クローズアップ
意見書「野田新内閣に望む」を発表
関経連は、9月8日、野田内閣の発足に際して5つの政策要望を含む意見書「野田新内閣に望む」を発表した。
新内閣には、震災後の新しい国づくりのビジョンを描くとともに、その実現に向けたリーダーシップの発揮
を強く求めた。当会としても、復興財源や財政健全化の源泉となる産業活動によりわが国の経済成長に貢献
する役割を果たし、ともにこの難局を乗り切りたいと決意を表明した。
事のリーダー」として、
「新しい国づ
災地域の復興への希望と意欲を支
くり」を進めるために、たとえ国民
えていく必要がある。それと同時に、
に痛みを伴うような施策であろうと、
単なる復興ではなく「創造的復興
わが国経済は、国難とも言うべき、
断固たる決意で実行するべきであ
=成長戦略」と位置づけ、復興を
度重なる試練が続いている。
「失わ
る。その「実行力」を示すならば、
通じてわが国の新たな経済成長に
れた20年」にわたるデフレ状態、
リー
それに対して国民の側もしっかり応
つなげることが必要である。この場
マン・ショックなどにより、世界G
える必要がある。
合、復興を着実に進める上で必要
DPに占める日本のシェアは1995年
これまでわが国は「ものづくり」
な財源確保については、財政健全
の18 % を ピ ー ク に 減 少 に 転 じ、
を中心とした産業活動の発展によ
化と両立させる視点を欠いてはなら
2009年には8.7%まで低下した。加
り、経済成長を実現してきた。これ
ない。
えて、東日本大震災は、われわれの
からも、われわれ経済界は、復興財
当会は、
「震災復興対策特別委員
想像をはるかに超えた被害をもたら
源や財政健全化の源泉となる産業
会」を立ち上げて、西日本全体が一
し、国民の価値観や考え方も大きく
活動によってわが国の経済成長に貢
丸となった復興の支援に取り組んで
揺らいでいる。
献する役割を果たしていく。グロー
おり、今後も被災地ニーズに沿って、
今、政治に求められているのは、
バル競争が激化する中、歴史的な
タイムリーな支援を実施していく。
まずは、いかにして震災からの創造
超円高をはじめとする五重苦に喫緊
また、わが国の政治・行政・経済
的復興を成し遂げ、わが国を新たな
の懸案である電力供給不足問題が
の中枢機能は首都に一極集中して
発展に導くのか、さらには、外交面
加わった六重苦など課題を解決し、
おり、中枢機能のバックアップ体制
ではグローバル社会の枠組みの中で
ともに「成長戦略」の推進を軸とし
を構築しておくことは国家の危機管
日米関係をどう考えるのか、東アジ
た国づくりを前進させ、この難局を
理として急務の課題である。また、
ア地域に対してわが国がどのような
乗り切ってまいりたい。
課題解決にあたっては地方分権を
国の総力をあげて新しい
国づくりを進めるべき
互恵関係を構築していくのかといっ
たことについて、わが国の進むべき
新内閣に望む政策
道筋を明確に示すことである。
推進していくという視点が不可欠で
ある。関西は、すでに交通・情報通
信インフラが整っており、首都の
すなわち、新内閣は、
「わが国を
1.東日本大震災からの復旧・復興
バックアップ機能を担うエリアとし
どのような国家、社会にしていくの
復興基本法や復興基本方針が震
て最適である。さらに、関西広域連
か、国民をどう導くのか」という「め
災後の数カ月を経てようやく成立、
合が、震災支援で成果をあげるな
ざす国のかたち」を明示すべきであ
策定された。関西経済界が主張し
ど地域力を発揮している。こうした
る。そしてその実現に向けて、わが
てきた復興庁の設置、復興特区の
関西のポテンシャルをふまえ、わが
国全体をひとつに束ねるリーダー
創設などが盛り込まれたことは評価
国の中枢機能のバックアップ体制整
シップを発揮することを強く求めた
できる。
備に早急に着手すべきである。
い。
今後は、本格復興に向けてスピー
2.成長戦略の着実かつ迅速な実行
新内閣を率いる野田首相は、
「有
ド感を持って取り組み、被災者や被
これまでわが国は「ものづくり」
08 2011 November 経済人
を中心とした経済成長を実現してき
ラ輸出の促進に注力している。また、
子力発電所の利用、再生可能エネ
た。今後もそれを継続するには、
「も
関西文化学術研究都市(けいはんな
