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斜面積雪の挙動の研究 ⅩⅨ : 積雪の塑性ポアソン比 3
大泉, 三津夫; 藤岡, 敏夫
低温科學. 物理篇 = Low temperature science. Series A,
Physical sciences, 43: 59-67
1985-03-18
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/18500
Right
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bulletin
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43_p59-67.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
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o OH'IZUMI and Tosio HUZIOKA 1
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7
)
斜面積雪の挙動の研究 X
I
X
一一積雪の塑性ポアソン比 3一 一
大泉三津夫・藤岡
敏夫
(北海道大学大学院理学研究科)(低温科学研究所)
(昭和5
9年1
0月受理)
1.はしがき
斜面積雪内の応力や積雪が構造物に及ぼす雪圧を,応力と歪速度との聞の構成方程式から
計算する際,密度や雪質に応じた塑性ポアソン比 νが必要となってくる。
著者らは平地積雪の均質な雪層で,鉛直方向の雪圧 P
vと水平方向の横圧力 Ph を厚さの薄
2
))。更に,最大
い円板型雪圧計で測定し,線型構成方程式を仮定して νを求めた(大泉,藤岡 1,
傾斜線を含む鉛直面(以下,流動面と呼ぶ。)内で平面歪を生じる,層境界がほぼ平行な斜面積
雪で 2種類の雪圧を測定した。これらの値と別に得られた主歪速度の値から流動面内の主応力
0
'3,勇断粘性係数マ,塑性ポアソン比 νの 2週間平均値を計算した(大泉,藤岡 2))。計算で
0
'1,
得られた 6,
,
63 は穿孔法(清水 3
))で得られた主応力と一致しJ.Iの値も平地積雪で得られた値
と一致した。
しかし,ここで得られた主応力は 2週間の平均値であり,これより短期間の応力状態を知
ることはで、きない。又,平地積雪で得られる νと斜面積雪で求まる νとでは応力状態が異なるた
め
, νに違いが生ずる可能性がある O
今回は, (
1
)
雪圧計の直径の測定値への影響を平地積雪で調べ, (
2
)
斜面積雪で流動面内に存
在する 3個の雪圧を連続的に測定し,同じ面内の主応力的
63をこの
向だけを使って求めた。更に, (
3
)
等高線方向の主応力的の測定値と
3個の雪圧とそれらの方
6"
63から
νを計算し,平
地積雪で得られた νと比較した。
2
.方 法
2-1.構成方程式と塑性ポアソン比 ν
雪は粘弾性体であるが,応力が小さい場合,近似的に圧縮性ニュートン粘性流体とみなす
ことができる (Mellar and Smith4),
Salm5,
6
)
)0 Salm6
)はこの近似が可能な応力の目安とし
てlOkpaという値を与えている。ここで扱う平地積雪や斜面積雪では,通常,積雪上部荷重(積
雪水量)はこの応力値と同じ程度である。それ故,ここでは取り扱い易さを考慮して,雪を等方
均質な圧縮性ニュートン粘性流体と仮定する。この時,主応力引 (
i=1,
2,
3
) と主歪速度ムと
の聞に
* 北海道大学低温科学研究所業績
第2
6
8
4号
低 温 科 学 物 理 篇 第4
3輯 昭 和 5
9年
6
0
大泉三津夫・藤岡敏夫
OI
研あァ (-ν1,
+(1+
ν)
d
(
1
)
l)
が成り立つ。ここで 1
,は応力の 1次不変量, νは塑性ポアソン比, μは勇断粘性係数で、ある。な
、
は μをマとしている o
お,前論文(大泉,藤岡 2)) で
し,代数的に大きいものを E"
Et,引は伸び又は引張り応力の場合を正と
d,
とする。
平地積雪ではまわりを拘束された一軸圧縮歪が生じ,
=
, ε2 0, 町
E
が成り立つ。ここに e11
鉛直方向の主応力
d3
(
2
)
62
e2,d h σ 2は水平面内に存在する主歪速度,主応力である。雪圧計で
(=PV),水平方向の主応力引(=Ph) を測定すれば,
ν=dt(=詩子了)
によって νを求めることができる。 (
3
)は(
1
)で i
=2 とし
(
3
)
(
2
)を使うことによって得られる。
次に,流動面内で平面歪を生じる斜面積雪について考える。流動面内に存在する主応力と
主歪速度を各々
d " d3 σ
(,
>σ3),E"
>ε3) とし,これらに垂直な主値を代数的大小に
E
-3
(
E
-,
'
(
3
)を求めた時と同様な手順で,
かかわらず d2,E-2 (= 0) とする。平地積雪で'
