数理・情報一般「数学の現在・過去・未来」
• 4月19日
– 数理・情報一般「数学の現在・過去・未来」について。次のページを参照。
http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/users/surijoho/
– 「2次元球面と3次元球面」について
目標は次のこと。“ポアンカレ予想に現れる3次元球面はどのような空間
かを2次元の球面との比較を通じて理解する。”
– 2次元球面について
「地図と曲率」
「平面の1点コンパクト化、ステレオグラフ射影」
• 4月26日
– 3次元球面
「2次元複素ベクトル空間と3次元球面」
「ホップ・ファイブレーション」
「ポアンカレ予想の主張、幾何化予想、ペレルマンの方法」
2次元球面と3次元球面
2002年、2003年にペレルマンがポアンカレ予想の解決をアナウンスし、
2006年までにほぼその証明の正しさが検証された。2010年3月18日、ク
レイ数学研究所は、ペレルマンにミレニアム賞の授与を発表した。
The Clay Mathematics Institute hereby awards the Millennium Prize for resolution of the Poincare conjecture to Grigoriy Perelman.
http://www.claymath.org/poincare/millenniumPrizeFull.pdf
ポアンカレ予想は、約100年前ポアンカレが述べた、
「3次元単連結閉多様体は
3次元球面に同相であろう」という予想である。
3次元の空間の原点からの距離が R であるような点の全体を(原点を中心とする)
半径 R の(2次元)球面とよぶ。
x2 + y 2 + z 2 = R 2
という等式を満たす点 (x, y, z) の全体である。{(x, y, z) ∈ R3 x2 + y 2 + z 2 = R2 }
と書く。3次元空間内の球面は、中心の座標と半径で定まるが互いに 相似 である。
球面の形は、「一通りに定まっている」と考えられる。
地図を作る
狭い場所、大学の構内の地図は、平面上に書かれる。数学的には、相似比(縮尺)
1万分の1で1000メートルは10cmになる。少し広い範囲、例えば東京都の
地図を平面上に相似に書くことは出来ない。地球が丸いからである。
a
180a
π ラジアンあるいは
a km の長さは、中心角
度に対応し、地球の半
20000
20000
20000
20000
1 a
π)}
km 中央が両端よりも高くなる。
だから、{1 − cos(
径は
π
2 20000
π
20000
1 a
π)}
2 20000
π
1 1 a
1 1 a
20000
2
π) + (
π)4 − · · · )}
= {1 − (1 − (
2 2 20000
4! 2 20000
π
1 1 a
2 20000
(
π)
−···
=
2 2π 20000
π
a2 + · · · = (0.0000196 · · · )a2 + · · ·
=
160000
その高さは、a = 1 (km) ならば、約 2 cm, a = 10 (km) ならば、約 2 m, a =
{1 − cos(
100 (km) ならば、約 200 m である。1万分の1の地図ならば、0.002mm, 0.2 mm,
2 cm 浮き上がっている。日本の地図となると、相似に描いたものは使いにくい。
球面の形のままにするからこうなるので、少し紙をねじったりすれば、何とかな
るかもしれないと考えてみるべきであるが、それもできない。ただし、どうやって
も出来ないことを証明するには少し「数学の考え方」が必要である。
1.まず、「地図が描けるとは何か」を定義する。
2.そのときに成り立つべき性質を示す。
3.その性質が成り立たないことを示す。
そのために、
「1−1.地図の描ける対象を定める。」これは、各点の近くへの平
面の円板 {(x, y) ∈ R2 x2 + y 2 < 1} からの全単射があるもの、すなわち、局所
的に座標がとれるものとする。そういうものを曲面、あるいは2次元多様体とよぶ。
「1−2.座標を取ったときに、2点間の距離が定まる。」
実際には、
「接線を持つ曲線」の長さが定まり、2点の距離は、2点を結ぶ曲線の
