知的財産権と関税定率法21条の現状
弁護士 熊倉禎男
中村合同特許法律事務所
I
1.
条
約
2.
国内法①
水際措置の法的根拠
1995年発効のTRIPS
51-60条
1910年制定の関税定率法21条
「輸入禁制品」
(国内の法的秩序維持目的)
② 1994年基本通達のTRIPSの先取改正
(国際水準へのキャッチアップ)
③ 知的財産基本法・知的財産推進計画
の下での毎年の改正
(我国産業の保護の目的)
Ⅱ 水際取締りの全体の流れ
者権
利
税
関
①輸入差止
申立て
税関
輸
入
者
輸入
申告等
審
査
・
検
査
②認定手続
疑
義
貨
物
発
見
認
定
手
続
開
始
侵
害
判
断
(
認
定
)
意
見
照
会
見
本
検
査
没
収
・
廃
棄
等
Ⅲ 平成15年以降の法改正
1.
平成15年4月
① 特許権、実用新案権、意匠権に輸入差止申立
制度導入
特許庁意見照会制度及び通関解放制度
② 育成者権侵害品を輸入差止申立の対象化
2.
平成16年4月
輸出入者、生産者の情報(名称、住所)を権利
者に開示
3.
4.
平成17年1月
音楽レコードの還流防止措置(著作権法の改
正)
平成17年4月
① 権利者による見本検査制度(関税定率法21条
の3の2)
② 育成者権について意見照会制度(関税定率法
21条の4の2)
育成者権の侵害物品の認定手続において、税
関が種苗法を保管する農林水産省に意見照会
できる制度
5.
平成18年3月
① 不正競争防止法違反品を輸入差止申立の対象
に追加
1)
周知表示の混同を惹起する製品
2)
著名表示を冒用する製品
3)
形態模倣品
 申立時に経済産業大臣の意見提出が必要
 税関が必要に応じ経済産業大臣に意見照
会できる
Ⅳ 輸入差止申立ての要件
1.
権利者であること
2.
権利の内容に根拠があること
(原簿、判決書・判定書・鑑定書等、技術評価
書)
3.
侵害の事実またはその恐れがあること
4.
侵害の事実を確認できること
(侵害物品のサンプル・カタログ・写真)
5.
税関で識別できること
(真正品と侵害疑義物品とを識別ポイントの情
報)
Ⅴ 事前相談

申立要件を充足しているか?

特に侵害の疎明・識別手段について説明が充分
か?

技術説明

疑義物品と権利との構成要件の比較。
均等の理由・証拠

真偽識別方法の確認

並行輸入関係の資料等(ライセンシーの存在、ライ
センシーの製品)

通関解放金の算定資料(実際に締結されたライセン
ス契約とライセンス料等)

自助努力の経過と結果(警告・交渉)
Ⅵ 認定手続と期間の法定(迅速化)
税関の検査で発見した輸入疑義物品が侵害物品か
否かの認定手続
1.
疑義物品の発見
2.
認定手続開始通知
3.
権利者・輸入業者の意見提出
認定手続開始から10日以内(迅速化)
(生鮮貨物については3日)
4.
意見照会(特許庁等に30日以内に回答を要求)
5.
認定(10日以内)
Ⅶ 通関解放制度(輸入者とのバラン
ス)
輸入者は認定手続取り止めの請求ができる
認定手続開始から20執務日経過あるいは特許庁等の
意見書受理から10日経過後
 意見照会の場合は、20日+30日+10日(約2ヶ月
で解放)
 ライセンス料相当・販売利益(課税価格の
20%目安)を供託
供託命令→供託→輸入許可
Ⅷ 見本の検査の申請
(権利者の立証手段強化)
対象(回路配置利用権を除く)
2. タイミング 認定手続が執られている間
3. 要件
1.



