マイナンバー 社労士業務への
インパクトとその備え
1
今、社労士として知っておくべき
マイナンバーの概要
マイナンバー制度検討部会(兼SRP認証制度検討部会)
部会長 立岩 優征
この夏、全国に比して猛暑が続く東京で、満員御
す。先ず第1回目はマイナンバー制度の全体像と今
礼が出ているセミナーがあります。そのテーマは
社労士として知って頂きたい事項を御報告申し上げ
「社会保障・税番号制度:いわゆるマイナンバー制
ます。
度」で参加者は大企業中心です。その一つで、マイ
ナンバー制度の司令塔である内閣府担当室長の「個
1
人番号カードに健康保険証を早急に取り込んでいく
政府の方針は決まっている」との発言が報じられ、
マイナンバーとは何か?
同様の他の新聞報道からも、ICチップ付きの個人番
号カード普及への政府の力の入れ具合が窺えます。
①住民票を保有する全員(赤ちゃんからお年
これが本当に実現したら社労士業務に大きなイン
寄りまで・男女国籍問わず)に対して指定
パクトあると思われますが(現在では具体的な方法
する12桁の唯一の個人番号
論が未定です)
、マイナンバー制度の動きがここにき
②国や地方自治体で社会保障、税、災害分野
て急加速していることや、そもそもマイナンバーと
の3分野で個人情報と紐付け情報の管理を
は何か?という基本的な認識が我々社労士や主な関
効率的に行い、「公平・公正な社会の実現」、
与対象である中小企業は大企業と比較すると少ない
「行政の効率化」、「国民の利便性の向上」
と思われます。
の3点を実現する社会基盤(表1を参照く
連合会では、マイナンバー制度の対策を講じるた
ださい)
めに、
「マイナンバー制度検討部会」を本年度発足し
③マイポータルというサイトによるねんきん
ました。また、マイナンバー対策を情報セキュリテ
定期便のような政府からの情報を受信した
ィ面から支える制度として、現在のSRP認証制度を
り、誰が自分のマイナンバーにアクセスし
強化した新SRP認証制度へ改定するための「SRP認
たかがわかる記録を確認したりする、イン
証制度検討部会」も発足しました。
ターネット上の補完機能付き
マイナンバー制度に関する情報が少ない中、両部
会において情報収集に努めて参りましたが、ここに
会員の皆様にお伝えできる段となりましたので、今
内容としてはシンプルなものです。12桁の重複し
後引き続き情報提供を行っていきたいと考えていま
ない個人番号を付番して、これにより同一人物の個
2014.9
14
今、社労士として知っておくべきマイナンバーの概要
人情報を他機関との間で情報連携するものです。社
2
労士業務での例として、②の効率化・利便性という
意味では、マイナンバーをキーに協会けんぽ等保険
社労士にとってのマイナンバー
3つのポイント
者と国税で情報連携して、健康保険の扶養認定のた
①電子申請しない紙の申請にもマイナンバー
めの課税証明の添付書類の提出が不要になること等
の記載が必要
が考えられます。また公平・公正という点では、年
②約1年後の平成27年10月には全国民にマイ
金機構・国税及び職安の情報連携で、年金受給者の
ナンバーの通知が開始される
所得把握が容易になり、在職老齢年金や高年齢雇用
③個人情報保護法より厳しい罰則規定が1件
継続給付の併給調整等が厳密に反映されます。なお、
の申請でも課される可能性がある
当然として、①の唯一無二性により年金記録問題等
で生じた行政における記録統合・整理問題は今後回
①誤解なきよう! 電子申請しない社労士もマイ
避されます。
ナンバー対応が必要
なお、③のマイポータルという個人のインターネ
ットサイトにより本人独自の情報が確認でき、特に
マイナンバー制度が開始されても、現在存在する
いつ誰が自分のマイナンバーにアクセスしたかを確
基礎年金番号や雇用保険番号等がすぐになくなるこ
認することで、個人情報取扱の懸念を軽減する機能
とはない模様です。つまり、社労士としては今まで
があります。また、法人向けに13桁の法人番号も同
の番号にプラスしてマイナンバーの管理が必要とな
時に指定され、マイナンバーとは逆にインターネッ
ります。
トで公開し、広く利用促進をすることになっていま
今年の秋口に労働社会保険に関する各種様式にど
す。
のようなマイナンバーの記載が必要か明らかになる
予定です。つまり、マイナンバー制度が始まると、
今までの様式とは別に、新たな様式にマイナンバー
