次世代管理会計
フレームワークの論点
丸田起大(九州大学)
[email protected]
堀井悟志(立命館大学)
[email protected]
平成20年5月17日(土)
第7回京都管理会計研究会
1
本報告の背景
科研費プロジェクト「次世代管理会計のフレーム
ワーク及びそのグローバル適用の理論的研究」
(研究代表者:上總康行,2005~2007年)
その3年間の活動の総括として,フレームワークの
構築を試みる。
2
問題意識

現在,そしてこれからの管理会計の姿をどのよう
なものとして,捉えられるのがいいのか?

現在ある,そして今後でてくる管理会計を適切に
分析するためにはどのような切り口が必要か?
3
報告の構成

フレームワーク論
フレームワーク論の意義・目的
先行研究:フレームワーク

管理会計の定義

次世代管理会計フレームワークへの道筋(各論)
4
フレームワークの意義・目的

浅羽 (1991)
フレームワーク:機能とそれを具体化する技法を位置
づけるための構造編成
技法:環境を受け,管理会計の目的・目標を介して存
在する。
目的・目標の変化→構造の再編成
→管理会計に対するニーズすなわちその目的がいか
に生成し,どのように存在しているかが重要。
5
澤邉
(2007年度第1回科研費打ち合わせ,2007年10月)

フレームワーク:
「管理会計とは何であるか」を述べるためのもの
6
フレームワーク
→そのときある管理会計の姿(役割?機能?特徴?)
を的確に捉えるための切り口(?)
7
フレームワーク論:主な先行研究

Geotz (1949) :
計画設定
統制

Anthony (1965) :
戦略的計画設定
マネジメント・コントロール
オペレーショナル・コントロール
8
個別計画会計 → 意思決定会計
計画会計
期間計画会計
→ 業績管理会計
統制会計
9

Anthonyによる計画設定/統制フレームワーク
に対する批判
「計画設定と統制は定義しうる抽象概念であり,異
なるタイプの精神的活動を要求するものである
ことは容易に理解されうるが,それは,組織の中
で実際に行われる組織活動を識別できる主要な
カテゴリーとは結びつかない」(Anthony [1965]:
10-11)
10
Anthonyのフレームワーク

Anthony (1965)
戦略的計画設定
(統制と直接結びつかない計画設定)
マネジメント・コントロール
(統制と直接リンクする計画設定)
オペレーショナル・コントロール
※Anthonyのフレームワークは管理会計のフレー
ムワークか?
11
Anthonyのフレームワークに基づい
た管理会計フレームワーク

戦略的計画設定のための会計
PPM,投資経済計算,原価企画…

マネジメント・コントロールのための会計
短期利益計画,予算管理,分権組織の管理会計…

オペレーショナル・コントロールのための会計
標準原価計算,
※Anthonyは長期計画の位置づけについては触れず。
結果として,戦略的計画設定のための会計は意思決
定会計とほぼ同じに。
12

Anthony (1988)
長期計画・投資決定をプログラミングと称し,マネ
ジメント・コントロールに位置づける。
統制との関係で領域を規定するのではなく,
定型性,定期性で区分。
13
Anthonyのフレームワークに対する
批判
戦略とマネジメント・コントロール,オペレーショナル・コン
トロールを区分している。戦略の存在をマネジメント・コ
ントロールにとって所与のものとしている。
→現実には,(ルーティンのなかで,)マネジメント・コント
ロールにおいて戦略が創発されることも。戦略とマネ
ジメント・コントロールは不可分である。
(Emmanuel,Otley and Merchant [1990]とか)
参考:Chapman, C. ed. (2005) Controlling Strategy
(澤邉・堀井監訳『戦略をコントロールする―管理会計
の可能性』(仮)中央経済社,近刊)
14

マネジメント・コントロールの展開
→管理会計のフレームワークとしてのマネジメント・
コントロールと経営管理のフレームワークとしての
マネジメント・コントロールの関係をどう考えるか。
マネジメント・コントロール概念が変容した場合,
管理会計のフレームワークとしてのマネジメント・
コントロールも自動的に変化するのか?
15

ポイントは,変容したなかで,管理会計の姿(機
能)が事実として変容しているのか否か。
例えば,戦略の創発,イノベーションをAnthonyの
フレームワークで捉えることはできないのか?
もし,捉えた場合,歪んだ捉え方になるのか?
16
ちなみに
戦略の種類
・意図された戦略,創発戦略,実現した戦略
アプローチ
・戦略内容アプローチ,戦略プロセスアプローチ
17
Davila, T. (2005) in Chapman ed., Controlling Strategy, 3chap.
18
Davila, T. (2005) in Chapman ed., Controlling Strategy, 3chap.
19
Anthonyのフレームワークからの展開
AnthonyのMCSとその組織観
→戦略の確実な実施(不確実性の低減…)
リモート・コントロール
機械的組織(分断,分業,多様性の縮減,標準
化,効率性)

