精神障害者支援施設の自殺に関する支援者のニーズ調査
東京都立多摩総合精神保健福祉センター
自殺総合対策プロジェクトチーム
平成21年12月21日(月)
1
東京都の(総合)精神保健福祉センター
精神保健福祉センター
担当:特別区東部13区及び島しょ
多摩総合精神保健福祉センター
担当:多摩地域(市町村)
中部総合精神保健福祉センター
担当:特別区西部10区
2
調査の背景
1 自殺者の90%は何らかの精神疾患を有してい
たと推測されている。
その主要は、気分障害(躁うつ病等)、統合失調
症、人格障害、アルコール依存症、薬物依存等で
ある。
2 このため、地域の精神障害者支援施設では、支
援者が利用者の自殺に遭遇することが稀ではな
いと思われるが、その実態についての情報は乏し
い。
3
調査の背景
3 「自殺対策加速化プラン」*における、これら精神
疾患による“ハイリスク者”対策の一層の推進
*(H20年10月31日 内閣府「自殺総合対策会議」決定)
4 「1人の自殺が、少なくとも周囲の6人に深刻な影
*
響を与える。」
」)
*(「WHO「プライマリ・ヘルスケア従事者のための手引き
自殺対策の結実には継続的な取り組みが必要
であり、そのためには 「支援者の支援」の視点も
重要である。
4
調査目的
1 東京都多摩地域の精神障害者支援施設での自殺の実態を知る。
2 自殺事例を経験した支援者の支援ニーズを把握する。
3 調査結果を、研修、技術援助、リスクマネージメント用教材作成等
の施策拡充に活かす。
4 調査を通じ、自殺問題や精神保健福祉センター及び東京都の自殺
総合対策について普及啓発を行う。
5 自殺問題への支援者の意識を高め、利用者および支援者自身等
のサポート体制の充実を図る。
5
調査対象
東京都多摩地域の精神障害者支援施設 計170施設
((小規模)通所授産施設、共同作業所、日中活動事業所、
相談支援事業所、グループホーム、生活訓練施設)
ただし、平成20年12月現在、東京都精神保健福祉民間団
体協議会加盟の4団体*に加盟する施設
*・東京都地域生活支援センター連絡会
・東京都精神障害者授産施設連絡会
・東京都精神障害者共同作業所連絡会
・東京都精神障害者共同ホーム連絡会
6
調査方法
アンケート記入方式(記名式)
○「調査票Ⅰ(共通項目)」
・支援施設の概要(登録利用者数、利用者の疾患構成、職員数等)
・自殺の発生状況及び発生時の対応
・当センターへの要望
等
○「調査票Ⅱ(事例調査)」
・自殺事例の概要(年齢、性別、疾患名、自殺前後の状況等)
・利用者の自殺が支援者に与える影響
・利用者の自殺を経験した支援者の支援ニーズ
等
7
回答率
調査票 送付施設数:170施設
○「調査票Ⅰ(共通項目)」
回答施設数;117施設 (回答率:68.8%)
○「調査票Ⅱ(事例調査)」
自殺事例報告数;18
8
調査結果
東京都多摩地域における
精神障害者支援施設での自殺の実態
(「調査票Ⅰ(共通項目)」より)
9
平成18年4月から平成20年12月までの自殺者数
(調査対象期間:2年9か月)
全体
通所系
入所系
相談系
自殺者数計
23
11
4
8
年換算
8.4
4
1.5
2.9
単位:人
注)通所系施設 : (小規模)通所授産施設、共同作業所
入所系施設 : グループホーム、生活訓練施設
相談系施設 : 相談支援事業所、日中活動事業所
10
利用者10万人あたりの自殺者数
施設利用者10万人あたりの
自殺者数(推計値)
全体
通所系
入所系
相談系
185.1人
170.4
441.2
156.8
・多摩地域の人口10万人あたりの自殺者数 : 19人
単位:人
・多摩地域の精神障害者10万人あたりの自殺者数 (推計値): 288人
・多摩地域において、支援施設利用者10万人あたりの自殺死亡率 185人は、人口10
万人あたりの自殺者数に比べると多い。しかし、精神障害者10万人あたりの自殺者
数に比べると少ない。
「支援施設につながっていること」≒「精神障害者の自殺防止に効果がある。」?
