平成25年3月7-8日 第7回ヤマセ研究会 弘前大学
平成24年8月下旬~9月中旬の
北・東日本の高温について
仙台管区気象台技術部気候・調査課
池田友紀子
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北日本は3旬続けて高温の記録を更新した
太平洋高気圧の勢力が日本の東海上で非常に強まり、北・東日本は厳しい残暑と
なった。北日本の旬平均気温は、8月下旬から9月中旬までの3旬続けて、統計
を開始した1961年以降で最も高くなった。
東北地方の平均気温・降水量
(6月1日から9月23日まで)
東北地方の
旬平均気温平年差
東北地方
2012年
2010年
7月上旬
+0.7℃(高い)
+2.8℃(かなり高い);3位
7月中旬
+0.7℃(平年並)
+1.7℃(高い)
7月下旬
+0.7℃(平年並)
+2.5℃(かなり高い);3位
8月上旬
+0.4℃(平年並)
+2.5℃(かなり高い);3位
8月中旬
+1.5℃(高い)
+1.7℃(高い)
8月下旬
+3.7℃(かなり高い);1位
+3.3℃(かなり高い);2位
9月上旬
+3.2℃(かなり高い);1位
+3.0℃(かなり高い);2位
9月中旬
+5.6℃(かなり高い);1位
+1.0℃(高い)
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太平洋高気圧がかなり強い
太平洋高気圧の勢力は、日本の東海上で平年と比べてかなり強く、北・東日
本に張り出した。
1979年以降の同じ期間で
比較すると最大レベル
3σ~99.7%
3
偏西風が大きく北に蛇行した
日本付近の偏西風(ジェット気流)は、平年と比べて大きく北に蛇行した(平年
の位置と比べて10度くらい北寄り)。
平年より
ジェットが強い
2012年
平年
平年より
ジェットが弱い
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偏西風が蛇行するとなぜ太平洋高気圧が強まる?
・偏西風の北への蛇行に対応して上層200hPa(12000m付近)では日本の北
東海上を中心とした顕著な高気圧性循環を形成。
・等価順圧構造の高気圧の軸は上層ほど北、下層ほど南に傾いている。
H
・偏西風の北への蛇行に伴って上層に高気圧性の渦が
できる。バランスするように下降流ができて、下層で発
散して高気圧を形成。
・偏西風の蛇行の中心より南側にあたる日本の東海上
で太平洋高気圧が強まった。
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偏西風の蛇行 シルクロードパターン
シルクロードパターンが明瞭に現れ、北日本付近のブロッキング高気圧の形成
に寄与。アジアモンスーン域の活発な対流活動が、シルクロードパターンの形
成・維持に寄与した可能性がある。
シルクロードパターン:夏季にみられる北緯40度付近の亜熱帯ジェットに沿った定常ロスビー波の波列パターン。地中海からユーラ
シア大陸を越えて日本付近にまで達する。盛夏期に現れ、日本付近の「夏の高気圧」の生成要因のひとつ。
H
H L
200hPa面
矢印:波の活動度フラックス
コンター:流線関数平年差
メカニズム:アジアモンスーンに伴う積雲対流活動の活発化で大気が加熱される。コリオリ力の作用で対流圏上
層中心のチベット高気圧を強化するとともにチベット高気圧の北縁を流れる亜熱帯ジェット気流沿いに局地的な
下降流をもたらし、蛇行を励起。蛇行のエネルギー(ロスビー波束)がジェット導波管に沿って東に伝わり、日本付
近では高気圧性循環偏差(北への蛇行の状態)が持続する。
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ロスビー波の波源
・中央アジア付近(インド・パキスタンの北側)の上層の高気圧性循環偏差の生
成には、発散風による高気圧性渦度の移流効果があった。
・8月下旬~9月中旬頃に南アジア付近で対流活動が活発な場合、中央アジア
付近と日本の北側の上層に、高気圧性循環偏差が現れる傾向がある。
OLR:外向き長波放射量(Outgoing Longwave Radiation)。地表面や雲からの赤外線のエネルギー量。青色の領域は積乱雲が多い
すなわち対流活動が活発であることを、赤色は対流活動が平年より不活発であることを表す。
H
L
H
H
H
7
対流活動と海面水温
インド洋西・中部の高い海面水温とインド~アラビア海付近の活発な対流活発
にはある程度(統計的な)関連性がある。
対流活動活発
高い海面水温
8
偏西風の蛇行 PJパターン
・8月下旬と9月中旬は、フィリピン北東海上(北西太平洋の北緯20度付近)で対
流活動が活発。PJパターンにより日本付近の高気圧が強まった。
・9月上旬は、フィリピン付近の対流活動は不活発となり、PJパターンを介した高
気圧の強まりはなかった。
PJパターン:フィリピン付近の西太平洋熱帯域と日本付近との間で対流圏下層の正偏差域と負偏差域が交互に並ぶパターン。フィリ
ピン付近の対流活動が平年より活発になると、北東に向かって大気を伝播する高気圧と低気圧の波列が生じて日本付近が高気圧
に覆われる。PJはPacific-Japanの略。
L
H
H
H
L
対流活動活発
8月下旬~9月中旬にフィリピン北東海上で対流活動が活発な場合、
(統計的に)本州~南東海上で高気圧が強まる傾向がある。
9
偏西風の北偏の持続と海面水温
本州近海から東に帯状に広がる顕著な海面水温(SST)の高温偏差と大気循
環との相互作用により、偏西風の北偏が維持された可能性がある。
温帯低気圧が発達しやすい→高緯度へ熱を輸送
・東西に広がる高SST偏差に対応して、下層の高温位偏差が分布。
・対流圏下層ではオホーツク海からアリューシャン列島付近で傾圧性強く高周波擾乱の活動が活発。
・対流圏上層ではオホーツク海北部からベーリング海を中心に偏西風が強い
(ジェット気流が大きく北偏)。
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地球温暖化の影響は?
