Kottler 解
宇宙定数ありでの静的、球対称な解を求めます。この解を Kottler 解と呼びます。導出はシュバルツシルト解と変
わらないので、結果を流用すればすぐ求まります。
この解は宇宙定数による項のために、漸近的に平坦な時空になるという性質を持っていません。
宇宙定数なしのアインシュタイン方程式は
1
8πκ
Rαβ − gαβ R = 2 Tαβ
2
c
エネルギー・運動量テンソルは質量密度の次元にしています。これに宇宙定数 Λ を入れると
8πκ
1
Rαβ − gαβ R − Λgαβ = 2 Tαβ
2
c
アインシュタインはこのように宇宙定数を左辺の幾何側に入れました。別の書き方として
1
8πκ
Rαβ − gαβ R = 2 (Tαβ + Λ′ gαβ )
2
c
のようにしてエネルギー・運動量テンソルの一部であるかのように書くこともできます。数式的には同じ意味で
すが、左辺が時空の幾何、右辺が時空のエネルギーというアインシュタイン方程式の構造を考えると、どっちに
宇宙定数を入れているかで、書き手が宇宙定数をどう解釈しているのかが分かります。特に思い入れがないなら、
好きな方で書けばいいです。
エネルギー・運動量テンソルは 0 だとするので、ここで使うのは
1
Rαβ − gαβ R − gαβ Λ = 0
2
これのトレースを取ると
R = −4Λ
なので
Rαβ = −gαβ Λ
を解けばいいことになります。
α = β = 0 の場合を考えます。R00 は「シュバルツシルト解∼外部∼」求めた
R00 =
eν−λ ′′ ν ′2
ν ′ λ′
2ν ′
(ν +
−
+
)
2
2
2
r
を使うことで
eν−λ ′′ ν ′2
ν ′ λ′
2ν ′
(ν +
−
+
) = −g00 Λ
2
2
2
r
「′ 」は r の微分で、ν は静的、球対称な線素
1
(1)
ds2 = eν(r) c2 dt2 − eλ(r) dr2 − (r2 dθ2 + r2 sin2 θdφ2 )
によるものです。そして、g00 = eν なので
ν ′′ +
ν ′ λ′
2ν ′
ν ′2
−
+
= −2eλ Λ
2
2
r
(2)
α = β = 1 の場合では、R11 が
1
ν ′2
λ′ ν ′
λ′
R11 = − ν ′′ −
+
+
2
4
4
r
と g11 = −eλ から
ν ′′ +
λ′ ν ′
2λ′
ν ′2
−
−
= −2eλ Λ
2
2
r
(3)
(5) と (3) を比較することで
ν ′ + λ′ = 0 , ν + λ = const
これはシュバルツシルト解と同じです。ただし、今のように宇宙定数がいる場合では漸近的に平坦になるという条
件がないので、定数を log k と置いて話を進めます (対数を取っているのは後の計算が楽になるからです)。漸近的
平坦にならないというのは、(1) の右辺に宇宙定数の項がいるために真空でないとみなせることからも分かります。
λ = log k − ν を (5) に入れれば
ν ′′ +
ν ′2
ν′
2ν ′
− (−ν ′ ) +
= − 2ke−ν Λ
2
2
r
ν ′′ + ν ′2 +
2ν ′
= − 2ke−ν Λ
r
2
(eν )′′ e−ν + (eν )′ e−ν = − 2ke−ν Λ
r
( ν ′′
)
(e ) = ν ′′ eν + (ν ′ )2 eν
2
(eν )′′ + (eν )′ = − 2kΛ
r
2
((eν )′ + (reν ))′ = − 2kΛ
r
1 ν ′′
(re ) = − 2kΛ
r
(
(reν )′′ = r(eν )′′ + 2(eν )′
)
r で積分して
(reν )′′ = −2kΛr
(reν )′ = −kΛr2 + A
1
reν = − kΛr3 + Ar + B
3
A, B は積分定数です。
2
(4)
α = β = 2 の場合では、R22 と g22 が
R22 = 1 − (re−λ )′ − e−λ r
λ′ + ν ′
, g22 = −r2
2
なので
R22 = − g22 Λ
1 − (re−λ )′ − e−λ r
λ′ + ν ′
= r2 Λ
2
λ′ + ν ′ = 0 を入れれば
(re−λ )′ = 1 − r2 Λ
(re− log k+ν )′ = 1 − r2 Λ
1 ν ′
(re ) = 1 − r2 Λ
k
(reν )′ = k(1 − r2 Λ)
1
reν = − kΛr3 + kr + C
3
(4) と比較すれば A = k, B = C だと分かるので
eν = k(1 +
B
1
− Λr2 )
kr 3
e−λ = 1 +
B
1
− Λr2
kr 3
ν = log k − λ なので
k を k = 1 に選べば
eν = e−λ = 1 +
1
B
− Λr2
r
3
eν = e−λ = 1 −
