オイラーと無限級数
プロローグ
1
Jakob Bernoulli は無限級数に情熱を注いだ。調和級数 (1 +
¢¢¢ +
1
n
1
2
+
1
3
+
1
4
+
+ ¢ ¢ ¢) の発散の証明だけでなく、いくつかの収束数列の正確な値も
知っていた。その中でも、もっとも単純なものは無限等比級数 (幾何級数) の
和の公式である。
a + ar + ar 2 + ¢ ¢ ¢ + ar k + ¢ ¢ ¢ =
a
(¡1 5 r 5 1)
1¡r
1
1
他にも分母が三角数と呼ばれるk(k+1)=2 になっている1+ 13 + 16 + 10
+ 15
+¢ ¢ ¢
についても考えていた。
1+
1
1
1
1
+ +
+
+ ¢¢¢
3
6
10
15
1
1
1
1
1
= 2[ + +
+
+
+ ¢ ¢ ¢]
2
6
12
20
30
1
1
1
1
1
1
1
= 2[(1 ¡ ) + ( ¡ ) + ( ¡ ) + ( ¡ ) + ¢ ¢ ¢]
2
2
3
3
4
4
5
= 2 £ [1]
= 2
これは現在では「たたみ込み級数 (telescoping series)」として知られている。
たたみ込み級数とは、k を 0 以上の整数として
1
1
1
+
+¢¢¢+
+ ¢¢ ¢
k(k + 1)
(k + 1)(k + 2)
(k + n ¡ 1)(k + n)
の形の級数で、これは
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
[ ¡
]+[
¡
]+[
¡
] ¢ ¢ ¢+[
¡
]+[
¡
]+¢ ¢ ¢
k k +1
k+1 k +2
k +2 k+ 3
k + n¡ 1 k + n
k +n k +n+1
のように「たたみ込む」ことができ、その和は
1
k
である。
それほど知られていない Jakob Bernoulli が求めた無限級数の和では分子
が等差数列
a; a + c; a + 2c; a + 3c; ¢ ¢ ¢
分母が等比数列
b; bd; bd2 ; bd3 ; ¢ ¢ ¢
1
になっている
a a + c a + 2c a + 3c
+
+
+
+¢¢¢
b
bd
bd2
bd3
といったものがある。例えば a = 1; b = 3; c = 5; d = 7 とすると
1
6
11
16
21
26
+
+
+
+
+
+¢¢¢
3
21
147
1029
7203
50421
となる。
Jakob は次のように分解した。
a a + c a + 2c a + 3c
+
+
+
+¢¢¢
b
bd
bd2
bd3
=
=
これは最初の
(
が初項 ab , 公比
1
d
a
a
a
a
+
+ 2 + 3 + ¢ ¢ ¢)
b
bd
bd
bd
の等比級数になっており、以下
(
が初項
c
,
bd
1
d
公比
c
c
c
+ 2 + 3 + ¢ ¢ ¢)
bd bd
bd
の等比級数、
(
が初項
c
bd 2 ,
公比
a
a
c
a
c
c
+( + )+ ( 2 + 2 + 2)
b
bd bd
bd
bd
bd
a
c
c
c
+( 3 + 3 + 3 + 3)+¢¢¢
bd
bd
bd
bd
a
a
a
a
( +
+
+ 3 + ¢ ¢ ¢)
b
bd bd2
bd
c
c
c
+ ( + 2 + 3 + ¢ ¢ ¢)
bd
bd
bd
c
c
+ ( 2 + 3 + ¢ ¢ ¢)
bd
bd
c
+ ( 3 + ¢ ¢ ¢)
bd
:::
1
d
c
c
+ 3 + ¢ ¢ ¢)
bd2
bd
の等比級数 : : : と続いていく。したがって
a a + c a + 2c a + 3c
+
+
+
+¢¢¢
b
bd
bd2
bd3
=
=
=
=
=
=
2
a=b
c=bd
c=bd2
+
+
+¢¢¢
1 ¡ 1=d 1 ¡ 1=d 1 ¡ 1=d
ad
c
1
1
1
+
[1 + + 2 + 3 + ¢ ¢ ¢]
b(d ¡ 1)
b(d ¡ 1)
d
d
d
ad
c
1
+
[
]
b(d ¡ 1)
b(d ¡ 1) 1 ¡ 1=d
ad
cd
+
b(d ¡ 1)
b(d ¡ 1)2
ad(d ¡ 1) + cd
b(d ¡ 1)2
ad2 ¡ ad + cd
bd2 ¡ 2bd + b
そこで、先の a = 1; b = 3; c = 5; d = 7 でいくと
1
6
11
16
21
26
1 £ 72 ¡ 1 £ 7 + 5 £ 7
77
+
+
+
+
+
+ ¢¢ ¢ =
=
2
3 21 147 1029 7203 50421
3 £7 ¡2 £3 £7+ 3
108
他にも Jakob は
1
X
k2
=6
2k
k=1
や
1
X
k3
= 26
2k
k=1
を発見している。これらの求め方はかなり面倒くさいようで、自宅にある大
学初年級程度の本をいくつか調べてみたけど載っていなかった。試しにイン
ターネットで調べたら
http://www.sinclair.edu/departments/mat/Newsletters/MathNet/vo6is4.pdf
なるページに最初のほうが載っていた。もうこうなると「インターネットが
ないと勉強できない」という台詞もあながち誇張ではないような気がしてく
る。具体的な計算については後で扱う。
最後に彼は現在 p 級数と呼ばれている
1
X
1
1
1
1
1
= 1+ p + p + p +¢¢¢ + p +¢¢¢
kp
2
3
4
k
k=1
といった形の級数に注目した。もし p = 1 ならば、それは調和関数でそれが
発散することは Jakob も知っていた。けれども p = 2 ならばどうか?