.2(=O) =
l
2
μ(
1+ν)
(
6
2一 ν(
d3十 円 ) )
から,
ν
1
1
2一
一
一角 +
1
1
3
(
4
)
が出てくる。 σ
1とσ
3は次節 2- 2で述べる方
法で求め,
σ2は雪圧計によって実測した(第
1
3
)と(
4
)は同じ式であるが,応力の場が異
図)
0(
4防
なるため νも異なる可能性がある。今後, (
νを平地積雪で得られる νと区別してJ,isと書
く
。
X
A
α
¥
りト
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1¥
白
に
二
〉
よ
a
\J~
2-2. 斜面積雪内の主応力 11,
,σ
3の連続測
定
はしがきで述べた様に,前論文の主応力
算出法では 2週間の平均的な主応力しか求め
ground
られない。これは,歪速度の測定期聞が 2週
間であるためである。今回は雪圧計で流動面
内に法線を有する面に働く垂直圧縮応力向t
とσ酬が水平軸
し(第 1図),
(
X軸)となす角度ムを測定
3個の σ810 01の組 (i=1,2,3
)
からモール円を使って σ h 内の{直及び、引が X
軸となす角度 αを求めた。計算では先ず,
I
第 1図斜面積雪で、の雪圧 i
l
J
淀
(1.,は流動面 (Z-X
面)内に存在し,水平軸
(X軸)と f
l
tの角度をなす垂直圧縮応力。
y
13は流
(1,は等高線 (
軸)方向の主応力。 σJ, t
動面内に存在する主応力, αは主軸方向で、計
算で求める。
6
1
斜面積雪の挙動の研究車
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、
且
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から
一
一
一
一
一
一
. σ
z,rz
.rを求め,次に
から,行列演算で σx
aを計算した。但し,
A=す(九十円)
B=j(円 EL)2HJ
。
2-3. 雪圧計
今回は厚さは 6mmで、同じであるが,受圧板と全体の直径が異なる 2種類の大きさの雪圧
計を用いた。両方とも受庄板にかかる雪圧を小型ロードセル(容量500gw) で電気的に検出す
るもので,同時に傾斜角,雪温も測定できる。
第
ト一一併
2図に示した雪圧計は前回の測定で用いた
雪圧計を小型化して,直径lOcmとし,ロード
セルを 1個に減らしたもので,斜面及び平地
亙
0.6cm
の積雪で用いた。もう一種類の雪圧計は前回
10 cm
一一一斗
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使用した直径 15cmの雪圧計である。どちらの
雪圧計も積雪の自由な流動を極力さまたげな
い様に厚さを薄くし,更に,エッヂ効果 (
d
e
Quervain7)) を避けるため受圧板の直径を
全体の直径より小さくしてあるのが特徴であ
る
。
雪圧計の埋設方法は前回と同じである。
データーの読みとりは,平地積雪では 3時間お
きに,斜面積雪では 1時間おきに自動的に行
い,データ収録装置に記録した。以下に示す
測定結果は全て日平均値である。
第 2図 雪 圧 計
3
.結 果 と 考 察
3-1.平地積雪で得られた塑性ポアソン比 ν
第 3図に,北海道北部の間寒別にある北大天塩地方演習林庁舎裏の平地積雪で得られた鉛
.塑性ポアソン比 νの経過を示す。横軸は日付けである。圧力の
直圧力 pv. 横圧力 Ph. 雪温 T
大泉三津夫・藤岡敏夫
62
単位は gw/cm2,雪温の単位は。Cである。圧力を負にとっているので,雪圧を表わす軸には負
の値が目盛つである。図の中でA (実線)と書き添えた値は第 2図に示した直径lOcmの 雪 圧
計で測定した値で, B (点線)の添字の付いた値は直径 15cmの雪圧計で、得た値で、ある。
約 2週間おきに断面観測を行なった。第 1表に雪圧計を埋めた層の断面観測結果と当日の
PV ,Ph ,νの値を示す。上部荷重は雪圧計の受圧板上の単位断面を持った雪柱の重量で,鉛
直圧力 Pvに相当し,積雪サンプラーで測定した。この値は第 3図には黒丸で示しである。
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長 0.20
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1984
第 3図
4 匡 凶 止E 凶 ト ヨ ロ Z 的
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x
:
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コ
L
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A
P
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.
