国際薬事規制調和戦略
∼
レギュラトリーサイエンス イニシアティブ
平成 27 年6月 26 日
厚生労働省
∼
Ⅰ 戦略策定の目的
○
日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)においては、医療関連産業は日
本が国際的に強みを持ち、グローバル市場の成長が期待できる戦略分野とされ
ており、医療関連産業の活性化に向け、我が国発の優れた革新的医療技術の核
となる医薬品・医療機器・再生医療製品を世界に先駆けて開発し、素早い承認
を経て導入し、同時に世界に輸出することで、日本の革新的医療技術の更なる
発展につながる好循環が形成されている社会を目指すこととされている。
○
この点、健康・医療戦略推進法においても、健康・医療に関する先端的研究
開発及び新産業創出について、海外における展開の促進の必要性が明記され1、
健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定)においても、我が国の治験や薬
事申請等に関する規制・基準等への理解度向上と国際整合化に向け、欧米アジ
ア各国との間で共同作業を行うこと等が盛り込まれている。
○
こうした国際規制調和・国際協力を戦略的かつ強力に推進してくためには、
医薬品、医療機器、再生医療等製品それぞれの分野の特性や、国際調和の枠組
み・二国間協力の現状等を踏まえ、中長期的なビジョンや施策のプライオリテ
ィを明確化した具体的な戦略を策定し、官民で問題意識を共有した上で、連携
して対応していくことが必要である。
このため、この度、厚生労働大臣の指示の下、厚生労働審議官を主査とする
プロジェクトチームにおいて、医薬品・医療機器等の業界からのヒアリング等
を行い、
「国際薬事規制調和戦略∼レギュラトリーサイエンス イニシアティブ
∼」を策定することとした。
○
奇しくも、今年は、日本が、医薬品、医療機器のそれぞれの国際調和会合で
あるICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)やIMDRF(国際医療機器規
制当局フォーラム)の議長国を務めるとともに、アジア太平洋地域での規制調
和の枠組みであるAPEC LSIF RHSC(アジア太平洋経済協力ライフ
サイエンスイノベーション規制調和執行委員会)の共同議長も務める年であり、
薬事規制分野における積極的なリーダーシップの発揮が求められている。
○
近年、我が国の薬事規制やレギュラトリーサイエンス2のレベルは、審査期
間の短縮、ドラッグラグの解消等に見られるよう飛躍的に向上してきている。
1
2
健康・医療戦略推進法第2条
医薬品、医療機器等分野におけるレギュラトリーサイエンスとは、医薬品・医療機器・再
生医療等製品の品質・有効性・安全性について、科学的知見に基づき、適正かつ迅速に予測、
評価及び判断することに関する科学をいう。
1
今後は、国際社会からの期待に応えていくためにも、この戦略に基づき、日
本の強みを活かした開発環境の整備やレギュラトリーサイエンスの更なる推
進等により、世界に先駆けて革新的な医薬品、医療機器、再生医療等製品が承
認される環境を整備して日本の信頼性・魅力を向上させるとともに、薬事規制
に関する我が国の知見、レギュラトリーサイエンスを、アジアをはじめとする
世界に発信して国際規制調和・国際協力を積極的に進め、世界のドラッグ/デ
バイスラグの解決、国際社会の保健衛生の向上に一層貢献していく。
○
また、こうした取組を推進していくことは、日本市場の魅力向上に寄与し、
国内・国外メーカーによる国内開発投資の呼込みにつながるとともに、優れた
製品の輸出拡大により、医薬品・医療機器等産業の活性化にもつながり、日本
の成長にも寄与するものである。
Ⅱ 日本の医薬品・医療機器等分野の現状
○
日本が薬事規制に関する国際調和、国際協力の取組をより実効的に推進して
いくためには、日本の医薬品・医療機器等分野における優位性や課題を踏まえ
た上で、必要な対応を検討することが重要である。
