物体周りの流れによる洗掘現象と
その制御に関する研究
野崎潤*1深江忍*2佐賀孝徳*3
The study on the scour phenomenon induced by
the local flow structure around the bluff body
and the control technique
Jun NOZAKI*l Sinobu FUKAE*2 and Takanori SAGA*3
,
Abs缶act
The flow stnlcture around a bluff body, the scour phenomenon of a bluff l)ody and the control tec㎞que of
horseshoe vortex in the uniform and shear flow were investigated using the且ow visualiZation technique. It was
found血at the stmcture characteristics and the difference of each vortex around several shape of bluff body in bo止
u曲㎜且ow and shear flow. And止e fea加re of血e scour phenomenon around several shape of bluff body血shear
flow was cleared and is interrelated with each flow stuctures. In particUlar, each circUlar cylinder with through hole
and ch℃ular tUbe reduces the血tensity of horseshoe vortex, or is able to control the locaHlow structure and local
scour around the bluff body.
Key Words:horseshoe vortex, flow visualization, miform flow, shear・且ow, scour
1.緒論
@一
河川に建設される橋脚は橋を支える重要な構造
物であり,その構造物の安全性を確保することは,
土木技術者にとって重要な使命である.日本の河
川の河状係数は大きく,その流量の変化が非常に
大きいことが知られている。洪水時における橋脚
は,多くの漂流物からの衝撃力を受け,また橋脚
により堰き止められた漂流物が流れを閉塞させる
ことで,大きな被害をもたらすことが知られてい
魂グ
%Sk
る.また,同時に橋脚の基礎部分は洗掘を受け,橋
H(鰐co曲
の安全性に甚大な影響を与える.近年では,2004
Uh泄bm1皿OW
年7月18日福井県地方で起きた豪雨により,JR
越美北線の足羽川に架かる7橋脚のうち5つが流
図一1 実験装置の概略図
出するという災害が起こったばかりである.
この洗掘現象を明らかにし,制御することは,
河川工学上重要な課題であり1)∼3),この洗掘を引
*1
環境建設工学専攻
*2
(株)建設技術研究所
き起こす局所流れとして馬蹄形渦の存在が知られ
ている.馬蹄形渦に関する研究は,一様流では機
*3土木建築工学科
徳山工業高等専門学校研究紀要
42
野崎 潤・深江 忍・佐賀孝徳
表一1 実験条件
代表長さ
水深
物体
D(cm)
H(cm)
case1
円柱
8
10
case2
円柱
4
case3
円柱
8
case4
円柱
8
case5
角柱
8
case6
ひし形
レイノルズ数
Red=UD〃 Red=UH〃
備考
3500
4400
10
1700
4400
5.7
8700
6200
4
12600
6300
4
12600
6300
せん断流
11
4
17800
6300
せん断流
一 様流
せん断流
case7
円柱
8
11.6
4000
5800
case8
有孔円柱
7.6
11.6
3800
5800
Gase9
有孔円柱①
7.6
4
11500
6200
せん断流
Gase10
有孔円柱②
7.6
4
11500
6200
せん断流
case11
円柱
8
12.4
3800
6000
せん断流
case12
円筒付帯円柱
8
12.4
3800
6000
せん断流
case13
円柱
8
12.4
3800
6000
円筒付帯円柱
8
12.4
3800
6000
case14
械系も含め,多くの研究がなされている一方,せ
ん断流においては,それについてあまり多く行わ
れていないため,構造的に不明な点が多く残され
1.0 0 1.0
」_」_」_」_」_」_Iztd
一
日
ている.他方,その馬蹄形渦を制御する実験も行
なわれている4>.
