2-166
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
加越沿岸の海岸構造物周辺の波浪場と漂砂動向に関する研究
1.
(株)ホクコク地水 正会員
○野口 将志
金沢工業大学 正会員
鷲見 浩一
はじめに
石川県の海岸は図-1 に示すように,能登半島の高岩岬を境界として,北方向に富山県との県境までの能登半島
沿岸と南方向に福井県越前岬までの加越沿岸から成る.この加越沿岸の中央に位置する石川海岸は,金沢港から
南西へ約 20km にわたる砂浜海岸であり,昭和 22 年から 44 年において約 60m の汀線後退が確認されていた.そ
の後,離岸堤や人工リーフなどの海岸構造物が設置された海岸では汀線は前進したが,侵食傾向にある海岸では,
現在においても海岸構造物が築造されている.また,加越沿岸の北端から南方へ約
23.6km に位置する滝崎より南西へ約 16km にわたる押水羽咋海岸では,昭和 63 年から
汀線が最大で約 50m 後退しており,海岸侵食の防止対策として約 5000m3/年の養浜が実
施されているが,汀線の後退を阻止できないのが現状である.したがって,石川海岸や
押水羽咋海岸において海岸侵食を制御し,海浜の安定性を確保するためには,対象海岸
における長期的な汀線位置の変化と汀線変動に影響する海象現象の関連を解明するこ
とが必要となる.
本研究では,石川海岸八田地先において DGPS を用いた汀線位置の現地観測を実施し
て,経時変化に伴う汀線位置の変動を来襲波浪と関連づけて検討した.さらに,押水羽
咋海岸においては波浪条件に基づいて汀線位置の変動を予測し,海浜の安定性を考究し
図-1 石川県の沿岸
た.
2.
研究の内容
本研究では,図-2 に示した石川海岸八田地先の汀線の変動を定量的に把握するために DGPS ユニット(GERMIN
社製:etrex)を用いた現地観測を平成 15 年 4 月から平成 16 年 12 月の期間に週に 1 回の頻度で満潮時に全 66 回
実施した.観測区間には時間変化に伴う汀線位置の変動を定量的に把握
するために 11 箇所の調査点を設置した.また,徳光地先と金沢港,お
よび輪島港の沖合に設置された超音波式波高計による波浪観測データ
を入力条件として式(1)に示したエネルギー平衡方程式により石川海岸
八田地先と図-3 に示した押水羽咋海岸の波浪場の算定を行った.
∂  C g
∂
∂
(SC g cos θ) +
(SC g sin θ) +
S
∂θ  C
∂y
∂x
図-2 石川海岸八田地先

∂C 
∂C
 sin θ
 = −ε 'bS (1)
+ cos θ
∂y 
∂x

ここに,S は方向スペクトル,C,Cg は波速と群速度, θ は波向, ε ' b は
砕波減衰項である.また,押水羽咋海岸では,入射波向と砕波波高から
式(3)に示した小笹・Brampton の公式を用いて沿岸漂砂量の算定を行い,
その沿岸漂砂量に基づいて式(2)に示した1-line モデルにより汀線変化
図-3 押水羽咋海岸
の予測を行った.
∂x s
1
+
∂t
Ds
 ∂Q