日本の医薬品・医療機器等分野における優位性、課題としては、主に以下の
ような事項がある。
【優位性】
・国民皆保険であるため、保険償還が早い。また、臨床データ等を集約でき
る可能性が高い。
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の体制強化等により、薬
事承認の予見可能性、スピードが向上している。
・世界的にみても医療技術・サイエンスレベルが高く、世界に先駆けた医薬
品・医療機器の開発が進む技術的な素地がある。また、例えば高齢化が進
んでいるため高齢者に多い疾患における研究・開発が進みやすいなど、日
本の強みのある分野がある。
・アジア人に多い疾患について、日本人のデータや日本で開発された治療薬
をアジア全体で活用することができる。
【課題】
・市場規模が米国と比べて小さく(米国は世界の約4割、日本は世界の約
1割)、また、諸外国と比べて基幹病院の規模が小さく治験に参加する患
者を集めるのに数多くの医療機関との契約が必要となるなど治験のコス
2
トが高いため、企業の開発投資インセンティブが弱い。
・日本の薬事規制やノウハウ・技術に関する情報発信力が弱く、厚生労働省
や PMDA の国際対応体制も脆弱であり、各国政府に十分に日本政府・業界
の要望を伝えられていない。
Ⅲ 今後必要な対応∼日本が世界の「レファレンスカントリー」になるために∼
○
Ⅱで述べた日本の医薬品・医療機器等分野における優位性や課題を踏まえ、
日本が医薬品・医療機器等分野において世界のレファレンスカントリー3とし
て貢献していくために今後必要となる対応について、以下で論じる。
1 世界に先駆けて革新的な医薬品、医療機器、再生医療等製品が承認される
環境の整備∼日本の信頼性・魅力を向上させる∼
日本が医薬品、医療機器等分野において世界のレファレンスカントリーと
して貢献していくためには、まず、日本で世界に先駆けて魅力的な医薬品・
医療機器・再生医療等製品が承認され、安全に使用される環境を整備し、日
本の薬事承認・安全対策の信頼性・魅力を向上させることが必要である。
このため、以下の取組を推進していく。
◆
先駆け審査指定制度及びAMEDによる取組の推進
−
臨床試験データから優れた有効性が期待できる医薬品・医療機器・再生医療等製品
について、各種支援により早期に実用化(例えば、医薬品・医療機器では通常の半分
の6ヵ月間で承認)することを目指す「先駆け審査指定制度」の適切な実施(平成2
7年度∼)や、日本医療研究開発機構(AMED)による基礎から実用化までの一貫
した研究開発の推進により、日本で医薬品等を開発するインセンティブを付与する。
◆
日本の強みを活かした開発環境の整備
−
外国と比べて開発コストが高いという我が国の臨床開発に係る課題を解決するた
め、5年以内に疾患登録情報を活用した臨床開発インフラの整備を通じて日本の強
みのある分野(例えば、がん、認知症等)における新たな臨床開発の手法の構築を
進め、抗がん剤、難病治療薬、バイオ医薬品などの国内開発の活性化を促すととも
に海外メーカーを国内開発へ呼び込む(クリニカル・イノベーション・ネットワー
ク構想)。
具体的には、国立高度専門医療研究センター(NC)が構築する疾患登録システムな
ど各種疾患登録情報を活用して、NC、臨床研究中核病院、PMDA、AMED などを中
3
各国が薬事制度を運営する上で参考とする国
3
核とするネットワークを構築し、産学連携による治験コンソーシアムを形成するとと
もに、併せてネットワーク内の病院と PMDA との人材交流や臨床評価の手法に関する
レギュラトリ−サイエンス研究を行うことを通じて、NC 等が蓄積した疾患登録情報
の企業による活用を推進する。また、このネットワークをアジア地域にも拡大し、多
地域共同治験を進めやすい体制を構築する。
−
医療法に基づく国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う臨床研究
中核病院は、被験者が集まる、優れた研究者等の人材が集まる、他の施設からの相