佐賀らは,これまで円柱周りの流れ構造につい
X/d
て流れの可視化法を用いて研究を進めている5)∼8)。
そこで本研究では,実際に橋脚の洗掘現象が生
じるときの流れ場である,せん断流中に形成され
る馬蹄形渦の組織構造および変動特性を一様流中
のそれと比較した.さらに,これらのことを踏ま
えて,従来の洗掘深の評価実験ではなく,洗掘機
一 様流
せん断流
図一2 馬蹄形渦の可視化(case1)
構を明らかにするため,物体の洗掘現象を一様流,
せん断流において可視化実験し,その形成過程の
特徴を流れ場の特徴を含め考察した.また,馬蹄
形渦の制御を行う実験を行い,洗掘現象の変化と
流れ場の変化についても考察を行った.なお本論
で用いる「一様流」とは,ハニカム以降に形成さ
れる一様流が,水深の大部分を占める場合を示し,
壁面近傍では層流境界層が形成されている.
よび乱流促進用のスプリングワイヤー,下流端に
は水位調節用の堰を設置した.一様流における実
験では,円柱より上流70cmの位置にハニカムを設
置し,水素気泡のタイムラインを用いた流れの可
視化により,乱れが生じてないこと,上部では水
深方向の速度勾配を持たないことが確認された.
実験は水路上方からの全体視および斜め上方か
らの全体視による可視化を行い,その形象がデジ
2.実験装置および実験方法
タルビデオカメラにより撮影された.
実験装置には,長さ10m,幅60cm,高さ15cm,
水路床勾配1/1000の総アクリル製開水路を使用
した.開水路流れの中に円柱,ひし形,角柱,有
流れの可視化には水素気泡をトレーサーとして
用い,洗掘実験には標準砂を用いた.水素気泡は
陰極にタングステン線,陽極に銅板を用い,それ
に500Vの電圧を加え,水の電気分解を行うことで
タングステン線より発生させた.図一1に実験装置
孔円柱,円筒付帯円柱をそれぞれ鉛直に挿入し,
せん断流においては上流端に整流用のハニカムお
No.29 (2005)
の概略図,表一1に実験条件を示す.
43
物体周りの流れによる洗掘現象とその制御に関する研究
3.馬蹄形渦の構造および変動特性
08
0.7
3.1流れ場の相違による馬蹄形渦の比較
本研究においては,馬蹄形渦の制御を最終目標
としている.しかし,流れ場における馬蹄形渦の
構造的特徴を明らかにすることは重要なことであ
る.そこで,この章ではこれまでに行なった研究
06
0.5
ロ
:〕04
0.3
0.2
0.1
0
0
3
1 t/To 2
内容を示す.
円柱周りの一様流とせん断流中における馬蹄形
渦の一例を図一2に示す.それぞれ,上図は水路上
方,下図は水路斜め上方より同時可視化を行った
ものである.これより,一様流においては乱れが
少なく,はく離現象に伴う安定的な3本の渦構造
が認められる.せん断流中では,bursting現象に
伴う低速縞の形成から,上昇流と下降流が時空間
的に非定常に形成されており,常に乱れが生じる
一 様流
α8
一◆−8
0.7
十b
−N」一一一一
0.6
−)re−c
0.5
−
a>α4
℃一一 一H
0.3
02
0、1
0
0
3
1 t〆To 2
ため,渦構造は不安定となる7).
これらの渦はビデオ観察より円柱近傍へと移動
せん断流
することが認められ,その変遷をまとめたものが
図一3であり,上図は一様流,下図はせん断流の移
図一3 変動特性
動特性である.縦軸は円柱前端を原点とした上流
方向への距離(L),横軸は時間軸(t)を示し,それ
ぞれ使用円柱径(D),渦の発生周期(To)で無次元化
している.これより,一様流では円柱径の8割程
度より馬蹄形渦が安定的に発生し,移動している
ことが示される.しかし,円柱近傍に形成される渦
はあまり変動しないが,渦の接近時のみ上流方向
へ移動する傾向がある(図中a).
