量子ビームによる高分子結晶化の研究
京都大学化学研究所
金谷利治
1.
2.
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はじめに:なぜ量子ビーム?
流動場に置ける高分子結晶化
シシケバブ形成における臨界のせん断速度
シシ前駆体 ー 高分子量成分の役割
シシ前駆体の構造
シシ前駆体の普遍性
*よく制御された高品位の中性子、放射光、レーザー、イオンビームなどの放射線を「量子ビーム」と呼び、量子ビームによる新しい科学技術の発展、産業
利用促進などが期待されている。平成17年10月閣議決定された原子力政策大綱には、「近年の技術革新により、加速器、高出力レーザー装置、研究用
原子炉等の施設・設備を用いて、高強度で高品位な光量子、放射光等の電磁波や、中性子線、電子線、イオンビーム等の粒子線を発生・制御する技術、
及び、これらを用いて高精度な加工や観察等を行う利用技術からなる『量子ビームテクノロジー』と呼ぶべき新たな技術領域が形成されてきている」と述べ
られている。
1
はじめに
J-PARCの利用
ーよりよい利用のためにー
1)J-PARCのビームラインの特徴
(テーマにあったビームライン)
小角、反射率、非弾性、、、
2)他の中性子施設や他のSR施設との使い分け
3)放射光X線、ミュオンとの使い分け
最適なビーム(手法)とは?==>統一的・有効的利用
量子ビームプラットフォーム
(施設連携、学会アライアンス)
2
量子ビーム研究開発・利用プラットフォームと各量子ビーム利用プラッ
トフォーム
イオンビーム利用プラットホーム
各大学・
各大学・
協同利用/人材育成
研究機関
研究機関
KEK
イオンビーム
放射光利用
プラットホーム
多様化・高品位化
中性子ビーム
横断的利用促進
放射光
JASRI
中性子利用
プラットホーム
・TIARA→RIBF他
・JRR-3
・KENS
→ J-PARC
高強度化
量子ビーム研究開発・利用プラットホーム
利用促進・支援機関 (既存の公益法人等の活用)
放医研
産業界
理研
ライフサイエンス・
医療分野
原研
物材機構
ナノテク・
材料分野
産総研
環境関連分野
3
産業界によるトライアルユース・本格利用
専門機関による利用先導・コミュニティ拡大
中性子利用プラットフォーム
4
ラボ装置+各種量子ビーム ==>広い時空間での測定
空間構造(散乱法、顕微鏡法)
10-9 m
10-3 m
10-6 m
μm
nm
mm
広角X線、中性子散乱
小角X線、中性子散乱
超小角X線、中性子散乱
光散乱
電子顕微鏡
光学顕微鏡
ダイナミクス(分子運動):
10-12 s
10-9 s
ps
ns
10-6 s
10-3 s
μs
ms
非弾性・準弾性中性子散乱
動的光散乱
ミュオン
5
高分子研究における中性子散乱の特徴
1)核散乱であり、散乱長密度差により散乱
X線とは異なるコントラスト
2)運動と構造が同時に観測できる
3)重水素化ラベル法
4)J-PARCの高輝度
ソフトマターの目指す方向
1990~ (1975~)
高エネルギー分解
能非弾性・準弾性
散乱
1990〜(1980〜)
界面構造制御
反射率
界面・表面
ソフトマタ−
の研究
構造と機能
界面構造と内
高次構造制御
部構造の相関
メゾスコピック構造とその
形成過程の研究
スローダイナ
ミクス研究
ナノ構造制御
小角散乱
産業利用
1980〜(1970〜)
量子ビームの相補利用
高分子の流動場結晶化
ケバブ(折たたみ鎖
によるラメラ晶)
溶融押し出しPE繊維のTEM写真(左)
とシシカバブモデル(Bashir-Hill-Keller)
シシ(伸長鎖ミクロ
フィブリル)
1mmφ:240
kg
Stronger than steel
(東洋紡提供)
シシカバブ構造の生成機構
流動場での結晶化
流動場での結晶化
(繊維構造)
(繊維構造)
50μm
?
メルト
OM observation,シシカバブ構造
iPP, Winter et al.
