シミュレーション論Ⅰ
第13回
シミュレーションの分析と検討
第12回のレポート

問題:遺伝的アルゴリズムを用いて、以下の関数の最小値とそ
のときの x を 0≦x≦15 の範囲で求める
f ( x)  ( x  1)(x  5)(x  7)(x  10)


遺伝子は4ケタのビット列を5つとし、一点交叉と突然変異を用
いる
選択は「評価値の高い(関数の値が小さい)」ものを上から2つ
残し、交叉させて新たに2つ子を作り、一部を突然変異させて再
度5つにする
f (6) = 20
f (14) = 3276
0
1
0
0
f (4) = -54
1
0
0
0
f (8) = -42
f (15) = 5600
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
1
1
1
0
第12回のレポート
繰り返しているうちに
最小値(に近い値)が
発見され、増加していく
シミュレーションの利点

さまざまなパターン、あり得る可能性を分かりやすく比較できる

数学的に解くことが困難な問題であっても、解を求めることができる


理論や過去のデータなどから(まだ起こっていない)将来の予測を立
てることができる
作成したシミュレーションの振る舞いを分析することで、現象の性質を
理解・説明したり、新たな理論の発展につなげることができる
etc…
シミュレーションは万能か?






シミュレーションによる研究は多くの利点を持っており、経済・経営・社会
システムの分析にも有効である
しかし、決して「なんでもできる」わけではなく、注意すべき点が多々ある
のも事実であることに注意
絶対に「解ける」わけではない
解けたとして、その答えは本当に正しいだろうか?
使用した理論、構築したモデルは妥当だろうか?
シミュレーションはあくまで「模擬実験」。現実とかけ離れていないだろう
か?
結果すべてを鵜呑みにするのではなく、常に「モデルや結果が妥当か?」
と考えるスタンスを忘れずに!
シミュレーション結果の検討


シミュレーションによって得られた結果は、様々な角度か
ら妥当かどうか検証する必要がある
常識、理論からの検証
– 得られた結果、数値があきらかにおかしいものでないか?
– 理論、モデルの仮定と矛盾していないか?

実データとの比較
– 実データが得られる場合、傾向は一致するか?
– 統計分析等で比較検討できないか?
モデルの検討




シミュレーション結果に矛盾がある場合、モデル自体を再度
検討する必要がある
使用した理論、モデル化の手順は妥当か
設定したパラメータは妥当か
プログラミングのミスや数値データの入力ミスがないか
コンピュータシミュレーションでは、計算結果が正しいものと思いがち
常に結果の妥当性の検証を忘れずに
シミュレーションの意義

シミュレーションが現実をモデル化した「模擬実験」である
以上、結果は現実へフィードバックできることが必要
– 自分の都合の良いようにモデルやパラメータを設定していない
か?
– 和泉は「シミュレーションをとにかくやってみたらこうなった」という
意味で「ヤッコー」という言葉を使っている
– 結果が出た時点で満足してしまいがちだが、実際はその後の検
証、応用の方が本来の目的であることを忘れずに
結果の妥当性を考えてみよう


以前におこなった携帯電話の使用者数増加シミュレー
ションでは、2013年までに世界の携帯電話使用者数は以
下のようになる
この結果は妥当だろうか?
携帯電話使用者数(億人)
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
1995
2000
2005
2010
年
携帯電話の利用者数増加のシミュレーション(復習)

シミュレーションモデルの内容
– 年の平均増加率が52%だから、ある年の翌年の利用者数は前年
の1.52倍(ただし、1年の間の増加速度は一定と仮定)
– 実際は時々刻々と利用者が増えているので、増加速度も刻々と変
化しているはず
年度
利用者数(万人)
1991
1600
1992
2432
1993
3696.64
52%増加(1.52倍)
52%増加(1.52倍)
結果の検討

どこが問題なのか?

何がいけなかったのか?

改善するためにはどうすればいいのか?
– モデルの変更
– 条件の変更・追加
– 仮定の見直し
など

先ほどのシミュレーションについて考えてみましょう
例:ねずみ講のシミュレーション


結果の妥当性が常に頭に入っていればシミュレーション
自体や実生活での考え方にも役立つ
「親」が10人の「子」に商品を販売し、「子」はさらに10人の
「孫」に商品を販売してマージンを得るような、いわゆる
「ねずみ講」で、世代が10世代まで進んだらどういう事態
がおこるだろうか?
常識とセンス




シミュレーションをおこなう場合、結果(数値)が出るとどうし
ても信用してしまいがちになる
実際には、結果を出すことが目的ではなくそれを使って何
かをすることが目的
出た結果が妥当なのか、設定や条件は間違っていないか、
そもそもモデルは正しいと言えるのか?
これらの問題を把握するには、常識的な考えと違和感を見
落とさないセンスが必要
統計・検定による分析


数値データの分析には統計・検定の手法を使用することが
ある
データの性質、傾向を分析
– 算術平均、幾何平均
– 回帰分析
– 検定


また、シミュレーションに使用する乱数がきちんと乱数の要
件を満たしているか、なども検定により確かめられる
一般的な統計分析や検定はExcelなどでもおこなえる
実データと実験



コンピュータシミュレーションでは、通常コンピュータ上に構
築された数学モデルを使用する
現実社会のデータやアンケート調査などによる実データ、
人間を使った実験などがおこなえる場合は傾向、数値の検
証をおこなう
経済学分野での実験は困難とされてきたが、近年は「実験
経済学」という分野も発展しつつある
実験とシミュレーション
実験とシミュレーション(2)



工学的な分野だけでなく、社会・経済システムを考える上
でも理論・シミュレーション・実験の関連は重要
ただし経済・社会システムでは大規模な実験は困難
実際の市場の変化・過去の傾向などの記録や実証研究
も重要となる
実証研究とシミュレーション
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


経済・社会システムをシミュレーションにより分析する場合、
実証研究との関連・比較を無視することはできない
様々な統計データ(実際の販売データ、○○白書、etc…)
シミュレーションによる予測と実際のデータの間に同じ傾向
があるか?
実証研究の結果はシミュレーションの結果を支持するかど
うか?
経済学と実験
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

コンピュータシミュレーションでは、通常コンピュータ上に
構築された数学モデルを使用する
現実社会のデータやアンケート調査などによる実データ、
人間を使った実験などがおこなえる場合は傾向、数値の
検証をおこなう
経済学分野での実験は困難とされてきたが、近年は「実
験経済学」という分野も発展しつつある
実験経済学
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
経済学のモデルが想定する状況を実験室内に構築し、経
済的誘引(主に現金)を被験者に与えて実験をおこなう
実験結果と理論解析の結果、シミュレーション結果を総合
して分析する
実験の手法
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
手作業による実験:最低限紙と鉛筆があれば実施可能
コンピュータおよびネットワークを利用する実験:設備や技
術は必要だが実験の大規模化や回数の増加が可能
実験の様子
第13回のレポート
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資料裏面の練習問題を時間の許す限りやってみてく
ださい
そのうち2問を選択し、出席カードに解答を記入してく
ださい
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シミュレーションの分析と検討