船舶分野における
配管経路自動設計に関する研究
九州大学大学院
工学府海洋システム工学専攻
安藤
悠人
2015 年 1 月
目次
第1章
序論
1
1.1
本研究の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.2
研究のアプローチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.3
本論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第2章
2.1
2.2
準備
7
船舶における配管設計の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2.1.1
系統図の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2.1.2
機器配置図の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
2.1.3
総合艤装図の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
CAD および XML ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
2.2.1
CAD の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
2.2.2 XML の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2.3
2.4
第3章
関連技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
2.3.1
ダイクストラ法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
2.3.2
タッチアンドクロス法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
2.3.3
焼きなまし法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
配管設計支援システムに関連する先行研究・・・・・・・・・・・・・・19
配管経路探索問題のモデル化
23
3.1
配管経路設計に関する設計項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
3.2
分岐の取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
3.2.1 T 分岐の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
第4章
1 本の配管経路における経路探索アルゴリズム
28
4.1
グラフ上の経路探索への帰着・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
4.2
各パイプピースの取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
4.2.1
直管の取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
I
4.3
4.2.2
エルボの取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
4.2.3
ベンドの取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
干渉判定およびコスト設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
4.3.1
干渉判定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
4.3.2
各パイプピースのコスト設定・・・・・・・・・・・・・・・・39
4.4
直管,エルボ,ベンドを含む経路探索アルゴリズムの予備実・・・・・・41
4.5
パイプラック空間および通路空間における配管経路の取り扱い・・・・・42
4.5.1
パイプラック空間への配管経路の優先的配置・・・・・・・・・42
4.5.2
通路空間における配管経路の迂回・・・・・・・・・・・・・・44
4.6
鳥居配管の回避・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
4.7
経路の探索対象空間におけるメッシュ分割・・・・・・・・・・・・・・47
4.8
第5章
5.1
5.2
5.3
第6章
6.1
6.2
第7章
4.7.1
経路の探索対象空間における不均一メッシュの適用・・・・・・47
4.7.2
径の小さい経路探索における追加措置・・・・・・・・・・・・49
最適解が複数本存在する場合の処理・・・・・・・・・・・・・・・・・51
複数経路への対応
53
複数経路の探索における 2 つの問題点・・・・・・・・・・・・・・・・53
5.1.1
探索順序による設計案への影響・・・・・・・・・・・・・・・53
5.1.2
最適解の選択による設計案への影響・・・・・・・・・・・・・55
タッチアンドクロス法,焼きなまし法を用いた配管経路探索・・・・・・57
5.2.1
タッチアンドクロス法の利用・・・・・・・・・・・・・・・・57
5.2.4
焼きなまし法の導入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59
反復過程における経路探索順序の影響・・・・・・・・・・・・・・・・61
シミュレーション実験
62
シミュレーション実験 1(バラストポンプルーム想定)
・・・・・・・・・62
6.1.1
実験条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62
6.1.2
シミュレーション実験 1 における獲得解・・・・・・・・・・・ 65
シミュレーション実験 2(デッキ裏スペース想定)
・・・・・・・・・・・74
6.2.1
実験条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74
6.2.2
シミュレーション実験 2 における獲得解・・・・・・・・・・・ 76
考察
81
II
7.1
提案手法の新規性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81
7.2
提案手法の実用化に向けた課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
第8章
7.2.1
ルーティングアルゴリズムの改良・・・・・・・・・・・・・・82
7.2.2
経路過程における膠着状態・・・・・・・・・・・・・・・・・83
7.2.3
各種パラメータの値・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84
7.2.4
船殻に沿った配管経路の探索・・・・・・・・・・・・・・・・85
7.2.5
施工性の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・85
7.2.6
設計案修正・改善システムとしての役割・・・・・・・・・・・86
7.2.7
干渉判定アルゴリズムの改良・・・・・・・・・・・・・・・・87
結論
88
III
第1章
序論
1.1 本研究の背景と目的
船舶の建造工程において,艤装設計には膨大な作業時間を要する.作業時間の短縮の
ため,近年では発達した情報処理技術を利用することで設計作業の省力化が図られてき
た.特に 3 次元 CAD の導入により,3 次元データを取り扱った設計・解析・生産技術
が普及しつつある.艤装設計の分野では,機器配置や配管経路を 3 次元空間中で可視化
することで設計案の修正が容易となり,作業の効率化が進められている.しかし,艤装
設計全体に目を向けると,未だに熟練者の経験に頼って問題の解決を図っている部分が
多い.近年では各造船所とも熟練者の確保が困難になってきており,若手技術者への技
術伝承問題も発生している.特に配管経路の設計作業については,経験を頼りに設計を
行う典型的な例となっており,船舶の設計作業全体の効率化を検討するうえで重要な課
題である.以上のことから,配管設計作業を省力化するシステムの必要性は日増しに高
まっていると考えられるが,配管設計問題は未だ学術的な検討が十分に行われた分野で
はなく,配管設計を自動的に行うシステムは存在していない.
配管設計問題の自動化が困難である主な理由として,問題の複雑さが挙げられる.配
管艤装においては,設計対象となる各機器の配置,およびそれらを接続する妥当な配管
経路を検討しなければならない.機器配置の問題では,各機器の操作性やメンテナンス
性を考慮しつつ,それらの妥当な配置場所の検討を要する.また配管経路の設計では,
設置された機器を接続する配管の経済性や安全性を考慮しなければならない.これらの
項目を評価する問題は,数値最適化および組合せ最適化を含んでいる.すなわち配管設
計問題は,各機器の最適な配置問題に代表されるような組合せ最適化問題,配管経路の
設計問題にみられるような連続変数を含む最適化問題,およびコストや操作性など複数
の評価項目を同時に考慮しなければならない多目的最適化問題である.ゆえに,既存の
設計支援システムを用いて,配管設計問題を単純化・定式化し,さらに自動的な解決を
図ることは困難である.
本研究ではこれらの課題の解決を支援するシステムの検討を行っている.配管設計支
援システムの構築によって,各造船所における作業時間を飛躍的に短縮させることがで
きる.そして,作業時間の短縮は各船舶の単価を下げ,造船所の競争力を押し上げるこ
とにつながる.また,配管設計支援システムを検討するうえでは,熟練技術者の作業分
析が必要となってくる.熟練者の洗練された作業を正しく理解することは,今後の配管
1
設計エンジニアの育成にも貢献する.
本論文では配管設計を支援するシステムとして,配管経路の設計作業を自動的に行う
システムの提案を行う.本論文の前半では配管経路 1 本における探索問題の定式化手法
の提案を行う.ここでは設計者が作業中に実際に配慮している項目(障害物との干渉,
配管長,曲りの数等)をコストとして定式化することで,従来見られなかった実用レベ
ルの配管経路設計を実現している.また本論文の後半部分では,経路探索される配管が
複数本ある場合においての探索手法を提案する.本手法の特徴として,電子回路の設計
における経路の干渉回避方法の一つであるタッチアンドクロス法に,最適化手法の一つ
である焼きなまし法を組み合わせていることが挙げられる.これにより獲得される経路
案は最適である保証はないが,膨大な数が存在する解候補の中から妥当な設計案を効率
的に獲得することができる.また最後に,今後の造船分野で配管設計支援システムが浸
透していくうえで,重要となってくる課題やシステムのありかたに関する検討を行う.
1.2 研究のアプローチ
配管設計問題を取り扱う場合,前節にて述べたように少なくとも二つの最適化問題を
取り扱う必要がある.設計者は初めに,設計対象空間内に存在するバルブやレデューサ
といった移動可能な機器の配置を検討する.この際,機器の配置場所はメンテナンス性
や作業性が考慮されている必要がある.本論文ではこの問題を「機器配置問題」と呼称
する.また,機器配置問題を考慮した後,設計者は配置された機器同士を接続する配管
経路を設定する.この問題を本論文内では「配管経路探索問題」と呼称する.その他に
も実際の設計者は配管経路の安全性や,設置された機器の利便性等についても検討を行
いつつ作業を進めているが,本研究では上記した二つの問題に重点を置いている.
配管設計支援システムにおける最終設計案を獲得するまでのプロセスを図 1.1 として
示す.
2
図 1.1:配管設計支援システムにおける設計案獲得までのプロセス
配管設計支援システム内での探索アルゴリズムを図 1.2 として示す.
配管設計支援システムでの探索アルゴリズム
ステップ1
系統図より機器の接続情報を読み取り,機器配置システムが初期
の機器配置を生成する.
ステップ2
配管経路探索システムが配置された機器同士を結ぶ配管経路を探
索する.
ステップ3
記録された配管の総長,曲りの数等を評価値として設計案を評価
する.
ステップ4
1 に戻り,新たな機器配置を作成する.この際,機器の場所は既に
作成されている設計案を参考にしたものとなる.
ステップ5
評価値が収束するまで,ステップ 2~4 を繰り返す.
図 1.2:配管設計支援システムでの探索アルゴリズム
3
ここで図 1.2 における,ステップ 1 およびステップ 4 で述べられている機器配置シス
テムに関しては木村の研究[17]により手法が提案されており,詳細は次章にて述べる.
本研究ではステップ 2 において使用される経路探索システムを研究対象としている.
提案するシステムでは「配管経路探索問題」の解決を目的としており,経済的・工学的
な観点から優れている配管経路の探索を行う.そこで本研究では妥当な配管経路を自動
的に探索するために「配管経路探索問題」をグラフ上の経路探索問題へと帰着させるこ
とで問題の解決を図っている.この手法を取り入れることで,グラフ上の最短経路の探
索を行う迷路探索アルゴリズムを適用することが可能となる.また,グラフ上のエッジ
に付加する重みとして ,障害物との干渉,配管長,各パイプピースの使用値などをコ
ストとして定式化することで,これらの項目を考慮したより実用的な配管経路の獲得が
可能となる.
また,提案する経路探索システムのさらなる特徴として,複数本の配管経路探索への
対応が挙げられる.配管経路探索を自動的に行う場合,配管経路を 1 本ずつ探索するこ
とで問題の解決を図ることができる.しかしこの場合,経路探索を行う順序等によって
最終的に獲得される経路案が大きく変化する場合がある.この問題を解決するために,
提案手法では干渉回避方法の一つであるタッチアンドクロス法を利用している.さらに,
探索プロセスに焼きなまし法を導入することで,最終的に獲得される設計案は,経路探
索の順序等の影響を受けにくいものとなっている.提案するシステムにおける特徴を
1) ~ 7)として以下に示す.
1) 配管経路探索問題をグラフ上の経路探索問題として取り扱い,迷路探索アルゴリズ
ムを使用する.
2) 対象空間をメッシュ状に分割し,その格子点を単位として経路探索を行う.
3) 配管経路中における分岐をバルブなどと同様一つの機器とみなすことで,パイプを
始点・終点を結ぶ分岐の無いものであるとする単純化を行う.
4) 経路中におけるパイプピースとしては,直管,エルボ,ベンドを取り入れる.
5) パイプラック空間および通路空間を考慮する.
6) 経路が垂直方向の U 字となっている「鳥居配管」の生成を可能な限り避ける.
7) 探索対象の配管経路が複数本ある場合,タッチアンドクロス法および焼きなまし法
を利用することで,最終設計案の探索を行う.
各アプローチの詳細に関しては第 3 章以降に記す.
4
1.3 本論文の構成
本論文は 8 つの章から構成されている.
第 1 章の「序論」では,本研究の研究背景と目的,配管設計支援システムの概要,お
よび各章の概要について述べる.
第 2 章の「準備」では,本研究を理解するための準備として,まず,船舶における配
管設計の概要を述べる.配管設計の概要としては,「系統図」,「機器配置図」,「総合艤
装図」についての説明を行う.次に,提案手法に関連する技術として「ダイクストラ法」
,
「タッチアンドクロス法」
,
「焼きなまし法」について,各手法の特徴および手順を説明
する.最後に自動配管設計に関する先行研究を紹介し,各先行研究で採用された手法の
考察を行う.
第 3 章「配管経路探索問題のモデル化」では,実際の設計者が作業過程で考慮してい
る点を「設計項目」として説明し,提案手法で探索対象とされている配管経路や障害物,
通路,パイプラックについて述べる.次に,配管経路中に存在する分岐点に関する詳細
や,提案手法内での分岐点の処理の方法を説明する.
第 4 章「1 本の配管経路における経路探索アルゴリズム」では,経路探索の対象とな
る配管が 1 本の場合における経路探索手法の詳細を述べる.まず,配管経路探索問題を
グラフ上の経路探索問題へ帰着させる手法について説明する.次に,提案手法内で考慮
されている 3 つのパイプピースについて説明する.3 つのパイプピースとは,「直管」,
「エルボ」
,
「ベンド」のことであり,各パイプピースの探索手順を示す.次に,経路探
索の過程で考慮されている 2 つの空間について述べる.2 つの空間とは「パイプラック
空間」と「通路空間」であり,配管経路探索における各空間の取り扱い方を説明する.
次に,配管経路が垂直方向に U 字となっている「鳥居配管」についての詳細を説明し,
鳥居配管の回避を目的とした経路探索手法の提案を行う.最後に,経路探索が行われる
空間内でのメッシュの分割方法について述べる.不均一なメッシュの適用方法および配
管経路がメッシュよりも細い場合での追加処理に関する説明を行う.
第 5 章「複数経路への対応」では,複数本の配管経路探索を行う場合における経路探
索手法の提案を行う.まず,経路探索対象となる配管経路が複数本存在している場合で
の 2 つの問題点について述べる.2 つの問題点とは「探索順序による設計案への影響」
および「最適解の選択による設計案への影響」のことであり,これらに関する詳細が述
べられる.次に,これら 2 つの問題点を解決するための経路探索手法に関する説明を行
う.提案手法ではタッチアンドクロス法および焼きなまし法を組み合わせたものであり,
探索手順の詳細が説明される.
第 6 章「シミュレーション実験」では,提案手法の有用性を確認するために行った 2
つのシミュレーション実験について説明する.2 つのシミュレーション実験とはバラス
5
トポンプルームを想定したシミュレーション実験 1 と,デッキ裏を想定したシミュレー
ション実験 2 である.それぞれの実験条件下において,提案手法により獲得された配管
経路について考察し,提案手法の有用性を検証する.
第 7 章「まとめ」では,まず,提案手法の新規性を考察する.次に,提案手法の実用
化に向けた課題を考察し,ルーティングアルゴリズムの改良と施工性の評価について検
討する.
第 8 章「結論」では,各章で得られた研究成果を説明し,本論文の結論を述べる.
6
第2章
準備
2.1 船舶における配管設計の概要
本論文の研究対象である船舶における配管設計の概要を説明する.船舶の建造過程で
は大きく分けて基本設計,詳細設計の二つが存在する.ここで配管設計にかかわる部分
は,詳細設計における「艤装の基本図」「総合艤装図」「取付図」「一品図」の作成であ
るが,その中でも,
「艤装の基本図」
「総合艤装図」については,それらの図面の出来が
船舶の価値を左右し,設計を行うためには熟練を要する.以下に,「艤装の基本図」を
構成する系統図・機器配置図,及び「総合艤装図」を作成する際に留意すべき事項につ
いて説明する[12].
2.1.1
系統図の作成
配管設計を進めていくことには,装置や機器の相互関係,装置や機器を結ぶ配管,温
度や流量などの条件と計器のつながりを表示する総括的な関連図(フローダイアグラム)
が 必 要 と な る . こ の フ ロ ー ダ イ ア グ ラ ム は , 系 統 図 ま た は P&ID ( Piping and
Instrumentation Diagram)と呼ばれている.系統図は専門分野の異なる多くのエンジニア
が装置や機器の相互関係を理解する唯一の情報源となる.また,船の操作に携わる作業
員が,関連する装置や機器についての基本的な情報を取得する媒体にもなる.そのよう
なことから,系統図には余分な内容が完全に排除され,重要な情報がすべて網羅される
ことが望ましい.過度の情報を記すと,系統図の内容が煩雑になるばかりでなく,それ
を見ていても必要な事項を瞬時に把握できない.一方,情報が不足すると,詳細内容を
確かめるために他の図面や資料を参照する頻度が多くなり,系統図そのものの機能が損
なわれてしまう.系統図には,予備品も含めた装置や機器類のすべてが表示され,各々
に名称と番号が付記される.
