4つの経済空間を駆けめぐる
「見えない大陸」:覇者の条件
大前 研一
13-MC001
李博維
戦略論の時代の終焉
• 「戦略とは何か」はもはや簡単に定義できない。こうす
れば企業は成功する、事業が発展するという、戦略と
呼ばれる「型紙」、すなわち、経営学者の言うフレーム
ワークでは、何も見えないし、答えも出ない。
• 競争優位の戦略、商品市場戦略、アライアンス戦略、
そしてバリューチェーンやコア・コンピタンスといった、
競争のエッセンスとなるフレームワークは、20世紀後
半、安定成長が見込まれる工業化社会の末期に生み
出されたもので、それを一部の企業エリートが学び、
戦略なるものを立案し、数千数万の現場従業員たち
を指揮しながら実現することで成長できる時代は終
わった。
• 作者は日本に「戦略論」を持ち込んだ責任として、か
つての「戦略論」に終止符を打ち、新しい世界の進み
方を考えてみたい。
隘路に迷い込んだ戦略論
• ポーターのポジショニングの概念やハメルの
コア・コンピタンスの考え方、あるいはコンサ
ルティング・ファームが編み出した数多くの戦
略論が機能しなくなった
理由
• 我々はいま、形のとらえられない、方向すら
つかめない「見えない大陸」(The Invisible
Continent)に入りこんでしまったから。
作者は企業戦略を3つのC (Customer,Competitor,Company)を
用いて次のように定義している。
「戦略とは、顧客が求めているものに対する競争相手との相対
的な力関係を、自社にとってより良いものに効率よく変化させ、
持続させるための計画や作業であり、その結果、競合企業に対
する優位性が継続的に維持される」
対象とする市場や競合企業を明快に定義することが戦略の出
発点であり、だからこそ、それらに対し何をめざし(what)やどう
すればよいのか(how)を論じる戦略論が有効に機能できた。
しかし
この15年間で企業を取り巻く環境は激変した。 戦略の前提と
なる自社の顧客や競合企業、市場を固定的に定義できる時代
ではなくなっている。
例:ソニーとマイクロソフト
かつてソニーとマイクロソフト
は、がっちりと手を組んだ「コラ
ボレーター(協力者)」の関係。
ところが
そこで
〈プレイステーション〉発表後、
ソニー首脳の「マイクロソフト
はデスクトップのチャンピョン、
うちはリビングのチャンピョン」
という発言がマイクロソフトを
刺激した。
マイクロソフトは自らリビングルームの
ポータルとなるべく、巨費を投じて〈Xボッ
クス〉を開発した。自らメーカとしてデ
ビュー。
そして
両者の関係はコラボレーター(協力者)
から最大のコンペティター(競争相手)
に転じた。
つまりどういうことか
今は、競争相手も、自社の業態も瞬時に変わっ
てしまう時代。このような時代には、「プラクティ
ショナー」(事業の実現者)にとって、What論や
How論は、考えるヒントになるけど、答えを導き
えない。
むしろ、前例のない新しい現象を過去のフレー
ムや知識、問題解決の手法適用して解釈する
ことが危険になっている。
戦略を変容させる「見えない大陸」
この「見えない大陸」の時代に、戦略を決める2
つのもの
1 「パーソン・スペシフィック」(どんな資質を持
つ人材がやるのか)
2 「タイミング・スペシフィック」(いつやるのか)
例1:チェンバースがシスコを成功に急成長させた三
つのもの
1.天才的なシステム屋であるエド・ゴゼールと組んだ
(パーソン・スペシフィック)
2.SAPのERP(統合基幹業務システム)が利用可能な
タイミングにあった(タイミング・スペシフィック)
3.創業者から全事業を任された(パーソン・スペシ
フィックANDタイミング・スペシフィック)
もし、5年早ければ、創業者が介入して何もできな
かっただろうし、現在の巨大化したシスコに入っても
業績を倍にできないかもしれない。
例2:トム・シーベルは世の中で最も頻繁に反復作業
を繰り返すのは営業マンであることに気づき、営業機
能に特化したデータベースSFA(営業支援パッケー
ジ・ソフト)をピーフォン・チェンとともに開発、専業トッ
プを独走する企業になった。そして、ピーフォン・チェ
ンはワン・トゥ・ワン・マーケティングのデータベース
に・マネジメントに特化すべく、ブロードビジョンを立ち
上げ、この領域のトップ企業になる。
この二つの例に注目したいのは、データベースという
素材にSFAやワン・トゥ・ワンという事業アイデアが
あったわけではない。その人間の能力が事業の可能
性を規定し、後から振り返った時、それが戦略だった
ということになる。
現在成功している企業の戦略
もともと戦略があって、
それを元に企業が活
動する
優秀な人材を数人抱
え、彼らを自由に泳が
せて、成功に導く戦略
が生み出される