1+
1
1
1
1
+ +
+¢¢¢ + 2 +¢¢¢
4
9
16
k
の値はいくらなのか。
この問題は当時の何十年も前に Pietro Mengoli がその和を自分自身では見
つけられないとして問題提起していた。同じことは、微積分学の発明者で多
くの無限級数の大家でもある Lebniz によっても言われていた。今、それは
Jakob に向かってきた。ちょっと見たところ、彼がそれ以前に解き明かした
ものよりそれほど難しいとは思われなかった級数に対する高まる欲求不満は
想像できる。
進歩が無かったわけではない。不等式 2k2 = k(k + 1) を使うことによって
Bernoulli は
1
1
5
2
k
k(k + 1)=2
とし、
1+
1
1
1
1
1
1
1
1
+ +
+¢¢¢+ 2 +¢¢¢ 5 1 + + +
+¢¢¢+
+¢¢¢
4
9 16
k
3
6 10
k(k + 1)=2
3
の右辺は「たたみ込み級数 (telescoping series)」でこの章の最初に見たよう
P1
に 2 に収束することから、 k=1 1=k 2 5 2 とした。そして、全ての p = 2 に
P1
対して 1=k p 5 1=k2 だから k=1 1=k p は収束すると結論づけた。
1.1
1
X
k=1
Jakob Bernoulli が求めた他の級数の値について
k2
の求め方について
2k
http://www.sinclair.edu/departments/mat/Newsletters/MathNet/vo6is4.pdf
を参考に求めてみる。
1.1.1
n
X
k
を求める
2k
k=1
Sn =
とおき、両辺を
1
2
1
2
3
4
5
n¡1
n
+ 2 + 3 + 4 + 5 + ¢ ¢ ¢ n¡1 + n
1
2
2
2
2
2
2
2
して
1
1
2
3
n¡1
n
Sn = 2 + 3 + 4 + ¢ ¢ ¢ + ¢ ¢ ¢ +
+ n+ 1
n
2
2
2
2
2
2
辺々引き算して
1
1
1
1
1
1
n
Sn = 2 + 3 + 4 + 5 + ¢ ¢ ¢ + n ¡ n+1
2
2
2
2
2
2
2
この式の最初の n 項までは初項 12 , 公比
1
1
1
1
1
+ + + + ¢¢ ¢ + n =
22 23 24 25
2
1
(1
2
1
2
の n 項までの和だから
¡ ( 12 )n )
1¡
1
2
=
1
2
¡ ( 12 )n+ 1
1
2
1
1
= 2( ¡ ( )n+ 1 )
2
2
よって、
1
Sn
2
=
Sn
=
=
1
1
n
2( ¡ ( )n+ 1 ) ¡ n+1
2
2
2
1
1
n
2 2( ¡ ( )n+ 1 ) ¡ 2 £ n+1
2
2
2
n
X
k
2k
k=1
1.1.2
1
X
k2
を求める
2k
k=1
Sn =
12
22
32
42
52
(n ¡ 1)2
n2
+ 2 + 3 + 4 + 5 +¢¢¢
+ n
1
n¡1
2
2
2
2
2
2
2
4
とおき、両辺を
1
2
して
1
12
22
32
42
(n ¡ 1)2
n2
Sn = 2 + 3 + 4 + 5 + ¢ ¢ ¢
+ n+1
n
2
2
2
2
2
2
2
辺々引き算して
1
1
3
5
7
2n ¡ 1
n2
Sn = 1 + 2 + 3 + 4 + ¢ ¢ ¢
¡
2
2
2
2
2
2n
2n+1
この式の最初の n 項までは
n
n
n
X
X
X
2k ¡ 1
k
1
=
2
¡
2k
2k
2k
k=1
k= 1
k=1
これの最初の項は先に求めた
n
X
k
1
1
n
= 22 ( ¡ ( ) n+1 ) ¡ 2 £ n+ 1
k
2
2
2
2
k=1
の2倍で、後の項は初項 12 、公比
1
1
1
1
1
+ 3 + 4 + 5 + ¢¢ ¢ + n =
2
2
2
2
2
2
1
2
の n 項までの和だから
1
2 (1
¡ ( 12 )n )
=
1 ¡ 12
1
2
¡ ( 12 )n+ 1
1
2
1
1
= 2( ¡ ( )n+ 1 )
2
2
を代入し
1
Sn
2
=
Sn
=
=
1
1
2 3 ( ¡ ( )n+1 ) ¡ 2 2 £
2
2
1
1
2 4 ( ¡ ( )n+1 ) ¡ 2 3 £
2
2
1
4 1
2 ( ¡ ( )n+1 ) ¡ 2 2 £
2
2
1
1
n2
¡ 2( ¡ ( )n+1 ) ¡ n+1
2
2
2
n
1
1
n2
2
n+1
¡
2
(
¡
(
)
)
¡
2
£
2n+1
2
2
2 n+ 1
2
n
1
1
n
¡ 2 2 ( ¡ ( )n+1 ) ¡ n
2n
2
2
2
n
2n+1
ここで
1
n
n2
lim ( )n+1 = 0; lim n = 0; lim n = 0
n!1 2
n!1 2
n!1 2
より
lim Sn = 16 £
n!1
1
1
¡4 £0¡ 2£ ¡ 0 = 6
2
2
となる。
なお、limn!1
n
2n
= 0; limn!1
n2
2n
lim
n!1
= 0 については、an > 0 で
a n+1
<1
an
を以下のようにすぐに示すことができる。
an = n=2n として
an+1
(n + 1)=2 n+1
n+1
1 + 1=n
=
=
=
! 1=2 < 1 (n ! 1)
an
n=2 n
2n
2
an = n2 =2n として
an+1
(n + 1)2 =2 n+1
n2 + 2n + 1
1 + 2=n + 1=n2
=
=
=
! 1=2 < 1 (n ! 1)
an
n2 =2 n
2n2
2
5
Euler 登場
2
Euler が
P1
1
k=1 k 2
について考え始めたのははっきりしないが、1731 年 24 歳
のときには熱心に研究していたようだ。最初は数百項まで計算してみるという
