2009年10月24日 大阪市立大学
ボース凝縮原子を用いた原子光学
電気通信大学 レーザー新世代研究センター 中川賢一
内容
•
ボース・アインシュタイン凝縮
•
アトムチップ
•
原子干渉計
•
光定在波パルス中のBEC原子光学
ボーズ・アインシュタイン凝縮(Bose-Einstein Condensation)
極低温では区別がつかない同一粒子は異なる二種類の統計的性質に従う
フェルミ粒子
ボーズ粒子
EF
ボース粒子
性質
スピンが整数
光子
原子(87Rb、23Na)
複数の粒子が同じ状態を取ることが許される
ある温度以下では多数の原子が単一の量子状態に落ち込む
ボーズ・アインシュタイン凝縮
(1924)
S. N. Bose
A. Einstein
室温原子
レーザー冷却
極低温原子
波束
粒子
温度(T)
熱的ド・ブロイ波長
ldB = 2 2 mk BT
n:原子密度
300K
< 0.1nm (1Å)
rPS = n
T~3mK
200 nm
巨視的な
物質波
T < 200nK
> 1mm
< 1014 cm-3
1011 cm-3
> 1014 cm-3
< 10-13
10-6 ~ 10-3
> 2.61
位相空間密度
ldB3
ボーズ凝縮原子
BECを実現するには極低温かつ高密度が必要
レーザー冷却(laser cooling)
原子は光を吸収(放出)する際に運動量を得る(失う) 反眺効果
散乱光
反眺速度
F
v
ドップラー冷却
原子
wa
 = k / m ~ 0.6cm / s
(Rb, l=0.78mm)
レーザー周波数 wL < 原子の共鳴周波数 wa
F = - av (a>0)
レーザー光
w (< wa)
数万回光の吸収・放出を繰り返すと原子の速度はほぼゼロになる
原子の温度(速度) T = 300 K (v=300m/s) → ~ 1 mK (3cm/s)
1997年 ノーベル物理学賞
S. Chu
C. Cohen-Tannoudji
W. Phillips
磁場トラップ
レーザー冷却は極低温は得られるが光誘起衝突により高い原子密度が得られない
スピンを持つ原子は磁場ポテンシャルを用いて空間的に閉じ込めることができる
U(r) = -mm・B(r) = mBgFmFBz
U(x)
m=2
適当なスピン状態を選ぶと原子は磁場の小さいとこ
ろに集まる
hnRF
m=1
磁場トラップ内での原子衝突は少なく高い原子密度
が得られる。
hnRF
m=0
空間の一点で磁場の最少を作るためのコイルの配置例
I
I
Ioffe-Prichard 型
Clover Leaf 型
QUIC 型
x
希薄原子のボース・アインシュタイン凝縮
Rb原子のBECの実現(1995)
磁場トラップ中の蒸発冷却
電波を照射すると温度の
高い原子がスピンフリップ
してトラップから逃げる
RF
残りの原子が衝突により
熱平衡状態になると原子
全体の温度が下がる
磁場トラップ
温度 100 mK → 100 nK ~ BEC相転移温度
2001年 ノーベル物理学賞
E. Cornell
W. Ketterle
C. Wieman
今までにBECが実現されている原子種
87Rb,
Na, 7Li, H, 85Rb, 41K, Cs, 4He, 174Yb, Cr, Sr, …
一方、フェルミオン原子においてもフェルミ縮退が実現されている
40K, 6Li, 173Yb
最近では分子のボース凝縮を目指した研究が進んでいる
KRb, Cs2, LiCs,,,
現在、世界中で50以上の研究グループにおいてBECおよびフェルミ縮退
が実現され様々な研究が行なわれている
日本でも東大、京大、学習院大、電通大、NTT、東京理科大、日大におい
てBECおよびフェルミ縮退の実験が行われている。
アトムチップ
アトムチップ(Atom chip)とは?
半導体デバイスの微細加工技術を用いて基板上に微細な電極パターンを作成
基板上のマイクロ磁場(電場)ポテンシャルを用いて極低温原子およびボーズ凝縮原
子(BEC)を操作する原子(波)デバイスを実現
原子導波路
原子
~100μm
Si
Ti
Au
原子
r
50~200μm
10μm
SiO2
電流
Cu
バイ
アス
磁場
I
アトムチップ
Si 基板にフォトリソ技術を用い