平地積雪における鉛直圧力 Pv,横圧力 Ph. 塑性ポアソン上t
v,雪温 Tの推移 0
・は雪圧計上の上部積雪荷重(積雪水量)。実線は第 2図の雪圧計で得た値。点線は
前論文(大泉,藤岡町で使用した雪圧計で測定した値。
第 3図の鉛直方向の雪圧 Pv(A),Pv(B )は,何れも,埋設後すぐに妥当な値を示し,
上部荷重の値と一致している。一方,水平方向の雪圧 Ph(A),Ph(B) は,埋設後約 2週間
を経て同ーの値を示すようになった。 Pvが雪の重量による圧力で, l
Ogw/cm2以上の値であり,
雪と雪圧計との密着が短い時間で達成されるのに対し , Phは鉛直方向の雪の縮みによって生
じる 2次的な圧力で,その値も 5gw/cm2以下と小さいため,密着するのに長い時聞が必要とな
る
。
雪圧計と雪との密着が完全となる 2月 1
0目前後から,融雪が始まり密着状態が再び悪くな
斜面積雪の挙動の研究 E
る 3月中旬まで,
6
3
Pv,Ph とも AとBの測定値が大体一致している。今回雪圧計を挿入した雪
層は,挿入時の厚さが 20cm,密度 0.29g/cm3の雪層である。以上の結果はドこの程度の雪層に
対しては,今回使用した 2種類の大きさの雪圧計で測定値に差が生じることはなく,測定器の
大きさの影響を考慮しなくてもよいことを示している。
2月 7 日から 3月 6日まで、の密度 0.327g/cm3~0.370g/cm3 のし足り雪の ν は,約0.16 とな
り,前回得られた結果(密度 0.28g/cm3~0.38g/ cm3のしまり雪に対し t
て
, ν=0.15) とほぼ
一致する。
2月21日から 3月 6 日までの第 3図の ν,Tと第 l表の密度,雪質の変化に注目する。この
期間,密度は一定で,雪質もこしもざらめ雪が混ざってくるが,ほぼ一定であった。雪温 Tだ
けが変化を示し, νはほぼ一定である o この結呆は,雪温は νに殆んど影響しないという Salm5)
の結果と一致している。
3-2. 斜面積雪で・の主応力の l
1
" l
13
第 4図に,同じく問寒別にある雪崩観測所の横にある傾斜角 310 の 斜 面 上 の 積 雪 で 測 定
した垂直圧縮応力 θ
σ,(
i=1,
2,
3
)と角度 8,の推移を示す。 σ
θ
t用雪圧計は平地積雪での Pv 用
雪圧計と同様に埋設後すぐに(通常 2
. 3日で)雪との密着が良くなり,妥当な値を示す。他
方,l
1
, 用雪圧計については,平地の Ph用雪圧計と同様で,まわりの雪となじむのに時間がか
かる。 2月末から 3月にかけての σaの変動から,この時期に積雪内で急激な応力変化が生じ
たことが予想される。
著者らは,この雪圧計で積雪内の急激な応力変化を検出できるかどうかを確かめるため,
人為的に応力状態を変えてみた。 4月 4日,雪圧計が埋まっている積雪の両側と斜面下方の雪
を取り除き,長さ 5.5m,巾 2m ,高さ1.36m の直方体の雪柱を切り出した。この雪柱より斜
面上部の雪は短杭(長さ約30cm) によって流動がさまたげられており,雪柱と斜面上部の雪
との接続部分は張力域となる。但し,底面での摩擦力の評価ができないため,この引張り応力
を理論的に算出することはできない。この接続部分は第 1図に示したのt 用雪圧計と円用雪圧
計の埋設位置の中間にあたり,それ故, l
1
, の値は Oにはならない。
第 5図に,測定の全期間について,
σ
θ
t と8;
1
)
、ら計算した流動面内の主応力引, σ3,第 l
日付け
1/26
平地積雪での断面観測結果と雪圧計による測定値
2/7
2/21
3/6
3/20
雪質
しまり雪
しまり雪
しまり雪
上部荷重 (
g
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c
m
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)9
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A
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B
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B
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B
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第1
表
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しまり雪
こしもぎらめ雪
0
.
