科学研究ガイドライン
情報理工学系研究科
2011 年 3 月
2014 年 12 月改訂
この科学研究ガイドラインは、情報理工学系研究科に在籍するすべての学生が、研究を始める前、入
学(転入)時に読み理解すべきものです。情報理工学系研究科における研究は、このガイドラインに沿
って行われなければなりません。特に、学位論文の作成はこのガイドラインに従わなければなりません。
なお、全学で「科学研究行動規範リーフレット」
「研究倫理アクションプラン」がそれぞれ 2013 年 12
月、2014 年 3 月に制定されたのに伴い、内容・文言をこれらに合わせるべく 2014 年 12 月に改訂を行い
ました。
科学研究における倫理
科学研究といえども、法律・社会通念に従って遂行されなければなりません。いうまでもなく、本研究
科が対象としている情報科学技術に関する研究も、決して例外ではありません。
以下のような研究は「不適切な研究」とされ、一般に禁止されています。
 不正行為を伴う研究
 人間および社会に害をなす研究
 許可されていない人間および動物を対象とする研究
 法令に違反する研究
 利益相反する研究
以下の項では、科学研究における不正行為、許可されていない人間および動物を対象とする実験、利
益相反する研究、および、学問研究の両義性について簡単に補足します。
科学研究における不正行為
科学研究の過程で不正行為を行ってはなりません。科学研究における不正行為には、以下のようなも
のがあります。
 剽窃(文章の盗用)
 剽窃(アイデアやデータの盗用)
 捏造(存在しないデータの作成)
 改竄(データの偽造・変造)
以下では、それぞれの不正行為について詳説します。
剽窃(文章の盗用)
他人の文章をコピーして自分の文章の中で用いるときは、引用とみなされる形式で行わなければなり
ません。正当な引用を行わずに、他人の文章を自分の文章の中に含めてはなりません。
引用とみなされるためには、以下のような条件を満たさなければなりません。
 引用とわかる形式で行います。たとえば、引用符を付けたり、引用部分をインデントしたりします。
 出典を明示します。
 引用する文章には変更を加えてはいけません。これは、著作者人格権に関係しています。
 引用する必然性がなければなりません。何の理由もなく引用してはいけません。
 引用する文章と引用される文章には明確な主従関係がなければなりません。引用される文章が主と
なってはなりません。
 引用は正当な範囲内で行わなければなりません。たとえば、論文を丸ごと引用してはいけません。
なお、引用とみなされる条件は、著作権法等でより厳密に規定されています。
文章だけでなく、図版も同様に引用しなければなりません。すなわち、変更を加えずに出典を明示し
なければなりません。ただし、図版は正当な引用とみなされない可能性がありますので、出版等の公開
時に使用許諾を得ることを勧めます。
以上で述べた「他人の文章・図版」には、いうまでもなく、ウェブ上(たとえば Wikipedia)の文章・
図版も含まれています。
また、著者以外の人は「他人」です。例えば、研究室のメンバーも「他人」です。先輩や同僚の文章・
図版を用いる場合も、正当な引用を行わなければなりません。
以上で述べた剽窃(文章の盗用)は、著作権と著作者人格権で規定されています。また、このような
行為は研究者倫理に反するものです。
文章の引用例
Donald E. Knuth は以下のように書いている(Computing Surveys, Vol. 6, No. 4, December 1974, p.264):
At the IFIP Congress in 1971 I had the pleasure of meeting Dr. Eiichi Goto of Japan, who cheerfully complained
that he was always being eliminated. Here is the history of the subject, as far as I have been able to trace it.
The first programmer who systematically began to avoid all labels and go to statements was perhaps D. V.
Schorre, then of UCLA. He has written the following account of his early experiences [85]:
Since the summer of 1960, I have been writing programs in outline form, using conventions of
indentation to indicate the flow of control. I have never found it necessary to take exception to these
conventions by using go statements. I used to keep these outlines as original documentation of a
program, instead of using flow charts . . . Then I would code the program in assembly language from the
outline. Everyone liked these outlines better than the flow charts I had drawn before, which were not
very neat--my flow charts had been nick-named “balloon-o-grams”.
He reported that this method made programs easier to plan, to modify and to check out.
参考文献[85]は p.301 において以下のように定義されている:
[85] SCHORRE, D. V. “Improved organization for procedural languages,” Tech. memo TM 3086/002/00,
Systems Development Corp., Santa Monica, Calif., September 8, 1966, 8 pp.
図版の引用例
イラスト:
Figure 1. Illustration of skeletons of apes and man by B.W. Hawkins, from T.H. Huxley’s Evidence as to Man’s
Place in Nature (1863).
写真:
Figure 2. Parts of the original Babbage’s machine. Photography by Andrew Dunn (2004), reproduced here
under the Creative Commons BY-SA license.