談や研究の依頼が集まる等の効果が期待されるため、これらの承認を行うことを通
じ、日本発の革新的医薬品、医療機器等及び医療技術の開発等に必要となる質の高
い臨床研究や治験を推進する。
◆
世界一のレベルのレギュラトリーサイエンスの強力な推進等による薬事
承認等の予見可能性・透明性の向上、安全対策の強化
−
サイエンスレベルの高い審査・相談体制の構築のため、平成30年には PMDA に
レギュラトリーサイエンスセンターを設置し、専門家による科学委員会の知見を活か
しつつ、臨床試験成績等の電子データの解析等による新たな薬効評価の指標・手法の
開発、ガイドライン作成を行い、企業による開発促進を図る。
―
MID―NET4の診療データや NC 等の疾患登録情報をレギュラトリーサイエンス
センターで解析するとともに、医療機関、企業での MID-NET の活用を促し、安全
対策の強化を図る。
―
米国、欧州の規制当局と世界最先端の安全性情報を交換すると同時に日本発の医
薬品の安全性情報を発信することで安全対策における日本のプレゼンスを高める。
併せて、アジアをはじめとする諸外国における安全対策の向上に積極的に貢献する
ため、主にアジア規制当局に対して、日本の安全確保措置について、その背景情報
も含めて各国が対応必要性を検討するために必要な情報を速やかに提供し、質問に
応じる仕組みを構築する。
―
診療報酬上の評価の予見可能性の向上のため、承認申請前の薬価・材料価格の事
前相談を行う仕組みを整備する。
―
厚生労働科学研究の医薬品等規制調和・評価研究事業により、ヒト iPS 細胞を用い
た予見可能性の高い医薬品安全性評価法等の開発を推進する(ヒト iPS 細胞技術を
応用した医薬品心毒性評価法の開発研究の推進、安全性評価法の国際標準化への提
案等)。
4
現状は 300 万人規模であるが、将来的に1千万人規模のカルテ情報等を収集できることを
目指す。
4
2
国際社会への積極的な情報発信∼日本のノウハウを世界へ∼
1の取組に併せて、日本のレギュラトリーサイエンスのノウハウや薬事制
度等を国際社会に積極的に情報発信することで、世界における日本の薬事規
制の理解を促進する。
◆
3年以内に、日本のレギュラトリーサイエンスのノウハウや薬事制度等を
国際社会に積極的に発信
−
日本のレギュラトリーサイエンスのノウハウや薬事規制制度等についてのアジア規
制当局担当者に積極的に発信し、その理解を促進するため、PMDA に、アジア規制当
局担当者に対するトレーニングの企画・立案・調整を行う「アジア医薬品・医療機器
薬事トレーニングセンター」を設置し、アジア主要国に赴いた研修を含め、業界団体
とも協力しつつ、アジア規制当局の要望のある分野や審査・査察等の能力に応じた効
果的なトレーニング機会を提供する。
− 各国政府に日本政府・業界の意見や日本の薬事規制のノウハウ等を適切に発信して
いくため、現地体制を整備し、業界団体とも協力しつつ、効果的に規制当局との対話
を実施する。具体的には、PMDA と各国規制当局とのリエゾンの相互派遣、国際調和・
国際協力の進展状況を踏まえた PMDA の海外事務所の設置の検討、アタッシェ派遣、
JETRO 等との協力、現地日系企業の組織化の支援等を行う。
− 米国、欧州の規制当局と世界最先端の安全性情報を交換すると同時に日本発の医薬
品の安全性情報を発信する。併せて、主にアジア規制当局に対して、日本の安全確保
措置について、その背景情報も含めて各国が対応必要性を検討するために必要な情報
を速やかに提供し、質問に応じる仕組みを構築する。(再掲)
− 法令、通知、審査ガイドライン、審査報告書、一般用医薬品の承認基準等日本の薬
事規制に関する英語での情報発信を強化する。併せて、業界団体等による国内の優れ
た医薬品、医療機器、再生医療等製品、技術に関する英語での情報発信を促す。
− レギュラトリーサイエンス研究の成果や諸外国にも有用な新たな薬事規制の内容に
ついて、主要雑誌や学会に積極的に発表していく。
3
プライオリティを明確化した分野別の戦略的な取組∼より実効的な対応を