て微細Au電極パターンを作成
電線
強い閉じ込め x < 100nm
極低温原子およびボーズ凝縮原子(物質波)に
対する原子導波路(atom waveguide)
アトムチップの実験装置
実験は原子・分子の衝突の影響を避けるため、超高真空チェンバー内で行う必要がある
P <10-10 Torr (大気圧の1013分の1以下)
真空ポンプ(イオンポンプ、
Tiサブリメンションポンプ)
アトムチップ
(磁場トラップ)
レーザー光
冷却Rb原子
UV
LED
ガラスセル
4cm
残留ガスとの衝突頻度 < 0.1回/s
アトムチップによるボーズ凝縮原子の生成
アトムチップ
87Rb原子
RF
2cm
レーザー光
レーザー冷却
T ~ 100 mK
ガラスセル
Glass cell
磁場トラップへ移行
原子導波路に移行
冷却原子の輸送
蒸発冷却
T = 100 mK → ~1 mK
N ~ 3 x 107
1~5秒
~1秒
全生成時間 3~10秒
1~3秒
サーマル原子
サーマル原子+BEC
BEC
1.83MHz
1.86MHz
1.78MHz
吸収像
10msTOF
Nc=15000
N=50000
光学密度
0.6
T=2μK > Tc
0.6
T =1.8μK ~ Tc
0.6
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.2
0.0
0.0
0.0
-2.0 -1.0 0
1.0 2.0
v [cm/s]
-2.0 -1.0 0
1.0 2.0
v [cm/s]
T < Tc
-2.0 -1.0 0
1.0 2.0
v [cm/s]
速度分布
自由落下するBEC原子
0.5mm
サーマル原子(非BEC)
等方的な膨張
g
3mm
BEC原子
非等方的な膨張
5.0ms
7.5ms
10.0ms 12.5ms 15.0ms 17.5ms 20.0ms
レーザー冷却Rb原子(非凝縮体)がアトムチップの導波路にロードされる様子
10mm
シリコン基板 Si substrate
ボース凝縮Rb原子が原子導波路に沿って運動する様子
1.5mm
0.75mm
0.75mm
1.5mm
アトムチップ上の原子光学素子
アレイ型ポテンシャル
ビームスプリッター
干渉計
シフトレジスタ
(コンベヤベルト)
Tübingen大学のグループ
S. Krafta et al., Eur. Phys. J. D 35, 119-123 (2005)
J. Reichel, Appl. Phys. B 75,
469 (2002)
アトムチップの応用
原子干渉計
原子回路 アトムトロニクス
電子(超伝導)デバイスの原子版
量子コンピューターへの応用
チップ上の微小トラップに原子を1個ずつトラップして独立に操作することが目標
永久磁石(磁性薄膜)を用いた磁気格子
超伝導磁石を用いたアトムチップ
アムステルダム大 Spreeuw等
NTT 向井等
原子光学(Atom Optics)とは
100mK以下の極低温原子は粒子だけでなく波の性質が顕著に現れる
物質波(ド・ブロイ波)
l=h/mv
m : 質量、v : 速度
物質波は光と同様に反射、集束、回折、干渉させることが可能
原子レーザー(BEC)はレーザー光のように高い干渉性(コヒーレンス)を
持つため、様々な原子光学実験が可能になる
原子干渉計
精密計測
原子リゾグラフィー
微細加工
原子の粒子性と波動性
光格子(モット絶縁体-超伝導)
原子間の量子相関
多粒子の干渉
量子コンピューター
波動(原子)光学
量子(原子)光学
ヤングのダブルスリットの実験(原子版)
レーザー冷却
Ne原子
2つに分割
Na原子
BEC
6mm
MCP(原子検出器)
F. Shimizu, 1992
MIT, 1997
自由落下するBEC原子を用いた原子干渉計
レーザー光を用いてBEC原子を二つに分ける
TOF (10ms) 吸収像
Rb BEC
g
自由落下
レーザー光
t
p = 2k
T
p=0
f
180deg
60deg
240deg
1.0
T= 1ms
0.8
N2/(N1+N2)
T
f
p = 2k
p=0
0.6
0.4
0.2
0.0
-360
N2
N1
-180
0
f[deg]
180
360
原子干渉計を用いた重力加速度計
w2
/2

