12 磁気力で強制的に誘起させた塩水振動子
<解 説>
塩水振動子(saltwater oscillator)とは、小さなオリフィス間で接する密度の異なる 2 液が周期的に
溶液交換する際に見られる非線形現象である。一般的な塩水振動子は密度の大きな液体が密度の
小さい溶液の上に配置された構造になっている。2 液のヘッド差、即ち重力が駆動力である。
本研究では、密度の大きな塩水の上に密度の小さな塩化ガドリニウム水溶液を載せ、両液を直
径 0.8mm、長さ 1mm のオリフィスで接触させた。この状態は安定であるため溶液交換は起こらず、
塩水振動は見られない。
この状態に鉛直下向きの磁気力を印加した。塩化ガドリニウム水溶液は常磁性であるため下向
きに引かれ、オリフィスを通して塩水側に入る。磁気力の大きさを調整することで、強制的に塩
水振動子を誘起させることができた。
本実験では、塩化ガドリニウム水溶液の密度を 1.03×103 kg/m3 で一定とし、塩水密度を(A)
1.15×103 kg/m3, (B) 1.12×103 kg/m3, (C) 1.09×103 kg/m3, (D) 1.06×103 kg/m3 の 4 通りに変えて実験を
行った。また磁束密度の大きさを 0~4T まで変化させた。実験の結果、流れの様子や振動周期に
ついて興味深い知見が得られた。
<塩水と塩化ガドリニウム水溶液の密度差の小さい場合(case C, D)>
2.53 T 以上で一般的な塩水振動が見られた。このような流れを、 alternating upward and
downward flow (AUD flow)と呼ぶことにする(動画 1)。
一方、2.53 T 以下では塩水振動は見られず、オリフィスから上昇流と下降流が同時に流出する
タイプの流れが見られた。これは塩水振動子の分野では「分岐」とも呼ばれる現象よく似ている。
ここでは simultaneous upward and downward flow (SUD flow)と呼ぶことにする。
<塩水と塩化ガドリニウム水溶液の密度差の大きい場合(case A, B)>
塩水と塩化ガドリニウム水溶液の密度差の大きく磁気力が比較的小さい場合、下図に示したよ
うに、SUD flow 上にこぶのような太くなる箇所が周期的に出現した(白矢印)。この流れは AUD
flow のような周期性と SUD flow の両特長を併せたような新しい流れであった。このような流れを
periodical locally thickened flow (PLT flow, hereafter) と呼ぶことにする(動画 2-4)。
2.60 T 以上になると、PLT flow は SUD flow に遷移した(動画 5, 6)
。
(a)
(b)
(c)
磁気力の強さを重力に換算した effective gravity という量を用いると、磁気力の強さと PLT flow
のこぶの出現周期および塩水振動子の振動周期には以下のような関係が見られた。case (D)につい
ては文献[1]を、case (A)~(C)については文献[2]を参考にして欲しい。
<実施場所>
大阪大谷大学薬学部
<論 文>
[1] S. Maki, C. Udagawa, S. Morimoto, and Y. Tanimoto,
“Induction of rhythmic flow with a vertical magnetic force”,
Journal of the Physical Society of Japan 82, pp. 033402-1-4, (2013).
[2] S. Maki, C. Udagawa, S. Morimoto, and Y. Tanimoto,
“Periodical oscillation phenomena observed in salt-water oscillator experiments under small gravity
conditions”,
Microgravity Science and Technology, 26, pp. 125-130 (2014).
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