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.
4
ぎらめ雪
こしもぎらめ雪
0
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4
ざらめ雪
大泉三津夫・藤岡敏夫
6
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gw/cm
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局
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4
第 4図
斜面積雪での垂直圧縮応力(7
8' と σ 8
,が X軸となす角度 8
1の推移
S
‘ O~.
~出込山イイ\.0
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1984
第5
図
計算で求めた流動面内の主応力 11.
,σ3. 第 1主軸の方向 αと実測し
た等高線方向の主応力的・
...は積雪の上部荷重.
0は力の釣り合い(藤岡めから求めた主応力
M
2
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) 6 2 H 4 J 4 2 u Z H E ト凶E E L D Z D
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斜面積雪の挙動の研究 E
6
5
主軸方向 α,及び,雪圧計で実測した等高線方向の主応力引の推移を示す。黒三角は雪圧計の
.
,Z.O
位置 zでの積雪の上部荷重 ω(=¥ pdz,pは雪の密度
z
。は積雪表面の Z座標)であり, αが
JZ
Oの時に σ
3と等しくなる。白丸は ω と αから後述する藤岡 8)の計算式によって計算した σh 引
である。但し,測定の初日と終日については藤岡の式による主応力計算は行なっていない。初
日については , G(Ji雪圧計の雪との密着が不完全なため,又,終日については, 4月 1
0日以後の
第 4図における九の大変動から判る様に融雪によって再び密着が悪くなり,両日とも九の値
の信頼性が低く, α が不正確なためである。
第 5図から,藤岡の計算式から求めた主応力と雪圧測定だけから求めた主応力が一致して
いることだ、判る。 4月初旬までの真の主応力 σ
3は,この期間に αが O。近くにあることから,上
部荷重仰とほぼ等しくなっていたと考えられる。雪圧測定から求めた ηは
2月2
3日の wと4
月 4日の ω とを結ぶ線分の近くに位置しており,真の σ
3に近い値となっていた。上に述べた様
に,人為的に応力状態を変えるまで、 αは0。の近くにあり,引の大きさも Oに近くなっている。つ
まり
4月の初めまでこの斜面積雪は,吉田 9)が述べた単独鉛直主応力状態を持続していた。
2月末から 3月上旬までの σ
3の変化は,第 4図の σ酎の変動に対応したものである。同時に,
σ2の絶対値(ここでは圧力)が増加しているが,埋設直後のことであり,積雪内部の応力変化
0日まで σ1とσ2には大きな変化が見られ,
に対応したものかどうかは判らなしミ。 4月 4日から 1
人為的に張力域とした影響が表われている。以上の 2例は積雪内の短期間の応力変化を知る測
定手段として,この雪圧計が有効でbあることを示している。
藤岡 8)は積雪に変形が生ビても各層境界が平行で、あるならば,
σ,/イ
-smα/sin(α+判
的 / イ ニ -cos a/
cos (α+g
:
>
)
が成り立つことを示した。ここにがは斜面に垂直な単位断面をもっ雪柱の重量で,イ =ωcosg
:
>
が成り立つ o r
pは斜面の傾斜角である。この 2式
で
、 αが負から Oに近づくと, σ,
/
w
'は大きく減
少するが,円/
w
'はほとんど減少しない。第 5図の 3月中の σh 円と αの関係は,定性的に藤岡
のこの計算式と一致している。
0,
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前
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1
9
8
4
第 6図
斜面積雪で得られた塑性ポアソシ比 νsの推移
6
6
大泉三津夫・藤岡敏夫
3-3. 斜面積雪で得られた塑性ポアソン比 νsと平地積雪で得た νとの比較
sを
第 6図に,第 5図の0""σ2,向から求めた 4月 4日までの斜面積雪の塑性ポアソン比 ν
2日では 0
3日の雪の密度は 0.285g/cm3で,雪質はしまり雪であった。 3月2
.