系統図は,配管経路についても唯一の情報源となるので,必要なデータは欠落される
ことなくすべて記入される.配管の経路,流体の流れる方向,配管の径,ライン番号(Line
No.)とラインクラス(Line Class),バルブや継ぎ手などの配管付属品,配管設計上の
注意事項(傾斜,液浸,下向流,上向流等)が,系統図上のすべての配管毎に表現され
る.ここで,ライン番号とは配管に付けた番号であり,系統図と配管図を対照させる役
割を持っている[25].また,ラインクラスとは配管の種類を示すものであり,使用する
流体の種類および温度や圧力などの使用条件によって区分される.また,バルブとは制
7
御系の操作部として機能し,弁の操作機構と弁本体とで構成される機器である.弁の操
作は空気圧,油圧,電力などの補助動力を使用する場合が多い.弁本体は流体に抵抗を
与えて流量を調節する部分であり,流体の種類,圧力,配管の径などによって,グロー
ブ型,ロータリー型,ゲート型,ボール型,バタフライ型などが使い分けられる.また
用途によっては,三方弁やダイアフラム弁なども使用される.更に,バルブを機能上で
大別すると,仕切弁・玉形弁・逆止弁の 3 種類がある.仕切弁はゲートバルブと呼ばれ,
機器類のブロックが目的であり,全開または全閉の状態で使われる.玉形弁は主に流量
調節に使われ,また精度が高く作られているので高圧管の閉塞にも使われる.逆止弁は
逆流防止に使われる.
2.1.2
機器配置図の作成
機器配置図もしくはプロットプランとは,船舶全体を構成する各機器のレイアウトを
意味しており,いわゆる設備や装置の配置図である.基本設計の段階では,機器配置図
を作成するために必要なデータと情報のすべてを入手することはできないが,配管を流
れる流体の圧力バランスを検討し,詳細設計を進めていくためには機器配置図が不可欠
である.基本設計の段階において,先ず概略の機器配置図が作成され,詳細設計が進行
するとともに各装置の詳しい規模やサイズが決められていく.そして,詳細設計の段階
において最終的な機器配置図が作られた後,船主と造船所との間で内容について合意が
なされ,実際に船舶の建造に使用される.
機器配置図を立案するためのデータと情報は,系統図,主要装置のリストとサイズ,
総合プロットプラン,適用される法規類である.総合プロットプランとは船の場合,船
殻設計,構造設計の検討によって定められた装置の属するフレーム位置などを示すもの
である.機器配置図は平面配置図と立面配置図からなり,配置計画の良否はポンプの動
力消費,配置スペースの広さ,メンテナンスの頻度などと密接に関係する.配置スペー
スを狭くすれば,基礎工事費,配管工事費の削減に寄与し,また配置スペースが狭くな
った分,タンク容積を大きくできるので,経済性の観点から望ましい.しかし,それだ
け工事に手間がかかり,またメンテナンスも困難になる.このようなレイアウトを考え
る際には,レイアウト上で発生する利点と欠点を十分に検討しなければならない.その
基本的な事項は経済性,操作性,作業性,安全性,拡張性などである.配置スペースを
狭くすることは,上で述べたように,設備費の削減と動力費の低減につながり,船の経
済性を高める.合理的なレイアウトは船舶運用時の操作性を高める.例えば,流体の系
統的な流れに沿って配管をレイアウトすれば操作が容易になるばかりではなく,定期的
な点検作業も楽になる.操作性を十分に確保することは,機器や機材の搬入を容易にし,
建造期間の短縮と建造費の削減に繋がる一方,熱交換器などの保守作業を支障なく行う
8
こともできる.また,安全性を考慮することは,火災や爆発の防止につながるとともに,
災害時の作業員の安全と日常の操作上の安全が保たれる.そして,将来計画を予測して
設備の拡張性を考えておくことは,新たに発生する計画に柔軟に対応できる.
2.1.3
総合艤装図の作成
総合艤装図は機器配置・系統図に基づき,各装置・配管の図面を実際の船舶に配置さ
れた状態と同じように重ねた図面である.この総合艤装図の作成において,本研究で注
目する配管設計作業が行われる.配管経路においては,材料コストの低減という観点か
ら配管経路の全長が短く,かつエルボの個数が少なくなるよう設計するだけでなく,以
下に挙げる点にも留意しなければならない.
配管経路中に図 2.1 のような垂直方向において U 字となっている経路は通常,「鳥居
配管」もしくは「溜り」と呼称されている.このような箇所では内部流体が留まる,も
しくは内部で気泡が発生してしまう可能性があり,接続されている機器に対して悪影響
を及ぼす可能性がある.そのため,配管設計者はこのような経路の設計を極力避ける必
要がある.ただし,下水の悪臭対策や,船舶の振動に対する配管の補強対策として意図
的に U 字構造を取り入れる場合もある.
図 2.1:経路中における鳥居配管の例
9
また,パイプが長い場合は,補強や振動防止のためにパイプラック(サポート架台)
を設置する必要がある.その際,1 つの支持台で何本かのパイプを同時に支持すること
が経済的にも工作的にも好ましい.よって,複数のパイプが一つの支持台で支持できる
ように,配管経路は可能な限り同じ高さで平行に配置される[14].
配管設計者は,船舶の保守性に関しても検討する必要がある.船舶を安定的に運用する
ためには,機器・バルブ・パイプの定期的なメンテナンスを行う必要がある.そのため
に,作業員のメンテナンスが容易にできるよう配慮して配管設計を行う必要がある.特
にバルブは配管部品の中で,最も構造が複雑で,漏洩を起こしやすいものである.よっ
てバルブの配置には十分な配慮が必要である.特に操船作業に必要なバルブは,作業員
にとって操作しやすい場所に設置されるべきである.さらに,設置高さに関しても,一
般的には足場から 600~1300[mm]が良いとされている[20].
2.2
CAD および XML
製造業では,発達した情報技術を用いることで設計現場の合理化・効率化が図られて
きた.造船業界でも,CAD の導入により設計作業の省力化がなされている.本節では,
CAD の概要を述べ,その後 CAD および提案手法においても使用される XML に関する
説明を行う.
2.2.1
CAD の概要
CAD (Computer Aided Design) とは,コンピュータ支援設計を意味する.CAD による
設計対象のモデリングを行うことで,作成されたモデルが設計仕様にある性能・機能を
充足するか否かをより解析的に検討することができる.
造船業では,取り扱う部品の多様性,各船舶の特異性といった特徴がある.そのため
早くから CAD が設計現場に導入されてきた. CAD の設計現場への導入により,安定
した設計水準や効率的な設計手順が,各造船所にて生み出されてきた.また近年では 3
次元 CAD の導入により,設計モデルを 3 次元的に表示することが可能となり,設計イ
メージをより具体的に共有することが容易となった.
配管設計現場においても 3 次元 CAD が普及し,配管経路の 3 次元空間中でのイメー
ジが容易となり,より効率的に設計作業が行えるようになった.また,CAD に内蔵さ
れている干渉判定モジュールを使用することで,複雑に配置された配管部品の干渉チェ
ックをより正確に行えるようになった.ただし,配管経路の配置場所を検討する作業自
10
体は,未だ設計者の経験頼りであり,この作業を十分に支援するシステムは確認されて
いない.それでもなお,3 次元 CAD の導入で,設計時間,労力が劇的に減少したのは
事実である.大量の部品を効率的に設計,管理する必要がある造船業にとって,CAD
を用いた設計は必要不可欠であり,今後もその役割はますます重要となってくると考え
られる.
2.2.2
XML の概要
XML とは (Extensible Markup Language) の略称であり,拡張可能なマーク付け言語を
意味する.XML はデータの構造や形式が明示的に宣言されており,データ構造などが
比較的人間にも解読しやすく,他のデータ形式への変換も容易である[23].XML で構成
されたデータは要素 (element) と属性 (attribute) が複数集まることで構成されている.
要素は内部に子要素を含むことが可能であり,データ構造はツリー形式となる.また,
各要素は開始タグおよび終了タグで挟まれている.このため,データをテーブル上に羅
列したような形式とは異なり,データの意味する内容が人間にも解読しやすい仕様とな
っている.このような特徴を有しているため,XML は近年,様々な分野で広く使用さ
れている.前節で述べた CAD 分野でも一般的に使用されているデータ書式であり,本
研究でもシステムの入出力等で使用している.なお,本システムでは獲得された配管経
路を視覚的に分かりやすくするため,出力ファイルを X3D と呼ばれる 3 次元モデルへ
変換しているが,X3D も XML の一種である.
11
2.3 関連技術
本研究では配管経路探索問題をグラフ上の経路探索問題へと置き換えている.そこで,
グラフ上の経路探索アルゴリズムとして使用しているのが,ダイクストラ法である.ま
た,複数本の配管経路を経路探索する場合には,タッチアンドクロス法を利用している.
タッチアンドクロス法とは,電子回路の設計における干渉回避方法の一つである.さら
に,本研究では焼きなまし法も組み合わせて利用することで,無数に存在する配管経路
案の中から妥当なものを探索している.本節では,これら 3 つの手法について述べる.
2.3.1
ダイクストラ法
ダイクストラ法とは,ノード(接点)間の移動コストがすべてゼロ以上の正の値で
与えられた重み付きグラフ(ネットワーク)において,任意の 2 点間を結ぶ最小コスト
の経路を効率よく求めるアルゴリズムである.このアルゴリズムはダイナミックプログ
ラミングの一種であり,同時に横型探索法でもある.ダイナミックプログラミング(動
的計画法)とは,部分的な最適化を積み重ねて全体的な最適解を発見するアルゴリズム
の総称である.また横型探索とは,隣接したノードを全て探索する探索手法を意味する.
よって,ダイクストラ法では十分なメモリーがあれば最適解の発見が保証される.
図 2.2 としてダイクストラ法の探索アルゴリズムを示す.
12
ダイクストラ法の探索アルゴリズム
ステップ1
グラフ上のすべてのノードを次の 1) ~ 3)に分類する:
1) 始点からの最小コストでの経路が分かったノードの集合 T
2) 集合 T から直接訪れることのできるノードの集合 F
3) T と F 以外のノード U
ステップ2
F に属するノードから,始点からのコストが最小のノードを見つけ
て T に加える.このとき最小コストと,T に属するノードから直
接そのノードへ至ったエッジを記録する.
ステップ3
T の中に目的地のノードが含まれるまで処理 2 を繰り返して T を
増やしていく.
ステップ4
ステップ 2,3 を繰り返し,終点が T に含まれたら探索を終了する.
図 2.2:ダイクストラ法の探索アルゴリズム
以下の図 2.3~2.6 ではダイクストラ法を適用した簡単な課題を示している.また,ダ
イクストラ法で最適解が複数獲得された場合の処理を 4.8 節で述べる.
13
図 2.3:ダイクストラ法を用いた例題
図 2.4:ダイクストラ法を用いた例題
14
図 2.5:ダイクストラ法を用いた例題
図 2.6:ダイクストラ法を用いた例題
15
2.3. 2
タッチアンドクロス法
タッチアンドクロス法とは,集積回路の配線問題を解決するために,松岡,新田[19]
によって提案された経路探索手法であり,ペナルティ関数法における外点法の一種であ
る.ペナルティ関数法とは,制約条件を満たしていない状態をペナルティ値として評価
し,その値を加えた目的関数(拡張目的関数)を探索することで,制約条件を満たした
最適解を探索する手法である.また外点法とは,加えられるペナルティ値を探索の過程
で徐々に大きくすることで,制約条件を満たした状態における拡張目的関数の最小値を
探索する手法である[18].
図 2.7 は外点法の概念的な図を示している[27].図のように目的関数,ペナルティ関
数を設定すると,パラメータ t の値が小さい間は拡張目的関数の最小値は,制約条件の
外側にある.しかし,徐々にパラメータ t の値を大きくすることで制約条件の境界に近
づいてくる.このように,あるパラメータを徐々に大きくすることで,制約条件を満た
した目的関数の最小値をもとめる手法が外点法である.
図 2.7:外点法における拡張目的関数の探索イメージ
タッチアンドクロス法では,タッチ(配線同士の接触)とクロス(配線同士の交差)
という二つの制約違反状態をペナルティ値として表現し,目的関数にその値を加えてい
る.さらに,経路探索処理を複数回反復して行いつつ,設定された制約違反コストの値
を徐々に上昇させることで,最終的に経路同士が干渉していない解を獲得する.
16
一般的なタッチアンドクロス法の探索アルゴリズムを図 2.8 として示す.
タッチアンドクロス法の探索アルゴリズム
ステップ1
複数本の経路に対して,経路探索を行う順序を決定する.
ステップ2
各経路の経路探索を,探索順序に従い実行する.
ステップ3
経路探索の結果発生した干渉の有無を確認する.
ステップ4
干渉が存在する場合,経路同士の干渉ペナルティ値を上昇させる.
ステップ5
すべての経路が干渉なく配置されるまで,2~4 を繰り返す.
図 2.8:タッチアンドクロス法の探索アルゴリズム
このように複数本の経路探索過程では,すべての経路を同時に探索するのではなく,
経路 1 本ずつに焦点を当てているので,ダイクストラ法などの経路探索手法と容易に
組み合わせることができる.
17
2.3. 1
焼きなまし法
焼きなまし法とは局所解にとらわれず,大域的な解候補を探索するための最適化手法
である.この手法では,現在の解候補 x の近傍 x’ を生成し,それぞれの評価値,f(x), f(x’)
の値を比較することで,x から x’ へ遷移するかどうかを確率的に選択する.探索過程
では温度関数を定義し,温度関数および解候補の評価値より遷移確率を計算する.そし
て計算された遷移確率に従い,解の改善と改悪を確率的に繰り返すことで探索を進めて
いく.なお温度関数は探索が繰り返されるにつれて徐々に小さな値となり,解の変動幅
もそれに伴い収束していく.焼きなまし法の探索アルゴリズムを図 2.9 として示す[24].
焼きなまし法の探索アルゴリズム
目的関数 f の最小値探索問題を考える.
ステップ1
f をエネルギーとみなし,その最小値を与える平衡状態を求める問題と
考える.温度関数を T(t),温度関数の最小値を Tmin,状態 x の近傍を x’
とする.
ステップ2
ΔE = f(x) – f(x’)を考える.ΔE < 0 ならば x は x’へ移動.
ΔE ≧ 0 ならば,遷移確率 eΔE/T に従って,移動もしくは待機.
ステップ3
T(t)を下降させる.
ステップ4
T(t) < Tmin となるまでステップ 2, 3 の処理を繰り返す.
図 2.9:焼きなまし法の探索アルゴリズム
18
2.4 配管設計支援システムに関連する先行研究
配管設計の自動支援に関してはいくつかの先行研究が存在している.本節では,本
研究に関連するこれらの先行研究の概要の説明を行う.
Asmara, Nienhuis は,配管設計問題を迷路探索問題に置き換えて解決するシステム
(Delft Pipe)の提案を行っている[8, 9].問題解決の為に迷路探索アルゴリズムを使用
することから,彼らのシステムでは設計対象空間をセル状に分割するセル分割法(Cell
decomposition approach)を取り入れている.この手法では,まず利用可能な空間を大き
なセル(1000mm 間隔)で分割する.そして,全パイプの最短経路をダイクストラ法で
探索し大雑把なパイプ経路を設定する.次に,任意のパイプを選び,そのパイプ直径と
同程度以上の寸法のセルで大きなセルを分割し,再度ダイクストラ法を適用して詳細な
経路探索を行うことにより,経路探索の効率を上げている.この手順をすべてのパイプ
の経路が設定されるまで繰り返す.また,パイプの分岐についてはダイクストラ法を拡
張している.まずメインパイプの 2 つの接続点間の最短パスをダイクストラ法で生成す
る.次に,支線の接続点を始点として,既に得られたメインパイプの経路に含まれる全
ての点をゴールとして,再びダイクストラ法で最短パスを生成する.これをすべての接
続点について繰り返すというものである.ただしこの手法は,どの接続点から選択して
いくかによって得られる解が異なる.また,分岐をメインパイプ上に生成するか支線上
に生成するかという任意性も存在する.これらの任意性によって複数発生する解候補は,
進化的手法の一つである粒子群最適化(Particle Swarm Optimization)を用いた最適化ア
ルゴリズムによって改善される.また,配管経路の評価については,パイプのコスト(長
さやエルボの数)であり,障害物との接触など実行不可能な解については大きなペナル
ティを与えることで対処している.
