遺伝子検査について
株式会社 エスアールエル
遺伝子・染色体解析センター
2005.5.1作成
遺伝子検査課
遺伝子検査と従来の臨床検査との違い
DNA→
RNA→
ペプチド→
RT-PCR
ノーザン解析
PCR
サザン解析
シーケンス
遺伝子検査
前駆体→
成熟タンパク質
ウエスタン解析
活性測定
形態学的検査
免疫学的検査
従来の臨床検査
遺伝子検査技術
• 遺伝子(DNA、RNA)検査
サザンブロット法(:Southern
シーケンス(:Sequence)
PCR法(:Polymerase
blotting)
Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)
(PCR-RFLP:Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型)
(PCR-SSCP:single strand conformational polymorphism:一本鎖DNA高次構造多型)
リアルタイムPCR法(TaqMan
PCR、ライトサイクラー)
ノーザンブロット法(:Northern blotting)
RT-PCR法(:Reverse Transcription)
NASBA法(:Nucleic Acid Sequence Based Amplification:核酸配列に基く増幅法)
TMA法(:Transcription Mediated Amplification Method:転写介在増幅法)
マイクロアレイ法(発現、変異)(:Microarray):DNAチップ 等
アガロースゲル電気泳動
 アガロースゲル電気泳動
アガロース(寒天の成分)ゲル
を使用した電気泳動により、核
酸をその大きさに応じて分離す
る手法。数ある電気泳動の中で
も、もっともオーソドックスな
ものといえる。
 原理
DNA、RNAなどの核酸分子はそれ
ぞれ固有の大きさと荷電を持っ
ている。荷電の個数は分子の大
きさに比例するため、泳動距離
は分子量の大きいものほど短く
、小さいものほど長くなる。ま
たアガロースゲルの有する分子
ふるい効果により分離能はさら
に増強される。
ブロティングとハイブリダイゼーション
DNAやRNA断片が、目的の塩基配列と相補性があるかどう 【種々のブロッティング】
(a) サザン(Southern)ブロッティング
かを調べる方法。
標識したmRNAやcDNAでDNA断片を検出する方法。
サザンブロッティングは核酸プローブと相補的
・プロッティング
な塩基配列を持つDNA断片をメンブレン上で検
電気泳動のゲル中で分離したDNAやRNA断片あるいはタ 出する手法。Edward M. Southernが開発し、一
ンパク質をニトロセルロースなどの人工膜に写しとる 般に何らかの制限酵素で切断したDNAを電気泳
動したのちにニトロセルロースなどの膜へブ
操作をブロッティングという
ロット(転写)することから。その後ラベルし
たプローブとハイブリダイズさせ目的のDNAの
・ハイブリダイゼーション
存在を検出する。
32Pなどで放射性標識したcDNAやmRNAと2本鎖を形成す
(b) ノザン(Northern)ブロッティング
るかどうかを調べる方法をハイブリダイゼーション 標識したcDNAdでmRNAを検出する方法
(hybridization)という。このような目的に使われ 特定のmRNAの(i) 鎖長の解析、(ii) 組織分布、
る標識物をプローブ(probe)といい、プローブが結合 (iii)発現の有無や量の解析に利用される。
したDNAの位置はX線フィルムに感光させて検出でき (c) ウェスタン(Western)ブロッティング
標識した抗体でタンパク質を検出する方法
る(オートラジオグラフィー)。
★標識法としては、放射能標識以外に蛍光標識
がよく利用される。Westernブロッティングで
は、酵素標識法や化学発光法も使われる。
PCR法の測定方法と原理
サンプルからの核酸抽出
(1) 2本鎖DNAの熱変性→1本鎖へ解離
鋳型DNA
抽出DNA
96℃
(2) プライマーのアニーリング(焼きなまし)
耐熱性DNAポリメラーゼ
耐熱性DNAポリメラーゼ:
1本鎖の核酸を鋳型として、それに相補的
な塩基配列を持つ DNA鎖を合成する酵
素。DNA を鋳型として、DNAを複製するも
のをDNA依存性DNAポリメラーゼという。
繰
り
返
し
55℃
(3) DNAポリメラーゼによるDNA鎖の伸張
TaqDNAポリメラーゼ:TaqDNAポリメラーゼは1967年にThermus
aquanticus という耐熱微生物(高度好熱菌:非常に高い温度を
好んで生育する菌)がアメリカのイエローストーン公園のマッシュ
ルーム温泉でBrock博士達によって見つけられその微生物から
とられたポリメラーゼ。末端にAを付加する性質がある(TdT活性)。
プライマー
dNTP
プライマー:DNAポリメレースがDNAを合成
する際に、3'OHを供給する分子をプライマーと
呼ぶ。PCR反応に使用されるものは短いDNA
断片であり、生体内でのDNA複製では主に
RNAであり、また蛋白質がその機能を果たすこ
ともある。
dNTP(dATP、dTTP、dCTP、
dGTP)
A:アデニン、G:グアニン、
C:シトシン、T:チミン
デオキシヌクレオチド三リン酸
アガロース電気泳動法による検出
72℃
PCR反応:30サイクル前後反応し100万倍(2n)増幅する。
DNAチップとは?