11
施設あたりの自殺発生率(年換算)
全体
通所系
入所系
相談系
自殺者数(年換算)
8.4
4
1.5
2.9
回答施設数
117
59
39
19
施設あたりの自殺発生率(件)
0.07
0.07
0.04
0.15
○上記の数値が示唆すること・・・
→ 全体では約14年に1件(10年で1件弱)、利用者の自殺が発生している。
自殺発生率の高い相談系施設では、約6~7年に1件、自殺事例に遭遇する。
→ 東京都多摩地域の精神障害者支援施設全体に適用すると、170 x 0.07=11.9
**毎月、どこかの支援施設で、利用者の自殺が発生している。
地域の精神保健福祉の現状を示す指標として、見過ごせない数値である!
12
自殺事例の分析
(「調査票Ⅱ(事例調査)」より)
13
報告事例数
全体:18事例
内訳;通所系施設 9事例
入所系施設 3事例
相談系施設 6事例
14
自殺時の年齢
自殺時年齢
人数
20代
4
30代
9
40代
1
50代
2
60以上
2
計
18
60代以
上, 11.1%
50代,
11.1%
20代,
22.2%
40代,
5.6%
30代,
50.0%
15
事例の男女比
女
22%
性別
人数
男
14
女
4
計
18
男
78%
16
事例の疾患
非定型
6%
疾患名
人数
統合失調症
15
うつ、うつ状態
2
非定型精神病
1
計
18
うつ
11%
統合失調
症
83%
17
支援施設の利用期間
利用期間
人数
~6か月
6
7か月~1年
3
1年1か月~2年
1
2年1か月~3年
0
3年以上
8*
計
18
* 入院による利用一時中断を経て、利用再
開後1年以内に自殺した3事例を含む。
これらの事例を加算すると、利用開始1年
以内の自殺事例は12名(67%)となる。
3年以上
44%
1年1ヶ月
~2年
6%
~6ヶ月
33%
7ヶ月~1
年
17%
18
自殺企図歴
自殺企図
人数
施設利用期間中
3
以前の履歴
6
なし
3
不明
5
その他
1
計
18
その他
5%
施設
利用
期間
中
不明
28%
17%
なし
17%
以前の
履歴
33%
19
月別自殺死亡者数
6
5
4
3
2
1
0
1月 2月 3月 4月
月
人数
月
人数
5月 6月 7月 8月
9月 10月 11月 12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
5
2
1
1
0
0
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1
0
2
2
3
1
20
罹病期間
罹病期間
人数
5年未満
2*
5~10年
1
10~20年
7
20年以上
3**
不明
5
計
18
不明
28%
20年以上
17%
5年未満
11%
5~10年
11%
10~20年
33%
* うつ状態(1人)を含む。
** 非定型精神病(1人)、うつ病(1人)を含む。
注)発病から自殺までの罹病期間(推定値)(「調査票Ⅱ(事例調査)」設問6の回答」と「自殺時の年齢」から推測)
21
自殺前1か月間の状況
施設利用状況
未記入
6%
施設利用状況
人数
定期的参加
7
休みがち
4
引きこもり、連絡あり
0
不明
0
その他
6
未記入
1
定期的参
加
39%
その他
33%
休みがち
22%
22
自殺前1か月間の状況
生活面の変化
その他
5%
生活面の変化
人数
大きな変化
3
軽度の変化
2
変化気づかず
8
不明
3
その他
1
未記入
1
未記入
6%
大きな変化
17%
不明
17%
軽度の変化
11%
変化気づか
ず
44%
23
自殺前1か月間の状況
病状の変化
未記入
病状変化
人数
重度悪化
4
軽度悪化
2
悪化なし
3
長期欠席にて不明
5*
不明
1
その他
2
未記入
1
6%
不明
その他
5%
11%
重度悪化
22%
軽度悪化
長期欠席
11%
不明
28%
悪化なし
17%
*この中の2事例は、経過記録から病状悪化の可能性
があった。
24
自殺前1か月間の状況
受療状況
その他
5%
未記入
6%
通院中、
服薬不規
則
5%
受療状況
人数
通院・服薬中断
0
通院・服薬とも不規則
0
通院中、ただし服薬不規則
1
通院・服薬とも規則的
12
通院服薬
不明
3
規則的
その他
1
67%
未記入
1
不明
17%
25
自殺発生時の取り組み
法人への事故連絡