| b>
Rb原子
10ms
/2
| a>
観測
12ms
Pb
w1
重力
重力加速度gの精密計測
レーザー光
g
15ms
時間
T=17ms
T
T
終状態が|b>である確率
Pb =
1
1 - cos( f )
2
位相感度 f = keff gT2
keff = k1- k2 = (w1+w2)/c
25.10
25.11
25.12
25.13
レーザー周波数の掃引レート(b/2) ( MHz/s)
g = b/keff = 9.79689(3) m/s2
g/g ~ 2 ×10-6
重力との相互作用時間(T)を長くすることにより感度を大きく向上することができる
しかし地上では重力による自由落下によりTに上限がある T< 1s
アトムチップ上のBEC干渉計の実験(コロラド大JILA)
Ying-Ju Wang et al., PRL 94, 090405 (2005)
光の定在波を用いた原子のビームスプリッター
p = 0  p = 2k
マイケルソン型干渉計
p = -2k p = 0
p = 2k
/2

T=1ms
/2
T=10ms コントラスト → 20%
デフェージングの影響?
アトムチップ上のBEC干渉計(電通大)
原子は磁場トラップ(導波路)に閉じ込められている
w1
p = 0 p = 2k
干渉信号
w2
1.0
/2
T=0.25ms(赤), 1ms(青)
T
0.8

P2hk
t
T
/2
0.6
0.4
0.2
磁場ポテンシャル
(軸方向)
p=0
TOF吸収像
p = 2k
0.0
-360
-180
0
180
360
位相[deg]
長い相互作用時間(> 1ms)
コントラスト低下
トラップポテンシャルの影響(原子の速度変化)
によりコントラスト低下
Munekazu Horikoshi, Ken'ichi Nakagawa, Phys. Rev. A 74, 031602(R) (2006)
干渉信号のコントラスト低下の原因
z
ポテンシャルおよび原子間
相互作用が無い場合
A
ポテンシャルおよび原子間
相互作用が有る場合
B
/2
T

T
/2
t
ポテンシャルおよび原子間相互作用により速度変化
干渉計の二つの行路が閉じなくなる
原子間のs波散乱によるデコヒーレンス
pr
after /2 0ms
pulse
1ms
2ms
- k
- k 
k 
k
トラップ中のBECを用いた干渉計て長い相互作用(コヒーレンス)時間を得る方法
M. Horikoshi and K. Nakagawa, Phys. Rev. Lett. 99, 180401 (2007).
mwz2 2
U ( z) =
z
2
Bragg
pulse
v0
sin(w z t ) = z0 sin(w z t )
wz
v(t ) = v0 cos(wzt )
z (t ) =
2k
v0 =
m
z
0k
/2
2k
調和振動ポテンシャル+2つの/2パルス
パルス間隔 T= 振動周期(=2/wz)
原子の速度が再び元の大きさに戻るため
デフェージングの影響が回避
T
v(T ) = v(0) = v0
/2
長いコヒーレンス時間が実現可能 T >> 10 ms
BEC
トラップされた(BEC)原子を用いた原子干渉計の感度
を飛躍的に向上することが可能
BEC原子が磁場ポテンシャル内で振動する様子
1周期:30ms
500mm
振動周期を正確に測定する
 pulse
BEC
T0
v = 2k / m ~ 1.2cm / s
T0 = 2/wz
z(t ) = z0 sin(w z t )
0 100 200 300 400 500
Time [ms]
T0 = 58.657(6) ms
実験結果
(b) T=97.21ms の時
(a) T=58.66ms の時
1.0
1.0
(i)
0.8
2
C 2 k
0.8
0.6
C 2 k
0.4
0.2
0

fL [rad]
(ii)
(i)
2k
2
0k
フリンジコントラスト ~ 30%
0.6
0.5
0.4
0.2
(ii)
0.0
(i)
(ii)
0.0
2

fL [rad]
0
2
(ii)
(i)
2k
0k
フリンジコントラスト ~ 0% ?
(b) (T=97.21ms)の場合
コントラスト低下はポテンシャルによるデフェージングが原因では無い?
T+T
T t
/2
パルス間隔 ≠ トラップ周期
デフェージングの影響が現れフリンジコント
ラストが低下することが予想される
/2
0
実験結果
T≠0 信号は0.5近傍に収束
1.0
デフェージングによるコントラスト低下
0.8
C 2 k
2
T=0 信号は大きくばらつく
0.6
ランダムな位相揺らぎ
0.4
ランダムな位相揺らぎの原因
0.2
0.0
-2.0
1 原子間相互作用による位相拡散
-1.0 0.0 1.0
T [ms]
2.0
2 振動などの外乱の影響
原子間相互作用による位相揺らぎ
m(N1)
m(N2)
N1
N2
/2
N
BEC
BEC原子をコヒーレントに二つの運動量状態に分けると
1  2