Paulo, Loboの提案するシステム(AISROUTE)では,まず空間を等間隔のセル状に分
割し,障害物で占められた領域を判別する[22].この際,空間を分割する間隔はパイプ
の直径以上の間隔である.次にこの格子を単位として配管を行う.このアプローチは,
パイプ同士あるいはパイプと障害物の衝突のチェックが容易であり,電子回路などに用
いられる迷路探索アルゴリズムを適用することができるという利点がある.また,障害
物を含んだセルやパイプラックとして想定された各セルにポテンシャルエネルギーを
設定している.ゆえに経路全体のエネルギーを最小化することにより障害物を避け,通
過が望ましい空間を通っている配管経路が獲得される.この格子中におけるパイプ要素
の有無は,そのまま3次元マトリクスとして表現され,このマトリクスを遺伝子とみな
してGAを用いて探索が行われる.GAの初期解候補を生成するために最短経路アルゴリ
ズムが用いられ,ルーティングを行うパイプの順序を変えることで多様な解候補を生成
している.
19
伊東,福田は,空間を等間隔のセル状に分割し,障害物で占められた領域を判別し,
このセルを単位として配管を行うアルゴリズムの提案を行っている[15].このアルゴリ
ズムでは,先ず空間を均等な大きさのセルに分割する.この際このセルの大きさはパイ
プの直径よりも大きい.そして,障害物の配置されたセルやパイプラックとして想定さ
れたセルにポテンシャルエネルギーを定義することで,経路のエネルギーを最小化する
ことにより障害物を避け,なるべく通ってほしい空間を通る経路を得ることができる.
なお,経路探索手法としては遺伝的アルゴリズムが使用されている.この手法では複数
パイプを同時に経路探索することが可能であり,迷路探索アルゴリズムでは計算量が多
すぎる広大な作業空間中でも効率的に経路探索をすることができる.また,遺伝的アル
ゴリズムを経路探索に適用した場合,複数パイプを同時に設定することが可能であり,
さらにパイプラックなどのパイプを通したい場所に経路を設定できるといった利点が
生じる.しかし,初期解の選定により生成される解候補が大きく異なり,さらに生成さ
れた解が確実に最適な解となる保証がないといった問題も存在する.また,この提案手
法では経路の分岐やバルブの配置は考慮されていない.
Park, Storchの研究では,経路探索アルゴリズムとしてパターン一致法(Pattern match
method)が適用されている[21].この手法は配管経路を考える場合,先ず,空間の中に
セルを配置する.ここでパイプの始点・終点の方向性を考慮した大まかなセルを配置す
ることで,パイプが通過する空間を限定し,後々の計算量が増加することを避けている.
さらに,この手法により,複数のパイプを同じ領域内に設定することができる.その結
果,生成される設計案が作業性や美観の観点から優れたものとなる.次に,配置された
セルを通るパイプの設定を行う.ここで設定されるパイプはいくつかの基本的パターン
に分類された形状を有しており,それらの組み合わせによってパイプを始点から終点ま
で設定することができる.また,この手法では分岐も考慮されている.分岐が経路の終
盤にあるものと中盤にあるものを組み合わせることで配管経路の分岐の解決を図って
いる.さらに,提案されたシステムでは配管における操作性に優れたバルブの位置など
も考慮されている. 経路探索においてパターン一致法を適用する場合の問題点は,経
路が複雑すぎると対応できないことである.また,生成された経路が最良であるとも限
らない.しかしながら複数の経路を同時に設定でき,計算量も少ないといった特徴も有
している.
鳶,山口は建造物の機関室や空調設備を対象に,遺伝的手法による最適な機器配置や
配管設計を行うアルゴリズムの提案を行っている[26].提案手法では,機器と配管の配
置場所を設計変数としている.機器配置については,設計の対象となる領域内において
部屋の隅・メンテナンス通路のコーナー等を基準点として当該領域を格子状に分割し,
その交差点上に機器を配置する設計者の思考過程を組み込んだアルゴリズムとなって
いる.また,配管経路については,機器配置アルゴリズムとは別の自動配管アルゴリズ
ムを用いており,配管束決定ステップと配管段組ステップから構成されている.先ずク
20
ラスタ分析法により,同じような経路となるべきパイプを集めて配管束とすることで,
パイプラックなどによるパイプの支持が容易になるよう工夫されている.次に,配管段
組ステップでは,決定された配管束を,交差を考慮して配管束経路の高さを決める.そ
して,設計の対象領域における空間の隅や,パイプと機器との接続点を基準点として当
該領域を格子状に分割し,その交差点を結ぶように配管経路が生成されるアルゴリズム
となっている.評価項目については,経済性や保守性・見栄えの項目があり,機器の「搬
入路への干渉」などを考慮している.そして,様々な評価項目に重み付けをして合計し
た評価値を用いることで,配管経路の探索問題を単目的最適化問題として定式化してい
る.機器配置と配管経路探索を取り扱うこの手法では,明示的に多目的最適化を行って
いるわけではないが,個体の淘汰戦略であるパレート解保存戦略を取り入れ,対話型の
遺伝的アルゴリズムを用いて最適化を行っている.また,解候補の生成時においては,
実行可能解へ修正する「自動修正」や「特殊操作」を施す工夫がなされている.ただし,
この提案手法では,主に機器の配置を自動的に決定する次項に重点を置いている.その
ため,配管経路については単純な経路しか探索されず,その保守性を評価するにとどま
っている.
Burdorfらはプラントにおける自動設計に着目しており,提案されているシステム
(CAPD)では配管設計よりも機器配置に対して重点を置いている[10].各機器に対し
て3段階(must, shall, should)に評価された配置条件が設定され,それらの条件を可能な
限り満足する機器配置案を自動的に生成することができる.なお配置アルゴリズムとし
ては焼きなまし法が使用されている.この配置システムでは,各機器の配置条件をユー
ザ自身が設定,変更することが可能であり,自動配置の方針に対して熟練技術者の経験
を組み込むことができる.さらに自動生成された機器配置案では,配置された機器にお
ける配置条件を表示する機能があるため,ユーザ自身が機器配置の妥当性を確認するこ
とができる.また,CAPDでは簡易的な自動配管システムも組み込まれており,プラン
ト設計に関して実用的なシステムとなっている.ただし,自動配管システムでは単純な
経路しか設定することができず,多数の配管経路が限られたスペースに混在する船舶の
ような設計対象には対応できない恐れがある.よって配管経路の探索に対してはより高
精度のシステムが必要であると考えられる.
池平らの研究では,配管設計問題を機器配置と経路探索の2つの問題の複合問題とし,
より優れた機器配置を設定することで合理的な配管設計案の自動生成を図っている[11,
12, 13].配管の経路探査アルゴリズムとしては配管をいくつかのパターンに分類し,始
点・終点を結ぶパターン一致法が適用されており,経路の自由度を限定することで計算
の効率化を目指している.本システムでは複数のパイプの経路設定が同時に可能である.
また,分岐についても考慮されており,配管の屈曲点を分岐点とすることで分岐問題の
解決を図っている.本システムではこれら経路探索の問題を機器配置が変化するたびに
行っている.前述したParkらのシステム同様に本システムでもバルブの操作性が考慮さ
21
れており,機器配置の変更を進化的手法である遺伝的アルゴリズムに基づいて行うこと
で優れたバルブの操作性と最小コストの配管経路を同時に満たす解候補の自動生成を
図っている.しかしながらこの手法では分岐の取り扱いにおいて,分岐の支線の方向を
指示できないといった問題がある.
木村らの研究では,池平らのアプローチ同様に配管設計問題を複数の問題の複合問題
として取り扱っている[16, 17].提案システムでは機器配置問題,配管経路探索問題,
バルブの操作性問題に着目している.機器配置問題に関しては遺伝的アルゴリズムを使
用し,仮の機器配置案を生成する.生成された機器配置案より配管経路探索問題を取り
扱うシステムで実際に配管経路を配置し,経路の曲がりの個数および総長を計算する.
さらに,機器及びパイプが設置された設計案において,塗りつぶしアルゴリズムを使用
することで作業者が侵入可能な空間を探索し,バルブの評価性を求める.さらに,配管
の曲がりの個数,総長,およびバルブの評価性をパラメータとし再度遺伝的アルゴリズ
ムを使用して機器配置を作成する.この作業を繰り返すことで最適な設計案を自動生成
する仕様となっている.
本研究で提案する経路探索手法も木村らが提案しているシステムに実装されること
を想定している.経路探索手法としては,Asmaraら,Pauloら,伊東らと同様に経路探
索が行われる空間をメッシュ状に分割している.これは配管経路が設置される場所を限
定することで,探索に必要な計算量を少なくすること,そして,ダイクストラ法等の経
路探索手法を適用することが目的である.ただし, Asmaraら,Pauloら,伊東らの先行
研究では,メッシュ幅がパイプ径よりも大きくなければならないという制約条件が存在
していた.その結果,径の大きな配管経路を探索する場合,メッシュ幅も必然的に大き
くなり,獲得される経路が実用的でなくなるといった問題が生じていた.しかし,本論
文での提案手法では経路探索が行われる空間を分割するメッシュ幅がパイプ径に依存
しておらず,パイプ径よりも小さなメッシュ幅で分割することができる.ゆえに,提案
手法では,径の大きな配管経路を探索する場合,先行研究と比べて正確な経路探索を行
うことができる.さらに,任意のメッシュ幅が設定可能になったことで,経路中に考慮
されるエルボやベンドの形状についても,それぞれのサイズを正確に考慮できるように
なる.各パイプピースの探索アルゴリズムは,第4章で述べられる.
また,Park ら,池平らの先行研究では経路探索手法として,特定の経路パターンを組
み合わせる手法を取り入れている.そのため,彼らの提案手法では,曲り点を多く含み
つつ障害物を避けるような経路に対して,探索が行えないというデメリットが存在して
いた.しかし,本論文の提案手法では,経路探索にダイクストラ法を使用しているため,
始点・終点を結ぶ経路が存在する場合に限り,確実に経路を獲得できる.ゆえに,提案
手法では,曲り点を多く含む複雑な経路に対しても,探索が可能となっている.
22
第3章
配管経路探索問題のモデル化
配管経路を自動的に探索するシステムを構築するためには,配管経路探索問題におけ
る各設計項目をモデル化する必要がある.そこで本章ではシステム内で考慮されている
設計項目の説明およびそれらの概要についての説明を行う.
3.1 配管経路探索問題に関する設計項目
本論文では先行研究[1~7]に引き続き,配管設計問題における「配管経路探索問題」
に着目している.配管経路探索問題とは機器同士を接続する配管経路の設定を行う問題
である.配管経路を設計する際には,経済性および安全性の観点から妥当な設計案を生
成する必要がある.すなわち,経路に使用される配管の長さ,曲りの数,障害物との干
渉といった点を考慮しなければならない.しかし,これらの項目をすべて検討しつつ,
妥当な経路設定を行うには,熟練された設計技術を必要とする.
本論文では,設計過程で実際の設計者が考慮している点を「設計項目」と呼称し,こ
れらを考慮に入れた配管経路を自動的に生成する手法の提案を行っている.また,提案
するシステムでは配管経路探索問題をグラフ上の経路探索問題に帰着させることで,獲
得される経路を実用的なものとしている.提案手法では以下の 1) ~ 7)を設計項目とし,
配管の経路探索を行う.
1)探索対象となる配管経路
始点・終点を一つずつ有しており,経路途中で分岐がなく,直径の変化もない配管経
路を設計対象とする.通常,船舶内の配管経路では数多くの分岐点が存在するが,本シ
ステムでは分岐点を機器としてみなしているために,配管経路は分岐点を含まないもの
となっている.これに関しては次節にて補足説明を行う.
2)経路中のパイプピース
パイプピースとは配管経路を構成するパイプのパーツのことである.本システムでは
「直管」,
「エルボ」
,
「ベンド」の 3 つのパイプピースを経路中に考慮している.
「直管」とは空間を真直ぐに伸びているパイプピースである.
「エルボ」とは 90 度に曲がっているパイプピースである.曲率半径によってエルボ
の大きさが異なるため,経路探索を行う前にエルボに関するパラメータを設定する必要
23
がある.
「ベンド」とは空間を局所的に斜めに通過するパイプピースであり,経路中の微小な
ずれを吸収するために使用される.曲率半径等の値によってベンドの大きさが異なるた
め,事前にパラメータを設定しておく必要がある.
3)設計対象空間
経路探索が行われる空間を設計対象空間と呼称する.サイズが予め設定されているも
のとする.本研究では設計対象空間の形状を直方体に限定している. 船殻などの湾曲
した構造部材がある場合は,設計対象空間内にそれらを再現した障害物を配置すること
で対応する.
4)配管経路の配置可能な方向
配管経路は,局所的に使用されているベンドの部分を除いて,設計対象空間の各辺に
平行な方向にのみ配置されるものとする.この前提条件は配管経路のメンテナンス性を
向上するために広く用いられている条件である.しかし実際のエンジンルームなどは設
置スペースが限られているために,配管経路が平行でない場合も存在する.
5)障害物
設計対象空間内に存在する構造部材や機器などが配置されている空間を意味する.探
索される配管経路がこれらの空間に干渉することは許容されない.形状としては,三角
形平面および直方体に限定されている.なお,船殻など湾曲した障害物に対しては三角
形平面を組み合わせることで対応する.
6)通路空間
船舶の乗組員が通行することが想定されている空間.この領域内を配管経路が通過す
ることは,機器の操作性に悪影響を及ぼすと考えられる.ゆえに配管経路の通過が好ま
しくない空間である.形状は直方体であり,位置とサイズが予め設定されているものと
する.
7)パイプラック空間
パイプラック空間とは予め配管経路の通過が想定されている空間のことである.実際
の配管設計では,パイプは壁や天井裏を通過している場合が多い.よって探索される配
管経路は極度の迂回経路とならない限り,この空間内に設置されることが望ましい.な
お,この空間の形状は直方体であり,位置とサイズおよび配管経路の通過方向が事前に
設定されているものとする.
24
3.2 分岐の取り扱い
船舶における配管経路には数多くの分岐が含まれている.配管設計においては後に述
べる T 分岐のみしか存在していないが,これら T 分岐を合理的な位置に配置すること
は配管の全長を抑え,経済性や操作性に優れた配管設計案の生成につながる.しかし,
経路探索の段階において分岐を含んだ配管経路を設計することは非常に複雑な問題で
あり,多くの先行研究でもその取り扱い方は不十分であった.そこで本研究では先行研
究[16, 17]において提案された分岐をバルブ等と同じ機器として取り扱う手法を採用し
ている.図 3.1 は分岐点を機器として扱う手法のイメージ図である.
図 3.1 で示しているように,分岐を機器として取り扱うことで,配管経路探索問題が
簡略化できる.このアプローチを適用した結果,対象となる配管が始点・終点を一つず
つ有したものとなるので,経路探索アルゴリズムとして最適解が保証されているダイク
ストラ法などが適用可能となる.ゆえに,障害物を多く含む経路探索においても,提案
手法では確実に配管経路が獲得できる.
なお,機器配置に関する詳細は,木村による先行研究[17]にて述べられている.
図 3.1:T 分岐を機器とみなす取り扱いのイメージ図
3.2.1
T 分岐の概要
T 分岐とは図 3.2,図 3.3 が示すように配管が直角に交わる分岐点のことである.T 分
岐で用いられるパイプピースのことを T 字管または T と呼び,配管経路における分岐
では通常この T 分岐を考慮することになる.T 分岐に存在する規約を 1), 2)で示す.