長さの最小値として定まっている。
曲線 c は、座標で (x(t), y(t)) と書かれる。(x(t), y(t)) が 平面上の 曲線ならば、
b
x (t)2 + y (t)2 dt が {(x(t), y(t)) t ∈ [a, b]} の長さ。一般には、
a
a
b
E(x(t), y(t))x(t)2 + 2F (x(t), y(t))x(t)y (t) + G(x(t), y(t))y (t)2 dt
の形に表される。この (u, v) −→ E(x, y)u2 + 2F (x, y)uv + G(x, y)v 2 が曲面上の
局所的な距離を定めている(第1基本形式、あるいはリーマン計量と呼ぶ)。ここ
に座標 (x, y) で定まる関数 E(x, y), F (x, y), G(x, y) が現れているが、平面の時は、
E(x, y),G(x, y) は恒等的に 1, F (x, y) は恒等的に 0 である。一般の曲面について
は、座標により変化する関数を係数とする u, v の2次式が u2 + v 2 のかわりに現れ
るということである。
十分近い2点に対し、2点を結ぶ曲線のなかで、その長さが最小となるものが存
在し、測地線 と呼ばれる。測地線は、
「測地線の2階常微分方程式」を満たす曲線
となる。測地線は、平面の場合は 直線、球面の場合は 大円 となる。
距離が定まるから、曲面上の1点を決めて、その点を中心とする半径が r の円が、
その点から距離が r の点の全体として定義される。これは長さを持つ曲線となる。
半径 r の円の周の長さを (r) とする。
平面に対しては、(r) = 2πr, 半径 R の球面に対しては、(r) = 2πR sin
ある。
r
で
R
2πr − (r)
3!
lim
2π r→0
r3
を考えると、平面に対しては、K = 0, 単位球面に対しては、
K=
K=
=
r
2πr − 2πR sin
3!
R
lim
2π r→0
r3
1 r3
r
1 r5
−
2πr
−
2πR(
+
− ···)
3!
1
3
5
R
3!
R
5!
R
lim
= 2
3
2π r→0
r
R
となる。K は、リーマン計量、つまり、曲線の長さの計算に現れる E(x, y), F (x, y),
G(x, y) を与えれば、各点で定まる値であり、ガウス曲率 と呼ばれる。
(平面内の1次元の曲線の曲率は、各点において曲線をよく近似する円周の半径
(曲率半径)の逆数である。空間内の曲面のガウス曲率は曲面の曲がり方が極大極小
1
となる2つの方向についての曲率の積であり、球面の場合に 2 となる。ガウスは
R
このように定義した曲率が、曲面上の曲線の長さにしか依存しないことを証明し、
これを驚異の定理と呼んだ。)
もしも、平面に正確な地図を書くことが出来れば、その地図の上で、測地線は直
線であり、距離は、平面上の距離の(縮尺による)定数倍であるから、ガウス曲率
は 0 でなければならない。一方、球面のガウス曲率は、 1 であるから、球面の地図
を平面上に相似に描くことはできない。
球面は平面の1点コンパクト化
球面と平面は、異なる形をしている。従って、地球の表面全体の地図を平面に描
くことは出来ない。その理由は何であろうか。
2つの図形 X, Y が、同じ形であること、あるいは、異なる形をしていることに
は、定義 が必要。
X, Y が同相であることを次のように定義する。すなわち、連続写像 f : X −→ Y ,
g : Y −→ X で、g ◦ f : X −→ X が X の恒等写像、f ◦ g : Y −→ Y が Y の恒等写
像になるものが存在するとき、X, Y は同相であるという。
同相であることを示すためには、このような連続写像(同相写像と呼ぶ)f ある
いは g を構成する必要がある。
同相ではないことを示すためには、背理法をつかう。すなわち、同相写像が存在
すると仮定して、矛盾を導く。
球面と平面は、異なる形をしていることは、次のようにしてわかる。
球面は3次元空間の有界閉集合であり、球面上の実数値連続関数には、最大値、
最小値が存在することを用いる。
球面から平面への同相写像 f が存在したとする。平面上の点の原点からの距離 d
は、平面上の連続関数である。この関数は、最大値を持たない。d ◦ f は、球面上の