正面攻撃をしていたようだが、収束が遅くあまり先は見えてこなかった。例え
ば 10 項まで求めて 1:54977、100 項までで 1:63498,1000 項まででも 1:64393
である。正確な値は
¼2
6
¼ 1:64493 だが 1000 項まで求めても少数第 2 位まで
しか正確でない。
収束の速い式で表し、より正確な近似値を求める
2.1
1731 年の論文の中で、Euler は画期的な方法を見つけ出した。それは I =
R 1=2 ln(1¡ t)
P1
¡ t dt の値を二通りの方法で求めることを利用し、 k=1 k12 をもっ
0
と収束の速い式で表しなおすことであった。なお、以下の議論では厳密にい
えば
ln(1¡t)
t
は t = 0 では定義できないので異常積分についての考察が (Euler
は行っていないが) 必要である。それではそのやり方について述べていく。最
初は方法は、ln(1 ¡ t) を Maclaurin 展開することから始める。一般的に知ら
れている ln(1 + x) の Maclaurin 展開
x1
x2
x3
x4
xn
¡
+
¡
+ ¢ ¢ ¢ + (¡1)n¡1 )
+¢¢¢
1
2
3
4
n
について x = 1 ¡ t とおくと
ln(1 + x) =
ln(1 + (¡t)) =
=
=
(¡t)1
(¡t)2
(¡t)3
(¡t) 4
(¡t)n
¡
+
¡
+ ¢ ¢ ¢ + (¡1)n¡1 )
+ ¢¢ ¢
1
2
3
4
n
t
t2
t3
t4
tn
¡ ¡
¡
¡
¡¢¢¢¡
¢¢¢
1
2
3
4
n
t
t2
t3
t4
tn
¡( +
+
+
+¢¢¢ +
¢ ¢ ¢)
1
2
3
4
n
より
t
t2
t3
t4
tn
+
+
+
+¢¢¢+
¢ ¢ ¢ = ¡ ln(1 ¡ t)
1
2
3
4
n
だから
I
=
Z
1=2
0
=
Z
=
=
ln(1 ¡ t)
dt
t
¡
¡t ¡ t2 =2 ¡ t3 =3 ¡ t4 =4 ¡ ¢ ¢ ¢
dt
t
1=2
0
Z
¡
1=2
t2
t3
t4
+
+ ¢ ¢ ¢)dt
2
3
4
0
t2
t3
t4
1=2
[t +
+
+
+ ¢ ¢ ¢] 0
4
9
16
(1 +
したがって
I=
1
1=2 2
1=2 3
1=24
+
+
+
+¢¢¢
2
4
9
16
6
(1)
を得る。
もう一つの方法は z = 1 ¡ t で置き換えることから始める。t = 0 のとき
z = 1; t = 1=2 のとき z = 1 ¡ 1=2 = 1=2 だから
Z 1=2
Z 1=2
ln(1 ¡ t)
ln z
I=
¡
dt =
dt
t
1
¡z
0
1
ここで
1
1¡z
は初項 1、公比 z の等比数列の無限級数の和だから
1
= 1 + z + z2 + z3 + z3 + z4 + ¢ ¢ ¢
1¡z
に注目すると
I=
Z
1=2
1
を得る。
ln z(1 + z + z 2 + z 3 + z 3 + z 4 + ¢ ¢ ¢)dz
項別積分については Euler に倣って厳密な議論は避けてそれが可能だとす
ると
I =
Z
ln zdz +
Z
z ln zdz +
Z
z 2 ln zdz +
Z
z3 ln zdz + ¢ ¢ ¢
R
となる。各項は z n lnzdz の形をしているので部分積分
Z b
Z b
0
b
f(x)g (x)dx = [f (x)g(x)] a ¡
f 0 (x)g(x)dx
a
a
を f (x) = ln z; g(x) =
I
zn+1
n+1
で適用して
=
Z
=
[ln z ¢
=
ln z ¢ z n dz
Z
1=2
zn+1
1 zn+1
¡
¢
dz
n + 11
z n+1
zn+1
z n+1
[ln z ¢
¡
z n+1 ] 1=2
1
n+1
(n + 1)2
すると
I
z 0+1
z 0+1 1=2
z1+1
z 1+1 1=2
z 2+1
z 2+1 1=2
ln z ¡
]1 + [
ln z ¡
]1 + [
ln z ¡
] + ¢ ¢¢
2
2
0+1
(0 + 1)
1+1
(1 + 1)
2+1
(2 + 1)2 1
z2
z2
z3
z3
z4
z4
1=2
= [(z ln z ¡ z) + ( ln z ¡ ) + ( ln z ¡ ) + ( ln z ¡
) + ¢ ¢ ¢] 1
2
4
3
9
4
16
z2
z3
z4
z2
z3
z4
1=2
= [ln z(z +
+
+
+ ¢ ¢ ¢) ¡ (z +
+
+
+ ¢ ¢ ¢)] 1
2
3
4
4
9
16
= [
ここで再び z +
I
=
=
z2
2
+
z3
3
+ ¢¢ ¢ +
zn
n
+ ¢ ¢ ¢ = ¡ ln(1 ¡ z) を代入して
z2
z3
z4
1=2
+
+
+ ¢ ¢ ¢)] 1
4
9
16
1
1
1=2 2
1=23
1=2n
ln ¡ ln 1 ¢ (¡ ln 0) ¡ f( +
+
+ ¢ ¢ ¢ 2 ¢ ¢ ¢)
2
2
4
9
n
1
1
1
¡(1 + + + ¢ ¢ ¢ 2 + ¢ ¢ ¢)g
4
9
n
[ln z(¡ ln(1 ¡ z)) ¡ (z +
7
したがって
1
X 1
1
1
1=2 2
1=23
1=2n
I = ¡(ln )2 + ln 1 ¢ ln 0 ¡ ( +
+
+ ¢ ¢ ¢ 2 ¢ ¢ ¢) +
2
2
4
9
n
k2
k=1
ここで (ln
1 2
2)
2
2
2
= (ln 1¡ln 2) = (¡ ln 2) = (ln 2) だが ln 1¢ln 0 = 0¢ (¡1)
なので limz!1¡ (ln z)(ln(1 ¡ z) = 0 を確かめる必要があるが、Euler はその