目指して∼
【医薬品について】
(1) ASEANや中韓等を中心としたアジア地域におけるパートナーシッ
プの充実
日本と地域的・文化的に近く薬事規制の整備を進めている ASEAN や中韓等
のアジア地域に対し、アジア唯一の新薬創出国である日本のレギュラトリー
サイエンスのノウハウを提供し、アジア地域の薬事規制の構築、保健衛生の
向上に積極的に貢献していくことが重要である。こうした取組を進めること
5
で、日本の医薬品のアジア地域への展開に伴い医薬品産業の活性化も期待さ
れる。このため、ASEANや中韓等を中心としたアジア地域におけるパー
トナーシップの充実を目指し、以下の取組を推進する。
◆
3年以内に、ASEAN主要国と日本の薬事制度の理解促進に向けた交
流を推進し、医薬品承認制度において欧米と同等の位置づけを目指すとと
もに、中国・韓国等と行政レベルでの意見交換を加速
−
医薬品については、2の取組と併せて、ASEAN主要国と積極的な二国間協力
を進めること等により、当該国の薬事規制整備の参考となるよう、日本の薬事制度
の理解を促進する。併せて、欧米と同等の位置づけを目指し、簡略審査の対象国へ
の我が国の追加や参照薬局方の対象への日本薬局方の追加などについて、相手国の
理解を得られるよう努める。
− 中国・韓国等とは、平成 23 年以降開催されていなかった日中韓薬事関係局長級
会合を早急に再開するなど行政レベルでの意見交換を加速するとともに、合同シン
ポジウムの開催などにより交流を推進する。
◆
5年以内に、ICH等のガイドラインの普及やアジア地域における共同
治験を推進
−
APEC LSIF RHSCで実施される多地域臨床試験プロジェクトに関す
る中核トレーニング施設を国内施設から選出し、規制当局担当者及びアジア地域の
医療関係者等を対象としたトレーニングの実施に向け関係各国の規制当局と議論
する。その後、同プロジェクトの進捗を踏まえつつ、中核トレーニング施設をグロ
ーバル治験ネットワークの中核施設として位置づけることを目指す。
−
日本と同時に相談を受けたアジア地域における共同治験において、当該規制当局
のうち対応可能な当局との間でその内容に関する情報・意見交換を実施する治験相
談業務の協力を推進する。
−
ASEAN(3年)
・中国、韓国等(5年)
・その他(10 年)を目標に、ICH
のガイドラインや臨床評価ガイドライン等のアジア主要国における活用が図られ
るよう、必要な協力を進める。
−
革新的な医薬品が迅速にアジアの人々に届けられるよう、アジアの製薬業界団体
の 会 合 で ある APAC ( ア ジ ア 製薬 団体連 携 会議 )に お いて策 定 した Good
Submission Practice(医薬品の承認申請等に関する基準)の普及の取組を支援す
る。
◆
10年以内に、アジア地域における審査等における協力を推進
−
日本及び他国で同時に承認申請された医薬品について、当該規制当局のうち対応
可能な当局との間で審査中にその内容に関する情報・意見交換を実施する審査協力
を推進することで、日本とアジアで同時に医薬品が上市されることを目指す。
−
日本薬局方のアジア各国での参照薬局方化を推進する。
−
国際人材の育成や規制調和を含む国際協力を進めながら、関係国と相談しつつ、
6
アジア医薬品庁の設立等、将来的な更なる規制当局の協力のあり方の検討を進める。
(2)
日米欧3極の一つとして国際調和における主導的な役割の発揮
米欧については、市場としては成熟してきているものの市場規模は大きく、
また、世界の薬事規制をリードする存在であり、日本と米欧の規制調和や国
際協力を進めることは、日本の薬事規制への信頼性の向上にもつながる。こ
のため、世界一のレベルのレギュラトリーサイエンスを強力に推進しつつ、
引き続き、以下のとおり、米欧との規制調和・国際協力に積極的に取り組み、
日米欧3極の一つとして主導的な役割を発揮する。
◆
短期的な対応として、国際規制調和の枠組みにおける議論等をリード
−