2

原子間相互作用
f =
f (t )  Rt
N
N

1
N!
 = N
N1 , N 2

N
!
N
!
2
k =0
1
2

N
N1 = N 2 =
N =  ( N2 - N1 ) =
2
二つのBEC間にエネルギー差(位相差)
m ( N 2 ) - m ( N1 )

1/ 5
m : 化学ポテンシャル
t
 72   a 
R = N = 
  
125

 l
実験条件(N=3000, w/2 = 33 Hz )
N
2/5
w~
l=
N 1/10
f ~ 1 rad (t=100 ms)
原子数スクイーズド状態を用いるとこの位相揺らぎを低減できる
N < N
MIT (PRL 98, 030407 (2007)) , Stanford (PRL 98, 040402 (2007))

mw~
床からの振動雑音の寄与
a (w )
光パルス
: 床からの振動雑音(加速度)
BEC
干渉信号の位相変化
磁場ポテンシャル
fvib = 2ka(w )T02
a (w )
光学定盤
fvib =
1
sin (wT0 / 2
2 (1  w / w z ) wT0 / 2
1
ka (w z )T02
2
w = w-wz
(w=wz)
この原子干渉計は共振型の加速度計として働いている
a(w ) ~ 2 10-5 ms-2 / Hz w/2 ~ 10 Hz 光学定盤上での振動雑音(加速度)の測定値
fvib  1 rad
床からの振動雑音による位相揺らぎ
高感度な加速度センサーが実現可能
原子干渉計の精密計測への応用
重力加速度計、ジャイロスコープ
加速度計の検出感度 ∝ T2 (T:相互作用時間)
地上では重力により原子は自由落下
相互作用時間に限界 < 1s
トラップ中の(BEC)原子干渉計
相互作用時間を1s以上に長くすることができ、感度を大幅に向上できる
微小重力下での原子干渉計
タワー(100m ドイツ Bremen) 、飛行機(フランス)、宇宙ステーション
飛行機による放物線飛
行
T ~ 20 s
落下カプセル
T~5s
等価原理の検証
10mの原子干渉計をStanford大(Kasevich等)に建設中
g/g ~ 10-15 (1ヶ月)が期待できる ?
10 m
異なる原子間で原子干渉計を用いて重力加速度を比べる
85Rb - 87Rb
g/g = (1.2±1.7)x10-7
PRL 93, 240404(2004)
10 m atom drop tower.
重力波検出
S. Dimopoulos et al., Phys. Rev. D 78, 122002 (2008).
鏡の代わりに自由落下原子を基準に用いる
床からの振動雑音の影響が低減
低周波数における重力波検出に有利 (?)
地上 2つの原子泉型干渉計(高さ10m)を1km離して配置
期待される感度 10-19/Hz1/2 1 - 10 Hz
量子ラチェット効果 Quantum Ratchet
ラチェット(爪車)とは?
ウィキペディア(Wikipedia) より
ファインマンのブラウン・ラチェット
細胞膜のイオンポンプのモデル
非対称ポテンシャルを用いて力の平均がゼロ(等方的)であるにも関わらず
一方向の粒子の流れが生じる現象
量子ラチェット
半導体
量子ドット中
の電子
H. Linke, et al. Science
286, 2314 (1999)
超伝導磁束量子中
の磁束量子
Y. Togawa,et al., PRL
95, 087002 (2005)
光定在波ポテンシャル中のBEC原子による量子ラチェット効果
デルタキック回転子
粒子(原子)
l/2
t
周期tでキックする
t
古典的な粒子では一方向に選択的に加速されることは無い
BEC原子のように量子力学的な波束ではどうか?
BEC
ldB ~ 数mm > l/2 ~ 0.4 mm
l/2
(
1
0 - ie if - 2k
2