ようなことはせず ln 1 ¢ ln 0 = 0 としてあっさり片付けて次の式を導いている。
1
X 1
1
1=22
1=2 3
1=2 n
I = ¡(ln 2) 2 ¡ ( +
+
+ ¢ ¢ ¢ 2 ¢ ¢ ¢) +
2
4
9
n
k2
(2)
k=1
式 (1) と式 (2) より
1
1
X
X
1
1 1=22 1=2 3
1=2n
1
2
2
=
(ln
2)
+
2(
+
+
+
¢
¢
¢
¢
¢
¢)
=
(ln
2)
+
2
2
2
k
2
4
9
n
k kk¡1
k=1
k=1
この式の良さは
P1
1
k=1 k 2k k¡1
k¡ 1
が2
のおかげで急速に収束することにある。
P1 1
例えば第 14 項までを求めるだけで k=1 k 2 ¼ 1:644934 と小数第 6 位まで正
確に求めることができる。そのため Euler は小数第 12 位までの値を知ること
ができた。
2.1.1
[ln1][ln0] を求める。
ロピタルの定理 limx!a
f (x )
g (x)
= limx!a
lim¡ ln z ¢ ln(1 ¡ x)
x!1
f 0 (x)
g0 (x)
を使う。
ln z
1= ln(1 ¡ z)
(ln z)0
= lim
(1= ln(1 ¡ z))0
1=z
= lim
1=[(1 ¡ z)fln(1 ¡ z)g 2 ]
= lim
1 (1 ¡ z)fln(1 ¡ z)g2
¢
z
1
1
= lim ¢ (1 ¡ z)fln(1 ¡ z)g 2
z
2
そこで limx!1¡ (1 ¡ z)fln(1 ¡ z)g を求めることを考える。
= lim
lim (1 ¡ z)fln(1 ¡ z)g 2
x!1¡
fln(1 ¡ z)g 2
1=(1 ¡ z)
[fln(1 ¡ z)g 2 ]0
= lim
f1=(1 ¡ z)g 2
f2 ln(1 ¡ z)g=(z ¡ 1)
= lim
1=(z ¡ 1)2
= lim
2 ln(1 ¡ z) (z ¡ 1)2
¢
z ¡1
1
= limf¡2 ¢ (1 ¡ z) ln(1 ¡ z)g
= lim
8
そこで limx!1¡ (1 ¡ z) ln(1 ¡ z) を求めることを考える。
lim (1 ¡ z) ln(1 ¡ z) =
x!1¡
=
=
=
=
=
ln(1 ¡ z)
1=(1 ¡ z)
fln(1 ¡ z)g0
lim
f1=(1 ¡ z)g0
1=(z ¡ 1)
lim
1=(z ¡ 1)2
1
(z ¡ 1)2
lim
¢
z ¡1
1
lim (z ¡ 1)
lim
x!1¡
0
遡っていけば
lim (1 ¡ z) ¢ fln(1 ¡ z)g 2 = ¡2 £ 0 = 0
x!1¡
lim ln z ¢ ln(1 ¡ z) = 1 £ 0 = 0
x!1¡
2.2
P1
1
k=1 k2
の正確な値を求める
Euler は 1735 年ついに
1
X
1
¼2
=
2
k
6
k=1
であることを突き止める。
そのためには P (x) = 0 が 0 でない根 a1 ; a2 ; ¢ ¢ ¢ ; an を持ち P (0) = 1 とな
る n 次多項式が
P (x) =
(a1 ¡ x) ¢ ¢ ¢ (an ¡ x)
a1 ¡ x
an ¡ x
x
1
=(
)¢¢¢(
) = (1 ¡ ) ¢ ¢ ¢ (1 ¡ )
a1 a2 ¢ ¢ ¢ an
a1
an
a1
an
と表せることと sin x の Taylor 展開
sin x = x ¡
x3
x5
x7
x 2n¡ 1
+
¡
+ ¢ ¢ ¢ + (¡1)n+ 1
+¢¢¢
3!
5!
7!
(2n ¡ 1)!
を使う。
なお、Euler は「無限に多くの根を持つ多項式も、上の P (x) のように因数
分解できる」ことを証明無しに用いている。普通の多項式について成り立つ
ことは何でも、無限の項を持つ多項式でも成り立つとすることは自然な拡張
であった。
定理
1
X
1
¼2
=
k2
6
k=1
9
(証明)
P (x) = 1 ¡
x2
x4
x6
x8
x 2(n¡1)
+
¡
+
¡ ¢ ¢ ¢ + (¡1)n+ 1
¢¢ ¢
3!
5!
7!
9!
(2n ¡ 1)!
P (0) = 1 は明らか。P (x) = 0 の根を求めるために、x 6= 0 として
P (x)
1 ¡ x2 =3! + x4 =5! + x 6 =7! + x 8 =9! ¡ ¢ ¢ ¢ + (¡1)n+ 1 x2( n¡1) =(2n ¡ 1)! ¢ ¢ ¢
)
x
x ¡ x 3 =3! + x5 =5! ¡ x 7 =7! + ¢ ¢ ¢ (¡1)n+1 x 2n¡ 1 =(2n ¡ 1)! ¢ ¢ ¢
x
sin x
x
=
x(
=
=
だから、sin x = 0 となり x = §k¼、ただし P (0) = 1 だから x = 0 は解とは
ならないので k = 1; 2; ¢ ¢ ¢ である。そこで P (x) を因数分解すると
P (x)
x2
x4
x6
x8
x 2(n¡1)
+
¡
+
¡ ¢ ¢ ¢ + (¡1)n+1
¢¢¢
3!
5!
7!
9!
(2n ¡ 1)!
x
x
x
x
x
x
= (1 ¡ )(1 ¡
)(1 ¡
)(1 ¡
) ¢ ¢ ¢ (1 ¡
)(1 ¡
)¢¢¢
¼
¡¼
2¼
¡2¼
k¼
¡k¼
x2
x2
x2
= (1 ¡ 2 )(1 ¡ 2 ) ¢ ¢ ¢ (1 ¡ 2 2 ) ¢ ¢ ¢
(3)
¼
4¼
k ¼
= 1¡
この式は無限和の式を無限積で表したという意味でこの章で最も重要な式で
ある。
最後の式 3 を展開することで (x 4 以降の係数についてはとりあえず無視す
ると)
x2
1
1
1
+¢¢¢ = 1 ¡( 2 +
+ ¢ ¢ ¢ + 2 ¢ ¢ ¢)x2 + ¢ ¢ ¢
3!