ルギーの活用、
新エネルギーの開発、
のづくり」を経済成長のエンジンに
学研都市)における、ロボットやバイ
省エネ社会の実現などを盛り込ん
据え、成長著しいアジアの需要を取
オなど新産業創出につながる研究開
だ中長期のエネルギー政策の指針
り込むなど、輸出を増やすしか道は
発を支援しており、こうした取り組
の早期策定を求める。その際、環
ない。しかし、国際的に高い法人税
みについて、政府の新成長戦略と大
境と経済の両立、エネルギー安全
負担、製造業派遣の原則禁止など
いに連携できると考えている。
保障などの観点を総合的にふまえた
の労働規制、TPP
(環太平洋経済
3.財政健全化への早期着手
現実的な方策の検討を望む。
連携協定)など経済連携協定への対
わが国の長期債務残高の対GDP
その上で、まずは、新内閣に望む
応の遅れ、温室効果ガスの25%削
比は、社 会 保 障 分 等を 含 めると
「復興」
「経済成長」
「財政再建」を
減目標、歴史的な超円高、電力供
200%を超える。日本の財政危機は
実現するためにも、現在直面してい
給不足といった輸出産業が直面す
欧米諸国より深刻で、政府が財政
る電力供給不足を早急に解消して
る六重苦に、国内での企業努力もも
再建策を早急に打ち出せなければ、
いただきたい。今夏の電力供給不
はや限界にきている。
近い将来の財政破綻も杞憂ではな
足が国民生活・産業活動に多大な
すでに「ものづくり」の海外流出
いとの見方が強まっている。財政規
影響を与えたことは否めない。今夏
は進行しており、このままでは国内
律を維持した復興財源確保と税財
以上に電力供給の逼迫も懸念され
の雇用機会喪失、地域産業の崩壊、
政の抜本改革は当然のことながら、
るこの冬に対する産業界の危機感
技能・ノウハウを生む生産現場の劣
昨年6月に閣議決定した「財政運営
を、政府はより深刻に受け止めるべ
化、貿易黒字を生む高い国際競争
戦略」で示した2020年度までのプ
きである。一刻も早く、政府自身が
力の減退・喪失により、日本経済は
ライマリーバランス(PB)の黒字化
責任を持って地元自治体の理解・
発展基盤を失ってしまう。
を実現するためにも、成長戦略の実
合意を得て、定期検査を終えた原
新内閣は、まず超円高の是正と
行とともに、税制、社会保障制度の
子力発電所の再稼働を実現し、電
電力不足の解消など足元の課題を
改革に一刻も早く着手する必要があ
力の安定供給を確保されたい。
優先的に解決し、グローバル競争に
る。
5.国益を追求した積極外交の確立
おいて企業が活力・競争力を最大
新内閣は、消費税率引き上げや
グローバル化が進む国際社会に
限発揮できる環境づくりに早急に取
社会保障費の抑制など具体的な収
おいて、わが国は積極的かつ主体的
り組むべきである。同時に、高度人
支改善策を先延ばしすることなく、
な外交を確立することが重要であ
材の育成、イノベーションを創出す
国民が安心できる持続可能な社会
る。その際、強固な日米同盟を基軸
るための先端分野の研究など、企
保障制度を実現するための改革に
とし、経済や安全保障上の課題解
業の競争力を下支えする政策を重
早急に取り組むことを望む。
決に協調してあたるべきである。そ
点的に実施するべきである。その上
4.電力の安定供給の確保
の上で、少子・高齢化の進むわが
で、具体的には、昨年6月に閣議決
エネルギー政策のあり方は、
足元、
国が持続的成長を遂げていくために
定した「新成長戦略」について、ス
中期、長期と時間軸を区切った議論
は、成長著しい中国、インド、AS
ピード感を持ってとにかく実行する
が必要である。わが国の経済や社
EAN諸国をはじめとしたアジアの
ことを強く望む。それが震災からの
会にかかわる重要な課題であり、国
活力を取り込み、アジア経済ととも
早期復興に寄与することにもなる。
情や科学的知見をしっかりふまえた
に発展できる協力関係を深化させる
当会は現在、
「環境先進地域・関西」
国家の方針を打ち立てる必要があ
べきである。
として、アジア各国への環境インフ
る。安全性確保を大前提にした原
(企画広報部 本堂貴一)
2011 November 経済人 09
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意見書「野田新内閣に望む」を発表