ICH、ICMRA(薬事規制当局国際連携組織)、OECD などの活動及びその戦略策
定において日本が中心的な役割を担う。
・ 日米欧等の規制当局担当者が参加し、新医薬品の規制調和のためのガイドライ
ンを作成する ICH の法人化や参加国の拡大を含めた検討を進め、新薬のガイド
ラインの整備推進とガイドラインの適用国の拡大を目指す。
・ 主要各国の規制当局のトップが参加する ICMRA の正式発足を進め、薬事規制
に関する国際協力に係る司令塔として、ICH や APEC 等の各活動を俯瞰し、そ
の重複除外やプライオリティづけ等を進める。特に、薬事規制に係る新たな国際
問題(例.エボラ関連の医薬品承認)について、本組織を中心に多国間で早期に
連携して対応する。
・
−
OECD/GLP 活動(OECD 加盟国の規制当局担当者が参加し、非臨床試験の
データの信頼性を確保するための基準の策定や加盟国間の GLP 調査結果の相互
受入れ等を実施)の議長国を務めるなど中心的な役割を果たし、関係する国際的
な枠組みとも連携しながらルールづくり、人材開発を進めるとともに、その対応
範囲とデータ相互受入れ国の拡大を目指す。
PIC/S を通じた GMP 調査に関する国際調和に積極的に取り組むとともに、欧州
との GMP 調査結果の相互利用に関する協定(MRA)の締結国及び対象品目の拡大
を目指す。また、国際的な GMP 基準に関する考え方を、国内の GMP 調査実施者
(PMDA、都道府県)に浸透させ、国際標準に従った GMP 規制を実施する。
−
日本薬局方の国際調和の推進を図るとともに、最新の品質管理手法の取込みを進め
る。
◆
5年以内に、米欧等と審査等における協力を推進
−
−
PMDA の治験相談を活用した相談業務の協力等、治験段階での協力を目指す。
日本及び米欧で同時に承認申請された医薬品について、当該規制当局間で審査中に
その内容に関する情報・意見交換を実施する審査協力を推進する。
− MRA を締結した欧州の各国当局が実施した GMP 調査結果の相互利用を推進する
7
とともに、欧州以外の規制当局との MRA 締結可能性を検討する。
−
◆
GCP 調査結果の相互利用に関する国際的な議論の場を日米欧等で構築する。
10年以内に、米欧等と協力して世界の主要地域にICHのガイドライ
ン等を普及
−
米欧と協力して、今後市場規模が大きく拡大し、薬事規制の重要性が増すと見込こ
まれる BRICs 地域などに対し、ICHのガイドライン等の活用や、既存のGMP調
査結果の活用が図られるよう、必要な協力を進める。
<OTC医薬品について>
−
OTC医薬品に関しては特にアジア地域での国際協力を望む声が強いことから、ア
ジアに焦点を当てた対応が重要であり、アジアの規制当局担当者による一般用医薬品
の規制調和の枠組みである Self-CARER(セルフメディケーションに関するアジア規
制当局者協働円卓会議)への積極的な参加、産業界による APSMI(アジア太平洋セ
ルフメディケーション協会)の活動支援などの国際活動を強化し、これらの分野にお
ける規制調和や国際協力を進める。
−
特に各国がそれぞれ作成している OTC 医薬品の承認基準について相互理解を進め、
各国における承認基準の整備を支援する。
−
また、アジア各国の国民の保健衛生向上のため、日本独自の配合薬等の優れた OTC
医薬品をアジア各国へ広げる業界の活動を支援する。
−
我が国の公的医療保険制度に関する経験の共有と併せて、セルフメディケーション
の重要性に関する普及啓発を推進する。
<ジェネリック医薬品について>
― ジェネリック医薬品の海外展開については現在胎動期にあることから、今後の業界の
海外展開の意向やニーズを踏まえ、ジェネリック医薬品の特色に応じた必要な対応を
実施する。
― 政府としては、まず世界各国の規制当局担当者による IGDRP(国際後発医薬品規制
当局プログラム会議)などの国際活動を強化し、ジェネリック医薬品に関する規制調
和や国際協力を進める。
−
高品質のジェネリック医薬品への諸外国におけるアクセスを改善することを目指す