せん断流においては円柱径の6割程度から渦が
発生し,形象は不明瞭となり安定的な3本の渦構
図一4 水平断面形象(case2)
造も見られないが,円柱近傍の渦(図中c)は,わ
ずかな移動を伴いながら安定性を保つ.特にビデ
オ映像より,せん断流中の変動特性は円柱から周
囲方向への流れが一様でないため,強い流れが形
成される領域では,外部からの円柱方向への流れ
と強い相互作用が認められた.
3.2物体前方の馬蹄形渦構造
図一4は各馬蹄形渦の位置関係を明らかにする
ため,トレーサーの発生高さY/Dを変化させたも
Sepaiation point
のである.Y/D=O.14の場合は円柱近傍の馬蹄形渦
が,より水路床に近いY/D=0,044では遠方の馬蹄
形渦が可視化された.また,ビデオ映像より,3
本の馬蹄形渦の外側に上流方向へ掃き出される流
れが認められたことからも,馬蹄形渦の物体前端
図一5 馬蹄形渦の円柱前方の移動モデル
徳山工業高等専門学校研究紀要
44
野崎 潤・深江 忍・佐賀孝徳
での構造は図一5のような模式図で示される.
物体よりも遠方の領域ではく離した流れが,馬
蹄形渦を形成し,壁面から流れながら流下する.
物体前端まで移送した渦は物体近傍の渦と相互作
用しながら水路床方向へ巻き込まれ,馬蹄形渦の
下側を通ってはく離点方向の流れを形成する.
4.洗掘現象
4.1流れ場の相違による形象の比較
図一6は,円柱周りの一様流とせん断流における
洗掘形象の変化を示している.これは,水路上方
.Σ尋本_
からの全体視の各形象1分間隔の連続写真8枚の
1
洗掘の様子を合成させたものである.これより一
様流中においては,側面付近で発生した馬蹄形渦
は下流方向にほぼ直線状に流れており,せん断流
中においては,流下するにつれ物体の中心線側に
せん断流 一様流
図一6流れ場の相違による形象の比較(case3)
寄る傾向がある.また,時間経過とともに流下方
向に発達する洗掘の広がり速度は,一様流に比べ
せん断流のほうが大きいことが認められる.
これまで明らかにしているように,一様流にお
いては,下流方向へ引き伸ばされる渦運動がある
のに対して,せん断流においては,円柱に巻き込
む傾向がある.このため,上記のような洗掘形状
の相違を生じさせていると考えられる。
水平断面可視化の洗掘現象を時系列で示している.
4.2洗掘現象の時系列変化
このことは,ひし形前面に形成される境界層の流
れが,はく離後もその方向に維持されるためと考
図一7は,それぞれ円柱,ひし形,角柱における
Y/D
各画像は1分間隔で,流れ方向は,紙面の左から
右である.河床には標準砂を用いた.
図一7より,円柱においては,壁面に沿ってはく
離せん断層近傍に洗掘現象が認められる.時間経
過とともにその洗掘が流下方向に発達している
(図一7,①∼⑧).ひし形においては,ひし形頂点
からはく離が形成され,そこから洗掘が形成され
斜め下流方向に急激に広がりながら発達している.
ソゆ
1:ヨ
1.o
廻
1::1
−
1.0
ー 1.0
.[皿ワ。㎜里〉
円柱
[一「[XID
O.0 1.0
「[[[「[x/D
−
1.0 0.0 1.0 2.0
ひし形
図一7洗掘現象の時系列変化(case4, case5, case6)
No.29 (2005)
角柱
45
物体周りの流れによる洗掘現象とその制御に関する研究
えられる.角柱においては,前縁はく離が形成さ
れ,そこから流下方向へ洗掘が発達することが認
められる.特に前縁部においては,洗掘深が最も
−
1.o oo 1.o 2.o 3e −.e oo 1.0 3o
LL■L.Lb.、 L■LjL■]L■L./。
週
壽週
大きいことが認められる.