初期状態 2つの運動量の重ね合わせ状態
i =
短いパルス光定在波を入射
p2
H=
 V cos(2kx) (t - n't )
2m
 f = e -iHt /   i  e -i (Vt /  ) cos( 2 kx)  i

=
 (-i) m J m (b )ei 2mkx  i
b = Vt / 
m = -
n回キック後
t =4/nr
nr 反跳周波数

1 -im / 2
e
J m (nb ) - eif J m1 (nb )
2
m次の運動量成分の振幅
n回キック後の原子の運動量分布
f=0
f = /2
f=
0
0
0
運動量
運動量
運動量

左右対称な周期ポテンシャルでなぜ一方向に加速されるのか?
二つの運動量の重ね合わせ状態
原子の空間密度分布
( p = 0  p = 2k 
 ( x) = (1  e  2 ,
i 2 kx
2
 ( x) = 1  cos 2kx
2
ポテンシャルと原子分布の間の位相差に依存して原子は一方向に加速される
( p=0
p=0
 p = 2k

2
原子
光ポテンシャル
ON
力
力
OFF
ON
0
運動量
0
運動量
0
運動量
実験結果
初期位相fに依存した平均運動量

m
一種のマルチパス干渉計

p =  m Jm2 (nb )  m Jm2 1 (nb ) -
nb
cos(f )
2
位相検出感度がn倍向上
量子輸送の問題
Mark Sadgrove, Munekazu Horikoshi, Tetsuo Sekimura, and Ken'ichi Nakagawa,
Phys. Rev. lett. 99, 043002 (2007)
ガウス和を用いた素因数分解
大きな整数の素因数分解
Shorのアルゴリズム
膨大な計算量(指数関数的な増加)
RSA暗号 インターネットのセキュリティ確保に利用
量子計算を用いた素因数分解
Gauss和を用いた素因数分解
(M )
N
A
高速(多項式時間?)
M
1

2 N 
(l ) =
exp
2

im


 
M  1 m =0
l 
AN( M ) (l ) = 1
高速(多項式時間)
(l がNの因数の場合)
ガウス和 (truncated Gauss sum)
AN( M ) (l ) < 1
(l がNの因数でない場合)
l を1から N まで変えて調べることにより整数Nの因数分解が行える
ガウス和の計算
多重パスの干渉効果
物理系を用いてガウス和の計算を行う
分子(NMR)
冷却原子
光(ML laser)
M. Mehring, et al., PRL 98, 120502 (2007)
M. Gilowski, et al., PRL 100, 030201 (2008)
D. Bigourd, et al., PRL 100, 030202 (2008)
光定在波パルス中のBEC原子を用いたガウス和の計算
M. Sadgrove, S. Kumar, and K. Nakagawa,
Phys. Rev. Lett. 101, 180502 (2008)
BEC原子に光定在波パルスを入射する
レーザー光
BEC
ガウス和の各項の位相fmに応じて
光定在波の光位相を変化させる
レーザー光
f1
f2
f3
f4
ガウス和
(M )
N
A
M
1
(l ) =
exp(if m 

M  1 m =0
f m = 2m 2 ( N / l )
パルス光照射後のBEC原子の運動量分布
を測定して全運動エネルギーEを求めること
によりガウス和が求められる
 =

 c(n) p = 2nk
n = -
p = -2k
p=0
p = 2k
2
1  2
1
2
E =  n c(n) = AN( M ) (l )
2 n =-
4
パルス幅tが十分短い場合、運動エネルギーの変化は無視できる(Raman-Nath 近似)
 (t  t ) = e
=
- iHt / 

 (-i)
m = -
初期状態
 (t )  e
m
p2
H=
 V cos(2kx)
2m
 (t )
J m ( b )e i 2 mkx  (t )
b = Vt / 
0 = p=0
  M 1

U = exp- i  a cos(2kx  fi ) 

  i =1
 =U 0
 =
- i (Vt /  ) cos( 2 kx)

