Play-dateにおいて、自閉症児と同
年代の健常児達との相互作用を文
脈的に援助することの効果
文学部心理学科3回生 井手暁
中島美奈
※Play-dateとは
事前に約束をして、子供が誰かの家に遊びに
行くというアメリカの習慣。その場の思いつき
で実行されるのではなく、親が日程調整をし
たり遊びの内容を決めたりするという点で日
本の習慣とは少し異なっている。
目的
• 社会における相互作用の困難さは、自閉症の特性である。
• この研究の目的は、Play-dateにおける文脈的援助が社会
的な局面にどれだけの効果があるかを評価することである。
自閉症児
相互作用が困難
Play-dateにおける文脈
的援助
どれだけ改善する
か?
方法
実験協力者
自閉症児であるMegan(8)とKyle(9)の2人
・2人とも、援助者がフルタイムで側にいれば十分普
通学級に参加可能。社会年齢は4歳ほど
・友人からの質問やコメントにほとんど答えない
・会話に従事することが困難
・決まった友人がいない
・遊びなどの社会活動に誘ってもらえない
方法
デザイン
多層ベースラインデザインを用いた
・Meganには約3ヶ月のベースライン期の後に文脈的援助介
入を実施し、その後再び介入なし期間を設けた後、介入を再
開した(ABABデザイン)
約3ヶ月
約1ヶ月
約1ヶ月
約7ヶ月
援助なし
援助あり
援助なし
援助あり
・Kyleには約8ヶ月のベースライン期の後介入を開始した
(ABデザイン)
約8ヶ月
約3ヶ月
援助なし
援助あり
方法
全体の手順
・両親は教師やクラスの助手に相談して、似たような
興味を持ち、前向きに社会行動を行う同年代の健
常児達を集めてもらった
・週におよそ1回、両親によってPlay-dateを設定して
もらった
・Play-dateは家、公園、浜辺、動物園、ボーリング場
などの自然な状況で実施された
・Play-date中、文脈的援助あり条件となし条件とで
調査をした
方法
・Play-dateに参加した子供達の数は、Meganの方
が9人、Kyleの方が5人
・援助者として、実験の仮説を知らず、3年以上自閉
症児と接して働いた経験のある大学院生を1人ずつ
用いた。大学院生たちは、強化や手助けを行った
・Play-dateはビデオ撮影された。そして全てのPlaydate中からランダムに代表の試行が選ばれ、2人の
無関係な観察者によって得点が付けられた
方法
文脈的援助なし条件
・Play-date中、子供達は普通するような遊びをした
のみで、特に教示はなかった。
・遊びは子供達が選択したものが行われた。(ボード
ゲーム、お人形遊び、お絵描き、バスケットボール、
自転車乗りなど)
・子供の安全を確保するため、常に大人が1人付き
添っていた。
方法
文脈的援助あり条件
1.活動内容は、子供達が相互に強化されるようなもの
で、かつ子供達が共通の興味を持つようなものが選
ばれた(表1参照)
2.Play-date中は、子供達が協力し、それぞれが必要
な役割を担うように設定された(例えばクッキー焼き
の場合、1人が計量カップを持って1人が材料を注
ぐ)
・上記の2点以外は援助なし条件と同じである
方法
表1
Meganと
Kyleの、
Play-datesでの活動内容(
文脈的援助あり
・
なし
)
タ
ーゲッ
ト
児試行
健常児 環境
活動
Megan
1 援助なし児童1
Megan宅の台所のテーブル 色塗り
2 援助なし児童2
Megan宅の裏庭
紐遊び
3 援助なし児童3
近所の駐車場
自転車乗り
4 援助なし児童4
Megan宅の寝室
お人形遊び
5 援助あり児童1
Megan宅の居間
ゲーム「
Candyland」
6 援助あり児童1
Megan宅の台所のテーブル 工作(
ティ
ッ
シュ
造花)
7 援助なし児童1
Megan宅の庭のテラ
ス
扮装遊び
8 援助なし児童5
近所の池
水泳
9 援助あり児童6
Megan宅の台所
カ
ッ
プケーキ焼き
10 援助あり
児童7
Megan宅の食事部屋
ネッ
ク
レ
ス作り
11 援助あり
児童8
Megan宅の台所
ク
ッ
キーの飾り
付け
12 援助あり
児童9
地元のボウリ
ング場
ボウリ
ング
Kyle
1 援助なし児童1
地元の公園
水鉄砲遊び
2 援助なし児童2
地元の公園
昆虫採集
3 援助なし児童3
浜辺
サーフ
ィ
ン・
水泳
4 援助なし児童4
Kyle宅の居間
ボード
