[2009年度研究報告の要旨]
Ⅳ 今後の日本の社会保障制度のあるべき方向
-介護保険制度は如何にすべきか-
林田 雅博 1
[研究の目的]
• 人口減少と高齢化が同時進行⇒
日本の社会保障は大困難に直面。
• 2007年度に研究を開始・・・年金、医療、介護
など日本の社会保障の課題を整理し、今後
の方向性を検討すること=研究の目的。
• 2007年度「公的年金制度は如何にすべきか」
2008年度「医療制度を如何にすべきか」
• 2009年度は⇒「介護保険制度は如何にすべ
きか」について取り組む。
2
[はじめに]
• 介護保険制度とは・・・40~64歳の医療保険被保険
者(第2号被保険者)と、65歳以上の全住民(第1号
被保険者)から介護保険料を徴収し、原則として65
歳以上で要介護状態になった時に、1割の自己負担
で介護サービスを受給できる制度。
• 制度ができた背景・・・寝たきりや認知症高齢者の
増加、核家族化進行、高齢者夫婦のみ世帯の増加
、ひとり暮らし高齢者増加、女性の就労増加等 ⇒
“家族による在宅介護”が次第に困難に。
• 要介護高齢者の自立を支援し、要介護者を抱える
家族の不安解消と負担軽減を目指して・・・この制度
が、2000年にスタート。
3
[はじめに]-続き
• 制度発足後10年近くが経過・・・当初目指した
期待に十分応える制度になっているかどうか
⇒各方面から疑問提起
• 本年度研究報告骨子
第1章「日本の人口高齢化と介護問題」
第2章「高齢者介護政策の歴史」
第3章「介護保険制度の概要」
第4章「介護保険制度の課題と解決策模索」
4
第1章 日本の人口高齢化と介護問題
(1)日本の高齢化の特徴
第1に、高齢者人口(65歳以上)の規模が大きいこと。
2005年2,576万人、2050年予測3,764万人、主要国
中では中国・米国に次ぐ。
第2に、高齢化率(65歳以上人口/総人口)のピーク
水準が高いこと。2055年には40%を超えると予測。
第3に、75歳以上の後期高齢者人口が急増すること。
75歳以上の後期高齢者人口は2005年時点では
1163万人、全人口の9.1%⇒2033年に20%、2055年
26.5%になると予測。
(国立社会保障・人口問題研究所2006年12月推計)
5
(1)日本の高齢化の特徴-続き-
第4に、総人口減少と高齢化が同時進行すること。
日本の総人口は2005年ピーク(1億2776万人)後、
長期の人口減少過程に。
2055年には、総人口<9000万人。
65歳以上人口・・・2040年代前半まで増加、
75歳以上人口・・・2050年代前半まで増加継続。
高齢者人口とりわけ後期高齢者人口の増加が長期に
わたり続く⇒要介護高齢者増大⇒介護費用増大。
一方、現役世代の減少⇒税・保険料の負担者の減少
+介護サービス労働力の確保のネックになる恐れ。
(図1参照)
6
(図1)総人口、年齢3区分別人口予測:出生中位・死亡中位
140,000
総 数
20~64歳
120,000
65歳以上
100,000
人 80,000
口
(
千
人 60,000
)
40,000
20,000
2005
2007
2009
2011
2013
2015
2017
2019
2021
2023
2025
2027
2029
2031
2033
2035
2037
2039
2041
2043
2045
2047
2049
2051
2053
2055
0
年次
(出所)国立社会保障・人口問題研究所2006年推計
(2)高齢者世帯( 65歳以上高齢者のいる世帯)の実情
• 三世代同居の世帯の割合・・・大きく減少。
1980年/50.1%⇒ 2007年/18.3%に。
• 単独世帯と夫婦のみ世帯の割合・・・増加。
単独世帯:1986年/13.1%⇒ 2007年/22.5 %へ
夫婦のみ世帯:18.2%⇒ 29.8%へ。
• 高齢者世帯一人あたり年間所得(平均)
・・・全世帯平均と大差ない。
• ただし、高齢者世帯の所得格差大、低所得世帯が