ために、産業界によるIGPA(国際ジェネリック医薬品連盟)の活動を支援する。
−
ジェネリック医薬品の承認申請にあたり、新薬と同様、CTD(コモン・テクニカル・
ドキュメント)による申請を推奨する。
【医療機器について】
(1) 国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)などの多国間におけ
る国際活動に積極的に関与し、医療機器規制の国際調和を推進
8
日本の医療機器規制は、リスクが比較的低いものは欧州型(認証)
、リス
クが比較的高いものは米国型(承認、世界の主流)を採用しており、国際
調和のハブ機能を担うことができる。医療機器の国際調和のための活動と
しては、米欧だけでなくブラジル、ロシア、中国なども参加した多国間の
国際調和の場であるIMDRF及び工業・電気分野の国際規格を策定する
ISO(国際標準化機構)/IEC(国際電気標準会議)が非常に重要で
あり、以下のような取組を推進していく。
◆
◆
短期的な対応として、国際規制調和の枠組みにおける議論等をリード
−
IMDRF でのガイドライン作成活動に積極的に貢献するとともに、平成27年の
IMDRF 議長を務め、同年 9 月の京都会議において IMDRF の中長期的な活動計画
を策定する。
−
MDSAP Pilot(米国、カナダ、オーストラリア及びブラジルの規制当局が参
加し、認定された民間調査機関の実施した QMS 調査結果を各国で活用する試行
的な取組)への正式参加を通じ、品質管理を推進する。
−
医薬品と同様に、OECD/GLP 活動の議長国を務めるなど中心的な役割を果た
し、関係する国際的な枠組みとも連携しながらルールづくり、人材開発を進める
とともに、その対応範囲とデータ相互受入れ国の拡大を目指す。
−
アジア諸国での国際規制調和を進めるため、APEC LSIF RHSC において、
IMDRF の活動や日本の知見、経験を積極的に共有する機会を設ける。
−
その他、一部変更承認申請が必要な範囲や治験の必要性判断の明確化、日本の
QMS の更なる国際整合性の検討により、日本の薬事規制の透明性の更なる向上を
図る。
長期的な対応として、IMDRF参加国と協力して世界にIMDRF
のガイドライン等を普及
−
IMDRF 参加国と協力して、各国、各地域において、IMDRF のガイドライン等
の活用が図られるよう必要な協力を進めるとともに、MDSAP Pilot や PMDA の
QMS 調査結果の活用についても理解が得られるよう取り組む。
−
医療機器において重要な ISO/IEC の活動に積極的に参画することで、日本発の
規格や日本の考えが反映された規格の国際基準化を推進する。
(2) 多国間での国際活動貢献で得られる信頼関係に基づく、二国間での
重点的な協力
市場規模が大きく、審査等のレベルが高い米国とのより強固な協力関
係を醸成するとともに、近年、医療機器に関する制度改正が行われ今後
の運用が注目されるブラジル、ロシア、中国や、制度改正を予定してい
9
るインド等に対して、IMDRFなど多国間の国際活動を踏まえた日本
の知見、経験を共有していくことが重要であり、以下のとおり、プライ
オリティをもって二国間での重点的な協力を実施する。
◆
米国、BRICs、ASEAN主要国等との相互理解、協力関係の
構築、具体的な協力プロジェクトを推進
−
既に協力活動を開始している米国、ブラジル、マレーシア等について、更な
る相互理解を推進する。
−
IMDRF の機会等を活用した BRICsや ASEAN 主要国との相互理解、協力
関係構築に向けた対話を実施し、IMDRF の成果の活用や日本の承認審査制度
の理解を促し、当該規制当局における効果的な制度運用に貢献する。
−
相互理解・信頼関係の構築が進んだ規制当局との間で、米国と既に実施して
いる治験相談や審査における協力など以下の取組を推進する。
① PMDA の治験相談を活用した相談業務の協力等、治験段階での協力
② 日本及び当該国で同時に承認申請された医療機器について、規制当局間で審