25
1)
メインパイプ及び支線の存在
図 3.3 で示しているように,T 分岐にはメインパイプ(親管)および支線(枝管)が
存在しており,メインパイプは原則として T 字の直線部に相当しなければならない.よ
って T 分岐を定式化するためには,どの方向にメインパイプが通っているかを示す機器
情報が,すべての分岐点において必要である.
2)
直角交差
T 分岐ではメインパイプと支線が直角に交差していなければならない.本研究で取り
扱う分岐については設計規約として T 分岐のみ考慮するものとする.
図 3.2:T 分岐の 3 次元図
図 3.3:T 分岐の 2 次元図
26
また,T 分岐の中には図 3.4 で示しているようにメインパイプと支線の径が異なって
いる仕様や,メインパイプと支線の中心がずれている仕様も存在する.分岐を機器とし
て取り扱うことで,それらの情報も機器情報として一様に考慮することが可能である.
図 3.4:サブパイプとメインパイプの径が異なり,交差の中心がずれている T 分岐例
27
第4章
1 本の配管経路における経路探索アルゴリズム
本章では経路探索の対象となる配管が 1 本の場合における経路探索手法の説明を行
う.そこで,グラフ上の経路探索問題への帰着手法およびシステム内で考慮されている
設計項目の具体的な処理手順に関する説明を行う.
4.1 グラフ上の経路探索への帰着
本論文で提案している経路探索システムでは,配管経路を探索するためにグラフ上の
経路探索アルゴリズムを利用している.提案手法では第 3 章で記した設計項目を満たし
た配管経路を 1 本ずつ探索する.経路が複数本ある場合の処理については,詳細を次章
にて記す.本章では配管経路 1 本における経路探索手法についての説明を行う.
本研究では配管経路探索問題を重み付きグラフ上の経路探索問題とみなしている.こ
の手法は第 2 章にて述べた配管設計に関する先行研究にて広く用いられている手法の
一つである.図 4.1 としてシステム内で取り入れている経路探索手順の大まかな流れを
示す.
図 4.1:グラフ上の経路探索問題を利用した配管経路探索手法の流れ
28
まず,経路探索システムでは設計対象空間をメッシュ状に分割する.そして空間の分
割が終了すると,各格子点における配管経路の座標と向きを状態量とした重み付グラフ
が作成される.グラフ内の各ノードを接続するエッジにおける重みは,直管,エルボ,
ベンドといったパイプ径に応じたパイプピースの使用コストに,通路空間やパイプラッ
ク空間を通過した場合のコスト変化量が考慮されたものとなっている.さらに,獲得さ
れる経路は鳥居配管に関する考慮も取り入れている.これらに関する詳しい処理の仕方
は次節以降で説明する.
グラフの作成が終了すると,始点・終点間を結ぶ最適な経路の探索が行われる.ここ
で最適な経路とはコストが最小となるものを意味している.すなわち始点から終点まで
を結ぶエッジの重みをすべて足し合わせたものが最小となる経路が探索される.このよ
うな最適経路を探索するために,本システムではダイクストラ法が使用されている.ダ
イクストラ法については次節で述べる.
ダイクストラ法によるグラフ上の最適経路の探索が終了すると,獲得された経路を設
計対象空間内の配管経路へ変換する.以上の探索処理を経ることで,本システムでは実
用性の高い 1 本の配管経路を獲得することが可能となっている.なお,獲得される配
管経路は以下の 6 つの条件を考慮している.
1) パイプ長が短いこと.
2) エルボおよびベンドの数が少ないこと.
3) 通路空間を極力回避すること.
4) パイプラック空間を可能な限り通過すること.
5) 高さ方向へ極力移動しないこと.
6) 他の配管経路と干渉しないこと.
(ただし探索ステージに応じて干渉を許す.)
ここで,式(1)として高さ方向の移動と各パイプピースの使用コストの関係性を示す.
ただし,X もしくは Y 方向に設置されているパイプピースの使用コストを CParts X, Y と
し,Z 方向に伸びているパイプピースを CParts Z とする.また,Z 方向への遷移による
コストの変化率を RZ とする.ここで本システムでは,RZ >1 と設定しているが,この
理由については 4.6 節で述べる.
CParts  CParts X , Y  CParts Z  RZ
(1)
また式(2)として 6 つの条件が考慮された探索コストの計算式を示す.ただし,1 本
の配管経路の探索コストを CPipe,通路空間等との干渉によるコストの変化率を RSpace,
パイプとの干渉コストを CInterference として示す.CInterference は経路探索中に変化する値で
あり,次章にて詳細を述べる.
29
CPipe  CParts  RSpace  CInterference
(2)
システム内では最適な経路案として CPipe が最小となる経路が獲得される.また,CPipe
の値が等しい経路案が複数ある場合はその中からランダムで一つが選択される.経路の
選択手法に関する詳細は,4.8 節で述べる.
4.2 各パイプピースの取り扱い
4.1 節で述べたように提案システムでは経路中に,パイプピースとして直管,エルボ,
ベンドの 3 つを考慮している.本節では,これらのパイプピースにおける経路探索の手
法を説明する.
図 4.2:直管,エルボ,ベンドを考慮したノード遷移
図 4.2 は,2 次元空間における提案手法による空間分割方法及びノード遷移の例であ
る.提案手法では,図中のメッシュの交点における「位置座標」と,その点でのパイプ
の「方向」の 2 つを合わせた状態量がダイクストラ法で扱う 1 つの「ノード(接点)
」
を表わす.図中の Current node とは,探索中のパイプ経路が下方から上方へ伸び,現在
その位置まで伸びていることを意味するノードである.パイプは Current node で示され
たノードの下方にある大きな長方形部分であり,各格子の間隔よりも大きな幅を持って
いる.
まず,直管を使用しノード遷移する場合を考える.この場合,図 4.2 に示される Next
node 1 へ遷移し,パイプの方向は上方のままである.これはパイプをノード間の寸法分
だけ真直ぐ伸ばすことに相当する.また,Current node から右または左の方向へ曲がる
30
場合,方向が変わるのでエルボを使用しなければならない.よって遷移先のノードはエ
ルボを用いて遷移可能かつ Current node に最も近いノードである Next node 2 となり,パ
イプの向きは直角方向へ変わる.また,直管およびエルボを使用することで遷移可能な
ノードの他にも,ベンドを用いて遷移可能なノードが Next node 3 として表示されてい
る.4.2.1 より直管,エルボ,ベンドを使用したノードの探索法にて詳しく述べる.
さらに,Current node から Next node までを結ぶエッジ(リンク)に対して,それぞれ
コストが設定されている.直管の場合のコストはノード間の距離に比例した値にパイプ
の直径が考慮されたものであり,エルボおよびベンドの場合はノード間のマンハッタン
距離にこれらのパイプピースを製作するために必要なコストが加算されている.コスト
の設定法の詳細に関しては,4.3.2 にその詳細を記載する.
本システムでは,これらの遷移可能なノードおよびそれらに付随したエッジ群の中か
らダイクストラ法を用いて最短ルートのノード,エッジを獲得していくことで,始点・
終点間の最適な配管経路を獲得することが可能となる.
4.2.1
直管の取り扱い
直管(Straight)とは真直ぐなパイプピースのことであり,パイプの方向がその経路
中で変わることはない.また,直管は設置する際に適当な長さで切断することが可能な
ことから,長さに関する制約条件も存在しない.図 4.3 に Current node から Next node
まで直管を使用して遷移する例を示す.直管を使用する場合の探索手順は以下のとおり
である.
図 4.3:直管を利用したノード遷移
31
図 4.4 として直管を経由したノードの探索アルゴリズムを示す.
直管を経由したノード遷移アルゴリズム
ステップ1
Current node からパイプの進行方向に沿って隣にあるノードを
Temporary node とする.
ステップ2
Current node と Temporary node を結んだ場合の干渉判定を行う.
ステップ3
干渉がなければ Temporary node を遷移可能な Next node の候補として
確保する.
図 4.4:直管を経由したノードの探索アルゴリズム
32
4.2.2
エルボの取り扱い
パイプを右または左方向へ直角に曲げるエルボの概要について説明する.エルボ
(Elbow)とは図 4.5 で示しているようにパイプ経路における屈曲部に使用するパイプ
ピースのことである.パイプはエルボを使用することで右または左に直角に曲がること
ができ,そのときパイプの向きも同様の方向に変化する.エルボでは曲げ半径 F が重要
なパラメータとなる.F の値は配管直径を基準に表され,曲率 α の最低値は 0.5 である.
本システムでもエルボの曲げ半径を考慮しており,ユーザは自動経路探索を行う前に,
すべての配管に対して曲げ半径の最低値を事前に入力しなければならない.なお,エル
ボの形状を維持するため,曲率 α の許容最小値は 0.5 である.
また,図 4.6 はエルボを利用したノード遷移の例を示している.
図 4.5:エルボの 2 次元図
33
図 4.6:エルボを利用したノード遷移
エルボを経由したノードの探索アルゴリズムを図 4.7 に示す.
エルボを経由したノードの探索アルゴリズム
ステップ1
Current node からパイプの進行方向に沿って,距離 F 以上の距離に
位置するノードについて探索する.
ステップ2
距離 F 以上のノードが見つかればそのノードから垂直方向に距
離 F 以上の位置にあるノードを探索し Temporary node とする.
ステップ3
Current node から Temporary node までエルボを使用してパイプを
通す場合に,その空間中に障害物あるかどうかを判定する.
ステップ4
障害物がなければ Temporary node を Next node の候補の中に加える.
図 4.7:エルボを経由したノードの探索アルゴリズム
34
4.2.3
ベンドの取り扱い
前項で述べたエルボのみを考慮した場合,径の大きいパイプでなおかつ始点・終点の
ずれがパイプの径よりも小さいというケースの経路を設計する際に,図 4.8 左のような
経路をとる.図で示された経路は,第 2 章で述べたような鳥居配管に該当する場合があ
り,作業空間を無駄に使用し,パイプ長も長いという理由から非経済的設計案である.
図 4.8:エルボのみを使用した配管経路とベンドを使用した配管経路
本システムでは図 4.8 左のような経路を回避するために,経路中にベンドを適用して
いる.ベンド(Bend)とはエルボよりも曲げ半径が大きなパイプピースのことであり,
造船所では配管経路設計において配管の微調整などに使用されている.ベンドは曲げ半
径が大きいという特徴から鳥居配管や不必要な迂回経路を避けた合理的な経路設計を
可能とする.左図の例題に対して,ベンドを用いることでより実用的となった経路を右
図にて示す.
本システムでは図 4.9 のようにベンドを直線部と湾曲部に分割して考える.ベンドは
パイプベンダーと呼ばれる工作機械で製作される場合が多く,工作現場でも同様に各パ
ーツごとに分割して取り扱われている.また,本論文ではベンドの使用によって吸収で
きる横ずれ距離の最大値を,横ずれ許容値と呼称する.
本システムのユーザは自動経路探索を行う前に,ベンドの曲率パラメータ α1,直線
部の長さパラメータ α2,ベンドの横ずれ許容値 d を入力しておく必要がある.α1 の許
容最最小値はエルボと同様 0.5 である.
35
図 4.9:ベンドの分割図および各パラメータ
アルゴリズムとしては,図 4.9 にて示されている各パラメータからベンドの曲げ半径
角度 β を計算する.計算式は以下のとおりである.




2  1


 arcsin 

2
2
2
2


 (2  1)  ( 2)  D 

 (2  1)  ( 2)
  arcsin 
d  2  1  D





(3)
よって式(3)より,ベンドでのノード遷移に必要な最小距離 L が式(4)より算出される.
L  (2  1 R  sin  )  ( 2  R  cos  )
(4)
なお,ベンドの処理に関するさらなる詳細は先行研究[1, 5]で述べられている.
36
図 4.10:ベンドを利用したノード遷移
図 4.10 はベンドを利用したノード遷移を示している.また,ベンドを経由したノー
ドの探索アルゴリズムを図 4.11 に示す.
ベンドを経由したノードの探索アルゴリズム
ステップ1
Current nodeからベンドの設置に必要な最小距離L以上に位置する
ノードを探索する .
ステップ2
距離L以上のノードが見つかれば,そのノードから垂直方向に距離
d 以内に位置するノードを探索し,Temporary nodeとする.
ステップ3
Current nodeからTemporary nodeまでベンドを使用してパイプを通す
場合に,その空間中に障害物あるかどうかを判定する.
ステップ4
障害物がなければTemporary nodeをNext nodeの候補の中に加える.
図 4.11:ベンドを経由したノードの探索アルゴリズム
37
4.3 干渉判定およびコスト設定
4.3.1
干渉判定
この節では前節まで説明してきた探索法で適用されている干渉判定についての説明
を行う.本研究で適用している干渉判定アルゴリズムでは,パイプピースが外接する最
小の直方体を想定し,その直方体がその他の直方体や障害物などと干渉していないかを
頂点の座標の大小関係を比較することで判断する.図 4.12 に干渉判定で使用される直
方体の簡略図を示す.図が示しているように,ベンドの場合のみ直方体 2 個を使用して
近似する.なお,このアルゴリズムを適用した理由は干渉判定の計算量を抑えるためで
ある.しかし,この手法ではパイプの形状を正確に近似できていないといった欠点も存
在し,特に曲率の大きなベンド,エルボなどではその問題が顕著となる.
図 4.12:干渉判定におけるパイプ形状の近似
38
4.3.2
各パイプピースのコスト設定
本研究では前節で定式化した配管経路探索問題を単目的最適化問題へ定式化させる
ため,パイプの長さに直管のコスト,エルボのコスト,ベンドのコストをそれぞれ与え
ている. なお,本システムでは各パラメータの入力をXML形式のファイルを使用して
行っている.各コストのデフォルト値の設定を1) ~ 3) に示す.また,式(5), (6), (7)とし
て,各パイプピースを経由した場合におけるコストの計算式を示す.
ただし,1) ~ 3) で示される値はデフォルト値である.本システムでは経路探索を行
う前に,各パイプピースのコストの入力が可能であり,各パイプピースの値段に相当す
る値を事前に入力することで,コストを妥当性のある評価値にすることができる.
1)
直管のコスト(CS)
本研究で使用されるアルゴリズム内で,あるノードから次のノードに直管を使用して
進む場合,そのノード間の距離に直径を掛けた値がコストとして与えられる.
式(5)として,直管を経由する場合における,コストの計算式を示す.ただし,直管
のコストをCS,直管を経由するノード間のマンハッタン距離をds,パイプ径をDとする.
CS  d S  D
2)
(5)
エルボのコスト(CE)
本研究ではエルボのコストとして,ノード間のマンハッタン距離に0.1を加えた値を
設定している.これは,ノード間の距離だけでなく,コストとして0.1を加えることで,
始点・終点間を結ぶ経路から不必要なエルボを除去するためである.
式(6)として,エルボを経由する場合における,コストの計算式を示す.ただし,エ
ルボのコストをCE,エルボを経由するノード間のマンハッタン距離をdE,パイプ径をD
とする.
CE  (d E  0.1)  D
3)
(6)
ベンドのコスト(CB)
本研究ではベンドのコストとして,ノード間のマンハッタン距離に0.3を加えた値が
使用されている.これは,4.2.3で示された図4.8のように,エルボが4つ必要な経路をベ
ンドは1つで接続することが可能であると判断しているからである.
式(7)として,ベンドを経由する場合における,コストの計算式を示す.ただし,ベ
ンドのコストをCB,ベンドを経由するノード間のマンハッタン距離をdB,パイプ径をD
とする.
CB  (d B  0.3)  D
(7)
39
本研究は上記コストの合計が最小になる最適な経路を探索する.経路が直管とエルボ
のみで構成された場合における,コストの計算例を図 4.13 に示す.図に示されている
ように,経路コストは,対象の経路中に含まれる全てのパイプピースのコストの合計と
なる.
図 4.13:配管経路コストの計算例
40
4.4 直管,エルボ,ベンドを含む経路探索アルゴリズムの予備実験
直管,エルボ,ベンドを考慮した経路探索システムの動作確認のために行った予備実
験を紹介する.