自己剽窃
自分が過去に書いた文章を、新しい文章の中で再利用する行為は「自己剽窃」と呼ばれています。自
己剽窃も避けるべきであり、その許される場合は限定されています。
修士論文や博士論文の中に、同一の研究テーマのもとで、自分自身が過去に論文等の中で書いた文章
を含めることは、一般に許されています。
映像・音声の公開
著作権に関連して、映像・音声の公開について注意しなければなりません。
授業や実験の光景、内容を映像や音声にとったものを、講演者等の許諾なく、公開してはいけません。
これは、著作権および肖像権に反する行為です。
講演者等の許諾を得た場合でも、画面に写った人々の許諾が必要になる場合がありますので、注意し
てください。また、たまたま、画面に、他人の絵画や彫刻等が写りこんだ場合も著作権侵害を訴えられ
る可能性があります。
剽窃(アイデアやデータの盗用)
他人のアイデアやデータを参照するときは、それとわかるように書かなればなりません。自分のアイ
デアやデータのように書いてはいけません。
アイデアやデータの盗用は、著作権に反するものではありませんが、研究者倫理に反する行為です。
決して行ってはなりません。
アイデアとデータの引用例
アイデア:
 “As first observed by Alon et al. [AMS99], one can argue that…”
 “We give a proof of our main theorem, which is inspired by an argument from [AMS99].”
 “We introduce a parametrization of this phenomenon, following the work of [AMS99].”
ただし
[AMS99] N. Alon, Y. Matias and M. Szegedy. The Space Complexity of Approximating the Frequency
Moments. Journal of Computer and System Sciences 58(1), pp. 137-147, 1999.
データ:
 “A success rate of 90% has been recently reported (Olmschenk et al., Science 323, 486, 2009),…”
データの捏造と改竄
実験結果のデータを捏造もしくは改竄してはなりません。
東京大学科学研究行動規範委員会規則では、
 データその他研究結果の捏造、改ざん又は盗用
だけでなく、
 前号に掲げる行為の証拠隠滅又は立証妨害(追試又は再現を行うために不可欠な実験記録等の
資料の隠蔽、廃棄及び未整備を含む。)
も禁止しています。
その他の不適切な行為
以上に述べたような不正行為の他にも、科学者として注意すべきことがあります。
不適切な著者選択
論文の内容にほとんど寄与していない者を著者に入れたり、逆に重要な寄与をした者を著者に入れな
かったりすることは、不適切な行為です。
虚偽記載
実際には存在しない業績などを申請書、報告書等に記載してはいけません。
重複投稿
二つ以上の会議や論文誌に、同じ内容の論文を投稿すること(重複投稿)は、とくに規定のない限り、
通常は禁止されています。重複投稿に関しては、たとえば、以下の URL を参考にしてください。
http://www.ieee.org/publications_standards/publications/rights/Section_822F.html
許可されていない 人間および動物を対象とする研究
人間および動物を対象とする研究は、大学もしくは研究科のしかるべき委員会によって審査され承認
されなければなりません。
植物や微生物が関係する研究も、法令等に規程があれば、審査され承認されなければなりません。
以上のような研究を行う場合は、必ず事前に指導教員に相談してください。
利益相反する研究
企業等と共同研究を行う際には、大学と企業等の間、企業等の間で、利害が衝突しないように、大学
および研究科が定めるガイドラインに従って、研究を進めなければなりません。
共同研究を行う際には、指導教員に相談してください。
学問研究の両義性
本学歴代総長の評議会などでの発言に従い、本研究科でも、成果が非公開となる機密性の高い軍事を
目的とする研究は行わないこととしています。共同研究の過程で、意図せずにそのような研究に関わっ
てしまうおそれがありますので、注意してください。
なお、多くの研究には、軍事利用・平和利用の両義性があります。本学では、個々の研究者の良識の
もと、学問研究の両義性を深く意識しながら、個々の研究を進めることを方針としています。
研究記録・試料の保管
研究成果は、他の研究者による評価と批判を経て客観的な事実として認められます。他の研究者によ
る追試や検証を可能とするために、他者が見てもわかるように実験ノート・研究ノートを作成して研究
の記録を残し、論文等の発表後も記録やデータ、試料等を保存しておくことが必要です。
科目における不正行為
レポートや学位論文において剽窃を行うことは、学生として行ってはならない不正行為です。このよ
うな剽窃は、試験におけるカンニングと同罪であり、大学の一般的ルールおよび学生の倫理に反する行
為です。
すなわち、レポートに他人の文章(データやプログラムを含む)を不正に含めることは、試験におい
てカンニングを行うことと同様に扱われます。当然ながら、当該科目の成績は不可となります。最悪の
場合、学生懲戒委員会において審議され、退学もしくは停学になる可能性があります。
学位論文において剽窃を行うことは、研究者倫理に反するとともに、学生の倫理に反する行為でもあ
り、したがって、学生懲戒委員会において審議され、学位の取り消し、退学、停学に至る可能性があり
ます。
ネットワークの利用にあたって
大学および研究科の情報環境は、研究・教育を目的として整備されています。利用には「東京大学
情報倫理ガイドライン」を遵守しなければなりません。(http://www.cie.u-tokyo.ac.jp)
情報環境のセキュリティーレベルを下げる行為、たとえば、研究科ワイヤレスネットワークのキー
を研究科のメンバー以外に教えたり、web 等で公開するといった行為をしてはいけません。
違法なインターネット配信からのダウンロードは著作権法違反であり、禁止されています。公衆送
信権を侵害した動画の試聴も止めて下さい。情報理工学系研究科では、研究目的以外での P2P の使用
を禁止しています。東京大学は学内のネットワークで常に P2P の検出を行っています。
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