*
m A 
c(m) = i  
 A
 c(m) p = 2mk
m = -
1  2
1 2
2
E =  m c(m) = A
2 m=-
4
m/2
Jm( A)
A=
M 1
 a exp(if )
i =1
i
運動エネルギー(反跳エネルギーで規格化)
ここでa=1/(M+1), fi = 2i2N/l となるように光パルスの強度、幅、位相を調整すると
1
E=
4
M


 exp i2i 2 N / l =
i =0
1 (M ) 2
AN (l )
4
パルス照射後の原子の運動エネルギーを測定することによりガウス和が求められる。
エネルギー
運動量分布
実験結果
N=231=3×7×11
の場合
N=17947=131×137
現在の方法では計算量はNの増加に対して指数関数的に増加するため量子コン
ピューターのような高速計算は期待できない
将来的に多数の原子の間のエンタングルメント状態を利用して量子コンピューターと
同様の高速計算が実現できる可能性がある
雑音がもたらすコヒーレントな共鳴効果
Noise-Induced Energy Resonance for Atoms in a Periodic Potential
M. Sadgrove, S. Kumar, and K. Nakagawa, Phys. Rev. Lett. 103, 010403 (2009)
量子力学的な物理系においては雑音が加わると系のコヒーレンスが失われて
干渉効果が減少する
しかしある条件下では一定の大きさの雑音を加えるとむしろ干渉効果が一時的
に増えることがありえる。
(a)
BEC原子に光定在波を入射する
レーザー光
p = -2k
BEC
レーザー光
p=0
p = 2k
原子は回折され運動エネルギーが増加する
光定在波の位相にランダムな変調(雑音)を
加える
f n= 0 ~ 2L Lは雑音強度
BEC
回折の効果が減少し運動エネルギーの増加
も減少する
(b) 初期状態として二つの運動量状態|p=0>, |p=2hk>の重ね合わせ状態を用いる
(0

2
p = 2k
p=0
実験結果
 2k
|0>
f n= 0 ~ 2L
位相雑音を加えると回折が増大する
(0
 2k

2
運動エネルギー
(b)
雑音強度が増えると
回折が増大してある
強度で最大となる
(a)
|0>
(b)
(0
 2k

2
運動量分布
(a) 雑音が増加するとコ
ヒーレントな回折効果が
減少して運動エネルギー
が増加しない
(b) 雑音が増加すると平
均運動量が増加して運
動エネルギーが増加する
先の量子ラチェット効果と同様の
一方向の加速効果
位相雑音は回折効果に何らかのコヒーレントな効果を与えている
また同等の古典的な物理系によるシュミレーションではこのようなエネルギー増大
の共鳴効果は起こらないため何らかのコヒーレントな効果であることが予想される
BEC原子を用いた原子光学系はこのような量子力学の問題を理
解するのに大変役に立つ
おわりに
原子のボース・アインシュタイン凝縮(BEC)はミクロな量子の世界
とマクロな世界を結ぶインターフェースの役割を担っている。
原子のBECによって我々は様々な量子の世界を直接目で見るこ
とができるようになり、多くの量子力学的な現象の理解やその応
用に役立つものと思われる。
BECおよび極低温原子を用いた原子光学は今後ますます発展し、
レーザーと同様に高感度・高精度計測を通して未知の力や新しい
物理法則の発見に大きく貢献するものと期待される。
研究室のメンバー
研究代表者(PI)
ポスドク研究員(PD)
大学院生(D)
大学院生(M)
学部卒研生(B)
中川賢一
Mark Sadgrove、Zhanchun Zuo
Sanjay Kumar
加地真英、渡辺智貴、平井秀一 、奥山大輔
小林康行、牟田真弓
原子光学(Atom Optics)とは
100mK以下の極低温原子は粒子だけでなく波の性質が顕著に現れる
物質波(ド・ブロイ波)
l=h/mv
m : 質量、v : 速度
物質波は光と同様に反射、集束、回折、干渉させることが可能
原子レーザー(BEC)はレーザー光のように高い干渉性(コヒーレンス)を
持つため、様々な原子光学実験が可能になる
原子干渉計
精密計測
原子リゾグラフィー
微細加工
原子の粒子性と波動性
光格子(モット絶縁体-超伝導)
原子間の量子相関
多粒子の干渉
量子コンピューター
波動(原子)光学
量子(原子)光学
ヤングのダブルスリットの実験(原子版)
レーザー冷却
Ne原子
2つに分割
Na原子
BEC
6mm
MCP(原子検出器)
F. Shimizu, 1992
MIT, 1997
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