連続関数となり、球面上の実数値連続関数には、最大値が存在することに矛盾する。
ところが、球面から北極を除いた図形は平面と同相である。
これはステレオグラフ射影によって与えられる。
DIMENSIONS のビデオで説明している。
http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/users/dim_jp
からのリンクを参照。ビデオの第1章、第2章参照。
ステレオグラフ射影を式で書くには、(0, 0, 1), (x, y, z), (u, v, 0) が直線上にあると
いう式を書けばよい。すなわち、ある実数 t に対し、(x, y, z − 1) = t(u, v, −1) と書
いて、(u, v) を (x, y, z) で表す、あるいは、(x, y, z) を (u, v) で表せばよい。t = 1 − z
x
y
y
x
,v= =
. つまり、
だから、u = =
t
1−z
t
1−z
⎛ x ⎞
u
z
= ⎝1 −
y ⎠
v
1−z
また、x2 + y 2 + z 2 = 1 だから、(tu)2 + (tv)2 + (1 − t)2 = 1 であり、t2 u2 + t2 v 2 +
2
2u
であり、x = tu =
,
t2 − 2t = 0 を得る。従って、t =
2
2
1+u +v
1 + u2 + v 2
2v
1 − u2 + v 2
y = tv =
,
z
=
1
−
t
=
. つまり、
1 + u2 + v 2
1 + u2 + v 2
⎞
⎛
2u
⎛ ⎞
x
⎜ 1 + u2 + v 2 ⎟
⎟
2u
⎜ ⎟ ⎜
⎟
⎝y ⎠ = ⎜
⎜ 1 + u2 + v 2 ⎟
⎠
⎝
1 − u2 − v 2
z
1 + u2 + v 2
⎛ ⎞
⎛ ⎞
x
x
u
u
⎜ ⎟
⎜ ⎟
この ⎝y ⎠ を
に写す写像、
を ⎝y ⎠ に写す写像がともに連続だから、
v
v
z
z
球面から北極 (0, 0, 1) を除いた図形は平面と同相である。
このステレオグラフ射影の様子はビデオで見るとおりである。
このステレオグラフ射影は、角度を保存し、球面上の円周を、平面上の円周また
は直線に写す。
これは、ビデオの第9章に説明されているが、ここでは、円または球面について
の反転という写像の性質を用いて説明する。
円についての反転
まず、平面の円についての反転は次のような平面から円の中心を除いた図形から
それ自身への写像である。
中心 O 、半径 R の円に対して、この円についての反転とは、O とは異なる点 P
に対し、半直線 OP 上の点 P で、OP · OP = R2 となる点を対応させる写像であ
る。これは、円周上の点は動かさず、円の内部の中心 O と異なる点と、円の外部の
点を対応させており、2度繰り返すと恒等写像となる。
円についての反転が、円を円に写す(中心を通る円周は直線に、直線は中心を通
る円周に写す)ことを示そう。
点 Q を中心とする別の円 c を描き、O から c に交わる半直線を描き、A, B で交わ
るとする。反転した点を A , B とする。OA : OB = OB : OA である。c 上の点 D
に対し、半直線 OD は c と E で交わるとする。OB : OE = OD : OA = OA : OD
OA
OB =
だから、D は c を O を中心として
倍の相似変換をして得られる円周
OA
OB
上にある。
中心を通る円周は直線に、直線は中心を通る円周に写すことも確かめられる。c が
O を通るとする。半直線 OQ が、c と再び A で交わるとし、反転した点を A とす
る。OA は c の直径である。c 上の点 D に対し、OA : OD = OD : OA である。
従って ∠OA D = ∠ODA は直角である。従って c 上の点を反転した点は、A で半
直線 OA に直角に交わる直線上にある。
直線に対しては、それに垂線をおろしてその点を B とし、その点を反転した点を
B とすれば、直線上の点を反転した点は、OB を直径とする円周上にある。
球面についての反転
3次元空間の球面についての反転は次のような空間から球面の中心を除いた図形
からそれ自身への写像である。
中心 O 、半径 R の球面に対して、この球面についての反転とは、O とは異なる点