− q  = 0 (2)
 ∂y

(
)
 ′

′ ∂H b
Q = H 2 C g b  K 1 2 sin αs b cos αs b − K 2
cot β cos αs b  (3)
∂y


ここに,x s は汀線の岸沖方向位置,Q は沿岸漂砂量,Ds は移動限界水深であり,q は岸沖方向の土砂移動量,K 1 ,
K 2 は漂砂量係数, αs b は波峰線の汀線となす角であり,添字 b は砕波点の値であることを示す.
キーワード 汀線,現地観測,DGPS,エネルギー平衡方程式,1-line モデル
連絡先
〒921-8501
石川県石川郡野々市町扇が丘 7-1 金沢工業大学環境・建築学部環境土木工学科
-331-
TEL076-248-1100
2-166
3.
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
shoreline
波浪特性
出現率のスケール (%)
徳光地先と金沢港および輪島港の沖合に設置
出現率のスケール (%)
EN
W
E
2.01-3.00
WSW
ESE
1.01-2.00
加越沿岸への来襲波特性を検討した.その結果
SW
S
4.01EN
ENE
W
E
2.01-3.00
WSW
ESE
1.01-2.00
SE
SW
0.01-1.00
SSE
3.01-4.00
WNW
SE
SSW
波高階級 (m)
NNE
NW
50
0
3.01-4.00
ENE
N
NNW
4.01-
WNW
された超音波式波高計による波浪観測結果から
shoreline
波高階級 (m)
NNE
NW
50
0
N
NNW
SSW
0.01-1.00
SSE
S
を図-4(a),(b)に示す.石川海岸と押水羽咋海岸
(a)
に来襲する波の特性は年間を通じて北北西と北
(b) 押水羽咋海岸
石川海岸
図-4 波浪特性
西の波向が卓越している.また,来襲波は,冬
期に高波浪となることが確認された.
4.
石川海岸における汀線変化と波浪場
図-5(a)~(e)より離岸堤背後域の調査点 2
50
40
20
10
0
May
03'
から南西へ 2 基目の人工リーフ背後域であ
Jul
ている.調査点 2 と 3 を比較すると汀線変
動に時間的なずれがみられるが変動課程
は類似しており砂の沿岸方向への移動が
Sep
Nov
Jan
04'
Mar
May
Jul
Sep
point_8
May
03'
Nov
Jul
40
30
20
point_3
10
0
May
03'
Jul
Sep
Nov
Jan
04'
Mar
May
Nov
Jan
04'
May
Mar
Jul
Sep
Nov
(b) 調査点 3
50
40
30
20
10
0
-10
50
Jul
Sep
point_11
May
03'
Nov
Jul
Sep
(c) 調査点 8
Nov
Jan
04'
May
Mar
Jul
Sep
Nov
(d) 調査点 11
図-5 調査点における汀線変化
推察できる.一方,沖合に海岸構造物が設
(m)
Incident wave H1 /3=1.99(m) T1 /3=7.9(m) NW
350
2
300
2
250
2
1.8 1.8
2
1.8
200
2.2
2.2
2
2
1.6
1.4
1.6
150
0.61.2
1.8
1.4
1.4
100 1
1.2
1 0.6
0.8 0.4
1.21
50
0.8
0.40.2 0.8 0
0.2 0
0
0
0
-50
1200
1400
1600
1800
2000
X
置されていない調査点 8 から調査点 11 の領域では約 10m の前進,後退が見ら
れ長期的に見ると後退傾向にあることが図より推察できる.次に,エネルギー
平衡方程式による波浪の算定結果の一例を図-6(a),(b)に示す.図-6(a)は平成 16
年 1 月の波浪場を,図-6(b)は平成 16 年 8 月の波浪場を示している.1 月の計算
(unit:m)
N
2
2
1.8
1.4
1
1.2
0.8
0.6 0.40.2 0.8
0
1.6
2200
2400
(m)
(a)平成 16 年 1 月
結果を見ると,波高 2.2mで入射した波浪は,人工リーフ背後では 1.2mに減衰
(m)
(unit:m)
Incident wave H1/3=0.61(m) T1/3=4.9(s) NW
350
N
0.6 0.6
300
0.6
0.6
0.6
250
0.6
0.6
0.65
0.65
200
0.75
0.7
0.6
0.65
0.65
0.55
0.6
0.5
150
0.45
0.50.55 0.25
0.65
0.5
100
0.65
0.4
0.45 0.4
0.55 0.6
0.55
0.45
0.25
0.5
0.2
0.15
0.1
50 0.35
0.05
0.4
0.35
0.3
0.15
0.2
0.05
0.10.45 0.4 0.350.3
0 0.25
0.3
0
0
0
0
-50
1200
1400
1600
1800
2000
2200
2400
(m)
X
している.8 月の計算結果では波高 0.6mで入射した波浪は,0.45mと減衰して
いる.1 月のように入射波高が大きい場合において,人工リーフ背後域では,
若干の大きさが見られるが 8 月よりも高い波浪減衰機能を確認できた.また,
1 月の汀線は各調査点で後退傾向であり,8 月にはわずかな前進が確認できる
(b)平成 16 年 8 月
ことから,汀線変化が波浪と関連していることがいえる.
図-6 波浪場の計算結果
5. 押水羽咋海岸の汀線変化予測
図-6 に波浪場の算定結果を示す.同図から沖から 0 ≦ Y ≦11000 では,
入射波は,浅水変形が顕著ではなく,波高がほぼ一定値のまま砕波点ま
で達し,砕波しているのが確認できる.これに対し, 11000 ≦ Y の領域
では,滝崎により入射波が回折し波高の減衰しているのが判る.図-7
に千里浜海岸の時間変化に伴う汀線変動の計算結果を示す.同図より
(m)
Incident wave
4500
1.5
4000
3500
1.4
3000
N
2500
2000
1500 0
0
1.4
1.2
1.3
1.1
1
0.7
0.9
0.8
1000
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
500
0
0
2000
Y>11000m では,滝崎による入射波の回折効果により汀線は前進する.
6.
Sep
(a) 調査点 2
る調査点 5 までの区間の変動は観測期間を
通じて約 20m 前後の前進,後退を繰り返し
50
40
30
20
10
0
-10
-20
point_2
30
H 1/3 =1.52(m)
T1 /3 =7.89(m)
(unit:m)
NNW
1.5
1.4
1.3
1.4
1.4
1.4
0
4000
1.2
1.1
10.9
0.8
0.7
0.6
0.4
0.5
0.3
0.2
0.1
1.4
6000
X
0
8000
10000
12000 (m)
図-6 千里浜の波浪場算定結果
(m)
700.0
結語
600.0
石川海岸における汀線の変動は海岸構造物背後域の砂の堆積
による漂砂の防止効果が確認できた.各調査点においては夏期
には汀線が前進していたが,冬期では後退しており季節的な波
高変化の影響を受けていることがわかった.しかしながら,長
期的な変化をみると汀線は後退傾向にあることがいえる.また,
1年後
2年後
500.0
X
400.0
300.0
200.0
5000.0
6000.0
7000.0
8000.0
Y
9000.0
図-7 汀線位置の計算結果
押水羽咋海岸での長期的な汀線変化は滝崎による波の回折効果が主な要因であることが判明した.
-332-
10000.0
11000.0
12000.
(m)
ダウンロード

図-1 石川県の沿岸 図-2 石川海岸八田地先 図-3 押水羽咋