TEM
量子ビーム:小角X線散乱、小角中性子散乱、広角X線散乱、
偏光解消光散乱、光学顕微鏡
(広い空間スケール 1Å ~ 100 μm)
9
最新の量子ビームで最高の情報を得る
東海村原子力機構
JRR-3原子炉(中性子)
つくば、高エ研
フォトンファクトリー
(放射光X線)
西播磨、SPring-8
(放射光X線)
研究室の光散乱装置
中性子散乱施設(東大物性研)
との共同研究, SANS-U
物質構造研究所との
共同研究、BL15A
理研との共同研究,
BL45XU
小角中性子散乱装置
(ナノスケール)
シアセル
SANS-U
シアセル(西田)
原研改3号炉
(東海村)
広い空間スケールで構造形成を観る
11
配
向
配向度に対するせん断Strain度= 7000 %, Tc = 132 °C
速度依存性 WAXS
(iPP)
配向結晶化するためには、臨界
のせん断速度が存在する
Îダイナミクスの重要性
SAXSやDPLSにおける臨界せん
断速度にほぼ等しい
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立ち上がり時間の比較
偏光解消光散乱(DPLS), 小角X線散乱(SAXS) 、広角X線回折(WAXS)
Shear rate = 70 s-1, strain = 7000 %
iPP
シシ
ケバブ
結晶格子
(ケバブ)
DPLS<SAXS<WAXS
シシ前駆体が結晶化以前に出現。ケバブ配向はシシに支配される
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高分子量成分の役割
超高分子量成分の添加効果
Polyethylene (PE) , Mw = 58,600, Mw/Mn = 8.1
Polyethylene (PE), Mw = 2,000,000, Mw/Mn =12
CHMPE = 0, 0.2, 0.5, 1.0 and 3.0 wt %
15
超高分子量添加の効果
(時分割偏光解消光散乱測定)
P
Matrix
A
64sec.
94sec.
124sec.
64sec.
94sec.
124sec.
flow direction
34sec.
3% HMPE
34sec.
1.41×10-3nm
shear rate 4 s‐1 , strain 1600% , T = 129 °C
(この条件では、マトリックス高分子は異方性散乱を示さない)
16
超高分子量成分の濃度効果
P
A
・Shear rate = 4 s-1, strain = 3200%, T=129 °C
1.41×10-3nm
68sec.
68sec.
68sec.
68sec.
98sec.
98sec.
98sec.
98sec.
98sec.
matrix
0.2%
0.5%
1%
3%
臨界濃度 C = 0.5 wt%
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配向度の超高分子量成分濃度依存性
シシ構造生成直後の配向度
超高分子量成分のオー
バーラップ濃度
= 0.183 wt %
Degree of orientation
2.5
2
6400%
1.5
3200%
Rg
1600%
1
0.58 wt.%
0.5
0.1
1
Concentration (wt.%)
臨界濃度 Cc = 0.58 wt %
10
Cc/CRg = 3.2
からみ合いが効く
18
flow direction
68sec.
シシ前駆体の初期生成機構
(a) CHMPE < C*Rg
(b) CHMPE > C*Rg
(c) CHMPE ≫ C*Rg
elongation
19
臨界濃度の温度依存性
SAXSによる決定
温度が下がると、接触濃度より
小さくなる。
必ずしも平均の分子量では決
まらない。有効な分子量が存在
する。
CRg*
結晶化速度と
緩和速度の兼ね合い
融点近傍では結晶化速度の温
度依存依存性が大きいが、緩
和速度の温度依存性は小さい。
G. Matsuba et al., Macromolecules, 2007
20
核形成速度の温度依存性
⎛
⎞
kσ 3 vm2
f 2
∞
2⎟
⎝ kT (Δhm ) (Tm − T ) ⎠
臨界濃度の温度依存性
結晶化速度と緩和速度の兼ね合い
ν nuc ≈ exp⎜ −
緩和速度の温度依存性
1/ τ r ~
exp(C1 (T − T0 ))
T − T0 + C2
116 °C と132 °C の速度比
結晶化速度<<緩和速度
臨
界
濃
度
近
傍
結晶化速>>緩和速度
結晶化速度 1000:1
緩和速度 1:1.33
シシケバブ構造は 超高分子量成分添加で加速される
高分子量成分の役割?