DNAチップとは、ガラスや半導
体の基板の上に特定のDNAを貼り
付けたもので、患者の遺伝子群が
どのように発現しているかを一度
に調べることができる。基本的な
流れは、次のようなものだ。
1.患者の細胞や血液からmRNAを取
り出す。
2.それから相補性DNA(cDNA)を逆
転写・複製する。
3.cDNAを基板にふりかけ、基板上
のDNAと対をつくっているかを蛍
光体で検出する。
今後のゲノム解析や、患者一人
ひとりの体質に合わせて適切な治
療を行うテーラーメイド医療にも
必須のツールと考えられている。
臨床検査としての遺伝子検査
• ヒト遺伝子分野(20%
染色体検査10%を含む)
遺伝性疾患
癌・白血病
HLA
薬物代謝関連酵素
生活習慣病のリスクファクター
遺伝子治療関連検査
• 感染症分野(
80%
細菌感染症
ウイルス感染症
)
遺伝子とは(染色体、ゲノムとの関係)
ヒトの染色体; 46XY(2倍体)
ヒトゲノム; 23本
塩基数; 30億塩基対
遺伝子数; 32,000
遺伝子; タンパクをコードするDNA領域
G-band染色体バンド数; 約500
(1band = 600万塩基対 = 64遺伝子)
遺伝子変異(異常)の種類
点突然変異、挿入、欠失、増幅、逆位、転座等
点突然変異
①エクソン・・・・アミノ酸の置換、欠失
②イントロン・・・スプライシングの異常、読み枠がずれ、停止コドン
が出現しタンパク合成が停止する
③転写調節領域、プロモーター領域・・・遺伝子の発現量の変化
Ala
Arg
Asn
Asp
Asx
A
R
N
D
B
Cys
Gln
Glu
Glx
C
Q
E
Z
Gly
His
Ile
Leu
G
H
I
L
アラニン
アルギニン
アスパラギン
アスパラギン酸
アスパラギン
またはアスパラギン酸
システイン
グルタミン
グルタミン酸
グルタミン
またはグルタミン酸
グリシン
ヒスチジン
イソロイシン
ロイシン
Lys
Met
Phe
Pro
Ser
Thr
Trp
Tyr
Val
K
M
F
P
S
T
W
Y
V
リシン
メチオニン
フェニルアラニン
プロリン
セリン
トレオニン
トリプトファン
チロシン
バリン
点突然変異
(塩基の変異によるアミノ酸の置換、欠失)
システイン
A
B
C
TGT
E
F
サイレント変異
システイン
A
B
C
TGC
E
F
ナンセンス変異
終止
A
B
C
TGA
終止コドンアミノ酸のストップ
短縮タンパク
トリプトファン
A
B
C
TGG
アミノ酸置換なし
タンパクの構造に変化なし
E
F
ミスセンス変異
アミノ酸置換あり
タンパクの構造に変化あり
塩基の挿入:フレームシフト(読み枠のずれ)
野生型(正常)
ATG
AAC
CGA
Met Val
Ala
Leu
Asx
1塩基挿入(変異以降のアミノ酸が換わる)
Arg
ATG
CTA
ACT
GCC
AGC
CTT
CCT
TAA
CCG
Met Thr
Ser
Pro
終止
2塩基挿入(変異以降のアミノ酸が換わる)
ATG
AAC
TAG
CCC
TTA
ACC
Met Asx
終止
3塩基挿入(1アミノ酸が挿入)
ATG
AAA
CTA
GCC
CTT
AAC
Met
Lys
Val
Ala
Leu
Asx
塩基の欠失:フレームシフト(読み枠のずれ)
野生型(正常)
ATG
AAC
CGA
Met Val
Ala
Leu
Asx
1塩基欠失(欠失以降のアミノ酸が換わる)
Arg
ATG
CTA
TAG
GCC
CCC
CTT
TTA
ACC
GA
Met