ゲーム「
Sorry」
5 援助あり児童4
Kyle宅の居間
「
Pictionary」
6 援助あり児童4
Kyle宅の裏庭
お絵描き
7 援助あり児童5
Kyle宅の居間
ボード
ゲーム「
Sorry」
8 援助あり児童3
Kyle宅の私道
バスケッ
ト
ボール
従属変数
同期的相互作用
・SillerとSigman(2002)の「同期」の定義を適用し、2
人の子供達がお互いに、もう一方の子供がその時
に興味を示しているものに関係した社会的コミュニ
ケーション行動をとることと定義した
・社会的コミュニケーション行動とは、言語的手ほどき
や言語反応、非言語的アイコンタクト、表情、ジェス
チャーなどである
・ターゲット児と健常児達の両方について、30秒間隔
で得点を付けた。双方の子供が30秒間の大部分を
自発的な同期的相互作用をして過ごしている場合
のみ得点が付く
従属変数
・同期的相互作用として得点を付けられる行動の例
絵を描く手伝いをする
児童A
「ありがとう」
とお礼を言う
児童B
(お絵描き中)
従属変数
情動
・Play-date中の自閉症児と健常児達の情動レベルを
評定した
・評定にはKoegelらの先行研究で用いられた「Likert
尺度」を使用した
・この尺度は3つにカテゴリー分けされている
①得点が0~1のとき:ネガティブな情動
②得点が2~3のとき:中間的な情動
③得点が4~5のとき:ポジティブな情動
従属変数
社会的有効性の補足的な測定(受けた招待の
数)
・同期的相互作用と情動に加えて、同年代の子供達
からの招待の頻度も集計した。
・毎月、MeganとKyleが他の子供達に遊びに誘われ
た回数を2児の母親達に記録してもらい、定期的に
大学院生に報告してもらった。
結果
同期的相互作用
文脈的援助なし あり
なし
あり
同
期
的
相
互
作
用
を
し
て
い
た
時
間
間
隔
の
割
合
(
%
)
月ごとの試行
図1-a Meganの同期的相互作用
結果
同期的相互作用
同
期
的
相
互
作
用
を
し
て
い
た
時
間
間
隔
の
割
合
(
%
)
文脈的援助なし
月ごとの試行
図1-b Kyleの同期的相互作用
文脈的援助あ
り
結果
同期的相互作用(図1参照)
・MeganもKyleも、ベースライン期には同期的相互作用をする
割合が低かった (Megan:30~40% Kyle:0~15%)
・文脈的援助ありのPlay-datesにおいては、2人とも同期的相
互作用をしていた時間間隔の割合が70~85%にまで急増し
た
・その後Meganは文脈的援助なし条件に戻されたが、また低い
レベルに戻った。そして援助が再開されると、また高いレベ
ルに戻り、その状態は数ヶ月続いた。
・まとめると、2人とも文脈的援助なしでは同期的相互作用のレ
ベルが低く、援助ありのときは高い
結果
情動レベル
援助なし
タ
ー
ゲ
ッ
ト
児
と
健
常
児
の
情
動
レ
ベ
ル
あり
なし
あり
ポジティブ
健常児の情動
中間
Meganの情動
ネガティブ
月ごとの試行
図2-a Meganの情動
結果
情動レベル
援助あり
文脈的援助なし
タ
ー
ゲ
ッ
ト
児
と
健
常
児
の
情
動
レ
ベ
ル
ポジティブ
中間
ネガティブ
月ごとの試行
図2-b Kyleの情動
結果
情動レベル(図2参照)
・MeganもKyleも、はじめの文脈的援助なしのPlay-dateでは中
間的な情動を示した(常に情動レベルが2か3であった)
・文脈的援助ありのときはポジティブな情動を示した(常に情動レ
ベルが4か5であった)
・参加した同年代の子供達も、たった1試行を除いてまったく同じ
情動パターンを示した
・まとめると、文脈的援助活動は同期的相互作用だけでなく、情
動においてもターゲット児と健常児達の双方に高い影響を与
えた
結果
受けた招待の数
同
年
代
の
子
供
達
か
ら
の
招
待
の
数
文脈的援助なし
あり
なし
あり
開始からの月数
図3-a Meganの受けた招待
受けた招待の数
同
年
代
の
子
供
達
か
ら
の
招
待
の
数
結果
文脈的援助なし
開始からの月数
図3-b Kyleの受けた招待
文脈的援助あり
結果
受けた招待の数(図3参照)
・Meganと受けた招待の数は、社会的有効性を表している
・ベースライン期に、MeganとKyleは招待を受けなかった
・介入期間中は同期的相互作用が改善されたので、2人は
