では,計算開始からある程度時間
が経過すると,数多くの渦要素が導入されて
精度のよい計算結果を得ることが可能であ
るが,本問題のような物体近傍で渦度場が急
激に変化する流れに対しては,新たに物体表
面から放出される限られた数の渦要素では
渦度場の変化を捉えきれず,計算精度が低下
したと推測される.一方 Core-Spreading 法
では,渦 blob の表現に 2 次元拡散方程式の
解と類似の形を用い,渦 blob に含まれる渦
要素コアの増大率(式(22))を 2 次元拡散方
程式の解に関連付けて求めたこと,物体近傍
の渦度場の表現に渦層モデルを用いること
で,物体からの渦の生成や拡散過程を精度よ
く再現したことで, Random-Walk 法による計
算結果と比べて実験結果に近い結果が得ら
れたと考えられる.
4.3 結論
本研究では,高い精度を有する,渦法によ
る浮体構造物の非線形波浪中挙動解析法の
開発を目的に,その第一段階として,自由表
面下で振動する 2 次元没水平板の問題に,
Random-Walk 法および Core-Spreading 法に基
づく渦法計算を適用し,平板に作用する流体
力について検討を行った.その結果,
Core-Spreading 法および物体近傍での渦層
モデルを用いることで,これまでの波浪問題
に適用されてきた Random-Walk 法に基づく手
法より実験結果と近い結果が得られた.
本論文では,2 次元問題を対象に,Yeung
らと同様に,流れ関数と渦度に基づく基礎式
を用いた計算を行い,自由表面を持つ粘性流
体の問題に,渦法が有効であることを確認し
た.本手法は,2 次元問題についての有用な
計算ツールになると考えられる.一方で,流
れ関数を用いる方法は 3 次元問題へ拡張する
ことができない.3 次元問題には,流体の流
速と渦度に基づく基礎式を用いる必要があ
5.主な発表論文等
(研究代表者、研究分担者及び連携研究者に
は下線)
〔雑誌論文〕(計 1 件)
渦法による浮体構造物の非線形波浪中挙動
解析法の開発,大窪慈生, 永田修一 , 今井康
貴 , 豊田和隆 , 新里英幸,日本船舶海洋工
学会論文集, NO.16,p.49-58,2012 査読有
http://dx.doi.org/10.2534/jjasnaoe.16.49
〔学会発表〕(計 1 件)
渦法による自由表面下の物体に作用する流
体力および周辺流場の解析,大窪慈生,永田
修一 ,今井康貴 ,豊田和隆 ,新里英幸
第 23 回海洋工学シンポジウム,2012.8.2~3
東京
〔図書〕
(計0件)
〔産業財産権〕
○出願状況(計0件)
○取得状況(計0件)
〔その他〕
なし
6.研究組織
(1)研究代表者
今井 康貴(IMAI YASUTAKA)
佐賀大学・海洋エネルギー研究センター・
准教授
研究者番号:90284231
(2)研究分担者
永田 修一(NAGATA SHUICHI)
佐賀大学・海洋エネルギー研究センター・
教授
研究者番号:30404205
豊田 和隆(TOYOTA KAZUTAKA)
佐賀大学・海洋エネルギー研究センター・
准教授
研究者番号:10274507
(3)連携研究者
なし
ダウンロード

研究成果報告書