その目的を達成するための技法として
短期利益計画,予算管理,責任会計…。
20
組織の在り方の変化
→有機的組織(連携,協働,学習,創造性)

※組織間の調整方法の変化
これらの目的のための管理会計とは?
実際,どのように管理会計は存在しているのか?
それは,従来のフレームワークにおける在り方とは
異なるのか?
21
先行研究:
次世代管理会計フレームワーク
Simons (1995):Anthonyから少し拡張
4つのコントロール・レバー
信条のシステム
境界のシステム
診断型システム:戦略の実施
双方向型(相互作用型)システム:戦略の創発(漸
進的イノベーション(誘導された戦略行動),戦略
的イノベーション)
※双方向型システム:垂直的相互作用

22

診断型コントロールと双方向型コントロール
例えば,BSCはどちらのコントロールのスタイルで
も利用可能と言われている。(BSCで想定した因
果関係(目的-手段関係)の検証を通じた学習,
BSCで表現された戦略的不確実性への注目…)
このBSCの双方向型コントロールでの利用は
Anthonyのフレームワークでただ単にスタイルが
違うだけという表現で済むのか?(実際にそのよ
うに扱われている)
23
マネジメント・コントロールは計画と統制が
直接関係していることで規定されている。(1965年
の段階のものから管理会計のフレームワークと
した場合)
→BSCはその構造から直接的に戦略の妥当性を
問う。そう考えると,これまでのマネジメント・コン
トロールの範囲を超えている?

※統制→ルーティンに対する修正行動
(次期の計画との違いを考慮)
24

Anthonyのフレームワークでは,MCSの
目的は「戦略の実施」となり,その中でMCの
ための管理会計は位置づけられる。
→例えば,予算管理やBSCをそこに位置づけると
戦略実施のための技法として位置づけられる。
もし,それらの技法が戦略の創発を目的とし,学
習を促進するために利用されても,Anthonyのフ
レームワークではそれは描けないと考えられる。
※原価企画,改善はどのように位置づけられるか
?
25
Anthonyのフレームワークでは,戦略的計画設
定,MCが分断され,各領域の目的が明確に決
められるがために,柔軟性が欠ける。
 その結果として,技法がある一つの目的と結びつ
けられることに。
↓
 技法は一つの目的に対してしか機能しないのか?
※ 上述のBSCの例(診断型と双方向型)。
Hansen & Mouritsen (2005) in Chapman ed.,
Controlling Strategy, 7 chap.
(組織的問題の解決のためのBSCの導入)

26

上總・澤邉(2006)「次世代管理会計のフレーム
ワーク」
研究対象の変化
生産者指向から顧客志向へ
グローバル展開とネットワーク化
ハード重視からソフト重視
統制プロセスから計画設定プロセスへの重点移動
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研究目的の変化
説明理論の重視傾向(経済学的アプローチと
社会学的アプローチ)
規範理論研究への期待
財務会計と管理会計の統合・一体化
研究方法の変化
規範的研究の形式科学化と記述的研究の多様化
※規範的研究:数理的研究,ハーバード的研究
記述的研究:定性的研究,実証的研究
臨床的研究の再定義
28
次世代管理会計のフレームワーク
日本企業に基礎を置いた管理会計研究
プラットフォームとしての会計学
管理会計研究の国際競争参加
※本報告でいうフレームワークとしての有用性は
…。
29