必要性・輸入車の利益が不当に該されるおそれがない
不当に利用されない
保険検査等取扱を適正に行う能力資力を有する
輸入者に通知
5. 見本の分解検査後の現状回復の困難
輸入者の損害担保のための金銭供託
6. 見本検査の費用は申請者の負担
7. 税関職員の立会 輸入者の立会(申請による)
4.
Ⅸ 意見の照会(客観性の担保)
1.
特許庁長官の意見照会(特許・実用新案・意匠に
限定。商標は除く)
2.
農林水産大臣の意見照会:育成者権侵害の該当性
について(30日以内)
3.
不正競争防止法2条1項ないし3項違反を組成する物
品について(18年3月)
差止請求権者が申立前に経済産業大臣の意見を求
め、その意見書を税関長に提出
混同惹起等の認定について経済産業大臣の意見照
会
Ⅹ 問題点
(違法行為性の不確定と権利者・輸入者間の
利益のバランス)
1.
税関における輸入差止措置

対象・内容等の整備

専門官・調査官(弁理士2名を含む)の人員配置の
整備
2.
無効の抗弁について
特許の有効性は判断の対象とならない。
無効審判での無効となる確率が高いこととの調整
が必要。
事後的には、判決や審決の確定後の申立の取下げ、
損害賠償請求
3.
手続の時間的制限の規定と通関解放制度

4.
認定手続の遅延による輸入者の不利益の限界が画
された。物品の価格の高額化による輸入者への影
響
訴訟・判定の個別性と税関における認定手続の一
般性
訴訟・判定:事前に製品を入手し分析した製品を
対象として主張立証
 関税定率法の手続はより一般的。同一のメーカー
の異なるブランド・ロットの製品、OEM製品、複数
のメーカーの同種製品の侵害確認ができる識別方
法を示す必要がある。

5.
見本検査制度と担保金の供託
① 担保金(製品価格の20%程度)の供託による見本検査
制度は合理的
② 税関職員の必要的立会い、かつ10日以内の分析完了の
必要性
③ 短時間の検査方法、装置、場所が必要.
事前相談および申請段階での検討と税関との打合せ
④ 育成者権については、



独立行政法人種苗管理センターが権利侵害判定を支援する品種
類似性試験(比較栽培およびDNA分析)を提供
収穫物や加工品については農水省関連試験研究所と都道府県の
試験が協議中
侵害が公表された事例:インゲンやイチゴについて、登録種苗
が持ち出され、中国・韓国で栽培され収穫物が輸入。
収穫物の場合:栽培による色・形状・形等の表現に現れる特性
の比較から品種識別技術が時間を要する。DNAによる識別技術
は迅速だが、完全ではない。
XI 判決にみられる関税定率法事件
1.
S45.2.27 大阪地裁昭和43(ワ)7003
民事訴訟事件
商標権
主文
原告のなす、米国会社ゼ・パーカー・ペン・コム
パニー製造にかかり「PARKER」なる商標を附した
万年筆、ボールペン及びその部品の輸入及び販売
について、被告が登録第171867号商標権の専用使
用権に基づく差止請求権を有しないことを確認す
る。
(注)著名なパーカー事件の判決。既に税関で差し止
められ、保存金庫保管中の物品に関する行政訴
訟と併行して提起したもの。
2.
H8.1.31 大阪地裁平成6(行ウ)4
訴訟事件
著作権
行政
被告(当時は大阪税関伊丹空港支署長)が平成5年
8月23日付で原告に対してした原告の輸入申告にか
かる別紙物件目録記載一ないし三の物件に対する
積戻し命令を取り消す。
(注)違法複製した絵画の輸入についての積戻し命令
の取消を求めたもの。
大阪高判 平9.5.28控訴棄却
3.
H15.6.30 東京地裁平成15(ワ)3396 商標権 民事訴訟事件
1 別紙商標目録1記載の各商標を付した半袖ティーシャツ及びポロシャツ
で,東京税関大井出張所により,関税定率法21条1項5号,同条4項に基づ
き,別紙通知目録記載の認定手続開始通知のとおりの認定手続の対象と
なった商品を原告が販売することについて,被告は,登録第1921224号商
標権の専用使用権に基づく差止請求権を有しないことを確認する。
2 本件訴えのうち,原告の輸入行為に係る部分を却下する。
別紙目録
認定手続開始通知日
開始通知書番号
輸入申告者
申告番号
申告年月日
疑義貨物 品名
数量
権利の内容
輸入差止申立者
平成14年6月3日
開始通知第14-3号
株式会社ミスタータン
20020523
平成14年5月23日
ティーシャツ、ポロシャツ
2279枚
商標権(登録第1921224号)
株式会社ボディーグローヴ・ジャパン
(注)税関が、真正品の並行輸入であるから商標権侵害しないとして通関した
後の確認訴訟。輸入行為の差止請求不存在請求については訴の利益なし。
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