¼
4¼ 2
k ¼
したがって、式 (4) の x 2 の係数を比べることで
1¡
¡
1
3!
=
=
=
(4)
1
1
1
+ 2 + ¢ ¢ ¢ + 2 2 ¢ ¢ ¢)
¼2
4¼
k ¼
1
1
1
¡ 2 (1 + + ¢ ¢ ¢ + 2 ¢ ¢ ¢)
¼
4
k
1
1 X 1
¡ 2
¼
k2
¡(
k= 1
したがって
1
X
1
1
1
1
¼2
=
1
+
+
+
¢
¢
¢
+
+
¢
¢
¢
=
k2
4
9
k2
6
k=1
Q.E.D
Euler の議論は彼自身でさえ不安があり、後に (より厳密な考え方を取り入
れた) 別の方法を示したが、それについてはエピローグで触れる。
10
¼2
6
不安はありながらも Euler は間違いないという確信も持っていた。それは
P1
¼ 1:644934 の値が、数年前に発見した k=1 k12 に近かったことや、1655
にイギリスの数学者 John Wallis 考えた「Wallis の式」
2
1 ¢ 3 ¢ 3 ¢ 5 ¢ 5 ¢ 7 ¢ 7 ¢ 9 ¢¢ ¢
=
¼
2 ¢ 2 ¢ 4 ¢ 4 ¢ 6 ¢ 6 ¢ 8 ¢ 8 ¢¢ ¢
も導いたからである。
Euler は式 (??) の無限積がどのように Wallis の式を導くか示した。x = ¼=2
と置くと
¼
P( ) =
2
sin(¼=2)
=
¼ =2
=
(¼=2)2
(¼=2)2
(¼=2)2
)(1
¡
)
¢
¢
¢
(1
¡
)¢¢¢
¼2
4¼ 2
k 2 ¼2
1
1
1
(1 ¡ )(1 ¡
) ¢ ¢ ¢ (1 ¡
)¢¢¢
4
16
(2n)2
3
15
35
(2n)2 ¡ 1
£
£
£¢¢¢ £
£¢¢¢
4
16
36
(2n)2
(1 ¡
したがって
2
1 ¢ 3 ¢ 3 ¢ 5 ¢ 5 ¢ 7 ¢ 7 ¢ 9 ¢¢ ¢
=
¼
2 ¢ 2 ¢ 4 ¢ 4 ¢ 6 ¢ 6 ¢ 8 ¢ 8 ¢¢ ¢
Euler の発見はヨーロッパ中の数学者達に知れ渡り Johan Bernoulli はその答
を知ったとき「もし兄が生きていたら!」と書いている。
Euler は栄光に浸ることなく益々研究に励みいろいろな成果を挙げていった。
例えば p > 2 に関する p 級数の正確な値を見つけることに注意を向けた。
Euler は式 (4) の中の x 4 ; x6 等の係数を明確に決定する必要があることを悟っ
た。幸運にもそれに必要な道具ががあった。それ式は現在では「Newton の
式」呼ばれている多項式の根と係数の関係を記述したものである。それは定
理の形で述べると次のようになる。
定理 n 次の多項式 P (y) = y n ¡ Ay n¡1 + By n¡2 ¡ C y n¡ 3 + ¢ ¢ ¢ § N が
P (y) = (y ¡ r1 )(y ¡ r2 )(y ¡ r3 ) ¢ ¢ ¢ (y ¡ rn ) と因数分解できるならば
n
X
k= 1
n
X
k= 1
n
X
k= 1
n
X
rk
=
A
rk2
=
A
rk3
rk4
=
=
A
A
k= 1
n
X
k=1
n
X
k=1
n
X
k=1
..
.
=
..
.
rk ¡ 2B
rk2 ¡ B
rk3 ¡ B
11
n
X
k=1
n
X
k=1
rk + 3C
r2k + 3
n
X
k=1
rk ¡ 4D
n = 2 の場合は y 2 ¡ Ay + B = 0 の根を ®; ¯ とすると上の定理は
® + ¯ = A; ® 2 + ¯ 2 = A2 ¡ 2b
となり、® + ¯ = A; ®¯ = B より
®2 + ¯ 2 = (® + ¯) 2 ¡ 2®¯ = A2 ¡ 2b
と確かめられる。
n = 3 の場合も y 3 ¡ Ay 2 + By ¡ C = 0 の根を ®; ¯; ° とすると
® + ¯ + ° = A; ® 2 + ¯ 2 + ° 2 = A2 ¡ 2B; ® 3 + ¯ 3 + ° 3 = A3 ¡ 3AB + 3C
となり ® + ¯ + ° = A; ®¯ + ¯ ° + °® = B; ®¯ ° = C より
® 3 + ¯ 3 + ° 3 = (® + ¯ + °)3 ¡ 3(® + ¯ + °)(®¯ + ¯° + °®) ¡ 3®¯°
より確かめられる。
(証明)
P (y) = (y ¡ r1 )(y ¡ r2)(y ¡ r3 ) ¢ ¢ ¢ (y ¡ rn )
の両辺の対数をとると
ln P (y) = ln(y ¡ r1 ) + ln(y ¡ r2 ) + ln(y ¡ r3 ) ¢ ¢ ¢ + ln(y ¡ rn )
次に微分して
P 0(y)
1
1
1
1
=
+
+
+¢¢¢+
P (y)
y ¡ r1
y ¡ r2
y ¡ r2
y ¡ rn
(5)
そして右辺の各項の分数 1=(y ¡ rk ) を等比級数になおす (Euler は暗黙のうち
に y > rk を仮定し、その収束に関しては何も触れていない。そのことは無限
多項式にまで拡張するときには問題があるが)。すなわち初項 1、公比
して
1
y ¡ rk
1
1
(
)
y 1 ¡ (rk =y)
1
rk
r2
(1 +
+ k2 + ¢ ¢ ¢)
y
y
y
1
rk
r2k
r3
+ 2 + 3 + k4 + ¢ ¢ ¢
y
y
y
y
=
=
=
したがって、各項の上の級数による展開を縦に並べると
1
y
1
y
1
y
+
+
+
r1
y2
r2
y2
r3
y2
+
+
+
r2
1
y3
r22
y3
r2
3
y3
+
..