多い⇒ 年間所得200万円未満世帯39.2%、うち100
万円未満15.3%、50万円未満世帯が4%存在。
• 所得種類別には、公的年金依存度が極めて大。 8
(2)高齢者世帯の実情-続き-
• 高齢者夫婦のみ世帯および単独世帯は今後も増加
⇒ 同居家族では要介護者の介護に対処できない
状況に⇒ 介護サービスに対する需要が増大する。
• 低所得の高齢者世帯が多数存在⇒ 医療保険制度
、介護保険制度を整備する上で考慮が必要。
9
(3)要介護認定者の増加状況
• 介護保険制度導入後の要介護・要支援認定者数は
増加が続いた(図2)。
2000年4月 218万人⇒ 2008年4月 454万人
• 制度導入前の厚生省推計(図3)を大きく上回る。
高齢者人口の増加が続く⇒要介護・要支援認定者
数は、今後も増勢が続く。
10
(図2)要介護・要支援認定者数の推移
(出所)介護保険事業状況報告月報(暫定版)
5,000
認定者数
4,500
年間増加数
3,874
4,000
認
定
者
数
(
千
人
)
4,408
4,548
3,484
3,500
3,029
3,000
2,500
4,108
4,348
2,582
2,182
2,000
1,500
1,000
500
0
401
447
455
390
234
240
60
140
(図3)寝たきり高齢者数等の将来推計(厚生省)
600
虚弱高齢者
要介護痴呆性高齢者(寝たきり者除く)
500
寝たきり高齢者(痴呆の者含む)
260
400
(
万
人
)
300
190
40
130
200
100
100
10
90
30
20
120
170
230
0
1993年 (200)
2000年 (280)
2010年 (390)
年次(合計人数:万人)
2025年 (520)
(4)要介護高齢者のいる世帯の状況
• 「世帯構造」 2000年以前に比べ2001年以降は・・・
単独世帯・夫婦のみ世帯が増加、特に単独世帯が
顕著に増加。一方、三世代世帯は大きく減少(図4)
• 「介護する人は誰か」 介護保険導入前は、9割近く
同居家族が支えていた、2001年以降は・・・同居家
族による介護が減少、別居親族による介護が増加、
新たに「事業者」による介護が登場。同居家族によ
る介護の比率は、減少はしたが6割を占め、介護の
主柱 (図5)。
• 要介護高齢者の増加と家族構成の変化が並行進
行⇒ 家族に介護を委ねたまま放置することは許さ
れない⇒ 介護保険制度の整備が極めて重要。13
(図4)要介護高齢者のいる世帯の世帯構造別構成比推移
(出所)国民生活基礎調査
1995
5.1
年
1998
年
17.1
18.7
38.8
20.4
単独世帯
夫婦のみ世帯
8.7
18.2
18.9
35.0
19.2
その他核家族
世帯
2001
年
15.7
18.3
11.0
32.5
22.4
三世代世帯
その他世帯
2004
年
20.2
2007
年
19.5
24.0
0%
10.9
20.2
20%
40%
29.4
12.5
20.0
23.2
60%
20.1
80%
100%
(図5)主な介護者の状況(同別居・続柄)
(出所)国民生活基礎調査
1995
年
28.3
1998
年
29.9
17.8
20.4
2001
年
25.9
2004
年
24.7
18.8
2007
年
25.0
17.9
0%
29.5
28.9
19.9
20%
22.5
20.3
14.3
40%
6.3
7.2
7.5 4.7
8.7
10.9
9.3
12.1
13.6
11.6
2.7 7.5
2.3 8.7
2.8 10.7
60%
同居配偶者
同居・子
同居・子の配偶者
別居・親族
事業者
その他・不詳
12.0
17.4
80%
同居父母・親族
100%
第2章 高齢者介護政策の歴史
(1)老人福祉法制定・・・特養老人ホーム創設とホー
ムヘルパーの制度化
• 1963年老人福祉法制定⇒高齢者介護の基盤整備
開始。老人福祉政策の対象が、低所得者から高齢