表1:別表第一(第9条関係)内閣官房・内閣府マイナンバー概要資料より抜粋
15
2014.9
を記載して提出する必要があります。よって、マイ
労働社会保険分野に関して先ずは、今年の秋には
ナンバー制度開始時に新様式で紙の提出が先ず始ま
マイナンバー記載の様式が公表される予定です。当
り、それにe-Govでの電子申請が対応するという順番
然これに従って事務手続を行っていかなければなら
です。これが同時になる可能性もあります。なお、
ないため、事務処理がシステム化されている社労士
e-Govが新様式に対応する場合は、ほぼ全システム改
事務所では新システムでの対応が必要になります。
修が必要となり、非常に多くの工数と費用がかかる
もし平成28年1月からとなると、秋の様式発表から
ため、現時点では対応時期が見えない状況です。い
1年数ヶ月でシステムを改修する必要があります。
ずれにせよ、電子申請に関係なく、マイナンバー対
しかし、労働社会保険分野では様式の仕様を含めて
応は手続業務を行う全ての社労士にとって必須とい
利用開始時期に関しては、現段階では不明な状態で
うことがわかると思います。
す(明確になり次第今後本誌でご案内します。ただ
②あまり時間がないスケジュール
し現時点で一部手続は平成28年1月より利用開始が
マイナンバー制度に関して、現在の問題はスケジ
ずれ込むとの情報を得ています)
。
ュールとその内容です。下記のスケジュール表にあ
なお、今から約1年後の平成27年10月から全住民
るように(特に下線部に関しては重要ですが)
、平成
票登録者へ通知カードという紙製のカードに住所・
4
4
4
4
4
4
4
4
4
28年1月に順次利用開始となっている点が一番問題
氏名・生年月日・性別の4基本情報とマイナンバー
で、順次とは具体的に労働社会保険関係で、どんな
(12桁)を付したものが郵送されます。社員のご自宅
手続にいつマイナンバー記載が必要になるのかまだ
に通知カードなるものが家族の分も含めて続々と届
決まっていないということです。マイナンバー法は
くことになります。その後人事総務部門へどうした
施行されるものの、各手続においては、各省庁の進
らよいかという問い合せが集中し、その対応に苦慮
捗によって決まっていくということです。
する中小企業(大企業も含め)が続出するのではな
この点国税庁は進捗が早く、平成26年7月にマイ
いかと想像できます。特にマイナンバーの本人確認
ナンバー記載の様式を公表しており、平成28年1月
という行為が本制度の根幹を成しているため、会社
より利用開始を始めます。ここは非常に重要ですが、
側で家族分も含めた本人確認を国が定める方法に従
例えば平成28年1月にも会社を退職した社員に対し
って行う必要があるからです。この法律が厳しい罰
て、マイナンバーを記載した源泉徴収票の発行が始
則規定をもって運用される点も企業側の対応を難し
まるということです。給与計算事務を行っている社
くします。その時に社労士として適切に企業に指導
労士にとってはこの認識は大変重要です。
及び支援する事が企業に対して大きな安心感につな
がると思われます。
平成25年5月 マイナンバー法成立(平成25年法律第27号)
なお、希望者にはICチップ
平成26年9月 月刊社労士にて連合会としてマイナンバーに対する周
付き個人番号カードというも
知開始(本号)
のが交付されます。写真付き
平成26年秋 労働社会保険のマイナンバー対応様式の公表、国民向
け広報の開始
の電子証明書も格納されたそ
のカードを使って、本人確認
平成26年10月 マイナンバーコールセンター開設 やマイポータルへのログイン
平成27年10月 全住民票登録者へ通知カード郵送によりマイナンバー
に活用できるようにする予定
の通知開始
です。また政府としては、冒
平成27年秋以降 新SRP認証制度募集開始
頭のように健康保険証や印鑑
平成28年1月 マイナンバーの順次利用開始
登録・運転免許証等色々な機
平成29年1月 マイナンバーの国の機関内連携開始、マイポータルの
能を持たせて普及促進を図る
運用開始
というICT国家戦略掲げてい
平成29年7月 マイナンバーの国と地方自治体等との連携開始
2014.9
16
ます。
今、社労士として知っておくべきマイナンバーの概要
③マイナンバー 諸刃の剣への罰則強化
また、仮に社労士から情報漏洩等が起きた場合に、