これらの洗掘を比較する上で,物体前面のよど
み領域の大きさの観点より考察を行なう.よどみ
領域が最も大きいと考えられる角柱では,その側
面で強いせん断層が形成され強い馬蹄形渦により,
洗掘深の大きな現象が発生したと考えられる.一
方,円柱,ひし形では,よどみ領域は相対的には
小さいため角柱のような洗掘が認められない.
5.洗掘の制御
5.1有孔円柱
5.11水素気泡を用いた馬蹄形渦の特徴
図一8に水素気泡による全体視を示す.上図は一
YID
Y/D
せ
ん
断
流
FLOW■■■■畠レ
円柱
有孔円柱
図一8 水素気泡を用いた馬蹄形渦の特徴
(case7, case8)
FLOW
Ls/D
様流,下図はせん断流の場合である.一様流では,
縦軸は円柱中心を原点としたZ軸方向の距離,同
じく横軸はX軸方向の距離であり,円柱径Dで無
Lf/D
次元化した値である.本実験では,Lf/D, Ls/D, Lb1/
D,Lb2/Dを図一9のように測定した.せん断流では,
それぞれ円柱と有孔円柱の物体前部に形成される
馬蹄形渦の形象を時系列に示しており,各画像は
1秒間隔である.有孔円柱とは,馬蹄形渦の制御
図一9馬蹄形渦のモデル図
としてよどみ点の圧力調整を試みたものである
(図一10).
図一8より一様流中における円柱と有孔円柱の
測定結果を比較する.円柱においてLf/D=0.80,
Ls/D=0.60, Lb 1/D=1.93, Lb2/D=2.34であり,有孔
円柱においては,Lf/D=O. 57, Ls/D=0.71, Lb1/D=
1. 87,Lb2/D=2. 10と円柱の馬蹄形渦が広く発生し
◎
ている.
一方,せん断流において,円柱では馬蹄形渦が
有孔円柱 円筒付帯円柱
a,b, c(図一8)のように比較的安定に形成されて
図一10 有孔円柱・円筒付帯円柱のモデル図
いるのに対して,有孔円柱においては不安定であ
り,あまり馬蹄形渦は観察されなかった.
また,円柱と有孔円柱において1分間に形成
される馬蹄形渦の形成時間を調べ,図一11に結果
を示す.図中の黒い部分は,馬蹄形渦の形成時間
を示し,白い部分は,馬蹄形渦が形成されてない
ことを示す.円柱においては,馬蹄形渦が比較的
安定して形成されているのに対し,有孔円柱にお
いては不安定で,円柱と比べると,あまり馬蹄形
渦が確認されなかった.このことより,物体前面
の圧力を低下させることにより馬蹄形渦の発生を
円柱
㎜㎜㎜]
20
40
61
t(sedi
有孔円柱
㎜[圃
図一111分間に形成される馬蹄形渦の発生時間
徳山工業高等専門学校研究紀要
46
野崎 潤・深江 忍・佐賀孝徳
ソの
yの
漕
遡
潟
「T−「下「 XID [「一[「[x/D
[[[[[[x/D
O.0 1.o FLOW O.0 1.0 2.0
O.0 1.0 2.0
一
有孔円柱①
円柱
有孔円柱②
図一12洗掘現象の比較(case4, case9, case10)
抑制していると考えられる.
5.12上方全体視
図一12は,それぞれ円柱,有孔円柱①,有孔円
柱②における全体視の洗掘現象を示している.各
画像は上から下に従い,低レイノルズ数から高レ
イノルズ数に変化する.洗掘の可視化には標準砂
を用いた.有孔円柱①,有孔円柱②は,それぞれ
砂層表面からほぼ上方2㎜,1.2cmに直径5㎜のス
円
柱
トロー1本を円柱に貫通させ,馬蹄形渦の制御と
して,よどみ点の圧力調整を試みた.