者一般にまで広がった。
• 介護施設・・・「特別養護老人ホーム」創設。生活保
護法による養老施設は「養護老人ホーム」が継承、
新「特別養護老人ホーム」は、低所得者に限らず入
所できる⇒“画期的”
しかし・・・要介護高齢者の
増加に、 「特別養護老人ホーム」の整備が追いつ
かず、大量の入所待機者が発生(特に都市部)。こ
の状態は2009年現在も未解決。
16
(1)老人福祉法制定-続き-
• 在宅福祉・・・家庭奉仕員(現在のホームヘルパー)
が独居の寝たきり老人などを訪問、日常生活の支
援をする「在宅家庭奉仕員派遣事業」を制度化。
• 老人医療費の窓口負担無料化( 1973年)⇒ 病院
ベッドが要介護高齢者の収容先に・・・いわゆる高齢
者の「社会的入院」が増加する事態に。
• 1980年頃までは、介護が必要になると、①家族で世
話をするか、②老人病院等の医療機関に入院する
か、いずれかを選択するのが一般的。
• 1973年実施の老人医療費無料化⇒②の選択を助
長した。老人福祉サービスの利用者は一人暮らしの
低所得者が中心であった。
17
(2)ベストセラー『恍惚の人』~「ゴールドプラン」まで
• 1972年、曽野綾子『恍惚の人』がベストセラーに・・・
認知症の義父の介護に疲れ果てる嫁の姿を描き、
高齢者介護に対する社会的支援が極めて不十分な
ことを告発した小説。
• “家族による在宅介護”の基盤が弱体化、高齢者の
介護問題が社会的な関心事に。これら状況を背景
に社会保障の政策対応がとられようになっていく。
{まず医療面では}
• 1982年老人保健法制定(施行1983年)、老人医療
費の窓口負担が復活。
18
(2)『恍惚の人』~「ゴールドプラン」まで-続き-
• 1986年老人保健法改正、「老人保健施設」創設。老
人病棟が「社会的入院」の温床となり、多数の寝た
きり高齢者が長期入院する状態⇒ 病院から家に
戻すリハビリのための施設として創設、3~6ヶ月程
度の短期間入所を想定→ 実際には要介護高齢者
を長期間預かる施設に・・・現在でも是正されず。
• 1992年医療法改正、「療養型病床群制度」創設。こ
の「療養病床」は、長期療養が必要な患者の収容が
目的。職員配置基準も、医師・看護師は少数だが介
護職員を手厚く配置する基準に。
19
(2)『恍惚の人』~「ゴールドプラン」まで-続き-
{次に高齢者福祉分野では}
・ ①在宅福祉政策の充実を図る、②身近な行政機関
である市町村が中心となる、③高齢者保健福祉サ
ービスの基盤整備を計画的に行う、という方向で法
と制度の変革が進行。
・ 1985年~高齢者福祉への民間活力導入の取組み
・・・中央省庁レベルで開始⇒ 相前後して訪問入浴
、訪問介護サービスに民間業者が参入開始。
・ 1988年「社会福祉士及び介護福祉士法」施行、
社会福祉士及び介護福祉士が国家資格に。
・ 1990年、市町村を高齢者福祉の中心とし、基盤整
備のための老人保健福祉計画策定を義務付け。20
(2)『恍惚の人』~「ゴールドプラン」まで-続き-
• 1989年12月関係大臣合意・・・「高齢者保健福祉推
進十か年戦略(ゴールドプラン)」策定。
プランの目的⇒高齢化進行に備え在宅介護を拡充。在
宅福祉・施設福祉サービスに関し10年後(1999年)
の目標値を設定、毎年計画的に整備を進める。
在宅介護三本柱⇒ホームヘルパー、デイサービス、
ショートステイの目標値(人数、施設数目標)設定。
94年12月「新ゴールドプラン」として改定、目標引上げ。
新旧ゴールドプランにより、在宅介護サービスの基盤
整備・介護施設の設置・ホームヘルパー増員等が図
られ、介護保険制度実施の基盤整備が進行。 21
(3)介護保険法の制定
• 1996年11月に介護保険法案が国会に提出され、
1997年12月には同法が成立。
• 新たな保険料負担が必要な社会保険方式、従来制
度の大幅変更 ⇒ 社会全体の関心・・・政府が行っ
た世論調査で、国民の約8割が制度創設に賛成・・・
その背景は、①高齢化進行による要介護高齢者の