利用者への配慮
所管行政機関への連絡
デスカンファレンス(事業所内)
行う
行わない
未定
NA
研修受講
遺族への配慮
専門職への依頼
デスカンファレンス(外部含む)
グリーフケア
0%
20%
40%
60%
80%
100%
26
利用者の自殺が担当職員に及ぼす影響Ⅰ
自殺以前の自分の支援内容を悔やむ
気分の落ち込み
疲労感や脱力感
対象事例のことが突然思い浮かぶ
自分を責める
睡眠の障害
自分の無力感に襲われる
いらいらや怒りがわく
突然、涙が出る
現実感がわかない(離人感)
対象事例や自殺に関わるものを避ける傾向
注意力や集中力の低下
口数が減少したり、表情が乏しくなった
他の職員との関わりを避ける傾向
対象事例に関することや自殺当日の記憶の欠落
突然の強い不安感(パニック発作)
動悸がしたり、呼吸が苦しい
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
27
利用者の自殺が担当職員に及ぼす影響Ⅱ
ストレス症状の数
人数
0
1
1~2
4
3~4
5
5~6
3
7~8
3
9以上
2
9以上
11%
7~8
17%
5~6
17%
0
5%
1~2
22%
3~4
28%
28
利用者の自殺を経験した担当職員への支援で必要と思
うこと、及びその実施の可能性
職員の心身の調子に気を配りあえること
職員が「自分の気持ちを同僚や友人、家族等に話せて
いるかどうか」をさりげなく確認すること
職場で事例検討(デス・カンファレンス)を行い、経過と感情を
共有しあうこと
心身の不調が著しい、もしくは長引く場合、専門家の治
療や支援を、職場が勧めること
実施+可能
困難+不可能
NA
動揺や心身の不調が見られる場合、勤務の軽減や休
暇取得を、職場が勧めること
利用者を自殺でなくした経験のある職員(他事業所含
む)と語り合う機会をもつこと
利用者を自殺でなくした時の対応について研修を職場
で行うこと
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
100.0%
29
自殺問題に関して、多摩総合精神保健福祉センターに
期待する取り組み
自殺念慮のある人の相談
地域関係機関職員を対象とした自殺対策の研修
自殺未遂者の相談
自死遺族の相談
自殺事例に関する、法律面も含めた精神保健相談や技術援助
地域の機関職員対象の自殺事例検討(デス・カンファレンス)実施の援助
地域の機関職員を対象としたグリーフケアサポート
自死遺族が集う場や機会の提供
自殺問題に関する精神障害者支援機関の連携会議の開催
自死遺族支援に関する地域関係機関職員の研修
自殺問題に関するリーフレット配布
自殺問題に関する調査研究
自殺問題についてのホームページ等での広報
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
30
当調査のまとめ
○多摩地域の精神障害者支援施設について、以下が示唆された。
・支援施設全体での「施設あたりの自殺発生率」・・・
1か月に約1件
毎月、どこかの施設で自殺が発生して
いる!
・自殺死亡率(多摩地域人口10万人あたりの自殺者数)・・・
都民の自殺死亡率
19人*
<
支援施設利用者の
自殺死亡率
185人*
<
精神障害者全体の
自殺死亡率
288人*(推計)
(*人口10万人あたり)
31
当調査のまとめ
○事例調査では、「20代から30代」「男性」「統合失調症」
「支援施設利用1年未満」「秋から冬での自殺」という特
徴があった。
○利用者の自殺は施設職員の心身や日常業務に強い影
響を与える。しかし、現状では、支援体制は十分ではな
い。
○自殺問題に関し、支援ニーズがあっても支援施設が取
り組み困難な対策等が明らかとなった。
32
今後の課題
1 自殺リスクへの対応機能の向上
・ガイドラインと対応マニュアルの作成
・精神保健福祉センターや東京都が提供する研修体系の見直し
2 自殺発生から施設機能回復までの緊急時への対応
・外部機関介入のシステム化
3 自殺、事故等の日常的危機管理機能の向上
4 精神保健福祉センター職員の資質向上と人材の確保
33
おわりに
当調査にご協力いただいた東京都精神保健
福祉民間団体協議会加盟4団体に加盟の精神
障害者支援施設、市町村、保健所の皆様に感
謝を申し上げます。
34
ダウンロード

資料8 向山委員資料(パワーポイント:3291KB)