図一12より,円柱においては,壁面に沿っては
く離せん断層近傍に洗掘現象が認められる.Red
の上昇とともにその洗掘範囲が流下方向に発達し
ている.有孔円柱①においては,Red=11500で洗
掘が形成されているが,有孔円柱②においては,
わずかに洗掘が形成されているだけである。さら
に,Red=13900においても,有孔円柱①は有孔円
柱②に比べ洗掘範囲が大きいことが認められる.
円
筒
付
帯
円
柱
図一13斜め全体視(casell, case12)
これらの洗掘を比較する上で,物体前面のよど
み点の流れ場の変化より考察を行なう.円柱では,
れない.
円柱前面によどみ点が発生するため,馬蹄形渦が
円柱周囲に形成され,洗掘現象が発生したと考え
られる.一方,有孔円柱①,有孔円柱②では,円
柱前面の穴により,よどみ点の圧力を低下させ,
馬蹄形渦の形成が弱められる.そのためRed;9200
においては,有孔円柱①,②とも円柱前面に馬蹄
形渦が形成されず,円柱前面の洗掘現象は観察さ
また,有孔円柱①,有孔円柱②における穴の高
さの相違により,洗掘の形成に変化が認められ,
有孔円柱②が相対的には効果的な制御を示してい
る.このことについては,今後の位置と大きさを
系統的に変化させ,その洗掘現象の変化を調べる
No.29 (2005)
必要がある.
47
物体周りの流れによる洗掘現象とその制御に関する研究
5.2円筒付帯円柱
5.21斜め全体視
囲旺1皿≡]一
図一13は,円柱と円柱に円筒物を巻き付けた円
筒付帯円柱の物体の近傍に形成される流れ構造の
特徴の相違を示している.円筒物は,河床と接す
t(sec)
るように取り付けてあり,円筒物の穴の大きさは
1.5cmである(図一10).上図は物体の周りに円筒物
を巻きつけていないものであり,下図は巻きつけ
ているものである.各画像は1秒間隔であり,流
れ方向は,紙面の左から右である.
図一13より,円柱においては,前部に安定的な
図一14 1分間に形成される馬蹄形渦の発生時間
渦構造が形成され,時間の経過とともに渦が前部
近傍で巻き続きを繰り返していることが認められ
る.一方,円筒付帯円柱においては,前部で安定
的に渦構造が形成されることはなく,不規則な渦
の流れが観察される.また,有孔円柱と同様に円
柱と円筒付帯円柱における1分間に形成される馬
蹄形渦の形成時間の結果を図一14に示す.
これらのことから,円柱においては渦度の強い
馬蹄形渦が円柱周囲に形成され,また円筒付帯円
柱においては,円柱前面の円筒物の穴によりよど
み点の圧力を低下させ,馬蹄形渦の形成を弱めて
いると考えられる.
5.22上方全体視
図一15に水素気泡による全体視を示す.上図は
一 様流,下図はせん断流の場合である.
図一15より一様流中における円柱においては,
安定した渦が形成されているのに対して,円筒付
帯円柱においては,渦に乱れが生じ不安定である
様
流
せ
ん
断
流
図一15 上方全体視(casel3, case14)
ことが認められる(図中a).また,せん断流中に
おける円柱においては,渦が流下するにつれて円
柱の中心線に寄る傾向があるのに対して,円筒付
一様流中およびせん断流中に置かれた物体周り
に形成される流れ構造,洗掘形象の特徴について
帯円柱においては,渦が時間の経過とともにその
特徴から以下の結論が得られた。
まま流下することが認められる.
(1)せん断流に形成される馬蹄形渦による洗掘形
これらのことから,円柱前面の円筒物の穴によ
り,よどみ点の圧力を低下させ馬蹄形渦の形成を
弱めていることが考えられる.この結果において
も,有孔円柱と同様なことが考えられるが,実用
化のことを視野に入れるならば,円筒付帯円柱を
用いたほうが物体の構造が安定しており適当だと
考えられる,また,今後の円筒物の穴の位置を系
統的に変化させ,渦の形成の変化を調べる必要が
象は,一様流よりも流下するにつれ物体の中
心線側に寄る傾向がある。また,時間の経過
とともに洗掘の速度においても,せん断流の
方が大きい
(2)物体の形状の変化における洗掘形象の相違に
ある.