この実験では始点・終点の座標を変化させず,パイプ径のみを 0.2, 0.4, 0.7,
0.9[m]と変化させた.実験結果を図 4.14 に示す.なお,図中の黄色で表示されたものが
配管経路であり,経路中のオレンジの部分がベンドを示している.
図 4.14:ベンドを含んだ経路探索結果
図 4.14 で示された各経路は,灰色で示された障害物と干渉することなく,始点・終点
を接続しており,それぞれの直径での最適解が獲得されている.獲得された経路では,
ベンドを利用することで,無駄なエルボを取り除いていることも確認された.さらに,
探索される配管経路の直径が小さいほど,経路探索に必要な計算時間が長くなることが
41
判明した.これは,経路の直径が小さくなることで,探索領域内での経路パターンが増
加したためであると考えられる.経路探索時間に関しては,第 7 章でも再度考察がなさ
れる.この実験の詳細は先行研究[1]で示されている.また,このシミュレーション実
験では,4.6 節で述べられている鳥居配管については考慮していない.
4.5 パイプラック空間および通路空間における配管経路の取り扱い
4.5.1
パイプラック空間への配管経路の優先的配置
パイプラックとは,設計対象空間内に複数本存在するパイプを束ねるためのものであ
り,サポート架台やパイプハンガーと呼称される場合もある.パイプラックの目的は,
「パイプを束ねること」および「パイプを壁際など設置するのが好まれる空間へ配置す
ること」の 2 点である.パイプラックを設置し配管を束ねることで,設計対象空間内に
存在する複数の配管経路を整然と配置することが可能となる.その結果,パイプライン
の安全性,施工性,メンテナンス性を向上させることができる.また,配管経路を壁に
沿うように設計することにより,作業スペースや通路空間を容易に確保することも可能
となる.よって,パイプラックが設計対象空間内に存在する場合,極端な迂回経路とな
らない限り,配管経路はパイプラックが設置されている空間を通過することが望ましい.
以後そのような空間をパイプラック空間と記述する.
パイプラック空間に可能な限りパイプを通す方法として本研究では,パイプラック空
間をパイプが通過した場合,その経路のコストがある値で割り引かれるように設定して
いる.このような処理をすることで,配管経路をあえて迂回させ,パイプラック空間へ
意図的に集めることが可能となる.また各パイプラック空間の割引率は,ユーザ自身が
経路探索を行う前に設定する必要がある.この値を変化させることで,どの程度まで経
路を迂回させてパイプラック空間を通すかという設定が変更できる.
図4.15はパイプラック空間を配管経路が通過した場合の例を示している.ここで,パ
イプラック空間を配管経路が通過していることの定義は,各パイプピースがパイプラッ
ク空間中に完全に内包されることであり,その場合のみパイプラック空間を通過したと
判断する.この時パイプの干渉判定に用いたものと同様のアルゴリズムを使用すること
で,経路がパイプラック空間を完全に通過しているかどうかを判定する.また,パイプ
ラック空間では特定の方向が設定されており,その方向と内包されたパイプピースの方
向が合致した場合のみ,コストの割引が行われる.図4.12では,パイプラック空間をY
方向に通過しているパイプピースにのみ割引率γDが考慮されている.
42
図 4.15:経路がパイプラック空間を通過する場合のコストの計算例
パイプラック空間の取り扱いにおける比較シミュレーションを紹介する.ここでは壁
際にパイプラックを設定した場合と設定していない場合の 2 通りのシミュレーション
実験を行った.シミュレーション結果を図 4.16 にまとめる.図中左ではパイプラック
空間が考慮されていない結果を表し,右では考慮されている場合の獲得経路を示す.こ
れらの図から分かるように,パイプラックを考慮した場合,経路が迂回しながら壁際を
通過していることが確認できる.
図 4.16:パイプラック空間の考慮における比較例
43
4.5.2
通路空間における配管経路の迂回
通路空間とは作業員が通ることを想定された空間のことであり,複雑に配置されたバ
ルブやその他への機器の作業性の向上のために必要な空間である.通路空間は作業員が
通るという性質上,配管経路が配置されていては作業に支障がきたすと考えられる.よ
って,配管経路が極端な迂回経路とならない限り,配管経路は通路空間を通ることを許
されない.
本システムでは配管経路が通路空間と少しでも干渉する場合,ペナルティとしてコ
ストが割り増しされる仕様となっている.この際,パイプの干渉判定に使用されたもの
と同様のアルゴリズムで,パイプと通路空間の干渉判定を行う.このようにコストが割
り増しされる空間を設けることで,パイプが可能な限り避けて通る空間を設計対象空間
内に設置することが可能となる.図4.17は通路空間とパイプが干渉しているケースのコ
ストの計算例を示している.図からも分かるように,通路空間と干渉しているすべての
パイプピースのコストが割り増しされる.
図4.17:通路空間と干渉する場合のコストの計算例
通路空間の取り扱いに関する比較シミュレーションについて述べる.通路空間を考慮
する場合と考慮しない場合の 2 パターンについてシミュレーション実験を行った.それ
ぞれのケースで獲得された経路を図 4.18 として示す.左の例では通路空間が考慮され
ていない場合,右の例では考慮されている場合をそれぞれ示す.これらの図を比較する
と,通路空間を考慮することで,獲得経路が通路空間を避けていることが分かる.
44
図 4.18:通路空間の考慮における比較例
4.6 鳥居配管の回避
本システムでは,経路中における「鳥居配管」についても考慮がなされている.「鳥
居配管」(または「溜り」
)とは第 2 章で示したように,配管経路が上下に U 字構造と
なっている部分を意味する.このような形状の配管経路ができた場合,配管を流れる液
体・気体の種類によっては排水や気泡がパイプ中に溜まってしまう恐れがある.よって
経路中に鳥居配管がある場合,その位置にドレイン抜きや気体抜きを設置しなければな
らない.しかし,これらの機器を設置することは費用の面から考えて,配管経路設計で
は望ましいことではない.ゆえに可能な限り溜りを含まないような配管経路を考案する
ことが設計者の共通意識となっている.
本システムでは,経路探索のグラフを構築する際に,高さ方向へ遷移するノードに関
してはエッジの重みを割増して設定している.コストの割増計算においては,4.1 節の
式(1)を使用する.このように Z 方向のノード遷移に対して割増されたコストを設定す
ることで,高さ方向への経路の移動を抑えることができる.ゆえにこの手法を適用する
ことで,獲得された経路中に含まれる溜りの数を最小にすることが可能となる.また本
手法は, Z 方向への遷移が複数回必要な複雑な経路に対しても対応可能である.ただ
し,探索過程では高さ方向へ遷移する場合よりも先に,横方向へ遷移する場合を探索す
ることになる.よって本手法には,始点・終点間が遠く離れているような設計条件の場
合,探索時間の増加が著しくなるという欠点が存在する.しかし,複雑な経路に対して
も確実に経路を探索できるという利点も存在している.また,垂直方向へのノード遷移
に対する割増はデフォルト値で 2 倍が設定されている.ただし,割増値として妥当な値
を発見するために,今後,さらなるシミュレーション実験が必要である.
45
アルゴリズムの動作確認のために行った簡易シミュレーションを紹介する.アルゴリ
ズムの比較のため,Z 方向のノード遷移に対してコストを割増しない場合と,割増する
場合の 2 つのシミュレーションを行った.
図 4.19 として探索後に得られた経路を示す.
図中左では鳥居配管に関する考慮がなされていないが,右では Z 方向への遷移コストを
割増することで鳥居配管の発生を極力抑えている.
図 4.19:鳥居配管に関するシミュレーション実験
図 4.19 の左では鳥居配管が 2 つ確認できるが,右図では 1 つしか確認されない.この
実験では,始点・終点の座標条件により,鳥居配管を少なくとも 1 つ含まなければ障害
物を避けた経路の生成が不可能であるため,右図の経路は妥当なものである.
鳥居配管の生成を避けるもう一つのアプローチとして,ノード探索の方向を限定する
手法が考えられる.すなわち,始点が終点よりも高い場合は,探索方向を高い方から低
い方のみに制限し,一方で始点が終点よりも低い場合は,探索方向を低い方から高い方
へ限定する手法である.このように探索方向を限定することで,U 字となる経路の発生
を防ぐことができ,さらに探索時間が短縮されるというメリットもある.しかし,この
手法では図 4.19 のような例題,すなわち少なくとも 1 つは鳥居配管を含まなければ始
点・終点を接続できないような問題に対して,実行可能な解を発見することができない.
また,解が発見できるか否かの判断に長い計算時間を必要とするといったデメリットも
存在している.よって,本システムではこのアプローチは採用されていない.鳥居配管
に関するさらなる詳細は先行研究[2, 7]で述べられている.
46
4.7 経路の探索対象空間におけるメッシュ分割
4.7.1
経路の探索対象空間における不均一幅メッシュの適用
提案手法では配管経路探索をグラフ上の経路探索問題へと置き換えるために,経路探
索が行われる空間をメッシュ状に分割している.これを行うことにより,各パイプピー
スによるノード遷移や,パイプラック空間,通路空間,鳥居配管の取り扱いが可能とな
っている.対象となる空間をメッシュ状に分割する手法は第 2 章で記した先行研究にて
広く採用されてきた.しかし,メッシュのサイズがパイプの直径以上という制約条件が
存在していたため,パイプ径が大きくなると経路探索の精度が低下するといった問題点
があった.しかし,本研究で採用されている探索アルゴリズムでは遷移可能なノードま
での移動距離を逐一計算しているため,メッシュの大きさはパイプ径に依存していない.
よって,より細かなメッシュを設定することで,より経路探索を正確に行うことができ
る.しかし,メッシュを細かくすることは探索されるグラフの規模を大きくすることに
つながる.よってメッシュを細かく設定すると,探索時間は長くなる.
図 4.20:不均一なメッシュサイズでの空間分割
また,遷移可能なノードまでの距離を計算するさらなるメリットとして,不均一メッ
シュの追加が挙げられる.図 4.20 は,本システムで採用されている不均一なサイズの
47
メッシュ分割を示している.この手法を適用することで,障害物周辺や,パイプラック
空間の中,通路周辺,始点・終点周辺などにより細かな追加メッシュを配置することが
可能となる.このように,ある物体周辺により細かなメッシュを配置し,それ以外の空
間を大きなメッシュで分割することで,短い探索時間の中でより正確な経路探索を行う
ことが可能となっている.ただし,経路の探索対象空間内に追加メッシュの対象物が数
多く存在する場合,空間内のメッシュ数が増大し,規則的なメッシュ分割の場合よりも
探索時間が増大してしまう.
本システムで追加メッシュの対象領域となっているのは以下の 4 つの空間である.
1)
始点・終点周辺
始点・終点周辺は X,Y,Z 方向にパイプ径にエルボの曲率を掛け合わせたサイズの
メッシュを追加する.これは始点・終点付近でのエルボの発生を見越しての対応である.
2)
構造物および壁周辺
立方体の障害物として近似された構造物や船内の壁周辺に追加メッシュが配置され
る.X,Y,Z 方向にパイプの半径分だけ離れた場所にメッシュが追加され,配管がこ
れらの構造物の側面に沿うように配置できる.
3)
通路空間周辺
通路空間の周辺に追加メッシュを配置する.詳細,目的は障害物周辺の追加メッシュ
と同様である.
4)
パイプラック空間中
パイプラック空間の中をパイプの直径毎に分割した追加メッシュが配置される.これ
により,獲得経路がよりパイプラック空間を通過しやすくなる.
48
4.7.2
径の小さい経路探索における追加措置
前節でも述べたように,経路の探索対象空間を分割するメッシュのサイズがパイプ径
に依存しないことは,本システムの特徴の一つである.しかし,パイプ径がメッシュサ
イズよりも小さい場合に限り,特定の始点・終点の座標状況によっては以下のような問
題が発生する.
図 4.21:パイプ径がメッシュよりも小さい場合の経路探索例
図 4.21 左のような始点・終点の配置で,且つパイプ径がメッシュよりも小さい場合
を考える.さらに,ここではベンドの横ずれ許容値 d(4.2.3 参照)がパイプ径以下とす
る.この場合,経路探索アルゴリズムで探索される経路ノードは右図のような明らかな
迂回経路となってしまう.これは,配管経路の位置および方向を各ノードの状態量とし
ていることが原因となっている.例えば,図中 d-2 の位置では探索されるノードは X 正
方向を向くのが理想的であるが,そのためには c-1 ノードからの遷移に 2 つのエルボを
要する.しかし,本システムでは 1 回のノード遷移には 1 つのパイプピースしか考慮で
きないため,d-2 で X 正方向を向くようなノードは獲得不可能であった.
そこで本システムでは,図 4.21 のようなケースを防ぐために,パイプ径がメッシュ
幅より大きい場合に限り,設定されたメッシュ幅を半分にする.メッシュ幅を半分にし
た例を図 4.22 にて示す.
49
図 4.22:メッシュ幅を半分にした経路探索例
図 4.22 右で示されているように,メッシュ幅を半分にすることで,最適な経路の生
成が可能となっている.ただし,メッシュ幅を半分にすることで,探索するグラフの規
模が大きくなるため探索時間が増大する.また,4.4 節でも述べられたように,配管経
路が細い場合,本システムでは探索時間が長くなってしまう.よって,探索時間を削減
するためには,細い経路に対する探索アルゴリズムを改善する必要がある.改善手段と
しては,配管が細いときに限りノードの状態量を座標位置のみに限定する手法などが挙
げられる.また,探索空間をメッシュ状に分割せずに,幾何学計算のみで経路探索を行
うアプローチも一つの解決手段である.
経路探索問題に応じた適切なメッシュ幅を獲得するためには,さらなるシミュレーシ
ョン実験が必要である.ただし,実際の配管設計現場では,配管機器の配置場所に関し
て 100mm 程度の距離を一つの単位としながら検討している.よって,メッシュ幅の値
に関して,実際の現場で考慮されている単位に合わせた設定を行うことが現実的である.
50
4.8 最適経路が複数本存在する場合の処理
第 2 章および本章で述べてきたように,本研究での経路探索システムはダイクストラ
法を利用している.ダイクストラ法では探索の結果として,最適解の獲得が保証されて
いる.しかし,始点・終点の位置や障害物の配置によっては,最適経路が複数存在する
場合が考えられる.そのような場合,本システムでは複数本存在する経路の中からラン
ダムで 1 本選び,解として獲得する.本節では,そのような最適解が複数個存在する場
合におけるシステムの処理を説明する.
本システムで採用している経路探索アルゴリズムでは,最適経路に含まれるノードを
全て獲得している.図 4.23 として,獲得されるノードの例を示す.この図では,始点・
終点を結ぶ最適経路として,5 本の経路が確認できる.このような場合,本システムで
は,図で示されたノードが最適ノード群として獲得される.
図 4.23:最適経路が複数本ある場合の獲得ノード
ここで,獲得されたノード群から最適な経路を 1 本選出する手法として,スタートノ
ードからランダムに経路を辿っていくアプローチが考えられる.しかし,この手法では
始点付近にエルボが生成される確率が高くなってしまう.例えば,スタート直後に c-1
もしくは c-2 のどちらかを確率 50%で選ぶ.もし,c-2 が選ばれた場合は経路が確定し,
一方で c-1 が選ばれた場合,次に d-1 か d-2 の選択が行われる.このような処理を続け
た場合, c-2 を経由する経路の出現率が 50%,d-2 経由の経路が 25%,e-2 経由の経路
51
が 12.5%,f-2 経由の経路および g-2 経由の経路がそれぞれ 6.25%となり,始点付近にエ
ルボが発生する確率が高くなる.よって,特定の経路における出現率の偏りを緩和する
ために,本手法では獲得されたノード群からランダムで 1 つのノードを選出し,これを
通過する経路を解として獲得している.この手法の適用例を図 4.24 に示す.
図 4.24:経由ノードをランダムに選出した例
図 4.24 では, f-2 が経由ノードとして選出された場合を示している.システムの処
理としては,始点から f-2 まで,f-2 から終点までの 2 本の経路を,最適ノード群の中か
らそれぞれ探索する.この場合の経路探索手法は,前述したアプローチと同様,始点か
らランダムにノードを辿っていく探索手法である.ゆえに,f-3 や g-3 など多くの経路
が通過しているノードが,経由ノードとして選出された場合は,経路の選択に偏りが生
じてしまう.本論文では,偏った解の選択によって生じた問題を 7.2.2 で考察している.