3
6
0
を示す。 2月2
g/cm3の密度で, しまり雪とこしもざらめ雪とが混ざった雪質になっていた。 4月4日には密
.385g/cm3となっている。 2月2
3日から 3月2
2日までの斜面積雪と, νこ 0
.
1
6を得た 2月
度は 0
7日から 3月 6日までの平地積雪について考察する。この期間の斜面積雪の密度範囲は 0
.
2
8
5
-0.360g/cm3で,平地積雪での密度範囲 0.327-0.370g/cm'3と大体重なっている。又,斜面積
雪の雪温は図に示さなかったが,その温度範囲は平地積雪での雪温の範囲とほぼ等しい。更に,
雪質も同じ変化を受けている。にもかかわらず, ν
sは νの約切になっている。
Salm5)は多くの著者が求めた雪の塑性ポアソン比について考察し,同じ密度でありながら
i
)
測定方法の違い(応力状態の違い),
これらの塑性ポアソン比が大きく分散する理由として, (
(ii)ニュートン粘性流体の仮定からのズレ(非線型項の寄与),
i
)積雪の組織の違い,の 3点
(
ii
を掲げている。今回得た h とνについては,主応力がそう大きくないことからニュートン粘性
織 の違いも,上述した様に両者とも同じ雪質の変化
流体という近似は妥当なものであって,組J
sとνの違いは,主に,
を行なっていることから近似的には無視できる。よって,今回得た ν
応
力状態の違いがもたらしたものと考えられる。
4
.ま と め
平地積雪で直径の異なる 2種類の雪圧計を使って,鉛直圧力,横圧力を両方の雪圧計で測
定し,積雪を圧縮性ニュートン粘性流体と仮定して塑性ポアソン比 νを計算した。そ明古果
o
2
種類の雪圧計で測定値に差は現われず,密度 .
327-0.370g/cmのしまり雪に対して, ν = 0
.
1
6
3
が得られた。この値は前回著者らが得た値とほぼ等しい。
最大傾斜線を含む鉛直面(流動面)で平面歪を起こす斜面積雪で,流動面内に法線をもっ
面に働く 3つの垂直圧縮応力をその方向とともに 3個の雪圧計で測定し,連続的に流動面内の
1,σ
3を得た。同時に,等高線方向の主応力的の連続測定も行った。積雪内の応力状態
主応力 σ
が急激に変わった時,雪圧計の測定値及び主応力にもその変化が現われ,この雪圧計がこの様
な場合の有効な測定手段となることが判明した。主応力 σh 引と引の方向 αについて考察し,
吉田 9)の単独鉛直主応力状態が長期間持続したこと,及び,藤岡 8)の計算式と定性的に σ,- a
関係が一致することが判った。
斜面積雪で得られた三つの主応力から,塑性ポアソン比 νsを求めた。この νsはほぼ同じ特性
をもっ平地積雪から得られた νの約汗の大きさで, Salm3)の議論をもとにその原因を考察した。
本研究に際し,雪害科学部門の方々,天塩地方演習林の方々には大変お世話になった。こ
こに記して深く感謝いたします。なおこの研究は文部省雪崩特別事業費で行なわれた。
文 献
1
) 大泉三津夫・藤岡敏夫
41,4
3
5
4
.
1
9
8
2 斜面積雪の挙動の研究沼.積雪の塑性ポアソン比 1,低温科学,物理篇,
斜面積雪の挙動の研究 E
6
7
9
8
3 斜面積雪の挙動の研究 XIX. 積雪の塑性ポアソン比 2;低温科学,物理
2
) 大泉三津夫・藤岡敏夫 1
篇
, 4
2,8
9
1
0
0
.
9
6
8 斜面積雪の内部歪1.低温科学,物理篇, 2
6, 1
4
3
1
6
8
.
3
) 清水弘 1
4
) M
e
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9
6
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4
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5
.
2 (H.o
5
) SalmB
.1
9
7
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7
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0
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.
6
) SalmB
.1
9
7
8 SnowF
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l Symposiumo
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s, D
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Symposium, 1
9
6
5
. 1AHS-AISHPubl
.6
9, 1
5
4
1
5
9
.