時代や環境は常に変化する、同時に人間の能力も変化する。
企業が継続的に優位性を保とうとするには、時代にマッチした人材を獲得し続けるしか
ない。
「成功した人はその成功が原因となって失敗する」という普遍の真理が存在する
企業が成功の再現性と継続性を求めることは非常に難しい
「見えない大陸の」四つの経済空間
「ボーダーレス経済
の空間」
「実体経済の空間」
交互に
作用し
成立し
ている
「サイバー経済の空
間」
「マルチプル(乗数)
経済の空間」
これら四つの経済空間の存在を理解し、これらを戦略ス
ペースとして使い切った企業や個人こそが、ニュー・エコ
ノミー時代の「見えない大陸」の覇者となる。
目に見える実体経済の空間
実体経済は、これまで我々が活動してきた経済空間で
あり、ケインズ経済学が機能している世界である。
この経済空間は今後も存在する。実際の商品の生産や
物流がなくなることはない。むしろ、ほかの経済空間との
交互関係において、すなわち「クリック(インターネット)・
アンド・モルタル(現実の店舗網)」のモルタル部分として、
重要性はいっそう高まる。
旧世界であるオールド・エコノミーに属する産業や企業
にも、雇用の流動化に伴う事業のリストラクチャリング
(企業が収益構造の改善を図るために事業を再構築す
ること)を進め、ニュー・エコノミーに対応できる企業への
変革が進んでいる。
ボーダーレス経済の空間
ボーダーレス:境界がない、国境がない
この次元の経済は、国家という概念とまったく無関係
にある。
世界瞬時性を意識しなければ、すぐにビジネスチャン
スを世界どこかのプレイヤーに持ち去られてしまう。
自国の市場で確率した事業や商品を順次他の市場
に展開する「カスケード型」の事業展開では間に合わ
ない。
そこで、世界中の市場に同時にアクセスする「スプリ
ンクラー(水に高圧をかけ飛沫にしてノズルから散布
する装置)・モデル」とも言うべきビジネスモデルが求
められる。
サイバー経済の空間
インターネットでウェブにつながっているモデルはサ
イバー経済のごく初期的なものである。
ナップスターはP2P(サーバを経由せず、利用者が交互の
パソコンをつなげることで情報交換をする)という新技術を
生み出した。これであっという間に全世界で4000万
人の利用者を獲得した。
問題点:著作権を持って音楽を売るという実体経済
における事業のコンセプト自体が揺らぐ。
マルチプル経済の空間
マルチプルは、乗数、すなわち数式上の仮設だけで
成り立っている経済である。
高等数学の雄であるロケット・サイエンティストが非
常に複雑な前提に置いて、偏微分方式や二次微分
などを駆使して創り上げる経済である。
例:株価収益率は現在の株価と現在の収益が何倍
の関係にあるかを示すマルプルである。
見えない大陸の覇者の条件
この4つの経済空間を自在に駆使するものが、
ニュー・エコノミーという「見えない大陸」の覇者の条
件であり、戦略であると作者は考える。
実際今日成功している企業の多くは、4つの経済空
間をすべて活用し、効果的な意思決定を果たしてい
る。
例:シスコ
見える実体経済
・高い生産性を
持っている
・業態を「メー
カー」としている
ボーダーレス経
済
誕生の時からグ
ローバル・プレゼ
ンスを有してい
る
サイバー経済
マルチプル経済
販売、マーケティ
ング、製造、顧
客サービスを
ウェブベースで
統合した(CCO)を
いち早く設立した
時価総額は利益
の171倍、株式
交換で100以上
の企業を買収し、
飛耀的な成長を
遂げた
新時代に求められる経営能力
作者は、今の時代、戦略より、個人が自分の頭の中
にしかつくれないそれぞれの「構想力」がすべてにか
かってると感じている。
なぜなら、この「見えない大陸」は構想力のない人は
永遠に見えないからである。
ここでいう「構想力」は、四つの経済空間をつないだ
事業のイメージを自分の頭の中で描けることをいう。
「ビジョン」:その構想を社員やステークホルダーに伝
え、彼らを動かすフレームワーク。
ビジョンを具体的な計画に落としたものが戦略とる。
旧世界からの自己解放
・旧世界から自らを解放することが、「見えない大陸」
を進む最初のステップである。
・「見えない大陸」の戦略や答えは、事業家や経営者
が個人で見つけるしかない。
・大事なことは、いま起こっていることから学び、自ら
の構想のスペースを広げること。
30にジャン
300を目指す
構想
1,2,3とやっ
てみる
3までいった
ら30にジャン
プする
答えをほかに求めず、自ら学び、構想を
もって進んでいく勇気である。
プできたから
と言って300
に飛ぶので
はなく、31,32
と検証して、
足場を固める
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