.
+
..
.
+
..
.
¢¢¢
!
n
y
¢¢¢
!
r1+r2+¢¢ ¢+rn
y2
¢¢¢
!
12
2
r12+r2
2 + ¢¢¢+r n
y3
rk
y
と
となるから式 (5) は
P 0 (x)
P (x)
=
=
1
1
1
+
+¢¢¢ +
y ¡ r1
y ¡ r2
y ¡ rn
n
n
n
X
X
X
n
1
1
1
+(
rk ) 2 + (
r2k ) 3 + (
r3k ) 4 + ¢ ¢ ¢
y
y
y
y
k= 1
これは
P 0( x)
P (x)
k=1
(6)
k=1
がもとの多項式の根によって表されていることの注意してお
こう。
また P (y) = y n ¡ Ay n¡ 1 + By n¡2 ¡ Cy n¡3 + ¢ ¢ ¢ § N だったから
P 0 (x)
ny n¡ 1 ¡ A(n ¡ 1)y n¡2 + B(n ¡ 2)y n¡3 ¡ C(n ¡ 3)y n¡ 4 + ¢ ¢ ¢
=
P (x)
y n ¡ Ay n¡1 + By n¡2 ¡ C y n¡ 3 + ¢ ¢ ¢ § N
(7)
式 (6)(7) より
ny n¡ 1 ¡ A(n ¡ 1)y n¡2 + B(n ¡ 2)y n¡3 ¡ C (n ¡ 3)y n¡ 4 + ¢ ¢ ¢
= (y n ¡ Ay n¡1 + By n¡2 ¡ Cy n¡3 + ¢ ¢ ¢ § N )
n
n
n
X
X
X
n
1
1
1
£( + (
rk ) 2 + (
r2k ) 3 + (
r3k ) 4 + ¢ ¢ ¢)
y
y
y
y
k=1
ここで y n¡ 1 の項は y n £
n
yn¡1
k= 1
k=1
で y n¡2 の項は
n
¡Ay n¡1 £
X
n
1
+ yn £ (
rk ) 2
y
y
1
y n¡3 の項は
By n¡2 £
n
n
X
X
n
1
1
+ Ay n¡ 1 £ (
rk ) 2 + y n £ (
r2k ) 3
y
y
y
1
1
となるから
ny n¡ 1 ¡ A(n ¡ 1)y n¡2 + B(n ¡ 2)y n¡3 ¡ C (n ¡ 3)y n¡ 4 + ¢ ¢ ¢
n
n
n
X
X
X
= ny n¡1 + (¡nA +
rk )y n¡2 + (nB ¡ A
rk +
rk2 )y n¡ 3 ¡ ¢ ¢ ¢
k=1
k=1
k=1
両辺の係数を比べて
¡A(n ¡ 1) = ¡nA +
B(n ¡ 2) = nB ¡ A
以下同じ用にして
n
X
k=1
n
X
rk +
k=1
r3k = A
n
X
rk より
k= 1
n
X
n
X
k=1
r2k ¡ B
13
rk = A
k=1
r2k より
k=1
n
X
n
X
r2k = A
k=1
n
X
k=1
rk + 3C
n
X
k=1
rk ¡ 2B
n
X
r4k = A
k=1
n
X
k=1
r3k ¡ B
n
X
r2k + 3
k=1
n
X
k= 1
rk ¡ 4D
というように、それ以前のものを使って次々に示すことができる。
Q.E.D
これらに式を p 級数にどう適用するのだろう。(1 ¡ r1 x2 )(1 ¡ r2 x2 ) ¢ ¢ ¢ (1 ¡
rn x2 ) の展開式を 1 ¡ Ax2 + Bx4 ¡ Cx 6 + ¢ ¢ ¢ § N x 2n とする、左辺と右辺を
逆に記述すると
1 ¡ Ax2 + Bx4 ¡ C x6 + ¢ ¢ ¢ § N x2n = (1 ¡ r1 x 2 )(1 ¡ r2 x2 ) ¢ ¢ ¢ (1 ¡ rn x 2 ) (8)
x2 を
1
y
で置き換えて
1
1
1
1
1 ¡ A( ) + B( )2 ¡ C ( )3 + ¢ ¢ ¢ § N ( )n
y
y
y
y
1
1
1
= (1 ¡ r1 )(1 ¡ r2 ) ¢ ¢ ¢ (1 ¡ rn )
y
y
y
両辺に y n をかけて
y n ¡ Ay n¡1 + By n¡2 ¡ C y n¡ 3 + ¢ ¢ ¢ § N = (y ¡ r1 )(y ¡ r2 ) ¢ ¢ ¢ (y ¡ rn )
これに先ほどの
n
X
(a)
rk = A
k=1
n
X
(b)
rk2 = A
k=1
n
X
(c)
r3k = A
k=1
n
X
k=1
n
X
k=1
rk ¡ 2B
r2k ¡ B
n
X
rk + 3C
k=1
Euler はこれが無限の場合も適用できると仮定した。式 (3) に戻って
1¡
x2
x4
x6
x8
x2( n¡1)
+
¡
+
¡ ¢ ¢ ¢ + (¡1) n+1
¢¢¢
3!
5!
7!
9!
(2n ¡ 1)!
x2
x2
x2
= (1 ¡ 2 )(1 ¡
) ¢ ¢ ¢ (1 ¡ 2 2 ) ¢ ¢ ¢
2
¼
4¼
k ¼
式 (8) が無限になり A = 1=3!; B = 1=5!; C = 1=7!; rk = 1=k 2 ¼ 2 (k = 1; 2; ¢ ¢ ¢)
となっている。
P
P1
2 2
0
2
2
0
(a) より 1
k=1 1=k ¼ = 1=3 で
k=1 1=k = ¼ =6 更に (b) より
1
X
(
k=1
1
X 1
1 2
1
2
1
)
=
A
¡ 2B = ( )2 ¡
=
2
2
2
2
k ¼
k ¼
3!
5!