P に対し、半直線 OP 上の点 P で、OP · OP = R2 となる点を対応させる写像で
ある。これは、円周上の点は動かさず、円の内部の中心 O と異なる点と、円の外部
の点を対応させており、2度繰り返すと恒等写像となる。
球面についての反転が、球面を球面に写す(中心を通る球面は平面に、平面は中
心を通る球面に写す)ことが、円についての反転の性質からすぐにわかる。
実際、円についての反転の説明の状況を、直線 OQ の周りに回転してみればよい
のである。
さらに、球面についての反転が、円を円に写すことがわかる。円は2つの球面の
交線としてあらわされ、2つの球面は球面に写されるのだから、交線は円は2つの
球面の交線である円に写される。
反転は、n 次元ユークリッド空間の n − 1 次元球面に対して同様に定義され、球面
または平面を球面または平面に、円または直線を円または直線にうつす写像となる。
最後に、ステレオグラフ射影は、北極を中心とする球面についての反転である。
従って、球面上の円を平面上の円または直線に写す。
2次元複素ベクトル空間と3次元球面
半径 R の3次元球面は、4次元ユークリッド空間の原点からの距離が R である
ような点の全体として定義される。すなわち、
x 2 + y 2 + u2 + v 2 = R 2
という等式を満たす点 (x, y, u, v) の全体である。
{(x, y, u, v) ∈ R4 x2 + y 2 + u2 + v 2 = R2 } と書く。
複素数 z = x+yi, w = u+vi を用いると、x2 +y 2 +u2 +v 2 = R2 は、zz +ww = R2
と書かれる。{(z, w) ∈ C2 zz + ww = R2 } と書く。C2 は、2次元複素ベクトル
空間である。
絶対値が 1 の複素数は eiθ = cos θ + i sin θ と書かれる。
複素数は、絶対値 r と偏角 θ で、あらわすこともできる。ずなわち、z = x + yi
√
に対し、|z| = x2 + y 2 = zz とおき、実軸となす角度を θ ラジアンとすると、
z = x + yi = r(cos θ + i sin θ) = reiθ と書かれる。
複素数の掛け算は、z = x + yi, w = u + vi に対し、zw = (xu − yv) + (xv + yu)i
で定義されるが、絶対値と偏角については、 z = x + yi = r(cos θ + i sin θ) = reiθ ,
w = u + vi = (cos ϕ + i sin ϕ) = eiϕ , に対し、
r(cos θ + i sin θ)(cos ϕ + i sin ϕ)
= r(cos θ cos ϕ − sin θ sin ϕ) + i(cos θ sin ϕ + sin θ cos ϕ)
= r(cos θ cos ϕ − sin θ sin ϕ) + i(cos θ sin ϕ + sin θ cos ϕ)
= r ei(θ+ϕ)
積の絶対値は絶対値の積であり、積の偏角は、偏角の和となることがわかる。
複素数 w に絶対値 1 の複素数 eiθ を掛けることは、偏角に θ が加えることである
から、複素数平面の原点を中心とする角度 θ だけの回転である。
2次元複素ベクトル空間 C2 の点 (z, w) と複素数 α に対し、α(z, w) = (αz, αw)
でスカラー倍が定義される。α の絶対値が 1 で、α = eiψ のとき、eiψ 倍すること
は、各成分を ψ だけ回転することである。
3次元球面については、(z, w) ∈ C2 が、3次元球面上の点ならば、eiψ (z, w) =
(eiψ z, eiψ w) も3次元球面上の点である。実際、zz + ww = R2 ならば、
eiψ zeiψ z + eiψ weiψ w = eiψ ze−iψ z + eiψ we−iψ w = zz + ww = R2
である。これは、実4次元空間や3次元球面には、各点を動かすような回転がある
ことを意味している。3次元空間や2次元球面の回転には軸が存在することと対照
z
的である。この回転の軌道は円周であるが、3次元球面の大円である。実際、 が
w
一定であるような、実2次元平面(複素直線)と3次元球面の交わりである。
ホップ・ファイブレーション