より多くの招待を同年代の子供達から受けるようになった
Megan:月に2、3回 Kyle:月に4回
まとめると、Play-dateの開始は同期的相互作用や情動
の高まりだけでなく、同年代の子供達がより頻繁に彼らを
遊びに誘い、更なる関係を求めるという結果をもたらした
考察
・文脈的援助は同期的相互作用、情動によい
影響を与え、社会的有効性を高めるという結
果が得られた
・しかしこれらの結果はあくまで前段階であると
考えなければならない。これらの効果は、結果
に示されたよりもさらに長期間にわたって観察
が可能であった
考察
同期的相互作用
・先行研究により、家庭でのPlay-datesは児童期の密接な友情
を育む上でとても重要な要素であることがわかっている
・子供達は普通、週に1、2回Play-datesをする
・しかし自閉症児達は滅多にPlay-datesをしないし、したとしても
友情を育む機会がほとんどないものになってしまう
・本研究はその状況を改善し、障害児と障害のない子供の関係
の質を高めるための方法論を提示する
・結果からは、児童達は相互作用に参加する事ができるが、高い
レベルの社会的行動をするには文脈的援助を受ける必要が
あることが読み取れる。これは先行研究とも一致している
・Meganの場合、いったん援助なし条件に戻したときの結果によ
り、少なくとも初めのうちは、文脈的援助なしでやっていくには
脆弱すぎるということが判明した
考察
情動
・結果により、文脈的援助ありとなしとでは大きなちがいがあるこ
とがわかる
・ターゲット児も同年代の子供達も、文脈的援助活動があるとき
は高いレベルの楽しさ、好奇心、満足感をみせた
・Frankel&Myatt(2003)は、楽しい相互関係を続けれていれば
Play-dateは成功する筈だと提唱している
・本研究の場合、文脈的援助介入を行っていた際に高いレベル
の情動がみられたのはお互いに楽しい遊びをしていたから、
つまり、今回のPlay-datesの成功は子供達のおかげだと言え
るかもしれない
・このことは、この子供達が将来、一緒にPlay-datesに参加する
ことを望むようになるかもしれないという希望を示唆してくれる
考察
お互いに対する招待
・同年代の子供達の招待が増加したというデータは、子供達の、
もっとMeganやKyleと一緒に過ごしたいという望みの増加を示
していると考えられる
・しかし本研究は、招待の増加の原因となったと考えられる独立
変数について、直接分析をしていない
・例えば、Play-datesの回数の増加と成功が親のスキルや自信
を高めて、それが健全な相互関係を容易にした可能性もある
・先行研究では、友情を育む上では相互関係が重要な役割を果
たすと提唱されている
・それを参考にするならば、本研究で観察された高いレベルの自
発的同期的相互作用が、同年代の子供達の招待の増加に影
響を与えたのではないかと考えられる
考察
お互いに対する招待
・招待数が増加したという事実は非常に重要である。
なぜなら、友情を育むことと同年代の子供達から受
け入れてもらうことは我々の主目的であり、介入前
には達成されなかったことだからである
・同年代の子供達からの招待数がより一般的なレベル
にまで上がったという事実は、これらの子供達がこ
れからも友情を育み続けることができるということを
約束する
考察
総合
・本研究は確かな成果を得たが、以下に挙げたような
限界も存在する
①ターゲット児の数が少ない。また、ターゲット児達が
よく似た特徴を持っている(例えば機能レベルや社
会能力)
②たった2人のターゲット児に多層ベースラインデザイ
ンを実施したため、ターゲット児の1人に逆行デザイ
ンを施さなければならなかった
⇒追実験では、より多く、多様な被験者を用いる必要
がある
考察
・さらにPlay-dateを有効にするような要因を見つける
ためにも、追実験が必要である
・子供の行動における状況や活動内容などの、他の
変数の影響についても調査を行う必要がある
・本研究の追実験を繰り返し、介入にどのような要素
が必要かを定義することは、親や実践家のためにも
重要なことである
・いずれ、これらの介入法は自閉症児と同年代の子供
達との改善を大きく変えることができるかもしれない
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Play-date