ひし形においては,よどみ領域は相対的に小
さいため角柱のような洗掘は認められない.
(3)円柱と有孔円柱における洗掘形象の相違につ
6.結論
可視化を行い,また制御実験における流れ構造の
ついて,角柱においては,よどみ領域が大き
いためその側面で強い馬蹄形渦が形成し,洗
掘深の大きな現象が発生した.一方,円柱,
いて,円柱においては,渦度の強い馬蹄形渦
徳山工業高等専門学校研究紀要
野崎 潤・深江 忍・佐賀孝徳
48
が円柱周囲に形成されているため,深い洗掘
が認められる.一方,有孔円柱では,通常の
円柱に比べあまり洗掘は認められない.
pp.33−42, 1993.
2)
石野和男・大谷英夫・藤井秀博:急潮流下に
おける橋脚周辺の捨石洗掘防止工の設計法に
(4)円柱,有孔円柱における馬蹄形渦の特徴につ
関する研究,土木学会論文集,No.521/ll−32,
いて,一様流においては,円柱のほうが有孔
円柱よりも広く渦が流下することが認められ
た.また,せん断流における円柱では,馬蹄
pp.123−133, 1995,
3)
形渦が安定して形成されるのに対し,有孔円
柱では,あまり形成が認められない.
(5)円柱,円筒付帯円柱における馬蹄形渦の流れ
4)
規則な渦構造が形成される.また,円柱の方
が円筒付帯円柱よりも,渦が流下するにつれ
円柱の中心線に寄る傾向がある.
C.V. SEAL and C. R. SMITH:Visualization of a
mechanism for three−dimensional interact−
構造の特徴について,円柱においては,前部
に安定的な渦構造が形成されるのに対して,
円筒付帯円柱においては,安定的ではなく不
池谷毅・漆山仁・秋山真吾:流れによる構造物
周辺の最大洗掘深の予測と洗掘対策,鹿島技
術研究所年報,第47号,1999.
ion and near−wall eruption, J. Fluid Mech,
pp.394, pp.193−203, 1999.
5)
佐賀孝徳・今本雅恵・渡辺勝利:せん断流中
における円柱後流の三次元構造に関する研究,
水工学論文集,第46巻,2002.
6)
Takanori SAGA:Study on the three dimensio−
(6)これらの実験を総合して,有孔円柱・円筒付
nal vortical structure of the flow around
帯円柱は,馬蹄形渦を制御し,洗掘の制御も
可能とする.しかし,構造的安定性を踏まえ
acircu!ar cylinder, CD−ROM PROCEEDINGS of
ると,有孔円柱よりも円筒付帯円柱の方が実
用的である.今後,流れ構造と洗掘との関係
Control, Measurement and Visualization,
を明らかにするために低Re数で実験を行な
ったが,実用化のためには高Re数における実
7th International Symposium on Fluid
2003.
7)
験が必要となる.
8)
文献
1) 石野和男・後藤英一・中川良隆・岡田凌太:
佐賀孝徳他:物体周りの流れの三次元構造に
関する研究,流体力の評価とその応用に関す
る研究論文集,第2巻,pp52−56,2003.
佐賀孝徳・野崎潤・渡辺勝利・松田智恵子・
深江忍:物体近傍の洗掘現象に関する研究,
急潮流下海洋構造物周辺の捨石洗掘防止工に
流体力の評価とその応用に関する研究論文
集,第3巻,2004.
関する研究,土木学会論文集,No.462/VI−18,
(2005.9.5受理)
No.29 (2005)
ダウンロード

物体周りの流れに よる洗掘現象と その制御に関する研究