9月は、長期的なトレンド(1979年以降)として、日本付近から北太平洋では偏西風の北偏、日付変更
線付近を中心とした太平洋高気圧の強まりと西への張り出し傾向がある。
250hPa東西風
東アジア~太平洋西部で偏西風
が北上する傾向
H
500hPa高度
太平洋西部付近でリッジが明瞭と
なる傾向
850hPa流線関数
太平洋高気圧の強さ&西への張り
出しが強まる傾向
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1979~2011年における9月平均場のトレンド。95%(99%)の信頼水準で統計的に有意な領域を水色/桃色(青色/赤色)で塗色。
まとめ
循環場の特徴
・北・東日本は、東方海上で非常に勢力の強い太平洋高気圧の影響で顕著な高
温となった。
・日本付近の偏西風は大きく北に蛇行(平年の位置と比べてかなり北寄り)。
これに対応して、対流圏上層では日本の北東海上を中心に顕著な高気圧偏差。
要因
・高気圧偏差の形成・維持には、シルクロードパターンやPJパターン(PJは8
月下旬・9月中旬)といったロスビー波束伝播があった。(これ以外に移動性擾乱や
基本場からのフィードバックもあり)
・本州近海から東に帯状に広がる顕著な海面水温の高温偏差と大気循環との相
互作用により、偏西風の北偏が維持された可能性がある。
・偏西風の北偏や高気圧偏差の形成・維持には、大気内部プロセス、熱帯対流活動の影響、ローカル
な大気・海洋相互作用の寄与が合わさったとみられる(主要因の特定難しい)。
・9月は長期的なトレンド(1979年以降)として、日本付近から北太平洋では
偏西風の北偏、日付変更線付近を中心とした太平洋高気圧の強まりと西への張
り出し傾向がある。
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追記
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2013年の夏はどうなる?
1983 年以降10 年ごとに冷夏が現れているが・・・
-1.4(2003)
14
夏の気温とオホーツク海高気圧の出現日数の関係
1983年
エルニーニョ現象発生中
1993年
エルニーニョ現象に近い状
態
2003年
エルニーニョ現象が終わっ
てすぐの夏
2013年
平常の状態を予測(ラニー
ニャ寄りから平常へ)
エエララ エラ
ルルニニ ルニ
エエ
ルル
ラ エララ
ニ ルニニ
エ
ル
ラ エラ
ニ ルニ
オホーツク海高気圧の出現日数は日別7日平均値で以下の条件をすべて満たす日を出現日数と定義。
オホーツク海(北緯45~55度、東経145~155度)の気圧が1014hPa以上
オホーツク海の気圧が東日本(北緯35~40度、東経135~145度)の気圧より高い
北日本(北緯40~45度、東経140~145度)の925hPa気温が平年以下
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今夏の見通し 想定
・エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生しない見込み。
・海面水温がインド洋熱帯域で平年より低く、西部太平洋熱帯域で平年より高いため、インドから
フィリピンの東で対流活動が平年より活発となる。この影響で、チベット高気圧の勢力が強く、太
平洋高気圧の張り出しが強い。
・東北地方に低温をもたらすオホーツク海高気圧の出現は平年程度で、影響を受ける時期がある
が一時的と見込む。
インド洋熱帯域
低めに
西太平洋熱帯域
高めに
エルニーニョ監視海域
低めから平年に
2013年3月~2013年8月の海面水温予測(エルニーニョ予測モデルによる)
インド洋熱帯域、西太平洋熱帯域、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差の先月までの経過
(折れ線グラフ)とエルニーニョ予測モデルから得られた今後の予測(ボックス)
各月のボックスは、海面水温の基準値との差が70%の確率で入る範囲を示す。 (基準値1983-2012平均)
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今夏の予報
東北地方 暖候期予報
平成25年2月24日
仙台管区気象台発表
6月から7月は、平年と同様に曇りや雨の日が多いでしょう。その後は、平年と
同様に晴れの日が多い見込みです。
この期間の平均気温は、平年並または高い確率ともに40%です。
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おわり
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