8
) 藤岡敏夫 1
9
7
4 斜面積雪の挙動の研究 N. 斜面積雪内の応力,低温科学,物理篇, 3
2, 1
0
5
1
1
2
.
9
) 吉田順五 1
9
8
0 斜面積雪の挙動の研究班.単独鉛直主応力状態,低温科学,物理篇, 3
9, 1-16.
Summary
Viscous analog o
f Poisson's r
a
t
i
o(
o
rp
l
a
s
t
i
cP
o
s
i
s
s
o
n
'
s ratio)νweremeasured
i
n asnow cover on both al
e
v
e
lground andamountain s
l
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p
e by t
h
el
u
s
eo
ft
h
i
n snow
pressure gauges,by assuming snow a
s compressible Newtonian viscous f
l
u
i
d(
e
q
.
(
1
)
)
.
o
r
i
z
o
n
t
a
l pressure Ph and v
e
r
t
i
c
a
l pressure Pv
, were
Tow snow pressures,h
measured i
n a snow cover on a l
e
v
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l ground. To check t
h
e s
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z
e e
f
f
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ft
h
e
pressure gauge on t
h
e measured v
a
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e,t
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i
l
i
z
e
dt
h
egaugesofthed
i
f
f
e
r
e
n
t
diameters, t
y
p
e A (diameter= 1
0cm, F
i
g
.
2
) and t
y
p
e B(
d= 1
5cm, used i
nt
h
e
previous measurement2
)
)
. Figure 3 shows Pvand Ph, snow temperature T, and
νcalculated from Pvand Ph (
e
q
.
(
3
)
)
. I
ti
s seen t
h
a
t there i
s I
it
t
l
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i
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f
e
r
e
n
c
e
ts from t
h
e gauges o
fb
o
t
ht
y
p
e
s
. Values o
f νwere nearly 0.16
between t
h
e resu1
from February 7 t
o March 6,when snow was dry compact snow, wit
h d
e
n
s
it
y
ranging from 0.327 t
o 0.370 g/cm3
.
Meanwhi
1e i
n a mountain snow cover three nomal compressive stresses σ酎
were measured using three Type-A pressure gauges,as well as t
h
e
i
r angles 8,
from t
h
eX - a
x
i
s using t
h
e clinometer b
u
i1
ti
n each g
a
u
g
e
.
The gauges
were
placed i
n a snow l
a
y
e
r,w
i
t
ht
h
e normalo
feachpressure p
l
a
t
e being in t
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plane where p
l
a
i
ns
t
r
a
i
nt
o
o
k place (
F
i
g
.l
)
. Moreover, the principal stress σ2
p
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l
l
e
lt
ot
h
e Y.axis was a
l
s
o measured. The p
r
i
n
c
i
p
a
l stresses σ h σ 3, and
t
h
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i
r
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s
tp
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n Fig.5
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h
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and θ1 i
n a similar way t
ot
h
e Rosette analysis i
n s
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i
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.
c
a
l
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u
l
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t
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I
t was confirmed t
h
a
t during t
h
e midwinter, 1
)t
h
e mountain snow cover remained
i
nt
h
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t
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)
), 2
)t
h
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l
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i
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n between σhσ3
and αwere s
i
m
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l
a
rt
o those formulas i
n
d
i
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t
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d by Huzioka8), and
3
) t
h
e snow
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f
f
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o pick up an abrupt change i
n stress, as seen i
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e February (
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t
if
ici
a
l
l
y
)
.
Values ofνs which were calculated frpmσ1,σ3 and σ2 according t
o e
q
.(
4
)
are shown i
n Fig.6. They show a l
i
t
t
l
ef
l
u
c
t
u
a
t
i
o
n
s around 0.06,
which
are
rather smaller thanνobtained from t
h
e snow coveront
h
el
e
v
e
lground. As p
o
i
n
t
e
d
o
u
t by Salm5), t
h
e difference between νs and νcould be a
t
t
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i
b
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l ground) andp
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s, uniaxi
s
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i
n(
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nt
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)
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Instructions for use Title 斜面積雪の挙動の研究 ⅩⅨ : 積雪の塑性