今後,最適解の偏った選出を可能な限り避けるために,経路のエルボの位置等の情報
から幾何学的に経路を比較する手法が必要である.
52
第5章
複数経路への対応
複数本の配管経路を探索する場合,第 4 章で述べた経路探索手法に従いながら 1 本ず
つ順次探索していく手法が考えられる.しかし,単純に経路探索を順次行っただけでは
妥当な設計案が獲得されない場合があることが,本研究の予備実験より判明した.本章
では,複数本を想定した配管経路探索問題に潜む問題点を説明し,それらを解決する新
たな経路探索手法に関する提案を行う.
5.1 複数経路の探索における 2 つの問題点
通常,船舶内には複数の配管経路が複雑に絡み合って存在している.このように複数
の配管経路が存在する場合,まず第 4 章で示した探索手順に従いながら配管経路を 1
本ずつ順次探索することで最終的な設計案を生成する手法が考えられる.実際の設計者
も,各配管経路を材料費の高いものから順に 1 本ずつ設計指定しており,通常は,太い
パイプから経路を検討していく.よって,経路を 1 本ずつ順次探索する手法は,実際の
設計者も使用している妥当な手法であると考えられる.しかし,この手法には,経路設
計を行う配管の順番によって最終的に得られる解が大きく変化するという問題が発生
している.この問題について 5.1.1 で詳しく述べる.また,経路探索システムに存在す
るもう一つの問題点として,最適な配管経路が複数ある場合における解の選択という問
題がある.これに関する詳細を 5.1.2 に記載する.本論文では,これら 2 つの問題点を
解決するために,電子回路の設計における経路の干渉回避方法の一つであるタッチアン
ドクロス法と,最適化手法の一種である焼きなまし法を組み合わせた新しい経路探索手
法の提案を行う.経路探索手法に関する詳細は 5.2 節以降で述べられる.
5.1.1
探索順序による設計案への影響
艤装設計の現場では一般的に,高価値な配管から経路を決定していくのが好ましいと
されている.よって,設計現場では「材料が高価な配管」,
「直径が大きな配管」から優
先的に配置の検討を行っていく.現在の経路探索システムでも同様の手法を取り入れて
いるが,パイプの直径が同じである場合,システム内で無作為に順序を決定している.
この結果,同じパイプ径が複数存在するテスト問題では,システムによる経路探索を実
53
行するたびに異なる設計案が獲得されてしまうことが予備実験から確認された.
図 5.1:探索順序による獲得経路への影響のイメージ図
図 5.1 は配管経路の設計順序により最終的な設計案が変化している 2 次元図を示して
いる.図 5.1 の上図では,探索順序は A から B となっている.一方で,下図では B か
ら A の順序で配管経路が探索されている.また,単位メッシュ当りの直管コストを 1
とした場合における経路コストも図中に示されている.図の上下で経路コストを比較す
ると,上図では 52.6 であるのに対し,下図では 56.4 となっていることが分かる.よっ
て,配管経路案の評価値である経路コストという観点からも,2 つの経路案が異なって
いることが確認できる.
以上のことから,配管経路の探索を行う順序によって,全く異なる最終設計案が獲得
されることが分かった.しかし,配置される配管経路が占有する領域を探索以前に確認
することは不可能である.そのため,最適な設計案を生成する経路探索の順序を,探索
を実行する以前の段階で判断することは困難である.
54
図 5.2:経路探索の順序による獲得経路への影響
また,図 5.2 は実際のシミュレーション実験にて確認されたものである.図中の数字
は各配管の探索順序を示している.すなわち,図中左では,赤,青,緑の順で経路探索
が行われており,右のケースでは赤,緑,青の順で経路探索が行われている.左の実験
結果では赤丸で囲まれた部分の緑の配管が,迂回経路になっていることが確認できる.
5.1.2
最適解の選択による設計案への影響
経路探索を行う場合,設計空間内の障害物の配置などによっては,最適な配管経路が
複数存在する場合がある.
図 5.3 は最適な経路が複数ある場合の 2 次元イメージである.
パイプ B の経路探索時には,図の上下で示されているように,エルボの位置により複
数の最適経路が考えられる.しかし,次にパイプ A の経路探索を行うと,既に獲得さ
れている配管経路の影響により設計案が大きく変化していることが分かる.図 5.3 の上
図では最適な 2 本の配管経路が配置されているが,下図ではパイプ A が大きく迂回し
た経路となっている.また,単位メッシュ当りの配管 A の直管コストを 1,配管 B の直
管コストを 2 とした場合の経路コストも図中に示されている.経路コストの比較からも,
上図より下図の方が低い経路コストを有していることが分かる.よって,この例で示さ
れているように,経路探索を行う段階では最適であった配管経路が,その後の経路探索
の段階で,他の経路を大きく迂回させる原因となるといった現象が考えられる.しかし,
前節で述べられた問題点と同様に,複数ある最適な配管経路の中で,どの経路が最適な
設計案を生成するかは経路探索を行った後でなければ判断できない.
55
図 5.3:最適解が複数存在する場合における解の選択による影響のイメージ図
図 5.4:最適解の選択による獲得経路への影響
56
また,図 5.4 は実際のシミュレーション実験中に確認された,最適解の選択による影
響を示している.左右のケースでは,赤丸で囲まれたエルボの位置が異なっている.そ
の結果,後に経路探索された緑の配管経路が迂回経路となっていることが右図より確認
できる.よって,どの最適解を経路探索の結果として獲得するかという問題は,最終設
計案の生成に対して大きな影響を与える要素である.
5.2 タッチアンドクロス法,焼きなまし法を用いた配管経路探索
5.1.1 および 5.1.2 で,複数本の配管設計における問題点が述べられた.すなわち,複
数本の配管経路探索を行う場合,最終設計案が,経路探索の順序および最適解の選択に
よって大きく変化してしまうという問題が発生する.よって,この問題を解決するため
に,本節ではタッチアンドクロス法および焼きなまし法を利用する手法の提案を行う.
なお,タッチアンドクロス法,焼きなまし法の詳細は第 2 章で述べられている.
5.2.1
タッチアンドクロス法の利用
タッチアンドクロス法を適用した配管経路探索手法について述べる.第 2 章で述べた
ように,タッチアンドクロス法では経路同士の干渉にコストを設定している.よって配
管経路探索問題でも,配管同士の経路干渉を意味する制約違反コスト(ペナルティ値)
を設定する.式(8)として経路探索システム内での経路干渉コストを記す.ただし,経
路同士の干渉コストを CInterferecne,干渉している部分のパイプピースが外接する直方体の
体積を VPipe,コストの割増率を RInterference とする.
CInterference  VPipe  RInterference
(8)
式(8)のように設定された干渉コストは,パイプピースの使用コストと同様に,経路探
索過程で作成されるグラフ上のエッジの重みとして換算される.
また,複数の配管経路を含んだ設計案を評価する値としては,式(2)で示された各経
路の探索コストをすべて足し合わせたものを使用している.式(9)として N 本の配管経
路を含んだ設計案の評価値を示す.ここで,設計案の評価値である総コストを CTotal と
して示す.
CTotal  i 1 C Pipe, i
N
(9)
57
なお,式(9)の評価値が,第 2 章で述べられたペナルティ関数法における拡張目的関
数となる.よって,ペナルティ値として設定された干渉コストが探索を繰り返すたびに
増加するため,CTotal も探索が進むにつれて増加する.
図 5.5:タッチアンドクロス法を利用し経路探索の 2 次元イメージ
図 5.5 として提案手法による経路探索を 2 次元でイメージ化したものを示す.図中の
①~③で確認できる配管経路における斜線部分は,他の経路と干渉しているパイプピー
スを示している.よって,斜線部分で示されたパイプピースのコストにのみ,式(8)で
示された干渉コストが追加される.タッチアンドクロス法を組み合わせた経路探索手法
では,経路探索を複数回繰り返しながら行い,それに伴い徐々に配管同士の干渉コスト
を増加させることで,最終的に干渉のない配管経路案を獲得することが可能になってい
る.図 5.5 の①で示されているように,経路探索の序盤では干渉コストが小さい値であ
るため,経路同士が干渉を無視した単純な最短経路となっていることが確認できる.し
かし,探索が進むにつれて干渉コストが増大していき,徐々に経路同士の干渉が少なく
なり,最終的に経路干渉のない妥当な設計案が獲得されていることが分かる.
58
5.2.2
焼きなまし法の導入
前節で示したように,タッチアンドクロス法では経路を一本ずつ順次引き直して改
善を繰り返すことで探索を進めていく.しかし,常に改善を繰り返すだけでは,最適解
へ到達するまえに探索が行き詰ってしまうケースが考えられる.このように最終設計案
が局所解へ陥ってしまうことを防ぐために,本研究ではタッチアンドクロス法のプロセ
ス中に,焼きなまし法を導入する.これにより,探索の行き詰まりを防ぎ,より実用的
な経路案の獲得が可能となる.
また,設計案の比較・選択の過程で解の遷移確率を計算するために,温度関数を設定
する必要がある.本手法で設定された温度関数を式(10)として示す.
Tk 1  Tk  1/ k 
(10)
ここでは探索ステップ k での温度を Tk として表す.また,パラメータ β は冷却率をコ
ントロールするパラメータであり,本システムでは 0.01 を代入している.さらに,獲
得解の改善,改悪を決定する遷移確率は式(11)で計算される.遷移確率を P,新しく探
索された解の総コストと以前に探索された解の総コストとの差を ΔC とする.
P  exp ( C Tk )
(11)
59
配管経路が N 本ある場合での,本手法による経路探索アルゴリズムを図 5.6 として
示す.
タッチアンドクロス法および焼きなまし法を利用した経路探索アルゴリズム
ステップ1
全てのパイプの始点・終点,各パラメータの情報を読み込む.
ステップ2
経路探索を行う順序を作成する(太さ順,長さ順など).
ステップ3
経路探索の順序に従いながら経路探索を行う.既に探索が行われ
ている経路の場合は,設定されている経路を除去し,経路探索を
やり直す.
ステップ4
各経路探索ごとに,解の遷移確率に従いながら,探索以前に獲得
された設計案との比較・選択を行う.
ステップ5
全てのパイプに対して経路探索が終了したら,温度関数 Tk を下降
させ,干渉コスト CInterference を上昇させる.また,探索ステップ:k
を k+1 とする.
ステップ6
温度関数 Tk が最終値以下になるまで,ステップ 1 ~ 5 を繰り返す.
図 5.6:タッチアンドクロス法および焼きなまし法を利用した経路探索アルゴリズム
図 5.6 で示されているように,提案手法では全パイプに対する経路探索を 1 本ずつ繰
り返し行い,以前に獲得された経路との比較・選択を焼きなまし法に従い行っていく.
また,提案手法では焼きなまし法をタッチアンドクロス法と組み合わせて使用してい
るため,温度関数の値が遷移確率だけでなく,経路の干渉コストにも影響を与える.こ
のアプローチにより,探索が繰り返されるたびに温度関数の値を低下させ,それと同時
に干渉コストを上昇させることが可能となっている.式(12)として干渉コストに影響を
与えるコストの割増率と温度関数の関係性を示す.なお T0 は温度関数の初期値を示し
ている.
RInterference  T0 / Tk
(12)
60
提案手法では,式(1), (2), (8) ~ (12)で示されている関係性を考慮することで,タッチ
アンドクロス法および焼きなまし法を経路探索に組み込んでいる.このアプローチによ
って配管経路が複数本ある場合でも,最終的に生成される設計案が,経路探索の順序に
よる影響,および最適経路が複数本ある場合での経路の選択による影響という,2 つの
影響を受けにくいものとなっている.
以上のような比較・選択過程を取り入れることで,獲得される解が局所解に留まるこ
とを避けることができる.よって,獲得された経路案は最適解である保証はないが,数
多く存在する設計案の中から妥当なものを効率的に探索することが可能となる.ただし,
経路探索を行う順序が妥当な設計案を発見する探索時間や探索精度に対して重要な要
素となっている.これに関する考察は 5.3 節で行う.
5.3 反復過程における経路探索順序の影響
提案手法では前節で述べたように,複数本の配管の中から 1 本ずつ配管を選択し経路
探索行っている.さらにこの処理をすべての配管経路について繰り返すことにより,設
計案の生成を行っている.この反復される経路探索過程の中で,どの順序で経路を探索
するのかという問題が発生する.すなわち,実際の設計者と同様に径の大きな配管から
順で設計を繰り返すべきなのか,ランダムで探索を繰り返すのか,もしくはその他の順
序なのかといった問題である.そこで本研究では,径の大きいもの順,小さいもの順,
ランダムな順序,そして始点・終点距離の短いもの順,長いもの順の 5 つのパターンで
それぞれ探索を繰り返す予備実験を行い,定性的な比較を行った.その結果,始点・終
点距離の短いもの順で経路探索を反復させることが最も効率的に妥当な設計案を獲得
できることが確認された.これは始点・終点距離が短い経路は,経路中に最適解のパタ
ーンが少なく,それらを先に配置させておくことで,後の経路探索における最適解の選
択幅が減少するためであると考えられる .そのため,第 6 章で示されるシミュレーシ
ョン実験では,始点・終点間の距離が短い配管経路から探索を繰り返している.今後,
この手法がどれほど有効である否かを確認するためには,さらなるシミュレーション実
験および検討が必要である.
61
第6章
シミュレーション実験
本章では,提案手法の動作確認のために行った 2 つのシミュレーション実験について
述べる.実験はそれぞれ,バラストポンプルームを想定したものと,デッキ裏のスペー
スを想定した条件となっている.また,本実験に関する考察は次章にて行う.
6.1 シミュレーション実験 1(バラストポンプルーム想定)
本実験ではバラストポンプルームを想定し,設計対象空間として各辺 6[m]の直方体
を用意した.用意された直方体の中に障害物 3 個,通路空間 3 個,パイプラック空間 2
個を設定し,合計で 12 本の配管経路探索を行う.
6.1.1
実験条件
本実験での実験設定を以下の表 1,表 2 に記す.なお,バラストポンプルーム内のバ
ラスト水処理装置,ポンプはすべて障害物とみなす.さらに,直管,エルボ,ベンドの
コストに関しては,4.3.2 節で示された式(5), (6), (7)に従う.また,鳥居配管の回避を目
的とした垂直方向のノード遷移に対するコストの割増率は 2.0 に設定した.さらに,温
度関数および経路同士の干渉コストに関しては,5.2.2 節の式(10), (12)を適用している.
本シミュレーション実験の計算環境は,OS に Windows7 を使用し,CPU は Intel Core
i7,3.4Ghz,メモリーは 8.00GB,プログラム言語は Java version1.7 を用いた.