増加、②介護の重度化と長期化傾向、③在宅の寝
たきり者を介護する「介護者」の約半数が60歳以上
、4分の1近くが70歳以上で「老老介護」が主流とな
っていた、④介護者の8割強が女性(配偶者・娘・嫁
)であった⇒ 介護の不安解消と介護負担の軽減を
望む声が切実であったこと。
22
第3章 介護保険制度の概要
(1)制度創設の狙い
• 第一の狙い:要介護高齢者の自立支援。その有す
る能力を最大限に生かし、日常生活を自立して営め
るよう支援し、家族等の介護者の負担軽減を図る。
• 第二の狙い:福祉と医療に分かれていた従来政策
を統合、必要なサービスを利用者自らが選択できる
体制をつくる。
従来制度=「措置」であった。
介護保険制度=利用者が希望するサービスと事
業者を選択、 「契約」に基づきサービスに見合う対
価を支払う「市場取引の仕組み」導入。サービス提
供事業者には、民間事業者の活用を進めることに。
23
(1)制度創設の狙い-続き-
• 第三の狙い:公費負担軽減。財政方式に社会保険
方式を導入・・・介護給付の半分は保険料で調達、
残りの半分を公費(国・県・市町村)で賄うことに。
24
(2)介護保険制度の仕組み
• 保険の運営者(保険者)=市町村。国民健康保険と同
じ地域保険型の運営。国、都道府県、医療保険、公的
年金が「重畳的に」支援。
• 被保険者=65歳以上の1号被保険者と40歳以上65歳
未満の2号被保険者。
• 1号被保険者の保険料=市町村ごとに基準額と年間
所得に応じた乗率段階を設定(表1:我孫子市の例)。
市町村によってかなりの差異がある(表2)。公的年金
額18万円以上の人は年金から天引き徴収。
• 2号被保険者の保険料=加入している医療保険ごとに
設定され、医療保険者が医療保険料と一緒に徴収。
2号被保険者の保険料は労使折半。
25
(表1)我孫子市の第1号保険料(第4期・平成21~23年度)
保険料率
保険料年額
(円)
段階
区分
第1
生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で住民税
非課税
基準額×0.5
21,800
第2
本人および世帯全員が住民税非課税で、課税年
金収入額+合計所得金額=80万円以下
基準額×0.5
21,800
第3
本人および世帯全員住民税非課税で上記以外
基準額×0.75
32,700
第4
本人住民税非課税(世帯内に住民税課税者あり) 基準額×1.0
43,700
特例 上記該当し、課税年金収入額+合計所得金額=
第4 80万円以下
基準額×0.9
39,300
第5
本人住民税課税で合計所得金額が200万円未満
基準額×1.25
54,600
第6
本人住民税課税で合計所得金額が200万円以上
400万円未満
基準額×1.5
65,500
第7
本人住民税課税で合計所得金額が400万円以上
800万円未満
基準額×1.75
76,400
第8
本人住民税課税で合計所得金額が800万円以上
基準額×2.0
87,400
(表2)第1号保険料基準額の分布状況(第3期・平成18~20年度)
(出所)服部『図解でわかる介護保険のしくみ』日本実業出版社2007年p59
第1号保険料基準額(第3期)の全国平均は、4,090円(第2期3,293円比+24.2%)
保険料基準額
(円/月額)
保険者数
(市町村数)
比率
(%)
6,001円以上
1
0.1
5,501円以上~6,000円以下
15
0.9
5,001円以上~5,500円以下
39
2.3
4,501円以上~5,000円以下
177
10.5
4,001円以上~4,500円以下
397
23.6
3,501円以上~4,000円以下
607
36.2
3,001円以上~3,500円以下
315
18.8
2,501円以上~3,000円以下
114
6.8
2,001円以上~2,500円以下
14
0.8
(2)介護保険制度の仕組み-続き-
• 保険給付=1号被保険者は、要介護(要支援)状態