90
k=1
14
から
1
X
1
¼4
=
4
k
90
k=1
(c) より
1
X
(
k=1
1 3
)
k2 ¼ 2
=
A
1
X
(
k=1
=
=
1
X
1 2
)
¡
B
1=k 2 ¼ 2 + 3c
k 2¼ 2
k=1
1 1
1 1
1
( )( ) ¡ ( )( ) + 3( )
3! 90
5! 6
7!
1
945
より
1
X
1
¼6
=
k6
945
k=1
が出てくる。
Euler は更に P = 8; 10; 12 の p 級数へと進め、1744 年には
1
X
1
2 24
1315862
=
(76977927¼ 26 ) =
¼ 26
26
k
27!
11094481976030578125
k= 1
といった値も正確に出している。
3
エピローグ
ここではこの章の関する3つの話題について扱う。最初に Basel 問題に関
する別の解法を与える。次にその再計算の発見の応用について述べる。最後
に Euler やそれに続く全ての人の苦労を撃退してきたことへの付随的な挑戦
について述べる。
Basel 問題の答を受け入れる一方 Euler と同時代の何人かは彼のとった議
論の正当性を怪しんでいた。Daniel Bernoulli はとりわけ心配しこの点に
ついて Euler に手紙を書いた。そのような疑いを黙らせるために Euler は
P1
pi 2
3
k=1 f rac1k = 6 別の、全く異なる証明を考え出した。最初と違って、ど
こから見ても巧みな方法であった。
これからの議論の準備として近代解析学ではよく知られている接ぎ穂3つ
のことが必要である。
1. 12 (sin¡1 x)2 =
Rx
0
¡1
¡1
sin
t
p
dt
1¡t2
これは u = sin
t とおいた置換積分ですぐに示せる。t = sin u で
p
p
cos u より dt = cos u du、また 1 ¡ t2 = 1 ¡ sin 2 u = cos u で
Z x
Z x
sin¡ 1 t
u
p
dt =
¢ cos u du
0
q ¡ t2
0 cos u
15
dt
du
=
Z
=
x
udu
0
1
[ u 2 ]x0
2
1
[ (sin ¡1 t)2 ] x0
2
1
(sin ¡1 x)2 ¡
2
1
(sin ¡1 x)2 ¡
2
1
(sin ¡1 x)2
2
=
=
=
=
=
1
(sin ¡1 0)2
2
1
£ 02
2
2. sin¡ 1 の級数展開
sin¡ 1 = x +
1 x3 1 ¢ 3 x5 1 ¢ 3 ¢ 5 x7 1 ¢ 3 ¢ 5 ¢ 7 x9
£
+
£
+
£
+
£
+¢¢¢
2
3
2¢ 4
5
2 ¢4 ¢ 6
7
2¢ 4 ¢6 ¢ 8
9
これは二項級数展開と項別積分より示せる。まず、
Z x
Z x
1
¡1
p
sin x =
dt =
(1 ¡ t2 ) ¡1=2
2
1
¡
t
0
0
で
(1 ¡ t2 )¡1=2
µ
¶ µ
¶
µ
¶
µ
¶
¡1=2
¡1=2
¡1=2
¡1=2
+
(¡t2 ) +
(¡t2 ) 2 + ¢ ¢ ¢ +
(¡t2 )2n + ¢ ¢ ¢
0
1
2
n
1
1¢ 3 4 1¢ 3 ¢5 6 1 ¢3 ¢ 5¢ 7 8
1 + t2 + 2
t + 3
t +
t +¢¢¢
2
2 ¢ 2!
2 ¢ 3!
2 4 ¢ 4!
=
=
より
¡1
sin
3.
Z
x
1
1¢ 3 4 1¢ 3¢ 5 6 1¢ 3 ¢5 ¢ 7 8
(1 + t2 + 2
t + 3
t +
t + ¢ ¢ ¢)dt
2
2
¢ 2!
2 ¢ 3!
2 4 ¢ 4!
0
1
t3
1 ¢3
t5
1 ¢ 3¢ 5
t7
1 ¢3 ¢ 5¢ 7
t9
= [t + £
+
£
+
£
+
£
+ ¢ ¢ ¢] x0
2
3
2 ¢4
5
2 ¢ 4¢ 6
7
2 ¢4 ¢ 6¢ 8
9
1
x3
1¢ 3
x5
1 ¢3 ¢ 5
x7
1¢ 3¢ 5 ¢7
x9
= x+ £
+
£
+
£
+
£
+¢¢¢
2
3
2¢ 4
5
2 ¢4 ¢ 6
7
2¢ 4¢ 6 ¢8
9
=
Z
1
0
tn+2
n+1
p
dt =
n+2
1 ¡ t2
Z
1
0
p
tn
1 ¡ t2
dt
f (t) = tn+1 ; g(t) = ¡(1 ¡ t2 )1=2 と置くと
1
t
g 0 (x) = ¡ (1 ¡ t2 )¡ 1=2 ¢ (¡2t) = p
2
1 ¡ t2
だから
J=
Z
0
1
tn+2
p
dt =
1 ¡ t2
Z
1
t
n+1
0
16
¢p
t
1 ¡ t2
=
Z
0
1
f (t)g0 (t)dt
で部分積分が使えて
J
n+1
Z 1
p
1
2
¢ (¡ 1 ¡ t )] 0 +
(n + 1)tn ¢ (1 ¡ t2 )1=2 dt
=
[t
=
p
1n+1 ¢ 0 ¡ 0 ¢ (¡ 1) + (n + 1)
0
=
=
=
(n + 1)
(n + 1)
(n + 1)
Z
1
0
Z 1
Z
0
1
0
よって
n
n+2
Z
1
0
tn (1 ¡ t2 )
p
dt
1 ¡ t2
t ¡t
p
dt
1 ¡ t2
Z 1 n+2
tn
t
p
dt ¡ (n + 1)
p
dt
1 ¡ t2
1 ¡ t2
0
tn
p
dt ¡ (n + 1)J
1 ¡ t2
Z 1
tn
= (n + 1)
p
dt
1 ¡ t2
Z 0 n
n+1
t
=
p
dt
n+2
1 ¡ t2
(n + 2)J
J
今、x = 1; y = sin ¡1 1 とすると sin y = 1 で y = § ¼2 となり
§
¼
2
1
¼
£ (§ )2
2
2
= sin¡ 1 1
=
だから (1) より
¼2
1
= (sin¡1 1)2 =
8
2
¡1
1
(sin¡ 1 1)2
2
Z
0
1
sin¡1 t
p
dt
1 ¡ t2
t を (2) で置き換えて項別積分を行うと
Z 1
Z 1
Z 1
1
¼2
t
1
t3
1 ¢3
t5
1 ¢3 ¢5
t7
=
p
dt+
p
dt+
p
dt+
p
dt+¢ ¢ ¢
8
2 ¢3 0
2 ¢4 ¢5 0
2¢ 4 ¢6 ¢ 7 0
1 ¡ t2
1 ¡ t2
1 ¡ t2
1 ¡ t2
0
R1 t
ここで、まず 0 p1¡t
2 dt = 1 である。なぜなら sin u = t とするとsin u=du =
dt=du より cos u = dt=du で cos udu = dt だから
Z
Z
Z
p
p
t
sin u
p
dt =
¢cos udu = sin udu = ¡ cos u = ¡ 1 ¡ sin2 u = ¡ 1 ¡ t2
cos u
1 ¡ t2
sin
Z
残りの項は (3)
Z 1
t3
p
dt
1 ¡ t2
0
Z 1
t5
p
dt
1 ¡ t2
0
Z 1
t7
p
dt
1 ¡ t2
0
..