62
表 1:シミュレーション実験 1 における実験条件
X_min X_max Y_min Y_max
X_min
Z_max
割引率:
割増率:
γD
γE
[m]
[m]
[m]
[m]
[m]
[m]
設計対象空間
0.0
6.0
0.0
6.0
0.0
6.0
通路空間 1
0.0
1.4
0.0
6.0
0.0
2.0
2.0
通路空間 2
1.4
3.4
2.6
3.4
0.5
1.9
2.0
通路空間 3
3.4
5.2
0.0
3.4
0.5
2.0
2.0
1.5
3.6
3.5
6.0
3.3
4.2
0.4 (Y)
3.4
5.3
0.0
3.5
0.0
0.5
0.4 (Y)
障害物 1
2.0
3.6
3.5
6.0
0.0
3.3
障害物 2
4.2
5.4
4.0
4.5
0.0
1.0
障害物 3
2.8
3.5
2.6
3.0
2.0
2.5
パイプラック空間
1
パイプラック空間
2
メッシュ幅
X_direction [m]
Y_direction [m]
Z_direction [m]
0.3
0.3
0.3
63
表 2:シミュレーション実験 1 における各配管経路の始点・終点位置
X [m]
Y [m]
Z [m]
Direction
Start
2.8
1.8
5.8
Z-
Goal
5.7
1.8
3.8
X-
Start
5.8
5.3
3.8
X-
Goal
2.7
0.2
3.8
Y+
Start
1.8
5.8
3.8
Y-
Goal
1.2
0.2
2.9
Y+
Start
2.5
5.5
5.8
Z-
Goal
2.2
0.2
0.3
Y+
Start
1.1
4.8
5.8
Z-
Goal
1.1
4.8
3.5
Z+
Start
1.1
3.8
5.8
Z-
Goal
1.1
3.8
3.5
Z+
Start
1.1
5.8
2.8
Y-
Goal
1.1
5.0
2.8
Y+
Start
1.1
2.3
5.8
Z-
Goal
2.8
2.3
1.1
X-
Start
1.1
1.2
5.8
Z-
Goal
2.8
1.2
1.1
X-
Start
3.1
2.1
2.2
Y-
Goal
3.1
1.2
1.3
Z+
Start
3.1
2.3
1.0
Z-
Goal
5.1
3.8
0.3
Y-
Start
4.1
5.5
0.3
X+
Goal
5.1
4.8
0.3
Y+
Diameter [m]
0.8
Pipe1
0.6
Pipe2
0.6
Pipe3
0.4
Pipe4
0.4
Pipe5
0.4
Pipe6
0.4
Pipe7
0.3
Pipe8
0.3
Pipe9
0.3
Pipe10
0.3
Pipe11
0.3
Pipe12
64
6.1.2
シミュレーション実験 1 における獲得解
図 6.1 に本実験で最終的に獲得された経路案を示す.最終的な設計案を獲得するため
に要した時間は約 9 時間であった.各経路は干渉なく接続されており,尚且つ可能な
限りパイプラック空間を通過し,通路空間を避けたものとなっている.また鳥居配管に
ついても可能な限り避けたものとなっている.同様の実験条件で 10 回シミュレーショ
ンを繰り返したところ,すべての実験結果で図にて示された経路案が獲得された.
図 6.1:シミュレーション実験 1 での最終設計案
同様の実験条件の下で,先行研究[2]のシステムを動作させたところ,実験を繰り返
すたびに異なる設計案が獲得されることが確認された.本実験を 10 回行い獲得された
総コスト CTotal の平均値を比較すると,先行研究のシステムでは平均で 35.1,本システ
ムでは平均で 33.5 となっている.これらの総コストの値を表 3 にまとめる.
表 3:シミュレーション実験 1 を 10 回繰り返すことで獲得された経路コスト
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
Average
Old System
33.4
35.6
35.6
35.5
33.4
35.5
35.5
35.6
35.6
35.6
35.1
New System
33.5
33.4
33.4
33.4
33.4
33.4
33.4
33.4
33.5
33.5
33.5
65
また以前のシステムでは設計案に平均で 1.4 個の溜りが確認され,パイプラック空間
を通過する配管の数も平均 2.6 本であったが,本システムでは溜り 1.0 個,パイプラッ
クを通過する配管も 4.0 本となり,溜りの発生を抑え,パイプラック空間を可能な限り
通過した設計案の生成に成功している.よって,タッチアンドクロス法と焼きなまし法
を適用した提案手法は,配管経路が複数本ある場合でも,妥当な設計案を高確率で獲得
することが可能であることが確認された.ただし,提案手法では経路探索を繰り返し行
っていることから,繰り返し探索を行っていない先行研究のシステムと比べて探索時間
は増加している.探索時間に関する考察は次章で行う.
また図 6.2 として,10 回行われたシミュレーション実験の中の 1 つの結果を示す.な
お,図中の k が探索ステップ,T がその時点での温度関数の値をそれぞれ示している.
ここでの探索ステップでは,すべての配管について一通り経路探索を行うことを一単位
としている.さらに表示されている経路案の総コストを CTotal として示す.探索ステッ
プが小さい時点では温度関数の値が高く,干渉コストの値が小さいため,獲得された設
計案は経路同士を無視した単純な最短経路群になっていることがわかる.しかし探索ス
テップが増加するにつれて温度関数の値は小さくなり,それに伴って干渉コストが増大
していき,経路同士の干渉が徐々に少なくなっていく.最終的には図中下段で示されて
いるような干渉のない妥当な設計案が獲得されていることが確認できる.
66
図 6.2:探索途中での配管経路
また,図 6.2 での経路は配管同士が複雑に絡み合った経路が確認できる.実際の施工
現場では設計された経路を管割によって分断して施工するため,ある程度複雑な経路で
も実現可能である.ただし本システムでは施工性を一切考慮に入れておらず,その取扱
いは今後必要になってくると考えられる.施工性の考察については次章にて記す.
67
図 6.3:探索ステップ k における総コスト CTotal
図 6.3 として横軸に探索ステップ k,縦軸に総コスト CTotal を表したグラフを示す.こ
のグラフでは,本システムを同じ実験条件で 10 回繰り返した後に得られた総コストの
平均値を表示している.図 6.3 から探索ステップが増加するにつれて総コストが徐々に
増加していることが分かる.これは干渉コストが探索ステップに伴い徐々に増加すると
いう提案手法の特徴によるものである.また本実験では探索ステップが約 22 回前後で
妥当な解に収束していた.ここで,解が収束するときに総コストの下降が確認できるが,
これは妥当な設計案では配管同士の干渉が無くなることやパイプラックの通過による
影響であると考えられる.
最後に図 6.4 ~ 6.13 として,探索結果が収束するまでに得られた経路案の一部を記載
する.示されているパラメータはそれぞれ,探索ステップ,温度,総コストである.
68
図 6.4:探索途中での配管経路:k=1, T=100, CTotal=31.9
図 6.5:探索途中での配管経路:k=6, T=95, CTotal=33.5
69
図 6.6:探索途中での配管経路:k=9, T=90, CTotal=33.4
図 6.7:探索途中での配管経路:k=11, T=85, CTotal=33.7
70
図 6.8:探索途中での配管経路:k=14, T=80, CTotal=32.9
図 6.9:探索途中での配管経路:k=16, T=75, CTotal=33.2
71
図 6. 10:探索途中での配管経路:k=19, T=70, CTotal=33.2
図 6. 11:探索途中での配管経路:k=21, T=65, CTotal=33.4
72
図 6. 12:探索途中での配管経路:k=22, T=63, CTotal=35.6
図 6. 13:探索途中での配管経路:k=24, T=60, CTotal=33.5
(経路同士の干渉が除去された最終設計案)
73
6.2 シミュレーション実験 2(デッキ裏スペース想定)
本実験ではデッキ裏スペースを想定し,設計対象空間として 8[m] x 12[m] x 4[m]の細
長い直方体を用意した.用意された直方体の中に合計で 4 本の配管経路探索を行う.ま
た,本実験の設計対象空間には障害物,通路空間,パイプラック空間は考慮しない.
6.2.1
実験条件
本実験での実験条件を以下の表 4,表 5 に記す.直管,エルボ,ベンドのコストに関
しては,4.3.2 節で示された式(5), (6), (7)に従う.また,鳥居配管の除去を目的とした垂
直方向のノード遷移に対するコストの割増率は 4.0 に設定した.さらに,温度関数およ
び経路同士の干渉コストに関しては,5.2.2 節の式(10), (12)を適用している.
また,計算環境は実験 1 と同様である.
表 4:シミュレーション実験 2 の実験条件
設計対象空間
メッシュ幅
X_min
X_max
Y_min
Y_max
X_min
Z_max
[m]
[m]
[m]
[m]
[m]
[m]
0.0
8.0
0.0
12.0
0.0
4.0
X_direction [m]
Y_direction [m]
Z_direction [m]
0.3
0.3
0.3
74
表 5:シミュレーション実験 2 における各配管経路の始点・終点位置
X [m]
Y [m]
Z [m]
Direction
Start
1.0
0.1
0.75
Y+
Goal
4.0
11.75
1.0
Y-
Start
3.0
0.1
1.0
Y+
Goal
7.0
11.75
0.75
Y-
Start
5.0
0.1
0.75
Y+
Goal
5.0
11.75
1.25
Y-
Start
7.0
0.1
0.5
Y+
Goal
1.0
11.75
0.5
Y-
Diameter [m]
0.9
Pipe1
0.7
Pipe2
0.5
Pipe3
0.3
Pipe4
75
6.2.2
シミュレーション実験 2 における獲得解
図 6.14 として最終的に生成された経路案の一つを示す.本実験での探索時間はおよ
そ 18 時間であり,最終経路案として妥当な設計案を獲得することができた.各配管経
路は探索序盤では干渉していたが,最終的に図で示すような干渉の無い経路案が獲得さ
れた.ただし本実験では,解の収束に必要な探索ステップが実験ごとに異なり,獲得さ
れる解にばらつきが確認された.
図 6.14:シミュレーション実験 2 での最終設計案
本実験では最終的に獲得される解が 2 つに分かれており,それぞれの解を図 6.15 と
して示す.図 6.15 左の設計案 A では総コストが 44.3 であるのに対して,設計案 B では
総コストが 43.3 であった.また,設計案が収束するのに必要な探索ステップは,設計
案 A では 65 回,設計案 B では 30 回であった.設計案 A での探索ステップが増加した
原因としては,探索初期段階でのエルボの位置が始点付近に固まったためであると考え
られる.これは 4.9 節で述べた,偏った経路選択の影響であると考えられる.さらなる
考察を 7.2.2 節で行う.
76
図 6.15:シミュレーション実験 2 で獲得される 2 つの経路パターン
図 6.16 として探索過程で獲得されている経路案をそれぞれ示す.この図から,探索
序盤では経路の干渉が確認できるが,探索の終盤となり温度関数の値が下がると経路同
士の干渉が無くなっていることが分かる.
また,図 6.17 として横軸に探索ステップ k,縦軸に総コスト CTotal を表したグラフを
示す.グラフより総コストは探索ステップが増加するにつれて徐々に増大し,最終的に
探索ステップが約 30 回で最終回を生成していることが分かる.ただし,このグラフは
図 6.15 における経路案 B の探索過程を示している.
最後に,本実験の過程で獲得された経路案の一部を図 6.18 ~ 6.20 として示す.これら
の図から分かるように,この実験では温度関数が 100~50 の間でほとんど経路が変化し
ていない.これらに関する考察を 7.2.2 節で行う.
77
図 6.16:探索途中での配管経路
78
図 6.17:探索ステップ k における総コスト CTotal
図 6.18:探索途中での配管経路:k=1, T=100, CTotal=39.9
79
図 6.19:探索途中での配管経路:k=9, T=90, CTotal=41.0
(T=80~50 は上図と同様の経路なので省略する)
図 6.20:探索途中での配管経路:k=32, T=45, CTotal=43.3
(経路同士の干渉が除去された最終設計案)
80
第7章
考察
本章では提案手法の新規性について検討を行い,その後,本システムの実用化へ向け
た課題を考察する.
7.1 提案手法の新規性
本論文では第 3 章で配管経路探索問題をグラフ上の経路探索問題へ帰着させる手法
について述べ,第 4 章で配管が 1 本の場合における経路探索手法の詳細を記した.また
第 5 章では配管経路が複数本存在する場合での経路探索アルゴリズムに関する提案を
行った.
まず,第 3 章で述べた経路探索のアルゴリズムに関して,本研究では配管設計問題を
機器配置問題と配管経路探索問題の 2 つに分けて取り扱っている.そして経路中に存在
する分岐を機器として取り扱うことで,配管経路探索問題の単純化を行っている.この
手法を適用したことで,経路探索される配管は分岐を含まない単純なものとなり,より
強力な経路探索アルゴリズムの使用が可能となっている.本システムでは経路探索のア
ルゴリズムとして,グラフ上の最適経路を獲得できるダイクストラ法が採用されている.
次に,第 4 章を中心に説明された経路探索アルゴリズムに関して述べる.本論文の提
案手法で獲得される配管経路では,実際の配管設計過程と同様に,直管,エルボ,ベン
ド,通路空間の迂回,パイプラック空間への経路の優先的配置,鳥居配管の回避という
点が考慮されている.第 2 章で示した先行研究では,配管経路中での直管,単純なエル
ボ,簡易的なパイプラック空間は考慮されているが,それ以外の設計項目に対しては検
討が不十分であった.よって本システムの特徴の一つとして,多くの設計項目を考慮し,
より実用的な配管経路案が獲得できるという点が挙げられる.ただし,ユーザはこれら
の設計項目に関する各パラメータを事前に入力する必要がある.各パラメータ値に関す
る考察は 7.2.3 で行う.
また,提案された経路探索アルゴリズムでは空間をメッシュ状に分割している.この
ように空間を離散化する手法は,第 2 章で述べた先行研究でも採用されており,配管経
路探索問題をグラフ上の問題へと置き換えるためには有用なアプローチである.しかし,
これらの先行研究では空間の分割幅がパイプ径以上という制約条件が存在していた.実
際の配管設計ではパイプの始点・終点の位置間の距離などはパイプの直径とは関係なく
設定されている.ゆえに空間分割の粗さがパイプの直径に依存することは配管経路探索
81
問題を検討するうえで,大きな制約条件となってしまうと考えられる.そこで本手法は,
先行研究[1]において提案された,空間を分割する際のメッシュの寸法がパイプの直径
に依存しない手法を採用することで,この問題の解決を図っている.
最後に,本システムでは探索される配管経路が複数存在する場合でも,実用的な配管
経路案を自動生成することができる.第 5 章にて述べられたように,配管経路が複数存
在する場合,単純に 1 本ずつ経路探索を重ねただけでは妥当な設計案が獲得されないケ
ースが確認された.よって本システムでは,第 4 章で示された経路探索手法に,電子回
路での干渉回避アルゴリズムとして提案されたタッチアンドクロス法を取り入れてい
る.タッチアンドクロス法を取り入れることで,経路探索を複数回行いながら徐々に経
路同士の干渉を取り除くことができる.また,タッチアンドクロス法だけでなく,焼き
なまし法も導入した経路探索アルゴリズムの提案を本論文では行っている.これは,最
終的に獲得される設計案が局所解に陥ることを防ぐためである.これらの手法を取り入
れることで,本システムでは設計対象の配管経路が複数する場合,最適な解が獲得され
る保証はないが,数多く存在する配管経路の組合せの中から妥当な設計案の探索を効率
的に行うことができる.本システムで自動生成される経路案は,第 6 章シミュレーショ
ン実験にて確認された.
7.2 提案手法の実用化に向けた課題
7.2.1
経路探索手法の改良
提案手法ではグラフ上の経路探索アルゴリズムとしてダイクストラ法が使用されて
いる.ダイクストラ法は,グラフ問題の探索において隣接した全てのノードについて探
索を行う横型探索に分類される.この横型探索を適用した場合,最小コストの解が保証
されるという利点があるが,隣接したノードをしらみつぶしに探索するという性質上,
解の生成に多くのメモリーと時間を要するといった欠点がある.そこで A*アルゴリズ
ムを使用することが考えられる.A*アルゴリズムは分枝限定法と呼ばれ,より解に近
いと予測されるノードから優先的に探索を進めていくアルゴリズムである.ただし,本
研究ではパイプラック空間を考慮しているため,必ずしも終点に近いノードが最適解に
含まれるとは限らない.よって A*アルゴリズムを採用する場合,優先方向の設定に配
慮が必要である.
また,第 6 章で示されたシミュレーション実験では解の獲得に 18 時間を要している.
これは実験設定で記した計算機を使用した場合の探索時間であり,本手法では複数回に
82
わたって経路探索を繰り返すために,必然的に経路探索時間は長くなる.しかし,今後
の実用化を目指すうえでは,さらに計算時間を短縮する必要がある.第 6 章のシミュレ
ーションからの知見として,特に長い探索時間を必要としたのが細い配管の経路探索で
あった.細い配管経路の探索の場合,本研究では第 4 章で述べたように,臨時の追加メ
ッシュが設定されている.この影響により,設計対象空間内での探索パターンが増加し,
探索時間が長くなったと考える.よって今後,配管経路が細い場合は,グラフ上の経路
探索を使用するのではなく,幾何学的に経路探索を行った方が探索時間の短縮につなが
る可能性がある.また,同時に複数の計算機を使用することも探索時間を短縮する解決
手段の一つである.ただし提案手法では,1 本ずつの経路探索を複数回繰り返している
ことから,探索中の経路が設定されないと次の配管の経路探索を行うことができない.