管理会計はシステム,技法か,情報か?
技法それ自体に目的が埋め込まれているものな
のか?
30
<管理会計技法に対する多様な側面>
 1つの技法が様々な目的に応じて,使われる。
(形式的構造が同じでも,実質的機能が異なる)
 対象とする期間・範囲が異なる。
 目的の多様性に応じて,利用する人も多様。
これらをどのような形でまとめ上げるか…。
31
次世代管理会計フレームワーク
構築のための手順
1.一からすべてを構築するのではなく,現に管理
会計がどのようなものであると考えられているの
か,つまり管理会計の定義からフレームワーク
構築のための論点を探る。
2.その中で,従来のフレームワークでは逸脱する
点を取り上げ,具体的に検討する。
3.まとめ
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管理会計の定義
欧米の主要テキストの定義に現世代の「印し」
と次世代の「兆し」をみる
Horngren[1999] : Management accounting
measures and reports financial as well as other
types of information that are primarily intended to
assist managers in fulfilling the goals of
organization.
33
管理会計の定義
Drury[1996] : Management Accounting is
concerned with the provision of information to
people within organization to help them make
better decisions.
次世代の管理会計を捉えていくうえで,定義をどの
ように書き換えるべきか?
34
論点:次世代においても管理会計情
報は「財務的」であるか?
管理会計の守備範囲の拡大:
財務情報から非財務情報へ
定量情報から定性情報へ
管理会計における非財務情報?
or マネジメント・コントロールにおける財務情報?
管理会計の危機(ブッカン[2000])?
or 管理会計の競争優位(Kaplan[2006])?
35
Nixon and Burns[2005]
:技術的コントロール(診断型・相互作用型)と
社会的コントロール(信条・境界システム)
社会的
コントロール
+
社会的コントロールが
技術的コントロールを補う
最適な状態
+
技術的
コントロール
-
社会的コントロールが
技術的コントロールを
出し抜いたり誤用する
機能不全の状態
-
36
論点:次世代においても管理会計情報は
「管理者」へ「提供」されるものである
か?
Cooper[2007]:
interactive(階層的/垂直的相互作用)
⇒dialogical(水平的/対等的対話)
管理会計の自主的小集団活動化(MAサークル)
:原価改善提案制度の自主的運営
必要な人が必要なときに必要な情報を自ら作成・活用する
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論点:次世代においても管理会計情
報は組織「内部」のものか?
ネットワークやアライアンスにおける組織間の情報共有
:オープン・ブック・アカウンティング
管理会計の公共性(澤邉[2006])と地域貢献・・・BSC
管理会計の秘匿性
:改善提案成果・・・掲示したいもの/したくないもの
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論点:次世代において管理会計が促
す「より良い」意思決定とは何か?
企業価値,付加価値,CF,CSR(環境,顧
客,雇用,倫理)…
⇒アウトカムの多面性
管理可能性原則と互酬性原則
⇒リスク・シェアリング文化の醸成
ソーシャル・キャピタルの形成
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論点:次世代においても管理会計は
組織「目標」を「実現する」ための
ものか?
ダブルループ化(とフィードフォワード化)の必要性
ガバナンス・メカニズムにおけるサブシステム化
:IFACの「エンタープライズ・ガバナンス」モデルの可
能性(Scapens[2005])
パフォーマンス(価値創造/資源活用)の忠実な表現
:無形資産評価/リスク評価/公正価値評価
40
IFACのエンタープライズ・ガバナンス・モデル
41
42
おわりに
次世代の管理会計フレームワークの構想に向けて
管理会計の次世代的定義(暫定案)
:様々なステークホルダーの意思決定に有用な
財務的・非財務的な組織パフォーマンスの忠実
な表現の手段?
次世代ASOBATは必要か?
43
参考文献
Anthony,R.N. [1965] Planning and Control Systems: A Framework
for Analysis. Boston: Division of Research, Graduate School of
Business Administration, Harvard University.(高橋吉之助訳
[1968]『経営管理システムの基礎』ダイヤモンド社).
――― [1988] Management Control Function. Boston.
Massachusetts. The Harvard Business School Press.
Chapman, C. ed. [2005] Controlling Strategy, Oxford.
Cooper,D.[2007] An Integrated Analysis of The Balanced
Scorecard : Towards A Dialogic Strategic Performance
Measurement System, mimeo.
Drury,C.[1996] Management and Cost Accounting, Thomson.
Emmanuel,C., D.Otley and K.Merchant [1990] Accounting for
44
Management Control. London. Chapman and Hall.
参考文献
Goetz,B.E. [1949] Management Planning and Control: A
Managerial Approach to Industrial Accounting. New York.
McGraw-Hill.(今井忍・矢野宏訳 [1963]『経営計画と統制』
日刊工業新聞社).
Horngren,C.T.,Bhimani,A.,Foster,G.and Datar,S.M.[1999]
Management and Cost Accounting, Prentice-Hall Europe.
International Federation of Accountants [2004] Enterprise
Governance : Getting the Balance Right, http://www.ifac.org/.
Kaplan,R.S.[2006] The Competitive Advantage of Management
Accounting, Journal of Management Accounting Research,
Vol.18.
Nixon,W.A.J.and Burns,J.[2005] Management Control in the 21st
45
Century, Management Accounting Research, Vol.16.
参考文献
Scapens,R.W.[2002] Traditions of Research in Management
Accounting, in Ryan,B.,Scapens,R.W.and Theobald,M.,
Research Method and Methodology in Finance and Accounting,
2nd ed., Thomson.
Scapens,R.W.[2005] Changing Times : Management Accounting
Research and Practice from a UK Perspective, in
Bhimani,A.ed.,Contemporary Issues in Management
Accounting, Oxford University Press.
Simons, R. [1995] Levers of Control, Harvard Business School
Press.
46
参考文献
浅羽二郎 [1991]『管理会計論の基調』文眞堂.
上總康行・澤邉紀生[2006]「次世代管理会計のフレームワ
ーク」上總・澤邉編著『次世代管理会計の構想』中央経
済社。
澤邉紀生[2006]「管理会計と公共性―外部報告と管理会計
技法―」『会計』第169巻第2号。
ブッカン,H.著,大下丈平・丸田起大訳[2000] 『ブッカン
フランス管理会計』同文舘。
47
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