査中にその内容に関する情報・意見交換を実施する審査協力
③ QMS 調査結果の相互利用を図ることで、効率的な QMS 制度の運用を実施
【再生医療等製品について】
日本では、条件・期限付き承認制度の導入等がなされ、iPS細胞の臨
床研究等も進むなど、再生医療等製品の実用化に向けた動きが加速してい
る。このため、再生医療等製品についても、産官学の国際的な対話の枠組
みの構築、日本の技術や制度の強みを活かした再生医療等製品をグローバ
ル開発できる環境の整備を目指し、以下のような取組を推進する。
◆
世界最先端の技術・規制体系を活かして実績づくりを推進し、世界を
リード
−
導入した規制に基づき、国内における承認審査、市販後安全対策等の運用実績、
知見を集積する。
−
産官学の関係者が参加する国際シンポジウムを主催し、関係者の相互理解を推
進する。
−
欧米等を含む国際的な対話のための枠組みを構築し、例えば、再生医療等製品
の審査にあたって最低限求めるべき試験データの国際的な共通化や製品の品質保
証等の基礎的な共通の考え方の形成を目指す。
−
ASEAN 主要国等に対して、協力関係の構築を推進し、日本の制度、その運用
実績や知見を共有する。
10
【危険ドラッグ・偽造医薬品等】
危険ドラッグや偽造医薬品等については、インターネットの普及ととも
に、近年、国境を越えた流通が世界的に問題化しており、国際的に連携し
た対応が必要である。このため、危険ドラッグや偽造医薬品等の流通阻止
に向けて、以下のような取組を推進する。
◆
危険ドラッグや偽造医薬品等の流通阻止に関する国際連携の推進
−
国際的に流通する危険ドラッグ等に含まれる物質を分析し、毒性情報を収集の上、
速やかに規制する。さらに、インターネットを通じて海外から購入可能な製品にお
ける偽造医薬品の流通実態を確認するため、インターネット買上げ調査を推進する。
併せて、日本への危険ドラッグや偽造医薬品等の流入元となっている国に対して日
本の規制情報や輸出者等の情報を提供するとともに、麻薬取締官の海外派遣による
緊密な情報交換等を実施する等諸外国と連携した水際対策の強化を図る。
−
海外の危険ドラッグ、偽造医薬品を含む無承認無許可医薬品の広告を行っている
インターネット販売サイトに対する能動監視(インターネットパトロール事業によ
る製品の削除要請)を推進する。特に、海外のインターネット販売サイトが存在す
る国に対して、当該違法サイトに関する情報を提供する等諸外国と連携したインタ
ーネット販売対策の強化を図る。
−
危険ドラッグや偽造医薬品等の国際的な情報交換の枠組み(UNODC(国連薬物
犯罪事務所)の合成薬物対策プログラム(SMART プログラム)や WHO 偽造医薬
品会合(SSFFC 会合)等)に積極的に参加し、上記の水際対策やインターネット
販売対策における国際連携の推進について積極的な役割を果たす。
4 継続性・一貫性のある国際規制調和・国際協力の推進∼国際社会でリーダー
シップを発揮∼
今後、継続性・一貫性のある国際規制調和・国際協力を推進していくため、
厚生労働省及びPMDAの国際対応体制を以下のとおり強化し、戦略の進捗管
理や必要な見直しを実施していく。
◆
−
厚生労働省・PMDA の国際担当組織の設置と国・地域別の担当者制の導入
厚生労働省・PMDA に国際対応専門の担当組織を新たに設置し、国際人材の育成を
推進しつつ、厚生労働省が国際戦略の司令塔機能を担うとともに、PMDA において諸
外国の現地情報の集中管理・戦略的な国際協力のための分析を実施する。また、国・地
域別の担当者制を導入して、チームで主要国に対応する。
11
◆
国際薬事規制調和戦略に関する定期的な進捗管理と見直し
−
今後、厚生労働省の国際担当組織において、国際薬事規制調和戦略の内容に関し、定
期的に進捗管理を行うとともに、業界団体との意見交換を行いつつ、具体の進捗状況や
最新の国際情勢を踏まえて必要な見直しを実施していく。
12
ダウンロード

国際薬事規制調和戦略~レギュラトリーサイエンス