小角中性子散乱(SANS)
H/Dブレンドで散乱コントラストを強化できる
SANS 測定:
軽水素化超高分子量成分を3%含む重水素化PE
の一軸延伸試料
HMW h-PE
LMW d-PE
2,000,000
195,000
2.8 wt %
97.2 wt %
22
散乱コントラスト H/D PE ブレンド
SAXS
SANS
SANS
amorphous
amorphous
amorphous
kebab
kebab
kebab
shish
shish
HMW h-PEの
均一分散
shish
(電子密度差)
HMW h-PEが
シシを形成している
超高分子量成分が系に均一分散しているかそれともシシ
を形成しているかを判断できる
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SANS and SAXS
SANS
SAXS
elongation
-1
0.05Å
0.05Å-1
0.05Å-1
シシが観測される
シシが観測されない
シシ構造は高分子量成分で形成されている
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多重コア−シェルモデル
2H
shell cylinder with Rshell
core cylinder with Rcore
コアシリンダーの本数 = n
Core (extended chain
crystal) contribution
散乱関数
I(Q) = [ f l Al (Q,Rl ,H) − nf s As (Q,Rs,H) s ]
2
Ai (Q,R,H) =
2
2
sin(Qz H) 2J1 ( Qx + Qy Ri )
Qz H
Qx2 + Qy2 Ri
(i = l,s)
延伸試料におけるシ
シケバブ構造の階層
構造
2H = 12 μm
2Rshell = 2 μm
2Rcore = 9 nm
Number of core cylinders =253
シシ前駆体
せん断流動結晶化と
同様なミクロンスケー
ルの前駆体
2H =
12 μm
なぜこのような大きな
構造が必要か?
前駆体の存在
伸張鎖結晶
2Rcore = 9 nm
2Rshell = 2 μm
26
シシケバブ生成機構 (CHMW>Cc)
流動
(CHMW>Cc)
高分子量成分の
ネットワーク
ネットワークの絡み合い
による延伸
ネットワークの分裂
シシ前駆体の生成
if T<Tm
シシ前駆体の中で
伸張鎖結晶の生成
シシの上にケバブの
生成
シシケバブのバンドルの
27
生成
偏光解消光散乱と偏光顕微鏡観察
272°C
250°C
melt(5min)
T0m = 270°C
Tm = 223°C
Pulse shear was applied at 250 °C
shear rate = 30s-1, shear strain = 12000%
0s
time
試料:アイソタクチックポリスチレン (iPS)
分子量:Mw=400,000, Mw/Mn = 2.0
融点:223 °C, 平衡融点:270±5 °C (本実験で決定)
偏光解消光散乱パターン
10sec
40sec
10min
30min
Ta
210°
C
P
A
flow direction
Tm =
223 °C
230°
C
250°
C
Tmo = 270°C
272°
C
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1.0×10-4Å-1
顕微鏡観察とフーリエ変換像
(a)
100 μm
(b)
(c)
20 μm
(d)
(e)
20 μm
(f)
融解過程における散乱強度の変化
融点
平衡融点?
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WAXS測定
通常の測定では、結晶構造は確認できない
WAXS
normal
WAXS
parallel
At 230 °C
At 230 °C
Tc = 250 °C
前駆体生成後結晶化、
その後昇温
melt
Annealing
(5min) (10min)
272 ℃
250 ℃
290 ℃
210 ℃
30 min
60 min
(b) 210 °C (c) 210 °C
Tm
annealing (30min)
t= 0
time
(d) 220 °C (e) 230 °C (f) 260 °C
flow
10 min
(a) 250 °C
5 ℃/ min
30 ℃/ min
Annealing at 210 °C
10 min
(b) 210 °C
30 min
(c) 210 °C
60 min
(d) 210 °C
(e) 240 °C
flow
10 min
(a) 250 °C
Heating to 270 °C
Annealing at 210 °C
Heating
配向物(string-like structure)とは?
1)液晶的構造による安定化
2)ECCを含むフリンジドミセル構造
量子ビームによる流動結晶化のまとめ
オングストロームからμmスケールの構造形成について調べた。
1)伸長が重要:加えた流動条件と緩和時間の兼ね合い
分子量効果、絡み合い
2)配向構造(シシ)の生成:結晶化速度と緩和速度の兼ね合い
核形成速度、緩和過程を支配する因子
3)前駆体の形成の重要性(μm):通常の融点以上でも生成
前駆体生成の機構はまだ不明確
4)シシケバブの生成機構には種々ある。
35
ダウンロード

量子ビームによる高分子結晶化の研究 はじめに