終止
2塩基欠失(欠失以降のアミノ酸が換わる)
ATG
AGC
CCT
Met
Ser
Pro
3塩基欠失(1アミノ酸の欠失)
TAA
CCG
終止
ATG
GCC
CTT
AAC
CGA
Met
Ala
Leu
Asx
Arg
A
欠失、増幅、逆位、転座
遺 伝 子
野生型
(正常)
x
a
x
a
x
a
b
c
c
欠失
b
b
c
増幅(重複)
x
b
x
b
a
c
逆位
g
転座
転座は染色体レベルで検出される
h
遺伝子の増幅
(N-myc, C-myc, erbB2等癌遺伝子)
神経芽細胞腫(N-myc)
N-myc
遺伝子
n
n>10は悪性度、予後不良
遺伝子の転座
(白血病、悪性リンパ腫等)
慢性骨髄性白血病(CML)
核型t(9;22)(q34;q11)
フィラデルフィア染色体
9;22転座
↓
キメラ遺伝子(新規蛋白)の
生成により白血病の原因となる
q11
q34
9
22
突然変異の原因
放射線(X線、電離放射線)
ショウジョウバエ、チェルノブイリ原発事故
紫外線
色素乾皮症、皮膚がん
化学物質(ベンズピレン、)
ウイルス(HTLV1、HCV、HBV)
DNA修復酵素異常(複製ミス)
マルチプレックスPCR(同一チューブで複数の反応)
ジストロフィン遺伝子欠失(19領域を2チューブで検査)
RT-PCR(reverse transcription-PCR)
RNAはPCRにかからないので逆転写反応によりDNAに変換する
t(1;19)転座/E2A-PBX1
19q13
Cen
E2A遺伝子
1q23
切断点
(breakpoint region)
exon 1
13
14
Tel
Cen
exon
16
PBX1遺伝子
切断点
(breakpoint region)
X
Tel
Y
primer
primer
エクソンX,Y:PBX1遺伝子は全て明らかにされていな
いため、切断領域を挟むエクソンをXとYで示した。
核型t(1;19) (q23;p13)
転座(Translocation)
E2A-PBX1キメラ遺伝子
q23
p13
E2A遺伝子
1
19
primer
PBX1遺伝子
primer
1
2
A
B
M
:
:
:
:
:
陰性コントロ-ル
検体
E2A/PBX1mRNA(161bp)
β-actinmRNA(279bp)
marker(φx174DNA/HaeⅢdigest)
白血病関連キメラmRNAモニタリング 微少残存病変(MRD)
化学療法後の白血病細胞の推移と検出感度
寛解後療法
寛解導入療法
白
血
病
細
胞
数
再発
染色体G-band
サザン
間期核FISH
1012
1010
検出感度
光顕レベル
10-2
RT-PCR
リアルタイムPCR
108
血液学的寛解
分子レベル
10-5~10-6
106
分子レベルの完全寛解
104
微少残存病変(MRD)
102
治療開始後の経過
治療後の白血病細胞の推移
MRD検出による各種遺伝子解析方法の比較
感度
検査必要量
報告日数
保険点数
染色体解析
間期核FISH
サザン
RT-PCR
リアルタイムPCR
14%
5%
10%
0.001%
0.001%
血液5.0ml(ヘパリン加)
骨髄液1.0ml
18~22
10~14
2150+400*7
血液7.0ml(EDTA-2Na加)
骨髄液1.0ml
15~21
6~9
未保点
3~5
PCR 検査室
エアーの流れ
試薬調製
+2
cDNA 合成
Clean Bench
- 1
PCR検査
- 2
検出室