に該当すれば原因を問わず受給可能。2号被保険者
は、初老期痴呆・脳血管障害等の老化に起因する要
介護状態に限り受給可能。
• 介護サービスを受けるには・・・要介護認定が必要。
市町村に申請→市町村職員の訪問調査→コンピュ
ータ判定→介護認定審査会→申請から30日以内に
要介護度区分・有効期限などを通知(表3)。
• 要介護度の区分は、要支援1・2、要介護1~5の7
段階、段階別に介護サービスの1か月の利用限度額
(区分支給限度額)がある(表4)。要介護度認定の
有効期間は6~24か月、期限60日前から更新申請
が可能。
28
(表3)要介護認定の流れ
段階
Step
1
要点
申請
本人や家族のほか、在宅支援事業者などが申請書
類を市町村の窓口へ提出
訪問調査
市町村職員等が訪問し、調査表に基づいて聞き取り
コンピュータ
判定
訪問調査結果をコンピュータに入力し判定
(第一次判定)
Step
4
介護認定
審査会
介護の必要度合いを、かかりつけ医師の意見書と
第一次判定の結果に基づいて判定(第二次判定)
Step
5
認定通知
介護認定審査会で決定された要介護度・区分支給限
度額・有効期間を本人に通知(申請から30日以内)
Step
2
Step
3
(表4)介護度別・介護サービスの給付基準と利用者負担
(出所)服部『図解でわかる介護保険のしくみ』日本実業出版社2007年等により作成
要
介護度
要支援
1
要支援
2
利用可能
サービス
介護予防
サービス
要介護
1
要介護
2
要介護
3
要介護
4
要介護
5
介護給付
サービス
区分支給限度額(円換
算額=単位×地域別の
円換算額単価11.05~
10.00円)
利用者負担額
・在宅のサービス:
区分支給限度額内×1割
+限度額超過×全額
10,400単位 ・ショートステイ:
家賃、食事代×全額自己負担
注:
・ケア付き住宅型介護サービス
16,580単位
区分支給限度額の範囲外、
要介護度別1日あたり定額×1割
19,480単位
+入居費用・食費×全額
4,970単位
26,750単位
(注)ケア付き住宅型:介護付き有料老人
ホーム等の特定施設やグループホーム
の入所者が受ける介護サービス。
・介護3施設:
30,600単位
要介護度別費用×1割
+入居費と食費×全額
35,830単位
(2)介護保険制度の仕組み-続き-
• 介護サービス利用には「ケアプラン」(要支援は「予防
プラン」)というスケジュール表の作成が必要。要介護
者自身は利用サービスの種類・単価・事業所の情報
は持っていないことが多い⇒ 「ケアマネージャー」が
情報を提供、相談に乗り、ケアプラン作成を手伝う。作
成された「ケアプラン」に基づきサービスを選択し、「ケ
アマネージャー」の支援により事業所と契約を結び、
サービスを利用する。
• 利用可能サービスは、①居宅サービス、②地域密着
型サービス(2005年導入、市町村指定の事業者がそ
の市町村の住民限定で中重度要介護者受入れ)、③
施設サービス、の三つ(表5)。
31
(表5)介護保険サービスの種類-1
(出所)服部『図解でわかる介護保険のしくみ』日本実業出版社2007年等により作成
①
居
宅
サ
ー
ビ
ス
訪問サービス
訪問介護(ホームヘルプサービス)、訪問看護、訪問入浴、
訪問リハビリ、福祉用具貸与
通所サービス
通所介護(デイサービス)、通所リハビリ(デイケア)
短期入所サービス
短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護
(同)
居宅療養管理指導
通院困難な在宅療養者への医療ケア指導
特定施設(介護付き有料老人ホーム、ケアハウス、高齢者専用賃貸住宅等)の入所者の
生活介護
②
地
域
密
着
型
サ
ー
ビ
ス
(
注
1
)
夜間対応型訪問介護
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
小規模多機能型居宅介護(訪問・通所・短期入所サービスの組合せ)