7月に大手出版会社による過去最大2,000万件以上
企業側が十分な監督をしていないと判断されると、
の顧客情報漏洩事件が残念ながら発覚しましたが、
社労士だけでなく企業側も法令違反を問われる可能
これだけ社会的・経営的インパクトの大きな事件で
性があるというものです。つまり企業として、より
も法的な罰則規定(個人情報保護法違反)が適用さ
社労士の情報管理体制を問わざるを得ないというこ
れないことはご存知でしょうか。これは個人情報保
とです。
護法の性格によるものですが、逆にマイナンバー法
スケジュールでご案内したように、労働社会保険
ではマイナンバーを含む情報(特定個人情報と言い
に関する予定が未だに不明なのは、国税等よりも行
ます)は1件でも漏洩した場合には、厳しい罰則規
政手続が非常に多岐に渡ることが大きな要因です。
定が課せられる可能性が生じます。
つまり、社労士はマイナンバーを非常に多く扱う可
マイナンバーは前述のように大変便利な社会基盤
能性が高いということです。よって、今後社労士に
となりますが、逆に便利な故の諸刃の剣で、その漏
はより高い情報管理体制が問われることになります。
洩やなりすまし等が発生した場合は大きな被害が生
そのような新しい社会変化に対応できるより高い情
じるため、強い牽制機能として厳しい罰則を設ける
報管理体制を備える社労士事務所を構築・運営でき
こととしています。個人情報保護法では、不正な個
るようにするために、マイナンバー法と並行して、
人情報の利用等に対し行政指導されて、これに従わ
現在のSRP認証制度をよりセキュリティレベルの高
ない場合に初めて罰則が適用されますが、マイナン
い新SRP認証制度に変更していくプロジェクトを連
バー法の場合は行政指導関係なく罰則適用される条
合会として発足し検討している次第です。
項が追加されています。
しかし、社会の大きな変化はチャンスをつかむ時
社労士として是非認識しなければならないのは、
でもあります。実は士業の中でSRPのような個人情
個人情報保護法では過去6ヶ月各日5,000件を下回ら
報保護の認証制度を持っているのは社労士だけです。
ない個人情報を取り扱う場合のみに個人情報取扱事
さらに個人情報をこれだけ幅広く大量に扱うのも社
業者となりますが、マイナンバー法では1件でも特
労士の特徴でもあります。マイナンバー対応に早く
定個人情報を扱えば個人番号関係事務実施者となり
から乗り出している大企業の中には、マイナンバー
法律が適用される点です。
の本人確認も含めてその対応を社内だけで対応する
最後に:新SRPの必要性と
可能性
ことを諦め、アウトソーシングの活用が必須と考え
このようにマイナンバー法の施行は、社労士制度
が始まってからどう対応したらよいかお手上げ状態
には非常に影響のある社会構造変化であり、その対
になる企業も多く出てくることが予想されます。その
応にはあまり時間がないということがわかると思い
ような背景があるため、唯一の個人情報保護体制の認
ます。なお、政府の特定個人情報保護委員会より公
証制度(SRP)を持つ士業団体としての社労士に対し
表された「特定個人情報の適正な取扱いに関するガ
て、社会からの要請はますます高まると考えられます。
イドライン(仮称)
(事業者向け)素案」には以下の
そしてその声は、中小企業だけではなく、中堅・大企
様な規定が盛り込まれています。
業等さらに幅広くなる可能性もあり、マイナンバー
「委託者自らが果たすべき安全管理措置と同等の措
制度とSRP認証制度への対応が今後の社労士にとっ
置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行わなけ
て、大きな意味を持つことになると考えています。
ればならない」
以上簡単ではありますが、マイナンバー制度に関
つまり企業は、社労士に引き続き労働社会保険事
する概要をご説明いたしました。今後引き続き特集
務を委託する場合に、企業が果たすべきレベルと同
として、社労士業務に与える具体的な影響や必要と
等の安全管理措置を社労士も講じることによって初
されるセキュリティ体制等を情報提供していく予定
めて委託ができるというものです。
です。
3
ている企業も多くあります。
しかし中小企業ではまだその認識すら薄く、制度
17
2014.9
ダウンロード

今、社労士として知っておくべき マイナンバーの概要