( Electrophoresis/Hybridization
)
0
前室
モデル
- 2, etc
空気圧
- 1
抽出
Safety Cabinet
(1)核酸抽出を行う場所
可能な限り独立した
施設ないしは設備を用
いて行うこと。
(2)試薬の保管場所及び
試薬の調製場所
可能な限り独立した
施設ないしは設備を用
いて行うこと。
(3)核酸増幅を行う場所
可能な限り独立した
施設ないしは設備を用
いて行うこと。
(4)増幅産物の検出を行
う場所
増幅前の試料を取り
扱う部屋と増幅産物を
取り扱う部屋とを区別
すること。
PCR検査で注意すべき点
(キャリーオーバーとクロスコンタミネーションの防止)
1.検査室の管理
・検査工程別の管理(スペース)
・検査室の空調による管理
・クリーンベンチ、セフティーキャビネットの使用
・紫外線による核酸の除去
・整理・整頓・清掃による汚染除去(次亜塩素酸Na)
・フィルターピペットの使用
・機器、器具の移動禁止
・白衣、履物を取り替え
2.試薬の管理
・UDG(ウラシル-DNAグルコシラーゼ)、
dUTPの使用(PCR反応前にUDGでプロダクトを分解)
現状の遺伝子検査の課題
技術的課題
標準化・コントロールサーベイ・検査技術の選択・施設設備
(感染症関連検査は試薬メーカーからキット化)
患者情報保護
倫理審査委員会の設置と運営・検査施設の設計とセキュリティー
技術者の資格要件と教育
検査実施者の資格の問題・教育システム問題
経済的課題
高額な検査(ヒト遺伝子検査は未保点)
パテントの問題(遺伝子および手法:PCRの特許は2006年まで)
遺伝子検査の今後の方向性
技術の進歩
解析技術の急激な進展
による既存技術のギャップ
新技術(DNAチップ、
インベーダー法 →)
ユーザーニーズの
多様化と検査体制
・電子カルテなどの導入に
よりペーパーレス報告
・インターネットによる
画像報告システム
・電子媒体による報告の
セキュリティーシステムの整備
SNPs(一塩基遺伝子多型)
ヒトゲノムは30億塩基対のDNAからなるが、個々人を比較すると0.1%の配
列の違いがあると見られており、これを多型と称す。遺伝子多型は遺伝的な
個人差を知る手がかりとなるが、その大部分はSNPsで、そのタイプによ
り遺伝子をもとに体内で作られる酵素などのタンパク質の働きが微妙に変化
し、病気のかかりやすさや医薬品への反応に変化が生じる。
遺伝子関連リンク集
 文献検索、ホモロジー検索など
NCBI:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
 分子生物学について
遺伝子の部屋:http://web.wtez.net/n/s/ns54007/gene/gene_main.html
 東京大学 分子生物学研究所 核内情報研究分野
ラボマニュアル:http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/bnsikato/protocols.html
 特許庁 標準技術集
http://www.jpo.go.jp/shiryou/index.htm
 東京大学医学部生化学教室(細胞情報研究部門)
ラボマニュアル:http://www.biochem2.m.u-tokyo.ac.jp/web/contents/manualindex_j.html
 核酸の化学
http://133.100.212.50/~bc1/Biochem/NA_index.htm
ダウンロード

遺伝子とは