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
地域密着型・特定施設入所者介護(29人以下の小規模な有料老人ホーム、ケアハウス、
養護老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅)
地域密着型・介護老人福祉施設入所者生活介護(小規模な特別養護老人ホーム)
(表5)介護保険サービスの種類-2
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)(注2)
③施設
介護老人保健施設(老人保健施設)(注3)
サービス
介護療養型医療施設(療養病床)(注4)
その他
住宅改造
上限20万円×0.9を給付
福祉用具購入
年10万円まで給付
特定介護サービス費
低所得者に負担限度を設定し、基準額との差額を支給
(注1)地域密着型サービス:2005年導入、市町村指定の事業者がその市町村の住民限定で
中重度要介護者を受入れる。
(注2)特別養護老人ホーム:事実上「要介護4」以上が入所の基準になっている。
(注3)老人保健施設:在宅復帰に向けての一時入所が目的だが、入所が長期化している。
(注4)療養病床:介護保険適用12万床と医療保険適用23万床があるが、2012年3月までに
介護保険適用床は廃止、医療保険適用床も削減される。廃止削減後の患者受入れ先
確保が課題。
(3)介護保険の財政
• 介護保険給付費(利用者負担1割を除外)の財源
=保険料50%、公費(税財源)50%
• 公費負担割合=国2分の1(給付総額の25%)、都道
府県4分の1(同12.5%)、市町村4分の1(同12.5%)
。国負担25%のうち5%部分は、調整交付金として、
各市町村の介護保険財政安定化に充当。
• 1号被保険者と2号被保険者の保険料負担割合⇒ 65
歳以上人口と40歳~64歳人口の比率で決まる。
2000年度の被保険者負担比率 1号:2号=17:33
2003年度比率=18:32
2006年度比率=19:31
34
(3)介護保険の財政-続き-
• 市町村の介護保険事業運営期間は3年、各市町村は
3年ごとに「介護保険事業計画」を策定し、国の算定基
準に基づき、その市町村の保険料を見直す。市町村
内の介護保険給付が増加⇒保険料引上げ必要
年度
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
介護総費用(兆円)
3.6
4.6
5.2
5.7
6.2
6.4
6.4
6.9
保険給付費(兆円)
3.2
4.1
4.6
5.1
5.5
5.7
5.9
6.3
要介護要支援認定
者数(年度末、万人)
256
298
345
384
409
432
440
461
サービス利用者数
(月平均、万人)
184
218
254
287
317
337
354
366
1号保険料基準額
全国平均(月額)
2,911円
出所:増田『世界の介護保障』法律文化社2008年 P185
3,293円
4,090円
35
(4)居宅サービスへの民間事業者の参入と介護施設
の参入規制
• 居宅サービスには、一定基準に該当すればNPO法
人や株式会社等営利法人も事業参入が可能。数多
くの民間事業者が参入し、居宅介護事業所数は
2001年/33,238ヶ所→ 2005年/60,218ヶ所へ増加。
居宅サービスの提供主体は5割が民間企業。
• 特養老人ホーム・老人保健施設・療養病床の三介
護施設には参入規制⇒設立主体は社福法人・医療
法人・自治体などに限定。さらに各自治体が策定す
る「介護保険事業計画」の中で施設の「定員」を定め
る。定員を超える施設の設置申請は拒否できる。
⇒入所待機者問題が深刻に。
36
第4章 介護保険制度の課題と、その解決策の模索
①介護サービスの供給は需要を満たしているか。要介
護者の自立を支援するものになっているか、家族介護
者の不安を解消し負担軽減するものになっているか。
地域間格差は?