よって複数の計算機を単純に並列使用するだけでは,有効な解決策とはならない.そこ
で今後の方針として,始点・終点を結ぶ解として最適経路が複数ある場合に,すべての
経路パターンをそれぞれの計算機で事前に獲得しておき,後にそれらをパズルのように
組み合わせる手法を検討している.
また探索時間に関しては,メッシュ幅や各種配管のパラメータにも依存するが,それ
らに関する考察は 7.2.3 で行う.
7.2.2
経路過程における膠着状態
第 6 章を通じて 2 つのシミュレーション実験を紹介した.ここで,バラストポンプル
ームを想定した実験 1 では,安定して同じ解を生成する結果となった.また,結果を検
証したところ,獲得された解は最適解であった.しかし,デッキ裏スペースを想定した
実験 2 では,最終案が 2 種類に分かれた. 6.2.2 節の図 6.15 に獲得された 2 つの経路が
示されている.さらに,獲得される経路案によっては,探索終了までに必要な探索ステ
ップが増加することもシミュレーション実験 2 より確認された.
設計案によって探索ステップが増加した原因としては,探索初期段階でのエルボの位
置が始点付近に固まったためであると考えられる.これは 4.9 節で述べた,偏った経路
選択の影響であると考えられる.提案した経路探索システムでは,ダイクストラ法での
始点付近にエルボやベンドといった曲り点が出現しやすくなっている.複数の配管経路
で始点・終点付近に曲り点が発生した場合,ダイクストラ法で獲得される最適経路パタ
ーンが減少し,終始同じ経路が獲得されてしまう.その結果,シミュレーション実験で
確認されたように,配管同士の干渉が長時間排除されず,最終設計案の生成に必要な探
索ステップが増加する.
探索過程における絡まった経路での膠着状態を防ぐために,干渉判定コストの変更,
および経路選択手法の改善が必要であると考えられる.干渉判定コストの変更に関して
83
は,探索途中において干渉判定コストを確率的に減少させることにより,絡まった状態
の経路を大きく改変させ,好ましくない経路状態を脱することができる.しかし,干渉
判定コストの減少のタイミングにはさらなる検討が必要である.また,経路選択手法の
改善においては 4.9 節でも述べたように,複数の最適経路が存在する場合,可能な限り
均等な確率で経路の選出を行うシステムが求められる.
7.2.3
各種パラメータの値
提案された経路探索アルゴリズムでは,メッシュの分割幅,温度スケジューリング,
干渉コストの割増という 3 つの点が探索結果に対して大きな影響力を有している.
温度スケジューリング,干渉判定コストの割増に関しては式(10),式(12)の関数を適
用している.しかし,温度スケジューリングのパラメータを変更し,これらのスケジュ
ーリングをより緩徐にすることで,探索の精度を向上させることが可能である.ただし,
この場合,探索時間もまた増大してしまう.さらにメッシュ幅に関しても,分割幅を細
かくすることで,探索時間は必然的に長くなるが,より正確な経路探索結果が得られる.
提案手法では,壁回りやパイプラック空間中に追加メッシュを配置することで,メッシ
ュ幅による探索時間の増加を抑えている.しかし,設計問題に応じた各パラメータを自
動的に判定することは,今後の大きな課題である.
また,提案手法を適用し配管経路探索を行う場合,ユーザはメッシュ幅以外にも複数
のパラメータを事前に設定しなければならない.
以下に設定が必要なパラメータを 1) ~ 5)として記す.
1) 設計対象空間のサイズ
2) 障害物のサイズ・位置
3) パイプラック空間のサイズ,位置,コストの割引率,割引方向
4) 通路空間のサイズ,位置,コストの割増率
5) 各配管の情報(始点・終点の位置および方向,エルボのコストおよび曲率,ベ
ンドのコスト,曲率および横ずれ許容値,高さ方向のコスト割増率)
以上のパラメータの中で,物体の配置や曲率は,設計寸法なので既知のパラメータであ
る.また,直管,エルボ,ベンドのコストに関しては,実際のパイプピースの値段に相
当する値を設定することで,妥当なコスト設定が可能であると考えられる.しかし,パ
イプラック空間の割引率や高さ方向のコスト割増率に関しては,妥当な設計値を今後シ
ミュレーション実験などから確認する必要がある.
84
7.2.4
船殻に沿った配管経路の探索
船舶における配管設計を考えた場合,最も複雑に配管が配置されている場所はエンジ
ンルームである.また,エンジンルームは一般的に船尾に配置されているため,配管を
配置できるスペースは限られたものとなっている.よってエンジンルームでは,配管の
占有スペースを小さくするために,経路が船殻に沿って空間を斜めに通過しているケー
スが少なくない.提案された経路探索システムでは,ベンドを使用することで空間を局
所的には斜めに通過している.しかし,直管,エルボなどは設計対象空間の各辺に平行
にしか配置できず,船殻に沿った配管を自動的に生成する必要がある.
船殻に沿った配管の自動生成には 2 つの手法があると考えられる.1 つは,現在の手
法を延長し,空間を斜めに分割するメッシュを追加することである.ベンドでの例でも
確認できるように,空間を斜めに通過する手法は既に存在している.よって,空間を斜
めに分割したメッシュを取り入れることでノード遷移の方向を追加し,船殻に沿った経
路を生成することができると考えられる.しかし,ノード遷移先を増加させることは探
索時間の増加を意味しているので,メッシュの配置場所に十分な配慮が必要である.ま
た,斜めに通過する場合は,エルボやベンドが製作可能なものであるか否かを判断する
システムの検討も必要である.
もう 1 つの手法は,空間を離散的に分割せずに,配管経路を幾何学的に探索する手法
である.すなわち,始点・終点の位置と向きから,それらを接続する配管経路のベクト
ルを考慮する手法である.この手法を適用することで,メッシュの配置に依存しない配
管経路を生成することができる.また,探索手法によっては探索時間が短縮される可能
性もある.しかし,この手法のデメリットとしては最適な配管が獲得される保証が無い
こと,複雑な経路への対応が困難なことが挙げられる.特にエンジンルームを想定した
場合,配管経路は互いに複雑に入り組んでおり,これらの経路を幾何学的に自動生成す
るには新たな自動経路探索アルゴリズムの提案が必要である.
7.2.5
施工性の評価
提案手法では,獲得される配管経路の評価基準として,経路の総延長や曲りの数等を
考慮した総コストを使用している.しかし実際の配管設計の現場では,設計している配
管経路の施工性や安全性等の検討も行っており,これらは配管設計において重要な問題
であると考えられる.本論文の提案手法では施工性や安全性の評価問題は取り扱ってい
ないが,これらの問題を考慮した配管設計支援システムの構築が将来的に必要となって
くると考えられる.安全性をシステム内で評価する手法として,電装機器周辺や,既に
配置された経路の上の空間など,配管経路の通過が望ましくない場所をコストが割り増
85
される空間として自動的に設置することが考えられる.一方で施工性の評価については,
配管のフランジ割問題も含んでおり,熟練技術者の経験に頼る部分が多く,数値的評価
手法が存在していない.しかし,設計現場では配管経路の施工性が,設計案を評価する
うえでの重要なポイントとなっており,施工性を自動的に評価するシステムの必要性は
高まると考えられる.よって,今後,配管設計問題の支援を行うシステムを構築するた
めには,配管経路設計だけでなく,妥当な機器配置や,各機器の操作性,配置された配
管の施工性,安全性を総合的に評価する手法の提案が必要である.
7.2.6
設計案修正・改善システムとしての役割
本手法は前章までで述べてきたように,経路探索を複数回繰り返しながら探索を進め
ていく.すなわち,初期の設計案に対して,徐々に修正を加えながら妥当な設計案を生
成している,という見方もできる.ゆえに今後の方向性として,設計者が作成した初期
の設計案を自動的に修正するシステムの構築が可能であると考えられる.その場合,現
状のシステムに対して,設計案の読み込みモジュールの追加,および焼きなまし法での
冷却スケジュールの検討が必要であるが,経路探索アルゴリズムは現状のものが使用で
きる.このような自動修正システムを構築することで,若手作業者の設計作業に大きく
貢献できると考えている.
7.2.7
干渉判定アルゴリズムの改良
提案手法では,第 4 章で述べられたように,配管を直方体と置き換えることで干渉判
定を行っている.また,三角形プリミティブの組合せで表現された物体との干渉判定も
可能となっている.この手法により,干渉判定に必要な計算量を抑えることに成功した.
ただしエルボやベンドに関しては,その曲率が大きく,パイプピースとして大きな部品
となっている場合,直方体のみでは経路の形状を表現しきれていないケースがある.よ
って今後は,円柱や球といった形状での干渉判定システムの開発が必要である.ただし,
配管経路の施工性を考慮すると,配管同士が極度に接近している経路案は好ましくない.
よって,施工性評価システムと連動して開発を進めていく必要がある.
86
また,本システムでは経路探索の結果として図 7.1 で示されたような,パイプが自身
と干渉している経路が獲得される場合がある.このような設計案は実現不可能であり,
現在は警告メッセージでユーザに知らせる仕様になっている.今後,経路探索過程の干
渉判定の段階で,探索途中までに獲得されている経路との干渉を逐一確認するメソッド
が必要である.ただし,この手法を適用した場合,干渉判定に必要な計算量が増大する
図 7.1:パイプが自身と干渉している経路案の例
87
第8章
結論
本論文においては,設計者の経験を頼りに行われている配管設計作業の支援を目的と
して,実際の設計者が配管経路設計作業にて考慮している項目を検討し,障害物の存在
する狭隘な空間における複数本の配管経路の設計作業を自動的に行うシステムの提案
を行った.そして,シミュレーション実験を通じて,提案手法の有効性を確認した.
本研究で得られた結論は以下のとおりである.
第 1 章にて,配管設計問題の現状における熟練技術者への依存を指摘し,配管設計支
援システムの必要性を述べた.また,配管設計支援システムの概要と,本論文で提案し
た配管経路探索システムの特徴を示した.
第 2 章にて,船舶における配管設計の概要を示した.また,提案手法に関連する技術
や理論として,ダイクストラ法,タッチアンドクロス法,焼きなまし法の説明を行った.
さらに,関連する先行研究を整理し,それぞれの研究に対して考察を行うことで,提案
手法で解決すべき問題を示した.
第 3 章にて,配管経路の設計において実際の設計者が考慮している項目を紹介した.
さらに,配管経路の設計作業を自動的に解決するために,配管経路探索問題をグラフ上
の最短経路探索問題へと帰着させる手法を示した.経路の探索対象となる空間をメッシ
ュ状に分割し,各格子点における配管経路の座標と向きを状態量とした重み付グラフを
作成することで,配管経路探索問題をグラフ上の最短経路探索手法へと置き換えている.
また,パイプの分岐の扱いについて,実際の設計作業では分岐の配置は配管経路設計に
含まれるが,分岐部を機器の一種とみなすことで配管経路設計問題から切り離し,バル
ブ等の機器と同様の機器配置問題とする方法を提案した.
第 4 章にて,第 3 章でモデル化した配管経路探索問題のうち,分岐の無い 1 本分の経
路探索問題を定式化した.そして,作成されるグラフ上のエッジの重みとして,直管,
エルボ,ベンド,パイプラック空間,通路空間,鳥居配管を考慮する手法を提案した.
各項目における経路の探索手法を示し,各パイプピースのサイズの考慮,パイプラック
空間への配管経路の優先的配置,通路空間における配管経路の迂回,鳥居配管の回避が
可能となった.さらに,経路探索の対象空間への不均一なメッシュの適用方法の提案を
88
行った.
第 5 章にて,複数の配管経路を対象とした経路探索手法の提案を行った.まず,複数
本の経路探索を行う場合の問題点として,最終設計案が経路探索を行う順序によって変
化する問題,複数の最適解が存在した場合での解の選択によって設計案が異なる問題,
という 2 つの問題点を指摘した.そして,これらを解決する手法として,タッチアンド
クロス法の導入を提案した.これは,探索序盤では経路同士の干渉を無視してすべての
最小コスト経路を求め,徐々に経路同士の干渉コストを引き上げながら経路を 1 本ずつ
探索し直す方法である.さらに,タッチアンドクロス法による設計案の改善の行き詰ま
りを解消するため,探索の過程で後戻りを許容する焼きなまし法と組み合わせる手法を
提案した.
第 6 章にて,船舶のバラストポンプルームやデッキ裏スペースの配管経路設計を想定
したシミュレーション実験について,提案手法を適用し,手法の有用性および問題点に
ついて述べた.
第 7 章にて,提案手法の特徴を整理し,新規性について考察した. また,提案手法
の実用化に向けた課題として経路探索手法の改良や各種パラメータの値,船殻に沿った
配管経路の探索について考察を加えた.
以上より,本研究の成果は,以下の 4 つに整理できる.
1) 配管経路探索問題において,実際の設計過程のように,直管,エルボ,ベンドの使
用,パイプラックへの経路の優先的配置,通路における経路の迂回,鳥居配管の回
避を考慮する経路探索アルゴリズムを提案した.本研究では配管経路探索問題をグ
ラフ上の経路探索問題へと帰着させることで問題の解決を図った.グラフ上では,
各設計項目をノード間のエッジにおける重みとして取り扱い,獲得される経路のコ
ストとしてみなした.この結果,本システムで獲得される経路は,各パイプピース
のサイズ,パイプラック空間への通過,通路空間の迂回,鳥居配管の回避を考慮し
た実用的な経路になっている.
2) 探索対象となる配管経路が複数存在する場合を想定し,電子回路設計における干渉
回避手法のタッチアンドクロス法と,最適化手法の一つである焼きなまし法を組み
合わせた経路探索アルゴリズムの提案を行った.本研究では実問題に沿った配管経
路探索問題を解決するために,経路の探索順序と最適解の選択という 2 つの問題に
着目した.これら 2 つの問題は最終的な設計案に対して大きな影響力を有しており,
単純に 1 本ずつの経路探索を重ねただけでは,妥当な解を安定的に獲得することが
89
不可能であった.そこで,本研究ではペナルティ関数法に分類されるタッチアンド
クロス法に,焼きなまし法を組み合わせた経路探索システムを構築した.この手法
により,探索過程で解の改悪を確率的に考慮し,探索の行き詰まりを回避できるよ
うになった.
3) バラストポンプルーム,デッキ裏スペースを想定した設計対象に対して,計算シミ
ュレーション実験を行い,提案手法の有用性を確認した.これらのシミュレーショ
ン実験で,最終的に獲得された経路案を先行研究でのシステムでの結果と比較する
ことで,本システムの有用性の検討を行い,配管経路が複数本存在する場合でも,
実用的な設計案が獲得可能であることを確認した.
4) 提案手法の新規性について考察を行い,提案手法の実用化に向けた課題について検
討を行った.
以上より,配管設計作業を自動的に支援するシステムの実現に近づく成果を得た.
90
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93
謝辞
本論文は筆者が九州大学工学府海洋システム工学専攻博士後期課程に在籍中の研究
成果をまとめたものである.指導教員の木村元准教授には本研究の実施の機会を与えて
頂き,その遂行にあたって終始,ご指導を頂きました.ここに深謝の意を表します.ま
た教授の梶原宏之先生には本研究に関して細部にわたりご指導して頂きました.ここに
深謝の意を表します.さらに,九州大学工学府海洋システム工学専攻の各研究室におけ
る教授,准教授,技術職員の方々からは,勉学,研究,研修等を通じて,数多くの貴重
な経験・知見を頂きました.心より感謝いたします.そして,システム計画学研究室諸
氏には,研究遂行にあたり日頃より有益なご助言を頂き,研究以外においても有意義な
時間を過ごすことができました.ここに感謝の意を表します.そして,最後に日頃より
支えて頂いた家族・友人に感謝します.本当にありがとうございました.
94
ダウンロード

船舶分野における 配管経路自動設計に関する研究