第2回特色GP協調演習シンポジウム
「協調演習による理学的知力の育成支援」
協調演習の事例報告
「有機化学演習」での活用
広島大学大学院理学研究科化学専攻
小島聡志
2010年2月26日
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有機化学の基礎とはどのような分野か
・有機化合物の対象となる主な元素:
水素H,炭素C,窒素N,酸素O
(りんP,硫黄S)
・有機化合物を変換させるために用いる反応試薬:
周期表の大部分の元素
元素の周期性,族性の定性的な理解
2
有機電子論(有機化学の特有な言語)
・誘起効果
(高等学校で習う電気陰性度などに基づいた概念)
・共鳴効果
(主に大学で習う多重結合などに関係する概念)
・立体ひずみ効果
(立体反発やねじれを不利とするごく一般的な考え方)
反応性の説明,反応性の予測
(反応機構)
3
例:カルボニル化合物
4
例:カルボニル化合物
電気陰性度(と共鳴)に基づく分極:
炭素がプラス,酸素がマイナス
カルボニルの隣の酸性度が高い
5
・高等学校までの数学
・有機化学の基礎
類似性
・公式の理解と適用
・周期表の周期性,
族性の定性的な理解
・有機電子論の理解と適用
有機化学の基礎は,
必ずしも暗記中心ではなく,パズル性が高い
つまり,知識と知恵が要求される
協調演習に向く分野
6
有機化学演習への協調演習導入の経緯
・約60名を約30名ずつのグループで二部屋で実施
半期ずつを計4名の教員で担当(2年生後期)
●例年の2年生の大学慣れによる中だるみと
それによる成績の低下
泉俊輔現教授による一方のグループでの
協調演習の試行( 2006年度):知的な刺激
全体的な効果 (2グループを比較して)
全体的な学力の向上,特に上位層および下位層
7
有機化学演習(2年生後期;2007年度から運用)
約60名を約30名ずつのグループに分けて実施
・第1週~第5週:
教科書の章末演習問題を使った従来の演習
・第6週~第7週:
協調演習(前半の総復習)
・第8週~第12週:
教科書の章末演習問題を使った従来の演習
・第13週~第14週:
協調演習(後半の総復習)
・第15週:
期末試験
・第16週:
成績下位者に向けた補講
8
各グループ内での班分け(1)
Helper
Learner
6人×6班
9
演習方法
H
問題配布
L
三
セ
ッ
ト
新
し
い
問
題
Helper(?)を中心とした
議論・助け合い
解答・議論
再
検
討
答合せ
正解
不正解
TA(2)・教員(1)
による補助:
“上級Helper”
(2班ずつ担当)
モチベーションのため時間を競う,最後の班にのみ宿題
(欠席や遅刻にタイムペナルティを科して出席を促す)
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演習方法
H
問題配布
L
三
セ
ッ
ト
新
し
い
問
題
Helper(?)を中心とした
議論・助け合い
解答・議論
再
検
討
答合せ
正解
不正解
TA(2)・教員(1)
による補助:
“上級Helper”
(2班ずつ担当)
モチベーションのため時間を競う,最後の班にのみ宿題
(欠席や遅刻にタイムペナルティを科して出席を促す)
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学生アンケートの結果(1)
良かった点
・教えてもらって理解が深まった。
(Learner?)
・教えあって理解が深まった。
・他人に説明することで,自分の理解が
確認できたり深まったりした。(Helper?)
・学生同士で気兼ねなく議論できた。
・やる気が出た。
・全員に理解させようとした点が良かった。
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学生アンケートの結果(2)
課題
・勉強してくる学生と
勉強して来ず,他人に頼る学生がいる。
・議論に参加しない学生がいる。
・もっと小人数の方が全員で議論やすい,
自分で考えようとする。
・自分のできが悪いので,
他のメンバーの迷惑になっている。
(Learner?)
少人数が望ましい
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各グループ内での班分け(2)
Helper
Learner
TAの増員によって可能に
4人×8班
(TA4名各2班担当,教員1名総括)
14
TA・教員アンケートの結果(1)
TAにとって良かった点
・自分の理解が確認でき,理解が深まった。
(上級Helper)
・指導の勉強になった。
・離れた学年とつながりを持つことができた。
15
TA・教員アンケートの結果(2)
受講生にとって良かった点
・回が増すにつれ,TAに頼らずにすむように
議論が活発化した班もあった。
・同じ程度の学力と思われる班では,
議論が活発であった。
(Helper以外の学生も積極的)
・Helperと見なされた学生でも,
理解の深化が見られた。
・全体的に,通常の授業よりも主体的に取り
組んでいた,真剣に話を聞いてくれた。
・研究を行っているTAとの会話を通して,
基礎習得の重要性を感じた学生がいた。
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TA・教員アンケートの結果(3)
課題
・基礎についての予習が全体的に不十分。
・班の人数が少なくても教えてもらおうという
姿勢のままの学生がいた。
・議論を促す必要のある班があった。
・問題数に限りがあるので,
学力の高い学生には物足らない。
・協調演習で学んだことが十分に習得されて
いない。(復習不足)
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TA・教員アンケートの結果(4)
提案
・もっとじっくりと予習できるように範囲を狭める。
・個別に考えさせる時間を別に設けて,それ
から議論させる方が定着につながる。
・個々の学生の進歩状況を見るために
班を変えない方が良い。
・大人しい学生が議論しやすい環境作りが必要。
・コミュニケーション術を指導すべき。
(必要とするHelperも)
・時間を競わせるとLearnerにプレッシャーが
かかるので,他の評価方法を考えるべき。
・HelperとLearnerが固定化されない工夫。
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各グループ内での班分け(3)
Helper
上位班
下位班
Learner
4人×8班
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新しい班分けの結果
・トップ:上位班
・最下位:下位班
しかし 間は上位と下位が混在
時間差思ったよりも少
知識・知恵 + コミュニケーション能力
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【まとめ1】有機化学演習での
協調演習の望ましい姿
・受講生に求めること:
(1)十分な予習
(2)コミュニケーションをとろうとする努力
(社会に出ても重要。)
(3)頭に残っている間に復習
(理解していれば印象強いはず)
・運用方法:
(1)少人数のグループ
(2)評価方法を改善し,同レベルの学生をグループ化,
個別に考える時間,議論する時間を十分に確保
(3)上級Helper(TA)活用
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【まとめ2】協調演習の展望
・TAの有効活用によって,他の講義科目でも1~2回
導入するだけで理解度の向上につながる。
(科目による向き・不向きの考慮)
・ TAの有効活用によって,成績下位学生に対する
補習方法として有効。
・大学生に求められる自主性の妨げともなりうるので,
学年に合わせた運用が必要。Helper-Learnerの構図
のある協調演習は低学年に留めるべきである。
研究におけるディスカッションも一種の協調演習と
見なせるが,Helper-Learnerの構図では
遣り甲斐がない。
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基礎有機化学(1年生後期)
単位の有無という
大きなモチベーション
全員参加の
熱心な話し合い
追
試
追
試
協
調
演
習
明らかな学力向上
来年度に期待
24
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