.
より帰納的に求めることができ
Z 1 1+2
Z
t
1+ 1 1
t
1+1
2
p
p
=
dt =
dt =
£1=
2
2
1
+
2
1
+
2
3
1¡t
1¡t
0
0
Z 1 3+2
Z 1
3
t
3+ 1
t
3+1
2
4
=
p
dt =
p
dt =
£ = £
2
2
3+ 2 0
3+2
3
5
1¡t
1¡t
0
Z 1 5+2
Z
t
5+ 1 1
t5
5+1
2
4
=
p
dt =
p
dt =
£ £ =
5+ 2 0
5+2
3
5
1 ¡ t2
1 ¡ t2
0
..
=
.
17
2
3
6
2
4
£ £
7
3
5
¼2
8
1 2
1 ¢3 2
4
1 ¢3 ¢5 2
4
6
( )+
( £ )+
( £ £ )+¢¢¢
2¢ 3 3
2 ¢4 ¢ 5 3
5
2¢ 4 ¢6 ¢ 7 3
5
7
1
1
1
1
= 1+ +
+
+ ¢¢ ¢ +
+¢¢¢
9
25
49
(2n ¡ 1) 2
= 1+
定理
1
X
1
¼2
=
k2
6
k=1
(証明)
1
X
1
k2
1
1
1
1
1
1
1
+
+ + ¢ ¢¢ +
+ ¢ ¢ ¢) + ( +
+
+¢¢¢ +
+ ¢ ¢ ¢)
9
25
(2n ¡ 1)2
4
16
36
(2n)2
= (1 +
k=1
1
1
1
1
1
1
+
+ + ¢ ¢¢ +
+ ¢ ¢ ¢) + 4(1 + + + ¢ ¢ ¢ + 2 + ¢ ¢ ¢)
9
25
(2n ¡ 1)2
4
9
n
1
¼2
1X 1
+
8
4
k2
= (1 +
=
k=1
1
3X 1
4
k2
k=1
1
X
k=1
1
k2
2
=
¼
8
=
4
¼2
¼2
£
=
3
8
6
Euler は自分が見つけた式の主な利用は対数の計算にあるといっている。例
えば式 (3) で
P (x) =
sin x
x2
x2
x2
= (1 ¡ 2 )(1 ¡ 2 ) ¢ ¢ ¢ (1 ¡ 2 2 ) ¢ ¢ ¢
x
¼
4¼
k ¼
で両辺に x をかけると
sin x = x(1 ¡
x2
x2
x2
)(1
¡
)
¢
¢
¢
(1
¡
)¢¢¢
¼2
4¼ 2
k2 ¼ 2
となりこれなら x = 0 でも成り立つ。
両辺に対数を取ると
ln(sin x) = ln x + ln(1 ¡
x2
x2
x2
) + ln(1 ¡
) + ln(1 ¡
)+¢¢¢
2
2
¼
4¼
16¼ 2
x = ¼=n を代入して
ln(sin
¼
1
1
1
) = (ln ¼ ¡ ln n) + ln(1 ¡ 2 ) + ln(1 ¡
) + ln(1 ¡ 2 ) + ¢ ¢ ¢
n
n
4n2
9n
ここで ln(1 ¡ x) の級数展開を利用して
18
ln(sin
¼
) = (ln ¼ ¡ ln n) +
n
(¡ n12
(¡ 4n1 2
(¡ 9n1 2
= (ln ¼ ¡ ln n) +
¡ 2n1 4
1
¡ 32n
4
1
¡ 162n4
...
1
(1
n2
¡ 2n1 4 (1
¡ 3n1 6 (1
+ 14
1
+ 16
1
+ 64
..
.
¡ 3n1 6 ¢ ¢ ¢)+
1
¡ 192n
6 ¢ ¢ ¢)+
1
¡ 2187n 6 ¢ ¢ ¢)+
+ 19 ¢ ¢ ¢)
1
+ 81
¢ ¢ ¢)
1
+ 729
¢ ¢ ¢)
Euler が既によく知っている指数が偶数の p 級数で置き換えられるので
ln(sin
¼
1 ¼2
1 ¼4
1 ¼6
) = ln ¼ ¡ ln n ¡ 2 ( ) ¡
(
)
¡
(
) ¡ ¢ ¢¢
n
n 6
2n4 90
2n6 945
となり n の値をいろいろ変えることで、あらゆる角度に対する sin の対数を
求めることができる。例えば n = 7 とおけばわずか7項で
¼
1 ¼2
1
¼4
1
¼6
ln(sin ) = ln ¼ ¡ ln 7 ¡
¢
¡
¢
¡
¢
¼ ¡0:83498
7
49 6
4802 90
352947 945
Euler は指数が奇数の p 級数の正確な値を求めようとしたがかなわなかっ
た。これについては現在でも大した進展は見せていない。
19
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