②介護保険制度発足後、保険給付費は2倍に拡大。利
用制限、参入規制により利用者が必要サービスを利
用できない事態は作ってはならない。介護報酬単価の
引上げは今後も必要。その前提で給付費増をいかに
して適正化(抑制)するか。
③それでも増大が見込まれる保険給付費のファイナンス
をどうするのか・・・保険料引上げ、利用者負担引上げ
、公費投入増等々。保険料地域間格差をどうするか。
37
第4章 介護保険制度の課題と解決策の模索-続き
④介護労働力不足に如何に対処するか。介護職員新規
採用が難しい。離職率が高い。外国人介護労働力の
受入れも遅々として進まない。09年4月の介護報酬引
上げ(3%)程度では給与の改善ができない。
⑤介護施設の整備は計画通り進んでいるのか。居宅サ
ービス事業者の参入・事業拡大は進んでいるのか。
⑥民間事業者の法令順守・適正運営と不正再発防止(コ
ムスン問題の再発防止)を如何にして進めるか。
⑦医療と介護の役割分担、特に療養病床再編・廃止問
題はどうすべきか。
(以上は今後の研究のための問題提起、列挙)
以上
38
追補1:介護保険の財政方式について
• 介護保険の財政方式も、公的年金・医療保険同様、
賦課方式である。財政期間は3年間で、その期間内
の収入=保険料+公費と、支出=介護給付費をバラ
ンスさせる仕組み。
• 介護サービスの給付は特殊な場合を除き65歳以上
に限定。2号被保険者(40~64歳)が払う保険料は、3
年間の財政期間中の1号被保険者(65歳以上)への
給付に使われる・・・世代間・所得移転である。
• 1号被保険者の保険料は、財政期間内の65歳以上
要介護者への給付に使われる。保険料支払いは所
得比例であり、給付は要介護度に比例する・・・世代
内・所得再配分である。
39
追補1:介護保険の財政方式について-続き
• 1号被保険者と2号被保険者の保険料負担は65歳
以上人口と40~64歳人口の比率で決まる。2006年
度の比率は19:31で、医療に比べると比較的高齢者
の負担が大きいが、おおよそ6割を現役世代が負担
しており、受益は高齢者、負担は現役という構造は
同じ。
• 3年間の財政期間で収支が合わない場合は、翌財
政期間に繰越し、保険料を見直して引上げる必要
がある。
• 以上の財政方式を続けた場合、少子高齢化が進行
して介護給付費総額が増加すれば、現役世代一人
当たりの負担額も増加していくことになる。
40
追補2:ケアプランのイメージ(要支援2、83歳独居女性、脳梗
塞後遺症の軽度麻痺で、自宅内では、つかまり引きずり歩行)
サービス
内容
1回単価
(単位)
回/週
生活援助
買い物・
布団干し
208
1
208×4=832
身体介護+
生活援助
掃除・
入浴見守り
314
2
314×2×4=2,512
通院
乗降介護
通院介護
タクシー
100
往復(2)
月額合計
週額×4
=月額(単位)
100×2×4=800
4,144単位
(41,440円)
利用者自己負担月額=4,144円+タクシー料金4回
(出所)服部『図解でわかる介護保険のしくみ』日本実業出版社 p135
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今後の日本の社会保障制度のあり方