2m Λr2
−
r
3
さらに B = −2m とすれば
となるので、Λ = 0 でシュバルツシルト解になります。この解
(
(
2m Λr2 )
2m Λr2 )−1 2
ds2 = 1 −
−
(cdt)2 − 1 −
−
dr + r2 (dθ2 + sin2 θdφ2 )
r
3
r
3
3
のことを Kottler 解と言います。もしくは、Λ > 0 のときをシュバルツシルト-ド・ジッター (Schwarzschild-de
Sitter) 解、Λ < 0 をシュバルツシルト-反ド・ジッター (Schwarzschild-anti-de Sitter) 解と呼んだりします。この
解は r を無限大にしても Λ 項のせいで漸近的平坦になっていません。
宇宙定数を含む計量で近日点のズレを計算すると宇宙定数の影響が出ることが知られています。これに対して
光の曲がりには宇宙定数は影響しないと考えられています。このことは簡単に見れるので、それを見ておきます。
Kottler 計量での変分問題は
∫ (
(
2m Λr2 )−1 2
2m Λr2 )
−
(cṫ)2 − 1 −
−
ṙ − r2 (θ̇2 + sin2 θφ̇2 )]ds = 0
δ [ 1−
r
3
r
3
これによるオイラー・ラグランジュ方程式は、シュバルツシルトのときと同じで
• x0 = ct
d
2m Λr2
[(1 −
−
)ṫ] = 0
ds
r
3
• x2 = θ
d 2
(r θ̇) = r2 sin θ cos θφ̇2
ds
• x3 = φ
d 2 2
(r sin θφ̇) = 0
ds
ここでも赤道面上 (θ = π/2) だとします。なので、φ から出てくる角運動量保存の式
h = r2 φ̇
と ct からのエネルギー保存の式
l = (1 −
2m Λr2
−
)ṫ
r
3
を使って、線素を ds2 で割った
(
2m Λr2 )−1 2
2m Λr2 ) 2 2 (
−
c ṫ − 1 −
−
ṙ − r2 (θ̇2 + sin2 θφ̇2 )
1= 1−
r
3
r
3
を変形すると
(
2m Λr2 )−1 2 2 (
2m Λr2 )−1 2 h2
1= 1−
−
l c − 1−
−
ṙ − 2
r
3
r
3
r
2
2(
2)
2m Λr
h
2m Λr
1−
−
= c2 l2 − ṙ2 − 2 1 −
−
r
3
r
r
3
そして r の φ 微分を r′ とすれば
4
(5)
ṙ = φ̇r′ =
h ′
r
r2
なので
1−
2m Λr2
h2
h2 (
2m Λr2 )
−
= c2 l2 − 4 r′2 − 2 1 −
−
r
3
r
r
r
3
r = 1/u, r′ = −u′ /u2 として
1 − 2mu −
(
Λ
Λ )
2 2
2 ′2
2 2
=
c
l
−
h
u
−
h
u
1
−
2mu
−
3u2
3u2
u′2 =
1
c2 l2 − 1 2mu
Λ
+ 2 − u2 + 2mu3 + (1 + 2 2 )
h2
h
3
h u
この式を見れば u2 と Λ が絡んでいることが分かるので、微分方程式から消えずに残って、影響を与えることにな
ります。
光の軌道だとすると ds2 = 0 なので
c2 l 2 −
h2 ′2 h2
2m Λr2
r − 2 (1 −
−
)=0
4
r
r
r
3
c2 l2 − h2 u′2 − h2 u2 (1 − 2mu −
Λ
)=0
3u2
c2 l2 − h2 u′2 − h2 u2 (1 − 2mu) +
h2 Λ
=0
3
u′2 =
c2 l2
Λ
− u2 (1 − 2mu) +
2
h
3
これを解くときにもう一度 φ で微分するので、φ 依存性のない Λ 項は消えます。なので、光の曲がりには宇宙
定数が影響しないと考えられています。ただし、これにはひと悶着があるようです。「The Contribution of the
Cosmological Constant to the Relativistic Bending of Light Revisited」(arXiv:0709.2948v1) では、Kotter 計量
での光の曲がり角度に宇宙定数が入ってくることを指摘しています。これに関連して、宇宙定数がどのように効
いてくるのかを計算している他の論文もいくつか出ています。また、宇宙定数の影響は衝突パラメータ (c2 l2 /h2
部分) に取り込んでしまえると指摘した「Effect of the cosmological constant on the bending of light and the
cosmological lens equation」(arXiv:1110.6735v1) もあります。
5
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