3次元球面から2次元球面への写像を次のように定義できることがわかる。
z
(z, w) ∈ {(z, w) zz + ww = 1} に対し、w = 0 ならば、 をステレオグラフ射
w
影で2次元球面に写した点に写し、w = 0 ならば、北極に写す。
これが、ホップ・ファイブレーションと呼ばれる写像である。
つまり、ホップ・ファイブレーションは
⎛
⎞
2u
1 z
z
⎜ 1 + u2 + v 2 ⎟
⎜
⎟
2u
z
u
⎜ 2(w + w) ⎟
⎟
−→ ⎝ 1 z
−→ ⎜
⎠=
2
2
⎜
⎟
z
1
+
u
+
v
w
v
⎝
( − )
2
2⎠
1−u −v
2i w w
1 + u2 + v 2
⎛
⎞
のように書かれる写像である。w = 0 に対して、微分可能な写像であるが、w = 0
の近傍でも微分可能な写像であることが確かめられる。
このホップ・ファイブレーションの1点 (x, y, z) の逆像は、{(z, w) ∈ C2 zz+ww =
z
R2 } の点で、ある複素数 β に対し = β を満たす点である。すなわち、z = βw で、
w
R2
R
(ββ + 1)ww = R2 をみたすから、ww =
、すなわち、w = eiψ . こ
ββ + 1
ββ + 1
のような (z, w) は、
⎛
⎞
⎞
⎛
R
R
βeiψ
β
⎜ ββ + 1
⎟
⎟
⎜
z
⎟ = eiψ ⎜ ββ + 1 ⎟
=⎜
⎝
⎠
⎠
⎝
R
R
w
eiψ
ββ + 1
ββ + 1
これは、上で考えた回転の軌道である。
このホップ・ファイブレーションの様子は、ビデオの第7章、第8章でみること
ができる。
ホップ・ファイブレーションに対して南半球の逆像、北半球の逆像はともにソリッ
ドトーラスという図形、ドーナツ型である。つまり、3次元球面は、2つのソリッ
ドトーラスを境界で張り合わせた形になっている。
曲率
3次元球面は、2次元球面のように、正の曲率を持つ空間である。2次元多様体
における曲率は、各点の周りに円周を描きその周の長さが平面の円周より短くなる
場合正であり、平面の円周よりも長くなる場合負であるというように定めている。
3次元多様体の場合には、各点において2次元接平面を定めるとその方向に対して、
同じように曲率を考えることができる。これを断面曲率と呼ぶ。半径が R の3次元
1
球面は、あらゆる点のあらゆる2次元接平面に対しての曲率が正で一定 2 である。
R
曲率には、断面曲率以外にそれと同値な情報を持つリーマンの曲率テンソルがあ
る。リーマンの曲率テンソルを、平均してリッチ曲率という量が定義される。これ
は、リーマン計量と同じ形のテンソル(反変対称テンソル)となる。3次元多様体
に対しては各点で座標を取れば、曲線の長さを計算するためのリーマン計量は3行
3列の対称行列 (gij ) で表される。リーマン計量を偏微分した式でリッチ曲率 (Rij )
が書かれる。このリッチ曲率の値を用いて、リーマン計量を変化させ、空間の形を
変形する偏微分方程式の解をリッチ・フローと呼ぶ。リッチ・フローの方程式は
∂gij
= −2Rij
∂t
と書かれる。リッチ・フローの存在、その解析は、20世紀の解析学を総動員して
行われる。ペレルマン氏は、さらにリッチ・フローの解の特異点を解析して、サー
ストンの幾何化予想を示し、その特別な場合として、ポアンカレ予想を肯定的に解
決した。
サーストンの幾何化予想とは、どんな3次元多様体も有限個の球面とトーラスで
分割するとそれぞれのピースが8つの幾何学のひとつをもつ完備な空間から有限個
の点を除いたものに同相になるというものである。
この8つの幾何学の定義自体は、それほど難しくない。それだけならば、次のよ
うなページでも参考になる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Geometrization_conjecture
******
この講義では、時間の関係で丁寧に説明できなかったことが多いので、質問のあ
るひとは、tsuboi @ ms.u-tokyo.ac.jp にメールしてください。研究室は数理科学研
究科棟の 415 号室です。不在のことのほうが多いので、来るときは事前にメールで
確認してください。
ダウンロード

2次元球面と3次元球面 - 東京大学大学院数理科学研究科